説明

画像形成装置およびヘッドクリーニング方法

【課題】印刷後の余熱によるヘッド温度の上昇を抑制し、ヘッド面でのインクの固着を防止可能にした画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するヘッドと、ヘッドの温度を測定するヘッド温度センサと、装置内温度を測定する装置内温度センサと、ヘッドを清掃するためのクリーニングウエブを移動させるクリーニング部とを有する。さらに、画像形成装置は、クリーニングウエブの移動速度を変更可能な変速部と、クリーニングウエブをヘッドに接触させるか否かを切り替える脱着部と、制御部とを有する。制御部は、ヘッドによる記録動作が終了した後、クリーニングウエブをヘッドに接触させるために脱着部を制御する。また、制御部は、ヘッドの温度または装置内温度が高いほどクリーニングウエブの移動速度が大きくなるように変速部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録するための画像形成装置およびヘッドクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の一種であるインクジェットプリンタでは、インクヘッド(以下では、単に「ヘッド」と称する)の昇温を抑制するための対策が施されている。これは、ヘッドの昇温によりノズルが熱膨張する結果、ノズルに歪みが生じ、用紙へのインクの着弾位置がずれてしまうことを防ぐためである。特許文献1では、ファンによる空気の流れで、ヘッドを冷却する空冷方式が提案されている。また、特許文献2では、ヘッドにノズル詰まりがあることを印刷前に検出すると、ノズルからインクを吸引した後、冷却剤を吹き付けたシートでヘッドのインク吐出面を清掃することが開示されている。インク吐出面をシートで清掃することで、ヘッドが冷却される。
【0003】
画像形成装置は、吐出したインクを用紙上に定着させることにより、画像形成を行う。インクの定着には、自然乾燥による方法、紫外線のような光反応を用いる方法、および、熱源を用いる方法などがある。熱源を用いる方法は、加熱によりインクを固化させて熱定着させるものであり、耐擦過性および耐候性に優れている。近年、インクジェットプリンタでは、例えば、ラテックスのような熱硬化性の樹脂を分散させたインクを用いて、ヘッドから用紙上にインクを吐出させ、インクを用紙に熱定着させるものが提案されている。以下では、熱硬化性の樹脂を含むインクを熱定着性インクと称する。
【0004】
このような熱定着型のインクジェットプリンタには、ヘッドが主走査動作する領域の近傍にヒータが設けられている。熱定着型のインクジェットプリンタでは、印刷前にヒータの電源をオンし、印刷後にヒータの電源をオフするヒータ制御を行う。このヒータ制御により、熱定着を確実に行うとともに、余分な熱発生および電力消費を抑制している。また、熱定着型のインクジェットプリンタでは、余分な熱硬化性樹脂が印刷後にヘッド面に残ることを防ぐため、ヘラ状のワイピングブレードや布状のクリーニングウエブによってヘッド面を清掃するヘッド清掃制御も行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−166173号公報(第2図)
【特許文献2】特開2008−155114号公報(第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のヒータ制御またはヘッド清掃制御を行っても、ヒータの余熱によって印刷後のヘッド面の温度が上昇し、その温度上昇に伴ってヘッド面でインクの固化が発生してしまうという問題がある。以下では、ヘッドの温度をヘッド温度と称し、ヘッド温度の上昇による問題を詳しく説明する。
【0007】
図18は、関連する画像形成装置における、印刷後の装置内温度およびヘッド温度の変化を示すグラフである。図18に示すグラフの横軸は、時間であり、単位は「秒」である。図18に示すグラフの縦軸は、温度であり、単位は℃である。
【0008】
曲線310は、画像形成装置の装置内の温度の変化を表している。曲線320は、ヘッド温度の変化を表している。図18に示すように、印刷後、ヒータの電源をすぐにオフしても、ヒータの余熱によって装置内温度はすぐに低下せず、主走査動作を停止したヘッドにヒータの余熱が伝達し、ヘッド温度が上昇する。ヘッド温度は、約70℃まで上昇した後、装置内温度の低下に伴って低くなっていく。しかし、ヘッド温度および昇温している時間が、インクを定着させる温度および時間を越えれば、ヘッド面およびノズル内でインクが固化してしまう。
【0009】
このように、印刷後のヘッド温度の上昇は、ヘッド面に熱定着性インクの固着を誘発する。ヘッド面での熱定着性インクの固着は、次の印刷時にノズルからインクを吐出できなくさせ、画像異常という問題を発生させる。
【0010】
本発明は上述したような技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、印刷後の余熱によるヘッド温度の上昇を抑制し、ヘッド面でのインクの固着を防止可能にした画像形成装置およびヘッドクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、
インクを吐出して記録媒体に画像を記録するヘッドと、
前記ヘッドの温度を測定するヘッド温度センサと、
装置内温度を測定する装置内温度センサと、
前記ヘッドを清掃するためのクリーニングウエブを移動させるクリーニング部と、
前記クリーニングウエブの移動速度を変更可能な変速部と、
前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させるか否かを切り替える脱着部と、
前記ヘッドによる記録動作が終了した後、前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させるために前記脱着部を制御し、前記ヘッドの温度または前記装置内温度が高いほど前記クリーニングウエブの移動速度が大きくなるように前記変速部を制御する制御部と、
を有する構成である。
【0012】
また、本発明のヘッドクリーニング方法は、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するヘッドと、該ヘッドの温度を測定するヘッド温度センサと、装置内温度を測定する装置内温度センサと、クリーニングウエブを移動させるクリーニング部と、を有する画像形成装置によるヘッドクリーニング方法であって、
前記ヘッドによる記録動作が終了した後、前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させ、
前記ヘッド温度センサから前記ヘッドの温度の情報を受信し、前記装置内温度センサから前記装置内温度の情報を受信すると、該ヘッドの温度または該装置内温度が高いほど前記クリーニングウエブの移動速度を大きくするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷後の熱源の余熱によるヘッド面の温度の上昇を抑制し、ヘッド面でのインクの固着を防止でき、画像形成を安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態における画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態における画像形成装置の一構成例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態におけるクリーニング部を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態におけるクリーニング部を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態の画像形成装置の印刷時の状態を示す側面図である。
【図6】第1の実施形態の画像形成装置において、ヘッドの清掃時および冷却時の状態を示す側面図である。
【図7】第1の実施形態の画像形成装置において、ヘッドの冷却後の状態を示す側面図である。
【図8】第1の実施形態のヘッドクリーニング方法における、クリーニングウエブの移動速度を決めるための表である。
【図9】第1の実施形態における、ヘッドのクリーニング制御方法を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施形態の画像形成装置における、印刷後の装置内温度およびヘッド温度の変化を示すグラフである。
【図11】第2の実施形態における画像形成装置の一構成例を示すブロック図である。
【図12】第2の実施形態におけるクリーニング部を説明するための図である。
【図13】第2の実施形態におけるクリーニング部を説明するための図である。
【図14】第2の実施形態の画像形成装置の印刷時の状態を示す側面図である。
【図15】第2の実施形態の画像形成装置において、ヘッドの清掃時および冷却時の状態を示す側面図である。
【図16】第2の実施形態の画像形成装置において、ヘッドの冷却後の状態を示す側面図である。
【図17】第2の実施形態における、ヘッドのクリーニング制御方法を示すフローチャートである。
【図18】関連する画像形成装置における、印刷後の装置内温度およびヘッド温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態の画像形成装置を、図を参照して説明する。図1は本実施形態の画像形成装置の外観を示す斜視図である。図1では、外観に現われていない構成を破線で示している。
【0016】
図1に示す画像形成装置1001は、大判印刷用のインクジェットプリンタである。画像形成装置1001は、制御部1002と、記録媒体に記録を行う印刷手段として機能するヘッド1003とを有する。ヘッド1003は、縦方向(主走査方向に垂直方向)に並ぶ1280本のノズルを有する。各ノズルは、用紙の送り方向に対して1200dpiの解像度を有する。用紙が記録媒体に相当し、ヘッド1003が用紙に記録動作を行うことで、用紙に画像が形成される。
【0017】
また、画像形成装置1001は、ロール紙給紙ユニット1004と、画像形成装置1001に各種指示をユーザが入力するための操作部1006と、ヒータ1007と、クリーニングウエブ部1008とを有する。ロール紙給紙ユニット1004は給紙手段の一例であり、ヒータ1007は定着熱源の一例であり、クリーニングウエブ部1008はヘッド清掃手段の一例である。ヘッド1003で印刷されたロール紙は、図に示さないカッターによってカットされ、カットされた部分が排紙部1005に送られる。
【0018】
図に示していないが、画像形成装置1001には、外部インタフェース(I/F)部として機能するネットワーク接続ユニットが設けられている。図1に示すように、画像形成装置1001は、ネットワーク1009としてLAN(Local Area Network)を介して、ホストPC(Personal Computer)1010と接続されている。
【0019】
なお、本実施形態では、画像形成装置が大判プリンタである場合で説明するが、カセット給紙もしくは手差し給紙のデスクトップ型プリンタ、複数の給紙段を有するプリンタ、または、スキャナと組み合わされた複合機であってもよい。また、本実施形態の画像形成装置がネットワーク接続ユニット(不図示)を有する場合で説明しているが、ネットワーク接続ユニットは、USB、IEEE1394、eS−ATA等で通信可能な外部I/F部であればよい。
【0020】
図2は本実施形態の画像形成装置の一構成例を示すブロック図である。図1に示した画像形成装置1001は、図2に示すように、画像形成装置1001を制御する制御部1002を有する。制御部1002は、CPU(Central Processing Unit)2002と、画像処理回路2006と、メモリとを有する。メモリとして、RAM(Random Access Memory)2004、ROM(Read Only Memory)2003、および不揮発性メモリ2005が設けられている。CPU2002がROM2003から読み出したプログラムを実行することで、画像形成装置1001の制御が行われる。
【0021】
RAM2004は、ホストPC1010から受信する印刷ジョブデータおよびホストPC1010のプリンタコントローラから受信する画像データを格納するためのデータメモリ領域と、制御部1002がプログラムを実行するためのワークメモリ領域とを有する。データの種類に対応して、データがRAM2004内のメモリ領域に分類されて保存される。不揮発性メモリ2005は、Flash ROMやEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)で構成される。不揮発性メモリ2005には、画像形成装置1001に設定されている印刷媒体の種類などの設定値の情報が格納される。不揮発性メモリ2005は、電力が供給されなくても、設定値の情報を保持し続ける。画像処理回路2006は、ホストPC1010のプリンタコントローラから受信する画像データの各画素データに対して所定の処理を行って、処理後の画像データを含むヘッドデータ信号を印刷制御部2011に送信する。
【0022】
図2に示すように、ストレージ2007が制御部1002のCPU2002に信号線を介して接続されている。外部I/F部2008、操作部1006、メカ制御部2010、および印刷制御部2011のそれぞれがCPU2002に信号線を介して接続されている。また、クリーニング部2016、装置内温度センサ2015、ヒータ部2014、およびメインファン2019のそれぞれがCPU2002に信号線を介して接続されている。ストレージ2007は、ホストPC1010から外部I/F部2008およびCPU2002を介して受信する印刷ジョブデータをファイルとして保存する。
【0023】
外部I/F部2008は、IP(Internet Protocol)のようなネットワーク接続プロトコルにしたがってデータを送受信する。操作部1006は、LCD(Liquid Crystal Display)およびLED(Light Emitting Diode)ディスプレイなどの表示装置(不図示)と、キー入力装置(不図示)とを有する。操作部1006は、CPU2002から受信するメッセージを表示装置に表示させ、ユーザがキー入力装置に入力する指示に基づく信号をCPU2002に送信する。メカ制御部2010は、図に示さない給紙駆動部、カッター駆動部および排紙駆動部と接続され、これらの制御部を制御することで、用紙の搬送制御を行う。
【0024】
印刷制御部2011は、インクヘッド回路2012と、図に示さないインク供給部およびキャリッジ駆動部と接続されている。印刷制御部2011は、印刷ジョブデータおよびヘッドデータ信号にしたがって、インクヘッド回路2012、インク供給部およびキャリッジ駆動部を制御することで、ヘッド1003を駆動し、メカ制御部2010と同期して、用紙への印刷を実行する。インクヘッド回路2012は、ヘッドデータ信号に基づく制御信号を印刷制御部2011から受信すると、制御信号にしたがってヘッド1003のノズルからインクの吐出を行う。
【0025】
インクヘッド回路2012には、ヘッド温度センサ2013が接続されている。ヘッド温度センサ2013は、本実施形態ではダイオードセンサで構成され、ヘッド1003と一体化して設けられている。ヘッド温度センサ2013は、ヘッド温度の情報を、インクヘッド回路2012を介してCPU2002に送信する。ヘッド温度センサ2013の位置は、インクの吐出口となるノズルの温度を測定するために、ノズルが設けられたヘッド面に近い方が望ましい。
【0026】
ヒータ部2014は、図1に示したヒータ1007を制御する。装置内温度センサ2015は、ヘッド1003が主走査を行う装置内の空間の温度を検知し、装置内温度の情報をCPU2002に送信する。クリーニング部2016は、ヘッド清掃手段の一例であり、脱着部2017および変速部2018と接続されている。クリーニング部2016の構成については、後で詳しく説明する。メインファン2019は、外気と装置内の空気を攪拌し、装置内部が高温になるのを防ぐ。
【0027】
変速部2018は、第1の歯車が取り付けられた回転軸と、第1の歯車と噛み合う第2の歯車が取り付けられたモーターとを有する駆動手段である。変速部2018は、回転速度を指示するための制御信号を制御部1002から受信すると、制御信号にしたがって回転軸の回転速度を変更する。このように、変速部2018はクリーニングウエブの移動速度を変更可能に構成されている。なお、回転軸の回転速度の制御を、制御部1002が変速部2018のモーターに供給する電力を変更することで行ってもよい。
【0028】
次に、クリーニング部2016の構成を詳しく説明する。図3および図4は本実施形態におけるクリーニング部を説明するための図である。
【0029】
図3はヘッドのクリーニングを行っている状態を示す図である。図3において、図面に垂直な方向をX軸方向とし、図の左右方向をY軸方向とし、図の上下方向をZ軸方向とする。なお、これらの軸の方向は、図4から図7についても図3と同様であるものとし、その説明を省略する。
【0030】
図3に示すように、クリーニング部2016は、第1の駆動ローラ3001および第2の駆動ローラ3002を有する。第1の駆動ローラ3001と第2の駆動ローラ3002の間に、クリーニングウエブ3005が張られている。2つの駆動ローラ間に張られたクリーニングウエブ3005は、待機位置に相当するホームポジションにおけるヘッド1003のZ軸の負の方向に位置している。
【0031】
ここでは、初期状態として、クリーニングウエブ3005が第2の駆動ローラに予め巻きつけられているものとし、クリーニングウエブ3005の一端が第1の駆動ローラ3001に取り付けられている。第1の駆動ローラ3001に、変速部2018に含まれる回転軸が接続されている。
【0032】
第1および第2の駆動ローラ3001、3002のそれぞれが反時計回りに回転することで、クリーニングウエブ3005は、第2の駆動ローラ3002からY軸の負の方向に移動し、第1の駆動ローラ3001に巻き取られる。変速部2018は、制御部1002からの制御信号にしたがって、クリーニングウエブ3005の移動速度を第1および第2の駆動ローラ3001、3002に設定する。
【0033】
また、2つの駆動ローラ間にまたがるクリーニングウエブ3005のZ軸の負の方向には脱着部2017が設けられている。脱着部2017は、Z軸方向に移動可能に構成され、クリーニングウエブ3005をヘッド1003に接触させるか否かを選択可能に動作する。図3は、脱着部2017がZ軸の正の方向に移動し、その位置を維持している状態を示す。この状態では、脱着部2017は、ヘッド1003に接近し、クリーニングウエブ3005をヘッド1003に接触させている。また、図3では、第1および第2の駆動ローラ3001、3002が両方とも回転している。
【0034】
本実施形態におけるクリーニング部は、図3に示すように、クリーニングウエブをヘッドに接触させた状態でウエブを巻き取ることで、ヘッド面の余分なインクを除去し、ヘッド面を清掃することができる。本実施形態におけるクリーニングウエブに、ポリエチレングリコールのような不揮発性の高分子潤滑剤が予め浸潤されていてもよい。
【0035】
図4はヘッドのクリーニングを行っていない状態を示す図である。図4に示す状態は、図3に示した状態と比較すると、2つの駆動ローラの回転状態と、脱着部の状態が異なる。以下に、詳しく説明する。
【0036】
図4は、脱着部2017がZ軸の負の方向に移動し、その位置を維持している状態を示す。脱着部2017がヘッド1003から離脱することで、クリーニングウエブ3005が弛んでヘッド1003から離れ、ヘッド1003と非接触になる。また、図4は、第1および第2の駆動ローラ3001、3002は両方とも回転が停止している状態である。第1および第2の駆動ローラ3001、3002の回転が停止しているため、クリーニングウエブ3005の巻き取りは行われない。
【0037】
次に、本実施形態の画像形成装置1001が印刷時に画像形成を行う際のクリーニング部の状態を説明する。図5は本実施形態の画像形成装置の印刷時の状態を示す側面図である。図5は、ヘッド1003の主走査方向から見た側面図であり、Y軸の正の方向が給紙側であり、Y軸の負の方向が排紙側に相当する。主走査方向はX軸方向と一致している。
【0038】
図5に示すヘッド1003は、X軸方向に主走査することで画像形成を行う。具体的には、ヘッド1003は、図面に垂直方向に手前側から奥側へ走査し、また、奥側から手前側へ走査するとき、ヘッド面からインクを用紙5001に吐出することで、画像を用紙5001に形成する。用紙5001は、ロール紙給紙ユニット1004から、用紙支持体となるプラテン板5002上を搬送される。図5にヒータ1007の断面を示す。図5は、ヒータ1007の電源をオンにして、用紙5001に形成された画像のインクを加熱することを表している。
【0039】
図5において、ヘッド1003の主走査のホームポジションはX軸方向で最も手前側にあり、図3および図4を参照して説明したクリーニング部2016と同様な構成のクリーニング部がホームポジションに設けられている。図5に示すクリーニング部は、図4で説明した状態と同様に、クリーニングウエブの巻き取りが停止しており、クリーニングウエブはヘッド1003から離れた状態である。つまり、画像形成中においては、クリーニングウエブは停止し、かつ、ヘッド1003と非接触の状態にある。
【0040】
なお、図5に示すクリーニング部は、大部分がプラテン5002よりもZ軸の負の方向に配置され、かつ、X軸方向ではホームポジション側にある。そのため、クリーニング部は、ヒータ1007からの熱を受けにくい位置にあり、ヘッド1003よりは温度が低くなっている。
【0041】
次に、本実施形態の画像形成装置1001が印刷を終了した直後に、ヘッド1003に対して清掃および冷却を行う方法を説明する。図6は、本実施形態の画像形成装置における、ヘッドの清掃時および冷却時の状態を示す側面図である。図6は、図5に示した側面図と、同じ方向から装置の側面を見た図である。図6では、ロール紙給紙ユニット1004を図に示すことを省略している。
【0042】
ヘッド1003の清掃および冷却を行う際、制御部1002は、ヒータ1007の電源をオフにする。ヘッド1003がホームポジションに移動することで、脱着部2017は、第1および第2の駆動ローラ3001、3002にまたがるクリーニングウエブを介してヘッド1003と対向する。そして、図6に示すように、図3を参照して説明した状態と同様に、クリーニングウエブがヘッド1003と接触した状態で、クリーニングウエブの巻き取りが行われる。つまり、ヒータ1007の電源がオフになった後、制御部1002は、ヘッド1003に対して、クリーニングウエブによるクリーニング動作を行う。
【0043】
ここでは、脱着部2017およびクリーニングウエブの動作によってヘッドに対してクリーニングが行われることを説明したが、後で説明するように、クリーニングウエブの巻き取り速度を段階的に下げることで、ヘッド温度の上昇を防ぐようにしてもよい。
【0044】
次に、本実施形態の画像形成装置1001において、ヘッド1003の冷却終了後の状態を説明する。図7は、本実施形態の画像形成装置における、ヘッドの冷却後の状態を示す側面図である。
【0045】
図7は、図5および図6に示した側面図と、同じ方向から装置の側面を見た図である。図7では、ロール紙給紙ユニット1004を図に示すことを省略している。図7に示すクリーニング部は、図4を参照して説明した状態と同様に、クリーニングウエブの巻き取りが停止しており、クリーニングウエブはヘッド1003から離れた状態である。つまり、ヘッドの冷却後においては、クリーニングウエブは停止し、かつ、ヘッド1003と非接触の状態にある。
【0046】
次に、本実施形態の画像形成装置1001において、装置内温度およびヘッド温度に対する、クリーニングウエブの巻き取り制御方法を説明する。図8は、装置内温度およびヘッド温度に基づいてクリーニングウエブの巻き取り速度を決めるための表である。
【0047】
ヘッド温度は、ヘッド温度センサ2013が検知する温度であり、ヘッド温度センサ2013からインクヘッド回路2012を介して制御部1002に通知される。装置内温度は、装置内温度センサ2015が検知する温度であり、装置内温度センサ2015から制御部1002に通知される。図8に示す表は、横方向にヘッド温度の範囲が複数に分割され、縦方向に装置内温度の範囲が複数に分割されている。縦の列毎にヘッド温度の範囲が異なり、横の行毎に装置内温度の範囲が異なっている。図8に示すように、この表には、ヘッド温度と装置内温度の組み合わせによって設定される、クリーニングウエブの巻き取り速度が登録されている。この表に示す、クリーニングウエブの巻き取り速度を、設定速度と称する。
【0048】
ヘッド温度に注目すると、装置内温度が70℃以上の場合を除いて、ヘッド温度が60℃以上のときよりも、ヘッド温度が60℃未満のときの方がクリーニングウエブの巻き取り速度が遅くなっている。また、装置内温度に注目すると、ヘッド温度と同様に、温度が低いほど、クリーニングウエブの巻き取り速度が遅くなる傾向がある。図8に示す表から、ヘッド温度または装置内温度が低いほど、クリーニングウエブの巻き取り速度が遅く設定されているのが分かる。
【0049】
図8に示す、温度とクリーニングウエブの巻き取り速度との組み合わせの表は、制御部1002の不揮発性メモリ2005にデータとして予め格納されている。CPU2002は、図8の表を参照し、ヘッド温度センサ2013から受け取るヘッド温度と装置内温度センサ2015から受け取る装置内温度とから、クリーニングウエブの巻き取り速度を決定する。そして、CPU2002は、決定した巻き取り速度を指示するための制御信号をクリーニング部2016に送信する。クリーニング部2016は、CPU2002から受信する制御信号にしたがって移動速度を変速部2018に設定し、第1および第2の駆動ローラ3001、3002の回転速度を制御する。
【0050】
図8の表を見ると、ヘッド温度または装置内温度が高いほど、クリーニングウエブの移動速度が大きくなっている。これは、ヘッド温度または装置内温度が高いほど、単位時間あたりにヘッドからクリーニングウエブに伝導する熱量が多くなるので、ヘッドから高温の熱が伝導したウエブを速やかに移動させて、温度の低いウエブをヘッドに接触させるためである。ヘッド温度または装置内温度が高温であるほど、クリーニングウエブの新しい部分を次々とヘッドに接触させることで、ヘッドの冷却効率が向上する。
【0051】
図8に示す表に基づいてクリーニングウエブの移動速度を制御することで、クリーニングウエブとヘッドとの温度差による熱伝導に応じて、ヘッド面をより効率よく冷却することが可能となる。また、ヘッド面の温度が上昇することを抑制するだけでなく、ヘッド温度または装置内温度が低いほど、クリーニングウエブの移動速度を小さくすることで、クリーニングウエブを無駄に消費することを防げる。
【0052】
図8には、ヘッド温度および装置内温度の両方が60℃未満である場合、クリーニングウエブの移動を停止させることが記述されている。図8に示す表の場合、ヘッド温度および装置内温度の両方が60℃未満になることがヘッド1003に対する冷却の停止条件となる。そして、60℃という温度が、ヘッド1003に対して冷却が必要か否かを判定するための基準値となっている。
【0053】
次に、本実施形態の画像形成装置1001において、ヘッド1003に対するクリーニングの制御方法を、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の画像形成装置における、ヘッドのクリーニング制御方法を示すフローチャートである。
【0054】
図9に示す制御フローは、画像形成装置1001を制御するプログラムのうち一部のルーチンとして、制御部1002によって実行されるプログラムの内容を表している。画像形成装置1001が印刷処理を行った後、制御部1002は、図9に示す手順を開始する前に、脱着部2017をヘッド1003に接近させてクリーニングウエブをヘッド1003に接触させる。また、制御部1002は、予め決められた初期速度でクリーニングウエブを移動させるように変速部2018に設定する。初期速度は、例えば、1.0mm/sである。
【0055】
制御部1002は、ヘッド温度センサ2013からヘッド温度の情報を受信し、装置内温度センサ2015から装置内温度の情報を受信すると、これらの温度がヘッドの冷却停止条件を満たしているか否かを判定する(ステップ101)。そして、制御部1002は、ヘッド温度および装置内温度がヘッドの冷却停止条件を満たしていない場合、ステップ102の処理に進み、ヘッド温度および装置内温度がヘッドの冷却停止条件を満たしている場合、ステップ104の処理に進む。
【0056】
ステップ102において、制御部1002は、図8に示した表を参照して、ヘッド温度および装置内温度で決まる設定速度を読み出し、設定速度を変速部2018に設定してクリーニングウエブを設定速度で2つの駆動ローラ間を移動させる。これにより、クリーニングウエブはヘッド1003に接触しながら設定速度で第2の駆動ローラ3002から第1の駆動ローラ3001に移動する。続いて、ステップ103において、制御部1002はタイマーイベントを発行する。ここでは、タイマーイベントの時間を100msとする。この100msの間も、ステップ102で決められた設定速度で移動するクリーニングウエブによるヘッドのクリーニングは続けられる。
【0057】
ステップ103のタイマーイベントによって、制御部1002は、100ms後にステップ101の処理に戻る。ヘッド温度および装置内温度がヘッドの冷却停止条件を満たすまで、制御部1002がステップ102の処理を行うことで、ヘッド温度および装置内温度の温度変化に対応してクリーニングウエブの移動速度が設定される。
【0058】
一方、制御部1002は、ステップ101の判定の結果、ステップ104に進むと、第1および第2の駆動ローラ3001、3002の駆動を変速部2018に停止させる。これにより、クリーニングウエブの移動が停止する。続いて、制御部1002が脱着部2017に対してヘッド1003から離す制御を行うことで、クリーニングウエブがヘッド1003と非接触状態になる(ステップ105)。
【0059】
なお、本実施形態では、タイマーイベントとして、100ms間隔のタイマーを用いる場合で説明したが、間隔は100msに限らない。
【0060】
次に、本実施形態の画像形成装置1001における、ヘッドクリーニングによる冷却効果を説明する。
【0061】
図10は、本実施形態の画像形成装置における、印刷後の装置内温度およびヘッド温度の変化を示すグラフである。図10に示すグラフの横軸は、時間であり、単位は「秒」である。図10に示すグラフの縦軸は、温度であり、単位は℃である。
【0062】
図10に示す曲線301は、画像形成装置1001の装置内温度の変化を表している。また、曲線302はヘッド温度の変化を表している。装置内温度について、図10に示す曲線301と図18に示した曲線310とを比較すると、時間経過に対する変化はほぼ同じである。曲線301および曲線310が示す装置内温度は、印刷直後の70℃以上の温度から時間経過に伴って少しずつ低くなるが、180秒経過しても60℃以上である。
【0063】
ヘッド温度について、図18と図10を比較してみる。図18に示した曲線320は、印刷後から約50秒経過するまでの間に70℃まで上昇した後、曲線310に寄り添うように変化し、180秒経過しても60℃以上である。これに対して、図10に示す曲線302は、印刷後から180秒経過するまでの間、最大でも約60℃にしか達しておらず、装置内温度の変化を示す曲線301とは全く異なっている。
【0064】
図10に示す曲線302から、ヘッドクリーニングがヘッド1003に作用する冷却効果によって、印刷後のヘッド温度の上昇が抑制されることがわかる。そのため、ヘッド面におけるインクの固着を抑制することが可能となる。
【0065】
本実施形態の画像形成装置は、印刷後、清掃用のクリーニングウエブを移動させながらヘッドに接触させ、ヘッド温度または装置内温度が高いほど、クリーニングウエブの移動速度を大きくしている。このようにクリーニングウエブの移動速度を制御することで、クリーニングウエブとヘッドとの温度差による熱伝導に応じて、ヘッドを効率よく冷却することが可能となる。そのため、印刷後の熱源の余熱によるヘッド面の温度の上昇が抑制され、ヘッド面でのインクの固着を防止できる。その結果、画像形成を安定して行うことが可能となる。
【0066】
また、ヘッド温度または装置内温度が低いほど、クリーニングウエブの移動速度が小さくなるので、クリーニングウエブを無駄に消費することを防げる。
【0067】
また、本実施形態では、ヘッド1003に対してクリーニングウエブを接触させるか否かを、2つの駆動ローラを含むクリーニング部2016を上下に移動させるのではなく、脱着部2017のみを上下に移動させることで実現している。そのため、クリーニング部全体を上下に移動可能にするための空間を装置内に確保する必要がなく、装置をコンパクトにすることができる。
【0068】
また、クリーニングウエブとして、不揮発性の潤滑剤を予め浸潤させたものを使用すれば、クリーニングウエブおよび潤滑剤がヘッド1003から熱を奪い、ヘッド1003への冷却効率が向上する。さらに、クリーニングウエブに冷却剤を吹き付けるためのユニットを画像形成装置に設ける必要がないため、画像形成装置のコストを低減することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
本実施形態の画像形成装置を、図を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同様な構成についての詳細な説明を省略する。また、本実施形態の画像形成装置の外観は、図1に示した画像形成装置1001と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0070】
図11は本実施形態の画像形成装置の一構成例を示すブロック図である。本実施形態の画像形成装置は、図2を参照して説明した画像形成装置に、ヘッド1003に接触する前のクリーニングウエブを冷却する冷却ファン501が追加された構成である。冷却ファン501は、クリーニング部2016のクリーニングウエブに外気を当て、クリーニングウエブ自体を冷却することで、ヘッド1003への冷却効率を向上させるものである。
【0071】
図11に示すように、冷却ファン501は信号線を介してCPU2002と接続されている。CPU2002がプログラムを実行することで、制御部1002が冷却ファン501のオン/オフを制御する。
【0072】
次に、本実施形態におけるクリーニング部2016の構成を詳しく説明する。図12および図13は本実施形態におけるクリーニング部の構成を説明するための図である。
【0073】
図12はクリーニングウエブに対して冷却動作を行っている場合を示し、図13はクリーニングウエブに対して冷却動作を行っていない場合を示す。図12において、図面に垂直な方向をX軸方向とし、図の左右方向をY軸方向とし、図の上下方向をZ軸方向とする。なお、これらの軸の方向は、図13から図16についても図12と同様であるものとし、その説明を省略する。
【0074】
本実施形態のクリーニング部は、図3に示した構成と比較して説明すると、クリーニングウエブ3005、第1および第2の駆動ローラ3001、3002の他に、中継ローラ3003が設けられている。図12に示すように、中継ローラ3003は、図3に示した第2の駆動ローラ3002の位置に配置されている。そして、本実施形態では、第2の駆動ローラ3002は、中継ローラ3003よりもZ軸の負の方向に配置されている。具体的には、第2の駆動ローラ3002は、ホームポジションにあるヘッド1003から離れる方向で、中継ローラ3003と一定の距離を空けた位置に配置されている。
【0075】
クリーニングウエブ3005は第2の駆動ローラ3002に予め巻きつけられており、その一端が第2の駆動ローラ3002から中継ローラ3003を経由して第1の駆動ローラ3001に取り付けられている。
【0076】
本実施形態の画像形成装置には、図12に示すように、クリーニングウエブ3005の冷却機構となる冷却ファン501が設けられている。冷却ファン501は、中継ローラ3003および第2の駆動ローラ3002の間であって、これら2つのローラにまたがるクリーニングウエブ3005よりも装置の外側に近い位置に配置されている。この位置に冷却ファン501を配置することで、冷却ファン501がY軸の正の方向(装置の外側)から導入した外気をY軸の負の方向(装置内)にあるクリーニングウエブ3005に送りやすくなる。そのため、外気とほとんど同じ温度の空気にクリーニングウエブ3005をさらすことが可能となる。
【0077】
図12は、第1および第2の駆動ローラ3001、3002および中継ローラ3003のいずれも反時計回りに回転している状態を示す。図12は、脱着部2017がZ軸の正の方向に移動し、クリーニングウエブ3005をヘッド1003に接触させている状態を示す。また、図12は、冷却ファン501の電源がオンの状態で、冷却ファン501が外気をクリーニングウエブに吹き付けている状態を表している。
【0078】
図13は、図12を参照して説明したクリーニング部において、クリーニングウエブに対して冷却動作を行っていない場合を示す図である。図13は、第1および第2の駆動ローラ3001、3002および中継ローラ3003のいずれも回転を停止している状態を示す。図13は、脱着部2017がZ軸の負の方向に移動し、クリーニングウエブ3005がヘッド1003と接触していない状態を示す。また、図13は、冷却ファン501の電源がオフの状態で、冷却ファン501のフィンの回転が停止している状態を表している。なお、後で説明するが、画像形成時に冷却ファン501の電源をオンにしていてもよい。
【0079】
本実施形態における画像形成装置では、クリーニング部を図12および図13に示すような構成にすることで、ヘッドに接触する前のクリーニングウエブを外気で冷却することができる。
【0080】
次に、本実施形態の画像形成装置が印刷時に画像形成を行う際のクリーニング部の状態を説明する。図14は本実施形態の画像形成装置の印刷時の状態を示す側面図である。ここでは、図5を参照して説明した第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0081】
画像形成時は、図14に示すように、3つの駆動ローラの回転が停止しており、脱着部2017がZ軸の負の方向に移動し、その位置を維持している。脱着部2017がZ軸の負の方向に移動しているため、中継ローラ3003および第1の駆動ローラ3001にまたがるクリーニングウエブが弛んだ状態になっている。このとき、ヘッド1003はホームポジションに位置していないが、図14を見てわかるように、たとえホームポジションの位置にあっても、クリーニングウエブと接触しない。
【0082】
図14では、図13の場合とは異なり、冷却ファン501の電源をオンの状態にしている。このように、制御部1002は、画像形成時に冷却ファン501の電源をオンにし、外気を装置内に導入してクリーニングウエブを冷却してもよい。画像形成中にクリーニングウエブに外気をあてることで、電源がオンしたヒータ1007からクリーニングウエブに伝達される熱と冷却ファン501によりクリーニングウエブから奪われる熱とが相殺され、クリーニングウエブに対する冷却効果が向上する。
【0083】
次に、本実施形態の画像形成装置が印刷を終了した直後に、ヘッド1003に対して清掃および冷却を行う方法を説明する。図15は、本実施形態の画像形成装置における、ヘッドの清掃時および冷却時の状態を示す側面図である。
【0084】
図15は、図14に示した側面図と、同じ方向から装置の側面を見た図である。図15では、ロール紙給紙ユニット1004を図に示すことを省略している。ここでは、図6を参照して説明した第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0085】
ヘッド1003の清掃および冷却を行う際、ヘッド1003がホームポジションに移動した後、脱着部2017がZ軸の正の方向に移動することで、クリーニングウエブがヘッド1003に接触している。また、第1および第2の駆動ローラ3001、3002ならびに中継ローラ3003のそれぞれが反時計回りに回転する。制御部1002は、冷却ファン501の電源をオンした状態を維持する。
【0086】
図15に示すように、第2の駆動ローラ3002から送り出されるクリーニングウエブは、冷却ファン501が装置の外から導入した空気によって冷却される。冷却後のクリーニングウエブは、中継ローラ3003を経由して、ヘッド1003と接触した後、第1の駆動ローラ3001に巻き取られる。その際、第1の実施形態と同様に、制御部1002は、装置内温度またはヘッド温度に対応して、クリーニングウエブの巻き取り速度を段階的に下げる制御を行ってもよい。
【0087】
次に、本実施形態の画像形成装置において、ヘッド1003の冷却終了後の状態を説明する。図16は、本実施形態の画像形成装置における、ヘッドの冷却後の状態を示す側面図である。
【0088】
図16は、図14および図15に示した側面図と、同じ方向から装置の側面を見た図であり、ロール紙給紙ユニット1004を図に示すことを省略している。ここでは、図7を参照して説明した第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0089】
3つの駆動ローラの回転が停止し、脱着部2017がZ軸の負の方向に移動する。そのため、図16に示すように、中継ローラ3003および第1の駆動ローラ3001にまたがるクリーニングウエブが弛んだ状態になっている。また、制御部1002が冷却ファン501の電源をオフにすることで、冷却ファン501のフィンの回転が停止する。
【0090】
次に、本実施形態の画像形成装置において、ヘッド1003に対するクリーニングの制御方法を、図17を参照して説明する。図17は、本実施形態の画像形成装置における、ヘッドのクリーニング制御方法を示すフローチャートである。
【0091】
図17に示す制御フローは、本実施形態の画像形成装置を制御するプログラムのうち一部のルーチンとして、制御部1002によって実行されるプログラムの内容を表している。本実施形態の画像形成装置が印刷処理を行った後、制御部1002は、図17に示す手順を開始する前に、脱着部2017をヘッド1003に接近させてクリーニングウエブをヘッド1003に接触させる。また、制御部1002は、予め決められた初期速度でクリーニングウエブを移動させるように変速部2018に設定する。初期速度は、例えば、1.0mm/sである。さらに、制御部1002は冷却ファン501の電源をオンにする。
【0092】
本実施形態においても、制御部1002は、第1の実施形態で説明した図8を参照し、クリーニングウエブの移動速度を装置内温度およびヘッド温度に基づいて決定する。図17に示すステップ201〜204および206のそれぞれの処理は図9に示したステップ101〜105のそれぞれと対応しており、説明の重複を避けるため、同様な処理についての詳細な説明を省略する。
【0093】
制御部1002は、受信したヘッド温度と装置内温度がヘッドの冷却停止条件を満たしているか否かを判定する(ステップ201)。そして、制御部1002は、ヘッド温度および装置内温度がヘッドの冷却停止条件を満たしていない場合、ステップ202の処理に進み、ヘッド温度および装置内温度がヘッドの冷却停止条件を満たしている場合、ステップ204の処理に進む。
【0094】
ステップ202において、制御部1002は、冷却ファン501の電源をオンにした状態を維持し、図8に示した表を参照して、ヘッド温度および装置内温度で決まる設定速度を読み出し、設定速度を変速部2018に設定する。続いて、ステップ203において、制御部1002はタイマーイベントを発行する。ここでは、タイマーイベントの時間を100msとするが、第1の実施形態と同様に、その時間は100ms以外であってもよい。制御部1002は、タイマーイベントを発行してから100ms後にステップ101の処理に戻る。
【0095】
一方、制御部1002は、ステップ201の判定の結果、ステップ204に進むと、変速部2018を制御して、第1および第2の駆動ローラ3001、3002ならびに中継ローラ3003の駆動を停止させる。これにより、クリーニングウエブの移動が停止する。続いて、制御部1002は、冷却ファン501の電源をオフにする(ステップ205)。さらに、制御部1002が脱着部2017に対してヘッド1003から離す制御を行うことで、クリーニングウエブがヘッド1003と非接触状態になる(ステップ206)。
【0096】
本実施形態の画像形成装置における、ヘッドクリーニングによる冷却効果は、図10を参照して説明した結果と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0097】
本実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態と同様に、クリーニングウエブを用いた冷却作用によって、印刷後のヘッド面の温度上昇が抑制され、ヘッド面におけるインクの固着を抑制することができる。また、本実施形態の画像形成装置は、ヘッドに接触する前のクリーニングウエブを冷却する冷却ファンを有しているため、ヘッドの冷却効率を向上させる効果がある。
【0098】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、クリーニングウエブとして、不揮発性の潤滑剤を予め浸潤させたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1001 画像形成装置
1002 制御部
2013 ヘッド温度センサ
2015 装置内温度センサ
2016 クリーニング部
2017 脱着部
2018 変速部
501 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録媒体に画像を記録するヘッドと、
前記ヘッドの温度を測定するヘッド温度センサと、
装置内温度を測定する装置内温度センサと、
前記ヘッドを清掃するためのクリーニングウエブを移動させるクリーニング部と、
前記クリーニングウエブの移動速度を変更可能な変速部と、
前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させるか否かを切り替える脱着部と、
前記ヘッドによる記録動作が終了した後、前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させるために前記脱着部を制御し、前記ヘッドの温度または前記装置内温度が高いほど前記クリーニングウエブの移動速度が大きくなるように前記変速部を制御する制御部と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ヘッドの温度および前記装置内温度が予め設定された基準値よりも小さい場合、前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させないように前記脱着部を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニング部は、
前記クリーニングウエブを巻き取る第1の駆動ローラと、
予め巻きつけられた前記クリーニングウエブを前記第1の駆動ローラに送り出す第2の駆動ローラと、を有し、
前記脱着部は、前記記録動作を終了して待機位置に移動した後の前記ヘッドと、前記第1および前記第2の駆動ローラにまたがる前記クリーニングウエブを介して、対向する位置に配置されている請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヘッドに接触する前の前記クリーニングウエブを冷却する冷却ファンをさらに有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニングウエブに予め不揮発性の潤滑剤が浸潤されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
インクを吐出して記録媒体に画像を記録するヘッドと、該ヘッドの温度を測定するヘッド温度センサと、装置内温度を測定する装置内温度センサと、クリーニングウエブを移動させるクリーニング部と、を有する画像形成装置によるヘッドクリーニング方法であって、
前記ヘッドによる記録動作が終了した後、前記クリーニングウエブを前記ヘッドに接触させ、
前記ヘッド温度センサから前記ヘッドの温度の情報を受信し、前記装置内温度センサから前記装置内温度の情報を受信すると、該ヘッドの温度または該装置内温度が高いほど前記クリーニングウエブの移動速度を大きくする、ヘッドクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−6306(P2013−6306A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139368(P2011−139368)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】