説明

画像形成装置および感光体ユニット

【課題】近接帯電方式で画像の品質を維持しつつ、感光体の摩耗を抑制することのできる、画像形成装置および感光体ユニットを提供する。
【解決手段】画像形成装置は、その表面にトナー像が形成される像担持体と、像担持体の表面を帯電させる帯電部とを含む。帯電部は、バイアス電位を発生する電位発生部と、互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラと、トナー像により形成される画像についての要求される印字品質に基づいて、複数の帯電ローラから、バイアス電位を像担持体に印加するために用いる帯電ローラを選択する選択手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ローラにより感光体の表面を帯電させる電子写真式の画像形成装置および感光体ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置では、像担持体に所定の電位に帯電した状態で再現すべき画像を表現するように露光することにより、静電潜像が形成される。この静電潜像をトナー像として現像し、紙媒体などに転写することでプリントが実現される。
【0003】
このような像担持体を帯電する手段としては、各種の方法がある。この一例として、接触式および非接触式が知られている。接触式は、所定の電位を印加した帯電部材を像担持体の表面に接触させて、その表面を帯電する方法であり、一方、非接触式は、像担持体から所定距離だけ離した放電部材からのコロナ放電を利用して、その表面を帯電する方法である。接触式は、コロナ放電を利用する非接触式に比較して、電源を低電圧化することができ、また、発生するオゾン量を低減できるといったメリットを有する。
【0004】
このような接触式の帯電手段は、バイアス電位として直流電圧のみを帯電部材に印加した状態で像担持体を帯電させる「DC帯電方式」と、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧をバイアス電位として帯電部材に印加した状態で像担持体を帯電させる「AC帯電方式」とが存在する。いずれの方式においても、帯電部材を通じたバイアス電位の印加により、像担持体の表面が所定極性を有する所定電位まで帯電されることになる。
【0005】
「DC帯電方式」は、「AC帯電方式」に比較して帯電均一性については劣るが、像担持体(感光体)の膜厚減耗量を小さくできる、オゾン発生量を少なくできる、帯電音(帯電部材と感光体の接触部との双方が振動することで発生するノイズ)の発生を小さくできる、および、エネルギーの消費量を低減できるといった特徴を有する。これに対して、「AC帯電方式」は、「DC帯電方式」に比較して帯電均一性については優れているが、像担持体(感光体)の膜厚減耗量が相対的に大きい、オゾン発生量が相対的に多い、帯電音の発生が相対的に多い、および、エネルギーの消費量が相対的に多いといった特徴を有する。
【0006】
このような特性の相違から、帯電均一性を良好にしつつ、感光体の膜厚減耗量を抑制する手段として、中間調再現が必要な多値の画像信号の場合には、AC帯電方式を適用し、中間調のない2値の画像信号の場合は膜厚減耗量の少ないDC帯電方式に切替える方式が提案されている。
【0007】
たとえば、特開平09−062060号公報(特許文献1)には、画像信号の種類に応じて、帯電ローラに印加する帯電バイアス条件を変更することで、帯電均一性と感光体の寿命の延長とを図ることを目的とする方法が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の発明では、多値のデジタル画像信号が入力された場合には、帯電バイアスを(直流+交流)重畳とすることで感光ドラム表面の帯電均一性を高め、2値のデジタル画像信号が入力された場合には、帯電バイアスを直流のみか重畳する交流成分の電流を小さくするかして交流成分による感光ドラムへのダメージを低減する。
【0008】
また、特開平11−174785号公報(特許文献2)には、像担持体表面に電圧を印加した帯電部材を接触して、像担持体表面を帯電する接触帯電方式の画像形成装置において、像担持体表面の削れを防止するとともに、像担持体表面を帯電むらなく帯電して、長期にわたって良好な画像を安定して得ることを目的とする方法が開示されている。具体的には、特許文献2に記載の発明では、写真モードを選択した場合、中間濃度部の割合が大と検知し、均一な中間濃度画像を得られるように、帯電ローラによる感光ドラムの帯電にAC帯電方式を適用し、文字モードを選択した場合、中間濃度部の割合が小と検知し、感光ドラム表面の削れ量を抑制するように、DC帯電方式に切替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−062060号公報
【特許文献2】特開平11−174785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1および2に開示されるような、AC帯電方式とDC帯電方式とを組み合わせた方式を採用するとしても、部分的には、AC帯電方式を適用する以上、帯電音の対策が必要である。そのため、コストアップをともなう上に、感光体の膜厚減耗量の増加とオゾン発生量の増加という問題を避けることはできない。
【0011】
そこで、本願発明の目的は、近接帯電方式で、AC帯電方式およびDC帯電方式にかかわらず、画像の品質を維持しつつ、感光体の摩耗を抑制することのできる、画像形成装置および感光体ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある局面に従う電子写真式の画像形成装置は、その表面にトナー像が形成される像担持体と、像担持体の表面を帯電させる帯電部とを含む。帯電部は、バイアス電位を発生する電位発生部と、互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラと、トナー像により形成される画像について要求される印字品質に基づいて、複数の帯電ローラから、担持体を帯電するために用いる帯電ローラを選択する選択手段とを含む。
【0013】
好ましくは、選択手段は、要求される印字品質がより高いほど、より大きいローラ径の帯電ローラを選択する。
【0014】
好ましくは、選択手段は、再現すべき画像を示す画像信号の種類に基づいて、要求される印字品質を判断する。
【0015】
さらに好ましくは、画像信号は、その種類として、2値信号および多値信号を含み、選択手段は、多値信号の画像信号が与えられると、より大きいローラ径の帯電ローラを選択する。
【0016】
好ましくは、選択手段は、ユーザによって選択される画像再現モードに基づいて、要求される印字品質を判断する。
【0017】
さらに好ましくは、画像再現モードは、文字モードと、文字/写真モードと、写真モードとを含む。
【0018】
さらに好ましくは、画像再現モードは、通常解像度モードと、高解像度モードとを含む。
【0019】
好ましくは、電位発生部は、バイアス電位として、直流の所定電圧を発生する。
好ましくは、帯電部は、複数の帯電ローラを像担持体に接触させて配置し、選択手段は、複数の帯電ローラに印加するバイアス電位を切り替えることにより帯電ローラを選択する。
【0020】
好ましくは、選択手段は、複数の帯電ローラを選択的に像担持体に接触させることにより像担持体を帯電させる。
【0021】
この発明の別の局面に従う電子写真式の画像形成装置に装着される感光体ユニットは、その表面にトナー像が形成される像担持体と、像担持体の表面を帯電させる帯電部とを含む。帯電部は、バイアス電位を発生する電位発生部と、互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラと、画像形成装置からの指令に応答して、複数の帯電ローラから、像担持体を帯電するために用いる帯電ローラを選択する選択手段とを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、近接帯電方式において、画像の品質を維持しつつ、感光体の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に従う画像形成装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う画像形成装置の作像部の構成を示す模式図である。
【図3】帯電ローラのローラ径の相違による感光体の表層破壊の度合いについての評価結果を示す図である。
【図4】帯電ローラのローラ径の相違による感光体表面に生じる微小電位ムラについての評価結果を示す図である。
【図5】感光体の帯電状態を二次元的に表した評価結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に従う画像形成装置における帯電ローラの選択処理(その1)を示すフローチャートである。
【図7】入力信号と出力信号との関係を画像再現モードの別に示した図である。
【図8】本発明の実施の形態に従う画像形成装置における帯電ローラの選択処理(その2)を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に従う画像形成装置における帯電ローラの選択処理(その3)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0025】
<A.概要>
本願発明者は、近接帯電方式において、帯電ローラのローラ径の大きさに依存して、像担持体(感光体)の表層破壊の生じ方が変化し、かつ、帯電均一性も変化することを見出した。より具体的には、ローラ径がより小さな帯電ローラを用いて像担持体を帯電させた場合には、ローラ径がより大きな帯電ローラを用いた場合に比較して、帯電均一性は劣るが、感光体表面にある表層が破壊されにくく、表面の膜の削れ量が相対的に小さいということを見出した。この現象は、AC帯電方式よりDC帯電方式において特に表れるものである。
【0026】
そこで、本実施の形態に従う画像形成装置においては、互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラを用意するとともに、要求される印字品質に基づいて、当該複数の帯電ローラから、バイアス電位を像担持体に印加するために用いる帯電ローラを選択する。典型的には、中間調を再現する必要がある場合には、ローラ径がより大きな帯電ローラを用いて帯電することで帯電均一性を高め、一方で、中間調を再現する必要のない場合(典型的には、2値化画像)には、ローラ径がより小さな帯電ローラを用いて帯電して感光体へのダメージを低減する。
【0027】
このようなローラ径の異なる複数の帯電ローラを適切に切替えて使用することで、画像品質の維持と感光体ユニットの長寿命化とを両立させる。
【0028】
<B.全体構成>
本実施の形態に従う画像形成装置の全体構成について例示する。本発明は、電子写真方式の画像形成装置であればどのようなタイプのものであっても適用可能であるが、以下では、複写機能やプリンタ機能などを搭載した複合機(Multi Function Peripheral)に適用した例を示す。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置1の全体構成を示す模式図である。図1を参照して画像形成装置1は、システムコントローラ10と、入力インターフェイス(I/F)18と、ネットワークインターフェイス(I/F)20と、スキャナ部22と、画像処理部24と、プリントエンジン30と、給紙部80とを含む。
【0030】
システムコントローラ10は、画像形成装置1の全体処理を制御する統括コントローラである。システムコントローラ10は、主たる構成要素として、CPU12と、RAM14と、ROM16とを含む。
【0031】
CPU12は、ROM16に予め格納されているプログラムを読み出してタイミングをはかりながら各動作を統一的に制御し、例えば、プリントエンジン30における印字ジョブの開始を通知するといった処理を実行させる。RAM14は、揮発性のメモリであって、CPU12におけるプログラム実行時のワークエリアとして用いられる。
【0032】
入力インターフェイス18は、典型的には、各種のキーやタッチパネルといったユーザの操作を受付けて、その内容をシステムコントローラ10へ送る。
【0033】
ネットワークインターフェイス20は、ネットワークを通じて図示しないパーソナルコンピュータなどと電気的に接続する。そして、ネットワークインターフェイス20は、パーソナルコンピュータなどから送信された印字ジョブなどを受信するとともに、当該受信した印字ジョブをシステムコントローラ10へ送る。
【0034】
スキャナ部22は、典型的には、原稿をセットするための戴荷台と、原稿台ガラスと、戴荷台にセットされた原稿を原稿台ガラスに自動的に1枚ずつ搬送する搬送部と、読取られた原稿を排出するための排出台とを含む。スキャナ部22は、原稿を照射する露光ランプ、原稿からの反射光の向きを変える反射ミラー、反射ミラーからの光路を変えるミラー、反射光を集光するレンズ、および、受光した反射光に応じて電気信号を発生する3列のCCD(Charge Coupled Device)などの光電変換素子を含むスキャナを含み、このスキャナが原稿台ガラスに置載された原稿から画像情報を読取る。この読取られた画像情報は、バス26を通じて、システムコントローラ10へ送られる。
【0035】
画像処理部24は、ネットワークインターフェイス20を介して受信した印字ジョブ、または、スキャナ部22によって原稿から読取られた画像情報に対して、プリント処理に必要な画像処理を実行する。この画像処理としては、ノイズ除去、色調補正、ディザ処理などが含まれる。この画像処理部24での画像処理の実行の結果得られた画像データがプリントエンジン30へ供給される。
【0036】
プリントエンジン30は、物理的に画像形成処理を実行する主体であり、主要な構成要素として、感光体ユニット40と、現像ユニット50と、定着器ユニット60と、搬送機構70とを含む。
【0037】
感光体ユニット40は、後述するように、その表面にトナー像が形成される像担持体である感光体と、像担持体の表面を帯電させる帯電部とを含む。この感光体を帯電した状態で、再現すべき画像に応じて露光することで、感光体の表面には静電潜像が形成される。そして、静電潜像は、現像ユニット50によりトナー像として現像される。定着器ユニット60は、現像されたトナー像が紙媒体などに転写された後、加熱および加圧することで、紙媒体上にトナー像を定着させる。搬送機構70は、トナー像の形成タイミングに合わせて、給紙部80に装填されている紙媒体を搬送する。
【0038】
給紙部80は、トナー像が転写される紙媒体を保持する。典型的には、給紙部80は、用紙サイズ別に画像形成装置1に装着される用紙トレイ、および、当該用紙トレイから紙媒体を取り出す搬送ローラなどからなる。
【0039】
なお、一般的には、感光体ユニット40、現像ユニット50、および、定着器ユニット60は、消耗品であり、画像形成装置1におけるプリント回数として規定される寿命を有している。そのため、各々の寿命に到達して、その機能を十分に果たすことができなくなった場合には、各ユニットの単位で交換可能となっている。なお、交換単位は、図1に示す単位に限られず、感光体ユニット40と現像ユニット50とを一体のユニットとして構成することも可能である。
【0040】
また、図1には、感光体ユニット40および現像ユニット50が各々1個搭載される例を示すが、たとえば、カラータンデム方式の画像形成装置などでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色のトナー像がそれぞれ形成される。そのため、感光体ユニット40および現像ユニット50のセットがトナー像を構成する必要のある色の数だけ必要となる。本発明は、このような構成をも含むことは言うまでもない。
【0041】
<C.作像部>
次に、図1に示す感光体ユニット40および現像ユニット50からなる作像部の構成について説明する。
【0042】
図2は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置1の作像部の構成を示す模式図である。図2を参照して、感光体ユニット40は、中心的な構成要素として、その表面にトナー像が形成される像担持体である感光体42を含む。感光体42は、円筒状の部材であり、矢印方向に回転駆動するように構成されている。この感光体42の回転方向に沿って、クリーニングブレード43と、イレース装置44と、帯電部48と、露光装置45と、転写ローラ49とが配置されている。
【0043】
クリーニングブレード43は、転写ローラ49によって紙媒体または2次転写ベルトなどへ転写された後の感光体42の表面に残留するトナーを除去する。イレース装置44は、前回のトナー像(静電潜像)の形成によって残った感光体42表面の残留電荷を除去する。
【0044】
帯電部48は、トナー像(静電潜像)を形成するために、像担持体である感光体42の表面を帯電させる。帯電部48は、図2に示すように、帯電ローラを感光体42に接触させて帯電させる近接帯電方式を採用する。特に、本実施の形態においては、帯電部48は、バイアス電位を発生する電位発生部47と、互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラ46_1,46_2とを含む。本実施の形態に従う画像形成装置においては、複数の帯電ローラのうち1つを像担持体(感光体42)に作用させて、近接帯電により像担持体を帯電させる。
【0045】
なお、図2においては、ローラ径の異なる2個の帯電ローラを用いる構成について例示するが、より多くの帯電ローラを配置してもよい。これらの帯電ローラ46_1,46_2を用いた帯電方法については、後述する。
【0046】
露光装置45は、帯電部48によってその表面が所定極性および所定電位まで帯電された感光体42を、再現すべき画像を示すように露光する。その後、感光体42の表面には、現像ユニット50の現像ローラ52と接触することで、感光体42の露光された部分にトナー像が形成(現像)される。この現像されたトナー像は、転写ローラ49によって紙媒体または2次転写ベルトなどへ転写される。以上のような手順により、1回の画像形成処理が完了する。
【0047】
図2に示す例においては、2個の帯電ローラ46_1,46_2がいずれも感光体42に常時接触している構成を示す。帯電部48では、電位発生部47が発生するバイアス電位を印加する帯電ローラをスイッチで切替える。すなわち、スイッチが帯電ローラ46_1と電位発生部47とを電気的に接続している場合には、帯電ローラ46_1を用いて感光体42が帯電される。一方、スイッチが帯電ローラ46_2と電位発生部47とを電気的に接続している場合には、帯電ローラ46_2を用いて感光体42が帯電される。このように、帯電部48は、バイアス電位を像担持体である感光体42に印加するために用いる帯電ローラを選択する選択手段を有する。
【0048】
なお、この帯電ローラを選択する選択手段としては、図2に示す構成以外の構成を採用することもできる。たとえば、複数の帯電ローラをそれぞれ感光体42に対し接触・離隔可能に支持し、1つを選択的に感光体42に接触させるような機構を採用することで、感光体42から見れば1つの帯電ローラのみが接触していることになる。また、帯電ローラをバイアス電位の印加時(帯電動作時)のみ感光体42と接触させるように構成してもよい。
【0049】
なお、本実施の形態に従う画像形成装置は「DC帯電方式」に適した構成を採用する。すなわち、電位発生部47は、バイアス電位として、直流の所定電圧を発生する。但し、本実施の形態に従う画像形成装置は、「AC帯電方式」、または「AC帯電方式」と「DC帯電方式」とのハイブリッド方式のいずれにも適用することができる。
【0050】
特に、本実施の形態に従う画像形成装置1においては、トナー像により形成される画像についての要求される印字品質に基づいて、帯電ローラ46_1および46_2から、バイアス電位を感光体42に印加するために用いる帯電ローラが選択される。より具体的には、要求される印字品質がより高いほど、より大きいローラ径の帯電ローラが選択される。
【0051】
本実施の形態に従う画像形成装置1においては、感光体42の帯電に用いる帯電ローラのローラ径を異ならせることで、画像品質の維持と感光体ユニットの長寿命化とを両立させる。このような両立が実現できる理由として、以下、本願発明者が得た知見について説明する。
【0052】
<D.帯電ローラについてのローラ径依存性の評価結果>
(d1:感光体の膜厚減耗量)
一般的に、ローラ帯電方式は、コロナ放電帯電方式に比較して、感光体の膜厚減耗量が多い傾向がある。この理由としては、ローラ帯電方式は近接放電であるため、放電電子の運動エネルギーが相対的に高く、感光体の表層破壊により感光体表面に酸素官能基が生成されやすいためと考えられる。
【0053】
そこで、まず、本願発明者は、帯電ローラのローラ径の相違による、感光体の表層破壊の度合いについて評価した。
【0054】
図3は、帯電ローラのローラ径の相違による感光体の表層破壊の度合いについての評価結果を示す図である。図3に示す評価結果は、ローラ径の異なる3種類の帯電ローラを用意するとともに、各帯電ローラについて、バイアス電位を一定として帯電と除電とを一定回数繰返した後に、感光体表面の表面の粗さを評価したものである。この感光体表面の表面の粗さを評価方法として、純水を接触させ、その表面張力によって生じる角度を測定する、純水接触角測定法を採用した。図3には、各ローラ径の大きさ(mm)と、測定された純水接触角(°)との関係を示す。なお、純水接触角が大きいほど、表面が滑らか、すなわち、感光体の表層破壊の程度が小さいことを示す。言い換えれば、感光体の表層破壊が大きいほど膜厚減耗量が大きくなるが、この度合いは、感光体上の純粋接触角を測定することで評価できる。
【0055】
図3に示すように、ローラ径が小さくなるほど純水接触角の低下が小さく、感光体の表層破壊の度合いが小さいことがわかる。
【0056】
(d2:帯電均一性)
次に、本願発明者は、帯電ローラのローラ径の相違による、感光体の帯電均一性について評価した。
【0057】
一般に、感光体上を均一に帯電しても、微小エリア内では電位のムラが存在し、画像の均一性、特に中間調再現に影響を与える。なお、ここでいう微小エリア内の電位ムラとは、表面電位計では検出できないレベルの電位ムラを意味する。
【0058】
上述したように、厳密に観測すれば、感光体表面を同じ電位で均一に帯電しても、その表面には微小な帯電ムラが存在する。そこで、帯電ローラを用いて感光体を帯電(近接放電)した場合の微小帯電分布をコロナ放電と比較した時の帯電結果を可視化した例を図4および図5に示す。
【0059】
図4は、帯電ローラのローラ径の相違による感光体表面に生じる微小電位ムラについての評価結果を示す図である。図5は、感光体の帯電状態を二次元的に表した評価結果を示す図である。
【0060】
図4に示す評価結果は、バイアス電位を共通として、ローラ径の異なる3種類の帯電ローラでそれぞれ感光体を帯電させた場合に生じた微小電位ムラの大きさを、コロナ放電で感光体を帯電させた場合に生じた微小電位ムラの大きさと比較したものである。図4を参照して、全般的に見て、コロナ放電を用いた場合に比較して、帯電ローラを用いた場合には、感光体に生じる微小電位ムラが大きいことがわかる。この場合であっても、帯電ローラのローラ径が大きくなるほど、微小電位ムラは小さくなり、感光体表面の帯電均一性が向上していることがわかる。
【0061】
図5に示す評価結果は、(a)コロナ放電、(b)大径のローラ径を有する帯電ローラ、(c)中径のローラ径を有する帯電ローラ、(d)小径のローラ径を有する帯電ローラのそれぞれを用いて感光体を帯電した各場合について、感光体の長手軸方向に沿ったある幅状の部分における電位分布を示す。
【0062】
図5(a)に示すように、コロナ放電を用いて感光体を帯電した場合には、感光体の長手軸方向微小エリア内における電位ムラが相対的に小さいことがわかる。また、図5(b)〜図5(d)を比較するとわかるように、帯電ローラのローラ径が大きくなるほど、感光体の長手軸方向微小エリア内における電位ムラ(微小電位ムラ)が相対的に小さくなっていることがわかる。
【0063】
(d3:まとめ)
上述の評価結果をまとめると、よりローラ径が大きな帯電ローラを採用することで、帯電均一性を高めて画像品質を高めることができるが、感光体の膜厚減耗量が相対的に大きくなる傾向がある。これに対して、よりローラ径が小さな帯電ローラを採用することで、感光体の膜厚減耗量を小さくできるが、帯電均一性が低下する傾向がある。
【0064】
したがって、要求される印字品質に応じて、ローラ径の異なる複数の帯電ローラを適切に切替えて使用することで、画像品質の維持と感光体ユニットの長寿命化とを両立させることができる。すなわち、要求される印字品質が相対的に低い場合には、感光体の長寿命化という観点を重視して、よりローラ径が小さな帯電ローラを用いて感光体を帯電する。これに対して、要求される印字品質が相対的に高い場合には、感光体の帯電均一性の向上という観点を重視して、よりローラ径が大きな帯電ローラを用いて感光体を帯電する。
【0065】
<E.処理手順>
上述したように、本実施の形態に従う画像形成装置1は、トナー像により形成される画像についての要求される印字品質に基づいて、ローラ径の異なる複数の帯電ローラから感光体の帯電に用いる帯電ローラを選択する。
【0066】
この要求される印字品質を判断する方法は、様々な手法を採用することができるが、本実施の形態においては、(1)再現すべき画像を示す画像信号の種類を判定する方法、および、(2)ユーザによって選択される画像再現モードを判定する方法、について説明する。
【0067】
(e1:画像信号の種類から判定する処理)
まず、再現すべき画像を示す画像信号の種類に基づいて、要求される印字品質を判断する方法について説明する。より具体的には、システムコントローラ10は、外部のパーソナルコンピュータから入力された画像信号、または、スキャナ部22によって原稿から読取られた画像信号が、2値信号であるか、あるいは、多値信号(中間階調)であるかを判断する。たとえば、文章のみを含む原稿からは、2値化した画像信号(黒または白)が生成される。これに対して、写真を含む原稿からは、多値化された画像信号(ハーフトーン)が生成される。
【0068】
すなわち、多値の画像信号が入力された場合には、2値の画像信号が入力された場合に比較して、要求される印字品質が高いと判断する。そして、より大きなローラ径を有する帯電ローラを用いて、感光体を帯電する。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置1における帯電ローラの選択処理(その1)を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートでは、ローラ径の異なる2個の帯電ローラを用いる構成に適用される例を示すが、より多くの帯電ローラを用いてもよい。なお、図6に示す各ステップは、基本的には、システムコントローラ10(図1)によって実行される。
【0070】
図6を参照して、システムコントローラ10は、画像信号を入力待ちする(ステップS100)。画像信号が入力されると(ステップS100においてYES)、システムコントローラ10は、入力された画像信号の種類について判断する(ステップS102)。
【0071】
入力された画像信号が多値信号である場合(ステップS102において「多値信号」)には、システムコントローラ10は、ローラ径がより大きな帯電ローラを選択する(ステップS104)。これに対して、入力された画像信号が2値信号である場合(ステップS102において「2値信号」)には、システムコントローラ10は、ローラ径がより小さな帯電ローラを選択する(ステップS106)。
【0072】
その後、システムコントローラ10は、感光体42などの帯電を含む画像形成処理を実行する(ステップS108)。そして、処理は終了する。
【0073】
(e2:ユーザによって選択される画像再現モードから判定する処理(画質モード))
次に、ユーザによって選択される画像再現モードに基づいて、要求される印字品質を判断する方法について説明する。より具体的には、画像形成装置1は、原稿の読込設定などにおいて、画像再現モードとして、「文字モード」、「文字/写真モード」、「写真モード」を有する。典型的には、これらの3つのモードは、タッチパネル上に選択可能に表示される。そして、ユーザがコピーの対象とする原稿に応じて、いずれかのモードを選択する。
【0074】
ここで、これらのモードにおける入力信号と出力信号との関係について説明する。
図7は、入力信号と出力信号との関係を画像再現モードの別に示した図である。すなわち、図7(a)には文字モードを示し、図7(b)には文字/写真モードを示し、図7(c)には写真モードを示す。図7(a)に示す文字モードでは、実質的に、出力信号として2値化された画像信号が出力されるような特性が採用される。一方、図7(c)に示す写真モードでは、入力された信号の階調値の関係が維持されたまま出力信号が生成される。また、図7(b)に示す文字/写真モードでは、入力信号のうち、白側および黒側については2値化するとともに、中間階調についてはその関係が維持されるように、出力信号が生成される。
【0075】
そこで、写真モードが選択された場合には、要求される印字品質が高いと判断する。そして、最も大きなローラ径を有する帯電ローラを用いて感光体を帯電する。これに対して、文字モードが選択された場合には、要求される印字品質が低いと判断する。そして、最も小さなローラ径を有する帯電ローラを用いて感光体を帯電する。なお、文字/写真モードが選択された場合には、文字モードの場合に選択されるローラ径と写真モードの場合に選択されるローラ径との間のローラ径を有する帯電ローラを用いて感光体を帯電する。
【0076】
図8は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置1における帯電ローラの選択処理(その2)を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートでは、ローラ径の異なる3個の帯電ローラを用いる構成に適用される例を示すが、より多くの帯電ローラを用いてもよい。なお、図8に示す各ステップは、基本的には、システムコントローラ10(図1)によって実行される。
【0077】
図8を参照して、システムコントローラ10は、ユーザによる画像再現モードを選択待ちする(ステップS200)。画像再現モードが選択されると(ステップS200においてYES)、システムコントローラ10は、選択された画像再現モードについて判断する(ステップS202)。
【0078】
選択された画像再現モードが写真モードである場合(ステップS202において「写真モード」)には、システムコントローラ10は、ローラ径が最も大きな帯電ローラを選択する(ステップS204)。また、選択された画像再現モードが文字モードである場合(ステップS202において「文字モード」)には、システムコントローラ10は、ローラ径が最も小さな帯電ローラを選択する(ステップS206)。また、また、選択された画像再現モードが文字/写真モードである場合(ステップS202において「文字/写真モード」)には、システムコントローラ10は、文字モードの場合に選択されるローラ径と写真モードの場合に選択されるローラ径との間のローラ径を有する帯電ローラを選択する(ステップS208)。
【0079】
その後、システムコントローラ10は、感光体42などの帯電を含む画像形成処理を実行する(ステップS210)。そして、処理は終了する。
【0080】
(e3:ユーザによって選択される画像再現モードから判定する処理(解像度))
上述した画像再現モードとしては、解像度を選択することも可能である。より具体的には、画像形成装置1は、原稿の読込設定などにおいて、画像再現モードとして、「高画質モード」および「普通画質モード」を有する。典型的には、これらの2つのモードは、タッチパネル上に選択可能に表示される。そして、ユーザがコピーの対象とする原稿に応じて、いずれかのモードを選択する。一例として、「高画質モード」では1200[dpi]で印字され、「普通画質モード」では600[dpi]で印字されるとする。
【0081】
すなわち、「高画質モード」が選択された場合には、「普通画質モード」が選択された場合に比較して、要求される印字品質が高いと判断する。そして、より大きなローラ径を有する帯電ローラを用いて、感光体を帯電する。
【0082】
図9は、本発明の実施の形態に従う画像形成装置1における帯電ローラの選択処理(その3)を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートでは、ローラ径の異なる2個の帯電ローラを用いる構成に適用される例を示すが、より多くの帯電ローラを用いてもよい。なお、図9に示す各ステップは、基本的には、システムコントローラ10(図1)によって実行される。
【0083】
図9を参照して、システムコントローラ10は、ユーザによる画像再現モードを選択待ちする(ステップS300)。画像再現モードが選択されると(ステップS300においてYES)、システムコントローラ10は、選択された画像再現モードについて判断する(ステップS302)。
【0084】
選択された画像再現モードが「高画質モード」である場合(ステップS302において「高画質モード」)には、システムコントローラ10は、ローラ径がより大きな帯電ローラを選択する(ステップS304)。これに対して、選択された画像再現モードが「普通画質モード」である場合(ステップS302において「普通画質モード」)には、システムコントローラ10は、ローラ径がより小さな帯電ローラを選択する(ステップS306)。
【0085】
その後、システムコントローラ10は、感光体42などの帯電を含む画像形成処理を実行する(ステップS308)。そして、処理は終了する。
【0086】
(e4:その他)
なお、上述のe1〜e3として記載した判断ロジックのうち任意のものを適宜組み合わせて実現することもできる。
【0087】
<F.作用効果>
要求される印字品質に応じて、感光体を帯電させるために使用する帯電ローラのローラ径を適切に変更することで、要求された画像品質を満足するとともに、感光体の摩耗を抑制できるため、近接帯電方式における感光体ユニットの長寿命化を図ることもできる。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 画像形成装置、10 システムコントローラ、12 CPU、14 RAM、16 ROM、18 入力インターフェイス、20 ネットワークインターフェイス、22 スキャナ部、24 画像処理部、26 バス、30 プリントエンジン、40 感光体ユニット、42 感光体、43 クリーニングブレード、44 イレース装置、45 露光装置、46 帯電ローラ、47 電位発生部、48 帯電部、49 転写ローラ、50 現像ユニット、52 現像ローラ、60 定着器ユニット、70 搬送機構、80 給紙部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真式の画像形成装置であって、
その表面にトナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電部とを備え、
前記帯電部は、
バイアス電位を発生する電位発生部と、
互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラと、
前記トナー像により形成される画像について要求される印字品質に基づいて、前記複数の帯電ローラから、前記像担持体を帯電するために用いる帯電ローラを選択する選択手段とを含む、画像形成装置。
【請求項2】
前記選択手段は、要求される印字品質がより高いほど、より大きいローラ径の帯電ローラを選択する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記選択手段は、再現すべき画像を示す画像信号の種類に基づいて、要求される印字品質を判断する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像信号は、その種類として、2値信号および多値信号を含み、
前記選択手段は、多値信号の前記画像信号が与えられると、より大きいローラ径の帯電ローラを選択する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記選択手段は、ユーザによって選択される画像再現モードに基づいて、要求される印字品質を判断する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像再現モードは、文字モードと、文字/写真モードと、写真モードとを含む、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像再現モードは、通常解像度モードと、高解像度モードとを含む、請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電位発生部は、前記バイアス電位として、直流の所定電圧を発生する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記帯電部は、前記複数の帯電ローラを前記像担持体に接触させて配置し、
前記選択手段は、前記複数の帯電ローラに印加する前記バイアス電位を切り替えることにより帯電ローラを選択する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記選択手段は、前記複数の帯電ローラを選択的に前記像担持体に接触させることにより前記像担持体を帯電させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
電子写真式の画像形成装置に装着される感光体ユニットであって、
その表面にトナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電部とを備え、
前記帯電部は、
バイアス電位を発生する電位発生部と、
互いに異なるローラ径を有する複数の帯電ローラと、
前記画像形成装置からの指令に応答して、前記複数の帯電ローラから、前記前記像担持体を帯電するために用いる帯電ローラを選択する選択手段とを含む、感光体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−113039(P2012−113039A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259996(P2010−259996)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】