説明

画像形成装置の用紙搬送装置

【課題】電磁クラッチの動作や用紙の種類や品質より生じる誤差を算出し、補正することで、正確に用紙を搬送できる画像形成装置の用紙搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送される用紙Pに画像を形成する画像形成装置の用紙搬送装置は、用紙を搬送する搬送ローラー203と、搬送ローラー203への駆動伝達をオン−オフする電磁クラッチ202と、搬送ローラーに対し搬送下流側に配置し、搬送される用紙を検知する用紙検知センサー201と、駆動伝達切替手段をオンして用紙搬送を開始し、用紙Pが用紙検知センサー201を通過中に電磁クラッチ202をオフ−オンし、電磁クラッチ202のオフ時間と用紙検知センサー201の検知時間とに基づいて搬送誤差を算出し、前記搬送ローラー203の動作を調整することで誤差を補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター及びファクシミリ等の画像形成装置の用紙搬送装置に関し、特に搬送する用紙へのダメージを軽減し、あるいは紙詰まりを防止する画像形成装置の用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンター及びファクシミリ等の画像形成装置の用紙搬送装置は、用紙を一枚ずつ内部に取り込んで画像を複写する際、所定位置へ定期的に搬送する必要がある。この場合、用紙の先端と複写する画像の先端とを合わせるため、用紙を搬送するために使用する搬送ローラーの手前で、一度用紙を停止させ搬送するタイミングを合わせる。従来、この搬送ローラーを駆動するために電磁クラッチが多く使用されている。
【0003】
このように画像形成装置の用紙搬送装置において、電磁クラッチをオン−オフして動作することにより用紙の搬送、停止及び再搬送が行われてきた。この場合、電磁クラッチのオン−オフのよる動作や負荷トルクの変動に伴って用紙搬送距離の誤差が生じる。この誤差を補正するため電磁クラッチのオン−オフ動作から生じる時間的ずれを測定し、補正値を算出し電磁クラッチの動作のタイミングを制御するものが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−191681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、フォトインタラプタとギア等で構成されたエンコーダによって電磁クラッチの動作を検知し、電磁クラッチのオン−オフを制御するのみである。従って、用紙の種類、品質および厚さ等の違いにより、用紙搬送路上の用紙に対する摩擦力が変化した場合、搬送時にずれが生じて際の用紙搬送のバラツキが生じることがある。この場合、搬送される前後の用紙の間隔が変化し、正確に用紙搬送距離を提供できず、用紙のたわみや引っ張りが生じ、その結果、用紙にダメージ与える要因および紙詰まりの原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてされたものであって、用紙の種類や品質による違いを考慮して、搬送ローラーの動作を調整することで、用紙の搬送タイミングの遅延を解消でき、正確な用紙搬送が可能になり、シワや折れ等の用紙に対するダメージの軽減し、紙詰まりの発生を回避できる画像形成装置の用紙搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明に係る画像形成装置の用紙搬送装置の構成は次の通りである。
本発明に記載した、搬送される用紙に画像を形成する画像形成装置の用紙搬送装置は、前記用紙を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーへの駆動伝達をオン−オフする駆動伝達切替手段と、前記搬送ローラーに対し搬送下流側に配置し、搬送される前記用紙を検知する用紙検知手段と、を備え、前記駆動伝達切替手段をオンして前記用紙搬送を開始し、前記用紙が前記用紙検知手段を通過中に前記駆動伝達切替手段をオフ−オンし、前記駆動伝達切替手段のオフ時間と前記用紙検知手段の検知時間と基づいて搬送誤差を算出し、前記搬送ローラーの動作を調整することで前記誤差を補正する制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また本発明の用紙搬送装置において、前記制御手段が、用紙長及び用紙搬送速度から用紙搬送時間を求めて、該用紙搬送時間に前記駆動伝達切替手段のオフ時間を加えて用紙搬送理論時間を算出し、前記用紙搬送理論時間と、前記用紙検知手段が用紙を検知した時間である用紙搬送実測検知時間との差分を搬送誤差とすることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明の用紙搬送装置において、前記用紙検知手段が、前記搬送ローラーに対し搬送下流側の異なる位置に2つ配置され、前記制御手段は、前記用紙検知手段の距離及び用紙搬送速度から用紙搬送時間を求めて、用紙搬送時間に前記駆動伝達切替手段のオフ時間を加えて用紙搬送理論時間を算出し、前記用紙搬送理論時間と、前記用紙検知手段の一つが用紙を検知してから他方が用紙を検知するまでの時間である用紙搬送実測検知時間との差分を搬送誤差とすることを特徴するものとする。
【0010】
また本発明の用紙搬送装置において、前記制御手段が、前記駆動伝達切替手段をオンする場合に、前記搬送誤差だけ早めにオンさせることを特徴とするものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、用紙を搬送する搬送ローラーによって用紙搬送路に搬送された用紙を用紙検知センサーにより検知して、駆動制御部からの出力、および前記用紙検知センサーからの出力に基づき、用紙搬送の誤差を算出し、前記搬送ローラーの動作を調整し前記誤差を補正することで用紙の搬送タイミングの遅延を解消でき、シワや折れ等の用紙に対するダメージの軽減し、紙詰まりを防止できるという優れた効果を成し得る。
【0012】
本発明によれば、前記誤差が、用紙検知論理値と、検知センサーによる用紙の搬送実測値との差によって導き出されることで、フォトインタラプタ等を不要にし、搬送部における部品数を少なくするこができ、簡単で且つ安価な構成を実現でき、搬送部の占めるスペースを小さくできるという効果を奏し得る。
【0013】
本発明によれば、前記用紙検知理論値が、前記用紙の長さと、前記用紙の搬送速度と、前記電磁クラッチ手段のオフ時間とによって導き出されることで、前記用紙検知論理値を、前記用紙の実測値と対比可能なパラメータで構成でき、実際の前記用紙の実測値と前記用紙の搬送論理値とを比較考慮して補正を実現でき、簡単な構成の用紙搬送部を実現できるという効果を奏し得る。
【0014】
本発明によれば、前記誤差が、用紙検知理論値と、前記用紙搬送路上の前記用紙を検知する複数の検知手段のうち、一方の検知手段から他方の検知手段までの前記用紙の実測検知時間との差によって導き出されることで、用紙にそりがある場合でも用紙長に依存することなく、前記電磁クラッチのオン−オフ動作による遅延および前記搬送ローラーと前記用紙と摩擦によるすべり等による遅延による前記誤差を求め、前記誤差に基づき前記電磁クラッチの動作を補正し、前記搬送ローラーの動作を調整することで、前記用紙の搬送タイミングの遅延を解消でき、正確な用紙搬送が可能になり、シワや折れ等の前記用紙に対するダメージの軽減し、紙詰まりを防止できるという効果を奏し得る。
【0015】
本発明によれば、前記用紙検知理論値が、前記複数の検知手段間の距離と、前記用紙の搬送速度と、前記電磁クラッチ手段のオフ時間とから導き出され、そりを有する用紙を検知する場合でも、前記用紙検知理論値の算出に使用するパラメータの1つに用紙長を含めないことで、より正確に前記用紙検知理論値を算出でき、前記電磁クラッチのオン−オフ動作による遅延および前記搬送ローラーと前記用紙と摩擦によるすべり等による遅延による前記誤差をより正確に求めることができ、前記誤差に基づいて前記電磁クラッチの動作を補正し、前記搬送ローラーの動作を調整することで、前記用紙の搬送タイミングの遅延を解消でき、正確に用紙を搬送できるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る用紙搬送装置を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る用紙搬送装置を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態に係る用紙搬送装置の各構成部の動作を示す誤差を補正しない場合のタイミングチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る用紙搬送装置の各構成部の動作を示す誤差を補正する場合のタイミングチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る用紙搬送装置を示す概略図である。
【図7】第2の実施形態に係る用紙搬送装置の各構成部の動作を示す誤差を補正しない場合のタイミングチャートである。
【図8】第2の実施形態に係る用紙搬送装置差の各構成部の動作を示す誤差を補正する場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す構成図である。本実施形態の画像形成装置はモノクロの電子写真式複写機であるが、これに限定されるものではなく、ファクシミリ、プリンター、これら機能を持ち合わせた複合機であってもよいし、当然カラーのものであってもよい。
【0019】
まず、本実施形態に係る画像形成装置100の全体構成について図面を参照して説明する。
【0020】
画像形成装置100は、図1に示すように、主に、感光体ドラム21と、感光体ドラム21表面を帯電させるための帯電器22と、感光体ドラム21上に静電潜像を形成するための露光装置としての光書込みユニット23と、前記静電潜像を現像剤によって現像して感光体ドラム21上にトナー像を形成するための現像器24と、感光体ドラム21上のトナー像をシート部材、例えば、記録用紙やOHP等のシート状の記録媒体(以下、用紙Pと称する。)に転写する転写ユニット25と、用紙P上の転写画像を該用紙Pに定着するための定着ユニット27と、転写ユニット25によって転写されずに感光体ドラム21表面に残った残留トナーを除去するためのクリーニングユニット26と、感光体ドラム21表面に残った残留電荷を除電するための除電装置(図示省略)とを備えている。
【0021】
詳しくは、この画像形成装置100は、原稿から読取られた画像データを取得したり、或いは、外部から受信した画像データを取得し、この画像データによって示されるモノクロ画像を用紙Pに形成するものであり、その構成を大別すると、主に原稿搬送部(ADF)101aと画像読取部102とにより構成される原稿読取り装置101、画像形成部103、搬送部104、及び給紙部105からなる。
【0022】
原稿読取り装置101は、複数枚原稿が積載される原稿トレイ11、画像情報の読取済の原稿が積層して排出される排紙トレイ12を備え、画像形成装置100上部において、上方に向かい回動して開閉自在に設けられている。
【0023】
原稿搬送部101aは、原稿が原稿トレイ11にセットされると、最上位の用紙Pをピックアップするピックアップローラー61、用紙Pを分離して給紙するローラーとして給送ローラー62及びサバキローラー63により、原稿を1枚ずつ原稿トレイ11から引き出して搬送し、この原稿を画像読取部102の原稿読取り窓102aに設けられたコンタクトガラス102a1上に導いて通過させた後に、この原稿を排紙トレイ12に排出するようにされている。
【0024】
原稿読取り窓102aの上方には、CIS(Contact Image Sensor)13を配設している。このCIS13は、原稿読取り窓102aを原稿用紙が通過する際に、原稿用紙裏面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿用紙裏面の画像を示す画像データを出力する。
【0025】
画像読取部102は、原稿がコンタクトガラス102a1上を通過する際に、第1走査ユニット15のランプ15aによって原稿表面を露光し、第1走査ユニット15の第1ミラー15b及び第2走査ユニット16の2・3ミラー16aによって原稿表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿表面の画像をCCD(Charge Coupled Device)18上に結像する。CCD18は、原稿表面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿表面の画像を示す画像データを出力するようにされている。
【0026】
一方、原稿が画像読取部102上面のプラテンガラス102b上に置かれた場合は、第1走査ユニット15及び第2走査ユニット16を相互に所定の速度関係を維持しつつ移動させ、第1走査ユニット15によってプラテンガラス102b上の原稿表面を露光し、第1走査ユニット15及び第2走査ユニット16によって原稿表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿表面の画像をCCD18上に結像する。
【0027】
CIS13もしくはCCD18から出力された画像データは、マイクロコンピュータ等を含む制御部により各種の画像処理を施されてから、画像形成部103に出力される。
【0028】
画像形成部(印刷部)103は、図1に示すように、画像データによって示される原稿画像を用紙Pに記録するものであって、感光体ドラム21、帯電器22、光書込みユニット23、現像器24、転写ユニット25、クリーニングユニット26、及び定着ユニット27等を備えている。
【0029】
感光体ドラム21は、円筒状を呈し、光書込みユニット23の下方に配設され、図示しない駆動手段と制御手段により所定方向(図中矢印A方向)に回転するように制御されている。感光体ドラム21が回転することにより外周面が移動し、その表面がクリーニングユニット26によりクリーニングされ、該クリーニングされた表面を帯電器22により均一に帯電される。帯電器22は、チャージャー型のものであっても、感光体ドラム21に接触するローラー型やブラシ型のものであっても良い。
【0030】
光書込みユニット23は、2つのレーザ照射部28a,28b、及び2つのミラー群29a,29bを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)である。この光書込みユニット23では、画像データを入力して、この画像データに応じたレーザ光を各レーザ照射部28a,28bからそれぞれ出射し、これらのレーザ光を各ミラー群29a,29bを介して感光体ドラム21に照射して、均一に帯電された感光体ドラム21表面を露光し、感光体ドラム21表面に静電潜像を形成する。
【0031】
この光書込みユニット23は、高速画像形成処理に対応するために2つのレーザ照射部28a,28bを備えた2ビーム方式を採用して、照射タイミングの高速化に伴う負担を軽減している。
【0032】
尚、光書込みユニット23として、レーザスキャニングユニットの代わりに、発光素子をアレイ状に並べたEL書き込みヘッドやLED書き込みヘッドを用いるものであってもよい。
【0033】
現像器24は、トナーを感光体ドラム21表面に供給して、静電潜像を現像し、トナー像を感光体ドラム21表面に形成する。転写ユニット25は、感光体ドラム21表面のトナー像を搬送部104により搬送されてきた用紙Pに転写する。定着ユニット27は、用紙Pを加熱及び加圧して、用紙P上のトナー像を定着させる。この後、用紙Pは、用紙搬送部104により排紙トレイ47へと更に搬送されて排出される。また、クリーニングユニット26は、現像、転写後に感光体ドラム21の表面に残留したトナーを除去して回収する。
【0034】
定着ユニット27は、回転体である一対の定着ローラー(ここでは加熱ローラー35及び加圧ローラー36)を備えている。加熱ローラー35内部には、該加熱ローラー35表面を所定温度(定着温度:概ね160〜200℃)に設定するための熱源を設けている。また、加熱ローラー35に対して加圧ローラー36が所定圧で圧接されるように、加圧ローラー36の両端に図示しない加圧部材を配置している。加熱ローラー35と加圧ローラー36間の圧接部(定着ニップ部と称される)に用紙が搬送されて来ると、各ローラー35,36により用紙が搬送されつつ、用紙上の未定着トナー像が加熱溶融され加圧されて、トナー像が用紙上に定着される。
【0035】
搬送部104は、用紙を搬送するための複数の搬送ローラー41、一対のレジストローラー42、搬送経路43、反転搬送経路44、複数の分岐爪45、及び一対の排紙ローラー46等を備えている。
【0036】
搬送経路43では、用紙を給紙部105から受け取り、用紙の先端がレジストローラー42に達するまで該用紙を搬送する。レジストローラー42により用紙を画像形成部103の転写ユニット25へと搬送し、用紙上にトナー像を定着させた後に排紙ローラー46により用紙を排紙トレイ47へと搬送する。
【0037】
また、用紙の裏面にも画像を記録する場合は、複数の分岐爪45を回転させて、搬送経路43と反転搬送経路44の分岐路を切り替え、反転搬送経路44で用紙の表裏を反転させてから、用紙を、反転搬送経路44を介して搬送経路43のレジストローラー42へと戻す。これにより、用紙の裏面にも画像が記録される。
【0038】
搬送経路43及び反転搬送経路44においては、用紙の位置等を検出する用紙検知センサーを各所に配置し、各センサーにより検出された用紙の位置に基づいて搬送ローラーやレジストローラーを駆動制御して、用紙の搬送及び位置決めを行っている。
【0039】
転写ユニット25を構成する転写ベルト31は、周長が画像形成装置100に通紙可能な最大用紙の全長よりも長く形成されている。
【0040】
給紙部105は、複数の給紙トレイ51を備えている。各給紙トレイ51は、用紙を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置100の下方に設けられている。また、各給紙トレイ51は、用紙を一枚ずつ引き出すためのピックアップローラー等を備えており、引き出した用紙を搬送部104の搬送経路43へと送り出す。
【0041】
本実施形態の画像形成装置100は、高速画像形成処理を行うため、連続して搬送される用紙間の間隔が狭く(例えば、50mm程度の間隔に狭く)なっている。
また、本実施形態の画像形成装置100は、高速画像形成処理を目的としているため、各給紙トレイ51には、定型サイズの用紙を500〜1500枚収納可能な容積を確保している。さらに、画像形成装置100の側面には、複数種の用紙を多量に収納可能な大容量給紙カセット(LCC)52、及び主として不定型サイズの用紙を供給するための手差しトレイ53を設けている。
【0042】
排紙トレイ47は、手差しトレイ53とは反対側の側面に配置されている。この排紙トレイ47に代えて、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等々)や、複数段の排紙トレイをオプションとして配置することも可能な構成となっている。
【0043】
<第1の実施形態>
図2〜5図は本発明に係る用紙搬送装置の第1の実施形態を示すものである。本発明に係る用紙搬送装置は、図1の画像形成装置における搬送部104の各搬送路に用いられるものである。
【0044】
図2は第1の実施形態に係る用紙搬送装置のブロック図であり、図3は本発明の第1の実施形態に係る用紙搬送装置の概略図である。
【0045】
図2に示すように、用紙搬送装置200は、用紙搬送センサー201、電磁クラッチ202(駆動伝達切替手段)、搬送ローラー203、制御部204、記憶部205を備える。制御部204は、図1の画像形成装置全体を制御する中央演算処理装置(CPU)であるが、図2には用紙搬送装置200の制御部分のみを記載しており、搬送制御部211と駆動制御部212を備えている。
【0046】
図3に示すように、搬送ローラー203は一対のローラーからなり、ローラー間に用紙Pを挟持しながら回転して、図3では右から左へ用紙Pを搬送する。電磁クラッチ202は、その一方のローラー(図3の下側ローラー)に取り付けられており、駆動モーター(図示せず)からの駆動力を搬送ローラー203に伝達又は遮断するように駆動制御部212により切替制御される。搬送ローラー203に対して原稿搬送方向の下流側には用紙検知センサー201を配置する。用紙検知センサー201は、搬送路における用紙Pの有無を検出する。搬送制御部211は、電磁クラッチ202のオン−オフ・タイミングと、用紙検知センサー201の用紙検出結果とに基づいて、実際の用紙搬送における電磁クラッチのオン−オフ・タイミングを調整する。
【0047】
次に、本実施形態に係る用紙搬送装置200において搬送される用紙Pを検出し、電磁クラッチ202の動作を補正する一例について説明する。制御部204は、まず用紙を1枚搬送し、動作誤差を算出する。そして算出した誤差に基づいて用紙搬送の動作修正を行う。
【0048】
図4は、第1の実施形態に係る用紙搬送装置の各構成部の動作を示す誤差を補正しない場合のタイミングチャートである。各構成要素のオン−オフの状態において、信号の“ハイ(H)”ではオンの状態であり、“ロー(L)”ではオフの状態とする。また、搬送制御部211は内部タイマーにより、電磁クラッチ202のオン/オフ動作と、用紙検知センサー201の検出動作の時刻をカウントし、その時刻をタイミング情報として記憶部205に記憶する。
搬送ローラー203を通過した用紙Pが用紙検知センサー201に達すると、用紙検知センサー201は用紙Pを検出して時刻t1で検出信号がオンとなり、搬送制御部211に用紙検出信号を送る。搬送制御部211は駆動制御部212に電磁クラッチ202をオフする指示を送り、駆動制御部212は電磁クラッチ202をオフにする。電磁クラッチ202のオフ・タイミング(時刻t2)は用紙検知センサー201が検出した時点(時刻t1)から少し遅れることになる。予め設定された所定の第1の電磁クラッチ停止時間D1(t3−t2)の経過後、搬送制御部211は駆動制御部212にスタート命令を伝達し、駆動制御部212により電磁クラッチ202が時刻t3でオンとなる。搬送ローラー203は、駆動するまで時間C(t4−t3)のタイムラグ(誤差)があるとする。このタイムラグは、電磁クラッチ202のオン−オフ動作による遅延および搬送ローラー203と用紙Pと摩擦によるすべり等による遅延よるものである。従って、搬送ローラー203は、時刻t4で駆動し始めて用紙Pを搬送する。そして、用紙Pが用紙検知センサー201を通過して時刻t6で用紙検出信号がオフとなる。
【0049】
図4の用紙検知センサー201の動作タイミングから、1枚分の用紙の搬送にかかった実測搬送時間(用紙搬送実測検知時間)Aは、t6−t1となる。この値は、電磁クラッチ202の停止時間D1と、搬送ローラー203の搬送誤差時間Cを含んでいる。
【0050】
次に、搬送制御部211は、記憶部205から電磁クラッチ202のオン−オフ動作と、用紙検知センサー201の検出動作のタイミング情報(時刻)を読み出し、各動作のオン−オフより用紙検知センサー201が一枚の用紙搬送を検出する場合に、搬送ローラー203の動作誤差を含まない理論上の数値である用紙理論検知時間Bを求める。用紙理論検知時間Bは、搬送される用紙Pの長さ(用紙長)と、予め設定された所定の用紙搬送速度と、予め設定された電磁クラッチ202の停止時間D1とによって、以下の式によって導き出すことができる。
用紙理論検知時間B=
(用紙長/用紙搬送速度)+第2の電磁クラッチ停止時間D1
【0051】
測定した実測搬送時間(用紙搬送実測検知時間A)と用紙理論検知時間Bと数値差が存在する場合、搬送誤差時間Cが存在することになる。
搬送誤差時間C=用紙搬送実測検知時間A−用紙理論検知時間B
【0052】
一般に電磁クラッチは、通電時に吸引磁力を発生するコイル(図示せず)が設けられている。電磁クラッチに電流を通電させた場合、コイルに流れる電流は所定の時定数で増加し、所定値に達すると電磁クラッチ内の電機子(アマチュア)(図示せず)が吸引され、摩擦面が密着し、摩擦トルクが発生する。その後励磁電流の増加に伴い摩擦トルクも増大し、定格動摩擦トルクに達する。摩擦トルクの増大とともに被動側も次第に加速され、駆動側の回転数と同期して電磁クラッチのすべりがゼロとなり連結は完了する。コイルに通電してから80%の定格動摩擦トルクに達するまでの時間をトルク立ち上がり時間と呼び、該トルク立ち上がり時間は、励磁電流、負荷トルクの大小並びに回転数により変化する。このように電磁クラッチは固有のオン−オフ動作時間を備えている。
【0053】
複写機等の画像形成装置の用紙搬送装置において、使用する用紙を所定の位置に定期的に送る技術として搬送ローラーやベルトによる摩擦方式が主流である。この場合、搬送ローラーと用紙が接触し摩擦力が界面で作用し、用紙は搬送される。しかし界面ですべりが生じなければ搬送ローラーの表面の速度で用紙は搬送されるが、実際には数パーセントのすべりが生じる。従って用紙の種類や品質が異なると界面でのすべりは各用紙で異なる。すなわち搬送速度と電磁クラッチのオン−オフ動作による遅延が同一の条件でも、用紙の種類や品質が違うと用紙が搬送された際に、異なった値の遅延が生じる。
【0054】
従って、電磁クラッチ202のオン−オフ動作による遅延および搬送ローラー203と用紙Pと摩擦によるすべり等による遅延による搬送誤差Cを算出し、搬送誤差Cを補正値として電磁クラッチ202のオン−オフ動作に予め設定し、搬送ローラー203の動作を調整することで、2枚目以降の用紙の搬送時において、用紙Pの搬送タイミングの遅延を解消でき、正確な用紙搬送が可能になり、シワや折れ等の用紙Pに対するダメージの軽減し、紙詰まりを防止できる。
【0055】
図5は、第1の実施形態に係る用紙搬送装置の各構成部の動作を示す誤差を補正する場合のタイミングチャートである。
【0056】
図5に示すように、算出した搬送誤差時間Cを補正値として電磁クラッチ202のオン−オフ動作に予め設定する。すなわち、電磁クラッチ202のオフ時間を搬送誤差時間Cの時間量分短くすることで(停止時間D2=t21−t2)、搬送ローラー203は搬送誤差時間Cの時間量分早く動作を開始する(搬送開始時刻t3)。従って、用紙搬送実測検知時間A=用紙理論検知時間B+搬送誤差時間C=t6−t1となり、用紙搬送における誤差を解消できる。
【0057】
こうして、種類や品質の異なった用紙を搬送する場合は、予め搬送誤差を調査するために、最初の1枚を搬送して誤差を求め、2枚目から誤差を解消する搬送動作をすることにより、用紙Pの搬送タイミングの遅延を解消でき、正確な用紙搬送が可能となる。結果として、シワや折れ等の用紙Pに対するダメージの軽減し、紙詰まりを防止できる。
【0058】
なお、各用紙種類に対して予め搬送誤差を求めておき、記憶部205に誤差を保存しておいて、搬送時に各用紙種類に応じて記憶部205から誤差を読み出し、搬送補正動作を行ってもよい。
【0059】
<第2の実施形態>
図6〜図8は本発明に係る用紙搬送装置の第2の実施形態を示すものであって、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成は図3に示すものと同様である。
【0060】
図6に、第2の実施形態に係る用紙搬送装置の概略図を示す。
【0061】
図6は第2の実施形態に係る用紙搬送装置のブロック図である。用紙搬送装置200は、第1の実施形態と同様に、中央演算処理装置(CPU)204、電磁クラッチ202、用紙検知センサー201、206、搬送ローラー203等により構成されている。構成要素において2つ用紙検知センサーを備えている点で、第1実施形態と異なる。
【0062】
図6に示す用紙搬送装置の動作は、図3と同様であり、搬送ローラー203は一対のローラーからなり、ローラー間に用紙Pを挟持しながら回転して、図6では右から左へ用紙Pを搬送する。電磁クラッチ202は、その一方のローラー(図6の右側ローラー)に取り付けられており、駆動モーター(図示せず)からの駆動力を搬送ローラー203に伝達又は遮断するように駆動制御部212により切替制御される。搬送ローラー203に対して原稿搬送方向の下流側には用紙検知センサー201を配置する。さらに搬送ローラー207に対して原稿搬送方向の下流には別の用紙検知センサー206を配置する。用紙検知センサー201、206は、搬送路における用紙Pの有無を検出する。搬送制御部211は、電磁クラッチ202のオン−オフ・タイミングと、用紙検知センサー201、206の用紙検出結果とに基づいて、実際の用紙搬送における電磁クラッチのオン−オフ・タイミングを調整する。
【0063】
次に、第2の実施形態に係る用紙搬送装置200において搬送される用紙Pを検出し、電磁クラッチ202の動作を補正する一例について説明する。制御部204は、まず用紙を1枚搬送し、2つの用紙検知センサーの距離に基づき、動作誤差を算出する。そして算出した誤差に基づいて用紙搬送の動作修正を行う。
【0064】
図7は、第2の実施形態に係る用紙搬送装置の各構成部の動作を示す誤差を補正しない場合のタイミングチャートである。各構成要素のオン−オフの状態において、信号の“ハイ(H)”ではオンの状態であり、“ロー(L)”ではオフの状態とする。また、搬送制御部211は内部タイマーにより、電磁クラッチ202のオン/オフ動作と、用紙検知センサー201、206の検出動作の時刻をカウントし、その時刻をタイミング情報として記憶部205に記憶する。
【0065】
搬送ローラー203を通過した用紙Pが用紙検知センサー201に達すると、用紙検知センサー201は用紙Pを検出して時刻t1’で検出信号がオンとなり、搬送制御部211に用紙検出信号を送る。搬送制御部211は駆動制御部212に電磁クラッチ202をオフする指示を送り、駆動制御部212は電磁クラッチ202をオフにする。電磁クラッチ202のオフ・タイミング(時刻t2’)は用紙検知センサー201が検出した時点(時刻t1’)から少し遅れることになる。予め設定された所定の第1の電磁クラッチ停止時間D3(t3’−t2’)の経過後、搬送制御部211は駆動制御部212にスタート命令を伝達し、駆動制御部212により電磁クラッチ202が時刻t3’でオンとなる。搬送ローラー203は、駆動するまで時間(t4’−t3’)のタイムラグ(誤差)があるとする。このタイムラグは、電磁クラッチ202のオン−オフ動作による遅延および搬送ローラー203と用紙Pと摩擦によるすべり等による遅延よるものである。用紙Pは搬送され搬送ローラー207を通過し、用紙検知センサー206が用紙Pを検知すると、時刻t5’で検出信号がオンとなり、搬送制御部211に用紙検出信号を送る。従って搬送制御部211のタイマーにより、搬送ローラーからの検知信号の受信時刻(t1’)から、搬送ローラー207からの検知信号の受信時刻(t5’)までの時間が、用紙Pが用紙検知センサー201、206間の距離を搬送されるのに費やした実測搬送時間(用紙搬送実測検知時間A’)となる。
【0066】
図7の用紙検知センサー201、206の動作タイミングから、用紙が2つの用紙検知センサー間の距離にかかった時間である実測搬送時間(用紙搬送実測検知時間)A’を算出すると、実測搬送時間A’は(t5’−t1’)となる。この値は、電磁クラッチ202の停止時間D3と、搬送ローラー203の搬送誤差時間C’を含んでいる。
【0067】
次に、搬送制御部211は、記憶部205から電磁クラッチ202のオン−オフ動作と、用紙検知センサー201、206の検出動作のタイミング情報(時刻)を読み出し、用紙検知センサー201、206間を用紙が搬送される場合に、搬送ローラー203の動作誤差を含まない理論上の数値である用紙理論検知時間B’を求める。用紙理論検知時間B’は、2つの用紙検知センサー間の距離と、予め設定された所定の用紙搬送速度と、予め設定された電磁クラッチ202の停止時間D3とによって、以下の式によって導き出すことができる。
用紙理論検知時間B’=
(用紙長/用紙搬送速度)+第2の電磁クラッチ停止時間D3
【0068】
測定した実測搬送時間(用紙搬送実測検知時間A’)と用紙理論検知時間B’と数値差が存在する場合、搬送誤差時間C’が存在することになる。
搬送誤差時間C’=用紙搬送実測検知時間A’−用紙理論検知時間B’
図7に示すように、第2の用紙理論検知時間B’は、用紙搬送実測検知時間A’よりも短い。この両数値の差(搬送誤差C’=A’−B’)は、電磁クラッチ202のトルク立ち上がり時間における遅延だけではなく、用紙Pと搬送ローラー203との摩擦によるずれによるものである。
【0069】
図8に示すように、算出した搬送誤差C’を補正値として電磁クラッチ202のオン−オフ動作に予め設定し、電磁クラッチ202のオフ時間を搬送誤差C’の時間量分短くすることで、搬送ローラーは搬送誤差C’の時間量分早く動作を開始できる。
従って2枚目以降の用紙Pの搬送時において、用紙サイズが同じであるが、種類や品質の異なった用紙が搬送され、すべりが生じ遅延が発生した場合にも、用紙Pの搬送タイミングの遅延を解消でき、正確な用紙搬送が可能となる。結果として、シワや折れ等の用紙Pに対するダメージの軽減し、紙詰まりを防止できる。
【0070】
紙厚の大きい用紙の場合、用紙の持つ腰の強さにより用紙にカールと呼ばれるそりが発生し、ローラーに対する用紙の先端の当接角度が急峻となり、搬送ローラーのニップ(搬送ローラー間の当接箇所)に正常に用紙の先端が挿入されず、用紙の詰まり等が起こりやすくなる。そりを有する用紙を搬送する場合、単体の用紙検知センサーでは用紙長を正確に測定することが難しい。そこで複数の用紙検知センサーを備えて用紙を検知することで、第2の用紙理論検知時間B’を算出する際のパラメータの一つに用紙長を用いずに、搬送検知センサー間の距離をパラメータとして用いることで、そりを有する用紙と搬送ローラーとの摩擦によるずれによる遅延が測定可能となり、その遅延に応じて補正し、正確な用紙搬送が可能となる。結果として、シワや折れ等の用紙に対するダメージの軽減し、紙詰まりを防止できる。
【符号の説明】
【0071】
200 用紙搬送装置
201、206 用紙検知センサー
202 電磁クラッチ
203、207 搬送ローラー
204 CPU
211 搬送制御部
212 駆動制御部
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される用紙に画像を形成する画像形成装置の用紙搬送装置において、
前記用紙を搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーへの駆動伝達をオン−オフする駆動伝達切替手段と、
前記搬送ローラーに対し搬送下流側に配置し、搬送される前記用紙を検知する用紙検知手段と、
前記駆動伝達切替手段をオンして前記用紙搬送を開始し、前記用紙が前記用紙検知手段を通過中に前記駆動伝達切替手段をオフ−オンし、前記駆動伝達切替手段のオフ時間と前記用紙検知手段の検知時間と基づいて搬送誤差を算出し、前記搬送ローラーの動作を調整することで前記誤差を補正する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置の用紙搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
用紙長及び用紙搬送速度から用紙搬送時間を求めて、該用紙搬送時間に前記駆動伝達切替手段のオフ時間を加えて用紙搬送理論時間を算出し、
前記用紙搬送理論時間と、前記用紙検知手段が用紙を検知した時間である用紙搬送実測検知時間との差分を搬送誤差とすることを特徴する請求項1に記載の画像形成装置の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記用紙検知手段は、前記搬送ローラーに対し搬送下流側の異なる位置に2つ配置され、
前記制御手段は、
前記用紙検知手段の距離及び用紙搬送速度から用紙搬送時間を求めて、用紙搬送時間に前記駆動伝達切替手段のオフ時間を加えて用紙搬送理論時間を算出し、
前記用紙搬送理論時間と、前記用紙検知手段の一つが用紙を検知してから他方が用紙を検知するまでの時間である用紙搬送実測検知時間との差分を搬送誤差とすることを特徴する請求項1に記載の画像形成装置の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記駆動伝達切替手段をオンする場合に、前記搬送誤差だけ早めにオンさせることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置の用紙搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−284890(P2010−284890A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140481(P2009−140481)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】