説明

画像形成装置及び制御方法並びに制御プログラム

【課題】装置内の状態や設置場所による排気口近傍の状態などの装置環境が変わった場合でも、部品を追加することなく、所望の冷却、排気能力を得ることができる画像形成装置及び制御方法並びに制御プログラムの提供。
【解決手段】回転速度を可変可能な1又は複数のファンモータと、前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する制御部と、を少なくとも備える画像形成装置において、前記制御部は、前記目標速度と前記ファンモータの実際の回転速度とを比較し、前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び制御方法並びに制御プログラムに関し、特に、回転速度を可変することができるファンモータを搭載した画像形成装置及び画像形成装置に搭載されたファンモータの回転速度を制御する制御方法並びに制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、帯電装置により一様に帯電された感光体ドラムに露光装置から光を照射して静電潜像を形成し、現像装置で静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化し、そのトナー像を中間転写ベルトを介して感光体ドラム上から紙媒体に転写し、その後、定着装置で加熱及び加圧することによりトナー像を紙媒体上に定着させる処理を行っている。
【0003】
このような画像形成装置では、定着装置や電気部品等から熱が発生し、発生した熱により機内温度が上昇すると画質が劣化することから、ファンモータを回転させて機内にこもった熱を排気している。また、帯電装置や転写装置からオゾンが発生し、発生したオゾンが機内に溜まると画質が劣化することから、ファンモータを回転させて機内の溜まったオゾンを排気している。
【0004】
上記ファンモータは、静圧が0の状態において予め設定した回転速度でモータが回転するタイプが多く、このタイプのファンモータは、静圧が変化するとモータの回転速度が変わる可能性がある。そのため、同じファンモータでも、画像形成装置内の風が流れる経路の状態が変わるとモータの回転速度が変わり、所望の冷却、排気能力が得られない場合がある。また、画像形成装置の設置場所などによって、排気孔近傍の状態が変わるとモータの回転速度が変わり、所望の冷却、排気能力が得られない場合がある。
【0005】
従って、画像形成装置の画質劣化を抑制するためには、所望の冷却、排気能力が得られるように制御することが重要であり、例えば、下記特許文献1では、回転速度を検出、制御できるファンモータを搭載する画像形成装置において、筐体の一側面に設けられた排気口とは異なる側面に第2の排気口を設け、ファンモータの速度を上げても筐体からの風量が設定範囲に入らない場合は、第2の排気口を開けることによって所望の排気能力が得られるように制御する方法を開示している。
【0006】
【特許文献1】特開平6−208273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、ファンモータの回転速度が変わった場合に、排気口を制御することによって所望の排気能力が得られるようにすることはできるが、この方法では、第2の排気口と、その第2の排気口の開閉を制御するための部品と、風量を検出するための部品などの追加部品が必要となり、画像形成装置のコストアップを招くという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、装置内の状態や設置場所による排気口近傍の状態などの装置環境が変わった場合でも、部品を追加することなく、所望の冷却、排気能力を得ることができる画像形成装置及び制御方法並びに制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、回転速度を可変できる1又は複数のファンモータと、前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する制御部と、を少なくとも備える画像形成装置において、前記制御部は、前記目標速度と前記ファンモータの実際の回転速度とを比較し、前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定するものである。
【0010】
本発明においては、前記画像形成装置に、前記ファンモータの温度を検出する手段を備え、前記制御部は、前記広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記手段で検出した温度に基づいて、前記ファンモータが正常に動作する温度の限界まで前記調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する構成とすることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、前記画像形成装置の印刷間隔を広げる構成とすることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、目標速度で回転している他のファンモータの回転速度を上げる構成とすることもできる。
【0013】
また、本発明は、回転速度を可変できる1又は複数のファンモータを少なくとも備える画像形成装置における前記ファンモータの回転速度の制御方法であって、前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する際に、前記ファンモータの出力信号に基づいて、当該ファンモータの実際の回転速度を取得する第1のステップと、前記目標速度と前記実際の回転速度とを比較する第2のステップと、前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する第3のステップと、を少なくとも実行するものである。
【0014】
また、本発明は、回転速度を可変できる1又は複数のファンモータを少なくとも備える画像形成装置で動作する制御プログラムであって、コンピュータを、前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する際に、前記目標速度と前記ファンモータの実際の回転速度とを比較し、前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する制御部として機能させるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置及び制御方法並びに制御プログラムによれば、回転速度を可変させることができるファンモータを搭載した画像形成装置において、第2の排気口や第2の排気口を開閉させる部品、風量を検出するための部品等を追加することなく、また、第2の排気口を設けるために設置スペースを設けることなく、装置環境によらず、所望の冷却、排気能力を得ることができる。
【0016】
その理由は、制御部(制御プログラム)では、ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内でファンモータの回転速度を設定する際に、ファンモータの目標速度とファンモータの実際の回転速度とを比較し、予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、ファンモータの実際の回転速度が目標速度にならない場合に、予め設定した調整範囲を広げ、広げた調整範囲内でファンモータの回転速度を再設定して、目標速度に近づける制御を行うからである。
【0017】
また、再設定した調整範囲内で回転速度を再設定しても、ファンモータの実際の回転速度が目標速度にならない場合に、印刷間隔を広げたり、目標速度で回転している他のファンモータの回転速度を上げるなどの制御を行うからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
背景技術で示したように、画像形成装置では、ファンモータを回転させることによって、機内にこもった熱や機内の溜まったオゾンを排気している。このファンモータは、静圧が変わると回転速度が変わるため、装置内の状態や排気口近傍の状態などの装置環境によりファンモータの回転速度が変化して、所望の冷却、排気能力が得られず、画質の劣化が生じるという問題がある。
【0019】
この問題に対して、排気口を増やして排気能力を高める方法もあるが、この方式では、新たな排気口やその排気口を開閉させるための部品、風量を検出するための部品などの追加部品が必要となり、コストアップになってしまう。
【0020】
そこで、本発明では、PWM(Pulse Width Modulation)で制御するモータなど、回転速度が制御可能なファンモータを搭載した画像形成装置において、ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内でファンモータの回転速度を設定する際に、目標速度と実際の回転速度とを比較し、目標速度と実際の回転速度との差に基づいて回転速度を再設定し、目標速度に近づくように制御する。
【0021】
例えば、予め設定した調整範囲内においてファンモータの回転速度を再設定しても目標速度にならない場合には、予め設定した調整範囲(速度設定指令可能範囲)を広げ、広げた調整範囲内においてファンモータの回転速度を再設定して目標速度となるようにし、所望の冷却、排気能力が得られるようにする。
【0022】
また、再設定した調整範囲内においてファンモータの回転速度を再設定しても目標速度にならない場合には、画像形成装置の動作条件を熱やオゾンが発生しにくい条件に変更したり(例えば、印刷間隔を広げたり)、目標速度になっている他のファンモータの回転速度を調整範囲内で上げるなどして、画質の劣化が生じないようにする。
【実施例】
【0023】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る画像形成装置及び制御方法並びに制御プログラムについて、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、本実施例の画像形成装置の構造を模式的に示す断面図であり、図2は、画像形成装置の主要構成を示すブロック図である。また、図3及び図4は、本実施例のモータ速度制御部における制御を模式的に示す図である。また、図5乃至図7は、各々、静圧と風量の関係、風量と速度との関係、速度と速度設定指定との関係を示す図であり、図8は、本実施例のファンモータの具体的な速度制御方法を示す図である。
【0024】
まず、本実施例の画像形成装置の構造について説明する。図1は、タンデムカラープリンタの主要部の断面構造を示しており、作像部と搬送部などを主な構成要素としている。なお、図中の符番の添え字(a〜d)は、各々、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に対応している。
【0025】
作像部は、感光体3a〜3dと感光体3a〜3dを帯電する帯電部5a〜5dと画像パターンを露光する露光部6とトナーを現像する現像部4a〜4dとが内蔵されたカートリッジ28a〜28dと、感光体3a〜3d上に形成された4色のトナー像を重ねて画像形成する中間転写ベルト2と、転写残トナーを中間転写ベルト2から分離する中間転写ベルトクリーナ7と、分離した転写残トナーを収納する廃トナーボックス15と、攪拌羽26a〜26dを動作させることでカートリッジ28a〜28dにトナーを補給させるトナーボトル25a〜25dと、トナー補給モータ23、24などで構成されている。
【0026】
また、搬送部は、記録媒体収納部16から記録媒体を給紙する給紙ローラ8と、給紙された記録媒体を一旦停止させるタイミングローラ10と、中間転写ベルト2に画像形成されたトナー像を記録媒体上に転写する2次転写ローラ11と、2次転写ローラ11に付着したトナーを除去するクリーニング部(図示せず)と、記録媒体上に転写されたトナー像を定着する定着ローラ12a、12bと、定着後の記録媒体を排出もしくは両面搬送経路29へ搬送する排紙ローラ13と、両面搬送経路29を経由してタイミングローラ10まで搬送する両面経路搬送ローラ14a、14bと、各種モータ17〜21などで構成されている。なお、記録媒体と中間転写ベルト2上の画像はタイミングを合わせる必要がある。印刷指示があるとモータ、高圧電源が順次起動されるが、最初の起動の後、記録媒体と画像のタイミングを合わせるために、中間転写ベルト2上の画像作成するタイミングを画像開始基準点とする。
【0027】
次に、本実施例の画像形成装置の制御部の構成について説明する。図2は画像形成装置の制御部の主要構成を示しており、コントローラ部とエンジン部などで構成される。
【0028】
エンジン部には、画像形成装置を制御するCPU(Central Processing Unit)があり(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含む。)、プリントヘッドを制御する。また、用紙搬送のためのモータや、定着ヒータなどの各種負荷もCPUによって制御される。さらに、記憶媒体である本体付属不揮発性メモリ(例えば、EEPROM:Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)とCPUが接続されており、CPUで計測したデータなどを記憶することが出来る。EEPROM以外にも消耗品にはユニット付属不揮発性メモリ(例えば、CSIC:Customer Specific Integrated Circuit)が取り付けられており、消耗品の情報などを記憶することもできる。
【0029】
また、エンジン部とコントローラ部は接続されており、ドットカウンタなどの必要な情報をやり取りしている。
【0030】
上記構成の画像形成装置において、画像作成時は、帯電器5a〜5dなどからオゾンが発生するが、オゾンが画像形成部周辺に溜まると画質劣化の原因となるため、機外に排気する必要がある。また、画像形成時は、定着ローラ12などが高温になるが、定着周辺の熱によって画像形成部周辺の温度が上昇すると画質劣化の原因となるため、定着ローラ周辺の熱も排気する必要がある。
【0031】
そこで、図1に示すように、帯電器5a〜5dから発生するオゾンを機外に排気するためのファンモータ30a、定着ローラ周辺の熱を排気するためのファンモータ30bなどの1又は複数のファンモータを設けると共に、ファンモータ30a、30bの温度を検出する手段(例えば、ファンモータの出力信号から回転速度を算出し、予め記憶したテーブルを参照して、その回転速度から温度を推定する処理を行うプログラムなど)、機内温度を検出するための温度検出センサ31を設け、温度を検出する手段や温度検出センサ31で検出した温度に基づいてファンモータに供給する電圧を制御している。
【0032】
ここで、ファンモータを高速で回転させれば、風量が増加して排気性能が向上するが、ファンモータを高速で回転させると、風量増加に伴って音や振動が大きくなるという副作用が発生する。従って、ファンモータの回転速度を制御する場合には、ファンモータで発生する音や振動をできるだけ小さくし、かつ、オゾンや熱を効率的に排出することができるようにする必要がある。
【0033】
そこで、本実施例では、エンジン部などにファンモータ速度制御部を設け、ファンモータが排気性能と静音化を成立させることができる目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内でファンモータの回転速度を設定する際に、ファンモータからの出力信号やファンモータ近傍に設けた速度検出センサから出力信号に基づいてファンモータの実際の回転速度を検出し、目標速度と実際の回転速度とを比較した結果に基づいて回転速度を制御する。
【0034】
具体的には、ファンモータ速度制御部は、目標速度と実際の回転速度とを比較し、予め設定した調整範囲内でファンモータの回転速度を設定しても目標速度にならない場合に、上記調整範囲を広げ、広げた調整範囲内でファンモータの回転速度を再設定して目標速度になるようにする。また、広げた調整範囲内でファンモータの回転速度を再設定しても目標速度にならない場合は、画像形成装置の動作条件を変えて熱やオゾンの発生を抑えたり、他のファンモータの回転速度を調整範囲内で上げて画質劣化を抑制する。
【0035】
なお、上記ファンモータ速度制御部は、画像形成装置にハードウェアとして構成してもよいし、コンピュータを、ファンモータ速度制御部として機能させる制御プログラムとして構成し、この制御プログラムをCPU上で動作させる構成としてもよい。
【0036】
以下、ファンモータ速度制御部の具体的な制御方法について説明する。
【0037】
回転速度を変えることにできるファンモータでは、回転速度の調整範囲(以下、速度設定指令可能範囲と呼ぶ。)を、排気性能と静音化を成立させる範囲で設定しているケースが多い。例えば、図7に示すように、速度度設定指令の値(PWM設定値)によってファンモータの速度が変化する場合は、PWM設定値を35%〜65%のように設定しており、装置内の風が流れる経路の状態や装置の設置場所による排気口近傍の状態などの装置環境が通常の状態であれば、上記範囲で十分な冷却、排気能力が得られる。
【0038】
しかしながら、図5に示すように静圧が大きくなると風量が低下し、図6に示すように風量が低下するとファンモータの回転速度が低下する。そのため、例えば、装置内の風が流れる経路や排気口近傍に排気を邪魔するものがあると静圧が高くなり、PWM設定値を速度設定指令可能範囲の上限である65%に設定しても、ファンモータの実際の回転速度が目標速度まで到達せず、必要な冷却、排気能力が得られない場合が生じる。
【0039】
この場合に、上記装置環境は画像形成装置側では認識できないため、装置環境が変化した場合でも十分な冷却、排気能力が得られるように、ファンモータの回転速度を設定し直す機能を画像形成装置に持たせる必要がある。
【0040】
そこで、本実施例では、ファンモータ速度制御部で、以下のような制御を実施する。
【0041】
例えば、図8(a)に示すように、図7の特性に基づいてPWM設定値を50%に設定し、ファンモータの実際の回転速度が目標速度になっている場合において、装置環境が変化してファンモータの回転速度が目標速度よりも低下したとする。その場合には、ファンモータ速度制御部は、予め設定した速度設定指令可能範囲内(例えば、30%〜60%)において、PWM設定値を上げて(例えば、60%に変更して)、目標速度になるようにする。
【0042】
また、図8(b)に示すように、PWM設定値を50%から60%に上げてもファンモータの回転速度が目標速度よりも低い場合には、ファンモータ速度制御部は、予め設定した速度設定指令可能範囲を広げ(例えば、30%〜70%に変更して)、再設定した速度設定指令可能範囲内において、PWM設定値を更に上げて(例えば、65%に変更して)、目標速度になるようにする。
【0043】
このように、目標速度と実際の回転速度とを比較し、目標速度と実際の回転速度との差から装置環境を推測し、速度設定指令可能範囲及びPWM設定値を変更して、ファンモータの回転速度を目標速度に近づける制御を行うことにより、装置環境が変化しても、画質劣化を起こさない冷却、排気能力を維持することが可能となる(図3参照)。
【0044】
上記制御により、通常の装置環境の変化であれば対応することができるが、PWM設定値を速度設定指令可能範囲の上限である70%に変更してもファンモータの回転速度が追従せず、画質劣化を起こすような場所に設置される場合も考えられる。
【0045】
この場合は、図8(c)に示すように、温度を検出する手段で検出した温度情報を用いて、ファンモータのコイル温度が安全規格で決められている温度を超えない範囲まで速度設定指令可能範囲を変更し(例えば、35%〜85%のように更に広げ)、PWM設定値をその速度設定指令可能範囲内で更に上げて(例えば、75%、80%のように変更して)、目標速度になるようにする(図4参照)。
【0046】
しかしながら、排気口が壁に接するような状態で画像形成装置を設置した場合など、特殊な装置環境では、PWM設定値を最大に広げた速度設定指令可能範囲の上限(例えば、85%)まで上げても、必要な冷却、排気能力が得られない場合がある。この場合は、速度設定指令可能範囲をこれ以上広げることができないため、図8(b)に示すような制御を行う。
【0047】
第1の方法として、ファンモータ速度制御部は、PWM設定値を速度設定指令可能範囲の上限である85%に設定し、かつ、ユーザに装置環境を変える必要があるというメッセージを通知する。そして所定時間が経過してもファンモータの回転速度が目標速度に達していなければ、ユーザがメッセージに気付かないと判断して装置を停止させる。
【0048】
また、第2の方法として、ファンモータ速度制御部は、PWM設定値を速度設定指令可能範囲の上限である85%に設定し、かつ、画像形成装置の動作条件を、熱やオゾンの発生が少なくなるような条件に変更する。例えば、印刷の度に熱やオゾンが発生することから、印刷間隔を広げて、現状のファンモータの回転速度でも、発生した熱やオゾンが十分に排気できるようにする。
【0049】
また、第3の方法として、画像形成装置内に複数のファンモータが設けられており、他のファンモータは目標速度で回転している場合に、ファンモータ速度制御部は、現在制御しているファンモータのPWM設定値は速度設定指令可能範囲の上限である85%に設定し、かつ、他のモータのPWM設定値を上げて目標速度以上で回転させる。
【0050】
上記いずれかの方法で制御することにより、PWM設定値を上げられない場合であっても、必要な冷却、排気能力を確保することができ、画質劣化を未然に防止することができる。
【0051】
なお、図1では、ファンモータを2つ、温度検出センサを1つ図示したが、ファンモータや温度検出センサの数量や配置は特に限定されない。また、上記実施例では、ファンモータとしてPWMで制御するモータを例示したが、本発明の制御の対象となるファンモータは回転速度が可変できるものであればよい。
【0052】
また、上記実施例では、ファンモータの制御を画像形成装置に対して実施したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、回転速度を可変することができるファンモータを備える任意の装置に対して、同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、回転速度を可変することができるファンモータを搭載した画像形成装置及びその画像形成装置におけるファンモータの速度を制御する制御方法並びに制御プログラムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置(タンデムカラープリンタ)の主要構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の主要構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置のモータ速度制御部における制御を模式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置のモータ速度制御部における他の制御を模式的に示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置のファンモータにおける風量と静圧の関係を模式的に示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像形成装置のファンモータにおける速度と風量の関係を模式的に示す図である。
【図7】本発明の一実施例に係る画像形成装置のファンモータにおける速度設定指令と速度の関係を模式的に示す図である。
【図8(a)】本発明の一実施例に係る画像形成装置におけるファンモータの速度制御方法(予め設定した速度設定指令可能範囲内で制御できる場合)を示す図である。
【図8(b)】本発明の一実施例に係る画像形成装置におけるファンモータの速度制御方法(再設定した速度設定指令可能範囲内で制御できる場合)を示す図である。
【図8(c)】本発明の一実施例に係る画像形成装置におけるファンモータの速度制御方法(限界値に再設定した速度設定指令可能範囲内で制御できる場合)を示す図である。
【図8(d)】本発明の一実施例に係る画像形成装置におけるファンモータの速度制御方法(限界値に再設定した速度設定指令可能範囲内で制御できない場合)を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置(タンデムカラープリンタ)
2 中間転写ベルト
3a〜3d 感光体(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
4a〜4d 現像器(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
5a〜5d 帯電装置(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
6 露光装置(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
7 中間転写ベルトクリーナ
8 給紙ローラ
9 手差し給紙ローラ
10 タイミングローラ
11 2次転写ローラ
12a 定着ローラ(加熱ローラ)
12b 定着ローラ(加圧ローラ)
13 排紙ローラ
14a、14b 両面経路搬送ローラ
15 廃トナーボックス
16 記録媒体収納部
17 カラーPCモータ
18 メインモータ
19 定着モータ
20 カラー現像モータ
21 現像モータ
22 両面搬送モータ
23 トナー補給モータ(イエロー、マゼンダ用)
24 トナー補給モータ(シアン、ブラック用)
25a〜25d トナーボトル(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
26a〜26d 攪拌羽(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
27 定着ループセンサ
28a〜28d カートリッジ(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)
29 両面搬送経路
30a、30b ファンモータ
31 温度検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転速度を可変できる1又は複数のファンモータと、
前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する制御部と、
を少なくとも備える画像形成装置において、
前記制御部は、前記目標速度と前記ファンモータの実際の回転速度とを比較し、前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置に、前記ファンモータの温度を検出する手段を備え、
前記制御部は、前記広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記手段で検出した温度に基づいて、前記ファンモータが正常に動作する温度の限界まで前記調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、前記画像形成装置の印刷間隔を広げる、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、目標速度で回転している他のファンモータの回転速度を上げる、ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
回転速度を可変できる1又は複数のファンモータを少なくとも備える画像形成装置における前記ファンモータの回転速度の制御方法であって、
前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する際に、
前記ファンモータの出力信号に基づいて、当該ファンモータの実際の回転速度を取得する第1のステップと、
前記目標速度と前記実際の回転速度とを比較する第2のステップと、
前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する第3のステップと、を少なくとも実行することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記画像形成装置に、前記ファンモータの温度を検出する手段を備え、
前記第3のステップでは、前記広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記手段で検出した温度に基づいて、前記ファンモータが正常に動作する温度の限界まで前記調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、
前記第3のステップでは、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、前記画像形成装置の印刷間隔を広げる、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、
前記第3のステップでは、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、目標速度で回転している他のファンモータの回転速度を上げる、ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項9】
回転速度を可変できる1又は複数のファンモータを少なくとも備える画像形成装置で動作する制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記ファンモータが目標速度で回転するように、予め設定した調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を設定する際に、前記目標速度と前記ファンモータの実際の回転速度とを比較し、前記予め設定した調整範囲内で回転速度を設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記予め設定した調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する制御部として機能させる、ことを特徴とする制御プログラム。
【請求項10】
前記画像形成装置に、前記ファンモータの温度を検出する手段を備え、
前記制御部は、前記広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記手段で検出した温度に基づいて、前記ファンモータが正常に動作する温度の限界まで前記調整範囲を広げ、当該調整範囲内で前記ファンモータの回転速度を再設定する、ことを特徴とする請求項9に記載の制御プログラム。
【請求項11】
前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、前記画像形成装置の印刷間隔を広げる、ことを特徴とする請求項10に記載の制御プログラム。
【請求項12】
前記画像形成装置に、当該画像形成装置の内部温度を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記限界まで広げた調整範囲内で回転速度を再設定しても、前記ファンモータの実際の回転速度が前記目標速度にならない場合に、前記センサで検出した温度に基づいて、前記内部温度が予め定めた温度になるように、目標速度で回転している他のファンモータの回転速度を上げる、ことを特徴とする請求項10に記載の制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8(a)】
image rotate

【図8(b)】
image rotate

【図8(c)】
image rotate

【図8(d)】
image rotate


【公開番号】特開2009−300684(P2009−300684A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154332(P2008−154332)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】