説明

画像形成装置及び真贋判別システム

【課題】特別な機器を必要とすることなく、容易に真贋判別を行うことが可能な情報が付された印刷物を生成する画像形成装置及び該画像形成装置を適用した真贋判別システムを提供する。
【解決手段】画像形成装置は、画像が形成された記録媒体が正当なものであるか否かを判別するための真贋判別情報を生成する真贋判別情報生成部4と、画像を記録媒体に形成する画像形成部30と、を備える。画像形成部30は、真贋判別情報生成部4により生成された真贋判別情報を含有する少なくとも1以上のマーカを記録媒体に形成する。このマーカは、黄色及び淡黄色の少なくとも何れかの色材で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判別用情報マーカを形成する画像形成装置及び該画像形成装置を適用した真贋判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー複写機や複合機などの高画質化に伴い、有償証券や商品券などを高い精度で容易に偽造することができるという問題が生じている。そこで、商品券などの偽造を防止し、真贋を判別するために、UV(紫外線)インキや蛍光インキといった特殊インキを用いて、商品券などの印刷物に偽造防止用情報や真贋判別用情報を組み込む技術が提案されている。
【0003】
例えば、上記問題の解決に関連する技術として、赤外線を吸収し、可視光を放出する光ルミネセンス体を含むインキを使用して、情報を印刷物に記録する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、上記問題を解決する技術として、真贋判別情報を無色又は白色で印刷物に形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
さらに、上記問題の解決に関連する他の技術として、非接触で電子的に読書き可能な無線タグ(例えば、RFID:Radio Frequency IDentification)を印刷物にシールによって貼り付ける技術も提案されている(例えば、特許文献3)。上記特許文献3では、IC(Integrated Circuit)チップと認証キーとが一致するか否かによって、真贋判別を行うことが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1記載の技術のように、紫外線や赤外線を使用するような仕組みは、特殊で高価なインキが必要となり、高コスト化してしまうという課題があった。また、赤外線などを使用して形成した情報の読取り時にも、赤外線源などを必要とすることもあり、さらに、特殊な波長域を読取れるセンサが必要となる場合もある。これにより、高コスト化してしまうという課題や装置が大型化してしまうという課題もあった。
【0006】
また、上記特許文献2記載の技術では、通常のカラー画像形成の際に使用されない無色や白色のインクが必須であり、真贋判別情報を形成するためだけに専用のインクを搭載するので、高コスト化や装置の大型化につながるという課題があった。
【0007】
さらに、上記特許文献3記載の技術では、印刷物へのRFIDの漉き込みや貼り付けなどに手間がかかるという課題があった。また、上記特許文献3では、真贋判別にRFIAタグの読出しや書込みのためのRFIDリーダやRFIDライタが必要となり、高コスト化及び装置の大型化という課題もあった。
【0008】
例えば、印刷物が商品券や図書券などのように、発行量及び流通量が多く、かつ、全国共通で使用できるようなものの場合には、偽造された場合の被害額や被害の範囲が大きくなるため、結果として厳密な管理や偽造防止策が必要となり、コストや手間がかかるのはやむを得ないとも考えられる。しかし、特定の商店街や店舗でのみ使用されるような割引券や引換券などにまでそのような仕組みが必要となると、販売促進活動の実施に二の足を踏みかねないことになる。
【0009】
本発明はこのような実情を鑑みてなされたものであり、上記課題を解決し、特別な機器を必要とすることなく、容易に真贋判別を行うことが可能な情報が付された印刷物を生成する画像形成装置及び該画像形成装置を適用した真贋判別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置は、画像が形成された記録媒体が正当なものであるか否かを判別するための真贋判別情報を生成する真贋判別情報生成手段と、画像を記録媒体に形成する画像形成手段と、を備え、画像形成手段は、真贋判別情報生成手段により生成された真贋判別情報を含有する少なくとも1以上のマーカを記録媒体に形成し、マーカは、黄色及び淡黄色の少なくとも何れかの色材で形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の真贋判別システムは、画像形成装置と情報処理装置とを備える真贋判別システムであって、画像形成装置は、画像が形成された記録媒体が正当なものであるか否かを判別するための真贋判別情報を生成する真贋判別情報生成手段と、画像を記録媒体に形成する画像形成手段と、を備え、画像形成手段は、真贋判別情報生成手段により生成された真贋判別情報を含有する少なくとも1以上のマーカを、黄色及び淡黄色の少なくとも何れかの色材を用いて記録媒体に形成し、情報処理装置は、マーカを読取るマーカ読取り手段と、マーカ読取り手段により読取られマーカが含有する真贋判別情報に基づいて、画像が形成された記録媒体の真贋判定を行う真贋判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特別な機器を必要とすることなく、容易に印刷物の真贋判別を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る真贋判別システムの概略機能構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る真贋判別システムに適用される真贋判別情報読取り端末の概略構成例を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置の表示部に表示される設定画面例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置の表示部に表示される設定画面例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る画像形成装置の表示部に表示される設定画面例を示す図である。
【図8】本実施形態に係る画像形成装置における真贋判別情報生成動作の流れの例を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態に係る画像形成装置により形成された印刷物の例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る真贋判別システムに適用される真贋判別情報読取り端末における真贋判別動作の流れの例を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態に係る真贋判別システムの概略機能構成例を示すブロック図である。
【図12】本実施形態に係る画像形成装置における真贋判別情報生成動作の流れの例を示すフローチャートである。
【図13】無給電画像表示部に表示されるマーカ形成例を示す図である。
【図14】本実施形態に係る画像形成装置における真贋判別情報生成動作の流れの例を示すフローチャートである。
【図15】本実施形態に係る真贋判別システムの概略機能構成例を示すブロック図である。
【図16】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図である。
【図17】本実施形態に係る画像形成装置により形成された印刷物の例を示す図である。
【図18】本実施形態に係る画像形成装置により形成された印刷物の例を示す図である。
【図19】本実施形態に係る画像形成装置により形成された印刷物の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態の例について、図面を用いて詳細に説明する。尚、以下では画像形成装置として孔版印刷装置を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る真贋判別システムの概略機能構成例を示す。本実施形態に係る真贋判別システム1は、図1に示すように、画像形成装置100Aと携帯端末500などの情報処理装置とを備えている。本実施形態では、画像形成装置100Aにより生成された印刷物に形成された真贋判別のための情報を含有するマーカなどを読取る情報処理装置として、携帯端末500を例に挙げて説明する。しかし、情報処理装置はこれに限定されるものではなく、例えば、スキャナ装置など、画像を読取ることができる装置であればよい。また、真贋判別情報を含有し、印刷物に形成されるものとして、マーカを例に挙げて説明したが、これに限定されるものでなく、真贋判別情報を含有していればどのようなものであってもよい。
【0016】
本実施形態に係る画像形成装置100Aは、操作部115、制御部20A、画像形成部30などを備えている。操作部115は、真贋判別モード指定部2と真贋判別パラメータ設定部3とを含んで構成されている。また、制御部20Aは、真贋判別を行う真贋判別情報生成部4を含んでいる。
【0017】
真贋判別モード指定部2は、印刷物の生成が正当な権利者あるいは実施者により行われたものであることを証明するための真贋判別用情報を含有するマーカなどを、画像形成装置100Aに形成させるか否かの設定をユーザから受け付ける。真贋判別パラメータ設定部3は、真贋判別用情報の形成処理時又は真贋判別用情報の読取り、抽出、解析処理時に必要な各種パラメータの設定をユーザから受け付ける。
【0018】
真贋判別情報生成部4は、真贋判別情報を生成する。真贋判別情報は、印刷物の生成が正当な権利者あるいは実施者により行われたものであることを証明するための機能と、正当性の処理・検証を行う際に伴う誤判断を抑制するロバスト性の機能と、を有している。画像形成部30は、真贋判別情報を含有するマーカなどを、画像形成された印刷物の全面もしくはその一部分に、肉眼では識別しにくいあるいは識別不能な画像形成部材により形成する。また、必要に応じて、当該有効な真贋判別情報を含有するマーカが形成される領域以外の部分に、真贋判別情報が偽あるいは無効であるようなダミーマーカを形成するようにしてもよい。尚、本実施形態では、記録紙などにマスタやプロッタを用いて画像形成を実現する画像形成部30が、真贋判別情報を含有するマーカを形成する例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、マーカを形成する機構を画像形成部とは他に設けることも可能である。しかし、装置の大型化や高コスト化を抑制するために、通常の画像形成を行う画像形成部にマーカ形成を行わせることが好ましい。
【0019】
携帯端末500は、真贋判定部6を含んで構成される制御部20B、マーカ読取り部5などを備えている。マーカ読取り部5は、印刷物に形成された真贋判別情報を含有するマーカの読取りを、例えば、デジタルスチルカメラ(DSC)などを用いて実現する。真贋判定部6は、マーカ読取り部5により読取られた真贋判別用マーカから真贋判別用情報を抽出し、当該印刷物の真贋を判定する。制御部20Bは、真贋情報読取り部5により読取ったマーカから真贋判別用情報を抽出し、当該印刷物の真贋を判定し、当該印刷成果物が正当な権利者あるいは実施者により行われたものであるか否かを明らかにするように、各部を制御する。
【0020】
本実施形態においては、画像形成装置として、熱可塑性フィルム(以下、適宜「マスタ」と略す)に熱穿孔プロセスを用いて潜像を形成し、潜像が形成されたマスタを、インキが充填された印刷ドラムに装填し、マスタが装填された印刷ドラムを回転させ、給紙された用紙と圧接させることにより、可視画像を形成するいわゆるデジタル孔版印刷装置を適用した場合を例に挙げ説明する。しかし、画像形成装置はこれに限定されるものではない。
【0021】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す。以下に、画像形成装置の例として、孔版印刷装置100の概略構成例について、図2に示す図を用いて説明する。
【0022】
図2に示すように、孔版印刷装置100は、装置本体100Aの内部に、マスタ107が外周面に巻着される印刷ドラム101と、印圧手段となるプレスローラ102と、製版装置となるプロッタ103と、排版手段104などを備えている。図2中において、装置本体100Aの右側に配置された給紙手段105から給紙される記録紙106をプレスローラ102で印刷ドラム101に押し当てることで、巻着されたマスタ107の画像を記録紙106に転写する。片面印刷の場合は、画像転写された記録紙106を搬送手段108で装置本体100Aの図中左側に配置された排紙手段109へと搬送する。他方、両面印刷の場合には、片面の印刷が終了した記録紙を、切替え部材121により再給紙手段122に導き、再び給紙させることにより裏面に印刷を行う。
【0023】
装置本体100Aの上部には、画像読取手段となるカラースキャナ110が配置されている。カラースキャナ110は、原稿画像を読取り、製版に用いる画像データを取得する。また、装置本体100Aの上部正面には、孔版印刷装置100の操作部となる操作パネル111が配設されている。操作パネル111には、印刷や製版の切替えキー113、スタートキー114、初期設定/プリンタ設定キー116、印刷位置調整キー117、プリントスピード設定キー118などが配備されている。尚、操作パネル111の配備されるキーは上記に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、操作部115の一部又は全てを、表示部を兼ね備えたLCD(Liquid Crystal Display)のタッチパネルとすることもできる。この場合、表示部の画面には、各種案内情報や各種操作画面が適宜表示され、操作画面が、ユーザあるいは装置操作者によって操作されると、各画面に表示されたスイッチに対応した内容が制御手段20や孔版印刷装置100に設定される。
【0024】
装置本体100A内には、孔版印刷装置100の各部を制御する制御手段20Aが配設されている。制御手段20Aは、図3に示すように、実装基板となるACU200(Application Control Unit)とECU300(Engine Control Unit)の2つに大きく分かれている。
【0025】
ACU200は、操作パネルインターフェース(I/F)205、SD(Secure Digital)I/F206、HDD(Hard Disk Drive)I/F208、USB(Universal Serial Bus)I/F209、NIC(Network Interface Card)I/F212、無線LAN(Local Area Network)I/F214、ECU I/F215、CPU(Central Processing Unit)216、RAM(Random Access Memory)217、ROM218(Read-Only Memory)、ASIC(Application Specified IC)220、I/O I/F221、FAX I/F222などを備えている。尚、ACU200は上記構成を全て備える必要はなく、また、上記構成に追加して、他の構成を備えていてもよい。
【0026】
操作パネルI/F205は、孔版印刷装置100の操作パネル(タッチパネル)111が接続される操作パネル用のインターフェースである。SD I/F206は、携帯型大容量記憶メディアであるSDメモリーカード201を接続するためのインターフェースである。USB I/F209は、USBメモリ203を接続するためのインターフェースである。HDD I/F208は、大容量記憶装置となるハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)207が接続されるインターフェースである。NIC I/F212は、パソコンなどの情報端末に対してLANやインターネットなどのネットワークを介してアクセスするためのネットワークインターフェースカード(NIC)202を接続するための通信インターフェースである。
【0027】
無線LAN I/F214は、無縁LANカードを接続するための通信インターフェースである。I/O I/F221は、無給電画像表示装置である電子ペーパー400を接続するためのインターフェースである。FAX I/F222は、FAXモジュールを接続するためのインターフェースである。ECU I/F215は、ECU300側と接続するためのインターフェースである。CPU216は、中央演算回路であり、各部の制御を行う。RAM217及びROM218は、記憶手段である。そして、上記した構成は、ASIC220を介して接続されている。
【0028】
ACU200は、孔版印刷装置100の製版又は蓄積の制御などを行い、スキャナあるいはネットワーク経由で転送されてくる文書を蓄積文書としてHDD207に蓄積する。そして、スキャナやHDDに蓄積された蓄積文書あるいはネットワーク経由で転送された文書データから、最終的に製版データを作成した後、ECU300に転送する。
【0029】
ECU300は、中央演算回路となるCPU321、記憶手段となるRAM322及びROM323、ACU200が有するECUインターフェース(I/F)215と接続されるACUインターフェース(I/F)324、スキャナ110が接続されるスキャナインターフェース(I/F)326、プロッタ103が接続されるプロッタインターフェース(I/F)328を備え、それぞれASIC329を介して接続されている。
【0030】
ECU300は、デジタル式孔版印刷装置の製版から印刷に至る動作全般を制御するものである。具体的には、ECU300は、ACU200において作成された製版データに基づいて、プロッタ103により、孔版原紙となるマスタの感熱孔版フィルム119に熱的プロセスによって穿孔を行うことで製版済みのマスタを作成し、この製版済みのマスタ107を印刷ドラム101となる版胴の外周面に巻装し、印刷ドラム101内部に設置されたインキパック120から、インキを供給しながら印刷ドラム101を回転させ、それに呼応させるように記録紙(印刷用紙)106を給紙することにより印刷物を得る、という一連の動作を制御する。尚、孔版印刷装置としては、片面印刷機や両面印刷機の何れであってもよく、特に限定されない。
【0031】
本実施形態においては、画像形成装置(孔版印刷装置)100は、通常の印刷物の生成と印刷物に真贋判別用情報を含有するマーカを形成する役務を負うが、印刷物上に形成されたマーカを読取り、真贋判別を行うのは、例えば、DSC付き携帯端末などが負っている。DSC付き携帯端末は、世の中に広く一般に普及している端末機器であり、DSCにより写真を撮るだけでなく、QRコードなどの2次元バーコードを読取り、当該コードに含まれているURLからインターネットにアクセスし、情報を得るということを実現している。そのため、携帯端末は、マーカ読取り及び真贋判別を行う装置として十分な性能と機能を有している。尚、マーカ読取り及び真贋判別を行う装置は携帯端末に限定されるものではなく、例えば画像形成装置のスキャナでマーカを読取り、画像形成装置の制御部で真贋判別を行うようにしてもよい。
【0032】
図4は、本実施形態に係る真贋判別システムを構成する端末の概略構成例を示す。図4では、真贋判別システムを構成する端末が携帯端末である例を挙げて示しているが、これに限定されるものではない。
【0033】
図4に示すように、本実施形態に係る真贋判別システムに適用される携帯端末は、通話やメール送受信を行うための無線ユニット(RF)501、カメラ撮影を行うデジタルスチルカメラユニット(DSC)502、携帯端末のメニュー表示やDSC502で撮影した画像を表示する表示部であるディスプレイユニット(例えば、LCD)503、送話・受話・着信音などに使用するオーディオユニット(Audio)504、携帯端末を操作するための操作部であるキーパッド505、記憶手段となるRAM508及びROM507、中央演算回路となるCPU509などを備えている。上記した構成は、一般的な携帯端末が備える構成であり、本実施形態で適用する携帯端末は、携帯端末上で真贋判別用のアプリケーションを実行する以外には真贋判別を行うための専用の構成を備える必要はない。
【0034】
次に、孔版印刷装置の真贋判別モードの設定について、図5〜図7を使用して説明する。図5〜図7に示す図は、孔版印刷装置の操作/表示用タッチパネル(以下、単に「操作パネル」、「タッチパネル」、「LDCD」などと呼称する)に表示される操作/表示画面の例である。尚、図5〜図7に示す表示画面は例であり、これに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0035】
図5は、図示しない「システム初期値設定」−「動作設定」項目ボタンを選択した場合に表示される画面例を表している。図5に示すような画面を介して、ユーザは、孔版印刷装置の動作に関する設定を行うことができる。尚、図5では、「真贋判別指定」−「する」と設定されているが、これは後述する操作により設定された結果が表示されたものである。
【0036】
図5に示すような画面において、「真贋判別指定」項目を選択すると、図6や図7に示すようなサブメニューが表示される。当該サブメニューにおいて、ユーザは、真贋判別モードの設定の有無や真贋判別用情報を形成する場合にどのようなパラメータで行うかの設定を行うことができる。図6や図7に示される項目や値を設定しているが、これらの項目の意味などについては後述する。
【0037】
本実施形態では、印刷物が正当な権利者あるいは実施者により印刷されたものであることを証明する方法として、秘密分散法、特に(k、n)閾値秘密分散法を使用する場合を例に挙げて説明する。尚、秘密分散法自体は、そのアルゴリズムとともによく知られているものである。尚、印刷物が正当な権利者あるいは実施者により印刷されたものであることを証明する方法は、上記方法に限定されるものではなく、既知の方法を適用することができる。
【0038】
(k、n)閾値秘密分散法では、まず、秘密情報Sをn個のシェアと呼ばれる分散情報に分散符号化する。その後、分散情報は、例えば、特定の人に認証キーなどとして配布して使用される。秘密情報を得るには、散開されたn個の分散情報のうち、任意の閾値であるk個の分散情報を集めれば、秘密情報Sを復号できる。他方、集めた分散情報がk−1個では、秘密情報Sを復号できない。上記内容は下記(式1)で表すことができる。
【0039】
【数1】

【0040】
(式1)に示すように、各分散情報w1、w2、・・・、wk−1は、k個のk−1次多項式で表される。ここで、Sは秘密情報、x1、x2、・・・、xkはIDと呼ばれ、素数pにおけるガロア体GF(p)の原始根である。また、r1、r2、・・・、rk−1は乱数であり、ガロア体GF(p)の元である。
【0041】
以降の説明を簡略化にするために、本実施形態では、秘密情報S=9、k=3、n=4、p=11、x1=2、x2=6、x3=7、x4=8、r1=1、r2=1とする例を挙げて説明するが、これらのパラメータの値はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、パラメータの設定項目も、秘密情報S以外の設定値は、真贋判別システムとして固定値あるいはデフォルト値として固定化してしまい、本システムの利用者は、秘密情報S以外は関知しなくてよいものとしてもよく、特に限定されない。
【0042】
図8は、本実施形態に係る画像形成装置における真贋判別情報生成動作の流れの例を示す。図9は、本実施形態に係る画像形成装置により形成された印刷物の例を示す。図10は、実施形態に係る真贋判別システムに適用される真贋判別情報読取り端末における真贋判別動作の流れの例を示す。以下に、上記(k、n)閾値秘密分散法を、引換券が付属したチラシ広告の印刷に適用した例を示しながら、真贋判別システムの動作について説明する。ただし、図9の(a)に示すようなチラシ広告を作成するカラー画像印刷については、既知の画像形成プロセスを適用するため、その説明を省略する。尚、図9は、モノクロで示されているが、カラー画像であるものとする。
【0043】
図示しない孔版印刷装置100の製版キーが押下されると(ステップS801)、孔版印刷装置の制御部20Aは、指定されたモードを参照し(ステップS802)、真贋判別モードが指定されているか否かを判断する(ステップS803)。真贋判別モードが指定されていないと判断された場合(ステップS803/通常製版モード)、スキャナあるいは蓄積文書の読み込みを行う(ステップS810)。
【0044】
他方、真贋判別モードが指定されていると判断された場合(ステップS803/真贋判別モード)、制御部20Aは、真贋判別パラメータの参照を行う(ステップS804)。その後、真贋判別情報生成部4は、上記指定や設定に基づいて真贋判別用の情報を生成する(ステップS805)。より詳細には、真贋判別用のパラメータを上記(式1)に適用すると、係数行列Gは下記(式2)のようになり、これによりシェアは下記(式3)に示すように求められる。即ち、例えば、図5〜図7に示すような設定がなされている場合には、真贋判別用情報(分散情報)として、4つの(ID、シェア)のペア、(2、4)、(6、7)、(7、10)、(8、4)を得ることができる。
【0045】
【数2】

【0046】
【数3】

【0047】
次に、生成した真贋判別用情報(例えば、(ID、シェア)のペア)を、印刷物にマーカとしてどのような形態で形成するかを決定する(ステップS806)。本実施形態では、図9の(b)に示すように、単なる算用数字の画像として真贋判別情報を含有するマーカを形成している。尚、本実施形態では、IDとシェアの数字のペアが正立像で置かれた例を示しているが、倒立像や回転された像あるいは装飾化された像で配置されていてもよく、これに限定されるものではない。但し、倒立像などを配置した場合、後述する真贋判別アプリケーションは、そのような像から正しく真贋判別用情報を抽出できる機能を持たなければならない。尚、真贋判別情報を含有するマーカの形態は、数字など限定されるものではない。
【0048】
その後、制御部20Aは、生成したマーカを所定の印刷領域に割り振る(ステップS807)。このとき、図9に示す例では、閾値がk=3であるため、各々の引換券には上記4つの(ID、シェア)ペアのうち、少なくとも3個は、正常に読取れるような状態で画像形成されていなければならない。本実施形態では、引換券印刷領域全体に、(ID、シェア)ペアを割り付けているため、切り取り線や境界線に重なるものもあるが、各引換券の印刷領域には、欠けや跨ったマーカのない完全なマーカが少なくとも3個は重複することなく割付けられている。もちろん、各引換券印刷領域に確実にマーカが収まるように、境界線・切り取り線からのマージンを指定して、割り付け処理を行ってもよい。
【0049】
尚、本実施形態では、有効な真贋判別用情報のマーカを引換券印刷領域に割り付けているが、さらに、無効な真贋判別用情報のマーカを生成し、引換券印刷領域以外の領域(例えば、図9の(b)の領域E)に割り付けている。このようなダミーのマーカを引換券印刷領域以外の領域配置しても、実際の使用においては、引換券は切り離された状態で使用される。このため、真贋判別において対象とされるのは、有効な真贋判別用情報のマーカのみとなる。つまり、真贋判別にダミーマーカが影響を及ぼすことはない。このようにダミーマーカを配置することにより、引き換え券印刷領域のみにマーカを印刷することによるあからさまな情報秘匿の痕跡を軽減することができる。
【0050】
次に、画像形成プロセスの1つである製版を行い(ステップS808)、記録紙などに画像やマーカの印刷を行う(ステップS809)。本実施形態では、真贋判別用情報を示すマーカを、図9に示すような広告チラシの一部分を切り離して使用される引換券の裏側に印刷している。しかし、本発明の適用は、広告チラシ以外にも可能であることは言うまでもない。また、マーカの形成箇所は、印刷物の裏面に限られるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0051】
尚、本実施形態では、マーカを形成するときの色材(インキ)として、黄色及び淡黄色の少なくとも何れかのインキを使用している。これは、特殊な場合を除き、印刷用紙は白色であり、白地における黄色や淡黄色の像は、人間の目では識別しにくい特性を利用したものである。また、引き換え者がマーカに気づいた場合であっても、マーカからはそれが何を意味するものなのかを引き換え者は理解することはできない。
【0052】
上述したように生成された真贋判別用情報付きの印刷物は、特定人又は不特定多数に配布される。本実施形態に係る真贋判別システムは、特定人及び不特定人に配布された場合であっても適用することが可能である。
【0053】
例えば、上述したように生成された図9に示す広告チラシを入手し、当該引換券を使用しようとする引き換え者は、引換券を切り離して使用する。以下に、図10に示すフローチャートを用いて、印刷物が正当なものであるか否かの真贋判別を行う動作例について、図9に示したような広告チラシを例に挙げて説明する。
【0054】
引換券の発行者もしくは引き換えの実施者は、差し出された引換券に形成されたマーカを、当該真贋判別アプリケーションがインストールされているDSC付き携帯端末500のマーカ読取り部5によって読取る(ステップS1001)。真贋判別部6は、マーカ読取り部5によって読取られた画像のマーカから(ステップS1002)、真贋判別用の情報を抽出する(ステップS1003)。尚、マーカ読取り時にはフィルタリングが施され、マーカが黄色・淡黄色インキにより形成されている場合、補色である青色フィルタが用いられる。実際には、携帯端末などに装備されているDSCのカラーセンサはRGB系のフィルタが多いため、上記の場合、撮像データのうちB(青)画素データを処理すればよい。これにより、図9に示す例では、引換券Aからは、正常に読取れた(2、4)、(7、10)、(8、4)の3個の(ID、シェア)ペアが分散情報(真贋判別用情報)として抽出される。
【0055】
上述のようにして得た真贋判別用情報は、上記した分散情報の生成の過程(式1)〜(式3)からわかるように、下記(式4)を満たすので、携帯端末500に搭載された真贋判別アプリケーションにより、(式4)から秘密情報Sを導き出すことができる(ステップS1006)。そして、真贋判別部6は、上記ステップS1006において導き出された秘密情報Sを真贋判別情報生成時の秘密情報と比較し(ステップS1007)、導き出された秘密情報Sと真贋判別情報生成時の秘密情報とが一致するか否かを判断する(ステップS1008)。導き出された秘密情報Sと真贋判別情報生成時の秘密情報とが一致した場合(ステップS1008/YES)、真贋判別部6は、印刷物(ここでは、広告チラシ)の生成が、正当な権利者あるいは実施者により行われたものであると判断し、その旨を携帯端末に表示させる(ステップS1009)。これをもって、引換券の発行者もしくは引き換えの実施者は、引き換え者に所定の景品を引き渡すことになる。
【0056】
【数4】

【0057】
他方、真贋判別用情報が抽出できない場合(ステップS1004/NO)や、抽出した真贋判別情報(例えば、(ID、シェア)ペア)が閾値(本実施形態の例では3個)未満であった場合(ステップS1005/NO)は、当該印刷物(例えば、広告チラシ)の生成が、正当な権利者あるいは実施者により行われたものではないと判断し、その旨を携帯端末500の表示部に表示させる(ステップS1010)。また、上記ステップS1005において閾値以上の(ID、シェア)ペアが読取れた場合(ステップS1004/YES、ステップS1005/YES)であっても、上記ステップS1008において正しい秘密情報を導き出せなかった場合(ステップS1008/NO)には、当該印刷物(例えば、広告チラシ)の生成が、正当な権利者あるいは実施者により行われたものではないと判断し、その旨を携帯端末500の表示部に表示させる(ステップS1010)。
【0058】
尚、本実施形態では、DSC付き携帯端末500が、印刷物上に形成されたマーカの読取り及び真贋判別を行う例を挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、画像形成装置自身に具備されているスキャナを介して、真贋判別情報を含有するマーカを読取り、真贋判別アプリケーションにより真贋判別を行う構成や、デジタルスチルカメラ単体機に真贋判別アプリケーションを組み込んで真贋判別を行う構成とすることもできる。
【0059】
本実施形態により、特殊で高価なインキやハンドリングの面倒なRFIDタグ、またそれらを読書きするための特別な機器を必要とすることなく、かつ、ある程度の偽造防止効果を持った印刷物を生成することが可能となる。また、本実施形態のマーカは、真贋判別の埋め込み又は抽出に伴う誤判定因子、例えば、印刷ムラ、印刷物のシワや擦れなどによる画像劣化などに対してロバスト性を有しているので、より信頼性の高い真贋判別を行うことができる。
【0060】
さらに、マーカを形成する画像形成部材を黄色・淡黄色など単独でも肉眼では識別が困難あるいは識別しづらい色材、または、背景色との兼ね合いにより肉眼では識別が困難あるいは識別しづらい色材を用いることで、利用者に対して、真贋判別用情報の存在を隠蔽又はその存在を認識しにくくしているので、偽造を抑止することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、真贋判別用情報を複数の情報に分散し、複数の分散した情報を複数のマーカに割り振っている。つまり、真贋判別用の情報は、分散された情報のうち、規定の個数以上が揃わなければ復元できないいわゆる秘密分散法に則ったものであるため、真贋判別の手段として有効であり、また、単に分散情報を取得しただけでは、秘密情報を得ることができない。これにより、より精度良く印刷部の偽造を抑止することが可能となる。さらに、マーカの読取りエラーによって、真贋判別において偽物であるという誤判定がなされることを防止することも可能となる。
【0062】
さらに、秘密分散法によってマーカを配置することで、真贋判別において最低限必要な分散情報を、真贋判別対象となる領域に確実に形成することが可能となる。
【0063】
(実施形態2)
本実施形態では、無給電画像表示部を利用した真贋判別システムについて説明する。尚、上記実施形態1と同一又は同様の構成には同一符号を付し、既に説明した構成上及び機能上の説明は省略して、要部のみ説明する。
【0064】
図11は、本実施形態に係る真贋判別システムの概略機能構成例を示す。図11に示すように、本実施形態に係る画像形成装置は、上記実施形態1に係る画像形成装置の構成に加え、無給電画像表示部400を備えている。無給電画像表示部400は、例えば、電子ペーパーなどであり、書込み時や消去時には電力を必要とするものの、無給電で表示画像を保持することができる。本実施形態では、これから印刷物に付加しようとするマーカを、肉眼で確実に認識できるような色相に変換した後、無給電画像表示部400によって表示させる。これにより、正当な権利者あるいは実施者に、マーカの付加具合を確認させることができる。尚、制御部20Aは、上記実施形態1において説明した各部の制御に加え、マーカを肉眼で確実に認識できるような色相に変換した後、無給電画像表示部400によって表示させるための制御も行う。
【0065】
図12は、本実施形態に係る画像形成装置における真贋判別情報生成動作の流れの例を示す。図12に示すように、本実施形態におけるステップS1201〜ステップS1207までの処理は、上記実施形態1にて説明した上記ステップS801〜ステップS807と同様であるため説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、印刷領域にマーカを割り付けた後(ステップS1207)、電子ペーパーなどの無給電画像表示部400の表示用画像を生成し(ステップS1208)、無給電画像表示部400に表示させる(ステップS1209)処理が追加されている。この時、無給電画像表示部400の表示用に生成される画像は、図13に示すように、実際の製版・印刷のデータではなく、印刷物に付加しようとするマーカを、肉眼で確実に識別できるような色相に変換したデータである。本実施形態では、無給電画像表示部400に表示させるマーカ色を赤に変換している。これは、実際に形成されるマーカは、広告と異なり目立たせるものではなく、むしろ隠蔽すべきものであるため、黄色・淡黄色などの識別しにくいインキにより形成されるためである。これにより、正当な権利者あるいは実施者は、印刷物に付与される真贋判別用情報(マーカ)の配置具合を、実際に印刷物を生成する前に、容易に確認することができる。また、正当な権利者あるいは実施者は、配置パラメータ(境界線・切り取り線からのマージン)などを確認しながら、マーカの配置などを調整することができる。
【0067】
孔版印刷装置に付属する電子ペーパーは、チラシ広告などの印刷物を実際に製版・印刷する前のサンプル見本を製版・印刷する替わりに、仕上がりイメージ画像を電子ペーパーに出力表示して、印刷物の出来上がり具合を確認するということに用いられてきた。また、他の使い方として、社内文書やプレゼンテーション用文書などの印刷物を、実際に製版・印刷する前に、カラーユニバーサルデザイン(CUD)の観点から見直すために用いられていた。具体的には、生成しようとしている印刷物が、P型色覚異常者(赤色を感じにくい色覚異常)あるいはD型色覚異常者(緑色を感じにくい色覚異常者)の目から見るとどのように見えるかを、特殊なカラーフィルタリング処理を施すことによって、擬似的に電子ペーパーに表示させることによって確認し、問題点があればフィードバックして修正していた。
【0068】
本実施形態では、上記のような電子ペーパーの使用に加え、電子ペーパーを肉眼で識別しにくい、いわば潜像ともいうべき画像の確認に対しても使用しているため、電子ペーパーのさらなる有効活用を図ることができる。
【0069】
本実施形態により、正当な権利者あるいは実施者は、試し印刷やサンプル見本印刷などによる用紙やインキなどの印刷部材を消耗することなく、印刷前に、マーカの形成具合を確認することが可能となる。つまり、印刷部材の消耗を防止することが可能であり、かつ有効な真贋判別情報を付された印刷物を確実に生成することが可能となる。
【0070】
(実施形態3)
本実施形態では、マーカ形成に使用されるべきインキ以外が画像形成装置に装着されていた場合に警告を行う構成について説明する。尚、上記実施形態と同一又は同様の構成には同一符号を付し、既に説明した構成上及び機能上の説明は省略して、要部のみ説明する。
【0071】
本実施形態では、マーカの形成処理を行うに際し、黄色・淡黄色などの単独でも肉眼では識別が困難あるいは識別しづらい色材、又は、背景色との兼ね合いにより肉眼では識別が困難あるいは識別しづらい色材、以外のインキが画像形成装置の印刷ドラムに装填されていた場合に、その旨の警告を行うとともに、当該状態から製版・印刷を行えないようにしている。
【0072】
より詳細には、図14に示すように、上記実施形態1と同様に真贋判別モード指定を参照し(ステップS1402)、真贋判別モードが設定されていた場合(ステップS1403/真贋判別モード)に、本実施形態では印刷ドラム101のインキの種類をチェックする(ステップS1411)。印刷ドラム101には、例えば、4個のディップスイッチが設けられており、これらを電気的に読取ることにより、制御部20Aは、どのようなインキが装着された印刷ドラムかを判別することができる。尚、インキの種類のチェック方法は、上記限定されるものではなく、何れの既知の方法でも適用することができる。
【0073】
本実施形態では、マーカ形成に用いるインキは、黄インキのみとしている。したがって、黄インキ以外のインキが装着された印刷ドラム101であると判断した場合(ステップS1412/NO)、制御部20は、その旨の警告表示や適切なインキリストなどを表示部に表示させ、ユーザに黄インキ印刷ドラムの装着を促す(ステップS1413)。尚、制御部20は、適切なインキを含む印刷ドラムが装着されるまでは、製版・印刷(ステップS1408及びステップS1409)処理を実行できないように制御する。また、所定時間内に適切なインキを含む印刷ドラムが装着されなかった場合には、真贋判別情報生成処理を終了させるようにしてもよい。
【0074】
本実施形態により、不適切なインキを用いたマーカ形成を未然に防ぐことが可能となる。また、ユーザは、何れの印刷ドラムを装填すべきかを簡単に把握することができる。
【0075】
尚、上記実施形態1〜実施形態3で説明したように、画像形成方式として孔版印刷を採用することで、PPCやMFPが主に採用している電子写真方式と異なり、版というものを予め一度だけ作るという手間はあるが、それ以降の印刷に関しては、単に機械的にプリントするだけの工程となるので、結果的に高速に処理することが可能となる。
【0076】
(実施形態4)
本実施形態では、画像形成装置としてインクジェット方式の画像形成装置を適用した場合について説明する。尚、上記実施形態と同一又は同様の構成には同一符号を付し、既に説明した構成上及び機能上の説明は省略して、要部のみ説明する。
【0077】
本実施形態に係る真贋判別システムが上記実施形態2と異なるところは、図15及び図16に示すように、画像形成装置としてフルカラーで両面印刷可能なインクジェット方式の印刷装置を適用したところである。尚、上記インクジェット印刷装置としては、印刷方法が、プリントヘッドサイズが通紙可能な用紙幅サイズに対して狭いため、プリントヘッドの往復運動によって行ういわゆるシリアルヘッド方式のものであっても、プリントヘッドサイズが実質的に通紙可能な用紙幅サイズになどしく、往復動作を必要としないいわゆるフルラインヘッド方式のものであってもよい。
【0078】
画像形成装置として孔版印刷装置を適用する場合、孔版印刷装置が仮に両面印刷可能なものであったとしても、印刷ドラムは1本(一色分)しかないため、基本的に、主たる広告面(印刷用紙表面)と真贋判別用情報印刷面(印刷用紙裏面)は同時に印刷できない。唯一できるのは、広告面の黄版を印刷する場合のみである。他方、画像形成装置としてインクジェット印刷装置を適用した場合、上記のような制約はないため、一度に主たる広告面(印刷用紙表面)と真贋判別用情報印刷面(印刷用紙裏面)を同時に印刷することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、IDとシェアの数字のペアをそのままアラビア数字の像で配置した例を挙げて説明したが、本実施形態では、図17に示すように、各々の段(1次元バーコード)に、それらの数字のペアを入れ込み、それらを積層した構造のいわゆるスタック型の2次元コードという形態で、マーカを形成している。
【0080】
マーカ形態としてスタック型の2次元コードを適用した場合であっても、画像形成装置において秘密情報から真贋判別情報を生成する処理や携帯端末によって真贋判別情報を抽出してから秘密情報を算出する処理は、そのまま流用ができるので、マーカの形態に合わせたインターフェース部分を変更するだけでよい。つまり、マーカとしてスタック型の2次元コードを適用する場合、画像形成装置には、2次元コードの生成モジュール(アプリケーション)が必要となり、携帯端末には、真贋判別アプリケーションだけでなく、フロントエンドとして2次元コード読取りアプリケーションが必要となる。
【0081】
また、一般的な1次元バーコード及び2次元コードと異なり、本実施形態では1次元バーコードや2次元コードを黄色・淡黄色インキで形成しているため、ユーザはこのようなコードが付与されていることを認識しにくくなり、偽造抑制にもなっている。ユーザによって分散情報が把握できたとしてもそれ自体では何の意味も持たないが、それでも分散情報を直接的に数値の形態で印刷するのではなく、2次元コードの形態とすることにより、分散情報を直接読取られるようなことがなくなり、偽造抑止のさらなる効果が期待できる。
【0082】
尚、上記では、1種類の1次元バーコード又は2次元コードをマーカの形態として適用する例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、マーカの形態として、複数の異なる種類からなる1次元バーコードや2次元コードを適用することもできる。これにより、真贋判別用情報の存在自体を認識されてしまった場合であっても、その内容を簡単に取得できないため、偽造抑制の精度を向上させることができる。
【0083】
本実施形態により、真贋判別情報を付した印刷物の生成を効率よく行うことが可能となる。また、マーカを1次元バーコードや2次元コードとすることにより、ユーザに真贋判別用情報の存在自体を認識されてしまった場合であっても、その内容を簡単に取得できないため、印刷物偽造防止の精度を向上させることが可能となる。
【0084】
尚、上記実施形態1〜3におけるマーカの形態は、IDとシェアの数字のペアをそのままアラビア数字の像に限定されるものではなく、本実施形態と同様に、1次元バーコードや、2次元コードやその組み合わせとすることも可能である。
【0085】
(実施形態5)
本実施形態では、マーカの形態として上記実施形態4で示した2次元コードとは異なる2次元コードを適用した場合について説明する。尚、上記実施形態と同一又は同様の構成には同一符号を付し、既に説明した構成上及び機能上の説明は省略して、要部のみ説明する。
【0086】
本実施形態では、図18に示すように、上記実施形態4において適用した2次元コードとは異なる2次元コードをマーカの形態として適用し、さらにダミーのマーカも追加している。図18では、2次元コードとしてQRコードを適用した場合を例に挙げて示しているが、これに限定されるものではない。
【0087】
本実施形態では、正規の真贋判別情報を含有するマーカである2次元コードは、黄色・淡黄色インキで形成されている。他方、ダミーマーカは黒インキなどで形成されている。ダミーマーカには、例えば、印刷物である広告チラシの発行者のホームページを示すURLなどを格納しておくことができる。これにより、マーカを2次元コード読取りアプリケーションを実行可能な携帯端末で読取ると、チラシ発行者のホームページが携帯端末上に表示される。もちろん、ダミーマーカから抽出したデータを真贋判別アプリケーションが受け取っても、ダミーマーカが含有する情報による真贋判別の結果は、偽または無効であるので、ダミーマーカの存在が真贋判別の結果に影響を及ぼすことはない。
【0088】
容易に目視で確認できるダミーマーカの存在は、注意を正規のマーカからそらすことができるので、偽造抑止の効果が期待できる。尚、本実施形態では、ダミーマーカの形成に黒インキを使用する例を挙げて示しているが、これに限定されるものではない。例えば、マゼンタインキあるいはシアンインキを使用してダミーマーカを形成し、読み取り時には、その補色となるフィルタを使ってあるいは補色のフィルタがかけられている画素データを使って、埋め込まれた情報を取り出し、さらに別手法の真贋判別の用に供するような使い方をしてもよい。
【0089】
本実施形態により、印刷物に容易に目視で確認できるダミーマーカを形成することで、注意を正規のマーカからそらすことができ、偽造抑止効果を向上させることが可能となる。また、ダミーマーカを別の真贋判別方法に使用し、複数の真贋判別方法を併用することで、真贋判別の信頼性を向上させることが可能となる。さらに、真贋判別に複数の独立した方法を併用することで、ある方法が真贋判別に使用できなくなった場合であっても、真贋判別方法を別の方法に切替えることができ、真贋判別の可用性を向上させることが可能となる。
【0090】
(実施形態6)
本実施形態では、複数の真贋判別方法を併用して適用した場合について説明する。尚、上記実施形態と同一又は同様の構成には同一符号を付し、既に説明した構成上及び機能上の説明は省略して、要部のみ説明する。
【0091】
本実施形態では、上記実施形態4に、さらに他の真贋判別方法を適用して併用している。本実施形態では、上記実施形態4で示した真贋判別方法とは異なる真贋判別方法として、例えば、図19に示すように、導電性インキによる印刷を用いている。これは、導電性物質としてカーボングラファイトを使用しているものであり、パッド部分(図19中のd領域)の間で、導通を確保するようにパターンが配置されている。このような導電性インキは、一見すると黒のインキで印刷されたもののように見えるが、パッド部分dに導通チェッカーを当てると、導通が確認されるので、通常の黒インキで印刷されたもの偽造印刷物と区別することができる。
【0092】
しかしながら、この方法では、導電性インキという特殊インキと、導通を確認するために、例えば、導通チェッカーという機器が必要となるが、上述したような導電性物質としてカーボン系の材料を使用するものは、材料自体が安価である。また、導通チェッカーも安価で流通しており、簡易な真贋判別の併用手段としては妥当なものといえる。
【0093】
尚、本実施形態では、真贋判別用情報を用いる真贋判別方法と併用する別の真贋判別方法として、導電性インキを使用する方法を示したが、この方法に限られるわけではなく、他の方法を適用することも可能である。
【0094】
本実施形態により、複数の真贋判別方法を併用することで、真贋判別の信頼性を向上させることが可能となる。さらに、真贋判別に複数の独立した方法を併用することで、ある方法が真贋判別に使用できなくなった場合であっても、真贋判別方法を別の方法に切替えることができ、真贋判別の可用性を向上させることが可能となる。
【0095】
尚、各図のフローチャートに示す処理を、CPUが実行するためのプログラムは本発明によるプログラムを構成する。このプログラムを記録するコンピュータ読取り可能な記録媒体としては、半導体記憶部や光学的及び/又は磁気的な記憶部などを用いることができる。このようなプログラム及び記録媒体を、前述した各実施形態とは異なる構成のシステムなどで用い、該システムのCPUで上記プログラムを実行させることにより、本発明と実質的に同じ効果を得ることができる。
【0096】
また、上記した複数の実施形態を組み合わせることも可能であり、組み合わせる実施形態の数や種類は特に限定されない。
【0097】
以上好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した画像形成装置及び真贋判別システムに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
1 真贋判別システム
2 真贋判別モード指定部
3 真贋判別パラメータ設定部
4 真贋判別情報生成部
5 マーカ読取り部
6 真贋判定部
20A 制御部
20B 制御部
30 画像形成部
100A 画像形成装置
101 印刷ドラム
102 プレスローラ
103 プロッタ
104 排版部
105 給紙部
106 記録紙
107 マスタ
108 搬送部
109 排紙部
110 スキャナ
111 操作パネル
115 操作部
200 ACU
205 操作パネルI/F
216 CPU
217 RAM
218 ROM
220 ASIC
300 ECU
321 CPU
322 RAM
323 ROM
326 スキャナI/F
328 プロッタI/F
329 ASIC
400 無給電画像表示部
500 携帯端末
502 DSC
503 LCD
505 操作部
507 フラッシュROM
508 RAM
509 CPU
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2003−285526号公報
【特許文献2】特開2003−326802号公報
【特許文献3】特開2001−134672号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された記録媒体が正当なものであるか否かを判別するための真贋判別情報を生成する真贋判別情報生成手段と、
画像を記録媒体に形成する画像形成手段と、を備え、
前記画像形成手段は、前記真贋判別情報生成手段により生成された真贋判別情報を含有する少なくとも1以上のマーカを記録媒体に形成し、
前記マーカは、黄色及び淡黄色の少なくとも何れかの色材で形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記マーカは、少なくとも1以上の1次元バーコード及び2次元コードの何れかであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記マーカは、複数の異なる1次元バーコード及び2次元コードの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記マーカは、前記記録媒体における真贋判別対象の領域に複数形成され、
複数の前記マーカは、複数に分散した前記真贋判別情報をそれぞれ含有し、
前記真贋判別情報生成手段は、前記複数に分散した真贋判別情報を所定数以上揃えた場合にのみ復元させることができる秘密分散法に基づいて真贋判別情報を生成することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数に分散した前記真贋判別情報をそれぞれ含有した複数のマーカを、前記記録媒体における真贋判別対象の領域内に所定数以上かつ重複しないように形成させるように前記真贋判別情報生成手段及び画像形成手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
情報を表示する表示手段を有し、
前記制御手段は、前記マーカを形成する黄色及び淡黄色の少なくとも何れかの色材が装着されているかを判断し、
前記表示手段は、前記制御手段により、前記マーカを形成する色材として黄色及び淡黄色の何れの色材も装着されていないと判断された場合に、警告を表示することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、マーカを形成する色材として黄色及び淡黄色の何れの色材も装着されていないと判断した場合、前記画像形成手段による画像形成を中止させることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記制御手段により、前記マーカを形成する色材として黄色及び淡黄色の何れの色材も装着されていないと判断された場合に、前記マーカの形成に使用可能な色材を表示することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
ユーザからの入力を受付ける操作手段を備え、
前記操作手段は、前記真贋判別情報の生成のためのパラメータの設定を受付ける真贋判別パラメータ設定手段と、前記画像形成手段に真贋判別情報を形成させるか否かの設定を受付ける真贋判別モード指定手段と、を有することを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像形成装置と情報処理装置とを備える真贋判別システムであって、
前記画像形成装置は、
画像が形成された記録媒体が正当なものであるか否かを判別するための真贋判別情報を生成する真贋判別情報生成手段と、
画像を記録媒体に形成する画像形成手段と、を備え、
前記画像形成手段は、前記真贋判別情報生成手段により生成された真贋判別情報を含有する少なくとも1以上のマーカを、黄色及び淡黄色の少なくとも何れかの色材を用いて記録媒体に形成し、
前記情報処理装置は、
前記マーカを読取るマーカ読取り手段と、
前記マーカ読取り手段により読取られマーカが含有する真贋判別情報に基づいて、画像が形成された前記記録媒体の真贋判定を行う真贋判定手段と、を備えることを特徴とする真贋判別システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2011−189637(P2011−189637A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58052(P2010−58052)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】