説明

画像形成装置用ローラの製造装置、及び製造方法

【課題】 画像形成装置に使用するドラムやローラ類を両端加工機で加工する際、両端加工機への被加工物の取り付けや被加工物の加工のいずれにおいても、被加工物に傷や損傷を与えることがなく、かつ、効率的な両端加工方法を提供することにあり、また、そのような被加工物製品及びこれを使用した画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 2基のコレットチャックを有する両端加工機であって、且つ、この2基のコレットチャックの間に、被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、更に、該ガイド機構は、該被加工物と共に回転可能になっており、該被加工物は画像形成装置部材用被加工物であることを特徴とする両端加工機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真やインクジェット等を応用した画像形成装置に使用されるローラの高精度な製造装置及び製造方法に関するものであり、特にローラの加工を両端加工機を使用して行なう際の両端加工装置、及び両端加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種方式の画像形成装置が使用されており、例えば、電子写真技術を利用した画像形成装置としては電子写真を利用した複写機、印刷機、ファクシミリ等がある。また、インクジェット技術を使用した画像形成装置が印刷機等として使用されている。
これらの画像形成装置には各種のドラムやローラが使用されている。例えば、電子写真装置で、ドラム状感光体を利用した電子写真装置では、感光体ドラムがまず挙げられ、その他のローラとして、定着ローラ、現像ローラ、紙搬送ローラ、原稿搬送ローラ等多くのローラやドラムが使用されている。感光体がベルト状感光体、殊に無端ベルト状感光体である場合は、該ベルト状感光体を回転させる駆動ローラ、ベルトの搬送に伴って回転する従動ローラ、ベルトに張力を与えるテンションローラがある。
画像形成技術としてインクジェット技術やサーマル記録技術を使用する場合でも、紙送りローラ等多くのローラ類を使用する。
【0003】
これらのドラムやローラの製造方法として、円筒状の原材料管を所定の長さに切断し、その切断面を目的とする寸法や品質に加工することが行なわれる。このような切断面の加工を端面加工というが、加工時間の短縮化を目的として、両端を同時に加工する両端加工が行なわれている。
両端加工を行なう場合、両端部を開放する様に被加工物の外周面を掴持し、これを回転することにより行なう。被加工物の外周面を掴持する方法としては、コレットチャックによる方法(特許文献1参照)と、バイスジョーによる方法(特許文献2参照)がある。
ここで、コレットチャックは金属製円筒体の軸方向に等間隔のすり割りが入っており、このすり割の入った金属製円筒体にかぶさったリングを移動させることにより、すり割部を近接させ、コレットチャックの内径を小さくすることによって対象物を掴持する機構である。
コレットチャックによって外周面を掴持する方法、あるいは両端加工の方法としては、特許文献3〜9記載のものがある。しかし、これら従来技術は、高硬度で重量ある一般的な鉄鋼製円筒状部材や円柱状部材の加工技術であって、特に所定の位置にズレがなく正確に画像を形成し或いはカラー用画素を所定位置で正確に重ねるための精緻で小型軽量な画像形成装置部材用被加工物の両端加工技術にそのまま利用することは難かしい。小型軽量な画像形成装置部材用被加工物は小径なものや肉薄なものも多いため加工中、加えられる圧力により変形状態に置かれ易く、かつ、不所望な表面瑕が付き易い。
【0004】
近年、進展の著しい電子写真方式による画像形成装置や、インクジェット方式による画像形成装置では、傷付き無く外周を掴持するために二基のコレットチャックを使用し掴持する方法が採られている。
インクジェット方式の画像形成装置や電子写真方式による画像形成装置では、画像品質の向上が急激に進展しており、1200dpi、あるいはそれ以上の高解像度化や、フルカラー化が行なわれている。
それに伴い、その機器で使用するドラムやローラ類は高い寸法精度が要求されるようになっている。
例えば、インクジェット方式のカラープリンターでは1200dpi以上の画像形成が可能になっているが、インクジェットプリンターで画像を形成する場合、紙送り機構で紙を一定長送り、インクジェットヘッドで印字部をインクを吹き付けながらスキャンすることにより行なわれる。
例えば、1200dpiの解像度で印字する場合、紙送り精度は10μmが要求される。
このように高精度な紙送りを達成するには、高い精度の紙送り機構が必要になるが、中でも、紙送りロールの寸法精度は重要になり、全長350mm、外径8mmの紙送りローラの場合、全振れとして10μm以下、望ましく7μm以下が必要とされる。
【0005】
電子写真方式の画像形成装置においても、各種ロールに高い寸法精度が要求されており、例えば、電子写真感光体として無端ベルト状電子写真感光体を用いた場合、該ベルト状電子写真感光体を回転駆動するために駆動ロールと、その回転に伴って回転する従動ロールが必要になる。
また電子写真装置の方式によっては、感光体ベルトに張力を与えるためのテンションロールが必要になる。
電子写真装置で1200dpi、あるいはそれ以上の解像度で印字を行なったり、あるいはフルカラー印字を行なう場合に、前記ベルト状電子写真感光体を高い精度で駆動搬送することが必要になるが、この場合も、同様に使用する駆動ロール、従動ロール、テンションロールには高い寸法精度が要求される。
【0006】
また、近年省エネルギーを目的として、定着を熱ロール定着ではなく、ベルト定着方式にする試みが行なわれているが、この場合でも、定着ベルトを高い精度で搬送しないと、画像のドットズレやドット潰れが発生するので、定着ベルトの駆動搬送に使用するロールも高い寸法精度が必要になる。
【0007】
感光体がドラム状感光体の電子写真装置であったり、あるいは熱ロール方式の定着機構を使用した電子写真装置においても、高精度の紙送り機構が必要であり、このために寸法精度の高い紙送りロールが必要になっており、全長350mm、外径8mmの紙送りローラの場合、全振れとして8μm以下、望ましく5μm以下が必要とされる。
【0008】
以上述べてきたように、近年の画像形成装置では、寸法精度の高いロールを必要としているが、従来のロール製造方法では、寸法精度に限界がある場合があった。加えて、オフィスユースやホームユース又はパーソナルユースのような汎用画像形成装置においては、短期間での量産ニーズに答えるため、加工工数の増加回避、加工工程の短縮化の要求を満たす必要がある。
このような状況下で精度に関し、発明者らは、この原因を調べたところ、ローラ製造工程の中で、両端加工時に、画像形成装置部材としては、寸法精度が低下する現象があることを見出した。
発明者らが検討を行なったところ、この寸法低下は、以下に述べる2つの状況で発生していることが判った。
最初の状況であるが、両端加工では、製造工程の自動化を目的として、両端加工機への被加工物の供給と取り出しは自動化しているが、両端加工機への被加工物の供給時に、両端加工機内部で被加工物に瑕や変形等の損傷が発生していた。
次の状況であるが、両端加工において被加工物の外周を掴持し、これを回転する際に、被加工物にブレあるいは振れが発生し、被加工物に疵や変形等の損傷が発生していた。被加工物を静止状態に固定的に保持して加工するときには、画像形成装置用部材としての加工精度に限界がある点で不満は残るが、そのような疵や変形等の損傷は、当然、より発生し難くなる。
【0009】
【特許文献1】特開平6−182704号公報
【特許文献2】特開2001−129734号公報
【特許文献3】実公昭59−036327号公報
【特許文献4】特開昭60−172401号公報
【特許文献5】特開昭61−182701号公報
【特許文献6】特開平08−281506号公報
【特許文献7】特開2000−153403号公報
【特許文献8】特開2000−158216号公報
【特許文献9】特開2000−308912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、画像形成装置に使用するドラムやローラ類を両端加工機で加工する際、両端加工機への被加工物の取り付けや被加工物の加工のいずれにおいても、被加工物に傷や損傷を与えることがなく、かつ、効率的な両端加工方法を提供することにあり、また、そのような被加工物製品及びこれを使用した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明の(1)「2基のコレットチャックを有する両端加工機であって、且つ、この2基のコレットチャックの間に、被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、更に、該ガイド機構は、該被加工物と共に回転可能になっており、該被加工物は画像形成装置部材用被加工物であることを特徴とする両端加工機」;
(2)「2基のコレットチャックの間に位置する被加工物の振れを抑制する前記ガイド機構の被加工物当接部が合成樹脂であることを特徴とする前記第(1)項に記載の両端加工機」;
(3)「被加工物の振れを抑制する前記ガイド機構の被加工物当接部の材質が、ナイロン、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂のいずれかであることを特徴とする前記第(1)項に記載の両端加工機」;
(4)「2基のコレットチャックを有する両端加工機を使用した被加工物の両端加工方法であって、該両端加工機は、前記2基のコレットチャックの間に、該被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、該被加工物は画像形成装置部材用被加工物であり、更に、該ガイド機構は、自由回転可能になっており、被加工物の外径をD、全長をLとしたとき、(L/D)>10である該被加工物の両端加工を行なうことを特徴とする両端加工方法」によって解決される。
【0012】
また、上記課題は、本発明の(5)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の加工機または前記第(4)項に記載の加工方法で作成したことを特徴とする転写ロール」;
(6)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の加工機または請求項4に記載の加工方法で作成したことを特徴とする定着ロール」;
(7)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の加工機または請求項4に記載の加工方法で作成したことを特徴とする感光体ベルト搬送ロール」;
(8)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の加工機または請求項4に記載の加工方法で作成したことを特徴とする感光体ベルト駆動ロール」;
(9)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の加工機または請求項4に記載の加工方法で作成したことを特徴とする感光体ベルトテンションロール」;
(10)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の加工機または請求項4に記載の加工方法で作成したことを特徴とする接触帯電用ロール」;
(11)「前記第(7)項に記載の感光体ベルト搬送ロールを使用したことを特徴とする電子写真装置」;
(12)「前記第(8)項に記載の感光体ベルト駆動ロールを使用したことを特徴とする電子写真装置」;
(13)「前記第(9)項に記載の感光体ベルトテンションロールを使用したことを特徴とする電子写真装置」により達成される。
【発明の効果】
【0013】
前記第(1)項及び第(4)項に係る発明によれば、2基のコレットチャックを具備する両端加工機であって、該2基のコレットチャックの間に、被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、このガイド機構により、被加工物を両端加工機へ挿入する際の損傷や傷付きを防止できると共に、両端加工を行なう際の被加工物の回転によるブレや振れ発生を防止できるという優れた効果が発揮される。
前記第(2)項に係る発明によれば、2基のコレットチャックの間に位置する被加工物の振れを抑制するガイド機構の被加工物当接部が合成樹脂であるので、被加工物に付着している切削油、あるいは両端加工時に使用する切削油が付着しても、該ガイド機構の被加工物当接部にクラックや割れを生じず、従って安定した両端加工が可能になるという優れた効果が発揮される。
前記第(3)項に係る発明によれば、2基被加工物の振れを抑制するガイド機構の被加工物当接部の材質が、ナイロン、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂のいずれかであるので、被加工物に付着している切削油、あるいは両端加工時に使用する切削油が付着しても、該ガイド機構の被加工物当接部にクラックや割れを生じず、従って安定した両端加工が可能になるという優れた効果が発揮される。
前記第(4)項に係る発明によれば、2基のコレットチャックを有する両端加工機であって、この2基のコレットチャックの間に、被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、更に、該ガイド機構は、自由回転可能になっていることを特徴とする両端加工機を使用して、被加工物の外径をD、全長をLのとき、(L/D)>10である被加工物の両端加工を行なうので、被加工物が(L/D)>10のように長い尺の被加工物であっても、被加工物を両端加工機に挿入する際にガイド機構によってガイドされながら挿入するので、被加工物を両端加工機へ挿入する際の損傷や傷付きを防止できると共に、両端加工を行なう際の被加工物の回転によるブレや振れ発生を防止できるという極めて優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基いて詳細かつ具体的に説明するが、これら説明は、本発明の本質を容易に理解させるためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
図1は、本発明を実施するのに好適な両端加工機の例を示した図であり、この図は両端加工機に被加工物を挿入している状態を示した断面図である。上記のようにまた図1の例に示されるように、前記第(1)項に係る発明は、両端加工機として、2基のコレットチャック(1a)、(1b)を有する画像形成装置部材用両端加工機に係るものであり、両端加工機に具備したこの2基のコレットチャック(1a)、(1b)の間に、被加工物の振れを抑制するガイド機構(3)を備え、更に、該ガイド機構は画像形成装置部材用被加工物と共に回転可能である画像形成装置部材用両端加工機であって、かつこれを使用するものである。
【0015】
図1において、(1a)と(1b)はコレットチャック、(2a)と(2b)はコレットチャックを開閉するドローバー、(W)は画像形成装置部材用被加工物、(3)は被加工物(W)の振れを抑制するガイド機構であり、ガイド機構(3)は、コレットチャック(1a)と(1b)により保持されている。
これらのコレットチャック(1a)、(1b)、コレットチャックを開閉するドローバー(2a)、(2b)、被加工物(W)の振れを抑制するガイド機構(3)はハウジング(9)に取り付けられており、これは図示されていないモータで回転する。(10)はこれらのケースである。
そして、(4)は被加工物挿入台、(5)は被加工物(W)を両端加工機へ押し込むプッシャー、(6)は被加工物(W)が両端加工機から排出する際の排出台、(8a)と(8b)は両端加工を行なう刃物を両端加工機に向けて前進後退するスライド機構、(11)は装置のフレームである。
図1の例の装置(両端加工機)ではプッシャー(5)が被加工物(W)を矢印方向へ押している。
ここで、図1では図が複雑になることを回避するために、両端加工を行なう刃物とその取付け治具は描いていない。
【0016】
ここで、ガイド(3)の形状としては各種の形状が可能であり、その一例の外観を図5で説明する。
図5のAは円筒状のガイド、図5のBは被加工物接触部が3本のリブ状になっているガイド、図5のCは8本のリブ状になっているガイドである。
前記第(1)項に示す両端加工機を用いた加工方法で本発明の課題を解決するためには、被加工物(W)をガイドできる機能が有れば良いので、リブはスパイラル状になっていても良く、また、必ずしもリブでなくとも良く、多数の突起状やワイヤー状等の他の形態でも充分可能である。この例におけるガイドは、内部空洞部が、円筒状または円柱状被加工物を保持するのに適している(但し、本発明における被加工物は必ずしも外観が円筒状、円柱状のものに限られる訳ではなく、例えば極端に云えば、両端加工された後に外観が円筒状、円柱状に加工される長尺物例えば角柱状のものであってもよく、エンタシス(中太)柱状のものであってもよい)。
両端加工機をこのような2つのコレットチャック(1a)、(1b)の間にガイド機構(3)を具備する構造にしておくことによって、被加工物(W)を両端加工機の片側からプッシャー(5)で押して挿入する際、被加工物(W)はコレット(1a)の中を通過した後、被加工物(W)の振れを抑制するガイド機構(3)によって振れが発生しないようにガイドしながら挿入されるので、挿入された被加工物(W)はコレット(1b)に接触したり、衝突することが無く、コレット(1b)の中を傷が付かずに通過することが可能になる。プッシャー(5)は直線移動する機構であれば良く、エアーシリンダー等が使用できる。
被加工物(W)が電子写真装置に用いるローラであり、またその材質がアルミニウム合金である場合、被加工物(W)を両端加工機にプッシャー(5)で自動的に押し込む際、被加工物(W)が両端加工機の内部で傾き、その結果コレット(1b)に接触しただけで前記第(1)項に示す加工機を用いた加工方法によれば、プッシャー(5)で押し込む際にガイド機構(3)で被加工物の傾きやブレあるいは振れの発生を抑止できるので、傷や変形の発生を避けることができる。
【0017】
図2は被加工物の挿入が完了し、プッシャー(5)が退避した状態の図である。
そして、図3は、ドローバー(2a)、(2b)が動作してコレットチャック(1a)、(1b)を締めて被加工物を掴持し、これらを図時されていないモータで回転しつつ、両端加工を行なう刃物(7a)と(7c)でインロー加工を行なっている様子を示している。
図3において、(7b)は刃物(7a)を取り付け、かつ、スライド機構(8a)によって両端加工機へ向けて前進後退する刃物取付機構の1例としての刃物保持治具であり、(7d)も刃物(7c)を取り付け、かつ、スライド機構(8b)によって両端加工機へ向けて前進後退する刃物取付機構の1例としての刃物保持治具である。
図3のようにして両端のインロー加工を終えたら、スライド機構(8a)、(8b)を動作させて刃物(7a)、(7c)を退避させ、ドローバー(2a)、(2b)を動かしてコレットチャック(1a)、(1b)を開き、被加工物(W)の掴持を解除して、被加工物(W)を取り出す。
【0018】
図4は従来の両端加工機を示した図であり、この図では被加工物(W)を両端加工機に挿入している状態を示している。図4において、(1a)と(1b)はコレットチャック、(2a)と(2b)はコレットチャックを開閉するドローバー、(W)は被加工物である。
これらのコレットチャック(1a)、(1b)、コレットチャックを開閉するドローバー(2a)、(2b)は、図示されていないモータで回転する。
(10)はこれらのケースである。
そして、(4)は被加工物挿入台、(5)は被加工物(W)を両端加工機へ押し込むプッシャー、(6)は被加工物(W)が両端加工機から排出する際の排出台、(8a)と(8b)は両端加工を行なう刃物を両端加工機に向けて前進後退するスライド機構である。
図4では、複雑になることを回避するために、両端加工を行なう刃物とその取り付け治具は描いていない。
図4において、プッシャー(5)で被加工物(W)を両端加工機に挿入する際、被加工物にズレや振れ、ブレが生じると、被加工物(W)は(12)の箇所でコレットチャック(1a)に衝突したり、(13)の箇所あるいはその近傍でコレットチャック(1b)に接触して傷が付いたり、あるいは(14)の箇所でプシャーによって傷が付いたりすることがある。
図4に示したように、両端加工機に被加工物(W)を取り付ける際、被加工物(W)とコレットチャック(1a)の衝突が甚だしい場合、被加工物(W)の先端及び後端の傷だけでなく、被加工物(W)に若干の曲がりが生じることがある。このようにして被加工物(W)に曲がりが生じると、両端加工をする際のコレットチャック(1a)、(1b)で被加工物(W)を掴持し、これを回転する際、被加工物(W)が曲がっているので、被加工物(W)はブレや振動を生じ、加工寸法精度が低下する。特に、切削加工では被加工物(W)を3000〜6000rpmという高速で回転させるので、被加工物(W)の曲がりの発生は大きな問題になる。画像形成装置用の軽量小型部材においては、加工精度の点からも特に大きな問題になる。
しかし、本発明による方法では、両端加工機に被加工物(W)を挿入する際、ガイド機構(3)によって被加工物(W)の振れが抑制されて挿入されるので、被加工物(W)の先端および後端のいずれにも傷や損傷が発生することが無く、また、曲がりが発生することも無い。
また、ガイド(3)は、両端加工をする際にコレットチャック(1a)、(1b)が被加工物(W)を掴持し、これを回転する際、被加工物(W)の振れを抑制しているので、被加工物(W)にブレや振動を生じることが無く、加工寸法精度が低下することが無い。
本発明の目的とする課題に対して、プッシャー(5)に圧力センサを設け、このセンサで被加工物(W)を両端加工機に押し込む際の接触や衝突を検知し押し込み圧を下げることも可能であるが、この方法ではプッシャー(5)にセンサを取り付けなければならず、また、押し込み圧の制御機構も必要になる。しかし、この方法では両端加工機の構造が複雑になる問題が有る。
しかし、請求項1に示す方法を用いれば、プッシャー(5)が被加工物(W)を両端加工機へ押し込む際、ガイド機構(3)によってガイドしながら押し込むので、プッシャー(5)は単に直線運動する機能が有れば良く、構造が簡単な利点が有る。
【0019】
前記第(2)項に係る発明は、第(1)項に示す両端加工機が具備する2基のコレットチャックの間に位置する被加工物(W)の振れを抑制するガイド機構(3)の被加工物当接部を合成樹脂とするものである。
ガイド機構(3)の被加工物当接部を合成樹脂とすることにより、被加工物(W)を両端加工機に挿入する際、被加工物(W)と該ガイド機構(3)が擦動する過程で、被加工物に傷が発生することが無い。
【0020】
前記第(3)項に係る発明は、第(1)及び(2)項に示す被加工物(W)の振れを抑制するガイド機構(3)の被加工物当接部の材質を、ナイロン、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂のいずれかとするものである。
ガイド機構を上記樹脂とすることにより、被加工物(W)に付着している切削油や、両端加工の際に供給された切削油がガイド機構(3)の被加工物当接部に付着しても、材質に劣化や変化を生じてクラックや割れを生じることが無い。
ここで、部材として、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体を用いると、1ケ月程度ならほとんど問題は無いが、部材に切削油が付着した場合、部材にクラックや割れが生じ、甚だしい場合は、クラックや割れによって生じた破片がコレットチャックと被加工物の間に挟まって被加工物に傷や損傷を与えることが有る。
【0021】
前記第(4)項に係る発明は、上記に示す両端加工機を使用して、被加工物(W)の外径をD、全長をLのとき、(L/D)>10である被加工物(W)の両端加工を行なうものである。
この方法によれば、全長が(L/D)>10より長い被加工物であっても、被加工物(W)はガイド機構(3)によってガイドされるので、被加工物(W)がコレット(1a)、(1b)に衝突することが無く、従って傷や衝突跡、曲がりが発生することが無い。
【実施例】
【0022】
以下本発明を実施例によって説明するが、本発明は以下の実施例で限定されるものでは無く、外周面をコレットチャックあるいはバイスチャック等によって掴持して行なう両端加工機及び、両端加工方法に適用可能である。
【0023】
実施例1
被加工物(W)として、外径20mm、長さ317mmのA5052アルミ合金製円筒体を使用した。
また、両端加工は、エグロ株式会社製の両端加工機に、リコー製コレットチャックと被加工物ガイドを取り付けた。
ここで両端加工機の概略構造は図1に示す構造と同じであり、コレットチャック(1a)、(1b)は外径20mmの被加工物を掴持できるようになっている。
また、コレットチャックの全長は75mm、コレットの割数は8、材質は鋼である。図1において3は本発明の被加工物ガイドであり、これはコレットチャック(1a)と(1b)により保持されている。
実施例1で使用した両端加工機において、コレットチャック(1a)と(1b)の間隔は125mmなので、外径25mm、内径20mm、長さ125mmの66ナイロン製円筒体をガイド機構(3)として、2つのコレットチャック(1a)と(1b)の間に取り付けた。
実施例1で使用した両端加工機では、被加工物(W)の端面加工時に、両端加工を行なっている部位に対し、スプレー機構で灯油を切削油として供給できるようになっている。また、両端加工機は、コレットチャック(1a)、(1b)で被加工物(W)を掴持し、図示されていないモータにより、最大回転数6000rpmで回転可能になっている。
【0024】
始めに、図示されていないモータが停止した状態で、ドローバー(2a)、(2b)を動かし、コレットチャック(1a)、(1b)を開いた。コレットチャック(1a)、(1b)が開いた状態でのコレットチャック(1a)、(1b)の最小開口径は21mmであった。
次ぎに、被加工物挿入台(4)に両端加工を行なおうとする被加工物(W)を置き、ストローク400mmのエアーシリンダーに取り付けたプッシャー(5)によって約120mm/秒の速度で両端加工機へ押し込んだ。この状態は図1と同じである。このときのエアーシリンダーへ供給したエアー圧は約120000Paであった。
このようにして、被加工部(W)を両端加工機へ挿入した後、ドローバー(2a)、(2b)を動作させてコレットチャック(1a)、(1b)を締め、被加工物(W)を掴持した。
そして、モータを3500rpmで回転させて、被加工物の両端に切削油供給機構(9a)、(9b)から灯油をスプレーで供給しながらスライド動作機構(9a)と(9b)を両端加工機に向けて0.5mm/秒の速度で接近させ、被加工物の端面に削り量0.8mmのC面取り加工を行なった。
ここで、切削刃物(7a)、(7b)としては、多結晶焼結ダイヤモンドバイトを使用した。
【0025】
このようにして両端加工を行なった後、モータの回転を止めてから、ドローバー(2a)、(2b)を動かしてコレットチャック(1a)、(1b)を開いて被加工物(W)の掴持を解除した。
そして、次ぎの被加工物を被加工物挿入台へおき、これをプッシャーで押すことにより、両端加工が終了した被加工物を排出台の上に押し出した。
このようにして100本の両端加工を行なった。
ここで、電子写真装置やインクジェット方式画像形成装置に使用する駆動ロールとするには、この後センター穴あけとインロー加工とシャフト取り付けを行なうが、本発明の効果確認は、ここで行なったC面取りの品質確認を目視で行なえば充分なので、加工はこのステップで終了し、両端加工を行なった端面の目視確認を行なった。
この様にして100本の両端加工とその端面の評価を行なった。
【0026】
比較例1
始めに実施例1で使用した両端加工機から被加工物ガイドを取り外した。
すなわち、この状態は従来使用されている両端加工機の構造と同じである。
それ以外は実施例1と同様にして100本の両端加工を行なった。
実施例1の場合と同様に段階までの加工品質を評価すれば本発明の効果は確認できるので、両端加工この段階で止め、実施例1と同様にして端面の目視確認を行なった。
【0027】
評価
以上のようにして作成した実施例1と比較例1の端面を目視確認した結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明の実施例1は両端面に傷や損傷は無く、本発明の効果が確認できた。
【0028】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施するのに好適な両端加工機に被加工物を挿入している状態の断面図である。
【図2】本発明を実施するのに好適な両端加工機で被加工物の挿入が完了した状態の断面図である。
【図3】本発明を実施するのに好適な両端加工機で被加工物にインロー加工を行なっている図である。
【図4】従来の両端加工機に被加工物を挿入している状態の断面図である。
【図5】被加工物の振れを抑制するガイド機構の3種の例の外観図である。
【符号の説明】
【0030】
W 被加工物
1a、1b コレットチャック
2a、2b ドローバー
3 ガイド機構
4 被加工物挿入台
5 プッシャー
6 排出台
7a、7c 刃物
7b、7d 刃物を取り付ける取付治具
8a、8b スライド機構
9 ハウジング
10 ケース
11 フレーム
12 被加工物とコレットチャック(1a)の衝突部位
13 被加工物とコレットチャック(1b)の接触部位
14 被加工物とプッシャーの接触部位


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2基のコレットチャックを有する両端加工機であって、且つ、この2基のコレットチャックの間に、被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、更に、該ガイド機構は、該被加工物と共に回転可能になっており、該被加工物は画像形成装置部材用被加工物であることを特徴とする両端加工機。
【請求項2】
2基のコレットチャックの間に位置する被加工物の振れを抑制する前記ガイド機構の被加工物当接部が合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の両端加工機。
【請求項3】
被加工物の振れを抑制する前記ガイド機構の被加工物当接部の材質が、ナイロン、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の両端加工機。
【請求項4】
2基のコレットチャックを有する両端加工機を使用した被加工物の両端加工方法であって、該両端加工機は、前記2基のコレットチャックの間に、該被加工物の振れを抑制するガイド機構を備え、該被加工物は画像形成装置部材用被加工物であり、更に、該ガイド機構は、自由回転可能になっており、被加工物の外径をD、全長をLとしたとき、(L/D)>10である該被加工物の両端加工を行なうことを特徴とする両端加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−82196(P2006−82196A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271026(P2004−271026)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】