説明

画像形成装置,及び画像読取装置の装着方法

【課題】 画像読取装置が,画像形成部を備える本体筐体の上方に装着される画像形成装置において,本体筐体にて発生する振動を画像読取装置へ伝達させず,且つ画像読取装置の本体筐体への装着の前後において画像読取装置内への塵や埃等の侵入を防止し,しかも装着作業を容易に行えるようにすること。
【解決手段】 本体筐体1の側面1bの上端部に取り付けられ側面1bと平行に本体筐体1の上面1aから上方に突出する板状部材4を設け,画像読取装置2をその底面2aのほぼ四隅に配置させた防振ゴム3を介して本体筐体1の上面1aに載置させた状態で,板状部材4を画像読取装置2の側面と締結させることにより,画像読取装置2を本体筐体1に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成部を含む又は画像形成部が取り付けられる本体筐体の上面に画像読取装置が装着されてなる画像形成装置,及びこうした画像形成装置における画像読取装置の装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,スキャナ等の画像読取装置を備える複写機,複合機等の画像形成装置では,画像形成部等を備える本体筐体の上面に画像読取装置が配置されて装着される。
上記の画像読取装置は,上面に原稿が載置される原稿台(プラテンガラス)が設けられた光学筐体と,光学筐体の内部に配置され原稿台の下方から原稿に光を走査させる光源等からなる光学系とを備え,原稿台に載置された原稿画像の読み取りを行う装置である。
この画像読取装置の光学筐体の内部に,塵や埃等のパーティクルが侵入すると,光学系が汚染されたり,光学系の光路が部分的に遮られたりして,原稿画像の読み取りにおいてノイズが発生するおそれがある。そのため,画像読取装置は,光学筐体の内部へのパーティクルの侵入を防止する目的で密閉状態に構成される。そして,画像読取装置は,その製造工程において,光学筐体の内部にパーティクルを侵入させないために,高いクリーン度が要求され,クリーンルーム内で製造されることが一般的になっている。
一方,画像形成部等を備える本体筐体の組み立てには,特に高いクリーン度は必要でないため,本体筐体の組み立てはクリーンルーム外で行われる。
【0003】
ところで,画像読取装置が装着される画像形成装置の本体筐体には,画像形成部や給紙部,用紙搬送部等,モータ等の駆動源によって駆動される駆動系を有するものが配置されている。これらの駆動系が動作する時には,不可避的に振動が発生する。この振動が本体筐体に伝達され,さらに,それに装着される画像読取装置に伝達されると,ラインセンサ等にぶれが生じて原稿画像を正確に読み取れない虞がある。
そのため従来の画像読取装置6は,図8(b)に示すように,中央に貫通孔61aが設けられた防振ゴム等の防振部材61が光学筐体62の底面の四隅近傍に配置され,図9に示すように,この防振部材61と光学筐体62の底面とが本体筐体7にボルト63等の締結部材で共締めされて締結されることにより,装着されることが一般的となっている。この防振部材61により,本体筐体7内で発生する振動が画像読取装置6に伝達されることが防止されている。
また,特許文献1には,防振部材を介さず,画像読取装置の底板に設けられ側板から外側に張り出す鍔状の桟部材を用いて,底板と側板を離間させた状態で画像読取装置を本体筐体に装着させる画像形成装置が開示されている。これは,底板と側板を離間させることにより,本体筐体内で発生する振動が画像読取装置に伝達されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−151461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上記した従来の防振部材61を介して画像読取装置6を装着する構造では,画像読取装置6が本体筐体7に装着された後でしか画像読取装置6を密閉状態にすることができない。
即ち,画像読取装置6には,光学筐体62の底面に防振部材61と共に本体筐体に締結するためのボルト63等の締結部材が挿通されるボルト孔63aと,光学筐体の上面に締結部材を締結するためにドライバ等の工具を挿入させるための工具孔63bが設けられている(図8(a)参照)。つまり,ボルト孔63aはボルト63が締め付けられるまで,工具孔63bは締結部材が締め付けられた後に塞がれるまで開口していることになる。
既述の通り,画像読取装置の製造はクリーンルーム内で行われるのに対して,本体筐体の組み立てはクリーンルーム外で行われる。つまり,画像読取装置6の本体筐体への装着は通常,クリーンルーム外で行われる。そのため,本体筐体7への装着作業のために画像読取装置6がクリーンルーム内からクリーンルーム外へ持ち出され,装着が完了するまでの間,上記したボルト孔63aや工具孔63bが開口していると,この間に画像読取装置6の内部にパーティクルが侵入する可能性があるといった問題があった。特に上記の工具孔63bは,光学筐体62の上面に設けられており,しかも工具を挿入するために十分な大きさであるため,パーティクルが侵入する可能性が高い。
また,上記の装着構造では,ボルト63等の締結部材が光学筐体62の内部にあり,作業者が目視できない。そのため,締結作業や,正常に締結されているかの確認作業をし難いといった問題もあった。
一方,特許文献1に記載の画像形成装置は,側板から外側に張り出した桟部材を用いて,画像読取装置と本体筐体を締結しているので,容易に目視でき締結作業や正常に締結されているかの確認作業は目視にて容易に行いうる。
しかし,この画像形成装置は,画像読取装置の底板と側板が離間されているため,装着後も画像読取装置が密閉状態とはならず,塵や埃の侵入を防止することが極めて難しい。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,画像読取装置が,画像形成部を備える本体筐体の上方に装着される画像形成装置において,本体筐体にて発生する振動を画像読取装置へ伝達させず,且つ画像読取装置の本体筐体への装着の前後において画像読取装置内への塵や埃等の侵入を防止し,しかも装着作業を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は,まず基本構成として,少なくとも画像形成部を含むか,あるいは画像形成部が取り付けられる本体筐体と,該本体筐体の上面に防振部材を介して装着される画像読取装置とを備える。
画像読取部が防振部材を介して装着されることにより,本体筐体で発生する振動が画像読取装置に伝達されにくい。
そして本発明は,前記本体筐体の側面の上端部に取り付けられ,該側面と平行に前記本体筐体の上面から上方に突出するように設けられる板状部材を備えることを特徴とする。
この板状部材は,前記画像読取装置が底面のほぼ四隅に配置された前記防振部材を介して前記本体筐体の上面に載置された状態で,前記画像読取装置の側面と締結される。これにより,前記画像読取装置を本体筐体に装着させる。
板状部材を用いることにより,画像読取装置の側面にて締結させることができるので,画像読取装置の側面にタップ穴等の小さな穴を設けるだけでよく,画像読取装置の上面や下面に,工具を挿入させるために十分な大きさの孔等大きな開口部を設ける必要がない。そのため,本体筐体に装着される前にクリーンルーム外に画像読取装置が持ち出されたとしても,画像読取装置内へ塵や埃が侵入しにくい。また,締結部材が締結されると側面に設けられた小さなタップ穴も塞がれるので,密閉状態とすることができ,画像読取装置内への塵や埃の侵入を防止できる。
また,画像読取装置の側面にて締結されるので,作業者は締結部分を目視することができる。そのため作業者が,締結や締結状態の確認等の装着作業を容易に行うことができる。
また,前記板状部材の前記本体筐体の上面から突出した部分には,上下長手の長孔が設けられ,前記画像読取装置の側面の前記長孔に対向する位置にタップ穴が設けられていることが望ましい。
この長孔に挿通させたボルトを,締結させきらない状態で画像読取装置の側面のタップ穴に螺合させると,画像読取装置を本体筐体に対して水平方向にはほぼ位置決めできると共に,上下方向(鉛直方向)には長孔の長さ分だけ動かすことができる。これにより,本体筐体又は画像読取装置に歪があった場合であっても,画像読取装置のほぼ四隅に配置された防振部材と本体筐体の間に楔等を挿入することができ,前記4つの防振部材を本体筐体に確実に当接させることができる。即ち,画像読取装置を本体筐体にがたつきなく装着することが容易となる。
なお,ここでいう水平方向とは,本体筐体の上面又は画像読取装置の底面に平行な方向をいうもので,必ずしも地軸に直角な方向を指すものではない。以下の説明における水平方向も同様である。
【0007】
さらに,前記画像読取装置に配置された前記防振部材のうちの一つと,前記本体筐体との上下方向の相対位置を調整する上下調整機構を備えることが望ましい。
本体筐体又は画像読取装置に歪があった場合,画像読取装置の底面の四隅に配置された4つの防振部材の全てを,本体筐体に確実に当接させることは難しい。即ち,前記歪があった場合であっても,前記防振部材のうちの3つは本体筐体に確実に当接させることはできるが,残りの1つまでも確実に当接させることは難しい。前記上下調整機構は,この防振部材と本体筐体との上下方向の相対位置を調整することにより,4つの防振部材を本体筐体に確実に当接させる。
上下調整機構は,具体的には前記本体筐体又は前記画像読取装置に固定され,前記画像読取装置又は前記本体筐体に対向する面が水平方向に対して階段状に上下位置が変化する第1の段差面を形成する固定側係合部材と,前記第1の段差面に倣って階段状に変化する第2の段差面を備え,前記画像読取装置と前記固定側係合部材との間又は前記固定側係合部材と前記本体筐体との間に楔合される可動側係合部材とを備える。
そして,前記可動側係合部材を水平方向に移動させて,第1の段差面と第2の段差面とを当接させ,且つ可動側係合部材の前記第2の段差面とは反対側の面を前記画像読取装置又は前記本体筐体に前記防振部材を介して当接させることにより,前記画像読取装置と前記本体筐体との位置決めを行う。
可動側係合部材を水平方向に移動させると,第1の段差面と第2の段差面との当接する面が切り替わる。そして,第1及び第2の段差面は水平方向に対して上下位置が階段状に変化するので,画像読取装置と本体筐体の上下方向の相対位置が変わる。つまり,可動側係合部材を水平方向に移動させるだけで,4つの防振部材の全てが本体筐体に当接するように調整することができる。
従って,前記板状部材によって画像読取装置が本体筐体に対して水平方向にほぼ位置決めされた状態で,可動側係合部材を水平方向に移動させるだけで,4つの防振部材の全てをより容易に本体筐体に当接させることができる。
さらに加えて,前記可動側係合部材を,前記固定側係合部材の前記第1の段差面の各段差に対して係止し,前記可動側係合部材の水平方向の移動を規制する位置決め手段を備えることが望ましい。
位置決め手段は,可動側係合部材を水平方向に移動させて画像読取装置と本体筐体との位置決めを行った後,締結されるまでの間に,可動側係合部材が水平方向にずれて画像読取装置と本体筐体の上下方向の相対位置が変わることを防止する。
【0008】
また本発明は,少なくとも画像形成部を含むか,あるいは画像形成部が取り付けられる本体筐体と,該本体筐体の上面に防振部材を介して装着される画像読取装置とを備える画像形成装置に適用される画像読取装置の装着方法として捉えたものであってもよい。
即ち,まず前記本体筐体の側面の上端部に取り付けられ,該側面と平行に前記本体筐体の上面から上方に突出する板状部材を設ける。
そして,前記画像読取装置の底面のほぼ四隅に前記防振部材を配置し,前記画像読取装置を前記本体筐体の上面に載置させる。この状態で,前記板状部材を,前記画像読取装置の側面と締結させることにより,前記画像読取装置を装着する画像読取装置の装着方法として構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は,本体筐体の側面の上端部に取り付けられ,該側面と平行に本体筐体の上面から突出するように設けられる板状部材を備えることを特徴としており,この板状部材が,画像読取装置が底面のほぼ四隅に配置された防振部材を介して本体筐体の上面に載置された状態で,画像読取装置の側面と締結される。これにより,前記画像読取装置が本体筐体に装着される。
本発明によると,この板状部材を用いることにより,画像読取装置の側面にて締結させることができるので,画像読取装置の側面にタップ穴等の小さな穴を設けるだけでよく,画像読取装置の上面や下面に,工具を挿入させるために十分な大きさの孔等大きな開口部を設ける必要がない。そのため,本体筐体に装着される前にクリーンルーム外に画像読取装置が持ち出されたとしても,画像読取装置内へ塵や埃が侵入しにくい。また,締結部材が締結されると側面に設けられた小さなタップ穴も塞がれるので,密閉状態とすることができ,画像読取装置内への塵や埃の侵入を防止できる。
また,画像読取装置の側面にて締結されるので,作業者は締結部分を目視することができる。そのため作業者が,締結や締結状態の確認等の装着作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の本体筐体を上方から見た部分斜視図。
【図2】本発明に係る画像形成装置の画像読取装置を下方から見た斜視図。
【図3】本発明に係る画像形成装置の画像読取装置の本体筐体への装着状態を示す図。
【図4】本発明に係る画像形成装置の板状部材を示す図。
【図5】本発明に係る画像形成装置の上下調整機構を上方から見た斜視図。
【図6】(a)本発明に係る画像形成装置の上下調整機構を下方から見た斜視図。(b)上下調整機構のうちの可動側係合部材を下方から見た斜視図。
【図7】本発明に係る画像形成装置の上下調整機構の動作を説明する模式図。
【図8】従来の画像形成装置に装着される画像読取装置を示す図で,(a)は上面側から見た斜視図,(b)は底面側から見た斜視図。
【図9】従来の画像形成装置における画像読取装置の装着状態を模式的に示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
本発明の実施形態に係る画像形成装置Xは,少なくとも内部に画像形成部(不図示)を含むか画像形成部がユニットとして取り付けられる本体筐体1(図1)と,画像読取装置2(図2)とを備える。
画像読取装置2は,図3に示すように,上面に原稿が載置される原稿台(プラテンガラス)21が設けられた光学筐体22の内部に,原稿台21の下方から原稿に光を走査させる光源等からなる光学系(不図示)やラインセンサ(不図示)等を備え,原稿台に載置された原稿画像の読み取りを行う装置である。なお,光学筐体22の上方には,光学筐体22の上面の一辺を基端として回動開閉する原稿押さえ部が取り付けられるが,図2,3では原稿押さえ部が取り付けられていない状態を示している。
また画像形成装置Xは,他に本体筐体1の内部又は本体筐体1に取り付けられる給紙部,定着部,排紙部等(何れも不図示)を備える。
画像形成装置Xによる画像形成動作は,従来の画像形成装置と特に変わるところはなく,画像読取装置2で読み取られた原稿画像が,給紙部より供給された用紙やOHPフィルム等の被転写材に,画像形成部にてトナー画像として形成される。このトナー画像が定着部にて加熱,加圧されて用紙に定着され,トナーが定着された用紙は排紙部へ排出される。
なお,本発明は,画像読取装置2の本体筐体1への装着に係るものであり,他の構成は本発明と直接の関係がないので詳しい説明を省略する。
なお,本明細書中において,図2,3に示すほぼ直方体状の画像読取装置2の底面2a(又は原稿台21)の長辺方向に相当する方向を左右方向,短辺方向に相当する方向を前後方向,底面2aと直交する方向を上下方向とする。
また,本明細書中において,水平方向とは,本体筐体1の上面1a又は画像読取装置2の底面2aに平行な方向を意味し,必ずしも地軸に直角な方向を指すものではない。
【0012】
画像形成装置Xは,図3に示すように,本体筐体1の上方に画像読取装置2が載置されて装着される。本体筐体1の左右の側面1bと画像読取装置2(光学筐体22)の左右の側面2bとがほぼ面一となるように,本体筐体1と光学筐体22は左右方向が同じ大きさに形成されている。
本体筐体1の内部又は本体筐体1に取り付けられる画像形成部,給紙部,定着部,排紙部等には,モータ等の駆動源によって駆動される駆動系(不図示)を有する。これらの駆動系から発生する振動が本体筐体1に伝達され,さらに,それに装着される画像読取装置2に伝達されると,ラインセンサ等にぶれが生じて原稿画像を正確に読み取れない虞がある。
これを防止するために,光学筐体22の底面2aには,図2に示すように四隅の近傍にそれぞれ防振ゴム3が配置されている。画像読取装置2は,これら防振ゴム3を介して本体筐体1の上面1aに載置される。
四隅の近傍のうち3箇所に配置された防振ゴム3は円板状の防振ゴム31,残りの1箇所に配置された防振ゴム3は,矩形の両側の短辺に半円を組み合わせた形状(以下,長円形と称す)の防振ゴム32となっている。
なお,防振ゴム3(31,32)は,ウレタンゴム等のゴム材を防振部材としたものであるが,これに限定されるものではなく,これに代えて他の弾性材料で構成した防振部材としてもよい。
4つの防振ゴム3は,従来の画像形成装置に締結される画像読取装置のような光学筐体と共締めされるためにボルト等の締結部材を挿通させる貫通孔を有さず,接着あるいは,光学筐体22の底面2aに設けられた取付孔に隙間なく嵌着される等して,光学筐体22の底面2aに取り付けられる。
画像読取装置2は,上記のように光学筐体22の底面2aに4つの防振ゴム3が取り付けられた状態で本体筐体1の上面1aに載置される。ここで,本体筐体1と光学筐体22の何れか又は両方に歪があったり,4つの防振ゴム3の厚さに誤差があったりすると,光学筐体22の底面2aに配置された4つの防振部材3の全てを,本体筐体1の上面1aに確実に当接させることは難しい。即ち,画像読取装置2を本体筐体1にがたつきなく装着することが難しい。この場合,防振部材3のうちの3つを本体筐体1の上面1aに当接させて,画像読取装置2の3隅部を固定・支持することはできるものの,残りの1つは自由端となり,がたつきが生じる。
そのため図1に示すように,本体筐体1の上面1aにおいて,4つの防振部材3のうちの3つが載置される部分は固定受部11となっており,残りの1つの自由端が載置される部分が本体筐体1と防振ゴム3との上下方向の相対位置を調整可能な調整受部12となっている。
調整受部12は,後述する上下調整機構5(図5参照)を備え,これにより本体筐体1と防振ゴム3との上下方向の相対位置をがたつきがなくなるように調整して,前記自由端を支持する。
なお,この固定受部11に載置されるのが前記した円板状の防振ゴム31であり,調整受部12に載置されるのが前記した長円形の防振ゴム32である。
【0013】
画像読取装置2は,上記のように光学筐体22の底面2aの四隅近傍にそれぞれ配置された防振部材3を介して本体筐体1の上面1aに載置された状態で,本体筐体1に固定される。
ここで,画像形成装置Xは,図1,3に示すように本体筐体1の側面1bの上端部に取り付けられ,側面1bと平行に本体筐体1の上面1aから上方に向けて突出するように設けられる板状部材4を備える。
この板状部材4は,詳しくは図4に示すように,本体筐体1の側面1bに取り付けられるほぼ矩形の基部41と,基部41の上辺の中央部にて本体筐体1の上面1aから上向きに突出する突出部42からなり,この突出部42に上下を長手とする長孔43が設けられている。
そして,画像読取装置2の側面2bには,画像読取装置2を本体筐体1に載置させた時に長孔43に対向する位置にタップ穴(不図示)が設けられている。
長孔43に差し込まれたボルト44等の締結部材が前記タップ穴に締め付けられることによって,板状部材4と画像読取装置2(光学筐体22)の側面2bとが締結される。これにより,画像読取装置2が本体筐体1に固定され装着される。
上記のように画像読取装置2が,板状部材4を用いることにより本体筐体1に締結させることができるので,画像読取装置2の上面や底面2aに,工具を挿入させるために十分な大きさの孔等大きな開口部を設ける必要がない。そのため,本体筐体1に装着される前にクリーンルーム外に画像読取装置2が持ち出されたとしても,画像読取装置2の内部へ塵や埃が侵入しにくい。仮に画像読取装置2の側面2bに設けられるタップ穴が貫通孔であっても,締結部材が締結されるとタップ穴は塞がれるので,密閉状態とすることができ,画像読取装置2の内部への塵や埃の侵入を防止できる。
また,画像読取装置2の側面2bにて締結されるので,作業者は締結部分を目視することができる。そのため作業者が,締結や締結状態の確認等の装着作業を容易に行うことができるというメリットもある。
さらに,長孔43に挿通させたボルト44を,締結させきらない状態で画像読取装置2の側面2bのタップ穴に螺合させると,画像読取装置2を本体筐体1に対して前後左右(水平方向)にはほぼ位置決めできると共に,上下方向(鉛直方向)には長孔43の長さ分(例えば3mm程度)だけ持ち上げることができる。これにより,本体筐体1又は画像読取装置2に歪があった場合等において,上下調整機構5(図5参照)や楔等を用いて本体筐体1と防振ゴム3との上下方向の相対位置をがたつきがなくなるように調整することが容易となる。
なお,板状部材4は,図4に示す形状に限定されるものではない。
【0014】
上下調整機構5の具体例を図5〜7に示す。上下調整機構5は,図5に示すように,本体筐体1に固定される固定側係合部材51と,固定側係合部材51の上方に位置し本体筐体1の前後方向(図5の矢印方向)に移動する可動側係合部材52とを備える。
固定側係合部材51には,図6(a)に示すように,上方に向かって突出する平行な2列の突条511が前後方向に形成されている(図示では一方のみ見えている)。そしてその突条511の上面,即ち画像読取装置2に対向する面が,前後方向に対して階段状に上下位置の変化する第1の段差面51aを形成している。
可動側係合部材52は,図5,図6に示すように,固定側係合部材51の前記2列の突条に跨るように,前方視で下向き開のコの字状をなしており,その内側の下面,即ち固定側係合部材51に対向する面が,第1の段差面51aに倣って前後方向に対して階段状に変化する第2の段差面52aを形成している。可動側係合部材52の,第2の段差面52aとは反対側の面52b(即ち,可動側係合部材52の上面)は,防振ゴム32を介して画像読取装置2の底面2aに当接される。本実施形態では,この反対側の面52bを形成する部分が調整受部12となっている。
可動側係合部材52は,前後方向に移動させられて,画像読取装置2と固定側係合部材51の間に楔合される。即ち,上下調整機構5は,可動側係合部材52を前後方向に移動させて,第1の段差面51aと第2の段差面52aとを当接させ,且つ調整受部12を防振ゴム32を介して画像読取装置2の底面2aに当接させることにより,画像読取装置2の前記自由端を本体筐体1によって支持することが出来る。
既述のように,本体筐体1と光学筐体22の何れかに歪があったり,4つの防振ゴム3の厚さに誤差があったりすると,画像読取装置2を本体筐体1に載置させた時にがたつきを生じることがある。この場合,4つの防振ゴム3のうちの何れか3つを本体筐体1の上面1aに当接させて,固定支持すると,残りの1つの防振部材3と本体筐体1の上面1aとの間に隙間が生じて自由端となる。例えば,本体筐体1に画像読取装置2を載置させた時に,3つの円板状の防振ゴム31を固定受部11に当接させると,図7(a)のように長円形の防振ゴム32と調整受部12との間に隙間が生じる。
この時,可動側係合部材52を前後方向(図7の左右方向)に移動させると,第1の段差面51aと第2の段差面52aとの当接する面が切り替わる。第1及び第2の段差面51a,52aは水平方向に対して上下位置が階段状に変化するので,当接する面が切り替わる毎に可動側係合部材52と防振ゴム32の上下方向の相対位置が変わる。即ち,調整受部12における画像読取装置2と本体筐体1の上下方向の相対位置が変わる。
図7(a)では,可動側係合部材52と防振ゴム32の間に隙間があるため,可動側係合部材52を,可動側係合部材52と防振ゴム32の上下方向の相対位置が近づく方向(図7において左方向)に移動させる。そして,図7(b)に示すように,調整受部12と防振ゴム32とを当接させる。この時,他の3つの防振ゴム31は固定受部11と当接しているので,4つの防振ゴム3の全てが本体筐体1に当接したことになり,画像読取装置2は本体筐体1上に上下方向の位置決めがされ,且つ固定支持されたことになる。
このような上下調整機構5を備えると,作業者は,可動側係合部材52を水平方向に移動させる単純な作業で,4つの防振ゴム3の全てを本体筐体1に当接するように調整することができる。従って,画像読取装置2を本体筐体1にがたつきが無いように装着することが容易となる。
なお,ここでは,本体筐体1に画像読取装置2を載置させた時に,長円形の防振ゴム32と調整受部12との間に隙間が生じる場合を例に説明したが,言うまでもなく3つの円板状の防振ゴム31の何れかと固定受部11との間に隙間が生じる場合には,画像読取装置2と本体筐体1の上下方向の相対位置を遠ざける方向に調整すればよい。
また,本実施形態では固定側係合部材51を本体筐体1に設け,可動側係合部材52を画像読取装置2と固定側係合部材51との間に楔合されるものとしているが,これに限定されず,画像読取装置2に固定側係合部材を設け,可動側係合部材を固定側係合部材と本体筐体1との間に楔合されるものとしてもよい。
また,可動側係合部材52の移動方向,及び第1,第2の段差面51a,52bの変化する方向を前後方向としているが,これに限定されず,水平方向(本体筐体1の上面1aに平行な方向)であれば,左右方向や他の方向であってもよい。
【0015】
画像形成装置Xは,上記のように上下調整機構5によって本体筐体1と画像読取装置2との位置決めがなされた後において,可動側係合部材52を,固定側係合部材51の第1の段差面51aの各段差に対して係止し,可動側係合部材52の前後方向(図7の左右方向)の移動を規制する位置決め手段を備えることが望ましい。
上下調整機構5によって,本体筐体1と画像読取装置2との位置決めがなされた後,画像読取装置2は,本体筐体1に設けられた板状部材4に締結されるが,この時,可動側係合部材52が移動すると,画像読取装置2と本体筐体1の上下方向の相対位置が変わってしまう。位置決め手段は,これを防止する。
位置決め手段としては,例えば,図6,7に示すように,可動側係合部材52に設けられた複数の可動側位置決め孔53と,固定側係合部材51の側板部分に設けられた固定側位置決め孔54と,これらに挿入される位置決めピン55からなるものが考えられる。
可動側位置決め孔53は,図6(b)に示すように,第2の段差面52aの各段差に対して1つずつ設けられており,その中心は各段差面から等しい距離にある。
固定側位置決め孔54は,固定側係合部材51の第1の段差面51aの前後方向中央の段差面上(図7で示す54の位置)に設けられている。固定側位置決め孔54の中心は,第2の段差面52aの各段差から可動側位置決め孔53の中心までの距離と等しい位置にある。
従って,第1の段差面51aと第2の段差面52aとが当接すると,可動側位置決め孔53のうちの1つと固定側位置決め孔54とが連通する。例えば,図7(a)では最も左に位置する可動側位置決め孔53が固定側位置決め孔54と連通し,図7(b)では左から3番目の可動側位置決め孔53が,固定側位置決め孔54と連通している。この連通した可動側位置決め孔53と固定側位置決め孔54に位置決めピン55を挿入することで,可動側係合部材54の前後方向(図7の左右方向)の移動を規制する。
これにより,上記のように本体筐体1と画像読取装置2との位置決めをした後,可動側係合部材52を位置決めした位置に保持できる。そのため,画像読取装置2を本体筐体1に設けられた板状部材4に締結させる際に,画像読取装置2と本体筐体1の上下方向の相対位置が変わらないので,画像読取装置2の本体筐体1への装着をより容易に行うことができる。
なお,上記した位置決め手段は一例であって,これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0016】
1 本体筐体
2 画像読取装置
3 防振ゴム(防振部材の一例)
4 板状部材
43 長孔
5 上下調整機構
51 固定側係合部材
51a 第1の段差面
52 可動側係合部材
52a 第2の段差面
53 可動側位置決め孔(位置決め手段の一例の構成要素)
54 固定側位置決め孔(位置決め手段の一例の構成要素)
55 位置決めピン(位置決め手段の一例の構成要素)
X 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも画像形成部を含むか,あるいは画像形成部が取り付けられる本体筐体と,該本体筐体の上面に防振部材を介して装着される画像読取装置とを備える画像形成装置であって,
前記本体筐体の側面の上端部に取り付けられ,該側面と平行に前記本体筐体の上面から上方に突出するように設けられる板状部材を備え,
前記画像読取装置が,その底面のほぼ四隅に配置された前記防振部材を介して前記本体筐体の上面に載置された状態で,
前記板状部材が,前記画像読取装置の側面と締結されることにより,前記画像読取装置を装着させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記板状部材の前記本体筐体の上面から突出した部分には,上下長手の長孔が設けられ,前記画像読取装置の側面の前記長孔に対向する位置にはタップ穴が設けられている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像読取装置に配置された前記防振部材のうちの一つと,前記本体筐体との上下方向の相対位置を調整する上下調整機構を備える請求項1又は2の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記上下調整機構が,
前記本体筐体又は前記画像読取装置に固定され,前記画像読取装置又は前記本体筐体に対向する面が水平方向に対して階段状に上下位置が変化する第1の段差面を形成する固定側係合部材と,
前記第1の段差面に倣って階段状に変化する第2の段差面を備え,前記画像読取装置と前記固定側係合部材との間又は前記固定側係合部材と前記本体筐体との間に楔合される可動側係合部材とを備え,
前記可動側係合部材を水平方向に移動させて,第1の段差面と第2の段差面とを当接させ,且つ可動側係合部材の前記第2の段差面とは反対側の面を前記画像読取装置又は前記本体筐体に前記防振部材を介して当接させることにより,前記画像読取装置と前記本体筐体との位置決めを行うものである請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記可動側係合部材を,前記固定側係合部材の前記第1の段差面の各段差に対して係止し,前記可動側係合部材の水平方向の移動を規制する位置決め手段を備える請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
少なくとも画像形成部を含むか,あるいは画像形成部が取り付けられる本体筐体と,該本体筐体の上面に防振部材を介して装着される画像読取装置とを備える画像形成装置に適用される画像読取装置の装着方法であって,
前記本体筐体の側面の上端部に取り付けられ,該側面と平行に前記本体筐体の上面から上方に突出する板状部材を設け,
前記画像読取装置の底面のほぼ四隅に前記防振部材を配置し,前記画像読取装置を前記本体筐体の上面に載置させた状態で,
前記板状部材を,前記画像読取装置の側面と締結させることにより,前記画像読取装置を装着する画像読取装置の装着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−155603(P2011−155603A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17173(P2010−17173)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】