説明

画像形成装置

【課題】 受信画像の機密を保持しつつ受信画像をある程度特定し得る情報を容易に外部に報知する。
【解決手段】 通信回線から入力される画像を受信する通信部と、画像を受信画像として記憶する画像記憶部と、該画像記憶部から入力された受信画像の一部あるいは全体を所定の対象物に印刷する印刷部と、印刷モードの指定を受け付けると共に受信画像に関して印刷領域を指定する設定情報を受け付ける操作部と、設定情報を記憶する設定記憶部と、操作部から通常印刷モードが指定された場合、画像記憶部に記憶された受信画像の全てを印刷部に印刷させ、一方、受信出力禁止モードが指定された場合には、受信画像のうち設定記憶部に記憶された設定情報によって指定された指定領域のみを印刷部に印刷させる制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信回線から受信した画像を印刷(形成)する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、受信画像の機密性を保持する点に配慮したファクシミリ装置が開示されている。このファクシミリ装置は、メモリ蓄積モードにおいては受信画像をメモリに順次蓄積するのみとして印刷しないものであり、受信画像を無条件に全て印刷する従来のファクシミリ装置の機密保持上の問題点を改善したものである。このファクシミリ装置によれば、受信画像を全て印刷しないので、受信画像を無関係な第三者に見られることを防止することができる。
【特許文献1】特開平9−135336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記下記特許文献1の技術ではメモリ蓄積モードにおける受信画像を全く印刷しないので、メモリ蓄積モード中における受信画像の必要性を操作者が判断することができなかった。すなわち、操作者はメモリ蓄積モードを解除することによりメモリ蓄積モード中の受信画像を全て印刷して始めて受信画像の内容を把握することができるので、メモリ蓄積モード中の受信画像を全て印刷してみないと、自らが必要とする受信画像を判断することができない。このため、下記特許文献1のファクシミリ装置は、極めて使い勝手が悪い。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであり、受信画像の機密を保持しつつ受信画像をある程度特定し得る情報を容易に外部に報知することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の解決手段として、通信回線から入力される画像を受信する通信部と、画像を受信画像として記憶する画像記憶部と、該画像記憶部から入力された受信画像の一部あるいは全体を所定の対象物に印刷する印刷部と、印刷モードの指定を受け付けると共に受信画像に関して印刷領域を指定する設定情報を受け付ける操作部と、設定情報を記憶する設定記憶部と、操作部から通常印刷モードが指定された場合、画像記憶部に記憶された受信画像の全てを印刷部に印刷させ、一方、受信出力禁止モードが指定された場合には、受信画像のうち設定記憶部に記憶された設定情報によって指定された指定領域のみを印刷部に印刷させる制御部とを具備する、という手段を採用する。
【0006】
また、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、受信出力禁止モードの開始時刻及び終了時刻を設定情報の一部として設定記憶部に記憶させ、制御部は、開始時刻及び終了時刻によって指定される指定時間帯について設定情報によって指定された指定領域のみを印刷させる、という手段を採用する。
【0007】
第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、制御部は、通信部が受信した画像に当該画像を特定するための識別子の画像を付加したものを受信画像として画像記憶部に記憶させ、受信出力禁止モードが指定された場合には、設定情報によって指定された指定領域に加えて、前記識別子の画像をも印刷させる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受信出力禁止モードにおいては受信画像のうち設定記憶部に記憶された設定情報によって指定された指定領域のみが印刷されるので、指定領域として受信画像に関して機密保持上問題がないと共に受信画像をある程度特定し得る部位(例えば、送信先、送信元及び表題が記載されている部分)を指定することにより、受信画像の機密を保持しつつ受信画像をある程度特定し得る情報を容易に外部に報知することができる。この結果、従来のファクシミリ装置よりも使い勝手が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るファクシミリ装置Aの機能構成を示すブロック図である。この図1に示すように、本ファクシミリ装置Aは、通信部1、画像記憶部2、印刷部3、操作部4、設定記憶部5及び制御部6を備える。なお、このブロック図は、本願発明の特徴である受信系の機能のみを示しており、送信系の機能構成について割愛している。
【0010】
通信部1は、制御部6による制御の下に通信回線から入力される画像を受信するものであり、例えばファクシミリに関する国際規格であるG3規格規格に準拠した通信手続きに基づいて送信元(ファクシミリ装置)から上記画像を受信して画像記憶部2に出力する。画像記憶部2は、ハードディスク等の外部記憶装置あるいは/及び半導体メモリから構成されており、制御部6による制御の下に、上記画像及び後述する識別ID画像を受信画像として記憶すると共に、当該受信画像の全体あるいは当該受信画像の一部分(指定領域)を読み出して印刷部3に出力する。
【0011】
印刷部3は、制御部6による制御の下に、上記受信画像あるいは当該受信画像の一部を印刷用画像に変換して紙等の対象物に印刷をするものである。本ファクシミリ装置Aは、印刷モードとして通常印刷モードと受信出力禁止モード(部分印刷モード)とを備えている。通常印刷モードは、受信画像を全て印刷する印刷モードであり、一方、受信出力禁止モードは、設定記憶部5に予め記憶された受信出力禁止モードの設定情報に基づいて受信画像の一部分(指定領域)を印刷する印刷モードである。印刷部3は、通常印刷モードの場合、受信画像の全てを印刷し、受信出力禁止モードの場合には受信画像のうち設定情報によって指示された一部分(指定領域)のみを印刷する。
【0012】
操作部4は、操作者からの上記設定情報及びその他指示情報を受け付け、設定情報を設定記憶部5に、また指示情報を制御部6に出力するものである。上記設定情報は、受信出力禁止モードを有効にする開始時刻及び終了時刻(指定時間帯)及び上記指定領域を示す印刷部位指定情報等を含む。一方、その他指示情報は、受信出力禁止モードの有効/無効を指示する情報等である。また、上記指定領域は、受信画像のうち機密保持に影響のない部分、例えば送信先、送信元及び表題が記載されている部分(第1頁の上半分)等である。
【0013】
設定記憶部5は、例えば不揮発性メモリから形成されており、操作部4から入力された設定情報を記憶すると共に制御部6の要求に応じて設定情報を読み出して制御部6に出力する。制御部6は、上記設定情報、指示情報及び内部メモリに記憶された制御プログラムに基づいて本ファクシミリ装置Aの全体動作を制御するものであり、制御演算を行うCPU(Central Processing Unit)及び他の各部(つまり通信部1、画像記憶部2、印刷部3、操作部4及び設定記憶部5)とのデータ授受を行う各種入出力インターフェース回路等から構成されている。
【0014】
次に、このように構成された本ファクシミリ装置Aの要部動作について図2に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0015】
制御部6は、通信部1が送信元から画像を受信すると(ステップS1)、当該画像を受信画像として画像記憶部2に順次記憶させる(ステップS2)。ここで、上記受信画像は、通信部1が受信した画像の所定位置に制御部6が設定した識別ID画像を付加したものである。制御部6は、通信部1が画像を受信する度に異なる識別子(識別ID)を内容とする識別ID画像を生成し、当該識別ID画像通信部1が受信した画像の所定位置に貼り付けた画像を受信画像として画像記憶部2に記憶させる。
【0016】
そして、制御部6は、設定記憶部5に記憶された設定情報を読み出すことにより、受信出力禁止モードが有効に設定されているか否かを判断し(ステップS3)、この判断が「No」の場合、つまり本ファクシミリ装置Aが通常印刷モードに設定されている場合、画像記憶部2に記憶された受信画像の全てを読み出して印刷部3に供給させることにより受信画像の全てを印刷させる(ステップS4)。
【0017】
これに対して、上記ステップS3の判断が「Yes」の場合、つまり本ファクシミリ装置Aが受信出力禁止モードに設定されている場合、制御部6は、上記設定情報及び内部時計の時刻(つまり現在時刻)に基づいて、現在時刻が受信出力禁止モードの指定時間帯に含まれるか否かを判断し(ステップS5)、この判断が「No」の場合は、上述したステップS4の処理を実行する。
【0018】
この一方、制御部6は、上記ステップS5の判断が「Yes」の場合には、上記設定情報中の印刷部位指定情報によって指示された指定領域に該当する受信画像の部位及び上述した識別ID画像の部位を画像記憶部2から読み出して印刷部3に供給させることにより、受信画像のうち指定領域に該当する部位及び識別ID画像を印刷させる(ステップS6)。
【0019】
図3は、このような受信出力禁止モードにおける指定領域の印刷状態を示す模式図である。印刷部位指定情報によって受信画像のうち機密保持に影響のなく、かつ受信画像を特定できる部分として、例えば送信先、送信元及び表題が記載されている部分が指定領域Xとして指定された結果、当該指定領域Xのみが、また当該受信画像の画像記憶部2への記憶時に制御部6が自動生成した識別ID画像Yが印刷紙Zに印刷される。
【0020】
さらに、受信出力禁止モードにおいて作業者が操作部4を手動操作することにより、受信出力禁止モード中において受信した画像の全体を印刷することが指示されると(ステップS7)、制御部6は、画像記憶部2から全ての受信画像を読み出して印刷部3に供給させることにより、受信出力禁止モード中に受信した1あるいは複数の受信画像の全体を印刷させる(ステップS8)。この場合、作業者は操作部4から識別IDを指定することにより、制御部6に当該識別IDに該当する受信画像のみを画像記憶部2から読み出させ、当該受信画像の全体を印刷させることができる。なお、受信出力禁止モードの終了を指示する操作情報が操作部4から入力されると、ステップS7の判断は「No」となり、制御部6は、受信出力禁止モードの処理を終了する。
【0021】
このような本実施形態によれば、受信出力禁止モードが有効、かつ、現在時刻が指定時間帯に含まれている場合には、受信画像のうち機密保持に影響がなく、かつ受信画像を特定できるい部分のみが印刷されるので、受信画像の機密を保持しつつ受信画像を特定する情報を容易に外部に報知することができる。したがって、受信出力禁止モードが有効、かつ、現在時刻が指定時間帯に含まれている状態で受信した画像の必要性を受信画像の機密を保持しつつ受信側で容易に判断することができるので、従来のファクシミリ装置よりも使い勝手が向上する。
【0022】
また、設定情報の1つとして指定時間帯を設定するので、受信出力禁止モードを有効とする時間帯を使用者が任意に設定することができる。
さらに、受信出力禁止モード時に出力された印刷紙には識別IDが印刷されているので、この識別IDを操作部4から入力することによって、当該識別IDに該当する受信画像の全体を容易に出力させることができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では受信出力禁止モードの設定情報を1セットだけ設定記憶部5に記憶する場合について説明したが、内容が異なる複数セットの設定情報を設定記憶部5に記憶させ、何れかの設定情報を有効状態に設定することが考えられる。例えば、指定領域や指定時間帯が異なる設定情報を設定記憶部5に複数記憶させることが考えられる。
【0024】
(2)また、上記実施形態では受信出力禁止モードの設定情報を1セットだけ設定記憶部5に記憶する場合について説明したが、送信元毎つまり送信元のファックス番号毎に設定情報を設定記憶部5に記憶させることにより、送信元毎に指定領域を設定するようにしても良い。
【0025】
(3)上記実施形態では、通信部1が受信した画像に識別ID画像を付加したものを受信画像として画像記憶部2に記憶させるようにしたが、識別ID画像を付加することなく通信部1が受信した画像のみを受信画像として画像記憶部2に記憶させるようにしても良い。
【0026】
(4)さらに、上記実施形態はファクシミリ装置に関するものであるが、本発明はファクシミリ装置だけではなく、ファクシミリ機能にコピー機能等を複合させた装置(複合機)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係わるファクシミリ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるファクシミリ装置の要部動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係わるファクシミリ装置の要部動作を補足説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0028】
A…ファックス装置、1…通信部、2…画像記憶部、3…印刷部、4…操作部、5…設定記憶部、6…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線から入力される画像を受信する通信部と、
前記画像を受信画像として記憶する画像記憶部と、
該画像記憶部から入力された前記受信画像の一部あるいは全体を所定の対象物に印刷する印刷部と、
印刷モードの指定を受け付けると共に前記受信画像に関して印刷領域を指定する設定情報を受け付ける操作部と、
前記設定情報を記憶する設定記憶部と、
操作部から通常印刷モードが指定された場合、前記画像記憶部に記憶された受信画像の全てを印刷部に印刷させ、一方、受信出力禁止モードが指定された場合には、受信画像のうち前記設定記憶部に記憶された設定情報によって指定された指定領域のみを印刷部に印刷させる制御部と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
受信出力禁止モードの開始時刻及び終了時刻を設定情報の一部として設定記憶部に記憶させ、
制御部は、開始時刻及び終了時刻によって指定される指定時間帯について設定情報によって指定された指定領域のみを印刷させる
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
制御部は、通信部が受信した画像に当該画像を特定するための識別子の画像を付加したものを受信画像として画像記憶部に記憶させ、受信出力禁止モードが指定された場合には、設定情報によって指定された指定領域に加えて、前記識別子の画像をも印刷させる
ことを特徴とする請求項1あるいは2記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−104073(P2007−104073A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288268(P2005−288268)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】