説明

画像形成装置

【課題】遮光空間V内において搬送される感光材料からなるペーパーPの乳剤面に画像(潜像)を形成するためのレーザ光を出射するレーザ光源を有するレーザユニット71を備えた画像形成装置Aにおいて、レーザユニット71内の温度上昇を低コストで効率良く抑えられるようにする。
【解決手段】レーザユニット71を遮光空間Vの外側(フレーム60の上側)に配設するとともに、レーザユニット71の光出射口から出射された光を、遮光空間V内において搬送されているペーパーPの乳剤面上に導くための導光路部63を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光材料からなる画像形成媒体の画像形成面上に、光を照射することで画像を形成する画像形成装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば写真現像等に用いられる画像形成装置として、例えば特許文献1に示されているように、レーザ光により、感光材料からなるペーパー(例えば印画紙等の画像形成媒体)に画像露光を行う装置が知られている。この装置は、現像済みネガフィルムに形成されたコマ画像の画像データや、種々の記憶メディアに格納されている画像データを読み取り、これらの画像データに基づいてペーパーの乳剤面(画像形成面)に画像を焼付露光するように構成されている。すなわち、この装置は、ペーパーを搬送する搬送機構やレーザユニットを備えており、このレーザユニット内には、例えば特許文献2に示されているように、レーザ光を出射するレーザ光源や、該レーザ光をペーパーの乳剤面に対してペーパー幅方向に走査するためのポリゴンミラー等が配設されている。そして、前記レーザ光を、前記搬送機構により搬送されているペーパーの乳剤面に対し、その搬送方向とは垂直な方向(ペーパー幅方向)に走査しながら照射することによって、該乳剤面上に潜像画像を形成するようになっている。この潜像画像が形成されたペーパーは、現像処理部へ搬送されて現像処理がなされ、これにより、ペーパーの乳剤面上に写真画像等の所望の画像が形成されることになる。
【0003】
前記レーザ光によって露光されるペーパーは、該レーザ光以外の光によって感光しないように、遮光された空間内で搬送されるようになっている。そして、前記レーザユニットは、通常、前記搬送機構により搬送されるペーパーと同じ遮光空間内に配設される。
【特許文献1】特開平10−325983号公報
【特許文献2】特開平5−134199
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記レーザユニットのような、画像形成媒体の画像形成面上に画像を形成するための光を出射する光源を有する光源ユニットにおいては、その内部の温度上昇を抑えるようにする必要がある。すなわち、光源ユニットの光源は、発熱による温度上昇によって、その特性等に悪影響を及ぼす。特にレーザ光源としてよく用いられる半導体レーザは、温度変化によってモードホッピングが生じ易い。このため、前記特許文献2に示されているように、半導体レーザに放熱板を設ける等して、光源ユニット内の温度上昇を抑えるようにしている。
【0005】
しかしながら、光源ユニットを前記遮光空間内に配設するようにすると、光源ユニット内の温度上昇を効率良く抑えることが困難になる。すなわち、遮光空間内では、光源ユニットの光源からの熱を初め、搬送機構を作動させるためのモータ等の多数の発熱体から生じる熱が籠もり易い。また、ペーパーの幅サイズが非常に大きくなると(例えば約600mm)、画像形成媒体の画像形成面上における光の走査時間がかなり長くなって、光源の発熱がより一層激しくなる。このため、光源ユニット内の温度上昇を効率良く抑えることは困難であり、その温度上昇を確実に抑えるためには、光源ユニットを強制的に冷却する冷却装置等が必要になって、コストアップやスペースの増大を招いてしまう。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記のように光源ユニットを備えた画像形成装置において、その光源ユニットの配置に工夫を凝らすことによって、光源ユニット内の温度上昇を低コストで効率良く抑えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、この発明では、光源ユニットを、画像形成媒体が搬送される遮光空間の外側に配設するとともに、光源ユニットの光出射口から出射された光を、遮光空間内において搬送されている画像形成媒体の画像形成面上に導くための導光路部を設けるようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、画像形成装置として、遮光された空間内において、感光材料からなる画像形成媒体を搬送する搬送機構と、前記遮光空間の外側に配設され、内部に、前記画像形成媒体の画像形成面上に画像を形成するための光を出射する光源を有し、該光源から出射された光を光出射口から外部へ出射する光源ユニットと、前記光源ユニットの光出射口から出射された光を、前記遮光空間内において搬送機構により搬送されている画像形成媒体の画像形成面上に導くための導光路部とを備えているものとする。
【0009】
前記の構成により、光源ユニットが遮光空間の外側に配設されているので、光源ユニットを外気と容易に接触させることができ、光源ユニットを強制的に冷却する冷却装置等を設けなくても、光源ユニット内の温度上昇を効率良く抑えることができる。また、光源ユニットの故障時に、新しいものと容易に交換することができ、メインテナンス性を向上させることができる。一方、光源ユニットが遮光空間の外側に配設されることで、光源ユニットから遮光空間内の画像形成媒体へ光をどのように導くかが問題となるが、導光路部を設けることで、光を画像形成媒体へ容易にかつ自在に導くことができるとともに、導光路部の周囲から余計な光が遮光空間内に入らないようにすることも容易に行える。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記光源ユニットは、前記遮光空間の上側に配設されているものとする。
【0011】
このことにより、導光路部の光出射面を下向きにすることができ、これにより、その光出射面に塵や埃が付着し難くなる。よって、画像形成媒体の画像形成面上に形成される画像の画質を高レベルに維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の画像形成装置によると、光源ユニットを、画像形成媒体が搬送される遮光空間の外側に配設するとともに、この光源ユニットの光出射口から出射された光を、遮光空間内において搬送されている画像形成媒体の画像形成面上に導くための導光路部を設けたことにより、光源ユニット内の温度上昇を低コストで効率良く抑えることができ、光源ユニット内の光源の特性を良好に維持することができ、延いては、画像形成媒体の画像形成面上の画像の画質を高レベルに維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
<写真処理システムの全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置Aを備えた写真処理システムの構成を示す部分断面図である。この図1に示す写真処理システムは、画像データを取得し、この画像データに基づいて、感光材料からなる印画紙等のペーパーP(画像形成媒体に相当)の乳剤面(画像形成面に相当)に画像を焼付露光し、写真プリントを作成する機能を備えている。この写真処理システムは、現像済みの写真フィルムに形成されているコマ画像をスキャニングし、画像データを取得するためのフィルムスキャナー(図示省略)や、デジタルカメラ用の記憶メディアや、その他の記録媒体に格納されている画像データを読み取るためのメディア読取部(図示省略)を備えている。
【0015】
前記図1に示すペーパーマガジン3,3には、それぞれ、長尺のペーパーPが乳剤面を外側にしてロール状に巻かれたロールRとして収容されており、該ペーパーマガジン3,3は、画像形成装置A本体に着脱可能に取り付けられている。そして、該画像形成装置A本体に取り付けられた2台のペーパーマガジン3,3のうち、一方のペーパーマガジン3がプリントサイズ等に応じて選択され、該選択された方のペーパーマガジン3から引き出されたペーパーPが、所定の搬送経路に沿って搬送されるようになっている。すなわち、ペーパーマガジン3から引き出されたペーパーPは、アドバンスローラユニット4により方向変換され、ペーパーカッター5により、所定のプリントサイズ(所定の長さ)に切断される。そして、切断されたペーパーPは、乳剤面を上向きにした状態で、搬送ユニット6によって、下流側に位置する露光エンジン7(画像形成部)へと搬送される。
【0016】
前記露光エンジン7には、上流側露光搬送ローラ9a及び下流側露光搬送ローラ9b(これらは、搬送機構に相当し、両者を区別しないときには、単に露光搬送ローラ9ともいう)が設けられている。これら上流側及び下流側露光搬送ローラ9a,9bの間には、該両露光搬送ローラ9a,9bによって略水平方向に搬送されるペーパーPをレーザ光によって露光処理するための露光位置が設定されている。上流側露光搬送ローラ9aの上流側には、ペーパー検出センサー10が設けられており、ペーパーPが送り込まれてくると、その先端(前端)部分を検出して信号を出力するようになっている。このペーパー検出センサー10は、赤外光を出力する発光素子と、これを受光する受光素子とにより構成される。このペーパー検出センサー10によってペーパーPの位置を検出することで、前記露光位置における露光開始タイミングを決めることができる。
【0017】
前記露光エンジン7において前記露光搬送ローラ9の上方位置には、ペーパーPの乳剤面上に潜像画像を形成するためのレーザ光をそれぞれ出射する3つのレーザ光源72R,72G,72B(図13参照)を有する略矩形箱状のレーザユニット71(光源ユニットに相当)が設けられている。このレーザユニット71は、後に詳細に説明するように、前記レーザ光源72R,72G,72Bからそれぞれ出力されるレーザ光を画像データに基づいて光変調し、この光変調されたレーザ光をペーパーPの乳剤面に照射することで、画像露光を行う。このように画像露光を行う際には、ペーパーPは、上流側及び下流側露光搬送ローラ9a,9bにより挟持された状態で、所定速度(一定速度)で搬送される。前記レーザ光は、ペーパーPの搬送方向(副走査方向:図1の矢印D方向)と直交する主走査方向(ペーパー幅方向:図13の矢印B方向)に走査されるため、ペーパーPの乳剤面上には1ラインごとに画像(潜像)が焼付露光される。
【0018】
前記上流側及び下流側露光搬送ローラ9a,9bによってペーパーPが搬送される部分は、遮光された空間V内にあり、この遮光空間Vは、画像形成装置A内において略水平方向に延びるように固定されたフレーム60の下側位置に形成されている。なお、前記ペーパーマガジン3,3やアドバンスローラユニット4、後述の収容空間部S等も、前記遮光空間V内に配設されていることになる。
【0019】
そして、上述のような画像露光が行われながら、ペーパーPは、下流側露光搬送ローラ9bによって露光位置よりも下流側へ送り出されていく。前記露光エンジン7の下流側には、第1搬送ユニット11が設けられている。詳しくは後述するが、第1搬送ユニット11は、所定の回転軸芯まわりに回転可能に設けられていて、下流側の露光搬送ローラ9bにより受け渡されたペーパーPを、更に第2搬送ユニット12に受け渡す機能を備えている。該第2搬送ユニット12は、搬送経路に沿うように配置された複数の挟持搬送ローラ対12aと、搬送経路を形成するためのガイド板12bとを備えており、搬送ローラ対12aは図示しない駆動機構によって駆動されるように構成されている。この第2搬送ユニット12により、ペーパーPは現像処理部へと搬送される。
【0020】
また、前記露光エンジン7の下流側(図1において露光エンジン7の左側)には、ペーパーPを一時的に収容するための収容空間部Sが設けられている。すなわち、露光位置から現像処理部までの距離よりもペーパーPの長さが長いと露光中に現像処理部に該ペーパーPが入ることになり、該現像処理部での処理によって発生する振動がペーパーPの露光部分に伝達されて露光ムラの原因となるため、前記収容空間部S内にペーパーPを収容することで露光ムラの発生を確実に防止するようにしている。
【0021】
なお、詳しくは後述するように、ペーパーPの搬送方向長さに応じて前記収容空間部S内に収容する方法が異なる。以下の実施形態では、前記ペーパーPの搬送方向長さが所定値(例えば594.1mm)以上の場合について説明する。
【0022】
前記収容空間部Sには、ペーパーPを巻き取るための巻き取りドラム20(挟持部材)と、この巻き取りドラム20の外周面にペーパーPを圧着して保持するための圧着ローラ21(挟持部材)とが配置されている。これらの巻き取りドラム20及び圧着ローラ21は、詳しくは後述するように、ペーパーPの搬送方向前端側を挟持するとともに、巻き取り機構8としても機能する。
【0023】
前記収容空間部S内の巻き取りドラム20の下方には、前記収容空間部S内に収容されるペーパーPのたるみを検出するためのたるみ検出センサー22が設けられている。このたるみ検出センサー22は、発光素子22aと受光素子22bとによって構成され、発光素子22aから照射される光がペーパーPによって遮断されると、たるみ量が所定量よりも大きい状態であると判断される。ここで、前記発光素子22aと受光素子22bとを結ぶラインは、図2に示すように、水平線に対し傾斜するように設定されている。
【0024】
<レーザユニットの構成>
次に、前記レーザユニット71の構成を図13に基づいて説明する。レーザユニット71内に配設された前記レーザ光源72Rは、例えば波長680nmの赤色のレーザ光を出射する半導体レーザ(LD)で構成される。また、レーザ光源72Gは、半導体レーザと、この半導体レーザから出射されたレーザ光を例えば532nmの緑色のレーザ光に変換する第2高調波発生器(SHG)とで構成される。レーザ光源72Bは、半導体レーザと、この半導体レーザから出射されたレーザ光を例えば473nmの青色のレーザ光に変換する第2高調波発生器(SHG)とで構成される。
【0025】
前記レーザユニット71内において、前記レーザ光源72R,72G,72Bの出力側には、レーザ光の強度を変調する音響光学変調素子(以下、AOMという)73R,73G,73Bがそれぞれ対応して配設されているとともに、ミラー74R,74G,74B、該各ミラー74R,74G,74Bからのレーザ光を反射する反射ミラー75、及び、該反射ミラー75からのレーザ光を所定範囲で矢印B方向に走査するポリゴンミラー76が順に配設されている。
【0026】
AOM73R,73G,73Bはそれぞれ、レーザ光源72R,72G,72Bから与えられた一定の強度のレーザ光を0〜100%の範囲で調整する。
【0027】
ミラー74Rは全反射ミラーであり、ミラー74G,74Bはハーフミラーである。そして、AOM73Rからのレーザ光はミラー74Rで全反射され、ミラー74Gで、AOM73Gからのレーザ光と合波された後、さらにミラー74Bで、AOM73Bからのレーザ光と合波されることにより、3色のレーザ光が合成される。この合成されたレーザ光は、反射ミラー75によって反射されて、ポリゴンミラー76に入射する。
【0028】
ポリゴンミラー76は、一定の角速度で矢印C方向に回転することによって、前記入射したレーザ光を、露光搬送ローラ9により矢印D方向(図1参照:図2では紙面手前の方向)に搬送されるペーパーPの乳剤面に対して、矢印B方向にペーパー幅方向一端部から他端部まで走査する。
【0029】
また、レーザユニット71内においてポリゴンミラー76とペーパーPとの間の部分には、ポリゴンミラー76の回転によって走査されるレーザ光のペーパーPの乳剤面上での移動速度(走査速度)を一定に保つためのfθレンズ77が配設されている。このfθレンズ77を通ったレーザ光が、レーザユニット71下面に設けた光出射口71aからレーザユニット71外部へ出射されることになる。
【0030】
前記レーザユニット71は、前記フレーム60上に配設されている。すなわち、レーザユニット71は、前記遮光空間Vの外側に配設されていることになる。このレーザユニット71下面には、略矩形状の遮光板62が固定されており、この遮光板62の下面における4つのコーナ部には、レーザユニット71に伝わる振動(特に画像形成装置Aの周囲における人の歩行等に起因する振動)を軽減するためのゴム部材61が設けられている。このことで、レーザユニット71は、遮光板62を介してフレーム60に弾性支持されていることになる。
【0031】
また、前記レーザユニット71の下面には、下方に突出するように導光路部63が設けられている。この導光路部63は、断面略矩形状の筒状部材で構成されていて、前記光出射口71aに接続されているとともに、レーザユニット71の下面からフレーム60を貫通してフレーム60の下側における露光搬送ローラ9の近傍位置まで延びている。このことで、導光路部63は、前記光出射口71aから出射されたレーザ光を、上流側及び下流側露光搬送ローラ9a,9bにより搬送されているペーパーPの乳剤面上に導く役割を果たす。なお、導光路部63の下面(光出射面)は、ガラスで構成されており、導光路部63内への塵や埃の進入を防いでいる。
【0032】
前記導光路部63とフレーム60に設けた貫通孔との間には、レーザユニット71を弾性支持しているために、或る程度の隙間を設けている。この隙間を通してフレーム60の上側から下側(つまり遮光空間V)に光が入射する虞れがあるが、本実施形態では、前記のような遮光板62を設けて前記貫通孔を上側から覆うことで、前記隙間からの光の入射を防止している。
【0033】
<収容空間部の構成>
次に、図1における収容空間部S内の構成を図2に基づいて説明する。第1搬送ユニット11は、下流側露光搬送ローラ9bの更に下流側に配置されていて、挟持搬送ローラ対11aと、ガイド板11bとを備えている。この挟持搬送ローラ対11aの高さ方向位置は、露光搬送ローラ9と同じ高さ位置になるように設定されているとともに、前記ガイド板11bの上流側端部には開口部11cが形成されており、ペーパーPの受け入れが容易になっている。
【0034】
前記第1搬送ユニット11は、所定の回転軸芯周りに90゜回転可能に構成されていて(図12参照)、90゜回転した状態では、第2搬送ユニット12へペーパーPを受け渡すことができるようになっている。前記第2搬送ユニット12は、複数の搬送ローラ対12aとガイド板12bとを備えており、前記第1搬送ユニット11から受け取ったペーパーPを図示しない現像処理部へと送り込む役割を果たす。
【0035】
巻き取りドラム20は、回転軸芯20a周りに回転可能に構成されている。この巻き取りドラム20によりペーパーPの巻取りを開始する前は、巻き取りドラム20の外周面と圧着ローラ21の表面とは離間していて隙間が形成された状態になっている。これにより、搬送されてくるペーパーPを前記巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の隙間に容易に挿入することができる。
【0036】
また、前記巻き取りドラム20によるペーパーPの受け入れ高さは、露光搬送ローラ9による搬送面の高さや、第1搬送ユニット11の回動前の搬送面と同じ高さになるように設定されている。これにより、露光搬送ローラ9によって送り出されるペーパーPを巻き取りドラム20側でスムーズに受け入れることができる。なお、図2に示す状態では、圧着ローラ21の軸芯は、巻き取りドラム20の軸芯のちょうど真上に位置している。
【0037】
さらに、前記収容空間部S内には、巻き取り機構8を上下方向に移動させるための巻き取り移動機構13が設けられており、巻き取り機構8全体を露光エンジン7の露光位置に近い上方の第1位置(図2の位置)から、露光位置から遠ざかる下方の第2位置(図9の位置)へと移動させることができる。詳しくは、前記巻き取り移動機構13は、上下方向に延びるガイド部材13aと、巻き取り機構8を該ガイド部材13aに沿って移動させるためのタイミングベルト13bとを備えているとともに、このタイミングベルト13bには巻き取り機構8を支持するための支持体15が固定されていて、該タイミングベルト13bを図示しないモータ等によって駆動させることで巻き取り機構8を上下動させることができるようになっている。なお、前記支持体15には、巻き取りドラム20を回転駆動するためのドラム駆動手段(モーターや減速機構など)が搭載されている。
【0038】
ここで、前記収容空間部Sは、現像処理部と隣接していて、壁面14によって仕切られているが、前記巻き取りドラム20にペーパーPを巻き取った状態で上下動させる場合、ペーパーPが該壁面14をこすらないようにするのが好ましい。これに対して、前記収容空間部Sを大きくすれば、壁面14とペーパーPとのこすれを解消することはできるが、装置全体が大きくなるという問題点がある。そこで、前記巻き取り移動機構13を、図2に示すように、巻き取り機構8が斜め下方に移動するように構成する。具体的には、前記巻き取り移動機構13は、巻き取り機構8が下方に下がるほど壁面14から遠ざかる方向に移動するように構成されている。これにより、ペーパーPが壁面14をこすることなく巻き取り機構8は収容空間部S内の下方に向かって移動することができる。
【0039】
なお、詳しくは後述するが、前記巻き取り機構8を巻き取り移動機構13によって下方に移動させた後、ペーパーPに所定以上のたるみが生じた場合には、該巻き取り機構8によってペーパーPを巻き取るようにしている。このように、或る程度、たるみを持たせることで、ペーパーPの露光されている部分に大きな振動や負荷変動を伝えることなく、ペーパーPを巻き取ることができ、露光ムラなどの発生を防止することができる。
【0040】
上述のような構成の収容空間部Sや巻き取り機構8を設けることによって、以下のような効果が得られる。前記露光エンジン7による画像露光は、露光搬送ローラ9によってペーパーPを所定速度で搬送させながら行われているが、この走査露光が行われているときに、搬送方向先端側で例えば現像処理等が行われると、ペーパーPに大きな振動や負荷変動が生じたり、潜像進行の時間を十分に確保できなかったりして、ペーパーPに形成される画像の画質が低下する。これに対して、上述のように、露光搬送ローラ9bにより送り出されるペーパーPを露光完了まで前記収容空間部S内に一時的に収容することで、ペーパーPに大きな振動や負荷変動が生じないようにすることができるとともに、潜像進行のための時間も十分に確保することができる。
【0041】
しかも、搬送方向の長さが長い長尺のペーパーを収容空間部S内に収容しようとすると、大きな収容スペースが必要になるが、上述のような巻き取り機構8を設けてペーパーPを巻き取ることによって収容空間部Sのスペースを小さくすることができ、装置全体の大型化を防止することができる。
【0042】
<巻き取り機構の構成>
次に、巻き取り機構8を構成する巻き取りドラム20及び圧着ローラ21の詳細構成を図3に基づいて説明する。また、該圧着ローラ21を圧着方向に移動させるためのカム機構(ローラ間隔変更手段に相当)については、図4に示す。
【0043】
前記巻き取りドラム20は、固定軸200の周りに回転可能に構成されている。該巻き取りドラム20は、樹脂製であり、その外周面上にペーパーPが巻き取られるようになっている。前記巻き取りドラム20の軸方向両端部には、圧着ローラ21を圧着方向に付勢するためのコイルスプリング24を掛ける円周溝202が設けられていて、該巻き取りドラム20の軸方向両端部のうち一方の端部の円周溝202よりも端側には、巻き取りドラム20を回転させるための連結ギヤ201が設けられている。
【0044】
前記圧着ローラ21は、巻き取りドラム20の軸線に対して略平行に配置されるローラ支軸210と、このローラ支軸210の外周面を覆うように軸方向に複数個並んで設けられる樹脂製の支軸211,211,…と、更にこの各支軸211の表面にそれぞれ取り付けられる後述の圧着部材212,212,…(外周部に相当)と、を備えている。なお、前記ローラ軸210には、支軸211,211,…が該ローラ支軸210に対して軸方向に移動するのを防止するためのEリング213が嵌合されている。
【0045】
前記ローラ支軸210の軸方向両端部には、前記コイルスプリング24を掛けるための溝部214,214が形成されている。更に、ローラ支軸210の軸方向両端部で前記溝部214,214よりも軸方向内側には、それぞれ、カム連結軸215,215が設けられていて、該各カム連結軸215が後述するカム機構のカム面203aの形状に応じて上下動することで、前記圧着ローラ21を圧着方向若しくは非圧着方向へと移動させることができるようになっている。かかる図3に示す機構によれば、巻き取りドラム20が回転すると、これに連動して圧着ローラ21も巻き取りドラム20の外周方向に沿って回転移動(固定軸200回りに回転移動)することができる。なお、圧着ローラ21自身は、ローラ支軸210を回転中心として、フリーに回転できるように軸支されている。
【0046】
次に、前記圧着ローラ21を圧着方向に移動させるためのカム機構を図4に基づいて説明する。図4は、図3に示す巻き取り機構8を、カムの形成されている箇所で固定軸200に垂直な面で切断した断面図を示している。図4に示すように、カム部材203は、クラッチ部材204を介して固定軸200に対して結合されている。該カム部材203は、カム面203aを有しており、先ほど説明したコイルスプリング24の付勢力により、カム連結軸215の先端215aがカム面203aに常時接触するようになっている。
【0047】
前記カム面203aは、図4に示すように、カム部材203の外周面上のθ=210゜の範囲に形成されているため、カム連結軸215(圧着ローラ21)がカム部材203に対して回転移動できる範囲も210゜となる。そして、このカム面203aの周方向両端には、第1壁面203b及び第2壁面203cが形成されていて、カム連結軸215が該カム面203a上を相対移動すると、該カム連結軸215がこれらの壁面203b,203cに当接して位置決めされる。
【0048】
図4(a)は、圧着ローラ21と巻き取りドラム20との間に隙間が形成された初期状態を示す図であり、図4(b)は圧着ローラ21が210゜回転し、圧着ローラ21によってペーパーPが圧着された状態を示す図である。このように、巻き取りドラム20を210゜回転させると、図4(b)の状態となるが、更に巻き取りドラム20を回転させると、カム連結軸215が第2壁面203cに当接して、強制的にカム部材203も一緒に固定軸200回りに回転させることになる。このとき、クラッチ部材204には摩擦すべりが生じている状態である。すなわち、前記クラッチ部材204を設けることで、圧着ローラ21をカム部材203によって規制される範囲(210゜)以上に回転させることが可能になる。
【0049】
<圧着部材>
次に、本願発明の特徴部分の一つである圧着部材212の材質について以下で詳しく説明する。すなわち、前記圧着部材212は、スポンジ等のように弾性を有する発泡部材(例えば発泡ウレタン等)により形成されていて、巻き取りドラム20の外周面との間でペーパーPを挟持する際に容易に弾性変形を生じるようになっている。これにより、ペーパーPを巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間で挟持する際には、該ペーパーPに対して大きな振動や負荷変動が加わるのを防止することができる。したがって、前記巻き取りドラム20と圧着ローラ21とによって、露光処理中にペーパーPの搬送方向先端側を挟持した場合でも、該ペーパーPに大きな振動や負荷変動が作用して露光ムラが生じるのを防止することができる。
【0050】
ここで、前記圧着ローラ21は、上述のように、軸方向両端に掛けられたコイルスプリング24によって巻き取りドラム20に対して圧着されるようになっているため、軸方向中央部では圧着方向に力を受けずに浮いた状態になり、該圧着ローラ21は弓状に変形を生じることになる。これに対して、上述のように前記圧着ローラ21を発泡部材によって構成すれば、該圧着ローラ21の軸方向両端部は大きく弾性変形を生じるだけで、軸方向中央部で浮くことはなく、ペーパーPを巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間で挟持することが可能になる。これにより、前記巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間にペーパーPを挟持する際に、該ペーパーPにしわや負荷変動等が生じるのを防止することができ、露光ムラの発生を確実に防止することができる。
【0051】
なお、上述の場合、前記巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の圧着力の分布は軸方向で異なっているが、本実施形態では該巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間にペーパーPを挟持しているだけであり、該巻き取りドラム20と圧着ローラ21とによってペーパーPの搬送を行うことはないので、圧着力の不均衡によってペーパーPが蛇行する等の不具合も生じない。
【0052】
前記圧着部材212は、発泡部材に限らず、例えばゴム材料などのように、ペーパーPを挟持する際に該ペーパーPに振動や負荷変動を与えないように弾性変形を生じるものであればどのようなものであってもよい。
【0053】
また、前記圧着部材212の外周面は、巻き取りドラム20との間にペーパーPを挟持する際の抵抗を少なくするために低摩擦状態であるのが好ましい。こうすることで、ペーパーPが巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間に挟持される際に、該圧着ローラ21とペーパーPとの摩擦抵抗が小さくなるので、該ペーパPに与える振動や負荷変動を効果的に低減することができる。
【0054】
ここで、低摩擦状態とはペーパーPに対する摩擦係数が0.5以下であることを意味している。なお、この摩擦係数の値は、雰囲気温度25℃の大気中において、圧着部材212と同じ材料からなる直方体状の部材をペーパー上で略水平方向に滑らせた場合の最大摩擦力と垂直抗力との関係から求められる。具体的には、垂直抗力を変化させた場合のそれぞれの最大摩擦力を計測し、それらの値から算出される摩擦係数を平均化した。
【0055】
<制御ブロック図>
次に、画像形成装置Aの制御ブロック構成を図5に基づいて説明する。この図5において、ペーパー先端検出手段30は、ペーパー検出センサー10からの出力信号によってペーパーPの先端(前端)を検出して、ペーパーPが到来したことを検出するものである。また、ペーパーPの先端が検出されるタイミングによって、現在、ペーパーPが下流側のどの位置にあるかを認識することもできる。ローラ駆動手段31は、露光搬送ローラ9を駆動するため駆動機構や駆動回路等により構成される。さらに、搬送量検出手段32は、露光搬送ローラ9の回転量を検出することで、ペーパーPの搬送量を検出するように構成されている。すなわち、露光搬送ローラ9は、一定速度で回転するように制御されているため、エンコーダ等により搬送量をモニターすることができる。
【0056】
ペーパー位置検出部33は、前記ペーパー先端検出手段30により検出されたペーパーPの先端位置と、前記搬送量検出手段32により検出されたペーパーPの搬送量とに基づいて、ペーパーPの種々の位置を演算して求める機能を有する。具体的には、前記ペーパー位置検出部33は、露光開始タイミング検出手段33a、ペーパー後端脱出検出手段33b及び挿入検出手段33cを備えている。
【0057】
前記露光開始タイミング検出手段33aは、ペーパー先端検出手段30によって検出されたペーパーPの先端位置に基づいてレーザー光による露光開始タイミングを検出するように構成されている。すなわち、ペーパー検出センサー10の位置及びレーザー光による露光位置は、設計的に定まっているため、ペーパーPの先端位置が分かれば前記露光開始タイミング検出手段33aによって露光位置における露光開始タイミングを演算することができる。前記ペーパー後端脱出検出手段33bは、画像の焼付露光が完了したペーパーPの後端が、前記露光位置から脱出したことを検出するためのものである。前記挿入検出手段33cは、ペーパーPの先端が巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の隙間に挿入されたことを検出するためのものである。この隙間への挿入量は通常、20mm程度だが、この挿入量は適宜設定することができる。
【0058】
露光制御部34は、露光開始タイミング検出手段33aによる露光タイミングの演算結果に基づいてレーザー光による画像露光を開始するように構成されている。これにより、ペーパーPの乳剤面に、画像データにより光変調されたレーザー光を走査して、潜像画像を形成することができる。
【0059】
第1搬送ユニット駆動部35は、第1搬送ユニット11を駆動するための機構を有する。具体的には、前記第1搬送ユニット駆動部35は、搬送ローラ対11aを圧着状態と非圧着状態とに切り替えるための圧着駆動手段35aと、第1搬送ユニット11の全体を90゜回転させて水平状態と垂直状態とに切り替えるためのユニット回転手段35bと、搬送ローラ対11aを回転駆動させるローラ駆動手段35cと、を備えている。ここで、前記圧着駆動手段35aは、露光エンジン7により画像露光が行われているときは、搬送ローラ対11aを非圧着状態とし、ペーパーPに負荷が作用しないようにする。
【0060】
第2搬送ユニット駆動部36は、第2搬送ユニット12を駆動するための機構を有するもので、搬送ローラ対12aを回転駆動させるローラ駆動手段36aを備えている。
【0061】
搬送ユニット駆動制御手段37は、第1搬送ユニット11及び第2搬送ユニット12の駆動制御を行うように構成されている。例えば、ペーパー位置検出部33によってペーパーPの後端が前記露光位置から脱出したことが検出された場合には、搬送ローラ対11aを圧着状態に切り替える。
【0062】
プリントサイズ設定手段40には、画像露光されるペーパーPのプリントサイズのデータが設定記憶される。そして、このプリントサイズ設定手段40に記憶されているプリントサイズデータに基づいて巻き取り移動機構13に対する制御や巻き取りドラム20に対する制御が行われる。例えば、ペーパーPの長さが所定長さ(本実施形態では430.1mm)よりも短い場合には、巻き取り機構8によるペーパーPの圧着は行わないようにする。
【0063】
たるみ量検出手段41は、たるみ検出センサー22からの出力信号に基づいて、たるみ量が所定量以上かどうかを検出するように構成されている。ドラム駆動手段42は、巻き取りドラム20を回転駆動するための機構を備えている。回転量検出手段43は、巻き取りドラム20の回転量を検出できるように構成されている。例えば、巻き取りドラム20に連動して回転するエンコーダにより、回転量をモニターすることができるようになっている。
【0064】
ドラム回転制御手段44は、巻き取りドラム20の回転駆動制御を行う機能を有する。このドラム回転制御手段44は、挿入検出手段33cによるペーパーPの先端挿入の検出や、プリントサイズ設定手段40に記憶・設定されているプリントサイズのデータなどに基づいて、巻き取りドラム20の回転及び停止制御を行う。
【0065】
巻き取り制御手段45は、巻き取り移動機構13の駆動制御を行う。例えば、回転量検出手段43により圧着ローラ21による圧着動作が完了(θ=210゜回転)したことを検出すると、巻き取りドラム20を第1位置から第2位置へ移動させるように制御する。また、長さの短いペーパーPの場合は、巻き取り機構8による巻き取り動作を行わないため、巻き取りドラム20を一番下の第2位置に逃がしておくようにする。また、中間の長さのペーパーPの場合には、巻き取り機構8によるペーパーPの圧着は行うが、たるみ検出センサー22によるたるみ量の検出は行わないため、巻き取りドラム20を第1位置と第2位置の中間位置(第3位置)まで移動させるように制御する。このように、巻き取り制御手段45は、ペーパーPの搬送方向の長さに応じて巻き取り移動機構13に対する制御を変更するように構成されている。なお、ペーパーPの長さ寸法に関する情報は、前記プリントサイズ設定手段40から得ることができる。
【0066】
ここで、図5に示す制御ブロックは、コンピュータソフトウェアやハードウェアの機能により構築することができる。どの機能をソフトウェアで実現し、どの機能をハードウェアにより実現するかについては、ペーパー処理の能力等に応じて適宜決めることができる。
【0067】
<巻き取り機構の動作>
次に、ペーパーPに対して画像露光を行ってから現像処理部へ送り出すまでの動作について、図6A,6Bのフローチャート及び図2、図7〜図12により説明する。なお、プリントサイズ設定手段40には、巻き取り機構8を第2位置まで下降させる必要がある長さのプリントサイズが設定されているものとする。
【0068】
まず、所定のプリントサイズに切断されたペーパーPの先端がペーパー検出センサー10及びペーパー先端検出手段30により検出される(ステップST1)。ペーパーPの先端が検出されてから所定タイミングが経過して、露光開始タイミング検出手段33aによって露光開始のタイミングであることが検出された後、露光制御部34によってペーパーPの乳剤面に対してレーザー光が走査露光され、画像が形成されていく(ステップST2)。
【0069】
このようにレーザー光による走査露光が行われながら、ペーパーPは露光搬送ローラ9により下流側に向かって搬送されて、ペーパーPの先端は、第1搬送ユニット11のガイド板11bを通過する。このとき、第1搬送ユニット11の搬送ローラ対11aは圧着が解除された状態であるため、ペーパーPに大きな負荷が作用することなく、該ペーパーPは第1搬送ユニット11の位置を通過することができる。
【0070】
巻き取りドラム20は、予め図2に示すような第1位置に設定されているため、上述のように第1搬送ユニット11を通過したペーパーPは、そのまま巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の隙間に向かって搬送される。そして、ペーパーPの先端位置は、ペーパー検出センサー10による検出結果とペーパーPの搬送量とに基づいてペーパー位置検出部33により演算され、この演算結果から挿入検出手段33cによってペーパーPの先端が巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の隙間に挿入されたか否かを判断する(ステップST3)。
【0071】
前記挿入検出手段33cによりペーパーPの先端が巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の隙間内に挿入されたことが検出された場合(ステップST3においてYESの場合)、巻き取りドラム20の回転を開始する(ステップST4)。図2は、ペーパーPの先端が前記隙間内に挿入された直後の状態を示している。そして、巻き取りドラム20は、図2において反時計方向に回転すると共に、圧着ローラ21も同様に回転軸芯20a周りに回転する。その後、上述したカム機構によって圧着ローラ21と巻き取りドラム20との間の隙間は徐々に狭くなっていき、圧着ローラ21は圧着方向に移動することになる。
【0072】
このとき、前記ペーパーPの搬送方向後方側では、レーザー光による走査露光が行われている。すなわち、露光中のペーパーPの搬送方向先端側が巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間に挟持されることになる。このように、露光中であっても長尺のペーパーPの搬送方向前方側を挟持することで、狭い空間内でも、該ペーパーPの搬送方向を容易に変更したり、巻き取りドラム20に巻き付けたりすることができるようになるため、ペーパーPの長さに応じて収容空間部Sを大きくすることなく露光ムラの発生を十分に防止できるような露光後バッファを確保することができる。したがって、装置全体の大型化を防止しつつ長尺プリントを行うことができる。
【0073】
そして、前記巻き取りドラム20が所定量(図の例では210゜)回転したかどうか判定し(ステップST5)、所定量回転したと判定された場合(ステップST5でYESの場合)には、巻き取りドラム20の回転を停止する(ステップST6)。この回転量の検出は回転量検出手段43により行う。図7は、巻き取りドラム20の回転が停止した直後の状態を示す図である。ここで、巻き取りドラム20の回転速度は、その周速度が露光搬送ローラ9によるペーパーPの送り速度とほぼ同一になるように設定されている。このように巻き取りドラム20の回転速度に設定することで、ペーパーPに対して大きな負荷変動が作用することなく、できる限り速い速度でペーパーPを巻き取ることができる。なお、巻き取りドラム20の回転をペーパーPの送り速度に対して少し遅くすれば、若干のたるみを持たせて巻取りを行うことができるため、ペーパーPに負荷変動が生じるのをより確実に防止することができる。
【0074】
前記ステップST6で巻き取りドラム20の回転を停止した後、巻き取り制御手段45によって巻き取り移動機構13を駆動させて、巻き取り機構8を第1位置から第2位置へと下降させる(ステップST7)。なお、ステップST6、ST7については、ほぼ同時に行ようにしてもよい。例えば、巻き取りドラム20が停止する直前に、巻き取り機構8の下方への移動を開始してもよい。
【0075】
ここで、上述のような巻き取り機構8の下方への移動は、ペーパーPが収容空間部S内へ送り込まれてくる速度よりも遅くなるように設定されるのが好ましい。これにより、ペーパーPに対して大きな負荷変動を与えなくて済む。図8は、巻き取りドラム20が第1位置と第2位置との中間位置(第3位置)まで移動した状態を示している。この図8では、巻き取りドラム20の下降速度が遅いため、巻き取りドラム20と第1搬送ユニット11との間のペーパーP部分には、たるみが生じ始めている。図9は、巻き取りドラム20が第2位置まで下降完了した状態を示している。
【0076】
上述のように巻き取りドラム20の回転を停止して該巻き取りドラム20を第2位置へ移動した後も、ペーパーPは露光搬送ローラ9により収容空間部S内に送り込まれてくる。このとき、ペーパー後端脱出検出手段33bによってペーパーPの後端が第1搬送ユニット11に到達したか否かを判断する(ステップST8)。ペーパーPの後端が到達していると判定されれば(ステップST8でYESの場合)、ステップST15へ移行する。一方、ステップST8で後端が到達していないと判定されれば(NOの場合)、ペーパーPが送り込まれることで徐々にたるみが大きくなるため、図10に示すように、発光素子22aからの光がペーパーPのたるみで遮断される状態となる(ステップST9)。このとき、たるみが大きくなったとしても、巻き取りドラム20は斜め下方に壁面14から遠ざかる方向に移動するため、ペーパーPは壁面14をこすらない状態でたるみが発生する。
【0077】
ここで、第1搬送ユニット11にペーパーPの後端が到達した状態とは、挟持搬送ローラ対11aよりもペーパーPの後端が少し上流側に突出した状態として定義される。この突出量については、適宜設定することができる。
【0078】
図10の状態になると、たるみ量検出手段41により所定量以上のたるみが生じたものと判断し(ステップST9でYESの場合)、巻き取りドラム20を再び回転させる(ステップST10)。この巻き取りドラム20の回転は、先ほどのステップST4における回転駆動よりも高速で行われる。これは、大きくなりすぎたたるみを早期に解消するためである。巻き取りドラム20の回転により、発光素子22aの光の遮断状態が解消され、たるみ量が所定量以下になったと判断された場合(ステップST11でYESの場合)、再び巻き取りドラム20を停止させる(ステップST12)。その後、ステップST8へ戻り、ペーパーPの後端が第1搬送ユニット11に到達したか否かを判断する。
【0079】
たるみ量が所定量以下でない場合(ステップST11でNOの場合)には、一旦ステップST13に移行して、ステップST8と同じ判定を行う。ペーパー後端が第1搬送ユニット11に到達していなければ(ステップST13でNOの場合)、ステップST11に戻り、再びたるみ量のモニターを行う。一方、ペーパー後端が第1搬送ユニット11に到達していれば(ステップST13でYESの場合)、巻き取りドラム20の回転を停止する(ステップST14)。図11は、図10の状態から更に巻き取りドラム20が回転した状態を示しているが、圧着ローラ21は210゜以上回転していることから、クラッチ部材214がすべっている状態である。
【0080】
以上のような巻き取りドラム20の回転及び停止の制御は、ドラム回転制御手段44の機能に基づいて行われる。そして、たるみ検出センサー22によってたるみ量を検出して、そのたるみ量に基づいて巻き取りドラム20の回転制御を行うことで、巻き取りドラム20は回転及び停止を繰り返す間歇駆動制御が行われることになる。この回転及び停止を何回繰り返すかについては、プリントサイズにより決まる。
【0081】
ペーパーPの後端が第1搬送ユニット11に到達し、且つ巻き取りドラム20の回転が停止すると、圧着駆動手段35aによって、第1搬送ユニット11の挟持搬送ローラ対11aは非圧着状態から圧着状態へと切り替えられる(ステップST15)。そして、図12に示すように、ユニット回転手段35bによって第1搬送ユニット11は90゜回転して垂直姿勢となる(ステップST16)。このとき、第1搬送ユニット11の搬送面と第2搬送ユニット12の搬送面とが一列に並んだ状態となる。次に、搬送ローラ対11aを回転駆動させて、ペーパーPを第2搬送ユニット12へ向かって搬送し、受け渡す(ステップST17)。この際、巻き取りドラム20は逆回転(時計回り)させる。
【0082】
これにより、第2搬送ユニット12によって挟持されたペーパーPは上方に搬送され、図示しない現像処理部に送り込まれて現像処理が施される。すなわち、ペーパーPは、巻き取り機構8によりペーパーPが巻き取られる前と、第2搬送ユニット12によって搬送されるときとでは、搬送方向における先端側と後端側とが入れ替わった状態で搬送されることになる。
【0083】
上述のような第2搬送ユニット12へのペーパーPの受け渡しが完了すると、次のペーパーPを受け入れるべく初期状態にセットする。すなわち、巻き取りドラム機構8を第2位置から第1位置へと上昇させると共に、圧着ローラ21も初期位置に復帰させ、次のペーパーPを受け入れ可能な状態にする。また、第1搬送ユニット11も水平状態に復帰させると共に、搬送ローラ対11aを非圧着状態にセットする。
【0084】
ここで、以上の説明では、ペーパーPの搬送方向の長さが所定値(例えば594.1mm、第1の長さ)以上のプリントサイズの場合の搬送方法について説明したが、ペーパーPの長さが前記所定値以下の場合には、その長さに応じて次のような2通りの動作を行う。
【0085】
すなわち、サービスサイズのようにペーパーPの搬送方向長さが所定長さよりも短い場合(例えば430.1mmよりも短い場合、第2の長さ)は、該ペーパーPを巻き取りドラム20で巻き取る必要がないため、巻き取り機構8を最初から第2位置へと移動させておく。これにより、露光エンジン7により画像露光されたペーパーPは、第1搬送ユニット11により直ちに方向変換され、第2搬送ユニット12へと受け渡しされる。その結果、ペーパーPに加わる負荷をより確実に低減することができる。
【0086】
一方、ペーパーPの長さが第1の長さと第2の長さとの中間の第3の長さ(本実施形態の例では430.1〜594.1mm)の場合には、巻き取り機構8による巻き取り動作、及び巻き取り機構8の第1位置と第2位置との中間位置(第3位置)への移動のみを行う。すなわち、図6AのステップST7において、巻き取りドラム20を中間位置まで下降させる。このとき、第3の長さのペーパーPの場合は、たるみ検出センサー22によるたるみ検出の必要がないため、たるみ検出は行わない。従って、図6A,図6Bにおいて、たるみ検出に関するステップを除いた動作が行われる。
【0087】
以上より、本実施形態によれば、レーザユニット71を、ペーパーPが搬送される遮光空間Vの外側に配設したので、レーザユニット71を外気と容易に接触させることができ、レーザユニット71を強制的に冷却する冷却装置等を設けなくても、レーザユニット71内の温度上昇を効率良く抑えることができる。この結果、半導体レーザで構成されるレーザ光源72R,72G,72Bが、温度上昇によりモードホッピングが生じる等して特性が変化するのを抑制することができる。よって、ペーパーPの乳剤面上の画像の画質を高レベルに維持することができる。また、光源ユニットの故障時に、新しいものと容易に交換することができ、メインテナンス性を向上させることができる。
【0088】
さらに、レーザユニット71の光出射口71aから出射された光を、遮光空間V内において上流側及び下流側露光搬送ローラ9a,9bにより搬送されているペーパーPの乳剤面上に導くための導光路部63を設けたので、レーザ光をペーパーPへ容易にかつ自在に導くことができるとともに、フレーム60の導光路部63が貫通する部分から余計な光が遮光空間V内に入らないようにすることも容易に行える。
【0089】
また、レーザユニット71を、遮光空間Vの上側に配設したので、導光路部63の光出射面を下向きにすることができ、これにより、その光出射面に塵や埃が付着し難くなる。よって、ペーパーPの乳剤面上の画像の画質をより一層高レベルに維持することができる。
【0090】
さらに、本実施形態によれば、露光位置よりも搬送路下流側に、ペーパーPを巻き付ける巻き取り機構8を設けることで、露光後バッファのための大きな空間や長い搬送路を設ける必要がなくなるため、装置全体の小型化を図りつつ露光ムラを十分に防止できるような露光後バッファを確保することができる。そして、前記巻き取り機構8を巻き取りドラム20及び圧着ローラ21によって構成し、露光されているペーパーPの搬送方向先端側を両者の間に挟持するようにしたので、長尺サイズ(例えば430.1mm以上)のプリントを行う場合でも、より狭い空間内で長尺ペーパーPを巻き取りドラム20によって巻き取ることが可能になる。したがって、装置全体を大型化することなく、長尺サイズのプリントを行えるようになる。
【0091】
また、前記圧着ローラ21を発泡材料などの弾性材料によって形成すれば、該圧着ローラ21と巻き取りドラム20との間にペーパーPを挟み込む場合に、該圧着ローラ21が弾性変形してペーパーPに与える振動や負荷変動を軽減することができる。特に、発泡ウレタンなどの発泡材料によって構成すれば、容易に弾性変形を生じるうえ、前記圧着ローラ21の重量も軽くなるため、搬送されてくるペーパーPに対して圧着ローラが大きな抵抗になることはなく、該ペーパーPに与える振動や負荷変動を大幅に軽減することができる。
【0092】
さらに、前記圧着ローラの表面を低摩擦にすれば、搬送されてくるペーパーPに対して圧着ローラの抵抗はさらに小さくなるので、該ペーパーPに与える振動や負荷変動をさらに軽減することができ、露光ムラの発生をより確実に防止することができる。
【0093】
(その他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、水平方向に搬送されるペーパーPの上方位置にレーザユニット71を配設したが、例えば、上下方向に搬送されるペーパーPの側方位置にレーザユニット71を配設して、このレーザユニット71に、導光路部63を水平方向に延びるように設けてもよい。
【0094】
また、導光路部63は直線的に真っ直ぐに延びるものに限らず、曲がっていてもよい。この場合、導光路部63内部でレーザ光を反射させるようにすればよい。こうすれば、レーザユニット71の配置の自由度が向上する。
【0095】
さらに、前記実施形態では、長尺のペーパーの場合には、巻き取りドラム20及び圧着ローラ21からなる巻き取り機構8によって露光後のペーパーPを巻き取るようにしているが、この限りではなく、該巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間にペーパーPの搬送方向前端側を挟持して、該ペーパーPの搬送方向のみを変えるようにしてもよい。
【0096】
さらにまた、前記実施形態では、巻き取りドラム20と圧着ローラ21とによってペーパーPの搬送方向前端側を挟持するようにしているが、この限りではなく、ペーパーPの露光中に該ペーパーPの搬送方向前端側を挟持するような構成であれば、ローラー以外のものであってもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、挿入検出手段33cは、ペーパー検出センサー10からの出力信号に基づいてペーパーPの先端が巻き取りドラム20と圧着ローラ21との間の隙間に挿入されたことを検出するようにしているが、この限りではなく、ペーパーPの挿入を検出するための専用のセンサーを挿入位置の近傍に設けてもよい。また、第1搬送ユニット11へのペーパーPの後端到達の検出も、専用のセンサーを第1搬送ユニット11に設けて行うようにしてもよい。
【0098】
加えて、本発明の画像形成装置は、前記実施形態のような写真処理システムに用いる写真画像形成装置(写真処理装置)には限られず、感光材料からなる画像形成媒体の画像形成面上に画像を形成するための光を出射する光源を有する光源ユニットを備えたものであれば、どのような画像形成装置であっても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、感光材料からなる画像形成媒体の画像形成面上に、光を照射することで画像を形成する画像形成装置に有用であり、特にレーザ光の照射により画像形成面上に潜像画像を形成する写真画像形成装置(写真処理装置)に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を備えた写真処理システムの構成を示す部分断面図である。
【図2】収容空間部の構成を示す図である
【図3】巻き取り機構の構成を示す詳細な斜視図である。
【図4】圧着ローラを移動させるカム機構を示す断面図である。
【図5】画像形成装置の制御ブロック構成を示す図である。
【図6A】画像形成装置の動作を示すフローチャート(前半)である。
【図6B】画像形成装置の動作を示すフローチャート(後半)である。
【図7】画像形成装置の動作(その1)を示す図である。
【図8】画像形成装置の動作(その2)を示す図である。
【図9】画像形成装置の動作(その3)を示す図である。
【図10】画像形成装置の動作(その4)を示す図である。
【図11】画像形成装置の動作(その5)を示す図である。
【図12】画像形成装置の動作(その6)を示す図である。
【図13】レーザユニットの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
A 画像形成装置
P ペーパー(画像形成媒体)
V 遮光空間
7 露光エンジン
9a,9b 露光搬送ローラ(搬送機構)
63 導光路部
71 レーザユニット(光源ユニット)
71a 光出射口
72R,72G,72B レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光された空間内において、感光材料からなる画像形成媒体を搬送する搬送機構と、
前記遮光空間の外側に配設され、内部に、前記画像形成媒体の画像形成面上に画像を形成するための光を出射する光源を有し、該光源から出射された光を光出射口から外部へ出射する光源ユニットと、
前記光源ユニットの光出射口から出射された光を、前記遮光空間内において搬送機構により搬送されている画像形成媒体の画像形成面上に導くための導光路部とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記光源ユニットは、前記遮光空間の上側に配設されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−140035(P2007−140035A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332653(P2005−332653)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】