画像形成装置
【課題】長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像、特に残像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、静電潜像を現像する現像装置と、現像を転写材に転写するため帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置と、感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、感光体が導電性基体上に電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層を有し、且つ予備除電装置の出力を制御する制御手段を有する。
【解決手段】感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、静電潜像を現像する現像装置と、現像を転写材に転写するため帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置と、感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、感光体が導電性基体上に電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層を有し、且つ予備除電装置の出力を制御する制御手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真プロセスを利用して画像形成動作をおこなう画像形成装置に関し、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザープリンタなどに応用される電子写真装置で使用される電子写真感光体は、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機感光体が主流であった時代から、現在では、地球環境への負荷低減、低コスト化、および設計自由度の高さの観点から無機感光体よりも有利な有機感光体(OPC)が広く利用されるようになっている。
この有機感光体は層構成別に分類することができ、導電性の支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を単一の層に含有せしめバインダー樹脂などで成膜した単層型、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層を積層して構成される積層型に大きく分類される。積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を設ける構造と、これと逆の構造があり、前者が一般的で後者を特に逆層と呼ぶ場合がある。しかしながら逆層型は通常薄層で設けられる電荷発生層が表層にあるため摩耗による耐久性が弱く殆ど実用化されていない。一方単層型は、その層構成から塗工、成膜工程が少なくて済み生産性に優れる。加えて電荷発生物質が感光層中に分散されているため表層近傍から電荷発生が可能となり、電荷の拡散が少なく高解像度化に有利である。また摩耗による感度の変動も少ない。
近年の画像形成装置としての主要な要求事項である高画質で安定な画像形成装置を得るのに好適な感光体構成と言える。
しかしながらこのような単層構成の感光体を用いて高画質化をはかるために高密度で画像形成をおこなう画像形成装置においては繰り返し使用においてその副作用として「残像」と称される画像劣化を伴うケースが多く、現状では要求されるような長期間にわたり安定した高画質な出力画像が得られていないのが実情である。
【0003】
ここで、残像現象について説明する。
電子写真方式で画像を形成する電子写真装置において、例えば、図7に示す明暗のはっきりした画像作成に次いでハーフトーン画像をプリントすると、ハーフトーン画像が本来なら一様で均一な画像とならなければならない画像の中に、ハーフトーン画像の前にプリントした画像パターンが浮き出てしまうケースがある。この模式図を図8に示す。このような画像劣化は、「ポジ残像」あるいは「ポジゴースト」と称され、特に高画質フルカラー電子写真装置では、この画像劣化の抑制が必要となる。これとは逆にハーフトーン画像部に、これの前にプリントした画像パターンが薄い濃度で識別される画像劣化を「ネガ残像」または「ネガゴースト」と称し、同様にこのような画像劣化を抑制する必要がある。この模式図を図9に示す。
【0004】
残像現象は、幾つかの機構が考えられるが、その一つとして例えば特許文献1(段落番号:[0002]〜[0006])に記載の如く、感光体表面電位のゆらぎによってもたらされると解釈することができる。この説明のため、潜像形成、現像、転写後の各工程にける感光体表面電位の変化を図10に模式的に示す。
この場合、図10(a)の潜像形成時に、感光体表面を一様に−700Vに帯電した後、画像情報を露光させる(矢印は露光箇所を示す)。露光部分の電位を大凡0Vとしている。そして図10(b)の現像時に、現像ポテンシャルと感光体表面との電位差に応じて、トナーを感光体表面に付着させて現像する。次いで、転写時にはプリント用紙側をプラスに帯電させてトナー像を感光体からプリント用紙へ転写させる。図10(c)のように、転写手段によって感光体に逆バイアスが印加されてしまう場合、転写後の感光体表面電位は全体的にプラス方向に遷移し、露光部分の電位は0Vを越えてついには極性が逆転し、プラス電位(図では+10Vとしている。)となってしまう。これはもちろん帯電極性が逆の場合でも正負が入れ替わるだけなので原理は同じである。
この現象が繰り返し行われると、帯電手段によって像露光前に感光体表面を一様にマイナス帯電しても、プラス寄りとなってしまった部分の感光体表面電位は、その分、帯電電位もプラス寄りとなってしまう。結果プラス方向に遷移した部分は、他の部分よりも現像ポテンシャル差が大きくなるため、見かけ上の増感が生じて濃いトナー像が形成されてしまう。この部分がポジ残像として識別されることとなる。
【0005】
特許文献2(段落番号[0017])に示されるように、例えばインクジェットプリンタで広く用いられているプリンティング方式のように、画像の濃淡をドットの有無で(2値的に)処理する方式でも残像は発生してしまう。ドット形状を書き込むビームスポットには僅かながらも照度分布を有する。このため、帯電電位がプラス寄りに遷移した部分にビームスポットを照射すると、表面電位が低電位側にオフセットされた分、現像可能となるドットの輪郭部分が広がってしまい、ドット径の太りが生じてしまう。
不要に大きくなったドット画像は、画像全体として見た場合、濃く感じられてしまい、これもポジ残像が識別される画像となる。このケースでは、例えば600dpiよりも1200dpiとする高解像度で画像出力するほど、残像度合いが強く感じられることから、電子写真方式で画像を形成する電子写真装置を高解像度化すると、この問題の深刻度合いが大きくなる。
【0006】
この感光体表面電位のゆらぎを引き起こす原因は、例えば特許文献3(段落番号:[0011]〜[0012])に記載されているような感光層内部の空間電荷の蓄積が主原因と理解されている。そこで、残像画像の発生を解消するためには空間電荷の蓄積を予防する手段が必要となる。
【0007】
以下に、残像予防に対する従来技術を記す。
[(1) 感光体表面層の改良]
特許文献4では、感光体表面層にポリアリレート樹脂を含有し、かつ誘電率を2.3以上に規定することが提案されている。効果に対する機構は検討中(段落番号[0038]に記載。)であるため、機構の説明は省略されているが、実施例により効果が確認されている。
これに類する提案として、特許文献5では、感光層にアゾ顔料を含有し、且つ、感光体表面層にポリアリレート樹脂を含有させることが提案されている。本公報によれば、ポリアリレート樹脂は結晶性が高く、その性状により電荷輸送物質をある程度配向させるものと推測され、その配向性と特定の電荷発生物質(アゾ顔料)を組み合わせることによって、注入界面の障壁が低くなり、結果、フォトメモリが低減されると考えられている(段落番号[0036]に記載。)。
特許文献6では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の表面層にビスフェノール型のポリカーボネートを含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献7では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の表面層に高分子重合体からなる電荷輸送物質を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献8では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に、絶縁性及び少なくとも抵抗調整材料を含んでなる半導電性のいずれかの表面保護層を設けることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献9では、電荷輸送層などの感光体表面層にビスフェノールAと特定アリ−レン基との共重合ポリカーボネートを用いることで、表面層側からの逆極性電荷の注入が防止できることが提案されている。
特許文献10では、表面層の構成材料として、表面処理された金属酸化物粒子、アルコール可溶性樹脂及びアルコール可溶性電荷輸送材料を含有することが提案されている。本公報では、表面層の結着樹脂として、熱可塑性樹脂は強度が不十分であるため、不適当であること、また、塗工の際にこれを溶解させる溶剤は樹脂を溶解しやすい溶剤を用いざるを得ないため、感光層を溶かしてしまう方法は採用できないことが指摘されている(段落番号[0009]に記載。)。効果に対する機構の説明は不明であるが、実施例中の記載からこれら材料の組み合わせとして、アルコール可溶性電荷輸送材料を用いることにより残像画像の発生が防止できるものと解釈される。
特許文献11では、感光層及び保護層を有する電子写真感光体において、保護層中にアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の少なくとも一方を含有させることが提案されている。保護層中にこれらの元素を含有させることでイオン伝導性を付与させ、耐久性と残留電位の蓄積解消を両立する手段と解釈される。本公報では、保護層中に電荷輸送物質を含有させることでも残留電位の低下が可能であるが、耐久による摩耗量が増大する不具合があることを指摘している(段落番号[0019]に記載。)。
【0008】
(2) 感光層の改良
特許文献12では、電子写真感光体に含有する電荷輸送物質にクロロガリウムフタロシアニン化合物及びヒドロキシガリウムフタロシアニン化合物から選択された少なくとも1種を含有し、かつ電荷輸送物質として、ヒドラゾン骨格を有する特定化合物を少なくとも1種含有させることが提案されている。本公報では、電荷の受け渡しをする電荷発生物質と電荷輸送物質の間には必ずより好ましい組み合わせがあり、これらが好ましい組み合わせであれば、転写メモリやフォトメモリも改善できると提唱している。これらの組み合わせの相性についての法則を予想することは現状では困難であるが、以上の組み合わせが適当であると考えられている(段落番号[0017]〜[0021]に記載。)。
特許文献13では、380〜500nmの短波長半導体レーザー光を感光体に照射する電子写真装置において、感光層にアゾ顔料を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により、アゾ顔料の多くが、α型チタニルフタロシアニンよりもフォトメモリの小さいことが確認されている。
特許文献14では、電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する電子写真感光体において、電荷輸送物質はPM3パラメータを使った半経験的分子起動計算を用いた構造最適化計算による分極率の計算値が70Åよりも大きく且つ、双極子モーメントの計算値が1.8Dよりも小さい物質と、この電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物とを含有することが提案されている。後者の化合物が、余分に感光体に照射される光を吸収するため、フォトメモリ性が改善されると考察されている(段落番号[0071]に記載。)。
【0009】
(3) 電荷輸送層の改良
特許文献15では、積層型感光体において、電荷発生層にオキシチタニウムフタロシアニンを含有し、電荷輸送層に2種類以上の電荷輸送材料を含有し、個々の電荷輸送材料の酸化電位差を0.04V以内に規定することが提案されている。効果に対する機構の説明が不明瞭であるが、電荷輸送材料のエネルギーレベルを合わせることで、電荷輸送材料間の電荷キャリアのホッピングを円滑にできること、また電荷輸送材料のトラッピングが少なくなることで、転写手段による逆極性の帯電によって励起されるエレクトロンの絶対量が小さくなるため残像が防止されると考察されている(段落番号[0021]〜[0022]に記載。)。
特許文献16では、背面露光型の高速型電子写真プロセス(露光手段から現像手段までの時間が10〜150msec程度)に搭載する電子写真感光体において、電荷輸送層の電荷移動度を、電界強度2×106V/cmの条件で、1×10−6cm2/V・sec以上と規定することが提案されている。感光体の動的感度が遅いと現像迄に潜像形成が完結されず、繰り返し使用により、残像が増大することが指摘され、以上の工夫により、動的感度特性を確保し、残像形成を防止するものであることが示されている(段落番号[0010]、[0043]〜[0044]に記載。)。
特許文献17では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の電荷輸送層にトリフェニルアミン化合物及びN,N,N,N’−テトラフェニルベンジジン化合物から選択される電荷輸送物質を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
【0010】
(4) 電荷発生層の改良
特許文献18では、電荷発生層の膜厚を0.25μm以上の厚膜化若しくは電荷発生層中の電荷発生物質の含有量を50重量%以上の高濃度化して、この層の電荷の大トラップ化を図り、結果、ゴーストを目立たなくしてしまう手段が提案されている。
特許文献19では、積層型構造の電子写真感光体において、電荷発生層にキシリル基を有するトリアリールアミン化合物を含有させることが提案されている。本公報によれば、電荷発生層と電荷輸送層の界面には、キャリア輸送のバリア(障壁)が形成され、ここに電荷キャリアがトラップされると記載してある。トラップキャリアは、電荷発生層中の空間電場を低減させるため、ハーフトーン画像部の電位は下がらず、この部位に残像が生じてしまう。そこで、電荷発生層に電荷輸送剤(キシリル基を有するトリアリールアミン化合物)を混在させることで、発生したキャリアが電荷輸送剤に速やかに注入され、電荷輸送層へ移動することとなる。結果、トラッピングキャリアの堆積が防止でき残像の発生が改善されるとされている(段落番号[0011]〜[0012]に記載。)。
特許文献20では、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層をこの順に有する電子写真感光体において、感光層に電荷発生物質としてCuKα特性X線回折における回折角(2θ±0.2°)が9.5°、24.1°及び27.3°に強いピ−クを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献21では、電荷発生層の構成材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニンと、結着樹脂としてアセタール化部分とアセチル基部分と水酸基部分から構成され、ブチラール化度が62モル%以上、重量平均分子量(Mw)が2.0×105以上、数平均分子量が5.0×104以上のブチラール樹脂を含有することが提案されている。以上の特定の組成をもつブチラ−ル樹脂の効果(例えば、水酸基の数の影響など)により感光層中の残留フォトキャリアー量が減少し、残像が改善されると推測されている。
【0011】
(5) 電荷発生層と電荷輸送層とのマッチング規定
特許文献22では、積層型構造の電子写真感光体について、電荷発生層に特定のアゾ顔料を含有し、且つ電荷輸送層にはフルオレン骨格を有する電荷輸送物質を含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により光疲労の抑制効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献23では、負極性型の高ガンマ特性を示す感光体において、導電性支持体上にフタロシアニン化合物を含む電荷発生層とP型電荷輸送層を設ける積層型構成とし、且つ、P型電荷輸送層には無機P型半導体、t−Seの微粉末、電荷輸送性ポリマーからなる群より選ばれた材料を用いることが提案されている。本公報では、P型電荷輸送層に正孔輸送性分子を含めないことを特徴とし、これにより電荷発生層中への正孔輸送性分子の拡散を生じないようにしている。これにより、フタロシアニン顔料によるトラップの抑制、残像の低減が計られたと説明されている(段落番号[0003]、[0012]に記載。)。
【0012】
(6) 下引き層の改良
特許文献24では、電子写真感光体として、シランカップリング剤と無機顔料を用いて作成された下引き層を設けることが提案されている。これにより、支持体(基体)側に流出すべき電荷の流出が円滑に行われる結果、残像が生じないとされている(段落番号[0017]に記載。)。
特許文献25では、下引き層(中間層)を有する感光体について、下引き層に特定のポリアミド酸またはポリアミド酸エステル構造、及び特定構造のポリイミド構造樹脂とシアノエチル基を有する樹脂を含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により光疲労の抑制効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献26では、下引き層(中間層)に外界の湿度変化によっても抵抗値の変動が少ない架橋性の樹脂を用いられてきたことが紹介されている(段落番号[0004]に記載。)。本公報では、残像発生低減の提案として、下引き層に多環キノン、ペリレン等を含有させた例(特許文献27)、メタロセン化合物と電子吸引性化合物、メラミン樹脂を用いた例(特許文献28)、金属酸化物微粒子とシランカップリング剤を用いた例(特許文献21)、シランカップリング剤で表面処理した金属酸化物微粒子を用いた例(特許文献29)等が発表されていることが示されている。
オキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生層に用いる高感度型の電子写真感光体の場合、高感度故、励起された分子および発生キャリアの絶対数が多く、帯電−露光を繰り返す電子写真プロセスにおいて電荷分離を起こさない励起種、電子、ホール等が感光体中に残存し易いことが指摘されている(段落番号[0010]に記載。)。これに対し、同公報では、下引き層の構成材料として、ポリアミド樹脂とジルコニウム化合物、若しくはポリアミド樹脂とジルコニウムアルコキサイド及びアセチルアセトン等のジケトン化合物を含有することが提案されている。同様に、特許文献30では下引き層の樹脂としてセルロース樹脂を用い、ジルコニウム化合物若しくはジルコニウムアルコキサイドとジケトン化合物を含有することが提案されている。
特許文献31では、下引き層と電荷発生物質、電荷輸送物質を含有する電子写真感光体において、電荷輸送物質はPM3パラメータを使った半経験的分子起動計算を用いた構造最適化計算による分極率の計算値が70Åよりも大きく且つ、双極子モーメントの計算値が1.8Dよりも小さい物質ないし、特定のアリールアミン系化合物であり、下引き層に有機珪素化合物で被覆された酸化チタン粒子と特定構造のジアミン成分を構成成分として有するポリアミドを含有させることが提案されている。本公報では、下引き層を設けることでフォトメモリ特性の改良が確認されているが、この機構として、下引き層を設けることで感光層中の滞留キャリアを逃しやすくするためと考えられている(段落番号[0075]に記載。)。
特許文献32では、下引き層(中間層)を有する積層型感光体を、下引き層の体積抵抗率を1010〜1012Ωcm、電荷輸送層の膜厚を18μm以下に設定し、且つ除電手段を省略する方法が提案されている。除電手段(除電光)の省略により、感光体の光疲労を防止し、且つ下引き層の抵抗を規定することで、支持体から感光体への電荷注入を制御することで空間電荷の蓄積を防止すると解釈される(段落番号[0005]、[0025]〜[0029]に記載。)。
【0013】
(7) 添加剤の配合
前記特許文献3では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の表面層に少なくともヒンダードフェノール構造単位を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献33では、フタロシアニン顔料を用いる電荷発生層中にジチオベンジル化合物を含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は省略されているが、実施例ではフォトメモリの蓄積とポジゴーストの改善が示されている。
【0014】
(8) 電子写真プロセスの工夫
特許文献34では、感光体を一定条件のもとで通常帯電とは逆極性(プラス)の帯電及び放置して使用することが提案されている。高感度電荷輸送層をもつ感光体の場合、露光により発生する光誘起電荷キャリアが多い。光誘起電荷キャリアとしては、電荷輸送層に注入したホールと同数のエレクトロンが生じるが、エレクトロンが速やかに支持体に抜け出ないと電荷発生層中にエレクトロンが残り、これにより残像が発生する。そこで、故意にプラス帯電を行うことで、支持体からエレクトロンを注入し、電荷発生層内部にエレクトロントラップを保持する。この状態で感光体を露光した場合、露光部と非露光部のエレクトロントラップの差が小さく、ゴースト画像を目立たなくしてしまう手段と解釈される(段落番号[0016]〜[0022]に記載。)。
特許文献35では、感光体の支持体側に交流を重畳した直流電流を印加する手段が提案されている。電荷発生層にトラップされたエレクトロンを支持体側に逆バイアス印加することで出してしまう手段と解釈される。交流を重畳する狙いは、電流量を増加し、逆チャージバイアス効果を促進するためであることが記載されている(段落番号[0019]〜[0021]に記載。)。
特許文献36では、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に対して、主帯電以外の帯電を行い、次に光除電を行い、前記帯電が最初になされた電子写真感光体の部位が、前記主帯電を行う手段に対向する位置に突入した時から主帯電を行うことにより、感光体内部の空間電荷を解放・消滅させた状態で、画像形成を行うことができ、画像形成初期における残像の発生を抑えられることが提案されている(段落番号[0012]、[0020]に記載。)。
特許文献37では、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に対して、感光体に流入される転写手段からの転写電流を一定に制御する制御手段を設けることが提案されている。本公報によれば、残像の発生は、転写電流に依存し、転写電流が大きくなるとネガ残像が強く現れる。これは、転写の際に感光体の非露光部(非画像部)へホール(正孔)が注入され、ホールが電荷発生層または電荷輸送層の基材側の界面でトラップされ、次の帯電プロセス時に解放されて暗減衰増加(見かけ上増感)となり、ネガ残像が発生すると推測されている。したがって、転写電流値を一定に制御すれば、感光体への注入電荷を一定に制御でき、結果、残像を抑制できるとされる(段落番号[0012]に記載。)。
特許文献38では、感度に対する帯電前光メモリ比のアクションスペクトルから、書込光波長ないし除電光波長を規定する手段が提案されている。
特許文献39では、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に対して、転写前に露光を行うことで非露光部の帯電電位を、この露光前の1/3にすることで残像を抑制できることが提案されている。効果に対する機構の説明は詳細に記載されていないが、転写前に露光を行えば、露光部電位と非露光部電位のギャップ差が小さくなるため、残像画像の識別ができなくなるようにしていると思われる。
特許文献40では、感光層と光硬化型樹脂(アクリル樹脂)を含有した保護層を有する電子写真感光体を用いる電子写真装置について、電子写真感光体の表面近傍に湿度センサを設けることが提案されている。湿度センサは帯電部材にかかる交流成分の電流値を制御するものである。本公報は、湿度センサ設置による画像ボケと画像滲み低減の機構に関わる記載があるが、フォトメモリ低減に関する効果の機構説明は省略されている。しかしながら、実施例では湿度センサ設置によるフォトメモリ低減化が確認されている。
特許文献41では、S字型感光体のゴースト画像出力を防止する方策として、ゼログラフィックTOF法から算出される露光による感光体帯電電位の半減時間が、電子写真装置の露光手段から現像手段に至る時間(以下簡単のため、これを「露光−現像時間」と称することがある。)の1/10以下に規定することが提案されている。
また、上記の下引き層の改良の項で記載した如く、特許文献32では、除電手段(除電光)の省略により、感光体の光疲労を防止する方法が提案されている。
前記特許文献2では、帯電から露光に至る時間T、感光体表面の帯電電位をVH、帯電した後の10T後迄、暗減衰した電位をV1、帯電と像露光を経た後、再度、帯電した後の10T後迄、暗減衰した電位をV2としたとき、|(V1−V2)/VH|<0.020となる関係を満たすようにすることが提案されている。実際の手段として、実施例中ではプロセス速度を上げて暗減衰時間を短くするか、帯電電位を低減させることが示されている。
残像発生の防止について、以上に記した従来技術の適用を試みたが、高耐久で高速且つ高画質プリントを指向する電子写真感光体と電子写真装置への適用には十分とは言えない結果に終始した。即ち従来の技術では解決に至れていないのが現状である。
【0015】
【特許文献1】特開平11−133825号公報
【特許文献2】特開2002−123067号公報
【特許文献3】特開平10−177261号公報
【特許文献4】特開平10−115946号公報
【特許文献5】特開平11−184135号公報
【特許文献6】特開平10−177263号公報
【特許文献7】特開平10−177264号公報
【特許文献8】特開平10−177269号公報
【特許文献9】特開2000−147803号公報
【特許文献10】特開2001−235889号公報
【特許文献11】特開2002−6528号公報
【特許文献12】特開2000−75521号公報
【特許文献13】特開2000−105478号公報
【特許文献14】特開2001−305762号公報
【特許文献15】特開平7−92701号公報
【特許文献16】特開平8−152721号公報
【特許文献17】特開平10−177262号公報
【特許文献18】特開平6−313972号公報
【特許文献19】特開平10−69104号公報
【特許文献20】特開平10−186696号公報
【特許文献21】特開2002−107972号公報
【特許文献22】特開平7−43920号公報
【特許文献23】特開平9−211876号公報
【特許文献24】特開平8−22136号公報
【特許文献25】特開平11−184127号公報
【特許文献26】特開2000−112162号公報
【特許文献27】特開平8−146639号公報
【特許文献28】特開平10−73942号公報
【特許文献29】特開平9−258469号公報
【特許文献30】特開2001−51438号公報
【特許文献31】特開2001−305763号公報
【特許文献32】特開2002−107983号公報
【特許文献33】特開2000−292946号公報
【特許文献34】特開平7−13374号公報
【特許文献35】特開平7−44065号公報
【特許文献36】特開平10−123802号公報
【特許文献37】特開平10−123855号公報
【特許文献38】特開2000−231246号公報
【特許文献39】特開平10−123856号公報
【特許文献40】特開平10−246997号公報
【特許文献41】特開2001−117244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像、特に残像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は上記課題を達成するために、長期間の繰り返し使用時において感光体摩耗が生じても、基本的な電子写真特性を損なうことなく異常画像の発生しない高耐久、高品質な画像形成装置について鋭意検討した結果、感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像像を転写材に転写するため前記帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置と、前記感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、前記感光体が導電性基体上に少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層から成り、且つ前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置の出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置とすることで、上記課題を解決し長期間繰り返し使用しても、残像などの異常画像が発生することなく、良好な画像が出力できる画像形成装置が得られることを見出し、本発明に至った。
【0018】
本発明で用いられる感光体に用いられる下記一般式(I)で表される電子輸送物質は優れた電子輸送能を有することに加え、酸化性のガス、例えばオゾンやNOxに対して非常に安定性が高い。電子写真方式においてはその帯電時に量の多少はあるもののオゾン発生が避けられないため、このような酸化性ガスに対して安定な物質であることは長期間にわたって高品質な出力画像が得るうえで非常に重要となってくる。
また感光体は長期間の繰り返し使用にわずかずつではあるが摩耗が生じる。摩耗が大幅に進行すれば帯電装置によって所望の帯電電位まで感光体表面を帯電させることが出来なくなり画像形成が不可能となるが、そこに至るまでの経緯においても摩耗に伴って感光体の電気特性は変化していくため、初期の感光体膜厚において最適化していた画像形成の各プロセス条件(帯電条件、現像条件、転写条件、除電条件など)では摩耗が進行するに従い適正な条件から外れてしまい異常画像の要因となってしまう。中でも残像に関しては比較的摩耗が進行しない段階から発生する場合がみられ、これは繰り返しの使用により前述のように感光層中の空間電荷の蓄積が生じることが主原因と理解されている。そこで感光体の摩耗に応じた制御が必要となってくる。
一般に残像をなくすには帯電工程の前に一様に光照射をおこなうことにより感光体表面の露光部と非露光部の電位差を均しておくことが有効であるが、このような感光体への一様な光照射の繰り返しにより感光体の電気特性が低下してしまうという副作用が生じる。
感光体表面の露光部と非露光部の電位差を均すためには比較的強い光量を照射する必要があるが、そうするとこの副作用が強くなってしまうという矛盾が生じてしまう。
これを防ぐためには、弱い光照射によって十分に除電がおこなわれるようにするため、除電光を照射する前の段階で転写装置により印加される転写バイアスとは逆極性の電荷を付与する予備除電装置が有効となる。このような予備除電装置を設けることにより、転写バイアスによる履歴を除去することが非常に有効となる。しかしながらこの装置による印加も感光体の初期膜厚に合わせて最適化してあると、摩耗が進行していくと上述のように適正な値から外れてしまう。そこで感光体の摩耗に応じた出力制御が有効となる。
具体的には初期状態では感光体の膜厚も十分にあり、静電的な疲労も生じていないことから当該装置の出力はわずかでよく、繰り返し使用時においてその出力を大きくしていくなどの制御をおこなうものである。感光体の使用状況を検知し、これを制御部に送り、これにともない予め記憶部に記憶させてある情報に基づき制御部から出力を変化させるものである(この制御の概念図を図3に示す。)。
【0019】
感光体の使用状況を検知する手段としては、表面電位計などからの電位情報を元におこなうなど各種の手段を用いることができるが、感光体の回転数を検知する方法が好ましい。これは感光体の摩耗が感光体の回転数に比例して摩耗量が増えることが知られており、感光体の回転数とその回転数における感光体の摩耗量をプロットすると概ね直線関係を示す(図5)。
そこで予め感光体の総回転数を検知する装置を設け、この回転数情報に応じて出力を可変させてやれば、感光体膜厚に応じた適正な範囲で制御することが可能となる。即ち転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて制御をおこなうことでより安定した画像形成装置を得ることが可能となる(この制御の概念図を図4に示す。)。
【0020】
また転写材(主に転写紙)に転写をおこなう際に帯電バイアスと逆極性を印加する転写装置としては、接触転写で密着性の高い全面転写が可能でオゾン発生が少ない中抵抗のローラを介して直接転写紙に電圧を印加して転写をおこなう転写ローラ方式がより好ましい。また転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置としてはコロナ帯電器、接触帯電器などの各種の方式が選択可能であるが、感光体表面に非接触で電荷を付与出来ることからコロナ帯電器が好ましく、中でも機構が簡素で小型化が可能なコロトロン帯電器がより好ましい。また除電装置としては一般に用いられているものを挙げることが出来るが、中でも消費電力が少なく長寿命な発光ダイオード(LED)が好ましい。なかでも感光体の光疲労を低減する観点からは発光波長が600nm以上のものが特に好ましい。また感光層中に用いる電荷発生物質をフタロシアニンとすることで、潜像形成をおこなう露光部に用いられるレーザーダイオード(LD)など比較的長波長領域での光源に対しての感度特性に優れる特性を得ることが出来る。フタロシアニンはその中心金属の有無や結晶構造から多くの種類のものが知られているが、特にチタニルフタロシアニンとすることで応答性の優れた、繰返し使用時にも安定した電位特性が得られ、これにより長期間の使用時においても画質の劣化の少ない画像形成が可能となる。とりわけチタニルフタロシアニンの中でも、CuKα(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有すること、さらにはチタニルフタロシアニンがCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないものとすることでより安定な画像形成が可能となる。
さらにこれらの画像形成装置を複数並列し、各画像形成装置においてそれぞれ単色のトナー(例えばシアン、マゼンタ、イエローなど)の画像を形成後、順次重ね合わせてカラー画像を形成することが可能である。即ち一つの装置内にて複数の画像形成装置を具備するいわゆるタンデム方式と呼ばれる画像形成群として、ユニット毎に異なるトナー色の画像を形成し一度のサイクルでフルカラー画像を得られる一つの画像形成装置とすることが可能となる。
【0021】
すなわち本発明によれば、以下の画像形成装置が提供される。
(1)感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像像を転写材に転写するため前記帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置と、前記感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、前記感光体が導電性基体上に少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層を有し、且つ前記予備除電装置の出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【0022】
【化1】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。)
(2)前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて該逆極性のバイアスを印加する装置の出力制御をおこなうものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像形成装置。
(3)前記転写装置が転写ローラ方式のものであることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の画像形成装置。
(4)前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置がコロトロン帯電器であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れかに記載の画像形成装置。
(5)前記除電装置が発光ダイオードであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項の何れかに記載の画像形成装置。
(6)前記感光層に少なくとも電荷発生物質としてフタロシアニンを含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項の何れかに記載の画像形成装置。
(7)前記フタロシアニンがチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記第(6)項に記載の画像形成装置。
(8)前記フタロシアニンがCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さない結晶型を有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記第(7)項に記載の画像形成装置。
(9)前記第(1)項乃至第(8)項の何れかに記載の画像形成装置を複数並列に具備し、それぞれの画像形成装置において単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0023】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明により長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を得ることができるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の画像形成装置で用いられる感光体について以下に説明する。
本発明の画像形成装置で用いられる感光体では導電性支持体として、導電体あるいは導電処理をした絶縁体、例えばAl、Fe、Cu、Auなどの金属あるいはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn2O3、SnO2等の導電材料の薄膜を形成したもの、導電処理をした紙等が使用できる。導電性支持体の形状は特に制約はなくドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できる。
【0025】
次に本発明の画像形成装置で用いられる感光体の感光層について説明する。
本発明における感光層は、単層型であり、少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と前記一般式(I)で表される電子輸送物質を含有する単一の層から成る感光層から成る(図6)。
【0026】
本発明で用いられる電子輸送物質は前述の一般式(I)で表される。一般式(I)で表される化合物を感光層に含有させることにより、これまでの電子写真装置では不可能であった長期にわたる静電的な安定性、即ち帯電電位と露光部電位の差、所謂静電コントラストを安定に保ち続ける電気的な耐久性を向上させ、その結果長期の繰返し使用においても安定的に高画質な画像を得ることが出来る電子写真装置が実現可能となる。
またこの一般式(I)で表される電子輸送物質は、オゾンや窒素酸化物ガスといった活性ガスに対して非常に安定性が高く、帯電器からこのような活性ガスが発生する電子写真装置に用いるには非常に有利となっている。これは分子構造的にN位の塩基性が強いため、上述のようなガスに対して耐性を有するものと考えられる。即ち前述の機械的耐久性、電気的耐久性に加え化学的な耐久性に関しても非常に優れた電子写真装置を得ることが出来る。従って各種電子写真方式画像形成装置を設計する上では大型化や高コスト化を防止でき、安価で設置性の良い画像形成装置をユーザーに提供することが可能となる。
【0027】
ここで用いる前記一般式(I)で表される化合物の式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。
【0028】
該置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1〜25、好ましくは炭素数1〜10の炭素原子を有するアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基といった直鎖状のもの、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メチルプロピル基、ジメチルプロピル基、エチルプロピル基、ジエチルプロピル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルペンチル基、メチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基等の分岐状のもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基で置換されたアルキル基、シアノ基で置換されたアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたアルキル基に含まれる。
該置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数3〜25、好ましくは炭素数3〜10の炭素原子を有するシクロアルキル環、具体的には、シクロプロパンからシクロデカンまでの同属環、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン等のアルキル置換基を有するもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基等で置換されたシクロアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のシクロアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたシクロアルキル基に含まれる。
置換または無置換のアラルキル基としては、上述の置換または無置換のアルキル基に芳香族環が置換した基が挙げられ、炭素数6〜14のアラルキル基が好ましい。より具体的には、ベンジル基、ペルフルオロフェニルエチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ターフェニルエチル基、ジメチルフェニルエチル基、ジエチルフェニルエチル基、t−ブチルフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが例示できる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
一般式(I)で表わされる電子輸送物質の製造方法としては、下記の2通りの合成方法によって例示できる。
(nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。)
【0029】
【化2】
【0030】
具体的に前記一般式(I)で表される電子輸送物質を製造するための出発材料の合成、製造方法としては、下記の方法が例示できる。即ちナフタレンカルボン酸は公知の合成方法(例えば、米国特許第6794102号明細書、Industrial Organic Pigments 2nd edition, VCH, 485 (1997) など)に従い、下記反応式より合成される。
【0031】
【化3】
「式中、RnはR3、R4、R5、R6を表し、RmはR5、R6、R7、R8を表す。」
【0032】
本発明に用いる一般式(I)で表される電子輸送物質は、上記のナフタレンカルボン酸若しくはその無水物をアミン類と反応させ、モノイミド化する方法、ナフタレンカルボン酸若しくはその無水物を緩衝液によりpH調整してジアミン類と反応させる方法等により得られる。モノイミド化は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、酢酸、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルエチレンウレア、ジメチルスルホキサイド等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。pH調整には水酸化リチウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液をリン酸等の酸との混合により作製した緩衝液を用いる。カルボン酸とアミン類やジアミン類とを反応させて得られたカルボン酸誘導体脱水反応は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限はないがベンゼン、トルエン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、無水酢酸等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。いずれの反応も、無触媒若しくは触媒存在下でおこなってよく、特に限定されないが例えばモレキュラーシーブスやベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸等を脱水剤として用いることが例示できる。
【0033】
一般式(I)で表わされる電子輸送物質の式中は繰り返し単位であり、0から100までの整数である。繰り返し単位nは、重量平均分子量(Mw)から求められ、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を、繰り返し単位の分子量で割ることで求めることができる。すなわちこの電子輸送物質は分子量に分布を持った状態で存在する。nが100を超えると該電子輸送物質の分子量が大きくなり、各種溶媒に対する溶解性が落ちるため、100以下が好ましい。特にnが0の二量体が相溶性、及び感光体特性が優れるため好ましい。
一方、例えばnが1の場合はナフタレンカルボン酸の三量体であるが、R1、R2の置換基を適切に選択することにより、オリゴマーでも優れた電子移動特性が得られる。このように繰り返し単位nの数により、オリゴマーからポリマーまで幅広い範囲のナフタレンカルボン酸誘導体が合成される。
オリゴマー領域の分子量が小さい範囲では、段階的に合成することで、単分散の化合物を得ることができる。分子量が大きい電子輸送物質の場合は、分子量に分布を持ったものが得られる。
【0034】
更に具体的には一般式(I)で表される電子輸送物質としては具体的に以下のものが例示できる
(ただし、いずれも式中、両端の末端基Meはメチル基を表す。)
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
(nは、前記繰り返し単位)
【0043】
電子写真特性においては上記式(2)乃至式(9)で表される電子輸送物質が、繰返し使用時の帯電電位、及び露光部電位の安定性の面から特に好ましい。
【0044】
これら一般式(I)で表される電子輸送物質の含有率は、感光層全体の総固形分に対して好ましくは10wt%〜70wt%、より好ましくは30wt%〜60wt%である。添加量が多すぎると、耐摩耗性の低下や耐電電位の低下、及び暗減衰の上昇などの問題が現れることがあり、添加量が少なすぎると十分な静電コントラストを得られなかったり、異常画像抑制効果が十分に発揮されなくなったりするなどの問題が生じる場合がある。
また電子輸送物質としては前記一般式(I)で表される以外の公知の電子輸送物質を併用することが可能である。たとえば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0045】
さらに電子輸送物質に加えて、正孔を輸送する正孔輸送性物質を併用すること必要となる。正孔輸送性物質としては公知のものをいずれも使用出来るが、特にオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号公報、52−139066号公報に記載)イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特願平1−77839号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号公報、55−156954号公報、55−52063号公報、56−81850号公報などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号公報、58−198043号公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特願平2−94812号公報に記載)などが好ましい。
【0046】
また本発明で用いられる感光体に必須の電荷発生物質としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
その中でも特に中心金属としてチタンを有する下記構造式(1)に示すようなチタニルフタロシアニンとすることによって、特に感度が高い感光層とすることが出来、電子写真装置として小型化と高速化をよりいっそうはかることが可能となる。
【0047】
【化12】
【0048】
チタニルフタロシアニンの合成法や電子写真特性に関する文献としては、例えば特開昭57−148745号公報、特開昭59−36254号公報、特開昭59−44054号公報、特開昭59−31965号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報などが挙げられる。また、チタニルフタロシアニンには種々の結晶系が知られており、特開昭59−49544号公報、特開昭59−166959号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭63−366号公報、特開昭63−116158号公報、特開昭64−17066号公報、特開2001−19871号公報等に各々結晶形の異なるチタニルフタロシアニンが記載されている。
これらの結晶形のうち、ブラッグ角2θの27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが特に優れた感度特性と、繰返し使用時における電位の安定性を示し、露光部電位の上昇を発生しないため良好に使用される。特に、特開2001−19871号公報に記載されている27.2°に最大回析ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回析ピークとして7.3°にピークを有し、該7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニンを用いることで、高感度を失うことなく、繰り返し使用しても帯電性の低下を生ぜず、また露光部電位の上昇を生じない安定した電子写真感光体を得ることができる。
加えて平均粒子サイズが0.60μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶であることによって、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下を生じない安定な電子写真感光体を得ることができ、さらに地肌汚れ特性が著しく改善できる。
これは平均粒子サイズが0.60μmより大きくなると接触面積が低下し電荷発生効率が低下するためである。
【0049】
上述物質を感光層として形成するために用いられる結着樹脂(バインダー樹脂と称する場合もある)としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来るが、中でも耐摩耗性の優れるポリカーボネート樹脂がその性質上好ましい。
【0050】
感光層を形成する方法としては、溶液分散系からのキャスティング法が挙げられる。キャスティング法によって感光層を設けるには、上述した電荷発生物質をまず必要に応じて結着樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈した後、電子輸送物質、正孔輸送物質、結着樹脂などとともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いて溶解、塗工し成膜することにより形成される。塗工は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いておこなうことができる。
以上のようにして設けられる感光層の膜厚は10〜100μmが適当であり、好ましくは10〜35μmである。
【0051】
なお本発明の画像形成装置で用いられる感光体には導電性支持体と感光層との間に適宜中間層(下引き層と称する場合もある)を設けることも出来る。
用いることの出来る中間層であるが、中間層は一般に樹脂を主成分とするものが用いられたりするが、これらの樹脂はその上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を中間層中のフィラーとして加えることにより、さらに安定した帯電性を保持することが出来る。これらの中間層は、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することが出来、膜厚としては0.1〜20、好ましくは0.5〜10μmが適当である。
【0052】
また本発明の電子写真感光体には、感光層保護、耐刷性の向上などの目的で、感光層とは異なる組成物、組成比である保護層が感光層の上に設けられることもある。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層には酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、アルミナ等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜20μm程度が適当であり、好ましくは1〜7μm程度である。
【0053】
次に図面に沿って本発明で用いられる画像形成装置を説明する。なおいずれの図面においても感光体は本発明の要件を満たす感光体である。
図1は、本発明における画像形成装置の画像形成要素の一例を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、感光体(1)は、本発明の要件を満たす感光体である。
感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電装置(2)は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
また、(3)は露光装置を表し、半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)などを用いることが出来る。また場合によっては所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
(4)は現像装置であり、(4)により感光体上に現像されたトナー(10)は、受像媒体(11)に転写される。
転写手段(5)には、一般に公知のものを使用できるが、接触転写で密着性の高い全面転写が可能でオゾン発生が少ない中抵抗のローラを介して直接転写紙に電圧を印加して転写をおこなう転写ローラ方式がより好ましい。
現像装置(4)により感光体上に現像されたトナー(10)は、受像媒体(11)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング装置(7)により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0054】
(8)は転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置である。転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置としてはコロナ帯電器、接触帯電器などの各種の方式が選択可能であるが、感光体表面に非接触で電荷を付与出来ることからコロナ帯電器が好ましく、中でも機構が簡素で小型化が可能なコロトロン帯電器がより好ましい。このような転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置による印加は可変である。これは感光体の初期膜厚に合わせて最適化してあると、摩耗が進行していくと上述のように適正な値から外れてしまうためである。そこで感光体の使用状況に応じた出力制御が有効となる。具体的には初期状態では感光体の膜厚も十分にあり、静電的な疲労も生じていないことから当該装置の出力はわずかでよく、繰り返し使用時においてその出力を大きくしていくなどの制御をおこなうものである。感光体の使用状況を検知し、これを制御部に送り、これにともない予め記憶部に記憶させてある情報に基づき制御部から出力を変化させるものである。感光体の使用状況を検知する手段としては、表面電位計などからの電位情報を元におこなうなど各種の手段を用いることができるが、感光体の回転数を検知する方法が好ましい。これは感光体の摩耗が感光体の回転数に比例して摩耗量が増えることが知られており、感光体の回転数とその回転数における感光体の摩耗量をプロットすると概ね直線関係を示す(図5)。そこで予め感光体の総回転数を検知する装置を設け、この回転数情報に応じて出力を可変させてやれば、感光体膜厚に応じた適正な範囲で制御することが可能となる。即ち転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて制御をおこなうことでより安定した画像形成装置を得ることが可能となる。
このような制御に関する概念図を図3、図4に示す。
【0055】
(9)は除電手段である。光源としては蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができるが、中でも消費電力が少なく長寿命な発光ダイオード(LED)が好ましい。なかでも感光体の光疲労を低減する観点からは発光波長が600nm以上のものが特に好ましい。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、トナーも公知のものが使用される。
【0056】
本発明では図1に示すような画像形成要素を複数具備しても良く、その場合これらの画像形成要素を水平、もしくは斜めに複数並べ装置化して用いる(図2)。
図2には本発明によるフルカラーに対応した画像形成装置の全体の例を示す。この画像形成装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体(1Y,1M,1C,1Bk)が設けられている。この画像形成装置に用いられる各色毎の感光体(1Y,1M,1C,1Bk)は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。各感光体(1Y,1M,1C,1Bk)の周りには、前述の図1の画像形成装置と同様に、帯電装置(2Y,2M,2C,2Bk)、露光装置(3Y,3M,3C,3Bk)、現像装置(4Y,4M,4C,4Bk)、転写装置(5Y,5M,5C,5Bk)、クリーニング装置(7Y,7M,7C,7Bk)、転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置(8Y,8M,8C,8Bk)、除電装置(9Y,9M,9C,9Bk)が配設されている。
なお、図2における定着装置(6)は4つの各画像形成装置上で形成される各色のトナー像を一括して定着させるため、受容媒体(11)の最後の位置に配設されている。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
まず以下のように各実施例で用いるための感光体を作製した。
【0058】
<実施例1用感光体の作製>
(感光層塗工液)
下記に示す手順で感光層用塗工液を作製した。
電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン(Fastogen Blue 8120BS:大日本インキ化学工業株式会社製)27重量部をシクロヘキサンノン1015重量とともにボールミル装置にて120分間分散せしめ、電荷発生物質分散液とした。
これとは別にテトラヒドロフラン340重量部に、ポリカーボネート樹脂(Z型ポリカーボネート、粘度平均分子量;5.0万、帝人化成社製) 48重量部、前述の方法で合成した式(2)の電子輸送物質27重量部、下記構造式(A)で表される電荷輸送物質34重量部、及びシリコーンオイル(KF50-100CS信越化学工業社製)0.1重量部を溶解せしめ、これに前述の電荷発生物質分散液57.6重量部を添加し撹拌して感光層塗工液とした。
【0059】
【化13】
次いで、φ100mm、長さ360mmのアルミニウムドラム上に、上記感光層用塗工液を浸漬塗工法にて塗工速度を調節することにより29μmの感光層を形成し120℃において15分乾燥し、実施例1用感光体を作製した。
【0060】
<実施例2用感光体の作製>
実施例1用感光体において、感光層塗工液に用いた電荷発生物質であるX型無金属フタロシアニンに代えて、チタニルフタロシニン(特公平7-97221号公報に記載の合成例2により合成したもの)を用いた以外は実施例1用感光体と同様にして、実施例2用感光体を作製した。
【0061】
<実施例3用感光体の作製>
実施例1用感光体において、感光層塗工液に用いた電荷発生物質である無金属フタロシアニン顔料に代えて下記に示す合成例1の方法に従って作製したチタニルフタロシアニン顔料を用いた以外は実施例1用感光体と同様にして実施例3用感光体を作製した。
(実施例3用感光体に用いるチタニルフタロシアニンの合成例1)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。すなわち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8であった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。これを顔料1とする。
上記ウェットケーキの固形分濃度は、15wt%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する重量比は33倍である。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。そのX線回折の結果を図11に示す。
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
なおこのチタニルフタロシアニンを用いた電荷発生層用塗工液中での平均粒子サイズを堀場製作所製CAPA-700で測定したところ0.31μmであった。
【0062】
<実施例4用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(3)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例4用感光体を作製した。
【0063】
<実施例5用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(4)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例5用感光体を作製した。
【0064】
<実施例6用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(5)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例6用感光体を作製した。
【0065】
<実施例7用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(6)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例7用感光体を作製した。
【0066】
<実施例8用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(7)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例8用感光体を作製した。
【0067】
<実施例9用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(8)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例9用感光体を作製した。
【0068】
<実施例10用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(9)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例10用感光体を作製した。
【0069】
<比較例1用感光体の作製>
実施例3用感光体において、電荷輸送層塗工液に用いた式(2)で表される電荷輸送物質に代えて、下記構造式(C)で表される電荷輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、比較例1用感光体を作製した。
【0070】
【化14】
【0071】
<比較例2用感光体の作製>
実施例3用感光体において、電荷輸送層塗工液に用いた式(2)で表される電荷輸送物質に代えて、下記構造式(D)で表される電荷輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、比較例2用感光体を作製した。
【0072】
【化15】
【0073】
<比較例3用感光体の作製>
実施例3用感光体において、電荷輸送層塗工液に用いた式(2)で表される電荷輸送物質に代えて、下記構造式(E)で表される電荷輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、比較例3用感光体を作製した。
【0074】
【化16】
【0075】
〔実施例1〜10、及び比較例1〜3〕
このようにして作製した実施例1〜10用感光体、及び比較例1〜3用感光体を実装用にした後、デジタル複合機イマジオMF7070[(株)リコ−製]をベースとして、除電光(660nmのLED使用)照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加し、さらにパワーパックを改造しトナー極性も正帯電に変更した画像形成装置に装着した。なおこのコロトロン帯電器は、感光体の総回転数を検知する装置からの情報に基づき、この回転数情報に応じて出力を可変する制御装置が実装されており、感光体の回転数に応じて帯電器の出力を制御する。
このような画像形成装置を用いて、画像面積率が6%となるようなA4サイズ(横)のテストチャートを連続で25万枚まで印刷(プリント)した。
初期(印刷スタート時)と5万枚印刷後、及び25万枚印刷後において以下の項目について評価をおこなった。
【0076】
<感光体露光部電位>
初期と5万枚印刷後、25万枚印刷時における感光体表面電位(帯電電位)を+800Vとしたときの全面黒ベタ画像書込時の現像部での露光部電位について評価した。
<残像評価>
初期と5万枚印刷後、25万枚印刷後に出力された画像について残像の発生有無につい
<画像品質総合評価>
初期と5万枚印刷後、25万枚印刷後に出力された画像について残像以外の画像品質、例えば黒ベタ部分の画像濃度の変化、文字部などカスレの有無、像流れなどの有無等を評価項目に加え、残像を含めたあらゆる面から総合的に評価した。
【0077】
〔比較例4〕
実施例3において、除電光照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加しなかった以外は実施例3と同様の評価をおこない、比較例4とした。
【0078】
〔比較例5〕
実施例1において、除電光照射前に設けた転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器が、可変制御機構を持たず初期から一定の出力で転写装置と逆極性のバイアス印加をおこなうようにした以外は実施例3と同様の評価をおこない、比較例5とした。
【0079】
これらの評価結果を表1に示す。
【0080】
〔実施例11〜20用感光体、及び比較例6〜8用感光体の作製〕
実施例1用感光体の作製時においてφ30mm、長さ256mmのアルミニウムドラム上に感光層を設けた以外は実施例1と同様にして、実施例11用の感光体を作製した。
これと同様に実施例2〜10用、及び比較例1〜3用感光体において、φ30mm、長さ256mmのアルミニウムドラム上に感光層を設けた以外は、実施例2〜10用感光体と同様にしてそれぞれ実施例12〜20用、比較例6〜8用感光体とした。また、下記のような比較例9,10のための感光体を用意した。
このようにして作製した実施例11〜20用、及び比較例6〜10用の電子写真感光体を実装用にした後、タンデム機構を有するフルカラープリンターであるイプシオ CX400[(株)リコ−製]を、ベースとして、除電光(660nmのLED使用)照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加し、さらにパワーパックを改造しトナー極性も正帯電に変更した画像形成装置に装着した。なおこのコロトロン帯電器は、感光体の総回転数を検知する装置からの情報に基づき、この回転数情報に応じて出力を可変する制御装置が実装されており、感光体の回転数に応じて帯電器の出力を制御する。
このような画像形成装置を用いて、画像面積率がブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色がそれぞれ5%となるようなA4サイズ(縦)のテストチャートを連続で5万枚まで印刷(プリント)した。
初期(印刷スタート時)と1万枚印刷後、及び5万枚印刷後において以下の項目について評価をおこなった。
【0081】
<感光体露光部電位>
初期と1万枚印刷後、及び5万枚印刷後における感光体表面電位(帯電電位)を+550Vとしたときの全面黒ベタ画像書込時の現像部での露光部電位について評価した。
<残像評価>
初期と1万枚印刷後、及び5万枚印刷後に出力された画像について残像の発生有無について評価した。
<画像品質総合評価>
初期と1万枚印刷後、5万枚印刷後に出力された画像について残像以外の画像品質、例えば黒ベタ部分の画像濃度の変化、文字部などカスレの有無、像流れなどの有無等を評価項目に加え、残像を含めたあらゆる面から総合的に評価した。
【0082】
〔比較例9〕
実施例13において、除電光照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加しなかった以外は実施例13と同様の評価をおこない、比較例9とした。
【0083】
〔比較例10〕
実施例13において、除電光照射前に設けた転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器が、可変制御機構を持たず初期から一定の出力で転写装置と逆極性のバイアス印加をおこなうようにした以外は実施例13と同様の評価をおこない、比較例10とした。
【0084】
これらの評価結果を表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
以上説明したように、本発明により長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る画像形成装置の例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の別の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の制御例を示す図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の別の制御例を示す図である。
【図5】感光体回転数と感光体摩耗量の一般的な相関を示す図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の感光体の層構成を示す図である。
【図7】従来における画像パターンの一例を示す図である。
【図8】従来におけるポジ残像の例を示す模式図である。
【図9】従来におけるネガ残像の例を示す模式図である。
【図10】従来における電子写真装置の各プロセス時における感光体表面電位の電位状態を説明する図である。
【図11】実施例3用感光体に用いるチタニルフタロシアニンのX線回折の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1、1Y,1M,1C,1Bk・・・感光体
2、2Y,2M,2C,2Bk・・・帯電装置
3、3Y,3M,3C,3Bk・・・露光装置
4、4Y,4M,4C,4Bk・・・現像装置
5、5Y,5M,5C,5Bk・・・転写装置
6・・・定着装置
7、7Y,7M,7C,7Bk・・・クリーニング装置
8、8Y,8M,8C,8Bk・・・転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置
9、9Y,9M,9C,9Bk・・・除電装置
10、10Y,10M,10C,10Bk・・・トナー
11・・・受像媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真プロセスを利用して画像形成動作をおこなう画像形成装置に関し、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザープリンタなどに応用される電子写真装置で使用される電子写真感光体は、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機感光体が主流であった時代から、現在では、地球環境への負荷低減、低コスト化、および設計自由度の高さの観点から無機感光体よりも有利な有機感光体(OPC)が広く利用されるようになっている。
この有機感光体は層構成別に分類することができ、導電性の支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を単一の層に含有せしめバインダー樹脂などで成膜した単層型、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層を積層して構成される積層型に大きく分類される。積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を設ける構造と、これと逆の構造があり、前者が一般的で後者を特に逆層と呼ぶ場合がある。しかしながら逆層型は通常薄層で設けられる電荷発生層が表層にあるため摩耗による耐久性が弱く殆ど実用化されていない。一方単層型は、その層構成から塗工、成膜工程が少なくて済み生産性に優れる。加えて電荷発生物質が感光層中に分散されているため表層近傍から電荷発生が可能となり、電荷の拡散が少なく高解像度化に有利である。また摩耗による感度の変動も少ない。
近年の画像形成装置としての主要な要求事項である高画質で安定な画像形成装置を得るのに好適な感光体構成と言える。
しかしながらこのような単層構成の感光体を用いて高画質化をはかるために高密度で画像形成をおこなう画像形成装置においては繰り返し使用においてその副作用として「残像」と称される画像劣化を伴うケースが多く、現状では要求されるような長期間にわたり安定した高画質な出力画像が得られていないのが実情である。
【0003】
ここで、残像現象について説明する。
電子写真方式で画像を形成する電子写真装置において、例えば、図7に示す明暗のはっきりした画像作成に次いでハーフトーン画像をプリントすると、ハーフトーン画像が本来なら一様で均一な画像とならなければならない画像の中に、ハーフトーン画像の前にプリントした画像パターンが浮き出てしまうケースがある。この模式図を図8に示す。このような画像劣化は、「ポジ残像」あるいは「ポジゴースト」と称され、特に高画質フルカラー電子写真装置では、この画像劣化の抑制が必要となる。これとは逆にハーフトーン画像部に、これの前にプリントした画像パターンが薄い濃度で識別される画像劣化を「ネガ残像」または「ネガゴースト」と称し、同様にこのような画像劣化を抑制する必要がある。この模式図を図9に示す。
【0004】
残像現象は、幾つかの機構が考えられるが、その一つとして例えば特許文献1(段落番号:[0002]〜[0006])に記載の如く、感光体表面電位のゆらぎによってもたらされると解釈することができる。この説明のため、潜像形成、現像、転写後の各工程にける感光体表面電位の変化を図10に模式的に示す。
この場合、図10(a)の潜像形成時に、感光体表面を一様に−700Vに帯電した後、画像情報を露光させる(矢印は露光箇所を示す)。露光部分の電位を大凡0Vとしている。そして図10(b)の現像時に、現像ポテンシャルと感光体表面との電位差に応じて、トナーを感光体表面に付着させて現像する。次いで、転写時にはプリント用紙側をプラスに帯電させてトナー像を感光体からプリント用紙へ転写させる。図10(c)のように、転写手段によって感光体に逆バイアスが印加されてしまう場合、転写後の感光体表面電位は全体的にプラス方向に遷移し、露光部分の電位は0Vを越えてついには極性が逆転し、プラス電位(図では+10Vとしている。)となってしまう。これはもちろん帯電極性が逆の場合でも正負が入れ替わるだけなので原理は同じである。
この現象が繰り返し行われると、帯電手段によって像露光前に感光体表面を一様にマイナス帯電しても、プラス寄りとなってしまった部分の感光体表面電位は、その分、帯電電位もプラス寄りとなってしまう。結果プラス方向に遷移した部分は、他の部分よりも現像ポテンシャル差が大きくなるため、見かけ上の増感が生じて濃いトナー像が形成されてしまう。この部分がポジ残像として識別されることとなる。
【0005】
特許文献2(段落番号[0017])に示されるように、例えばインクジェットプリンタで広く用いられているプリンティング方式のように、画像の濃淡をドットの有無で(2値的に)処理する方式でも残像は発生してしまう。ドット形状を書き込むビームスポットには僅かながらも照度分布を有する。このため、帯電電位がプラス寄りに遷移した部分にビームスポットを照射すると、表面電位が低電位側にオフセットされた分、現像可能となるドットの輪郭部分が広がってしまい、ドット径の太りが生じてしまう。
不要に大きくなったドット画像は、画像全体として見た場合、濃く感じられてしまい、これもポジ残像が識別される画像となる。このケースでは、例えば600dpiよりも1200dpiとする高解像度で画像出力するほど、残像度合いが強く感じられることから、電子写真方式で画像を形成する電子写真装置を高解像度化すると、この問題の深刻度合いが大きくなる。
【0006】
この感光体表面電位のゆらぎを引き起こす原因は、例えば特許文献3(段落番号:[0011]〜[0012])に記載されているような感光層内部の空間電荷の蓄積が主原因と理解されている。そこで、残像画像の発生を解消するためには空間電荷の蓄積を予防する手段が必要となる。
【0007】
以下に、残像予防に対する従来技術を記す。
[(1) 感光体表面層の改良]
特許文献4では、感光体表面層にポリアリレート樹脂を含有し、かつ誘電率を2.3以上に規定することが提案されている。効果に対する機構は検討中(段落番号[0038]に記載。)であるため、機構の説明は省略されているが、実施例により効果が確認されている。
これに類する提案として、特許文献5では、感光層にアゾ顔料を含有し、且つ、感光体表面層にポリアリレート樹脂を含有させることが提案されている。本公報によれば、ポリアリレート樹脂は結晶性が高く、その性状により電荷輸送物質をある程度配向させるものと推測され、その配向性と特定の電荷発生物質(アゾ顔料)を組み合わせることによって、注入界面の障壁が低くなり、結果、フォトメモリが低減されると考えられている(段落番号[0036]に記載。)。
特許文献6では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の表面層にビスフェノール型のポリカーボネートを含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献7では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の表面層に高分子重合体からなる電荷輸送物質を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献8では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に、絶縁性及び少なくとも抵抗調整材料を含んでなる半導電性のいずれかの表面保護層を設けることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献9では、電荷輸送層などの感光体表面層にビスフェノールAと特定アリ−レン基との共重合ポリカーボネートを用いることで、表面層側からの逆極性電荷の注入が防止できることが提案されている。
特許文献10では、表面層の構成材料として、表面処理された金属酸化物粒子、アルコール可溶性樹脂及びアルコール可溶性電荷輸送材料を含有することが提案されている。本公報では、表面層の結着樹脂として、熱可塑性樹脂は強度が不十分であるため、不適当であること、また、塗工の際にこれを溶解させる溶剤は樹脂を溶解しやすい溶剤を用いざるを得ないため、感光層を溶かしてしまう方法は採用できないことが指摘されている(段落番号[0009]に記載。)。効果に対する機構の説明は不明であるが、実施例中の記載からこれら材料の組み合わせとして、アルコール可溶性電荷輸送材料を用いることにより残像画像の発生が防止できるものと解釈される。
特許文献11では、感光層及び保護層を有する電子写真感光体において、保護層中にアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の少なくとも一方を含有させることが提案されている。保護層中にこれらの元素を含有させることでイオン伝導性を付与させ、耐久性と残留電位の蓄積解消を両立する手段と解釈される。本公報では、保護層中に電荷輸送物質を含有させることでも残留電位の低下が可能であるが、耐久による摩耗量が増大する不具合があることを指摘している(段落番号[0019]に記載。)。
【0008】
(2) 感光層の改良
特許文献12では、電子写真感光体に含有する電荷輸送物質にクロロガリウムフタロシアニン化合物及びヒドロキシガリウムフタロシアニン化合物から選択された少なくとも1種を含有し、かつ電荷輸送物質として、ヒドラゾン骨格を有する特定化合物を少なくとも1種含有させることが提案されている。本公報では、電荷の受け渡しをする電荷発生物質と電荷輸送物質の間には必ずより好ましい組み合わせがあり、これらが好ましい組み合わせであれば、転写メモリやフォトメモリも改善できると提唱している。これらの組み合わせの相性についての法則を予想することは現状では困難であるが、以上の組み合わせが適当であると考えられている(段落番号[0017]〜[0021]に記載。)。
特許文献13では、380〜500nmの短波長半導体レーザー光を感光体に照射する電子写真装置において、感光層にアゾ顔料を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により、アゾ顔料の多くが、α型チタニルフタロシアニンよりもフォトメモリの小さいことが確認されている。
特許文献14では、電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する電子写真感光体において、電荷輸送物質はPM3パラメータを使った半経験的分子起動計算を用いた構造最適化計算による分極率の計算値が70Åよりも大きく且つ、双極子モーメントの計算値が1.8Dよりも小さい物質と、この電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物とを含有することが提案されている。後者の化合物が、余分に感光体に照射される光を吸収するため、フォトメモリ性が改善されると考察されている(段落番号[0071]に記載。)。
【0009】
(3) 電荷輸送層の改良
特許文献15では、積層型感光体において、電荷発生層にオキシチタニウムフタロシアニンを含有し、電荷輸送層に2種類以上の電荷輸送材料を含有し、個々の電荷輸送材料の酸化電位差を0.04V以内に規定することが提案されている。効果に対する機構の説明が不明瞭であるが、電荷輸送材料のエネルギーレベルを合わせることで、電荷輸送材料間の電荷キャリアのホッピングを円滑にできること、また電荷輸送材料のトラッピングが少なくなることで、転写手段による逆極性の帯電によって励起されるエレクトロンの絶対量が小さくなるため残像が防止されると考察されている(段落番号[0021]〜[0022]に記載。)。
特許文献16では、背面露光型の高速型電子写真プロセス(露光手段から現像手段までの時間が10〜150msec程度)に搭載する電子写真感光体において、電荷輸送層の電荷移動度を、電界強度2×106V/cmの条件で、1×10−6cm2/V・sec以上と規定することが提案されている。感光体の動的感度が遅いと現像迄に潜像形成が完結されず、繰り返し使用により、残像が増大することが指摘され、以上の工夫により、動的感度特性を確保し、残像形成を防止するものであることが示されている(段落番号[0010]、[0043]〜[0044]に記載。)。
特許文献17では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の電荷輸送層にトリフェニルアミン化合物及びN,N,N,N’−テトラフェニルベンジジン化合物から選択される電荷輸送物質を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
【0010】
(4) 電荷発生層の改良
特許文献18では、電荷発生層の膜厚を0.25μm以上の厚膜化若しくは電荷発生層中の電荷発生物質の含有量を50重量%以上の高濃度化して、この層の電荷の大トラップ化を図り、結果、ゴーストを目立たなくしてしまう手段が提案されている。
特許文献19では、積層型構造の電子写真感光体において、電荷発生層にキシリル基を有するトリアリールアミン化合物を含有させることが提案されている。本公報によれば、電荷発生層と電荷輸送層の界面には、キャリア輸送のバリア(障壁)が形成され、ここに電荷キャリアがトラップされると記載してある。トラップキャリアは、電荷発生層中の空間電場を低減させるため、ハーフトーン画像部の電位は下がらず、この部位に残像が生じてしまう。そこで、電荷発生層に電荷輸送剤(キシリル基を有するトリアリールアミン化合物)を混在させることで、発生したキャリアが電荷輸送剤に速やかに注入され、電荷輸送層へ移動することとなる。結果、トラッピングキャリアの堆積が防止でき残像の発生が改善されるとされている(段落番号[0011]〜[0012]に記載。)。
特許文献20では、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層をこの順に有する電子写真感光体において、感光層に電荷発生物質としてCuKα特性X線回折における回折角(2θ±0.2°)が9.5°、24.1°及び27.3°に強いピ−クを有するオキシチタニウムフタロシアニンを含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献21では、電荷発生層の構成材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニンと、結着樹脂としてアセタール化部分とアセチル基部分と水酸基部分から構成され、ブチラール化度が62モル%以上、重量平均分子量(Mw)が2.0×105以上、数平均分子量が5.0×104以上のブチラール樹脂を含有することが提案されている。以上の特定の組成をもつブチラ−ル樹脂の効果(例えば、水酸基の数の影響など)により感光層中の残留フォトキャリアー量が減少し、残像が改善されると推測されている。
【0011】
(5) 電荷発生層と電荷輸送層とのマッチング規定
特許文献22では、積層型構造の電子写真感光体について、電荷発生層に特定のアゾ顔料を含有し、且つ電荷輸送層にはフルオレン骨格を有する電荷輸送物質を含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により光疲労の抑制効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献23では、負極性型の高ガンマ特性を示す感光体において、導電性支持体上にフタロシアニン化合物を含む電荷発生層とP型電荷輸送層を設ける積層型構成とし、且つ、P型電荷輸送層には無機P型半導体、t−Seの微粉末、電荷輸送性ポリマーからなる群より選ばれた材料を用いることが提案されている。本公報では、P型電荷輸送層に正孔輸送性分子を含めないことを特徴とし、これにより電荷発生層中への正孔輸送性分子の拡散を生じないようにしている。これにより、フタロシアニン顔料によるトラップの抑制、残像の低減が計られたと説明されている(段落番号[0003]、[0012]に記載。)。
【0012】
(6) 下引き層の改良
特許文献24では、電子写真感光体として、シランカップリング剤と無機顔料を用いて作成された下引き層を設けることが提案されている。これにより、支持体(基体)側に流出すべき電荷の流出が円滑に行われる結果、残像が生じないとされている(段落番号[0017]に記載。)。
特許文献25では、下引き層(中間層)を有する感光体について、下引き層に特定のポリアミド酸またはポリアミド酸エステル構造、及び特定構造のポリイミド構造樹脂とシアノエチル基を有する樹脂を含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により光疲労の抑制効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献26では、下引き層(中間層)に外界の湿度変化によっても抵抗値の変動が少ない架橋性の樹脂を用いられてきたことが紹介されている(段落番号[0004]に記載。)。本公報では、残像発生低減の提案として、下引き層に多環キノン、ペリレン等を含有させた例(特許文献27)、メタロセン化合物と電子吸引性化合物、メラミン樹脂を用いた例(特許文献28)、金属酸化物微粒子とシランカップリング剤を用いた例(特許文献21)、シランカップリング剤で表面処理した金属酸化物微粒子を用いた例(特許文献29)等が発表されていることが示されている。
オキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生層に用いる高感度型の電子写真感光体の場合、高感度故、励起された分子および発生キャリアの絶対数が多く、帯電−露光を繰り返す電子写真プロセスにおいて電荷分離を起こさない励起種、電子、ホール等が感光体中に残存し易いことが指摘されている(段落番号[0010]に記載。)。これに対し、同公報では、下引き層の構成材料として、ポリアミド樹脂とジルコニウム化合物、若しくはポリアミド樹脂とジルコニウムアルコキサイド及びアセチルアセトン等のジケトン化合物を含有することが提案されている。同様に、特許文献30では下引き層の樹脂としてセルロース樹脂を用い、ジルコニウム化合物若しくはジルコニウムアルコキサイドとジケトン化合物を含有することが提案されている。
特許文献31では、下引き層と電荷発生物質、電荷輸送物質を含有する電子写真感光体において、電荷輸送物質はPM3パラメータを使った半経験的分子起動計算を用いた構造最適化計算による分極率の計算値が70Åよりも大きく且つ、双極子モーメントの計算値が1.8Dよりも小さい物質ないし、特定のアリールアミン系化合物であり、下引き層に有機珪素化合物で被覆された酸化チタン粒子と特定構造のジアミン成分を構成成分として有するポリアミドを含有させることが提案されている。本公報では、下引き層を設けることでフォトメモリ特性の改良が確認されているが、この機構として、下引き層を設けることで感光層中の滞留キャリアを逃しやすくするためと考えられている(段落番号[0075]に記載。)。
特許文献32では、下引き層(中間層)を有する積層型感光体を、下引き層の体積抵抗率を1010〜1012Ωcm、電荷輸送層の膜厚を18μm以下に設定し、且つ除電手段を省略する方法が提案されている。除電手段(除電光)の省略により、感光体の光疲労を防止し、且つ下引き層の抵抗を規定することで、支持体から感光体への電荷注入を制御することで空間電荷の蓄積を防止すると解釈される(段落番号[0005]、[0025]〜[0029]に記載。)。
【0013】
(7) 添加剤の配合
前記特許文献3では、中間転写体を有する電子写真装置において、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体の表面層に少なくともヒンダードフェノール構造単位を含有させることが提案されている。効果に対する機構の説明は見あたらないが、実施例により効果が確認されている。効果は選択材料に起因するものと思われる。
特許文献33では、フタロシアニン顔料を用いる電荷発生層中にジチオベンジル化合物を含有することが提案されている。効果に対する機構の説明は省略されているが、実施例ではフォトメモリの蓄積とポジゴーストの改善が示されている。
【0014】
(8) 電子写真プロセスの工夫
特許文献34では、感光体を一定条件のもとで通常帯電とは逆極性(プラス)の帯電及び放置して使用することが提案されている。高感度電荷輸送層をもつ感光体の場合、露光により発生する光誘起電荷キャリアが多い。光誘起電荷キャリアとしては、電荷輸送層に注入したホールと同数のエレクトロンが生じるが、エレクトロンが速やかに支持体に抜け出ないと電荷発生層中にエレクトロンが残り、これにより残像が発生する。そこで、故意にプラス帯電を行うことで、支持体からエレクトロンを注入し、電荷発生層内部にエレクトロントラップを保持する。この状態で感光体を露光した場合、露光部と非露光部のエレクトロントラップの差が小さく、ゴースト画像を目立たなくしてしまう手段と解釈される(段落番号[0016]〜[0022]に記載。)。
特許文献35では、感光体の支持体側に交流を重畳した直流電流を印加する手段が提案されている。電荷発生層にトラップされたエレクトロンを支持体側に逆バイアス印加することで出してしまう手段と解釈される。交流を重畳する狙いは、電流量を増加し、逆チャージバイアス効果を促進するためであることが記載されている(段落番号[0019]〜[0021]に記載。)。
特許文献36では、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に対して、主帯電以外の帯電を行い、次に光除電を行い、前記帯電が最初になされた電子写真感光体の部位が、前記主帯電を行う手段に対向する位置に突入した時から主帯電を行うことにより、感光体内部の空間電荷を解放・消滅させた状態で、画像形成を行うことができ、画像形成初期における残像の発生を抑えられることが提案されている(段落番号[0012]、[0020]に記載。)。
特許文献37では、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に対して、感光体に流入される転写手段からの転写電流を一定に制御する制御手段を設けることが提案されている。本公報によれば、残像の発生は、転写電流に依存し、転写電流が大きくなるとネガ残像が強く現れる。これは、転写の際に感光体の非露光部(非画像部)へホール(正孔)が注入され、ホールが電荷発生層または電荷輸送層の基材側の界面でトラップされ、次の帯電プロセス時に解放されて暗減衰増加(見かけ上増感)となり、ネガ残像が発生すると推測されている。したがって、転写電流値を一定に制御すれば、感光体への注入電荷を一定に制御でき、結果、残像を抑制できるとされる(段落番号[0012]に記載。)。
特許文献38では、感度に対する帯電前光メモリ比のアクションスペクトルから、書込光波長ないし除電光波長を規定する手段が提案されている。
特許文献39では、フタロシアニン化合物を含有する電荷発生層を有する積層型構造の電子写真感光体に対して、転写前に露光を行うことで非露光部の帯電電位を、この露光前の1/3にすることで残像を抑制できることが提案されている。効果に対する機構の説明は詳細に記載されていないが、転写前に露光を行えば、露光部電位と非露光部電位のギャップ差が小さくなるため、残像画像の識別ができなくなるようにしていると思われる。
特許文献40では、感光層と光硬化型樹脂(アクリル樹脂)を含有した保護層を有する電子写真感光体を用いる電子写真装置について、電子写真感光体の表面近傍に湿度センサを設けることが提案されている。湿度センサは帯電部材にかかる交流成分の電流値を制御するものである。本公報は、湿度センサ設置による画像ボケと画像滲み低減の機構に関わる記載があるが、フォトメモリ低減に関する効果の機構説明は省略されている。しかしながら、実施例では湿度センサ設置によるフォトメモリ低減化が確認されている。
特許文献41では、S字型感光体のゴースト画像出力を防止する方策として、ゼログラフィックTOF法から算出される露光による感光体帯電電位の半減時間が、電子写真装置の露光手段から現像手段に至る時間(以下簡単のため、これを「露光−現像時間」と称することがある。)の1/10以下に規定することが提案されている。
また、上記の下引き層の改良の項で記載した如く、特許文献32では、除電手段(除電光)の省略により、感光体の光疲労を防止する方法が提案されている。
前記特許文献2では、帯電から露光に至る時間T、感光体表面の帯電電位をVH、帯電した後の10T後迄、暗減衰した電位をV1、帯電と像露光を経た後、再度、帯電した後の10T後迄、暗減衰した電位をV2としたとき、|(V1−V2)/VH|<0.020となる関係を満たすようにすることが提案されている。実際の手段として、実施例中ではプロセス速度を上げて暗減衰時間を短くするか、帯電電位を低減させることが示されている。
残像発生の防止について、以上に記した従来技術の適用を試みたが、高耐久で高速且つ高画質プリントを指向する電子写真感光体と電子写真装置への適用には十分とは言えない結果に終始した。即ち従来の技術では解決に至れていないのが現状である。
【0015】
【特許文献1】特開平11−133825号公報
【特許文献2】特開2002−123067号公報
【特許文献3】特開平10−177261号公報
【特許文献4】特開平10−115946号公報
【特許文献5】特開平11−184135号公報
【特許文献6】特開平10−177263号公報
【特許文献7】特開平10−177264号公報
【特許文献8】特開平10−177269号公報
【特許文献9】特開2000−147803号公報
【特許文献10】特開2001−235889号公報
【特許文献11】特開2002−6528号公報
【特許文献12】特開2000−75521号公報
【特許文献13】特開2000−105478号公報
【特許文献14】特開2001−305762号公報
【特許文献15】特開平7−92701号公報
【特許文献16】特開平8−152721号公報
【特許文献17】特開平10−177262号公報
【特許文献18】特開平6−313972号公報
【特許文献19】特開平10−69104号公報
【特許文献20】特開平10−186696号公報
【特許文献21】特開2002−107972号公報
【特許文献22】特開平7−43920号公報
【特許文献23】特開平9−211876号公報
【特許文献24】特開平8−22136号公報
【特許文献25】特開平11−184127号公報
【特許文献26】特開2000−112162号公報
【特許文献27】特開平8−146639号公報
【特許文献28】特開平10−73942号公報
【特許文献29】特開平9−258469号公報
【特許文献30】特開2001−51438号公報
【特許文献31】特開2001−305763号公報
【特許文献32】特開2002−107983号公報
【特許文献33】特開2000−292946号公報
【特許文献34】特開平7−13374号公報
【特許文献35】特開平7−44065号公報
【特許文献36】特開平10−123802号公報
【特許文献37】特開平10−123855号公報
【特許文献38】特開2000−231246号公報
【特許文献39】特開平10−123856号公報
【特許文献40】特開平10−246997号公報
【特許文献41】特開2001−117244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像、特に残像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は上記課題を達成するために、長期間の繰り返し使用時において感光体摩耗が生じても、基本的な電子写真特性を損なうことなく異常画像の発生しない高耐久、高品質な画像形成装置について鋭意検討した結果、感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像像を転写材に転写するため前記帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置と、前記感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、前記感光体が導電性基体上に少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層から成り、且つ前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置の出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置とすることで、上記課題を解決し長期間繰り返し使用しても、残像などの異常画像が発生することなく、良好な画像が出力できる画像形成装置が得られることを見出し、本発明に至った。
【0018】
本発明で用いられる感光体に用いられる下記一般式(I)で表される電子輸送物質は優れた電子輸送能を有することに加え、酸化性のガス、例えばオゾンやNOxに対して非常に安定性が高い。電子写真方式においてはその帯電時に量の多少はあるもののオゾン発生が避けられないため、このような酸化性ガスに対して安定な物質であることは長期間にわたって高品質な出力画像が得るうえで非常に重要となってくる。
また感光体は長期間の繰り返し使用にわずかずつではあるが摩耗が生じる。摩耗が大幅に進行すれば帯電装置によって所望の帯電電位まで感光体表面を帯電させることが出来なくなり画像形成が不可能となるが、そこに至るまでの経緯においても摩耗に伴って感光体の電気特性は変化していくため、初期の感光体膜厚において最適化していた画像形成の各プロセス条件(帯電条件、現像条件、転写条件、除電条件など)では摩耗が進行するに従い適正な条件から外れてしまい異常画像の要因となってしまう。中でも残像に関しては比較的摩耗が進行しない段階から発生する場合がみられ、これは繰り返しの使用により前述のように感光層中の空間電荷の蓄積が生じることが主原因と理解されている。そこで感光体の摩耗に応じた制御が必要となってくる。
一般に残像をなくすには帯電工程の前に一様に光照射をおこなうことにより感光体表面の露光部と非露光部の電位差を均しておくことが有効であるが、このような感光体への一様な光照射の繰り返しにより感光体の電気特性が低下してしまうという副作用が生じる。
感光体表面の露光部と非露光部の電位差を均すためには比較的強い光量を照射する必要があるが、そうするとこの副作用が強くなってしまうという矛盾が生じてしまう。
これを防ぐためには、弱い光照射によって十分に除電がおこなわれるようにするため、除電光を照射する前の段階で転写装置により印加される転写バイアスとは逆極性の電荷を付与する予備除電装置が有効となる。このような予備除電装置を設けることにより、転写バイアスによる履歴を除去することが非常に有効となる。しかしながらこの装置による印加も感光体の初期膜厚に合わせて最適化してあると、摩耗が進行していくと上述のように適正な値から外れてしまう。そこで感光体の摩耗に応じた出力制御が有効となる。
具体的には初期状態では感光体の膜厚も十分にあり、静電的な疲労も生じていないことから当該装置の出力はわずかでよく、繰り返し使用時においてその出力を大きくしていくなどの制御をおこなうものである。感光体の使用状況を検知し、これを制御部に送り、これにともない予め記憶部に記憶させてある情報に基づき制御部から出力を変化させるものである(この制御の概念図を図3に示す。)。
【0019】
感光体の使用状況を検知する手段としては、表面電位計などからの電位情報を元におこなうなど各種の手段を用いることができるが、感光体の回転数を検知する方法が好ましい。これは感光体の摩耗が感光体の回転数に比例して摩耗量が増えることが知られており、感光体の回転数とその回転数における感光体の摩耗量をプロットすると概ね直線関係を示す(図5)。
そこで予め感光体の総回転数を検知する装置を設け、この回転数情報に応じて出力を可変させてやれば、感光体膜厚に応じた適正な範囲で制御することが可能となる。即ち転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて制御をおこなうことでより安定した画像形成装置を得ることが可能となる(この制御の概念図を図4に示す。)。
【0020】
また転写材(主に転写紙)に転写をおこなう際に帯電バイアスと逆極性を印加する転写装置としては、接触転写で密着性の高い全面転写が可能でオゾン発生が少ない中抵抗のローラを介して直接転写紙に電圧を印加して転写をおこなう転写ローラ方式がより好ましい。また転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置としてはコロナ帯電器、接触帯電器などの各種の方式が選択可能であるが、感光体表面に非接触で電荷を付与出来ることからコロナ帯電器が好ましく、中でも機構が簡素で小型化が可能なコロトロン帯電器がより好ましい。また除電装置としては一般に用いられているものを挙げることが出来るが、中でも消費電力が少なく長寿命な発光ダイオード(LED)が好ましい。なかでも感光体の光疲労を低減する観点からは発光波長が600nm以上のものが特に好ましい。また感光層中に用いる電荷発生物質をフタロシアニンとすることで、潜像形成をおこなう露光部に用いられるレーザーダイオード(LD)など比較的長波長領域での光源に対しての感度特性に優れる特性を得ることが出来る。フタロシアニンはその中心金属の有無や結晶構造から多くの種類のものが知られているが、特にチタニルフタロシアニンとすることで応答性の優れた、繰返し使用時にも安定した電位特性が得られ、これにより長期間の使用時においても画質の劣化の少ない画像形成が可能となる。とりわけチタニルフタロシアニンの中でも、CuKα(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有すること、さらにはチタニルフタロシアニンがCuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないものとすることでより安定な画像形成が可能となる。
さらにこれらの画像形成装置を複数並列し、各画像形成装置においてそれぞれ単色のトナー(例えばシアン、マゼンタ、イエローなど)の画像を形成後、順次重ね合わせてカラー画像を形成することが可能である。即ち一つの装置内にて複数の画像形成装置を具備するいわゆるタンデム方式と呼ばれる画像形成群として、ユニット毎に異なるトナー色の画像を形成し一度のサイクルでフルカラー画像を得られる一つの画像形成装置とすることが可能となる。
【0021】
すなわち本発明によれば、以下の画像形成装置が提供される。
(1)感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像像を転写材に転写するため前記帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置と、前記感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、前記感光体が導電性基体上に少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層を有し、且つ前記予備除電装置の出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【0022】
【化1】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。)
(2)前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて該逆極性のバイアスを印加する装置の出力制御をおこなうものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像形成装置。
(3)前記転写装置が転写ローラ方式のものであることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の画像形成装置。
(4)前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置がコロトロン帯電器であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れかに記載の画像形成装置。
(5)前記除電装置が発光ダイオードであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項の何れかに記載の画像形成装置。
(6)前記感光層に少なくとも電荷発生物質としてフタロシアニンを含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項の何れかに記載の画像形成装置。
(7)前記フタロシアニンがチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記第(6)項に記載の画像形成装置。
(8)前記フタロシアニンがCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さない結晶型を有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記第(7)項に記載の画像形成装置。
(9)前記第(1)項乃至第(8)項の何れかに記載の画像形成装置を複数並列に具備し、それぞれの画像形成装置において単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0023】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明により長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を得ることができるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の画像形成装置で用いられる感光体について以下に説明する。
本発明の画像形成装置で用いられる感光体では導電性支持体として、導電体あるいは導電処理をした絶縁体、例えばAl、Fe、Cu、Auなどの金属あるいはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn2O3、SnO2等の導電材料の薄膜を形成したもの、導電処理をした紙等が使用できる。導電性支持体の形状は特に制約はなくドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できる。
【0025】
次に本発明の画像形成装置で用いられる感光体の感光層について説明する。
本発明における感光層は、単層型であり、少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と前記一般式(I)で表される電子輸送物質を含有する単一の層から成る感光層から成る(図6)。
【0026】
本発明で用いられる電子輸送物質は前述の一般式(I)で表される。一般式(I)で表される化合物を感光層に含有させることにより、これまでの電子写真装置では不可能であった長期にわたる静電的な安定性、即ち帯電電位と露光部電位の差、所謂静電コントラストを安定に保ち続ける電気的な耐久性を向上させ、その結果長期の繰返し使用においても安定的に高画質な画像を得ることが出来る電子写真装置が実現可能となる。
またこの一般式(I)で表される電子輸送物質は、オゾンや窒素酸化物ガスといった活性ガスに対して非常に安定性が高く、帯電器からこのような活性ガスが発生する電子写真装置に用いるには非常に有利となっている。これは分子構造的にN位の塩基性が強いため、上述のようなガスに対して耐性を有するものと考えられる。即ち前述の機械的耐久性、電気的耐久性に加え化学的な耐久性に関しても非常に優れた電子写真装置を得ることが出来る。従って各種電子写真方式画像形成装置を設計する上では大型化や高コスト化を防止でき、安価で設置性の良い画像形成装置をユーザーに提供することが可能となる。
【0027】
ここで用いる前記一般式(I)で表される化合物の式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。
【0028】
該置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1〜25、好ましくは炭素数1〜10の炭素原子を有するアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基といった直鎖状のもの、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メチルプロピル基、ジメチルプロピル基、エチルプロピル基、ジエチルプロピル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルペンチル基、メチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基等の分岐状のもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基で置換されたアルキル基、シアノ基で置換されたアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたアルキル基に含まれる。
該置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数3〜25、好ましくは炭素数3〜10の炭素原子を有するシクロアルキル環、具体的には、シクロプロパンからシクロデカンまでの同属環、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン等のアルキル置換基を有するもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基等で置換されたシクロアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のシクロアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたシクロアルキル基に含まれる。
置換または無置換のアラルキル基としては、上述の置換または無置換のアルキル基に芳香族環が置換した基が挙げられ、炭素数6〜14のアラルキル基が好ましい。より具体的には、ベンジル基、ペルフルオロフェニルエチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ターフェニルエチル基、ジメチルフェニルエチル基、ジエチルフェニルエチル基、t−ブチルフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが例示できる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
一般式(I)で表わされる電子輸送物質の製造方法としては、下記の2通りの合成方法によって例示できる。
(nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。)
【0029】
【化2】
【0030】
具体的に前記一般式(I)で表される電子輸送物質を製造するための出発材料の合成、製造方法としては、下記の方法が例示できる。即ちナフタレンカルボン酸は公知の合成方法(例えば、米国特許第6794102号明細書、Industrial Organic Pigments 2nd edition, VCH, 485 (1997) など)に従い、下記反応式より合成される。
【0031】
【化3】
「式中、RnはR3、R4、R5、R6を表し、RmはR5、R6、R7、R8を表す。」
【0032】
本発明に用いる一般式(I)で表される電子輸送物質は、上記のナフタレンカルボン酸若しくはその無水物をアミン類と反応させ、モノイミド化する方法、ナフタレンカルボン酸若しくはその無水物を緩衝液によりpH調整してジアミン類と反応させる方法等により得られる。モノイミド化は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、酢酸、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルエチレンウレア、ジメチルスルホキサイド等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。pH調整には水酸化リチウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液をリン酸等の酸との混合により作製した緩衝液を用いる。カルボン酸とアミン類やジアミン類とを反応させて得られたカルボン酸誘導体脱水反応は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限はないがベンゼン、トルエン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、無水酢酸等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。いずれの反応も、無触媒若しくは触媒存在下でおこなってよく、特に限定されないが例えばモレキュラーシーブスやベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸等を脱水剤として用いることが例示できる。
【0033】
一般式(I)で表わされる電子輸送物質の式中は繰り返し単位であり、0から100までの整数である。繰り返し単位nは、重量平均分子量(Mw)から求められ、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を、繰り返し単位の分子量で割ることで求めることができる。すなわちこの電子輸送物質は分子量に分布を持った状態で存在する。nが100を超えると該電子輸送物質の分子量が大きくなり、各種溶媒に対する溶解性が落ちるため、100以下が好ましい。特にnが0の二量体が相溶性、及び感光体特性が優れるため好ましい。
一方、例えばnが1の場合はナフタレンカルボン酸の三量体であるが、R1、R2の置換基を適切に選択することにより、オリゴマーでも優れた電子移動特性が得られる。このように繰り返し単位nの数により、オリゴマーからポリマーまで幅広い範囲のナフタレンカルボン酸誘導体が合成される。
オリゴマー領域の分子量が小さい範囲では、段階的に合成することで、単分散の化合物を得ることができる。分子量が大きい電子輸送物質の場合は、分子量に分布を持ったものが得られる。
【0034】
更に具体的には一般式(I)で表される電子輸送物質としては具体的に以下のものが例示できる
(ただし、いずれも式中、両端の末端基Meはメチル基を表す。)
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
(nは、前記繰り返し単位)
【0043】
電子写真特性においては上記式(2)乃至式(9)で表される電子輸送物質が、繰返し使用時の帯電電位、及び露光部電位の安定性の面から特に好ましい。
【0044】
これら一般式(I)で表される電子輸送物質の含有率は、感光層全体の総固形分に対して好ましくは10wt%〜70wt%、より好ましくは30wt%〜60wt%である。添加量が多すぎると、耐摩耗性の低下や耐電電位の低下、及び暗減衰の上昇などの問題が現れることがあり、添加量が少なすぎると十分な静電コントラストを得られなかったり、異常画像抑制効果が十分に発揮されなくなったりするなどの問題が生じる場合がある。
また電子輸送物質としては前記一般式(I)で表される以外の公知の電子輸送物質を併用することが可能である。たとえば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0045】
さらに電子輸送物質に加えて、正孔を輸送する正孔輸送性物質を併用すること必要となる。正孔輸送性物質としては公知のものをいずれも使用出来るが、特にオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号公報、52−139066号公報に記載)イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特願平1−77839号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号公報、55−156954号公報、55−52063号公報、56−81850号公報などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号公報、58−198043号公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特願平2−94812号公報に記載)などが好ましい。
【0046】
また本発明で用いられる感光体に必須の電荷発生物質としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
その中でも特に中心金属としてチタンを有する下記構造式(1)に示すようなチタニルフタロシアニンとすることによって、特に感度が高い感光層とすることが出来、電子写真装置として小型化と高速化をよりいっそうはかることが可能となる。
【0047】
【化12】
【0048】
チタニルフタロシアニンの合成法や電子写真特性に関する文献としては、例えば特開昭57−148745号公報、特開昭59−36254号公報、特開昭59−44054号公報、特開昭59−31965号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報などが挙げられる。また、チタニルフタロシアニンには種々の結晶系が知られており、特開昭59−49544号公報、特開昭59−166959号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭63−366号公報、特開昭63−116158号公報、特開昭64−17066号公報、特開2001−19871号公報等に各々結晶形の異なるチタニルフタロシアニンが記載されている。
これらの結晶形のうち、ブラッグ角2θの27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが特に優れた感度特性と、繰返し使用時における電位の安定性を示し、露光部電位の上昇を発生しないため良好に使用される。特に、特開2001−19871号公報に記載されている27.2°に最大回析ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回析ピークとして7.3°にピークを有し、該7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニンを用いることで、高感度を失うことなく、繰り返し使用しても帯電性の低下を生ぜず、また露光部電位の上昇を生じない安定した電子写真感光体を得ることができる。
加えて平均粒子サイズが0.60μm以下であるチタニルフタロシアニン結晶であることによって、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下を生じない安定な電子写真感光体を得ることができ、さらに地肌汚れ特性が著しく改善できる。
これは平均粒子サイズが0.60μmより大きくなると接触面積が低下し電荷発生効率が低下するためである。
【0049】
上述物質を感光層として形成するために用いられる結着樹脂(バインダー樹脂と称する場合もある)としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来るが、中でも耐摩耗性の優れるポリカーボネート樹脂がその性質上好ましい。
【0050】
感光層を形成する方法としては、溶液分散系からのキャスティング法が挙げられる。キャスティング法によって感光層を設けるには、上述した電荷発生物質をまず必要に応じて結着樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈した後、電子輸送物質、正孔輸送物質、結着樹脂などとともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いて溶解、塗工し成膜することにより形成される。塗工は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いておこなうことができる。
以上のようにして設けられる感光層の膜厚は10〜100μmが適当であり、好ましくは10〜35μmである。
【0051】
なお本発明の画像形成装置で用いられる感光体には導電性支持体と感光層との間に適宜中間層(下引き層と称する場合もある)を設けることも出来る。
用いることの出来る中間層であるが、中間層は一般に樹脂を主成分とするものが用いられたりするが、これらの樹脂はその上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を中間層中のフィラーとして加えることにより、さらに安定した帯電性を保持することが出来る。これらの中間層は、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することが出来、膜厚としては0.1〜20、好ましくは0.5〜10μmが適当である。
【0052】
また本発明の電子写真感光体には、感光層保護、耐刷性の向上などの目的で、感光層とは異なる組成物、組成比である保護層が感光層の上に設けられることもある。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層には酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、アルミナ等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお保護層の厚さは0.1〜20μm程度が適当であり、好ましくは1〜7μm程度である。
【0053】
次に図面に沿って本発明で用いられる画像形成装置を説明する。なおいずれの図面においても感光体は本発明の要件を満たす感光体である。
図1は、本発明における画像形成装置の画像形成要素の一例を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、感光体(1)は、本発明の要件を満たす感光体である。
感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電装置(2)は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
また、(3)は露光装置を表し、半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)などを用いることが出来る。また場合によっては所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
(4)は現像装置であり、(4)により感光体上に現像されたトナー(10)は、受像媒体(11)に転写される。
転写手段(5)には、一般に公知のものを使用できるが、接触転写で密着性の高い全面転写が可能でオゾン発生が少ない中抵抗のローラを介して直接転写紙に電圧を印加して転写をおこなう転写ローラ方式がより好ましい。
現像装置(4)により感光体上に現像されたトナー(10)は、受像媒体(11)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング装置(7)により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0054】
(8)は転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置である。転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置としてはコロナ帯電器、接触帯電器などの各種の方式が選択可能であるが、感光体表面に非接触で電荷を付与出来ることからコロナ帯電器が好ましく、中でも機構が簡素で小型化が可能なコロトロン帯電器がより好ましい。このような転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置による印加は可変である。これは感光体の初期膜厚に合わせて最適化してあると、摩耗が進行していくと上述のように適正な値から外れてしまうためである。そこで感光体の使用状況に応じた出力制御が有効となる。具体的には初期状態では感光体の膜厚も十分にあり、静電的な疲労も生じていないことから当該装置の出力はわずかでよく、繰り返し使用時においてその出力を大きくしていくなどの制御をおこなうものである。感光体の使用状況を検知し、これを制御部に送り、これにともない予め記憶部に記憶させてある情報に基づき制御部から出力を変化させるものである。感光体の使用状況を検知する手段としては、表面電位計などからの電位情報を元におこなうなど各種の手段を用いることができるが、感光体の回転数を検知する方法が好ましい。これは感光体の摩耗が感光体の回転数に比例して摩耗量が増えることが知られており、感光体の回転数とその回転数における感光体の摩耗量をプロットすると概ね直線関係を示す(図5)。そこで予め感光体の総回転数を検知する装置を設け、この回転数情報に応じて出力を可変させてやれば、感光体膜厚に応じた適正な範囲で制御することが可能となる。即ち転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて制御をおこなうことでより安定した画像形成装置を得ることが可能となる。
このような制御に関する概念図を図3、図4に示す。
【0055】
(9)は除電手段である。光源としては蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができるが、中でも消費電力が少なく長寿命な発光ダイオード(LED)が好ましい。なかでも感光体の光疲労を低減する観点からは発光波長が600nm以上のものが特に好ましい。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、トナーも公知のものが使用される。
【0056】
本発明では図1に示すような画像形成要素を複数具備しても良く、その場合これらの画像形成要素を水平、もしくは斜めに複数並べ装置化して用いる(図2)。
図2には本発明によるフルカラーに対応した画像形成装置の全体の例を示す。この画像形成装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体(1Y,1M,1C,1Bk)が設けられている。この画像形成装置に用いられる各色毎の感光体(1Y,1M,1C,1Bk)は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。各感光体(1Y,1M,1C,1Bk)の周りには、前述の図1の画像形成装置と同様に、帯電装置(2Y,2M,2C,2Bk)、露光装置(3Y,3M,3C,3Bk)、現像装置(4Y,4M,4C,4Bk)、転写装置(5Y,5M,5C,5Bk)、クリーニング装置(7Y,7M,7C,7Bk)、転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置(8Y,8M,8C,8Bk)、除電装置(9Y,9M,9C,9Bk)が配設されている。
なお、図2における定着装置(6)は4つの各画像形成装置上で形成される各色のトナー像を一括して定着させるため、受容媒体(11)の最後の位置に配設されている。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
まず以下のように各実施例で用いるための感光体を作製した。
【0058】
<実施例1用感光体の作製>
(感光層塗工液)
下記に示す手順で感光層用塗工液を作製した。
電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン(Fastogen Blue 8120BS:大日本インキ化学工業株式会社製)27重量部をシクロヘキサンノン1015重量とともにボールミル装置にて120分間分散せしめ、電荷発生物質分散液とした。
これとは別にテトラヒドロフラン340重量部に、ポリカーボネート樹脂(Z型ポリカーボネート、粘度平均分子量;5.0万、帝人化成社製) 48重量部、前述の方法で合成した式(2)の電子輸送物質27重量部、下記構造式(A)で表される電荷輸送物質34重量部、及びシリコーンオイル(KF50-100CS信越化学工業社製)0.1重量部を溶解せしめ、これに前述の電荷発生物質分散液57.6重量部を添加し撹拌して感光層塗工液とした。
【0059】
【化13】
次いで、φ100mm、長さ360mmのアルミニウムドラム上に、上記感光層用塗工液を浸漬塗工法にて塗工速度を調節することにより29μmの感光層を形成し120℃において15分乾燥し、実施例1用感光体を作製した。
【0060】
<実施例2用感光体の作製>
実施例1用感光体において、感光層塗工液に用いた電荷発生物質であるX型無金属フタロシアニンに代えて、チタニルフタロシニン(特公平7-97221号公報に記載の合成例2により合成したもの)を用いた以外は実施例1用感光体と同様にして、実施例2用感光体を作製した。
【0061】
<実施例3用感光体の作製>
実施例1用感光体において、感光層塗工液に用いた電荷発生物質である無金属フタロシアニン顔料に代えて下記に示す合成例1の方法に従って作製したチタニルフタロシアニン顔料を用いた以外は実施例1用感光体と同様にして実施例3用感光体を作製した。
(実施例3用感光体に用いるチタニルフタロシアニンの合成例1)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。すなわち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8であった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。これを顔料1とする。
上記ウェットケーキの固形分濃度は、15wt%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する重量比は33倍である。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。そのX線回折の結果を図11に示す。
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
なおこのチタニルフタロシアニンを用いた電荷発生層用塗工液中での平均粒子サイズを堀場製作所製CAPA-700で測定したところ0.31μmであった。
【0062】
<実施例4用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(3)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例4用感光体を作製した。
【0063】
<実施例5用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(4)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例5用感光体を作製した。
【0064】
<実施例6用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(5)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例6用感光体を作製した。
【0065】
<実施例7用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(6)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例7用感光体を作製した。
【0066】
<実施例8用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(7)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例8用感光体を作製した。
【0067】
<実施例9用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(8)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例9用感光体を作製した。
【0068】
<実施例10用感光体の作製>
実施例3用感光体において、感光層塗工液に用いた式(2)で表される電子輸送物質に代えて、式(9)で表される電子輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、実施例10用感光体を作製した。
【0069】
<比較例1用感光体の作製>
実施例3用感光体において、電荷輸送層塗工液に用いた式(2)で表される電荷輸送物質に代えて、下記構造式(C)で表される電荷輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、比較例1用感光体を作製した。
【0070】
【化14】
【0071】
<比較例2用感光体の作製>
実施例3用感光体において、電荷輸送層塗工液に用いた式(2)で表される電荷輸送物質に代えて、下記構造式(D)で表される電荷輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、比較例2用感光体を作製した。
【0072】
【化15】
【0073】
<比較例3用感光体の作製>
実施例3用感光体において、電荷輸送層塗工液に用いた式(2)で表される電荷輸送物質に代えて、下記構造式(E)で表される電荷輸送物質を用いた以外は実施例3用感光体と同様にして、比較例3用感光体を作製した。
【0074】
【化16】
【0075】
〔実施例1〜10、及び比較例1〜3〕
このようにして作製した実施例1〜10用感光体、及び比較例1〜3用感光体を実装用にした後、デジタル複合機イマジオMF7070[(株)リコ−製]をベースとして、除電光(660nmのLED使用)照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加し、さらにパワーパックを改造しトナー極性も正帯電に変更した画像形成装置に装着した。なおこのコロトロン帯電器は、感光体の総回転数を検知する装置からの情報に基づき、この回転数情報に応じて出力を可変する制御装置が実装されており、感光体の回転数に応じて帯電器の出力を制御する。
このような画像形成装置を用いて、画像面積率が6%となるようなA4サイズ(横)のテストチャートを連続で25万枚まで印刷(プリント)した。
初期(印刷スタート時)と5万枚印刷後、及び25万枚印刷後において以下の項目について評価をおこなった。
【0076】
<感光体露光部電位>
初期と5万枚印刷後、25万枚印刷時における感光体表面電位(帯電電位)を+800Vとしたときの全面黒ベタ画像書込時の現像部での露光部電位について評価した。
<残像評価>
初期と5万枚印刷後、25万枚印刷後に出力された画像について残像の発生有無につい
<画像品質総合評価>
初期と5万枚印刷後、25万枚印刷後に出力された画像について残像以外の画像品質、例えば黒ベタ部分の画像濃度の変化、文字部などカスレの有無、像流れなどの有無等を評価項目に加え、残像を含めたあらゆる面から総合的に評価した。
【0077】
〔比較例4〕
実施例3において、除電光照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加しなかった以外は実施例3と同様の評価をおこない、比較例4とした。
【0078】
〔比較例5〕
実施例1において、除電光照射前に設けた転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器が、可変制御機構を持たず初期から一定の出力で転写装置と逆極性のバイアス印加をおこなうようにした以外は実施例3と同様の評価をおこない、比較例5とした。
【0079】
これらの評価結果を表1に示す。
【0080】
〔実施例11〜20用感光体、及び比較例6〜8用感光体の作製〕
実施例1用感光体の作製時においてφ30mm、長さ256mmのアルミニウムドラム上に感光層を設けた以外は実施例1と同様にして、実施例11用の感光体を作製した。
これと同様に実施例2〜10用、及び比較例1〜3用感光体において、φ30mm、長さ256mmのアルミニウムドラム上に感光層を設けた以外は、実施例2〜10用感光体と同様にしてそれぞれ実施例12〜20用、比較例6〜8用感光体とした。また、下記のような比較例9,10のための感光体を用意した。
このようにして作製した実施例11〜20用、及び比較例6〜10用の電子写真感光体を実装用にした後、タンデム機構を有するフルカラープリンターであるイプシオ CX400[(株)リコ−製]を、ベースとして、除電光(660nmのLED使用)照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加し、さらにパワーパックを改造しトナー極性も正帯電に変更した画像形成装置に装着した。なおこのコロトロン帯電器は、感光体の総回転数を検知する装置からの情報に基づき、この回転数情報に応じて出力を可変する制御装置が実装されており、感光体の回転数に応じて帯電器の出力を制御する。
このような画像形成装置を用いて、画像面積率がブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色がそれぞれ5%となるようなA4サイズ(縦)のテストチャートを連続で5万枚まで印刷(プリント)した。
初期(印刷スタート時)と1万枚印刷後、及び5万枚印刷後において以下の項目について評価をおこなった。
【0081】
<感光体露光部電位>
初期と1万枚印刷後、及び5万枚印刷後における感光体表面電位(帯電電位)を+550Vとしたときの全面黒ベタ画像書込時の現像部での露光部電位について評価した。
<残像評価>
初期と1万枚印刷後、及び5万枚印刷後に出力された画像について残像の発生有無について評価した。
<画像品質総合評価>
初期と1万枚印刷後、5万枚印刷後に出力された画像について残像以外の画像品質、例えば黒ベタ部分の画像濃度の変化、文字部などカスレの有無、像流れなどの有無等を評価項目に加え、残像を含めたあらゆる面から総合的に評価した。
【0082】
〔比較例9〕
実施例13において、除電光照射前に転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器を追加しなかった以外は実施例13と同様の評価をおこない、比較例9とした。
【0083】
〔比較例10〕
実施例13において、除電光照射前に設けた転写装置と逆極性のバイアスを印加するコロトロン帯電器が、可変制御機構を持たず初期から一定の出力で転写装置と逆極性のバイアス印加をおこなうようにした以外は実施例13と同様の評価をおこない、比較例10とした。
【0084】
これらの評価結果を表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
以上説明したように、本発明により長期にわたる繰り返し使用時においても異常画像の発生がない耐久性及び画質安定性に優れた画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る画像形成装置の例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の別の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の制御例を示す図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の別の制御例を示す図である。
【図5】感光体回転数と感光体摩耗量の一般的な相関を示す図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の感光体の層構成を示す図である。
【図7】従来における画像パターンの一例を示す図である。
【図8】従来におけるポジ残像の例を示す模式図である。
【図9】従来におけるネガ残像の例を示す模式図である。
【図10】従来における電子写真装置の各プロセス時における感光体表面電位の電位状態を説明する図である。
【図11】実施例3用感光体に用いるチタニルフタロシアニンのX線回折の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1、1Y,1M,1C,1Bk・・・感光体
2、2Y,2M,2C,2Bk・・・帯電装置
3、3Y,3M,3C,3Bk・・・露光装置
4、4Y,4M,4C,4Bk・・・現像装置
5、5Y,5M,5C,5Bk・・・転写装置
6・・・定着装置
7、7Y,7M,7C,7Bk・・・クリーニング装置
8、8Y,8M,8C,8Bk・・・転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置
9、9Y,9M,9C,9Bk・・・除電装置
10、10Y,10M,10C,10Bk・・・トナー
11・・・受像媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像像を転写材に転写するため前記帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置と、前記感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、前記感光体が導電性基体上に少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層を有し、且つ前記予備除電装置の出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【化1】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。)
【請求項2】
前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて該逆極性のバイアスを印加する装置の出力制御をおこなうものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写装置が転写ローラ方式のものであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置がコロトロン帯電器であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記除電装置が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光層に少なくとも電荷発生物質としてフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記フタロシアニンがチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記フタロシアニンがCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さない結晶型を有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記請求項1乃至8の何れかに記載の画像形成装置を複数並列に具備し、それぞれの画像形成装置において単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
感光体と、この感光体の表面を一様に帯電する帯電装置と、一様帯電後に像露光をおこない静電潜像を形成する像露光装置と、前記静電潜像を現像する現像装置と、現像像を転写材に転写するため前記帯電装置の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加する転写装置と、前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する予備除電装置と、前記感光体の残留電荷を除電する除電装置とを備える画像形成装置において、前記感光体が導電性基体上に少なくとも電荷発生物質と正孔輸送物質と下記一般式(I)で表される電子輸送物質とを含有する単一の層から成る感光層を有し、且つ前記予備除電装置の出力を制御する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【化1】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、0から100までの整数を表す。)
【請求項2】
前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置の出力を制御する制御手段が前記感光体の回転数に応じて該逆極性のバイアスを印加する装置の出力制御をおこなうものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写装置が転写ローラ方式のものであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写装置と逆極性のバイアスを印加する装置がコロトロン帯電器であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記除電装置が発光ダイオードであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光層に少なくとも電荷発生物質としてフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記フタロシアニンがチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記フタロシアニンがCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さない結晶型を有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記請求項1乃至8の何れかに記載の画像形成装置を複数並列に具備し、それぞれの画像形成装置において単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−122763(P2008−122763A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307684(P2006−307684)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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