説明

画像形成装置

【課題】カラー画像形成装置の感光体ドラム上において、画像を形成しない非画像部にトナーが転写されてカブリを生じることを防止する。
【解決手段】複数の画像形成ステーションの1つに備わる像担持体である感光体ドラム28上の「画像部」と「非画像部」において、非画像部に対して画像部とは異なる二種類以上の電位差を設定する。すなわち、非画像部にトナーが転写されてしまうのを防止するカブリ取り電位を(Vback)を他の非画像部よりも大きく設定した部分を画像上Vback、その画像上Vback以外の非画像部を中心Vbackとすると、画像上Vback=170V,中心Vback=150Vとして、画像上Vbackの電位の方を中心Vbackの電位よりも20Vだけ大きく設定する。カブリ取り電位Vbackを大きくすればカブリ量を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタおよび複合機など電子写真方式や静電記録方式によって画像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式や静電記録方式の画像形成装置に装備される現像装置では、非磁性トナーまたは磁性トナーを主成分とする一成分現像剤が使用されるか、あるいは非磁性トナーと磁性キャリアを主成分とする二成分現像剤が使用される。特に、電子写真方式でフルカラー画像やマルチカラー画像を形成するカラー画像形成装置においては、それに装備される殆どの現像装置が画像の色味などの観点から二成分現像剤を用いている。そうした現像装置は、感光体ドラムなど像担持体上の静電潜像をトナーを用いて顕像化してトナー像を形成し、そのトナー像を記録紙などのシート上に重ね合わせてカラー画像を形成し、あるいは中間転写体ベルトなどの中間転写体上に一旦トナー像を重ね合わせる。トナー像が形成されたシートは定着装置に送られ、ここで加熱および加圧して永久定着されてカラー画像を得る。
【0003】
二成分現像剤を用いる現像装置の多くは、シート上にトナーを載せて画像を形成する画像部に印加する電圧とは逆極性の電位差を、画像を形成する必要のない白地部(以下、「非画像部」という)に設定するようにしている。そのような逆極性の電位差を非画像部に設定することで、その非画像部にトナーが不要に転写されて被ってしまういわゆる「カブリ」を防いでいる。すなわち、非画像部に「カブリ取り電位」を設定することで、現像装置内で極性の決まっているトナーの性質を利用して非画像部から遠ざけるようにする。
【0004】
ところで、そうしたカブリ取り電位を設定してもカブリ現象の発生を完全に抑えることは難しい。その理由として以下が考えられる。トナー使用の経時変化や環境変化によって現像剤中のトナーの負の帯電量が初期に比べて変化し、それに応じてキャリアの正の帯電量も初期に比べて変化することがある。そのため、初期のカブリ取り電位を設定しただけでは、像担持体である感光体ドラム上の非画像部にキャリアやトナーが付着してしまうことがある。このように、感光体ドラム上の非画像部にキャリアやトナーが付着すると、そのまま転写紙などのシート上に転写され、画像の画質を劣化させる不具合がある。また、感光体ドラム上にキャリアが付着するとクリーニング時にドラム表面を傷めたり、クリーニング部材の寿命を縮めるなどの不具合がある。
【0005】
かかる問題を解決するために、現像器の像担持体の回転方向下流側に回転ローラによる電磁石を設け、この電磁石を回転させて感光体ドラム上に付着したキャリアを回収する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、他例として、ある一定間隔ごとにエッジ部を有する潜像パターンを形成し、現像後に潜像パターンのキャリア付着を光検知センサで検出することで、カブリ取り電位を制御する方法も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、カブリ現象の発生を抑えるためのカブリ防止装置を新規に設けた技術も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0006】
ちなみに、カブリによって生じる問題点の具体例を以下に列記する。
【0007】
たとえば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順にトナー像を形成するタンデム中間転写方式の画像形成装置の場合、K色トナーの現像装置で発生したカブリが原因の不具合が発生する。K色のトナー像がたとえば中間転写体である中間転写体ベルト上に転写される場合を考えてみる。その際、Y色トナー像の画像部とK色非画像部とが重なった部分は、Y色トナー像上にK色のカブリトナーが転写されて混色を生じる。中間転写体ベルト上にトナー像を転写するとき、像担持体から中間転写体ベルトの方向に転写電界を発生し、それによって像担持体である感光体ドラム上のトナー像が転写される。トナー像の移動方向はトナーの極性と転写電界方向に依存する。カブリトナーの帯電量は通常のトナーの帯電量より低くなっているから、通常のカブリ取り電位差では像坦持体上にトナーが付着してしまう。そして像担持体上にかぶったトナーが転写電界によって中間転写体ベルト上に転写されてしまい、混色画像となって顕像化する。また混色により色味が変わってしまう。
【0008】
この顕像化現象はY色トナーに限らず、M色やC色のトナー像上にも発生する可能性がある。また、透明トナーなどをY色トナー像の画像部の位置よりも上流側に配置した場合も同様、透明トナー上にK色の反転カブリトナーが被って転写される公算が大きい。このような現象は、混色した場合に影響の大きいY色トナーや透明トナーについて特に顕著になりやすい。
【0009】
【特許文献1】特開平5−66678号公報
【特許文献2】特開2000−292992号公報
【特許文献3】特開平9−230693公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
カブリ現象の発生を防止する技術について上記数例を挙げたが、特に特許文献3に開示されているようにカブリ防止装置を新規に設けた構造の場合、それだけ画像形成装置本体が複雑化しかつ大型化して、部品コストが増大してしまうので不利である。
【0011】
以上に鑑み、本発明の目的は、転写媒体上に既に転写されたトナー像に対してカブリトナーが付着する事を有効に抑止する画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、像担持体を帯電する帯電手段と、該帯電手段によって帯電された前記像担持体を露光することで画像部と非画像部とを形成する露光手段と、トナーを担持搬送する担持搬送体を所定電位にする事で前記画像部をトナーで現像する現像手段と、を各々が備える複数の画像形成ステーションと、該複数の画像形成ステーションにより各々形成されたトナー像を、移動する転写媒体に順次転写する転写手段と、を有する画像形成装置において、前記複数の画像形成ステーションにおける、第1画像形成ステーションと、該第1画像形成ステーションよりも前記転写媒体の移動方向下流側に配置された第2画像形成ステーションにおいて、前記第1画像形成ステーションによって形成され前記転写媒体に転写されたトナー像と重なる前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位は、前記転写媒体に転写されたトナー像と重ならない前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位よりも、前記所定電位との電位差が大きくなるように制御する制御手段、を有する事を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置によれば、特別なカブリ防止装置を特別に設けずとも、転写媒体上に既に転写されたトナー像に対してカブリトナーの付着を防止でき、コスト的にも有利で、装置本体が大型化しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態においては、潜像が負極性であり、トナーも負極性に帯電していて潜像を反転現像する場合について説明するものとする。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、たとえばY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)各色のトナー像を重ね合わせてカラー画像を形成するフルカラー画像形成装置を示し、各色に対応する第1〜第4の4つの画像形成ステーションPY,PM,PC,PKを備えている。なお、第1,第2,第3,第4画像形成ステーションの構成は同一であるので符号「P」で代表させて説明し、以下現像装置1Y,1M,1C,1Kなどの機器も同じく符号「1」などで代表させる。
【0016】
画像形成ステーションPのそれぞれには、像担持体である直径40〜150mmのドラム形状の電子写真感光体である感光体ドラム10が回転自在に設けられている。感光体ドラム10の表面は一次帯電器21によって帯電バイアス電圧を印加して一様に帯電され、レーザ光のような発光素子を備えた露光装置22によって情報信号に応じて変調された光で露光して静電潜像を形成する。その感光体ドラム10上に形成された静電潜像は、現像装置1によって後述の工程を経て現像剤像(トナー像)として可視像化される。
【0017】
つぎに、感光体ドラム10上の可視像化されたトナー像は、転写手段としての転写帯電器23によって、搬送部材(転写媒体)24によって搬送されてきた転写紙などのシート27に転写し、さらに定着装置25によって定着して永久画像を得る。感光体ドラム10上で転写されずに残った未転写の残トナーはクリーニング装置26によって除去される。画像形成で消費されたトナーは、現像装置1の上部に設けられたトナー補給槽20から補給される。
【0018】
なお、図1は、ベルト状の搬送部材24で搬送されてきたシート27上に感光体ドラム10上のトナー像を直接転写する構造が示されている。これについても、ベルト状の搬送部材24を中間転写体としてこの表面に感光体ドラム10上のトナー像を一旦転写した後(一次転写)、その転写されたトナー像をシート27上に一括して再転写する方式(二次転写)も可能である。
【0019】
ここで、本実施形態の要部である現像装置1について図2を参照して説明する。
【0020】
二成分現像剤Tを収容する現像装置1の現像剤容器34は、その現像剤容器34の奥方と手前とで二成分現像剤Tが往復できるよう2室に仕切られている。その各室にそれぞれ攪拌部材であるスクリューA,Bが装備され、内部の二成分現像剤Tを攪拌して2室間を回転させながら搬送している。
【0021】
また、現像装置1の上方には補給用の新しいトナーが収容された補給用トナー容器20が取り付けられ、画像形成装置本体に備わる装置全体の制御を統括して行う制御手段(図示略)によって現像中に必要なトナー量を計測する。そうした制御によって必要な必要トナー量を補給用トナー容器20から現像剤容器34に適宜補給する。
【0022】
スクリューA,Bによってトナー容器20から補給されたトナーをも混合させながら、二成分現像剤Tを攪拌することでトリボを付与し、現像剤担持体である現像スリーブ32にむけて二成分現像剤Tを搬送する。
【0023】
かかる現像体担持体である現像スリーブ32は、その内部に回転方向に沿って周方向にN1,S1,N2,N3,S2の磁極を有するローラ状マグネット35を有している。スクリューA、Bによって搬送された二成分現像剤Tは、現像スリーブ32内のマグネット35のN3極によって現像スリーブ32へ汲み上げられ、S2極とN1極によって現像主極であるS1極まで搬送される。
【0024】
現像部ではバイアス印加手段33によって、現像スリーブ32と感光体ドラム10との間に現像バイアス電圧として直流成分(DC)のバイアス電圧に交流成分(AC)を重畳したバイアス電圧を印加していることで現像を促進する。現像バイアスはACを重畳しないDCバイアスを印加することもあるが、AC重畳にすることで二成分現像剤Tと現像スリーブ32との付着力を緩和でき、容易に二成分現像剤Tを感光体ドラム10へと移動することが可能となる。
【0025】
現像剤容器34には、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤Tが収容されており、その混合比は重量比でおよそ1:8程度である。この重量比はトナーの帯電量と、キャリア粒径と、画像形成装置本体の構成などに応じて適性に調整されるべきものであって、必ずしもこの数値に従わなければいけないものではない。
【0026】
キャリアは磁性粒子が好ましい。磁性粒子は粒形が30μm〜100μm、好ましくは40μm〜80μmで、電気的抵抗値が10Ωcm以上、好ましくは10Ωcm以上、さらに好ましくは109Ωcm〜1014Ωcmとなるように、フェライト粒子(最大磁化60emu/g)に樹脂コーティングした樹脂キャリアが好ましく用いられる。
【0027】
たとえば、樹脂コートされたフェライト粒子などの磁性粒子の抵抗値を測定する場合、測定電極面積4cm、電極間間隔0.4cmのサンドイッチタイプのセルを用い、片方の電極に1kg重量の加圧下で、両電極間の印加電圧E(V/cm)を印加して、回路に流れた電流から磁性粒子の抵抗を測定した値である。なお、トナーは平均粒径6μm〜9μmが好ましく、本実施形態では7.5μmのものを想定している。
【0028】
その後、N2極とN3極との間の反発極で現像剤が剥ぎ取られ、再びスクリューA、Bで攪拌して汲み上げられる。この攪拌動作を繰り返すことによって磁性キャリア表面上にトナーや外添剤が付着し、トリボ付与能力を低下させていると考えられている。
【0029】
そのような理由で、二成分現像剤Tの磁性キャリアの寿命は耐久性の低下と共にトリボ付与能力が下がって行くため、通常は印刷枚数/現像剤消費量=50000枚/500gである。そのため、メンテナンス作業を行うインターバルをたとえば2倍にするためには1000gの現像剤が必要となる。
【0030】
ここで、図3の特性グラフで示すように、初期剤と耐久剤のトナーの帯電分布〔ホソカワミクロン(株)社のEspartアナライザを用いて測定〕は、ある一定の分布を持って広がっている。Espartアナライザとは、電場と音響場を同時に形成させた検知部(測定部)に試料粒子を導入し、レーザドップラ法で粒子の移動速度を測定して、粒径と帯電量を測定する手法の装置である。測定部に入った試料粒子は音響場と電場の影響を受け、水平方向に偏倚しながら落下しこの水平方向の速度のビート周波数がカウントされ、そのカウント値はコンピュータに割り込みで入力される。リアルタイムでコンピュータ画面に粒子径分布あるいは単位粒径当たりの帯電量分布で示される。所定の個数分が測定されると画面は停止し、その後帯電量と粒子径の3次元分布や粒径別の帯電量分布,平均帯電量(クーロン/重量)など表示する。該装置の測定部に試料粒子としてトナーを導入することで、トナーの帯電量を測定し、トナーの帯電性能から粒径と帯電量の関係を評価する。
【0031】
キャリアとトナーが混合されている状態、つまり二成分現像剤のトナーを上記Espartアナライザで測定する場合の一例として、測定対象となる現像剤を電磁石などに保持させ、適正なエアを吹きかける。それによってトナーのみを現像剤中から分離し、検知部(測定部)に試料粒子として導入する。その際、電磁石に対し現像剤中のキャリアが保持された状態であるため、キャリアを電磁石から分離させることなく、かつキャリアからトナーは分離させ得る様な適正なエア圧が必要である。補給トナーをEspartアナライザで測定する場合の一例としては、測定対象となるトナーを薬さじに所定個数(Espart測定個数、本実施形態の場合3000個)以上のせ、適正なエアを吹きかけてトナーを検知部(測定部)に試料粒子として導入する。
【0032】
上記現像剤循環スクリューによる攪拌でもって耐久剤でも初期剤と略同等の帯電分布を示すことが必要である。たとえば、現像剤が疲弊してトナーに対する帯電能力が損なわれた場合には、図3で示した耐久剤のトナーは初期剤のトナーに比べ帯電量のピーク位置が0側にしシフトしてしまい、結果的に耐久剤の平均帯電量は初期剤に比べて低下する。
【0033】
一方、図4に本実施形態での像担持体の画像部/非画像部の電位と、現像剤担持体に印加するバイアスとの関係を示す。本実施形態にあっては、前述したネガ帯電された感光体ドラム上の露光部に対してネガトナーを現像することでトナー像を可視化する。図4では、感光体ドラム上の画像部/非画像部の電位および現像剤担持体に印加される現像バイアスのDC値(現像電位)の絶対値をそれぞれ模式的に表している。
【0034】
図3において、初期剤のごときネガ帯電性の強いトナーは、非画像部ではカブリ取り電位(Vback)を受けることで現像剤担持体方向に強く力を受ける。したがって、感光体ドラム10からは引き離される力を受けるため、非画像部に対するトナーの付着つまりカブリが発生しづらい。一方、画像部では現像コントラスト(Vcont)により感光体ドラム10へ押し付けられる方向に力を受け、現像動作が行われる。本実施形態の場合、たとえばVback=150V、Vcont=250Vと設定している。
【0035】
また、同じく図3において、耐久剤のごときネガ帯電性の弱いトナーの場合、非画像部ではカブリ取り電位(Vback)を受けても現像剤担持体方向に受ける力が弱まってしまうので、非画像部に対するトナーの付着つまりカブリが発生しやすくなる。カブリが生じると、トナー像を重ね合わせてカラー画像を形成する場合は特に、色どうしが混じり合って混色する。
【0036】
カラー画像形成装置のごときY,M,C,Kの色順にトナー像を形成するタンデム多重転写方式において、K現像器でカブリが発生した場合を想定する。すると、K色のトナー像をシート27上に転写するときにY色の画像部とK色の非画像部とが重なった部分に、Y色トナー像上にK色カブリトナーが転写されて混色する。その理由として、シート27上にトナー像を転写する際、転写帯電器23による転写バイアス電圧でトナーがシート27に移動する方向に転写電界を発生し、像担持体上のトナーをシート27上に転写するためである。
【0037】
図4を参照して、図5においてカブリ取り電位(Vback)とドラム上カブリとの相関をVbackを横軸に転写前感光体ドラム上カブリ量を縦軸に示す。それによると、感光体ドラム上のカブリ量はVbackの小さい領域では多く、逆にVbackが大きい領域ではカブリ量は少なくなって行く。これは、Vbackの小さい領域では、感光ドラムから現像剤担持体側に発生する電界強度が弱く、トナーを抑えつける力が弱いためである。一方、Vbackの大きい領域では、トナーを現像剤担持体側に抑えつける力が強いため、かぶりにくくなっている。このことはトナーの持つ帯電量が大きい場合は、トナーを現像剤担持体側に抑えつける力が強いためかぶりにくく、トナーの持つ帯電量が小さい場合は、トナーを現像剤担持体側に抑えつける力が弱いためかぶりやすい。そのため耐久剤では、トナーの持つ帯電量が小さいためかぶりやすい状態である。
【0038】
このような特性を見せる現象は、Y色トナーだけに限らず、M色トナーやCトナー像上にも発生する可能性がある。また、透明トナーなどをY色現像部よりも上流に配置した場合も同じく、透明トナー上にK色反転カブリが転写されてしまう可能性が大きい。この現象は、混色した場合に影響の大きいY色トナーや透明トナーについて特に顕在化しやすい。
【0039】
以上から、本実施形態では、従来のような反転カブリ防止部材を特別に設けることなく、反転カブリトナーが他のトナー像上に吸着して転写される不具合を解消し、良好な画像形成を行うことが可能となるものである。すなわち、反転カブリ現象が生じる画像形成ステーションにおける非画像部と、それより上流側に配置され画像形成ステーションにおける画像部とが重なった部分のみ、カブリ取り電位(Vback)を大きくする。それにより、非画像部にカブリが生じるのを防ぎ、混色など諸問題を解決することができる。
【0040】
上記効果を具体例で説明する。図6は、シート27上にY(イエロー)色成分のトナーを用いて“電”という漢字による画像を形成し、K(ブラック)色成分トナーを用いて”写“という漢字の画像を形成する例である。
【0041】
いま、シート27上のX−X’線上に対応する画像をK色トナーで現像する際、図6に示した感光体ドラム電位(Kステーションのドラム電位)を用いることでY色トナー上にK色トナーによるカブリが発生するのを防止する。図6中の下部には図3と同様な考え方でもってK色画像形成ステーションにおける感光体ドラム上の画像部と非画像部の電位、そして現像スリーブ3に印加される現像バイアス電圧のDC値の絶対値を模式的に表している。X−X’線上でのKトナー現像の形態を示しているため、K色トナーで現像すべき“写”の画像の露光電位がVLとなっている。
【0042】
また、Y色で既に顕像化されている“電”の文字画像の部分に対応する部分の非画像部の電位を若干大きくしている。図6の下部の長手方向電位分布図で“電”に対応する部分のみ他の非画像部よりもVdcから遠ざける方向に電位を変化させることでカブリ取り電位(Vback)を大きく設定している。すなわち、“電”と重なる非画像部の電位は、電”と重ならない非画像部の電位よりも、Vdcとの電位差が大きくなるように制御する制御手段が備えられている。
【0043】
以下、カブリ取り電位(Vback)を他の非画像部よりも大きく設定した部分、すなわち、転写媒体上の画像部と重なる非画像部を「画像部対応Vback」と称する。また、画像部対応Vback以外の非画像部を以下「中心Vback」と称する。本実施形態では画像部対応Vback=170V,中心Vback=150Vとしている。すなわち、画像部対応Vbackの電位の方を中心Vbackの電位よりも20Vだけ大きく設定している。画像部対応Vbackと中心Vbackとは、20V以上の差を持たせる事が好ましい。
【0044】
そこで、Y色トナーで形成する“電”の文字画像上にK色トナーが被ることでカブリが生じて混色を防ぐために、図5に示すように、カブリ取り電位Vbackを大きくすればカブリ量を減らすことができる。その特性を利用してY色トナーによる“電”の画像と重なる部分のみ、図6の下部の長手方向電位分布図に示すように、K色画像形成ステーションではカブリ取り電位Vbackを大きくしている。
【0045】
画像部対応Vbackは、帯電器で帯電した感光体ドラム10上の電位そのままであり、中心Vbackの作成は露光装置によって微弱露光することで行なう。たとえば本実施形態の場合は、帯電器21によって帯電された感光体ドラム電位を、微弱露光によって約20[V]だけ下げてやることで達成できる。感光体ドラム10を微弱露光する露光量は、感光体ドラム10の特性によって感光体表面電位となるように設定すればよい。以上のような設定により、本実施例における各電位の一例は、以下のようになる。すなわち、帯電器によって帯電されたドラム電位が−620V、微弱露光されたドラム電位が−600V、Vdc=−450V、Vl=−200Vとなる。
【0046】
以上から明らかなように、本実施形態では、Y色トナー像上にK色トナーによるカブリが生じた作用と効果を説明したが、他のM色トナーやC色トナーの場合も同様である。また、二成分現像装置についてその効果が示されたが、他の現像方式であるたとえば非磁性一成分現像方式や磁性一成分現像方式でも同様な効果が得られる。さらには、カラー画像形成装置でカブリが発生する場合でも、カブリの起因となるトナー像上カブリの発生(混色)を防止し、長期にわたって良好な画像形成を実現できる。
【0047】
(第2実施形態)
つぎに、本発明に係る第2実施形態について説明する。この場合、カブリ発生量に応じて適切な画像部対応Vbackを設定することで高画質画像を得ることを目標とするものである。
【0048】
前述のように、カブリはトナーの耐久性低下によってキャリアの帯電能力が低下し、補給トナーに対して帯電不良となって発生するものであり、耐久性の低下が進行するに伴いカブリの発生量も増加傾向にあることが分かった。すなわち、キャリアの帯電能力に応じてカブリの発生が左右されるのである。
【0049】
それを踏まえ、この第2実施形態においてはカブリの発生量を見極めることに努め、画像部対応Vbackの適正値を求めることで状況に応じた適正な画像部対応Vbackを設定する。
【0050】
反面、カブリが発生していないにもかかわらず、画像部対応Vbackを設定することは逆にキャリア付着を悪化させるので好ましいとはいえない。しかし、現実にカブリが発生している状況下では、逆に画像上カブリが著しく顕在化して結果的に品質を損なう懸念がある。したがって、本実施形態では、カブリの発生量に応じて適正な画像部対応Vbackを設定することで高画質画像を得ようとするものである。
【0051】
ところで、カブリの発生量の見極めたうえでの画像部対応Vbackの設定については多様な手法が考えられる。
【0052】
たとえば、耐久積算枚数や積算トナー消費量に応じてカブリ量を予測し、その積算値に応じて画像部対応Vback値を設定したテーブルを参照する手法がある。あるいは、感光体ドラム上の転写後に濃度センサを設けてカブリ量を検出し、その検出に基づいて画像部対応Vback値にフィードバックさせる。また、予め画像上カブリの顕在化しやすいチャートを内部に設定しておき、メンテナンス作業者などに該画像を適宜判断してもらい、適切な画像部対応Vback値を設定可能としておく手法も考えられる。さらには、画像の出力をユーザに開放し、適切な画像部対応Vback値を設定してもらう手法も考えられる。このように、非画像部に付着するトナー量(カブリ量)に関する情報に基づいて、画像部対応Vback値の設定が行なわれる。
【0053】
それらいずれの手法にあっても、この第2実施形態を採用すれば、カブリ発生量を見極めて画像部対応Vbackの適正値を求めてやれば、良質の画像を安定して出力することできる。
【0054】
(第3実施形態)
つぎに、本発明に係る第3実施形態について説明する。この場合、画像部対応Vbackの適用範囲を画像部よりも広い範囲に設定することで、上記第2実施形態と同じく、より安定的に高画質画像を得ることを主眼にしている。
【0055】
図7に示すように、本実施形態の画像部対応Vbackは第1実施形態の場合とは異なり、画像部に対し長手方向に広く設定している。また、図示省略した画像搬送方向に対しても、画像部対応Vbackの範囲を広げている。そうすることによって色ずれなどによってY色の画像部に対してK色の画像部との間に微小なずれを生じることがある。その場合でもY色の画像に対応するところのK色の非画像部のVbackを広く設定しているので、Y色画像上にカブリは生じない。また、本実施形態ではK色の画像部対応Vbackの範囲をY色画像部に対して0.5mmだけ広く設定している。
【0056】
したがって、この第3実施形態によれば、画像部対応Vbackの適用範囲を広く設定することで、良好な画像を安定して出力することが可能となる。
【0057】
以上、本発明に係る数例の実施形態について説明されたが、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でその他の実施形態、応用例、変形例およびそれらの組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る画像形成装置の要部を示す図。
【図2】第1実施形態の要部である現像装置を示す図。
【図3】初期剤の帯電分布と耐久剤の帯電分布を模式的に示す図。
【図4】現像電位と像担持体電位との相関を示すチャート。
【図5】第1実施形態においてカブリ取り電位とカブリ量との相関を示すグラフ。
【図6】第1実施形態における文字画像例の作用効果を示す図。
【図7】第3実施形態における文字画像例の作用効果を示す図。
【符号の説明】
【0059】
1 現像装置
10 感光体ドラム(像担持体)
20 補給用トナー容器
21 帯電装置
22 潜像装置
23 転写装置
25 定着装置
26 クリーニング装置
27 転写紙のシート
32 現像スリーブ
33 現像バイアス発生装置
34 現像容器
35 マグネットローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を帯電する帯電手段と、該帯電手段によって帯電された前記像担持体を露光することで画像部と非画像部とを形成する露光手段と、トナーを担持搬送する担持搬送体を所定電位にする事で前記画像部をトナーで現像する現像手段と、を各々が備える複数の画像形成ステーションと、
該複数の画像形成ステーションにより各々形成されたトナー像を、移動する転写媒体に順次転写する転写手段と、
を有する画像形成装置において、
前記複数の画像形成ステーションにおける、第1画像形成ステーションと、該第1画像形成ステーションよりも前記転写媒体の移動方向下流側に配置された第2画像形成ステーションにおいて、
前記第1画像形成ステーションによって形成され前記転写媒体に転写されたトナー像と重なる前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位は、前記転写媒体に転写されたトナー像と重ならない前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位よりも、前記所定電位との電位差が大きくなるように制御する制御手段、
を有する事を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1画像形成ステーションによって形成され前記転写媒体に転写されたトナー像と重なる前記第2画像形成ステーションの像担持体における前記非画像部の電位は、前記帯電手段による帯電により設定され、前記転写媒体に転写されたトナー像と重ならない前記第2画像形成ステーションの像担持体における前記非画像部の電位は、前記帯電手段によって帯電された前記像担持体を、前記露光手段によって前記画像部形成時よりも弱い露光量で露光することで設定されたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部に付着するトナー量に関する情報に基づいて、前記第1画像形成ステーションによって形成され前記転写媒体に転写されたトナー像と重なる前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写媒体に転写されたトナー像と重なる前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位と、前記転写媒体に転写されたトナー像と重ならない前記第2画像形成ステーションの像担持体における非画像部の電位との電位差が、20ボルト以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像手段が、前記トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−191464(P2008−191464A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26653(P2007−26653)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】