説明

画像形成装置

【課題】トナー散りの発生及び白抜けの発生を抑制すると共に、像担持ベルトの摩耗を抑制することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写ローラ3と中間転写ベルト1及び後述する無端状ベルト7を介して対向ローラ16と圧接する圧接部(ニップ部)5よりも中間転写ベルト1の移送方向(A方向)の上流側の中間転写ベルト部分1Aの裏面1bを無端状ベルト7を介して押圧して、中間転写ベルト部分1Aを転写ローラ3に移送中の記録媒体シートS側に突出させるベルト案内部材8が固定配置されている。また、対向ローラ16とベルト案内部材8とには、無端状ベルト7が張架されており、中間転写ベルト1の裏面1bは、無端状ベルト7を介してベルト案内部材8と圧接してベルト案内部材8によって押圧されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状の像担持ベルトの表面にトナー像を形成し、そのトナー像を転写手段によって転写材上に転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子複写機、プリンタ、ファクシミリ或いはその少なくとも2つの機能を備えた複合機等として構成される上記形式の画像形成装置は従来から周知である。像担持ベルトは、例えば、現像装置によって表面にトナー像が形成される感光体ベルトや、感光体からトナー像を転写される中間転写ベルトなどから構成される。
図5は、像担持ベルトが中間転写ベルトとして構成された従来の画像形成装置の転写部の構成を示す概略図である。ここに示した中間転写ベルト1は、図5には示していないローラと図5に示した1つのローラ(以下対向ローラという)2との複数のローラに張架されて矢印A方向に移送駆動され、その表面に、図示していない感光体から互いに異なる色のトナー像が順先重ね合されて転写される。図5に示した矢印E方向に回転する対向ローラ2には、中間転写ベルト1を介して転写手段の一例である転写ローラ3が対向配置されている。中間転写ベルト1の表面のトナー像を転写用紙等の記録媒体からなる転写材P上に転写する時は、転写ローラ3は、図5に示すように、中間転写ベルト1を介して対向ローラ2に圧接する。このとき転写ローラ3は矢印F方向に回転し、この転写ローラ3と中間転写ベルト1との間を、転写材Pが矢印B方向に移動する。このように転写ローラ3は、中間転写ベルト1と転写材Pとを介して対向ローラ2に圧接する。このとき転写ローラ3には、中間転写ベルト1の表面に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、これにより中間転写ベルト1の表面に当接しながら矢印B方向に移動する転写材Pの表面に中間転写ベルト1上のトナー像が転写される。対向ローラ2と転写ローラ3との圧接部(ニップ部)5を通過した転写材Pは、図示していない定着装置を通り、このときその表面に転写されたトナー像が転写材P上に定着される。
【0003】
上述のように、転写材Pは、対向ローラ2と転写ローラ3との間に、その入口側Iから送り込まれて搬送されるが、このとき、その入口側Iの領域には中間転写ベルト1と転写材Pとによってくさび状のギャップGが区画形成される。その際、転写ローラ3には、前述の転写電圧が印加されているので、対向ローラ2と転写ローラ3との圧接部5の近傍に位置する転写材P1の部分もトナーの帯電極性と逆極性に帯電する。このため、中間転写ベルト1上のトナーが、矢印Cで示すように、転写材Pの表面に静電的に飛び散って付着する。このような現象は「トナー散り」とも称せられているが、係るトナー散りが発生すると、圧接部5を通過した転写材表面には、転写されたトナー像のまわりに、上述のように飛び散ったトナーがにじんだ状態で付着し、これによってトナー像の画質が劣化する。
【0004】
上述の不具合は、像担持ベルトが感光体ベルトや誘電体ベルトより成り、転写材Pが中間転写体又は記録媒体よりなる場合にも同様に生じるものであるが、中間転写ベルト1は、通常、その体積抵抗率が例えば10Ωcm乃至1013Ωcm程度の中抵抗体よりなることが多く、かかる中間転写ベルト1を用いた場合には、上述のトナー散りの発生が顕著となる。その原因としては、中抵抗体よりなる中間転写ベルト1の表面にトナーが静電的に密着する力は、絶縁体とトナーとの静電的な密着力よりも弱く、トナーが中間転写ベルト1の表面に比較的動きやすい状態で付着していることが挙げられる。特に中間転写ベルト1の表面に複数色のトナー像が重ねて形成されている場合、中間転写ベルト1上の単位面積当りのトナー量が多くなるため、特に最上層のトナーが非常に動きやすい状態となっている。このように動きやすい状態でトナーが付着している中間転写ベルト1の表面と、帯電した転写材Pが微小のギャップGをもって対向すると、中間転写ベルト1上のトナーが転写材上に静電的に飛翔しやすくなり、前述のトナー散りが発生しやすくなるのである。
【0005】
そこで、図6に示すように、矢印F方向に回転する転写ローラ3に対向した矢印E方向に回転する対向ローラ2と、中間転写ベルト1を支持するもう1つのガイドローラ4との間の中間転写ベルト部分1Aが、圧接部5へ移動する転写材Pの移動方向Bに対してほぼ平行となるように、ガイドローラ4を配置し、圧接部5よりも像担持ベルトの移動方向上流側に大きく離れた個所で転写材Pが中間転写ベルト1の表面に当接し始めるように構成することが考えられる。このようにすれば、圧接部5の近傍に至った転写材Pの部分6が、転写ローラ3に印加された電圧の影響を受けて帯電したとき、当該転写材部分P1は既に中間転写ベルト1の表面に密着しているので、中間転写ベルト1の表面のトナーが転写材部分P1に飛翔することはなく、或いは飛翔するトナー量は極めて少なくなる。このようにしてトナー散りの発生を抑えることができる。
【0006】
ところで、対向ローラ2とガイドローラ4との間を近接させるために、中間転写ベルト1を支持する対向ローラ2及びガイドローラ4の径を小さくすると、これらの対向ローラ2とガイドローラ4を通過する中間転写ベルト1にカールぐせがつき、これによって中間転写ベルト1から転写材Pにトナー像が転写されるときに転写むらが発生し、転写されたトナー像の画質が劣化する。また転写ローラ3に対向する対向ローラ2の径が小さすぎると、転写材搬送方向における圧接部5の距離(ニップ幅)が小さくなり、転写効率が低下する恐れもある。従って、これらの対向ローラ2及びガイドローラ4の径をあまり小さくすることはできない。
上述の理由により、対向ローラ2及びガイドローラ4の径を大きくすると、転写材Pが圧接部5に至る前に中間転写ベルト1の表面に密着する密着部の距離Dが大きくなり、圧接部5から、転写材Pの移動方向上流側に大きく離れた位置で、転写材Pが中間転写ベルト1に接触し始めることになる。その際、中間転写ベルト1に当接した転写材Pの部分中の転写材移動方向上流側の部分6は、転写ローラ3から大きく離れているので、この転写材部分6は、転写ローラ3に印加された電圧の影響により帯電していないか、帯電していたとしても、その電位は極めて低くなっている。従って、この転写材部分6は、中間転写ベルト1の表面に静電的に強く吸着し合った状態で密着することはない。
【0007】
しかし、このため、中間転写ベルト1に発生したわずかなカールによる表面の凹凸やたるみなどに、転写材部分6が追従して密着しきれず、また転写材部分6が中間転写ベルト1に対してわずかにずれ動くことがある。これによって中間転写ベルト1の表面と転写材部分6との間に存するトナー像の一部が乱され、この乱れにより、圧接部5を通過した転写材P上に転写されているトナー像の濃度が局部的に薄くなった画像抜けが発生し、その画質が劣化するおそれがある。この画像抜けは、一般に白色の転写材Pが多用されていることから「白抜け」とも称せられている。特に、中間転写ベルト1と転写材Pとの間にて速度が公差範囲でずれてしまう場合は、この密着部にて画像ずれが発生しやすく、D寸法は大きくすることが難しくなる。
これらの問題を解決するため、本発明者らは、特許文献1に記載したように、中間転写ベルト部分1Aを転写材P側に突出させて当接する湾曲面を有するベルト案内部材を、対向ローラ3の上流側に配置固定して、中間転写ベルト部分P1を形成してトナー散りの発生を抑制すると共に、転写材部分6の長さを可及的に小さくすることによって白抜けの発生を抑制することを提案した。
【特許文献1】特開2002−82543公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の場合には、無端状の中間転写ベルト1の裏面が固定されたベルト案内部材に常に摺擦されながら移送されるため、中間転写ベルト1の裏面の磨耗による摩耗粉が発生し、磨耗粉が中間転写ベルト1の表面に付着することによる転写不良や、磨耗粉によってトナー像が転写される中間転写ベルトの表面に傷が発生して画像不良が発生するという問題点があることが判明した。
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、トナー散りの発生及び白抜けの発生を抑制すると共に、像担持ベルトの摩耗を抑制することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、複数のローラに張架されて移送駆動され、表面にトナー像が形成される無端状の像担持ベルトと、当該像担持ベルトを介して、前記複数のローラ中の1つのローラに対向して配置され、前記像担持ベルトの表面に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧を印加する転写手段とを有し、前記像担持ベルトの表面に当接しながら前記転写手段と前記1つのローラとの間を移動する転写材上に、前記転写手段から前記転写電圧を印加することによって像担持ベルト表面のトナー像を転写する画像形成装置において、前記1つのローラと前記転写手段との対向領域よりも前記像担持ベルトの移送方向上流側の像担持ベルト部分の裏面を押圧して当該像担持ベルト部分を、前記転写手段に移送中の転写材の側へ突出させるベルト案内部材を固定配置し、当該ベルト案内部材と前記1つのローラとの間に、無端状ベルトを張架し、当該無端状ベルトを前記ベルト案内部材と前記1つのローラとによって前記像担持ベルトの裏面に当接させて当該像担持ベルトの移送と共に前記無端状ベルトが移送されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記無端状ベルトは、10Ωcm〜1010Ωcmの体積抵抗値を有することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記無端状ベルトは、前記像担持ベルトと当接する面に植毛体が形成されていることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置において、前記ベルト案内部材は、前記像担持ベルト部分を、前記転写手段に移送中の転写材の側へ突出させる向きに湾曲する湾曲面を有し、当該湾曲面の曲率半径を10mm以上に設定したことを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項4記載の画像形成装置において、前記ベルト案内部材の湾曲面は、前記像担持ベルトの全幅を押圧する押圧面を有していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置において、前記像担持ベルトは、前記ベルト案内部材と転写手段との間に前記転写材と密着する密着部分を有し、当該密着部分の前記像担持ベルトの移動方向に沿う長さが2mm〜30mm以内に設定されることを特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の画像形成装置において、前記転写手段は、転写ローラであり、当該転写ローラに前記像担持ベルトの表面に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧を印加することにより、移動する前記転写材上に像担持ベルト表面のトナー像を転写することを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項記載の画像形成装置において、前記像担持ベルトは、感光体表面に形成されたトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトであり、前記転写材は記録媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記1つのローラと前記転写手段との対向領域よりも前記像担持ベルトの移動方向上流側の像担持ベルト部分の裏面を押圧して当該像担持ベルト部分を、前記転写手段に移送中の転写材の側へ突出させるベルト案内部材を固定配置し、当該ベルト案内部材と前記1つのローラとの間に、無端状ベルトを張架し、当該無端状ベルトを前記ベルト案内部材と1つのローラとによって前記像担持ベルトの裏面に当接させて当該像担持ベルトの移送と共に前記無端状ベルトが移送されることによって、トナー散りの発生及び白抜けの発生を抑制すると共に、像担持ベルトの摩耗を抑制することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態の画像形成装置である複写機の概略構成を示す図である。図中符号100は複写機本体、200はそれを載せる給紙テーブル、300は複写機本体100上に取り付けるスキャナ、400はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。
複写機本体100には、中央に、無端状の中間転写ベルト1を設ける。中間転写ベルト1は、図1に示す通り、図示例では駆動ローラ14、支持ローラ15及び対向ローラ16に張架されて駆動ローラ14の駆動回転によって図中時計回り(矢印A方向)に回転移送可能となっている。そして、対向ローラ16には、後述するトナー散りと白抜け防止機構30が配設されている。また、この図示例では、支持ローラ15の左に、トナー像を記録媒体シートSに転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17が設けられている。また、駆動ローラ14と支持ローラ15間に張り渡した中間転写ベルト1上には、その搬送方向に沿って、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のトナー像を形成する画像形成手段18B、18C、18M、18Yを横に並べて配置してタンデム画像形成装置20を構成する。このタンデム画像形成装置20の上には、図1に示すように、さらに露光装置21を設ける。
【0014】
画像形成手段18B、18C、18M、18Yには、それぞれ、ドラム状の感光体40B、40C、40M、40Yが備えられており、これらの周囲に、これらの感光体40B、40C、40M、40Yの表面をそれぞれ一様に帯電する帯電装置37、現像装置38B、38C、38M、38Y及びクリーニング装置39が備えられている。そして、このようにして帯電された感光体40B、40C、40M、40Yの表面に露光装置21からの光線によってそれぞれの色に対応する画像情報に基づく静電潜像が形成され、これらの静電潜像に対して、それぞれの色のトナーを収容した現像装置38B、38C、38M、38Yからそれぞれの色のトナーが供給されてそれぞれの感光体40B、40C、40M、40Y上にそれぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのトナー像を形成する。このようにして形成されたトナー像は、中間転写ベルト1上に転写ローラ62によってトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されて転写される。このようにして中間転写ベルト1上にトナー像を転写した後に残存する感光体40B、40C、40M、40Y上のトナーは、クリーニング装置39で除去されて一連の画像形成工程が終了する。
【0015】
一方、中間転写ベルト1を挟んでタンデム画像形成装置20と反対の側には、2次転写装置22を備える。2次転写装置22は、図示例では、駆動ローラ23及び転写ローラ3とに、無端状ベルトである2次転写ベルト24を張架して構成されている。そして、中間転写ベルト1、後述する無端状ベルト7及び2次転写ベルト24を介して転写ローラ3を対向ローラ16に押し当てて配置し、中間転写ベルト1の表面1a(図2参照)上のトナー像をトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧を転写ローラ3から印加して転写材である紙やプラスチック等からなる記録媒体シートSに転写する。
2次転写装置22の横には、記録媒体シートS上に2次転写装置22によって転写された未定着トナー像を定着する定着装置25を設ける。定着装置25は、無端状ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。なお、図示例では、このような2次転写装置22および定着装置25の下に、上述したタンデム画像形成装置20と平行に、記録媒体シートSの両面にトナー像を記録すべく記録媒体シートSを反転するシート反転装置28を備える。
【0016】
さて、このカラー複写機を用いてコピーをとるときは、原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットする。または、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動した後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入光して原稿内容を読み取る。
【0017】
また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで駆動ローラ14を回転駆動して支持ローラ15を従動回転し、中間転写ベルト1をA方向に移送して回転搬送する。同時に、画像形成手段18B、18C、18M、18Yで、前述のように、それぞれのドラム状の感光体40B、40C、40M、40Yを矢印方向に回転して各感光体40B、40C、40M、40Y上にそれぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの単色のトナー像を形成する。そして、中間転写ベルト1の移送とともに、それらの単色のトナー像を転写ローラ62でトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧を印加中間転写ベルト1の表面上に順次重複させて転写して中間転写ベルト1上に合成カラートナー像を形成する。
【0018】
一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つから記録媒体シートSを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。または、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上の記録媒体シートSを繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
そして、中間転写ベルト1上の合成カラートナー像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写ベルト1と2次転写装置22との間に記録媒体シートSを送り込み、2次転写装置22で転写して記録媒体シートS上にカラートナー像を記録する。トナー像転写後の記録媒体シートSは、2次転写装置22で搬送して定着装置25へと送り込み、定着装置25で定着ベルト26によって加熱され、同時に加圧ローラ27で加圧されて転写トナー像を定着した後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。または、切換爪55で切り換えて記録媒体シートSをシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び2次転写装置22の位置へと導き、裏面にもトナー像を記録して後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
一方、画像転写後の中間転写ベルト1は、中間転写体クリーニング装置17で、トナー像を記録媒体シートSに転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置20による再度の画像形成に備える。
【0019】
ここで、本実施形態に係る2次転写装置22においては、前述のトナー散りと白抜けの発生を抑制するために、トナー散りと白抜け防止機構30が採用されている。このトナー散りと白抜け防止機構30について図2〜図4に基づいて説明する。図2は、本発明による一実施形態にトナー散りと白抜け防止機構の概略構成を示す図、図3は、後述するトナー散りと白抜け防止機構における中間転写ベルトと記録媒体シートSとの密着部距離Dと散りトナー数および画像抜け発生率との関係を示すグラフ、図4は、本発明による一実施形態の後述するトナー散りと白抜け防止機構で使用される無端状ベルトの概略構成を示す断面図である。
【0020】
本実施形態に係るトナー散りと白抜け防止機構30においては、図2に明示するように、中間転写ベルト1を張架する対向ローラ16と、転写手段の一例である転写ローラ3とを中間転写ベルト1を介して対向配置している。そして、転写ローラ3と中間転写ベルト1及び後述する無端状ベルト7を介して対向ローラ16と圧接する圧接部(ニップ部)5よりも中間転写ベルト1の移送方向(A方向)の上流側の中間転写ベルト部分1Aの裏面1bを無端状ベルト7を介して押圧して、中間転写ベルト部分1Aを転写ローラ3に移送中の記録媒体シートS側に突出させるベルト案内部材8が固定配置されている。従って、中間転写ベルト1は、ベルト案内部材8によって案内されて、中間転写ベルト部分1AでB方向から搬送された記録媒体シートSと密着して密着部9を形成し、密着部9によって、前述のような転写ローラ3からの転写電圧の影響によるトナー散りを抑制可能となっている。
【0021】
また、対向ローラ16とベルト案内部材8とには、無端状ベルト7が張架されており、中間転写ベルト1の裏面1bは、無端状ベルト7を介してベルト案内部材8と圧接してベルト案内部材8によって押圧されるようになっている。そして、無端状ベルト7は、中間転写ベルト1の移送に伴い、矢印E方向に回転する対向ローラ16と矢印F方向に回転する転写ローラ3との圧接によって矢印J方向に回転移送されるようになっている。従って、中間転写ベルト1の裏面1bは、ほぼ同一速度で移送される無端状ベルト7と当接するので、中間転写ベルト1の裏面1bがベルト案内部材8との摺接を避けることが可能となって、ベルト案内部材8による中間転写ベルト1の裏面からの摩耗粉の発生を抑制することができる。その結果、摩耗粉による白抜け、即ち画像抜けの発生が抑制されることになる。
ベルト案内部材8は、中間転写ベルト1の裏面1bに、無端状ベルト7を介してその全幅に亘って押圧する板状部材より成り、硬質樹脂又は金属などの剛性の大なる材料によって構成されている。そして、かかる案内部材8は、転写ユニットフレーム(図示せず)や、画像形成装置本体のフレームなどに固定支持されている。ここで中間転写ベルト1の裏面1bとは、トナー像が転写される表面1aと反対側の面である。
【0022】
無端状ベルト7は、図4に示すように、基材7aの表面に植毛体7bが植設されており、この植毛体7bが中間転写ベルト1の裏面1bと当接するようになっている。従って、無端状ベルト7と中間転写ベルト1の裏面1bとの当接は、滑らかな状態で当接し、仮に無端状ベルト7の移送速度と中間転写ベルト1の移送速度にずれが生じたとしても、無端状ベルト7によって中間転写ベルト1の裏面1bが摩耗されることを抑制することができる。また、この例の場合、無端状ベルト7の抵抗値を中抵抗(10Ωcm〜1010Ωcm)としている。無端状ベルト7が中抵抗ベルト部材であるため、無端状ベルト7に電荷が溜まることによる異常画像の発生を防ぐことができる。また、抵抗が低すぎないために、転写ローラ3から無端状ベルト7へ電流が逃げてしまうことによる転写不良を防ぐことができる。
【0023】
上述の如き無端状ベルト7とベルト案内部材8を圧接部5の入口側Iに設けることによって、その無端状ベルト7と圧接部5との間の中間転写ベルト部分1Aを、記録媒体シートSの移動方向に対してほぼ平行な状態にすることができ、対向ローラ16と転写ローラ3とがトナー像の転写時に圧接する圧接部5よりも、中間転写ベルト1の移動方向上流側において、記録媒体シートSが中間転写ベルト1の表面に当接し始めることができる。このような記録媒体シートSと中間転写ベルト1との当接タイミングが得られるように、固定配置されたベルト案内部材8が、圧接部5よりも中間転写ベルト1の移動方向上流側の中間転写ベルト部分1Aの裏面を押圧して、その中間転写ベルト部分を転写ローラ3に移送中の記録媒体シートSの側へ突出させている。また、本実施形態においては、無端状ベルト7が対向ローラ16及びベルト案内部材8に張架されており、これにより、前述のD寸法を短く保つことができる。無端状ベルト7が少なくとも対向ローラ16とベルト案内部材8にて張架しているため、圧接部5に無端状ベルト7をより近づけることができ、また、対向ローラ16に無端状ベルト7を張架した状態にて転写するために、対向ローラ16に抵抗を持たせる必要がなくなり、コストダウンとなる。
【0024】
上記構成により、前述の図6に示した画像形成装置の場合と同様に、圧接部5の近傍に至った転写材部分P1が転写ローラ3に印加された電圧に基づいて帯電したとき、その部分P1は中間転写ベルト1の表面に密着しているので、中間転写ベルト1の表面1aのトナーが転写材部分8の表面に静電的に移行しても、これが飛翔して移行することはない。或いは飛翔するトナーの量は極めて少なくなる。これにより、トナー散りの発生を効果的に抑え、記録媒体シートS上に転写されたトナー像の画質を向上させることができる。しかも、図6に示した例では、ガイドローラ4によって上述の作用を得るように構成されているので、前述のように、中間転写ベルト1に静電的に強く密着しない転写材部分6が存在したが、図1及び図2に示した例では、ガイドローラ4ではなく、これとは別のベルト案内部材8を用いて記録媒体シートSが早期に中間転写ベルト1の表面に当接するように構成したので、中間転写ベルト1に静電的に強く密着しない転写材部分6をなくすことができる。無端状ベルト7及びベルト案内部材8は、ガイドローラ7とは異なり、その形状やサイズ、或いはその設置位置を実質的に自由に設定できるので、中間転写ベルト1に静電的に強く密着しない転写材部分6が存在しなくなるように、圧接部5に至る前に記録媒体シートSが中間転写ベルト1の表面に密着する密着部9の距離Dを設定できるのである。これにより、図6に示した構成の場合に生じていたトナー像の乱れの発生を抑え、記録媒体シートS上に転写されたトナー像に画像抜け(所謂白抜け)が発生する不具合を効果的に抑制することができる。
【0025】
上述の距離Dは、これが長くなりすぎると、図6に示した画像形成装置のように、転写されたトナー像中に画像抜けが発生しやすくなり、逆にこの距離Dが短すぎるとトナー散りが発生しやすくなる。図3は、一方の縦軸に、転写されたフルカラーのライントナー像10mmにつき発生する散りトナーの数をとり、他方の縦軸に、転写されたトナー像の画像抜けの発生率をとり、横軸には、上記密着部の距離Dをとって示したグラフであり、実線Xは距離Dに対応する散りトナーの数を表わし、鎖線Yは距離Dに対応する画像抜け発生率を表わしている。このグラフから判るように、圧接部5に至る前に転写材4が中間転写ベルト1の表面に密着する密着部の中間転写ベルト移動方向に沿う距離Dが2mm以上で30mm以下、好ましくは5mm以上で20mm以下であると、トナー散りと、画像抜けの発生を共に減少させ、トナー像の画質が高められることを理解できる。
【0026】
また、図2から判るように、ベルト案内部材8は、中間転写ベルト1の表面側に突出する向きに湾曲面8aが形成された断面円弧状を有しているが、湾曲面8aの曲率半径Rは、10mm以上、好ましくは15mm以上に設定されている。曲率半径Rをこのように大きく設定することにより、無端状ベルト7によって案内されながら走行する中間転写ベルト1にカールぐせができることを防止し、乃至は抑制でき、中間転写ベルト1のカールぐせに基因するトナー像の転写むらの発生を抑えることができる。
また、無端状ベルト7の裏面に当接する側のベルト案内部材8の湾曲面8aに植毛処理を施しておくと、その植毛によって、無端状ベルト7とベルト案内部材8とに作用する摩擦力を減少させることができ、無端状ベルト7とベルト案内部材8の経時的な摩耗を効果的に抑制することができる。
なお、本実施形態においては、転写手段として転写ローラ3を使用しているが、スコロトロン等の転写チャージャや、無端状転写ベルトや転写ブラシ等であっても良い。により行っているが、転写装置をチャージャやベルト体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置である複写機の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明による一実施形態にトナー散りと白抜け防止機構の概略構成を示す断面図である。
【図3】トナー散りと白抜け防止機構における中間転写ベルトと記録媒体シートSとの密着部距離Dと散りトナー数および画像抜け発生率との関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明による一実施形態のトナー散りと白抜け防止機構で使用される無端状ベルトの概略構成を示す断面図である
【図5】従来の画像形成装置の転写部の構成を示す概略図である。
【図6】従来の他の実施形態に係る画像形成装置の転写部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 中間転写ベルト、1A 中間転写ベルト部分、2 対向ローラ、3 転写ローラ、4 ガイドローラ、5 圧接部、6 転写材部分、7 無端状ベルト、7b 植毛体、8 ベルト案内部材、8a 湾曲面、9 密着部、14 駆動ローラ、15 支持ローラ、16 対向ローラ、18B、18C、18M、18Y 画像形成手段、21 露光装置、22 2次転写装置、25 定着装置、37 帯電装置、38B、38C、38M、38Y 現像装置、39 クリーニング装置、40B、40C、40M、40Y 感光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラに張架されて移送駆動され、表面にトナー像が形成される無端状の像担持ベルトと、当該像担持ベルトを介して、前記複数のローラ中の1つのローラに対向して配置され、前記像担持ベルトの表面に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧を印加する転写手段とを有し、前記像担持ベルトの表面に当接しながら前記転写手段と前記1つのローラとの間を移動する転写材上に、前記転写手段から前記転写電圧を印加することによって像担持ベルト表面のトナー像を転写する画像形成装置において、
前記1つのローラと前記転写手段との対向領域よりも前記像担持ベルトの移送方向上流側の像担持ベルト部分の裏面を押圧して当該像担持ベルト部分を、前記転写手段に移送中の転写材の側へ突出させるベルト案内部材を固定配置し、
当該ベルト案内部材と前記1つのローラとの間に、無端状ベルトを張架し、当該無端状ベルトを前記ベルト案内部材と前記1つのローラとによって前記像担持ベルトの裏面に当接させて当該像担持ベルトの移送と共に前記無端状ベルトが移送されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記無端状ベルトは、10Ωcm〜1010Ωcmの体積抵抗値を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記無端状ベルトは、前記像担持ベルトと当接する面に植毛体が形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記ベルト案内部材は、前記像担持ベルト部分を、前記転写手段に移送中の転写材の側へ突出させる向きに湾曲する湾曲面を有し、当該湾曲面の曲率半径を10mm以上に設定したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記ベルト案内部材の湾曲面は、前記像担持ベルトの全幅を押圧する押圧面を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記像担持ベルトは、前記ベルト案内部材と転写手段との間に前記転写材と密着する密着部分を有し、当該密着部分の前記像担持ベルトの移動方向に沿う長さが2mm〜30mm以内に設定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記転写手段は、転写ローラであり、当該転写ローラに前記像担持ベルトの表面に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧を印加することにより、移動する前記転写材上に像担持ベルト表面のトナー像を転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の画像形成装置において、
前記像担持ベルトは、感光体表面に形成されたトナー像が一次転写される無端状の中間転写ベルトであり、前記転写材は記録媒体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−186828(P2009−186828A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27843(P2008−27843)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】