説明

画像形成装置

【課題】構造簡単、安価、省スペースの構造であり、腰の弱い用紙であっても正確確実に用紙の搬送経路を切り換えられる切換手段を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】分岐部6に至る搬送経路2には用紙50を帯電させる帯電部24があり、分岐部において上搬送経路2aの近傍と下搬送経路2bの近傍には互いに反対電位に帯電する一対の誘導電極20,21がそれぞれ設けられる。正に帯電して搬送されてきた用紙を上の搬送経路に切り換える場合は上の誘導電極20を負とし、下の誘導電極21を正とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の搬送経路が2方向に分岐する分岐部に、用紙の搬送経路を任意に切り換える手段が設けられた画像形成装置に係り、特に揺動可能なフリッパのような機械的手段で搬送経路を切り換えるのではなく、省スペースで簡単な構造により用紙に非接触で外力を加えて搬送方向を確実に切り換えるようにした画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示す画像形成装置は、両面印刷が可能な画像形成装置の構造図であり、本願発明者が先に案出したものである。この画像形成装置は、複数の給紙トレイ1と、各給紙トレイ1から送り出された用紙を搬送する搬送経路2と、搬送されてきた用紙に画像を形成するインクジェットヘッド3と、画像形成された用紙を外に排出する排紙ローラ4と、排紙ローラ4で外に排出された用紙を積載する排紙トレイ5を有している。
【0003】
そして、搬送経路2は、図11又は図12に拡大して示すように、インクジェットヘッド3の下流の分岐部において、排紙ローラ4に向かう上方の片面印刷用の第1分岐経路である搬送経路2aと、下方の両面印刷用の第2分岐経路である搬送経路2bとに分岐部6で分かれており、当該分岐部6には経路を切り換えるフリッパ7が水平な回動軸8を介して上下揺動可能に設けられている。
【0004】
インクジェットヘッド3で画像形成された用紙は画像面を下に向けた姿勢で分岐部6に送られ、図11に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置に設定されている場合は、用紙は上方の片面印刷用の搬送経路2aから排紙ローラ4に送られ、画像を下に向けた姿勢で排紙トレイ5に排出される。
【0005】
図12に示すようにフリッパ7が相対的に上方の位置に設定されている場合は、用紙は下方の両面印刷用の搬送経路2bから、画像面を下に向けた姿勢で図10に示す反転部9に送り込まれる。用紙は、反転部9で逆方向に送り出され、画像面を下にしてインクジェットヘッド3の上流の搬送経路2に戻り、画像形成されていない上面にインクジェットヘッド3で画像形成される。このようにして両面に画像が形成された用紙は、さらに搬送経路2で搬送され、図11に示すようにフリッパ7が下方の位置に設定された分岐部6で上方の搬送経路2aに入って図10に示す排紙トレイ5に排出される。
【0006】
図13は、フリッパ7及びその駆動機構を示す斜視図である。フリッパ7の水平な回動軸8は、筐体のフレーム等の側板間に上下方向の所定角度について揺動自在となるように軸支されている。この回動軸8の軸端部の近傍には、回動軸8と直交する水平な方向に駆動軸10を向けて駆動手段としてのソレノイド11が設置されている。そして、回動軸8の軸端部の周面には連結用の第1アーム部材12が取り付けられており、図11に示すようにフリッパ7が相対的に下方の位置にあって上方の搬送経路2aを開いている状態において、引き込み作動するソレノイド11の駆動軸10が第1アーム部材12に長孔を介して連結されている。また、第1アーム部材12とは反対側の軸端部の周面には第2アーム部材13が取り付けられており、図13に示すようにソレノイド11による引き込み方向と逆方向に回動軸8を回転させるように付勢手段としてのばね14が取り付けられている。
【0007】
従って、図11及び図13に示すように、ソレノイド11が作動していない状態では、ばね14の付勢力によってフリッパ7は相対的に下方の位置に設定されて上方の搬送経路2aを開いた状態となる。また、ソレノイド11が作動すると、ばね14の付勢力に抗して回動軸8が回動し、図12に示すようにフリッパ7は相対的に上方の位置に設定されて下方の搬送経路2bを開いた状態となる。
【0008】
下記特許文献1及び2は、フリッパの替わりに送風によって用紙の搬送方向を切り換える発明を開示している。特許文献1は、用紙に対して直角又は鋭角に風を押し当てて当該用紙を意図する搬送経路側に導入しようとする発明に関するものである。特許文献2は、搬送経路の分岐部において用紙に風を押し当て且つ引き付けて当該用紙を意図する搬送経路側に導入しようとするものである。
【特許文献1】特開2002−308504号公報
【特許文献2】特開2007−76882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図10〜図13を参照して説明した本願発明者による画像形成装置のように、近年の画像形成装置は、その画像形成原理を問わず、小型化のために装置内部で用紙を搬送する搬送経路が密集して配置される傾向にあり、また画像形成速度の高速化のため、搬送経路を切り換える前記フリッパは小型化して瞬間的に作動できるようにする必要があるとともに、フリッパを駆動する機構もできる限りコンパクトな構成とする必要がある。
【0010】
しかしながら、従来の画像形成装置における搬送経路の切換手段であるフリッパは、前述した通り、機械的な構成によって搬送経路を構造的に切り換え、しかもその駆動機構はソレノイドやばねでアームを介して回動軸を駆動するという可動部分の多い複雑な構造であり、コンパクト化が求められている近年の画像形成装置において省スペースの要求に反しているとともに、多数の部品の組み立てによって製造コストも高いという問題があった。
【0011】
そこで、フリッパ以外の手段で用紙の搬送方向を切り換える手段として、前述した特許文献1乃至2に開示された発明のように、用紙面に対して風を押し当てることによって用紙の搬送方向を変え、用紙を所望の搬送経路側に送り込む手法が提案されているが、このような手法では腰の弱い薄い用紙などを搬送する場合には風力によって用紙が変形したり、スキューやジャム等の搬送不良が発生し易いという問題があった。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、用紙の搬送経路が分岐する分岐部に用紙の搬送方向を切り換える切換手段が設けられている画像形成装置において、機械的に搬送経路を切り換える従来のフリッパ等とは異なり、簡単で製造コストの安価な構造であるとともに、省スペースの要求も満たし、しかも腰の弱い用紙であっても搬送不良を生じることなく正確確実に用紙の搬送経路の切り換えを行なうことができる切換手段を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された画像形成装置は、
主搬送経路に沿って搬送された用紙の搬送方向を分岐部において第1分岐経路又は第2分岐経路に選択的に切り換える切換手段を設けた画像形成装置において、
前記切換手段が、主搬送経路に沿って搬送された用紙に外力を与えることにより該用紙を第1分岐経路又は第2分岐経路に選択的に誘導することを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載された画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置において、
前記切換手段が、
前記分岐部に至る前記主搬送経路に設けられて用紙と帯電列の離れた材料で用紙を帯電させる帯電部と、
前記分岐部において前記第1分岐経路の近傍と前記第2分岐経路の近傍にそれぞれ配置され、互いに反対電位となるように正帯電又は負帯電して前記帯電部で帯電した用紙をクーロン力で第1分岐経路又は第2分岐経路に誘導する一対の誘導電極と、
を有する静電切換手段であることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載された画像形成装置は、請求項3記載の画像形成装置において、
前記静電切換手段による用紙の搬送方向の切換が機能する程度に、前記主搬送経路と前記第1及び第2分岐経路の内部が密閉されて乾燥状態に保持されたことを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載された画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置において、
前記切換手段が、
前記分岐部において前記第1分岐経路の近傍と前記第2分岐経路の近傍にそれぞれ配置され、分岐部から前記第1分岐経路と前記第2分岐経路内に向かう空気の流れを選択的に発生することにより前記第1分岐経路又は前記第2分岐経路に用紙を誘導する一対のエアノズルを有する送風切換手段であることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載された画像形成装置は、請求項3記載の画像形成装置において、
前記一対のエアノズルが、前記分岐部から前記第1分岐経路又は前記第2分岐経路に向けて経路の壁面に沿う空気の流れを形成することにより負圧を生成して用紙を前記第1分岐経路又は前記第2分岐経路に導くことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された画像形成装置によれば、主搬送経路に沿って搬送された用紙が分岐部に来ると、切換手段によって必用な方向の外力を選択的に与えられ、第1分岐経路又は第2分岐経路のいずれか一方へ選択的に誘導されて搬送方向が切り換えられる。
【0019】
請求項2に記載された画像形成装置によれば、請求項1記載の画像形成装置による搬送方向の切り換えが次のように行なわれる。すなわち、分岐部の手前にある静電切換手段の帯電部において、主搬送経路を搬送されてきた用紙が、用紙と帯電列の離れた材料と摩擦を生じて正又は負に帯電し、その帯電状態で分岐部に送り込まれる。分岐部において第1分岐経路の近傍と第2分岐経路の近傍にそれぞれ配置された一対の誘導電極には、互いに反対電位となるように正又は負の電位が与えられるので、帯電した用紙を、誘導電極との間に働くクーロン力によって第1分岐経路又は第2分岐経路のいずれか必用な方に誘導することができる。
【0020】
請求項3に記載された画像形成装置によれば、請求項3記載の画像形成装置による効果において、主搬送経路と第1及び第2分岐経路の内部が密閉されて乾燥状態に保持されているので、静電切換手段によるクーロン力を用いた用紙の搬送方向の切換は十分に有効に機能する。
【0021】
請求項4に記載された画像形成装置によれば、請求項1記載の画像形成装置による搬送方向の切り換えが次のように行なわれる。すなわち、用紙が主搬送経路を搬送されて分岐部に送られると、分岐部では送風切換手段の一対のエアノズルの一方が選択的に作動して第1分岐経路と第2分岐経路内のいずれか必用な方に向かう空気の流れを発生させる。用紙は、この空気の流れによる外力を受けて第1分岐経路又は第2分岐経路のいずれか必用な方に誘導される。
【0022】
請求項5に記載された画像形成装置によれば、請求項4記載の画像形成装置による効果において、エアノズルは、分岐部から第1分岐経路又は第2分岐経路に向けて経路の壁面に沿って空気を送ることにより用紙に平行な空気の流れを形成し、これによって負圧を生成して用紙を第1分岐経路又は第2分岐経路のいずれか必用な方に引き付ける。ノズルからの空気の流れは用紙に平行であり、これによって発生した負圧を外力として受けた用紙には無理な力が加わらず、用紙は搬送不良を起こすことなく選択された方の分岐経路に送られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するために特許出願人が出願時点で最良と思う本発明の実施の形態を図1〜図9を参照して説明する。
1.第1実施形態(静電切換手段)
図1〜図5を参照して第1実施形態を説明する。
図1は第1実施形態に係る画像形成装置の模式的な内部構造図、図2は同実施形態において切換手段が設けられた分岐部の側面図であり、図3は同実施形態において帯電した用紙が分岐部に導入される状態を示す側面図であり、図4は同実施形態において帯電した用紙が一方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図であり、図5は同実施形態において帯電した用紙が他方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図である。
【0024】
本例の画像形成装置は、図10を参照して説明した背景技術における画像形成装置と基本構造が同一であり、搬送経路の分岐部における切換手段の構成が異なるので、当該相違点を中心として説明し、その他の部分は背景技術における図示及び説明を援用して図示と説明の繰り返しを避けるものとする。
【0025】
図1の全体構成に示すように、搬送経路2の分岐部6には本例の切換手段である静電切換手段としての誘導電極20,21が設けられ、上側の搬送経路2aの出口にある排紙ローラ4の排紙側には、帯電した用紙を除電する除電器22が設けられ、下側の搬送経路2bにも帯電した用紙を除電する除電器23が設けられている。
【0026】
図2及び図3に示すように、分岐部6に至る主搬送経路としての搬送経路2の一部は、用紙と帯電列の離れた材料で構成された帯電部24とされており、静電切換手段の一部として機能する。従って、図3に示すように、搬送ローラ等の搬送手段によって用紙50が搬送経路2に沿って搬送されると、用紙50は搬送経路2中の帯電部24と擦れて電荷を帯び、その帯電状態で分岐部6に送られることとなる。例えばアクリル等の樹脂によって帯電部24を構成すれば、図3に示すように、帯電部24と擦れながら通過した用紙50は正電荷を帯び、逆に搬送経路2は負電荷を帯びることとなる。
【0027】
図2に示すように、前記分岐部6において、搬送経路2aに近接した搬送経路2の上壁部と、搬送経路2bに近接した下壁部とには、それぞれ壁部の内面と同一平面を構成するように、分岐部6の内部に臨んで静電切換手段としての誘導電極20,21が配置されている。これら一対の誘導電極20,21は、図示しない帯電手段に接続されており、送り込まれた帯電した用紙50の搬送方向を切り換える際には、用紙50の帯電状態と、搬送経路2の所望の切り換え方向に対応した帯電状態の組合せで、互いに反対電位となるように正帯電又は負帯電させることができる。
【0028】
本例では、搬送経路2は密閉構造で製作されており、その経路内、特に用紙50の搬送方向の切換のために静電気を利用する分岐部6の前後の領域において湿気を除去し、湿度を低下させる除湿器が、分岐部6の前後の位置にて搬送経路2に接続されている。これによって用紙50を帯電させて行なう静電気を利用した搬送方向の切り換えが一層効果的に行なわれる。
【0029】
図4に示すように、上方の搬送経路2aに用紙50を切り換えたい場合は、上方の搬送経路2aの誘導電極20を負に帯電させ、下方の搬送経路2bの誘導電極21を正に帯電させれば、帯電部24で正に帯電して分岐部6に入った用紙50は、上方の搬送経路2a側の負に帯電した誘導電極20にクーロン力で引かれ、逆に下方の搬送経路2b側の正に帯電した誘導電極21からはクーロン力で反発を受け、その結果用紙50は上方の搬送経路2aに誘導される。図示しないが、用紙50はその後排紙ローラによって排出されながら除電器22によって不要な静電気を除去され、排紙トレイ5上に排出される。
【0030】
図5に示すように、下方の搬送経路2bに用紙50を切り換えたい場合は、上方の搬送経路2aの誘導電極20を正に帯電させ、下方の搬送経路2bの誘導電極21を負に帯電させれば、帯電部24で正に帯電して分岐部6に入った用紙50は、下方の搬送経路2b側の負に帯電した誘導電極21にクーロン力で引かれ、逆に上方の搬送経路2a側の正に帯電した誘導電極20からはクーロン力で反発を受け、その結果用紙50は下方の搬送経路2bに誘導される。図示しないが、用紙50はその後、搬送経路2b内にある除電器23によって不要な静電気を除去され、さらに搬送されて2回目の印刷(裏面印刷)のためにインクジェットヘッド3に送られる。
【0031】
なお、本実施形態では、帯電部24の材質の帯電列を用紙50に対して適宜に選択することにより用紙50が正に帯電するものとし、これに応じて誘導電極20,21の帯電を正又は負にすることとしたが、用紙50に対して帯電列が逆側にある材質を帯電部24の構成材料に選択すれば用紙50は帯電部24で負に帯電することとなるので、誘導電極20,21の帯電の制御は上述した例とは逆に行なうこととなる。
【0032】
本実施形態によれば、静電切換手段の誘導電極20,21は、搬送経路2の壁部の内面と同一面を構成するように設置されており、搬送経路2の近傍に大きな設置空間を必要としない省スペース態様で設置されており、また電気的な切り換え手段であるから可動部分もなく簡素で故障しにくい構造であり、切換動作に時間がかからず応答性に優れているため用紙50の切換動作が速くかつ確実である。
【0033】
このように本例の静電切換手段は、機械的に搬送経路を切り換える従来のフリッパ等とは異なり、簡単で製造コストの安価な構造であるとともに、省スペースの要求も満たし、しかも正確確実に用紙の搬送経路の切り換えを行なうことができる。
【0034】
2.第2実施形態(送風切換手段)
図6〜図9を参照して第2実施形態を説明する。
図6は第2実施形態に係る画像形成装置の模式的な内部構造図、図7は同実施形態において切換手段が設けられた分岐部6の側面図であり、図8は同実施形態において用紙が一方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図であり、図9は同実施形態において用紙が他方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図である。
【0035】
本例の画像形成装置は、図10を参照して説明した背景技術における画像形成装置と基本構造が同一であり、搬送経路2の分岐部6における切換手段の構成が異なるので、当該相違点を中心として説明し、その他の部分は背景技術における図示及び説明を援用して図示と説明の繰り返しを避けるものとする。
【0036】
図6の全体構成に示すように、搬送経路2の分岐部6には本例の切換手段である送風切換手段としてのエアノズル30,31が設けられている。
【0037】
図7に示すように、搬送経路2の分岐部6には、搬送経路2を中心として送風切換手段としての上側エアノズル30と下側エアノズル31が接続されており、分岐部6内での噴射方向が上側の搬送経路2a側と下側の搬送経路2b側にそれぞれ向くように配置されている。上側エアノズル30と下側エアノズル31は図示しない空気供給手段にそれぞれ接続されており、上側エアノズル30は、搬送経路2の分岐部6の上壁部の内面に沿って上側の搬送経路2aに入る風の流れを生成し、下側エアノズル31は、搬送経路2の分岐部6の下壁部の内面に沿って下側の搬送経路2bに入る風の流れを生成する。従って、上側エアノズル30及び下側エアノズル31ともに、そのエアの噴射方向は搬送されてくる用紙50に平行であり、用紙50の面にエアを押し当てて用紙50を変形させ、搬送不良を生じるようなことはない。
【0038】
図8に示すように、上方の搬送経路2aに用紙50を切り換えたい場合は、上側エアノズル30が分岐部6内で搬送経路2aに向けて搬送方向に平行に空気を噴射する(図中白抜きの矢印)。上側エアノズル30から噴射された空気が分岐部6の上壁部の内面に沿って用紙50と平行に流れると、上壁部の内面に沿うとともに用紙50に平行な領域に負圧が生成される。この負圧が、分岐部6に送り込まれた用紙50の全面に均一に作用して用紙50を吸引し、上方の搬送経路2aに引き込む。用紙50に折れや曲がりなどが発生することはなく、搬送不良は生じない。用紙50は搬送経路2aに沿ってさらに搬送されて排紙ローラ4によって排紙トレイ5上に排出される。
【0039】
図9に示すように、下方の搬送経路2bに用紙50を切り換えたい場合は、下側エアノズル31が分岐部6内で搬送経路2bに向けて搬送方向に平行に空気を噴射する(図中白抜きの矢印)。下側エアノズル31から噴射された空気が分岐部6の下壁部の内面に沿って用紙50と平行に流れると、下壁部の内面に沿うとともに用紙50に平行な領域に負圧が生成される。この負圧が、分岐部6に送り込まれた用紙50の全面に均一に作用して用紙50を吸引し、下方の搬送経路2bに引き込む。用紙50に折れや曲がりなどが発生することはなく、搬送不良は生じない。下方の搬送経路2bに誘導された用紙50は、図示はしないが、さらに搬送されて2回目の印刷(裏面印刷)のためにインクジェットヘッド3に送られる。
【0040】
本実施形態によれば、送風切換手段のエアノズル30,31は、搬送経路2の壁部に連通して設けるだけなので近傍に大きな設置空間を必用としない省スペース態様で設置でき、また空気圧の切り換えによる切換手段であるから可動部分もなく簡素で故障しにくい構造であり、切換動作に時間がかからず応答性に優れているため用紙50の切換動作が速くかつ確実である。また、エアノズル30,31からの送風は搬送経路2の内面に沿った用紙50に平行な方向であるため、搬送経路2の内面沿いの領域に生じた負圧は用紙50の面に均一に作用し、用紙50に有害な変形を生じるような無理な力が作用することなく、用紙50を選択した搬送経路20a,20bに送り込むことができる。
【0041】
このように本例の送風切換手段は、機械的に搬送経路を切り換える従来のフリッパ等とは異なり、簡単で製造コストの安価な構造であるとともに、省スペースの要求も満たし、しかも正確確実に用紙の搬送経路の切り換えを行なうことができる。
【0042】
以上説明した各実施形態では、用紙50の搬送経路2を上方と下方に分岐させ、用紙50の搬送経路2を静電タイプ又は送風タイプの切換手段で上方又は下方に切り換える理由として画像形成装置における両面印刷を例示したが、切換手段による搬送経路の切り換えの目的はこれに限らない。例えば、本発明は、画像形成装置において排紙トレイが上下に複数段設けられ、排紙トレイを上下に任意に切り換える場合にも利用できる。また画像形成装置の排紙トレイに排出する場合と、画像形成装置に接続した後処理用のオプション機器に用紙50を排出する場合とを切り換える場合にも、本発明は利用できる。さらに、印刷物を印刷面が上の状態で排出する排出トレイと、印刷物を印刷面が下の状態で排出する排出トレイとを備える画像形成装置において、排出先を選択する場合にも利用できる。
【0043】
本例では、用紙50の搬送経路2を上方と下方に分岐させ、静電タイプ又は送風タイプの切換手段で用紙50の搬送経路2を上方又は下方に切り換える装置を有する画像形成装置としてインクジェット記録装置を例示したが、画像形成装置としてはインクジェット記録装置に限らず、本発明は、孔版印刷装置や電子複写装置等、その他のあらゆる画像形成原理の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は第1実施形態に係る画像形成装置の模式的な内部構造図である。
【図2】図2は第1実施形態において切換手段が設けられた分岐部の側面図である。
【図3】図3は第1実施形態において帯電した用紙が分岐部に導入される状態を示す側面図である。
【図4】図4は第1実施形態において帯電した用紙が一方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図である。
【図5】図5は同実施形態において帯電した用紙が他方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図である。
【図6】図6は第2実施形態に係る画像形成装置の模式的な内部構造図である。
【図7】図7は第2実施形態において切換手段が設けられた分岐部の側面図である。
【図8】図8は第2実施形態において用紙が一方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図である。
【図9】図9は第2実施形態において用紙が他方の搬送経路に切り換えられる状態を示す側面図である。
【図10】図10は両面印刷が可能な従来の画像形成装置の一構造例を示す模式的な内部構造図である。
【図11】図11は従来の画像形成装置においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図12】図12は従来の画像形成装置においてフリッパが上方位置に設定された状態を示す側面図である。
【図13】図13は従来の画像形成装置においてフリッパが下方位置に設定された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
2…搬送経路
2a…第1分岐路としての上側の搬送経路
2b…第2分岐路としての下側の搬送経路
6…搬送経路の分岐部6
20,21…静電切換手段としての誘導電極
24…静電切換手段としての帯電器
30…送風切換手段としての上側エアノズル
31…送風切換手段としての下側エアノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主搬送経路に沿って搬送された用紙の搬送方向を分岐部において第1分岐経路又は第2分岐経路に選択的に切り換える切換手段を設けた画像形成装置において、
前記切換手段が、主搬送経路に沿って搬送された用紙に外力を与えることにより該用紙を第1分岐経路又は第2分岐経路に選択的に誘導することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記切換手段が、
前記分岐部に至る前記主搬送経路に設けられて用紙と帯電列の離れた材料で用紙を帯電させる帯電部と、
前記分岐部において前記第1分岐経路の近傍と前記第2分岐経路の近傍にそれぞれ配置され、互いに反対電位となるように正帯電又は負帯電して前記帯電部で帯電した用紙をクーロン力で第1分岐経路又は第2分岐経路に誘導する一対の誘導電極と、
を有する静電切換手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記静電切換手段による用紙の搬送方向の切換が機能する程度に、前記主搬送経路と前記第1及び第2分岐経路の内部が密閉されて乾燥状態に保持されたことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記切換手段が、
前記分岐部において前記第1分岐経路の近傍と前記第2分岐経路の近傍にそれぞれ配置され、分岐部から前記第1分岐経路と前記第2分岐経路内に向かう空気の流れを選択的に発生することにより前記第1分岐経路又は前記第2分岐経路に用紙を誘導する一対のエアノズルを有する送風切換手段であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記一対のエアノズルが、前記分岐部から前記第1分岐経路又は前記第2分岐経路に向けて経路の壁面に沿う空気の流れを形成することにより負圧を生成して用紙を前記第1分岐経路又は前記第2分岐経路に導くことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−202968(P2009−202968A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44719(P2008−44719)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】