説明

画像形成装置

【課題】 設置作業が容易で、作業中に画像形成装置が転倒するおそれがなく、設置作業が完了するまで誤って電源が投入されるおそれのない画像形成装置を提供する。
【解決手段】 画像形成装置10のキャスタユニット20aにはキャスタユニット20aに組み付けられたピン24、レバー25、及びコイルスプリング26からなるトグル機構Tが設けられている。図3に示す基準位置において画像形成装置10を持ち上げ、レバー25の操作部25cを矢印c方向に蹴りレバー25をピン24の回りに反時計方向に回動すると、レバー25は反時計方向に回動、キャスタユニット20aはピン16の回りに反時計方向に回動、最終的に車輪22cがキャスタユニット収納ケース14に収納される。画像形成装置10は底板15とキャスタユニット収納ケース14とで床面Fに支承され、転倒が防止される。設置作業中はOFFの安全スイッチも床面に接触してONとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動用キャスタを備えた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置においては、画像形成装置(以下、単に装置という場合がある)を容易に移動させるため、装置底面に移動用キャスタが設けられている。移動用キャスタの高さは、装置の底面と設置する床面との間にフォークリフトのフォークを挿入する空間が確保されるだけの高さに構成されている。
【0003】
このため、従来の画像形成装置では操作部の高さが高くなってしまい、使い勝手の悪いものとなっていた。この対策として、フォークリフトのフォークを挿入する空間を確保するために装置の底面付近にフォークを挿入する溝を設け、装置全体の底面を低く構成したものが提案されているが、この構成では、装置全体の底面が低いため、装置を移動するとき、設置する床面の状況によっては装置の底面を擦るなどの不都合があった。
【0004】
このような不都合を解決し、設置された装置の転倒を防止するため、画像形成装置の下側に高さ調整が可能な台座を設けるものや、装置内部に収容可能な高さを調整できるキャスタを使用するものが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−85662号公報
【特許文献2】特開2004−20662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した台座を使用するものでは、設置及び調整が繁雑であるばかりでなく、移動完了後にキャスタを装置本体の内部に収容するとき、台座が傾き転倒する可能性があった。
【0006】
また、装置内部に収容可能な高さを調整できるキャスタを使用するものでは、装置の移動中や、キャスタを装置本体内部に収容する作業中に装置が転倒する可能性があった。また、装置の下側でキャスタを操作して高さを調整することになるので、作業性が悪いという不都合がある。また、キャスタで装置を設置しているため、電源をONのまま移動して不測の事故が発生するという可能性があった。この発明は上記した種々の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、装置下側にキャスタユニットを備えた画像形成装置において、前記画像形成装置の下側側面に張出したキャスタユニット収納ケースと、前記画像形成装置下側に回動可能に保持されたキャスタユニットと、前記キャスタユニットを基準位置と収納位置とに移動するトグル機構とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0008】
そして、前記トグル機構は、前記キャスタユニットに組み付けられたピンの回りに回動自在なレバーと、レバーを付勢するスプリングとから構成され、前記レバーが第1の位置にあるときは前記キャスタユニットを基準位置に保持し、前記レバーが第2の位置に移動すると前記キャスタユニットを収納位置に移動させるように構成されている。
【0009】
また、前記レバーは、その操作部が画像形成装置下側から外部に突出し、画像形成装置の外から前記第1の位置から第2の位置に移動操作可能である。
【0010】
さらに、前記画像形成装置の下側には、電源を遮断する安全スイッチが配置されており、前記キャスタユニットが収納位置に移動して設置が完了すると前記安全スイッチがオフからオンに転換するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の画像形成装置は、装置下側のキャスタユニットを使用して画像形成装置を所望の床面の設置位置に移動した後、画像形成装置の下側から外部に突出しているレバーの操作部を蹴るなどの操作によりトグル機構を作動させ、キャスタユニットを収納ケースに収納するものである。これにより、画像形成装置の設置が完了すると、画像形成装置はその底板と、装置下側側面に張出しているキャスタユニット収納ケースの底部により安定して設置される。レバーの操作部を蹴るなどの簡単な操作によりキャスタユニットを収納ケースに収納できるから設置作業が容易であり、装置下側側面にキャスタユニット収納ケースが張出しているので、作業中に画像形成装置が転倒するおそれがない。また、設置作業が完了するまで安全スイッチがオフの状態にあるから、誤って電源が投入されるおそれもない等、従来の装置に見られない効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1はこの発明に係るキャスタを装置内部に収容できる画像形成装置の正面図、図2はその右側からみた側面図である。
【0013】
画像形成装置(以下、単に装置という場合がある)10の下部の4隅には、キャスタユニット20が配置されている。キャスタユニット20は、装置10への装着位置により正面(図1)からみて手前側の右側装着用キャスタユニット20aと左側装着用キャスタユニット20bとがあり、また、正面(図1)からみて奥側の左側装着用キャスタユニット(20a)と右側装着用キャスタユニット(20b)とがある。
【0014】
正面(図1)からみて手前側の右側装着用キャスタユニット20aと左側装着用キャスタユニット20bは、部材配置が対称配置されている相違があるにしても基本構成が同じであり、また、正面(図1)からみて奥側の左側装着用キャスタユニット(20a)と右側装着用キャスタユニット(20b)とは、それぞれ正面(図1)からみて手前側の右側装着用キャスタユニット20aと左側装着用キャスタユニット20bと同じ構成である。したがって、以下の説明では、手前側の右側装着用のキャスタユニット20aについて説明する。
【0015】
キャスタに関する構成部分以外の画像形成に関する構成部分は、従来の画像形成装置の構成と変わらないので、説明を省略する。
【0016】
画像形成装置10の下部の4隅には、キャスタユニット20が配置され、画像形成装置10の正面胴部には装置の据付作業において装置を持上げるときに使用する取手11が装着されている。また、画像形成装置10の下側には、安全スイッチ12が装着されており、装置を移動するときなど、装置10を床面Fから持上げると安全スイッチ12がOFFとなり、電源を遮断する。また、画像形成装置10を床面Fに設置し、キャスタユニット20が装置のキャスタユニット収納ケース14に収納されると(設置完了すると)、安全スイッチ12がONとなり、図示しない装置の主電源スイッチによる電源のON/OFFが可能な状態に設定される。
【0017】
キャスタユニット20の構成を、右側装着用のキャスタユニット20aについて説明する。図3乃至図7はキャスタユニット20aの構成と動きを説明する図であって、図3はキャスタユニット20aが画像形成装置10の下側から突出した位置(以下、基準位置という)にある状態を示している。基準位置ではキャスタユニット20aの車輪22cは床面Fに接触して画像形成装置10を移動可能に支えている。画像形成装置10を移動するときは、この状態に設定される。
【0018】
図7はキャスタユニット20aが画像形成装置10のキャスタユニット収納ケース14に収納された収納位置にある状態を示している。装置10を床面Fへ設置し、設置が完了した時はこの状態となる。また、図4乃至図6はキャスタユニット20aが前記基準位置(図3参照)から収納位置(図7参照)に移動するときの過渡的な状態を示している。
【0019】
図3を参照してキャスタユニット20aの構成を説明する。図3において、13は画像形成装置10の箱体の一部であって、箱体13の下側側面の一部には、キャスタユニット20aを収納するキャスタユニット収納ケース14が設けられている。キャスタユニット収納ケース14は、画像形成装置10の箱体13の一部から外側に張出して設けられており、画像形成装置10の転倒を防止する機能を有する。また、15は画像形成装置10の底板の一部を示す。
【0020】
キャスタユニット20aは、画像形成装置10の箱体13に設けられたピン16の回りに回動自在に装着されている。キャスタユニット20aの下面には、車輪22cを保持するU字型保持部材22aの取付面22bが固定装着されている。車輪22cは広く使用されているものであって、U字型保持部材22aにより車輪22cが回転自在に保持されている。
【0021】
また、キャスタユニット20aに設けられたピン24にはレバー25の中央部25aが回動自在に装着されている。レバー25の一端に設けたピン25bと画像形成装置10の箱体13に設けられたピン18との間にはコイルスプリング26が架設され、レバー25はピン24の回りに時計方向(矢印a方向、図3参照)及びこれと反対方向(矢印b方向、図4参照)に回動するようにコイルスプリング26により付勢されている。キャスタユニット20aに設けられたピン24、レバー25、及びコイルスプリング26でトグル機構Tが構成されている。
【0022】
図3は、キャスタユニット20aが基準位置に保持されている状態を示しており、トグル機構Tのレバー25はピン24の回りに時計方向(矢印a方向)に回転してレバー25の他端の係止部25dがロックピン27に当接し、キャスタユニット20aは基準位置に停止保持され、キャスタユニット20aの車輪22cは床面Fに接触している。
【0023】
レバー25の一端の操作部25cは、画像形成装置10の箱体の外部に突出しており、例えば図3において、矢印c方向に蹴るなどの足踏み操作が可能に形成されている。
【0024】
画像形成装置10の設置作業を説明する。数人の設置作業者が画像形成装置10の正面胴部の取手11を持って画像形成装置10を持ち上げ、レバー25の一端の操作部25cを矢印c方向に蹴るなどして、レバー25をピン24の回りに矢印b方向(図4参照)に回動すると、トグル機構Tのレバー25はコイルスプリング26付勢力に抗して反時計方向に回動し、更にレバー25は反時計方向(矢印b方向、図4参照)への回動を継続しようとする。画像形成装置10は設置作業者により持ち上げられており、車輪22cは床面Fに接触していないか或いは僅かに接触している程度であるから、レバー25はコイルスプリング26の付勢力により反時計方向(矢印b方向、図4参照)への回動を継続し、キャスタユニット20a全体がピン16の回りに反時計方向に回動する(図5、図6参照)。
【0025】
更にキャスタユニット20a全体がピン16の回りに反時計方向に回動し、図7に示す状態に到達すると、キャスタユニット20aの車輪22cはキャスタユニット収納ケース14に収納される。キャスタユニット20aは画像形成装置10の下側から突出した基準位置(図3参照)から収納位置(図7参照)に移動して画像形成装置10の設置が完了する。
【0026】
設置が完了すると、画像形成装置10は、画像形成装置10の箱体13の底板とキャスタユニット収納ケース14の底部とにより、広い面積で床面Fに支承され、転倒を防止することができる。
【0027】
また、画像形成装置10は、キャスタユニット20aが画像形成装置10の下側から突出した基準位置(図3)から収納位置(図7参照)に移動するまでは、安全スイッチ12はOFFの状態にあり、収納位置(図7参照)に至って設置が完了すると、安全スイッチ12は床面に接触してONとなり、図示しない画像形成装置の主電源スイッチによる電源のON/OFFが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
移動用キャスタを備えた複写機、プリンタ等の画像形成装置であって、キャスタユニットの車輪を画像形成装置の内部に収納可能にすると共にその転倒を防止し、画像形成装置の設置までは電源が投入できない安全スイッチを設けた画像形成装置である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係るキャスタを装置内部に収容できる画像形成装置の正面図。
【図2】図1に示す画像形成装置を右側からみた側面図。
【図3】キャスタユニットが画像形成装置下側の基準位置にある状態を説明する図。
【図4】キャスタユニットが基準位置から収納位置への移動状態を説明する図(その1)。
【図5】キャスタユニットが基準位置から収納位置への移動状態を説明する図(その2)。
【図6】キャスタユニットが基準位置から収納位置への移動状態を説明する図(その3)。
【図7】キャスタユニットが画像形成装置下側の収納位置にある状態を説明する図。
【符号の説明】
【0030】
10 画像形成装置
11 取手
12 安全スイッチ
13 箱体(画像形成装置の箱体)
14 キャスタユニット収納ケース
15 底板(画像形成装置の底板)
16 ピン
20、20a、20b キャスタユニット
22a U字型保持部材
22b 取付面
22c 車輪
24 ピン
25 レバー
25a 中央部(レバーの中央部)
25b ピン
25c 操作部(レバー25の一端の操作部)
25d 係止部(レバー25の他端の係止部)
26 コイルスプリング
27 ロックピン
F 床面(画像形成装置を設置する床面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置下側にキャスタユニットを備えた画像形成装置において、
前記画像形成装置の下側側面に張出したキャスタユニット収納ケースと、
前記画像形成装置下側に回動可能に保持されたキャスタユニットと、
前記キャスタユニットを基準位置と収納位置とに移動するトグル機構と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トグル機構は、キャスタユニットに組み付けられたピンの回りに回動自在なレバーとレバーを付勢するスプリングとから構成され、前記レバーが第1の位置にあるときは前記キャスタユニットを基準位置に保持し、前記レバーが第2の位置に移動すると前記キャスタユニットを収納位置に移動すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記レバーは、その操作部が画像形成装置下側から外部に突出し、画像形成装置の外から前記第1の位置から第2の位置に向けて移動操作可能であること
を特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置の下側には、電源を遮断する安全スイッチが配置されており、前記キャスタユニットが収納位置に移動して設置が完了すると前記安全スイッチがオフからオンに転換すること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−42413(P2009−42413A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206132(P2007−206132)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】