説明

画像形成装置

【課題】運搬時にプロセスカートリッジに保護部材を取り付け、現像手段の潜像担持体からの離間状態を維持する画像形成装置において、より簡単または確実に、運搬終了後に保護部材が除去されないまま画像形成装置が使用されることを抑制する。
【解決手段】プロセスカートリッジ7が画像形成装置に装着されていることを検知するカートリッジセンサ73と、画像形成装置の初期動作において感光ドラム1に回転駆動力を付与する駆動源70と、駆動源70のトルクを測定するトルクセンサ72と、を備える。カートリッジセンサ72によってプロセスカートリッジ7の画像形成装置への装着が検知され、かつ、トルクセンサ72により測定された、駆動源70が感光ドラム1を回転させる際のトルクが所定の閾値以下であるときは、保護部材30の除去忘れと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも潜像担持体と現像手段とを含んだプロセスカートリッジを装着可能とした画像形成装置に関し、特に、運搬時にはプロセスカートリッジに保護部材を取り付け、現像手段が潜像担持体から離間した状態を維持する画像形成装置に関する。ここで画像形成装置には、例えば、電子写真複写機、ファクシミリ装置、電子写真プリンタ(例えばレーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)及びそれらの複合機(マルチファンクションプリンタ)等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置においては、潜像担持体及びこの潜像担持体に接離可能に設けた現像手段を一体的に構成したプロセスカートリッジを、画像形成装置本体に挿抜自在に装着する方式が採用されている。さらに、画像形成装置本体及びプロセスカートリッジの物流効率を上げる目的で、プロセスカートリッジを装着した状態で画像形成装置を梱包・輸送することが行われている。
【0003】
潜像担持体に例えば中間転写体などが当接した状態で搬送する場合、搬送時に発生する振動等により画像劣化につながる傷等が潜像担持体または中間転写体に発生するおそれがある。これを防ぐために、潜像担持体と中間転写体との当接部に保護部材を装着可能とし、さらに、この保護部材の除去し忘れをユーザに知らせるための警告タグを設置する構成が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、運搬時に発生する不都合を防止するためにプロセスカートリッジに取り付けられた保護部材を、プロセスカートリッジが画像形成装置本体に装着された状態で検知する構成も提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、上記の従来技術において、特許文献1に記載の発明では、警告タグを目立つように設けてもユーザが保護部材の除去方法を充分に理解しない場合があるので、ユーザが警告タグ部のみを除去し保護部材が除去されないおそれがあった。また、例えば特許文献2に記載の発明では保護部材の検知をセンサを用いて行っているため、カラー画像形成装置等、複数のプロセスカートリッジを使用する構成においてはセンサの数が増大しコスト面で不利となる不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−218983
【特許文献2】特開平8−314351
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の不都合に鑑みてなされたものであり、運搬時にプロセスカートリッジに保護部材を取り付け、現像手段が潜像担持体から離間した状態を維持する画像形成装置を想定している。そして、そのような画像形成装置において、運搬終了後に保護部材が除去されないまま画像形成装置が使用されることを、より簡単な構成でより確実に抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、潜像担持体と、前記潜像担持体に接離可能に設け
られ前記潜像担持体に接することで前記潜像担持体に形成された潜像を現像する現像手段と、を一体的に構成したプロセスカートリッジを装着可能であり、前記プロセスカートリッジを装着した状態で運搬される際に保護部材が取り付けられることで前記現像手段が前記潜像担持体から離間した状態を維持するとともに使用時には前記保護部材を取り外すように構成された画像形成装置であって、
前記プロセスカートリッジが画像形成装置に装着されていることを検知するカートリッジ検知手段と、
画像形成時または、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作時に前記プロセスカートリッジに駆動力を付与する駆動手段と、
前記駆動手段が前記プロセスカートリッジに駆動力を付与した際の負荷を測定する負荷測定手段と、を備え、
前記カートリッジ検知手段による検知結果と、前記負荷測定手段により測定された前記負荷の値と基づいて、前記保護部材が画像形成装置に取り付けられているか否かを検知する保護部材検出手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成時または、現像手段と潜像担持体との接離動作時に、駆動手段がプロセスカートリッジに付与した駆動力の大きさに基づいて、保護部材が除去されているか否かを検知できる。その結果、通常の画像形成装置の動作に必要な機能を用いて保護部材の除去忘れを検知できるので、より簡単な構成でより確実に、保護部材が除去されないまま画像形成装置が使用されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の断面図。
【図2】本発明に係る現像ローラと感光ドラムの当接状態及び離間状態を示す図。
【図3】本発明に係る現像ローラの接離機構の概略図。
【図4】本発明に係る現像ローラの接離機構の斜視図。
【図5】本発明に係るプロセスカートリッジの画像形成装置への装着状態を示す図。
【図6】本発明に係る帯電ドラムの接離機構について説明するための図。
【図7】本発明に係る保護部材の装着状態を示す図。
【図8】従来の保護部材の除去忘れ防止ための構成例を示す図。
【図9】本発明に係る保護部材の除去忘れ防止のための構成を示す図。
【図10】本発明に係る現像ローラと感光ドラムの当接によるトルク変動を示す図。
【図11】本発明に係る接離機構の駆動におけるカム駆動源のトルク変動を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図面により詳しく説明する。
【実施例1】
【0012】
〔全体構成〕
図1に示す本実施例に係るカラーの画像形成装置は、画像形成装置本体100に対して挿抜自在なプロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dが装着可能となっている。これら4個のプロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dは同一構造であるが、異なる色、すなわち、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(BK)のトナーによる画像を形成する点で相違している。プロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dは、潜像担持体である感光ドラム1a、1b、1c、1dを有するドラムユニット4a、4b、4c、4dと、現像手段である現像ユニット5a、5b、5c、5dによって構成されている。このうちドラムユニット4a、4b、4c、4dは、それぞれ感光ドラム1a、1b、1c、1dの他、帯電ローラ2a、2b、2c、2dと、ドラムクリーニングブレード8a、8b、8c、8dと、図示しない廃トナー容器と、を有している。
【0013】
また現像ユニット5a、5b、5c、5dは、現像ローラ50a、50b、50c、50dと、現像剤塗布ローラ51a、51b、51c、51dを有している。そして、プロセスカートリッジ7a、7b、7c、7dの下方には2つのスキャナユニット3a、3bが配置されている。スキャナユニット3aは感光ドラム1a、1bに対して、スキャナユニット3bは感光ドラム1c、1dに対して画像信号に基づく露光を行う。感光ドラム1a、1b、1c、1dは、帯電ローラ2a、2b、2c、2dによって所定の負極性の電位に帯電された後、スキャナユニット3a、3bによる露光でそれぞれ静電潜像が形成される。
【0014】
この静電潜像には現像ユニット5a、5b、5c、5dによって反転現像されて負極性のトナーが付着され、感光ドラム1a、1b、1c、1dにはそれぞれY、M、C、BKのトナー像が形成される。次に中間転写ベルトユニット12は、中間転写ベルト12eが駆動ローラ12f、2次転写対向ローラ12g、テンションローラ12hに張架されており、テンションローラ12hが矢印B方向に付勢されることで中間転写ベルト12eに張力を付与している。また、中間転写ベルトユニット12には、中間転写ベルト12eの内側に各感光ドラム1a、1b、1c、1dに対向して、1次転写ローラ12a、12b、12c、12dが配設されている。そして、不図示のバイアス印加装置により転写バイアス電圧を印加する構成となっている。
【0015】
ここで、感光ドラム1a、1b、1c、1dは矢印方向に回転し、同時に中間転写ベルト12は駆動ローラ12fの作動により矢印A方向に回転し、1次転写ローラ12a、12b、12c、12dには正極性のバイアスが印加される。このことにより、感光ドラム1a、1b、1c、1d上に形成されたトナー像は、感光ドラム1a上のトナー像から順次、中間転写ベルト12e上に1次転写され、4色のトナー像が重なった状態で2次転写部まで搬送される。
【0016】
一方、給搬送装置13は、転写材Pを収納する給紙カセット11内から転写材Pを給紙する給紙ローラ9と、給紙された転写材Pを搬送する搬送ローラ10とを備えている。そして、給搬送装置13から搬送された転写材Pはレジストローラ対17によって2次転写部に搬送される。
【0017】
2次転写部においては、2次転写ローラ16に正極性のバイアス電圧を印加することにより、搬送された転写材Pに、中間転写ベルト12上の4色のトナー像を2次転写する。トナー像転写後の転写材Pは、定着装置14に搬送され、定着ローラ141と加圧ローラ142とによって加熱、加圧されて表面にトナー像が定着される。定着された転写材Pは排紙ローラ対20によって排紙トレー21に排出される。
【0018】
トナー像転写後に、感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面に残ったトナーは、クリーニングブレード8a、8b、8c、8dによって除去される。また、転写材Pへの2次転写後に中間転写ベルト12上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置22によって除去される。中間転写ベルト12から除去されたトナーは、不図示の廃トナー搬送路(図中破線矢印の部分)を通過し、廃トナー回収容器23へと回収される。
【0019】
次に、図2には、ドラムユニット4と、ドラムユニット4における感光ドラム1に接離可能に設けた現像ユニット5とが一体的に構成されたプロセスカートリッジ7の詳細図を示す。図2(a)にドラムユニット4に設けられた感光ドラム1と現像ユニット5に設けられた現像ローラ50とが離間した状態を示す。現像ユニット5はドラムユニット4に対して現像ユニット支軸4pで回動自在に軸支されている。後述の図2(b)に示すように、現像ユニット5にはバネなどの弾性体からなる不図示の現像ローラ押圧部材により常に
ドラムユニット4の方向に押圧力Tが作用するようになっている。
【0020】
現像ユニット5は接離部5rに後述する接離機構6からの接離力FRが作用することで現像ローラ50と感光ドラム1とを押圧力Tに逆らって離間状態に維持する。図2(b)には、ドラムユニット4に設けられた感光ドラム1と現像ユニット5に設けられた現像ローラ50とが当接した状態を示す。図2(b)に示すように接離部5rに接離機構6からの接離力FRが作用しない状態においては、現像ローラ50が押圧力Tによって感光ドラム1と当接するようになっている。
【0021】
〔接離機構の詳細〕
図3及び図4に本実施例で採用している接離装置としての接離機構6の詳細を示す。接離機構6は、主に、接離レバー軸61aに回動自在に設けられた接離レバー61と、接離レバー61に作用して接離レバー61を回動させる接離カム62と、接離カム62を回動する駆動手段としてのカム駆動源63とを含んで構成される。そして、このカム駆動源63を制御するカム制御装置64をも含んでいる。カム制御装置64は接離カム62の位相を検知する位相検知装置(不図示)を有し、位相検知装置の検知結果に基づいて、現像ローラ50が感光ドラム1に対して当接位置または離間位置となるようにカム駆動源63によって接離カム62を制御する。
【0022】
接離カム62は軸62aに軸支され、接離カム面62cで接離レバー61の接離カムフォロアー61rに作用し接離レバー61を回動させる。図4に示すように接離レバー61は現像ユニット接離部材61pを介して接離部5rに接離力FRを作用させ、現像ユニット5は現像ユニット支軸4p中心に回動することで現像ローラ50を感光ドラム1より離間させる構成となっている。
【0023】
〔プロセスカートリッジ装着時の接離動作〕
現像ユニット5には常に現像ローラ50を感光ドラム1に当接する押圧力Tが作用するため、プロセスカートリッジ7を本体から抜くと現像ローラ50は感光ドラム1に当接状態となる。図5に示すようにプロセスカートリッジ7(7a、7b、7c、7d)には装着ガイド4gが設けられている。プロセスカートリッジ7(7a、7b、7c、7d)を装着する際には、装着ガイド4gがガイドレール101(101a、101b、101c、101d(101dは不図示))に沿って図5中の矢印方向へ移動する構成となっている。プロセスカートリッジ7の挿抜動作中において接離部5rは図3に示す装着ガイド60の装着カム面60aに作用し、現像ユニット5を感光ドラム1から離間する方向に回転させる。
【0024】
〔帯電ドラムの接離機構〕
図6には、潜像形成に係るプロセスを実行するプロセス手段の一例である帯電ドラム2を感光ドラム1に対して接離させる帯電ドラム接離機構40の一例を示す。プロセスカートリッジ7の出荷時には帯電ドラム2は離間保持部材41により感光ドラム1と離間した状態に保持される。離間保持部材41は例えばフック41aがドラムユニット4に設けた係合部材(不図示)に係合することで離間状態が保持される。この離間保持部材41及びフック41aは本実施例において保持手段を構成する。そして、現像ユニット5の当接動作時に、現像ユニット5は現像ユニット支軸4p中心に回動し、例えば、回動動作と連動する解除部材52を矢印方向に回動させる。解除部材52は離間保持部材41に作用し、フック41aと係合部材との係合を解除することにより、感光ドラム1に対する帯電ドラム2の離間状態が解除される。その結果、帯電ドラム2は不図示の付勢バネの作用によって感光ドラム1に当接する。
【0025】
〔保護部材の除去〕
画像形成装置の本体100の出荷時は、接離レバー61の作用により現像ローラ50は感光ドラム1に対して離間した状態で維持される。このため、帯電ドラム2も感光ドラム1に対して離間した状態に保持される。しかしながら、画像形成装置の本体100の運搬中に、接離力FRの反力が接離レバー61を介して接離カム62に作用した状態が続くと、振動により接離カム62が回転する場合がある。そうすると、画像形成装置の本体100の運搬中に、現像ローラ50が感光ドラム1に当接した状態となることがある。
【0026】
さらに、画像形成装置の本体100の運搬中においては、プロセスカートリッジ7には自重の数十倍の負荷がかかることがあるため、プロセスカートリッジ7は運搬中に本体内部で動くことがある。そうすると、プロセスカートリッジ7と接離レバー61の位置関係によって、接離力FRが接離部5rに作用しない状態が生じるおそれがある。その結果、画像形成装置の本体100の運搬中において、現像ローラ50が感光ドラム1に当接し、さらに帯電ドラム2の感光ドラム1に対する離間状態を解除してしまう可能性もある。
【0027】
通常、自重の数十倍の負荷がかかってもプロセスカートリッジ7を動かないようにするのは困難である。従って、画像処理装置の本体100に過剰な負荷がかかった場合でも、現像ローラ50と感光ドラム1とが離間した状態を維持できるように、プロセスカートリッジ7に対して取り外し可能な保護部材30を設けることが考えられる。保護部材30(30a、30b、30c、30d)は例えば図7に示すような、現像ユニット5とドラムユニット4間に挟むことによって現像ローラ50と感光ドラム1の距離を一定以上に保つ部材である。また、これにより、感光ドラム1と帯電ドラム2との離間が解除されることを防止できる。
【0028】
保護部材30が装着された状態においては、現像ローラ50を感光ドラム1に当接することはできないため、運搬終了後において画像形成装置を使用する際に保護部材30を除去する必要がある。画像形成装置の使用時(例えば、画像形成時)に保護部材30を除去し忘れた場合、画像が出力されない等の不都合が生じるおそれがある。保護部材30の除去し忘れを防止するために、図8に示すように保護部材30に設けたテープ300と警告タグ301を、画像形成装置の本体100の前ドア102が閉まった状態でもユーザに判り易い位置に配置することが考えられる。ユーザに分かり易い位置としては、例えば本体100の上面などが挙げられる。また前ドア102を開く動作と連動して保護部材30を除去するようにテープ300を前ドア102に仮固定することも考えられる。
【0029】
しかしながら、上記のような構成を導入したとしても、ユーザが警告等を充分理解せずにテープ300のみを外し、保護部材30を除去しないまま、本体100を動作させるおそれがある。
【0030】
〔保護部材の除去忘れ検知の詳細〕
以上説明したように、保護部材30の除去作業をユーザが実施することとした場合、分かり易い手順、警告を設けたとしても、保護部材30の除去忘れを充分に防ぐことは困難であった。また、保護部材30が装着されていることを直接センサ等で検知する手法も考えられるが、カラー画像形成装置等複数のプロセスカートリッジ7を使用する構成においては多数のセンサ等を必要としコスト面の問題があった。
【0031】
そこで、本実施例においては、図9に示すように、保護部材30の除去し忘れを検知するために、プロセスカートリッジ7が画像形成装置の本体100に装着されていることを検知するカートリッジセンサ73を用いることとした。さらに、感光ドラム1を駆動する駆動源70の駆動トルクを測定するトルクセンサ72を用いることとした。ここで、駆動源70は本実施例において駆動手段に相当する。また、トルクセンサ72は負荷測定手段に相当する。
【0032】
本実施例においては、本体100の電源が投入されると、カートリッジセンサ73により、プロセスカートリッジ7が本体に装着されているか否かが検知される。カートリッジセンサ73は、光出射部73aと受光部73bとを有し、光出射部73aから出射した光が受光部73bに入射されるか、装着ガイド4gで遮られるかによって光学的にプロセスカートリッジ7の有無を検知するものである。この他、カートリッジセンサとしては、例えばプロセスカートリッジ7を本体に装着した際に接点が通電するように設けられた電気式センサなどでもよい。なお、カートリッジセンサ73は、本実施例においてカートリッジ検知手段を構成する。
【0033】
ここで、プロセスカートリッジ7が本体100に装着されていると検知された場合は本体100の初期化が継続される。そして、駆動源70の回転がカップリング71を介して感光ドラム1に伝達され、感光ドラム1が回転駆動される。
【0034】
図10に駆動源70が感光ドラム1を回転駆動し、所定期間の経過後に現像ユニット5が駆動され、現像ローラ50と感光ドラム1とが当接した場合の、駆動源70のトルク波形を示す。横軸は時間で縦軸は駆動源70のトルクを示す。また、図10において実線で示す波形は標準的なプロセスカートリッジ7を装着したときのトルク波形である。また、破線で示すのは、ばらつきの中でトルクが略最小となるプロセスカートリッジ7を装着したときのトルク波形と、ばらつきの中でトルクが略最大となるプロセスカートリッジ7を装着したときのトルク波形である。本実施例におけるトルクセンサ72は、駆動源70において流れる電流値を磁界によって測定するセンサである。トルクセンサ72は、駆動源70において流れる電流値を基準抵抗の両端電圧を検知することで測定するものでもよい。また、駆動伝達するカップリング71の構成部品の弾性変形量をひずみゲージまたはエンコーダの位相差によって測定するものなど、他の原理に基づくセンサでも構わない。
【0035】
図10において、初期動作の開始時には、現像ローラ50は感光ドラム1に対し離間しているため、駆動源70にはカップリング71と感光ドラム1の回転負荷が作用する(領域t1、t2)。t1は駆動源70のオーバーシュート領域である。駆動源70のトルクの測定は駆動トルクが安定したt2領域で実施される。現像ローラ50の感光ドラム1への当接駆動は時刻tpにおいて実施される。現像ローラ50が感光ドラム1に当接すると感光ドラム1の回転負荷が増加する。この負荷変動の影響で、駆動源70は領域t3において一旦オーバーシュートする。本実施例では、駆動源70が負荷変動の後に安定してから現像ローラ50と感光ドラム1との当接後の駆動源70のトルクを測定する。現像ローラ50と感光ドラム1との当接駆動後の駆動源70のトルクが予め定められた閾値より大きい場合には、実際に現像ローラ50と感光ドラム1とが当接していると考えられるので、保護部材30が除去されていることが検知される。ここで、上記の閾値とは、上述の手法によって保護部材30が除去されているか否かが充分に精度良く検知できるトルクの値として、予め実験などによって求められたものである。
【0036】
ここで、プロセスカートリッジ7による負荷のばらつきが小さい場合には、上述のように現像ローラ50が感光ドラム1に当接する動作後(接離動作後)における駆動源70のトルクの絶対値を用いて保護部材30の有無を検知しても良い。これに対し、プロセスカートリッジ7による負荷のばらつきが大きい場合には、現像ローラ50の感光ドラム1への当接駆動前後におけるトルク変動量(ΔT0、ΔT1、ΔT2)により、保護部材30の有無を検知してもよい。この場合は、トルク変動量が予め定められた閾値より大きい場合には、実際に現像ローラ50と感光ドラム1とが当接していると考えられるので、保護部材30が除去されていることが検知される。ここで、閾値とは、保護部材30が除去されているか否かが充分に精度良く検知できるトルク変動量の値として、予め実験などによって求められたものである。
【0037】
本実施例においては、プロセスカートリッジ7の本体100への装着が検知された後、現像ローラ50の感光ドラム1への当接駆動の後に、トルクの増加が閾値以下である場合には、保護部材30が除去されていないと判断される。そして、ユーザに警告メッセージを表示して保護部材30を除去するように促す。
【0038】
なお、図9に示すように、カートリッジセンサ73とトルクセンサ72とは、制御装置200に電気的に接続されており、プロセスカートリッジ7が本体100に装着されているか否かの情報と、駆動源70のトルク情報は制御装置200に出力される。制御装置200においては、これらの情報より、保護部材30が除去されているか否かが検知される。従って、本実施例において制御装置200は保護部材検出手段を構成する。
【0039】
また、本実施例においては、上述のように現像ローラ50の感光ドラム1への当接動作(当接駆動)後における駆動源70のトルクの絶対値または、現像ローラ50の感光ドラム1への当接駆動前後におけるトルク変動量を用いて、保護部材30の有無を検知した。これに対し、現像ローラ50の感光ドラム1からの離間動作(離間駆動)後における駆動源70のトルクの絶対値または、現像ローラ50の感光ドラム1からの離間駆動前後におけるトルク変動量を用いて、保護部材30の有無を検知してもよい。すなわち、本発明においては、現像ローラ50と感光ドラム1との接離動作(接離駆動)後における駆動源70のトルクの絶対値または、現像ローラ50と感光ドラム1との接離駆動前後におけるトルク変動量を用いて、保護部材30の有無を検知するとよい。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の実施例2について説明する。ここでは、実施例2において実施例1と相違する点についてのみ説明する。なお、特に示さない限り、本実施例における画像形成装置のハード構成は、実施例1において説明したものと同等である。
【0041】
本実施例においては、現像ローラ50と感光ドラム1との接離動作を行う接離機構6におけるカム駆動源63のトルクを測定することにより保護部材30の除去し忘れを検知する。ここで、保護部材30が除去されていない状態で現像ユニット5を感光ドラム1から離間させた場合、接離レバー61には接離力FR(の反力)が作用しない。従って、カム駆動源63には接離機構6を無負荷で駆動させるために必要な作動抵抗以外の負荷は作用しない。現像ユニット5の押圧力Tはプロセスカートリッジ7に設けられたばね等で決まるので、接離力FRは安定した値である。従って、現像ローラ50を感光ドラム1から離間させた際のカム駆動源63のトルクを測定することで、精度良く、保護部材30の除去し忘れを検知することができる。
【0042】
図11には、現像ローラ50の感光ドラム1からの離間動作が行われた際の、カム駆動源63のトルク波形を示す。図11においてt4はカム駆動源63のトルク波形のオーバーシュート期間である。本実施例においても本体100の初期動作でプロセスカートリッジ7が装着されていることを検知し、現像ローラ5を一旦感光ドラム1から離間させる際のカム駆動源63のトルクが予め定められた閾値以下の場合には保護部材30が除去されていないと判断される。ここで、上記の閾値とは、本実施例に係る手法によって保護部材30が除去されているか否かが充分に精度良く検知できるトルクの値として、予め実験などによって求められたものである。そして、保護部材30が除去されていないと判断された場合には、ユーザに警告メッセージを表示しユーザに保護部材30を除去するように促す。
【0043】
なお、本実施例においては、図4に示したカム制御装置64において、カム駆動源63のトルクを測定可能となっている。また、カム制御装置64において測定されたカム駆動
言3のトルクの値は、制御装置200に送られ、制御装置200において閾値と比較され、保護部材30が除去されているか否かが検知される。従って、ホン実施例においても、制御装置200は、保護部材検出手段を構成する。
【0044】
また、本実施例においては、図3及び図4に示した接離機構6の構成上、現像ローラ50の感光ドラム1からの離間動作が行われた際の、カム駆動源63のトルクに基づいて、保護部材30が除去されているか否かの検知を行なった。しかしながら、接離機構の構成によっては、現像ローラ50の感光ドラム1への当接動作時にカム駆動源63にトルクが要求される場合もある。このような場合には、現像ローラ50の感光ドラム1への当接動作が行われた際の、カム駆動源63のトルクに基づいて、保護部材30が除去されているか否かの検知を行なってもよいことは当然である。すなわち、本発明においては接離動作時においてカム駆動源63がプロセスカートリッジ7に駆動力を付与する際の負荷に基づいて、保護部材30が除去されているか否かの検知を行う。
【符号の説明】
【0045】
1(1a、1b、1c、1d)‥‥感光ドラム
4(4a、4b、4c、4d)‥‥ドラムユニット
4g‥‥装着ガイド
5(5a、5b、5c、5d)‥‥現像ユニット
5r‥‥接離部
6‥‥接離機構
7(7a、7b、7c、7d)‥‥プロセスカートリッジ
30‥‥保護部材
50(50a、50b、50c、50d)‥‥現像ローラ
63‥‥カム駆動源
64‥‥制御装置
70‥‥駆動源
72‥‥トルクセンサ
73‥‥カートリッジセンサ
100‥‥画像形成装置本体
T‥‥押圧力
FR‥‥接離力
ΔT‥‥現像ローラ当接時と離間時の感光ドラム駆動トルクの差
tp‥‥現像ローラ当接動作開始点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、前記潜像担持体に接離可能に設けられ前記潜像担持体に接することで前記潜像担持体に形成された潜像を現像する現像手段と、を一体的に構成したプロセスカートリッジを装着可能であり、前記プロセスカートリッジを装着した状態で運搬される際に保護部材が取り付けられることで前記現像手段が前記潜像担持体から離間した状態を維持するとともに使用時には前記保護部材を取り外すように構成された画像形成装置であって、
前記プロセスカートリッジが画像形成装置に装着されていることを検知するカートリッジ検知手段と、
画像形成時または、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作時に前記プロセスカートリッジに駆動力を付与する駆動手段と、
前記駆動手段が前記プロセスカートリッジに駆動力を付与した際の負荷を測定する負荷測定手段と、を備え、
前記カートリッジ検知手段による検知結果と、前記負荷測定手段により測定された前記負荷の値と基づいて、前記保護部材が取り付けられているか否かを検知する保護部材検出手段をさらに備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記プロセスカートリッジは、
前記潜像担持体に接離可能に設けられ前記潜像担持体に接することで潜像形成に係るプロセスを実行するプロセス手段と、
前記プロセス手段を前記潜像担持体から離間した状態で保持する保持手段と、を有し、
前記保持手段は、前記現像手段が前記潜像担持体に当接するときに前記プロセス手段が前記潜像担持体から離間した状態の保持を解除することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、画像形成時に前記潜像担持体を回転駆動する駆動源であり、
前記保護部材検出手段は、
前記カートリッジ検知手段が前記プロセスカートリッジが画像形成装置に装着されていることを検知し、かつ、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作後における、前記負荷測定手段によって測定された負荷が所定の閾値以下であることをもって、前記保護部材が取り付けられていることを検知することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、画像形成時に前記潜像担持体を回転駆動する駆動源であり、
前記保護部材検出手段は、
前記カートリッジ検知手段が前記プロセスカートリッジが画像形成装置に装着されていることを検知し、かつ、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作の前後における、前記負荷測定手段によって測定された負荷の差が所定の閾値以下であることをもって、前記保護部材が取り付けられていることを検知することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記プロセスカートリッジは、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作を行なう接離装置をさらに有し、
前記駆動手段は、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作時に前記接離装置を駆動する駆動源であり、
前記保護部材検出手段は、
前記カートリッジ検知手段が前記プロセスカートリッジが画像形成装置に装着されていることを検知し、かつ、前記現像手段と前記潜像担持体との接離動作時における、前記負荷測定手段によって測定された負荷が所定の閾値以下であることをもって、前記保護部材
が取り付けられていることを検知することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−197503(P2010−197503A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39805(P2009−39805)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】