説明

画像形成装置

【課題】画像面の擦れを生じることなく、且つ、用紙の種類に拘わらずいずれの方向にも良好に案内できる分岐ガイド部材を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成部2で画像を形成された用紙は、搬送ローラ75とテンションローラ78間に掛け回された吸着ベルト80を有する分岐ガイド部材70によって搬送される。通常排紙モードの場合には分岐ガイド部材70は搬送ローラ75の軸を支点として上方に回動され、用紙は排紙トレイ7に排出される。水平排紙モードの場合にはそのまま排出される。両面排紙モードの場合には分岐ガイド部材70は下方に回動され、用紙は図示しない両面ユニット部へ案内される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、印刷機、これらのうち少なくとも1つを有する複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクを用いた画像形成装置(インクジェット印刷機)において、近年、印刷された用紙の排出に関しさまざまな方向に排出する必要性が望まれている。
装置の平面投影サイズを小さくするために用紙を胴内に排出したり、装置本体の下部に両面印刷のための機構を設置するレイアウトの関係上用紙を下側に搬送するといったように、印刷された用紙の搬送方向を変える手段を必要とされている。
この種の進路変更手段としては、従来より分岐爪をソレノイド等により駆動して複数の搬送路へ選択的に案内する分岐ガイド方式が知られている。
従来の分岐爪(ガイド板)に沿って用紙を搬送する分岐ガイド方式では、印刷面がガイド板の案内面に接触するケース(片面印刷後の用紙を下向きに案内する場合、両面印刷後の用紙を上向きに案内する場合など)ではガイド板と印刷面との摺擦により異常画像(こすれ画像)が発生する懸念があった。
異常画像を回避するために、インクが乾燥するまで待機したり、インク塗布量を抑えるといった制約を設けて対策が講じられているが、作業能率の低下、濃度低下による画質低下を招く。
【0003】
特許文献1には、分岐部位に切換ベルトを設け、ベルトを回転させながら進路を変更する構成が開示されている。
特許文献2には、その図22に示すように、装置本体の上方に排紙する排紙ガイド板を回動させて、水平方向にも排紙できるようにした構成が開示されている。
特許文献3には、用紙を吸着ベルトに静電的に吸着させて保持し、次工程(排紙部)へ受け渡す構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成では、搬送される用紙に対してガイド部材としての切換ベルトも移動するため、固定されたガイド部材に比べて画像面を摺る程度は低いといえるが、双方の速度が完全に一致することは困難であるとともにそれぞれ独立した可動部材同士の接触であるため、こすれ画像の懸念を払拭することはできない。
特許文献2記載の構成では、排紙ガイド板自体を回動させるものであるが、結果的に従前の分岐爪を回動させる方式と変わりが無い。
特許文献3記載のように、用紙を吸着ベルトに吸着させた状態で搬送すれば片面印刷後、両面印刷後、上向き案内、下向き案内のいずれの条件及び組み合わせにおいても画像面が擦れるという問題は生じない。
しかしながら、引用文献3に開示された構成は直線的な搬送路上での用紙のコシ力による曲率分離性を利用した受け渡し構成であり、用紙の種類が限定されるなど分岐ガイド部材としての応用には適さない。
【0005】
本発明は、画像面の擦れを生じることなく、且つ、用紙の種類に拘わらずいずれの方向にも良好に案内できる分岐ガイド部材を備えた画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、画像形成部で画像が記録された記録媒体を、複数の搬送路へ選択的に案内する分岐ガイド部材を有する画像形成装置において、前記分岐ガイド部材は記録媒体を吸着して搬送する無端状の吸着ベルトを備え、前記吸着ベルトに吸着機能を付与する吸着源と、前記分岐ガイド部材を駆動して前記吸着ベルトを回転させるガイド部材駆動手段と、記録媒体が前記吸着ベルトに吸着された後前記分岐ガイド部材を前記複数の搬送路の何れかに対応するように回動する回動手段とを有し、搬送先信号に基づいて前記ガイド部材駆動手段と前記回動手段とを制御することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、前記画像形成部の下流における記録媒体の搬送を担う搬送駆動源を有し、該搬送駆動源が前記ガイド部材駆動手段を兼ねることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記分岐ガイド部材を回動している間、前記吸着ベルトの搬送速度を変えることを特徴とする。
請求項4記載の発明では、請求項3記載の画像形成装置において、前記分岐ガイド部材を下向きに回動する場合、前記分岐ガイド部材と前記画像形成部との間において記録媒体にループ(たるみ)が形成されるように搬送速度を調整し、前記分岐ガイド部材の回動時、記録媒体の搬送は行わないことを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、前記分岐ガイド部材を上向きに回動する場合、予め前記分岐ガイド部材を回動させてから記録媒体を搬送することを特徴とする。
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記分岐ガイド部材は、前記吸着ベルトに吸着された記録媒体を分離するための分離爪を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像面の擦れによる異常画像を生じることなく、且つ、記録媒体の種類に拘わらずいずれの方向にも良好に案内でき、排紙口を複数有することによる多機能化を十分に活かすことができる。
また、分岐ガイド部材を高速で回動させる必要がなく、衝撃音を抑制(静穏化)することができるとともに、分岐ガイド部材による搬送速度アップの制限等を回避することができる。
また、分岐ガイド部材が分離爪を有していることにより、吸着ベルトからの記録媒体の分離を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】分岐ガイド部材を含む排紙ユニットの概要斜視図である。
【図3】分岐ガイド部材を含む排紙ユニットの駆動構成を示す図である。
【図4】分岐ガイド部材等の斜視図である。
【図5】分岐ガイド部材等の別な視点からの斜視図である。
【図6】分岐ガイド部材等の詳細な斜視図である。
【図7】分岐ガイド部材の回動における上限と下限を規制する構成を示す図である。
【図8】制御ブロック図である。
【図9】分岐ガイド部材の基本的な動作を示す図である。
【図10】水平排紙モードにおける分岐ガイド部材の動作を示す図である。
【図11】水平排紙モードにおける制御動作のフローチャートである。
【図12】排紙モード設定のフローチャートである。
【図13】通常排紙モードにおける分岐ガイド部材の動作を示す図である。
【図14】通常排紙モードにおける制御動作のフローチャートである。
【図15】両面排紙モードにおける分岐ガイド部材の動作を示す図である。
【図16】両面排紙モードにおける制御動作のフローチャートである。
【図17】両面排紙モードにおける分岐ガイド部材の回動に伴う不具合を示す図である。
【図18】通常排紙モードにおける分岐ガイド部材の回動に伴う不具合を示す図である。
【図19】通常排紙モードにおける不具合を解消する制御例のフローチャートである。
【図20】両面排紙モードにおける不具合を解消する制御例のフローチャートである。
【図21】両面排紙モードにおける不具合を解消する他の制御例のフローチャートである。
【図22】通常排紙モードにおける不具合を解消する他の制御例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット印刷装置の構成の概要を説明する。装置本体1の内部には、画像を形成するための画像形成部2、副走査搬送部3等が設けられている。装置本体1の底部側には給紙部4が設けられており、記録媒体としての用紙5を1枚ずつ分離して給紙するようになっている。給紙部4のさらに下方には、両面ユニット部50が設けられている。
副走査搬送部3によって用紙5を画像形成部2に対向する位置で間歇的に搬送しながら、画像形成部2によって用紙5に液滴を吐出して所要の画像を形成する。
通常排紙モードの場合には、画像形成後、排紙搬送部6を通じて装置本体1の上面に形成した排紙トレイ7上に用紙5を排紙する。なお、画像形成部2及び副走査搬送部3はユニット化してエンジンユニット100とし、装置本体1に対して着脱自在に装着している。
【0012】
画像形成部2で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として、装置本体1の上部で排紙トレイ7の上方には画像を読み取るための画像読取部(スキャナ部)11を備えている。画像読取部11は、照明光源13とミラー14とを含む走査光学系15と、ミラー16、17を含む走査光学系18とが移動して、コンタクトガラス12上に載置された原稿の画像の読み取りを行い、走査された原稿画像がレンズ19の後方に配置した画像読み取り素子(CCD)20で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理され、画像処理した印刷データを印刷することができる。コンタクトガラス12上には原稿を押えるための圧板10を備えている。
【0013】
画像形成部2は、キャリッジ23と、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクをそれぞれ吐出する液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24を有している。キャリッジ23を主走査方向に移動させ、副走査搬送部3によって用紙5を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。
キャリッジ23には各記録ヘッド24に所要の色の記録液を供給するためにサブタンク25を搭載している。符号26は上記各色のインクをそれぞれ収容したインクカートリッジを示している。インクカートリッジ26は装置本体1に対して着脱自在であり、各色のインクカートリッジ26から各色のサブタンク25に図示しないチューブを介してインク(記録液)を補充供給する。
【0014】
記録ヘッド24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のものなどを用いることができる。
【0015】
副走査搬送部3は、下方から給紙された用紙5を、略90度搬送方向を転換させて画像形成部2に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ32と、テンションローラである従動ローラ33間に架け渡した無端状の搬送ベルト31と、搬送ベルト31の表面を帯電させるために交番電圧であるACバイアス電圧が印加される帯電手段である帯電ローラ34と、搬送ベルト31を画像形成部2の対向する領域でガイドするプラテンガイド部材35と、用紙5を搬送ローラ32に対向する位置で搬送ベルト31側に押し付ける第1加圧コロ(入口加圧コロ)36と、搬送ローラ32と画像形成手段である記録ヘッド34との間で、用紙5をプラテンガイド部材35に対向する位置で搬送ベルト31側に押し付ける第2加圧コロ(先端加圧コロ)37と、画像形成部2によって画像が形成された用紙5を搬送ベルト31から分離するための分離爪39とを備えている。
搬送ベルト31は、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ32が回転されることで、用紙搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
【0016】
給紙部4は、装置本体1に抜き差し可能で、多数枚の用紙5を積載して収納する収容手段である給紙カセット41と、給紙カセット41内の用紙5を1枚ずつ分離して送り出すための給紙コロ42及びフリクションパッド43と、給紙される用紙5をレジストするレジストローラ対44とを有している。
また、給紙部4は、多数枚の用紙5を積載して収容するための手差しトレイ46及び手差しトレイ46から1枚ずつ用紙5を給紙するための手差しコロ47とを備えている。給紙コロ42、レジストローラ対44、手差しコロ47などの副走査搬送部3へ用紙5を給送するための部材は図示しない電磁クラッチを介して図示しない駆動手段によって回転駆動される。
【0017】
排紙搬送部6は、画像形成が行われた用紙5を搬送する搬送ローラ対61、62と、用紙5を排紙トレイ7へ送り出すための搬送ローラ対63及び排紙ローラ対65とを備え、搬送されてくる用紙5を反転させて(ここでは、Uターンさせて)搬送する反転排紙経路66を有している。排紙トレイ7は、前述したように、画像を形成する部分と画像読み取り装置11との間に形成される空間に臨み、胴内排紙を行うようにしている。
排紙ローラ対65の上流側近傍には、排紙センサ(以下「排紙SW」ともいう)74が設けられている。排紙センサ74は他の図においては適宜省略している。
【0018】
排紙搬送部6には、後述するように、吸着ベルトを有する分岐ガイド部材70が一体的に設けられている。排紙トレイ7へ排紙する通常排紙モードの場合には分岐ガイド部材70は用紙搬送方向上流側を支点として上方に回動される。
装置本体1の図中左側面に設けられた排紙トレイ72に排紙する水平排紙モードの場合には、分岐ガイド部材70は図1に示すように略水平位置に設定される。
両面モードの場合には、分岐ガイド部材70は下方に回動される。用紙は両面ユニット部50へ案内されて裏面(第2面)にも画像を形成された後、排紙トレイ7又は排紙トレイ72に排紙される。
両面ユニット部50は、両面入口ローラ対51の下流側に用紙搬送方向に沿って両面搬送ローラ対53a、53b、53c、53d、53eが配置され、これらのローラは、図示しない両面モータによって駆動される。
片面に画像が形成された用紙5は分岐ガイド部材70で下方に案内され、両面入口ローラ対51から両面搬送路52を経由して第1の両面待機部53に搬送される。
第2の両面待機部55には反転ローラ対55a、55bが配置され、第1の両面待機部53側から搬送されてきた用紙5をスイッチバックさせる。その後分岐板54が切り替えられて少なくとも両面出口ローラ対56まで、上記両面モータの反転駆動によって搬送される。
【0019】
排紙搬送部6について、図2及び図3に基づいて詳細に説明する。図2は装置背面側から見た排紙搬送部6の斜視図、図3は図2の模式的説明図である。
排紙搬送部6の側板161、162間には搬送ローラ軸164が回転自在に支持されている。図2において符号163は排紙ガイド部材を示している。
側板161には排紙モータ165が設けられており、排紙モータ165の回転を、プーリ166、タイミングベルト167及び一体のプーリ168A、168Bを介して搬送ローラ対61に、更にローラ168Bからタイミングベルト169及びプーリ170を介して搬送ローラ対62に、更にプーリ170からタイミングベルト171及びプーリ172を介して搬送ローラ対63に伝達し、更にプーリ172からプーリ173、174、175、176、搬送ローラ軸164に固定されたプーリ177及びタイミングベルト178を介して、排紙ローラ対65の駆動側のローラ65Aに伝達する、駆動力伝達機構を備えている。
図3において、符号182は、分岐ガイド部材70の用紙搬送方向上流側近傍に設けられた分岐センサ(以下「分岐SW」ともいう)を、181は、排紙ガイド部材163の開閉を検知するセンサを示している。排紙ガイド部材163は通常排紙モードでのジャム処理のために開閉可能となっている。
【0020】
図4及び図5に基づいて分岐ガイド部材70等を詳細に説明する。
分岐ガイド部材70は、搬送ローラ軸164と、該搬送ローラ軸164に固定されたローラ75と、搬送ローラ軸164に回転自在に設けられた一対のブラケット76、77と、ブラケット76、77の自由端側に回転自在に支持されたテンションローラ78と、ローラ75とテンションローラ78間に掛け回された吸着ベルト80と、ブラケット76、77のテンションローラ78の軸挿通穴に配置され、テンションローラ78を用紙搬送方向下流側へ向けて付勢する加圧部材(バネ)81とを有している。
分岐ガイド部材70の用紙搬送方向上流側下方には、吸着ベルト80を帯電して吸着機能(静電吸着力)を付与する吸着源としての帯電ローラ82が設けられている。帯電ローラ82は側板161、162間に支持されている。帯電ローラ82を吸着ベルト80に押し当て交番電圧であるACバイアス電圧を印加することで吸着ベルト80を帯電させる。
分岐ガイド部材70の用紙搬送方向下流側には、吸着ベルト80に吸着された用紙を分離するための分離爪83が吸着ベルト80に押し当てられて設けられている。分離爪83は側板161、162間に支持されている。
【0021】
ブラケット76にはトルクリミッタ付きのプラテンギヤ84が一体に固定(圧入)されており、プラテンギヤ84は、側板162に固定された回動駆動源としてのDCモータ85の回転軸に固定されたモータギヤ86に噛合っている。
プラテンギヤ84、DCモータ85及びモータギヤ86により、分岐ガイド部材70を回動する回動手段が構成されている。
ブラケット76、77は搬送ローラ軸164に対して回転自在であるが、DCモータ85が回転しない状態において、プラテンギヤ84とモータギヤ86との噛合いにより、分岐ガイド部材70は自重による回動を阻止される。
排紙モータ165の回転により、タイミングベルト178、プーリ177が回転し、搬送ローラ軸164の回転によって吸着ベルト80が用紙搬送方向に回転する。すなわち、本実施形態では、吸着ベルト80を回転させるガイド部材駆動手段を、排紙搬送部6の駆動源である排紙モータ165が兼ねる構成としている。
上記構成により、吸着ベルト80の回転とは独立して、DCモータ85の回転により分岐ガイド部材70を上下方向に回動させることができる。
【0022】
図6に示すように、分離爪83の中央部を切り欠いて形成した凹部83aには用紙有無検知センサ(以下、「紙有無SW」ともいう)92が設置されている。
ブラケット76の自由端側に対向する位置をもってフォトセンサ90が設けられており、分岐ガイド部材70の水平排紙モード(待機位置又はホームポジション)を検知するようになっている。
図7に示すように、ブラケット76の自由端にはフォトセンサ90で検知するための検知用凸部76aが形成されている。検知用凸部76aがフォトセンサ90により検知された位置が待機位置である。
分岐ガイド部材70の上方への回動はストッパAで規制され、下方への回動はストッパBで規制されるようになっている。分岐ガイド部材70のブラケットがストッパA、Bに当接すると、トルクリミッタ付きのプラテンギヤ84は空転する。
フォトセンサ90、ストッパA、Bは側板161、162の一方又は双方を介して支持されている。
【0023】
図8に示すように、分岐ガイド部材70の回動等の制御は、搬送制御手段としての制御手段88によってなされる。制御手段88は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を有するマイクロコンピュータである。
図9に基づいて分岐ガイド部材70の基本的な動作を説明する。画像形成部2で画像を形成するタイミングに合わせて排紙モータ165が回転され、同時に吸着ベルト80も回転する。用紙はその先端が吸着ベルト80の用紙搬送方向の中央部まで来るように搬送される。
用紙が吸着ベルト80上にある場合には分岐SW182がオンとなり、用紙があることを制御手段88は認識し、次の用紙が搬送されないように制御する。
その後の動作は排紙モードによって異なる。以下に各排紙モードにおける動作を説明する。
【0024】
[水平排紙モード]
図10に示すように、画像形成済みの用紙は、略水平に位置保持された分岐ガイド部材70の吸着ベルト80により吸着されながら略水平に搬送され、排紙ガイド部材163に形成された排紙口163a(他の図では省略)を通って排紙トレイ72に排出される。
その制御動作を図11に示す。制御手段88は両面モードか否かを判断し、両面モードでない場合には排紙モードを設定する。排紙モード設定において、水平排紙モードか通常排紙モードかを判断する。
本実施形態では、水平排紙モードにおいて、用紙が吸着ベルト80で搬送されて分岐SW182がオフした後、1秒後に排紙モータ165の回転がオフされ、排紙完了となる。
図12に示すように、排紙モード設定において、水平排紙モードでない場合には通常排紙モードが設定される。
【0025】
[通常排紙モード]
図13に示すように、制御手段88はDCモータ85を回転させて分岐ガイド部材70を上方向に回動させる。用紙は吸着ベルト80で搬送されながら排紙ガイド部材163で湾曲案内され、排紙トレイ7に排出される(胴内排紙)。
排紙センサ74がオフしたら排紙モータ165が停止され、排出完了となる。
その制御動作を図14に示す。要部を説明すると、DCモータ85は分岐SW182がオンしてから25ms(ミリセカンド)後に反時計回りに回転され、分岐ガイド部材70は上方に回動してブラケットがストッパAに当接して停止する。DCモータ85は回転を開始してから25ms後にオフされる。
その後、排紙センサ(排紙SW)74がオフしたらDCモータ85を時計回りに回転させて、分岐ガイド部材70を下方へ回動させる。ブラケットの検知用凸部76aがフォトセンサ(ホトセンサともいう)90で検知されたらDCモータ85を停止して待機位置(水平排紙モード位置)に設定する。
DCモータ85の停止後、2秒後に排紙モータ165がオフされて排出完了となる。
【0026】
[両面排紙モード]
図15に示すように、制御手段88はDCモータ85を回転させて分岐ガイド部材70を下方向に回動させる。
用紙が吸着ベルト80で搬送され、分岐SW182がオフした後、所定時間後に排紙モータ165が停止されて吸着ベルト80の回転が停止される。
その制御動作を図16に示す。要部を説明すると、分岐SW182がオンして25ms後、DCモータ85が時計回り方向に回転され、分岐ガイド部材70はそのブラケットがストッパBに当接して停止する。DCモータ85は回転を開始してから25ms後に停止される。
紙有無SW92がオフして用紙が分岐ガイド部材70を完全に抜けたことが確認されたらDCモータ85反時計回りに回転させ、フォトセンサ90で検知されたらDCモータ85を停止して待機位置(水平排紙モード位置)に設定する。両面印刷後は通常排紙モードに移行する。
【0027】
上記のように、分岐ガイド部材70は吸着ベルト80で用紙の先端部を吸着した状態で回動するが、このようにした場合、回動に伴う吸着ポイントの変位によって不具合が発生する懸念がある。これを図17、図18に基づいて説明する。
図17は、両面排紙モードにおいて分岐ガイド部材70を下方に回動する場合を示している。分岐ガイド部材70の下方への回動に伴い、用紙5の吸着ポイントP1はP2に移動する。よって、用紙5は距離L1分、分岐ガイド部材70の回動に伴って引き出される。
図18は、通常排紙モードにおいて、分岐ガイド部材70を上方に回動する場合を示している。分岐ガイド部材70の上方への回動に伴い、用紙5の吸着ポイントP1はP2に移動する。よって、用紙5は距離L2分、分岐ガイド部材70の回動に伴って押し戻される。
このような不具合を防止するための制御例(実施形態)を以下に説明する。
【0028】
図19に、通常排紙モードにおける上記押し戻し現象を抑制する制御例を示す。本実施形態では、分岐ガイド部材70の回動中に吸着ベルト80の搬送速度を変えることを特徴としている。
要部を説明すると、分岐SW182がオンしてから25ms後(すなわち、用紙5の先端部を所定長さ吸着後)にDCモータ85を反時計回りに回転させて分岐ガイド部材70を上方に回動させる。これと同じタイミングで排紙モータ165の回転速度を高速に切り換える。
回転を開始してからDCモータ85を25ms後に停止し、これと同じタイミングで排紙モータ165の回転速度を定常駆動に戻す。
このように制御することで、用紙5の吸着ポイントは分岐ガイド部材70の回動に伴うずれ(押し戻し)を生じることなく吸着ベルト80により搬送される。
【0029】
図20に、両面排紙モードにおける上記引き出し現象を抑制する制御例を示す。本実施形態では、上記と同様に分岐ガイド部材70の回動中に吸着ベルト80の搬送速度を変えることを特徴としている。
要部を説明すると、分岐SW182がオンしてから25ms後(すなわち、用紙5の先端部を所定長さ吸着後)にDCモータ85を時計回りに回転させて分岐ガイド部材70を下方に回動させる。これと同じタイミングで排紙モータ165の回転速度を低速に切り換える。
回転を開始してからDCモータ85を25ms後に停止し、これと同じタイミングで排紙モータ165の回転速度を定常駆動に戻す。紙有無SW92がオフして用紙が分岐ガイド部材70を完全に抜けたことが確認されたらDCモータ85反時計回りに回転させる。
このように制御することで、用紙5の吸着ポイントは分岐ガイド部材70の回動に伴うずれ(引き出し)を生じることなく吸着ベルト80により搬送される。
【0030】
図21に、両面排紙モードにおける上記引き出し現象を抑制する他の制御例を示す。
本実施形態では、分岐ガイド部材70と画像形成部2との間において用紙にループが形成されるように搬送速度を調整し、分岐ガイド部材70の回動時、用紙の搬送は行わないことを特徴とする。
図21の要部を説明する。なお、本実施形態では「給紙」の後に「画像形成モータON」という表示があるが、本実施形態特有の制御ではなく、上記実施形態ではこの表示を省略している。
分岐SW182がオンしてから25ms後に排紙モータ165を停止する。このとき、用紙の先端部は吸着ベルト80上に進入して吸着されているが、吸着ベルト80の回転も停止している。
排紙モータ165の停止から10ms後に画像形成モータ(=副走査モータ131)を停止する。これにより、用紙は先端部が吸着ベルト80に吸着されて止まった状態で送られるため、分岐ガイド部材70と画像形成部2との間において用紙にはループ(たるみ)が形成される。
【0031】
画像形成モータの停止後、DCモータ85を時計回りに回転させ、分岐ガイド部材70を下方に回動させる。この場合、上記「引き出し現象」を相殺する程度のループが予め形成されているので、分岐ガイド部材70の下方への回動に伴う引き出し現象は生じない。
DCモータ85は回転速度を遅くして回転され、回転を開始してから500ms後にオフされる。その後、排紙モータ165と画像形成モータがオンされて搬送が再開される。
紙有無SW92がオフして用紙が分岐ガイド部材70を完全に抜けたことが確認されたらDCモータ85反時計回りに回転させる。
分岐ガイド部材70が回動している間は用紙の搬送は行わないので、DCモータ85の回転速度(分岐ガイド部材70の回動速度)を遅くすることができる。これにより、分岐ガイド部材70のブラケットがストッパBに勢いよく当接することによる衝撃音を緩和することができる。勿論、DCモータ85の回転速度を遅くせずに、ストッパB側にショックアブソーバ機能を付与してもよい。例えば軸であるストッパBの表面又は分岐ガイド部材70のブラケットの下面にゴム等の弾性材による表層を設けることができる。
【0032】
図22に、通常排紙モードにおける上記押し戻し現象を抑制する他の制御例を示す。
本実施形態では、分岐ガイド部材70を上向きに回動する場合、予め分岐ガイド部材70を回動させてから用紙を搬送することを特徴とする。
図22の要部を説明する。排紙モータ165がオンした後、DCモータ85を反時計回りに低速で回転させて分岐ガイド部材70を上方に回動させ、回転開始から500ms後に回転を停止する。このとき、用紙の先端部は吸着ベルト80に到達していない。
DCモータ85の低速回転により、分岐ガイド部材70のブラケットがストッパAに勢いよく当接することによる衝撃音を緩和することができる。勿論、DCモータ85の回転速度を遅くせずに、ストッパA側にショックアブソーバ機能を付与してもよい。例えば軸であるストッパAの表面又は分岐ガイド部材70のブラケットの上面にゴム等の弾性材による表層を設けることができる。
【0033】
吸着ベルト80が用紙を吸着していない状態で分岐ガイド部材70の上方への回動が完了後、用紙が分岐ガイド部材70の吸着ベルト80で搬送され、紙有無SW92がオフして用紙が分岐ガイド部材70を完全に抜けたことが確認されたら、DCモータ85時計回りに回転させて分岐ガイド部材70を下方に回動させる。
【0034】
上記実施形態では、DCモータ85の回転開始タイミング等において特定の数値を示したが、これらはあくまでも一例であり、実験的にその最適値を設定することができる。
上記実施形態では用紙を吸着ベルト80に静電吸着力で吸着する構成を例示したが、エアーの負圧によって吸着する構成としてもよい。
上記実施形態では、画像形成装置としてインクジェット印刷機を例示したが、電子写真方式の画像形成装置においても同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
2 画像形成部
5 記録媒体としての用紙
70 分岐ガイド部材
80 吸着ベルト
82 吸着源としての帯電ローラ
83 分離爪
85 回動手段としてのDCモータ
88 搬送制御手段としての制御手段
165 ガイド部材駆動手段としての排紙モータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特許第3257712号公報
【特許文献2】特開2008−120529号公報
【特許文献3】特開2006−232500号公報
【特許文献4】特開2005−263341号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部で画像が記録された記録媒体を、複数の搬送路へ選択的に案内する分岐ガイド部材を有する画像形成装置において、
前記分岐ガイド部材は記録媒体を吸着して搬送する無端状の吸着ベルトを備え、
前記吸着ベルトに吸着機能を付与する吸着源と、前記分岐ガイド部材を駆動して前記吸着ベルトを回転させるガイド部材駆動手段と、記録媒体が前記吸着ベルトに吸着された後前記分岐ガイド部材を前記複数の搬送路の何れかに対応するように回動する回動手段とを有し、搬送先信号に基づいて前記ガイド部材駆動手段と前記回動手段とを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記画像形成部の下流における記録媒体の搬送を担う搬送駆動源を有し、該搬送駆動源が前記ガイド部材駆動手段を兼ねることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記分岐ガイド部材を回動している間、前記吸着ベルトの搬送速度を変えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置において、
前記分岐ガイド部材を下向きに回動する場合、前記分岐ガイド部材と前記画像形成部との間において記録媒体にループが形成されるように搬送速度を調整し、前記分岐ガイド部材の回動時、記録媒体の搬送は行わないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記分岐ガイド部材を上向きに回動する場合、予め前記分岐ガイド部材を回動させてから記録媒体を搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記分岐ガイド部材は、前記吸着ベルトに吸着された記録媒体を分離するための分離爪を有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−215377(P2010−215377A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65195(P2009−65195)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】