説明

画像形成装置

【課題】直交座標系上の整数座標点で定められた画素階調値の画像データを用いてディスク状の記録媒体に印字する際に生じる画素データの位置ずれを解消する。
【解決手段】印刷用画像データ変換部400は、入力画像データである直交座標系の画素階調値を、印刷用画像データである極座標系の画素階調値に変換する極座標系ラスターデータ生成部440を備える。極座標系ラスターデータ生成部は、直交座標系上において極座標系の座標点に対応する実数座標点を囲む直近の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて対応する実数座標点の画素階調値を補間し、極座標系ラスターデータの画素階調値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、ディスク状のメディアの面に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像、映像、音楽、文書等の電子データを記録する記録媒体として、CD,CD−R,CD−RW,DVD,DVD−RAM等の種々のディスク状のメディアが知られている。これらのディスク状のメディアに様々なデータを書き込んで記録する際、そのディスク状のメディアに記録した内容を目視で確認することができるように、記録内容に関するタイトル等の情報をディスク状のメディアの面に記入する場合がある。
【0003】
この場合、ディスク状のメディアの表面に筆記具を用いて直接書き込むことが一般的であるが、プリンタを用いて別途用意したラベル紙に記録情報を印刷し、このラベル紙をディスク状のメディアの表面に貼り付けることも行われている。
【0004】
このように、ディスク状のメディアの表面に直接書き込む場合には、筆記具を用いることから、メディアの記録面を損傷させるおそれがあり、また、プリンタを用いてラベル紙に印刷を行う場合には、プリンタが別途必要とするという問題がある。
【0005】
そこで、レーザ光を利用してレーベル面に画像を形成することによって、筆記具による書き込みやプリンタによる印刷を不要にする光ディスク装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この文献のプリンタでは、光ディスク装置のターンテーブルに、レーベル面側から見える箇所に、感光材、感熱材等による可視光特性変化層を形成した光ディスクを、そのレーベル面を光ピックアップに向けてセットする。セットした後、光ディスクと光ピックアップとを光ディスクの面に沿って相対移動させ、この移動に同期して光ピックアップから出射するレーザ光のパワーを、画像形成しようとする文字、絵等の画像データに応じて変調して可視光特性変化層に照射する。このレーザ光の照射により、可視光特性変化層に可視光特性を変化させて、画像を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−203321号公報
【特許文献2】特開2003−257153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記文献で示されるようなプリンタは、光ディスクと光ピックアップとを光ディスクの面に沿って相対移動させながら1画素ずつ螺旋状または同心円状に印刷していく点順次走査によって、光ディスクの面に画像を形成しているため、画像形成に長時間を要するという問題がある。
【0009】
上記のようなディスク状の記録媒体の記録面に対して、ディスク状の記録媒体の中心部から放射状に記録ヘッドを配置し、ライン状の記録を記録媒体の回転に同期して順次行う記録方法も知られている。
【0010】
通常、元画像データの画素階調値は直交座標系上の座標点に定められている。この座標点は直交座標系上において整数で表される座標位置に定められる。以下、この座標点を整数座標点として説明する。
【0011】
一方、ディスク状の記録媒体の中心部から放射状に記録ヘッドを配置し、ライン状の記録を記録媒体の回転に同期して順次行う場合には、直交座標系上の座標点をそのまま用いて印刷するとディスク表面に印字される点に位置ずれが生じ、印刷される画質が低下する恐れがある。これは、極座標系の座標点を直交座標系で表すとその座標位置は実数となり、直交座標系における整数で表される座標位置と必ずしも一致しないため、直交座標系上において格子状に配列される座標点と、回転する記録ヘッドの印刷ドットの位置とは必ずしも一致しないからである。
【0012】
また、回転中心から外周方向に印字素子を配列してなる印字ヘッドを用いて、回転するディスク表面に印刷を行う場合には、半径方向に濃淡が生じるという問題、塗りつぶしの不完全箇所が生じるという問題、印字ラインに抜けや重なりが生じるという問題がある。
【0013】
図29はこのディスク状記録媒体への印刷における印刷上の問題を説明するための図である。図29において、外周方向に向かって配列した列状の発光素子により印刷を行うと、印字ドットの重なり部分がディスクの内周側でより多く発生するため、一様な画像の画像データの場合であっても、外周側から内周側に向かって濃くなる濃淡(グラデーション)101が発生することになる。
【0014】
また、印刷されるドット形状によっては、印刷されずに残る抜け部分あるいは重ねて印刷される重複印刷部分等の塗りつぶし部分に不完全箇所102が生じる。この不完全箇所102は、ディスク上では円状の筋として表れる。
【0015】
また、列状の発光素子に印刷動作のタイミングを時間管理により行う場合、ディスクの回転中に回転むらが生じると、印字ラインに抜け103あるいは印字ラインの重なりが生じることになる。
【0016】
このような、ディスク状の記録媒体に生じる、外周側から内周側に向かう濃淡(グラデーション)の問題を解消するために、ディスク状の記録媒体表面に印刷する図形や文字データを間引きし、外周部と内周部の濃度を補正して均質化する技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0017】
しかし、このデータを間引く画像データ処理では、例えば隣接する3つのドットに重なりが生じたときにはじめて中間のドットを間引くことができる。そのため、印刷しようとする画像データによっては、必ずしも画像データを間引くことができるとは限らないため、内周側のドットの重なりを完全に除去することができないという問題がある。
【0018】
したがって、ディスク状の記録媒体の記録面に対して、ディスク状の記録媒体の中心部から放射状に配置した記録ヘッドを用いてライン状の記録を記録媒体の回転に同期して印字する場合には、ディスク状の記録媒体に印字する際に特有な上記課題を解決する必要がある。
【0019】
そこで、本発明は上記したディスク状の記録媒体に印字する際に特有な課題を解決することを目的とする。
【0020】
本発明は、回転中心から外周方向に配列してなる印字ヘッドを用いて回転するディスク表面に印刷を行う場合に生じる問題を解消することを目的とし、半径方向の濃淡の問題、塗りつぶし部分の不完全箇所の問題、印字ラインの抜けや重なりの問題を解消することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、直交座標系上の整数座標点で定められた画素階調値の画像データを用いてディスク状の記録媒体に印字する際に生じる画素データの位置ずれを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、第1に、回転の周方向で隣接する画素について、画素の一部を重ねて印刷することによって、不完全な塗りつぶし部分の発生や印字ラインの抜けや重なりを解消し、また、各画素の印刷濃度を調整することで半径方向の濃淡の発生を解消する。
【0023】
本発明の画像形成装置は、光学ユニットにより照射される光によりディスク状のメディアの表面を画素ごとに露光して画像を形成する画像形成装置であり、この光学ユニットはメディアの回転の半径方向に配列される複数の発光部を有する。
【0024】
本発明の発光部は、メディア上の全ての画素について、回転の周方向で隣接する画素の一部を重ねて露光する。
【0025】
光学ユニットは、メディアの回転の半径方向に配列される複数の発光部によって、一回の光照射によって、メディアにおいて半径方向に並ぶ一ライン分の画素を露光する。この露光をメディアの回転と同期させて繰り返すことにより、メディアのレーベル面に画像を形成する。
【0026】
このメディアの回転と同期して行う露光において、回転の周方向で隣接する画素の一部を重ねて露光することによって、隣接する画素間に露光されない箇所が発生しないようにし、これによって不完全な塗りつぶし部分の発生を解消する。
【0027】
発光部は、メディアを回転させる回転駆動と同期して露光し、この露光は、露光間隔の間に移動するメディアの最外周の周方向の移動量を、露光により形成される画素の周方向の幅よりも小さくすることで、回転の周方向で隣接する画素の一部を重ねて露光する。なお、発光部は、自発発光を行うものに限らず、光源からの光を、例えば、液晶シャッタのように遮断/透過あるいは反射させるものも含む。
【0028】
また、本発明の画像形成装置は、一様な濃度の画像を形成しようとしたとき、同一画素上に重ねて露光されることによって半径方向に濃淡(グラデーション)が発生するという問題を軽減するために、光学ユニットが備える複数の発光部は、メディアの各露光位置において、半径方向の内周側の画素を露光する光量を、半径方向の外周側の画素を露光する光量より少量とする。これによって、露光の重なりが多い半径方向の内周側の画素について、各露光で形成される濃度を小さくして重畳による濃淡の差を軽減する。
【0029】
本発明の発光部は、半径方向の内周側の露光量を少なくする複数の態様を備える。
【0030】
半径方向の内周側の露光量を少なくする第1の態様は駆動電流によるものであり、複数の発光部は、メディアの各露光位置において、半径方向の内周側の画素を露光する発光部の駆動電流を、半径方向の外周側の画素を露光する発光部の駆動電流より小電流とする。これによって、半径方向の内周側の露光量を外周側の露光量よりも少なくする。
【0031】
また、半径方向の内周側の露光量を少なくする第2の態様は露光時間によるものであり、複数の発光部は、メディアの各露光位置において、半径方向の内周側の画素を露光する露光時間を、半径方向の外周側の画素を露光する露光時間より短時間とする。これによって、半径方向の内周側の露光量を外周側の露光量よりも少なくする。
【0032】
また、半径方向の内周側の露光量を少なくする第3の態様は単位時間当たりの露光回数によるものであり、複数の発光部は、メディアの各露光位置において、半径方向の内周側の画素を露光する単位時間当たりの露光回数を、半径方向の外周側の画素を露光する単位時間当たりの露光回数より少ない回数とする。これによって、半径方向の内周側の露光量を外周側の露光量よりも少なくする。
【0033】
また、本発明の光学ユニットは、複数の発光部を複数のブロックに分割する構成とし、このブロックを単位として露光を行う。光学ユニットは、複数の発光部を、一つ又は半径方向に隣接する複数の発光部によって複数のブロックに分割し、各ブロック内を単位として駆動し、半径方向の内周側のブロック内の発光部が発光する光量を、半径方向の外周側のブロック内の発光部が発光する光量より少なくする。それぞれのブロック内にふくまれる発光部は、同一の駆動条件で駆動することも、あるいは異なる駆動条件で駆動することもできる。また、光学ユニットに含まれる全ブロックを同時に駆動する他、光学ユニットに含まれる全ブロックの中から選択してブロックを駆動してもよい。
【0034】
本発明は、このブロックに分割する構成として2つの形態を備える。第1の形態は、各ブロックをほぼ同数の発光部を含む構成とし、第2の形態は、各ブロックは異なる数の発光部を含む構成とする。
【0035】
第1の形態において、光学ユニットが備える各ブロックはほぼ同数の発光部を有し、各ブロック内において、そのブロック内に含まれる複数の発光部を同一の駆動条件で駆動すると共に、各ブロックについては異なる駆動条件で駆動し、半径方向の内周側のブロック内の発光部が発光する光量を、半径方向の外周側のブロック内の発光部が発光する光量より少なくする。
【0036】
第1の形態では、複数の態様によって、半径方向の内周側ブロックの露光量を少なくすることができる。
【0037】
半径方向の内周側ブロックの露光量を少なくする第1の態様は駆動電流によるものであり、半径方向の内周側のブロック内の発光部の駆動電流を、半径方向の外周側のブロック内の発光部の駆動電流より小電流とすることにより、ブロック間の光量関係を定める。これによって、半径方向の内周側ブロックによる露光量を外周側のブロックによる露光量よりも少なくする。
【0038】
また、半径方向の内周側ブロックの露光量を少なくする第2の態様は駆動時間によるものであり、半径方向の内周側のブロック内の発光部の駆動時間を、半径方向の外周側のブロック内の発光部の駆動時間より短時間とすることにより、ブロック間の光量関係を定める。これによって、半径方向の内周側ブロックによる露光量を外周側のブロックによる露光量よりも少なくする。
【0039】
また、半径方向の内周側ブロックの露光量を少なくする第3の態様は単位時間当たりの発光回数によるものであり、半径方向の内周側のブロック内の発光部の単位時間当たりの発光回数を、半径方向の外周側のブロック内の発光部の単位時間当たりの発光回数より少ない回数とすることにより、ブロック間の光量関係を定める。これによって、半径方向の内周側ブロックによる露光量を外周側のブロックによる露光量よりも少なくする。
【0040】
第2の形態は、各ブロックが備える発光部の個数を、半径方向で異ならせる構成である。この第2の形態では、発光ユニットが備える複数の発光部を、1つ又は複数の半径方向に隣接する発光部からなる複数のブロックに分割し、各ブロックが有する発光部の個数は、半径方向の内周側のブロックが有する個数を半径方向の外周側のブロックが有する個数よりも多くする。この構成の各ブロックに対して同一の駆動電流を供給し、駆動電流を各ブロック内の発光部の個数分に分流して駆動し、各ブロックが発光する光量をほぼ同じ光量とする。
【0041】
これによって、半径方向の内周側ブロックによる露光量を外周側のブロックによる露光量よりも少なくする。
【0042】
本発明は、第2に、光学ユニットより照射される光によりディスク状メディアの表面を画素ごとに露光して画像を形成する画像形成装置において、直交座標系の整数座標点に定められる画素階調値の画像データを、極座標系の座標点に定められる画素階調値の画像データに変換する。これによって、ディスク状の記録媒体の中心部から放射状に配置した記録ヘッドを用いてライン状の記録を記録媒体の回転に同期して行う印字において、画像データの位置ずれを解消して、良好な画質を得ることができる。
【0043】
本発明の画像形成装置は、ディスク状メディアの表面に画像を形成するプリンタ部と、このプリンタ部で印刷可能な印刷用画像データに変換する印刷用画像データ変換部とを備える。プリンタ部は、ディスク状メディアの径方向に配列する複数の発光部を備える光学ユニットとディスク状メディアとを、ディスク状メディアの周方向に相対的に回転させることで、ディスク状メディア上に画像を印字する。
【0044】
一方、印刷用画像データ変換部は、入力画像データである直交座標系の整数座標点の画素階調値を、印刷用画像データである極座標系の座標点の画素階調値に変換する極座標系ラスターデータ生成部を備える。この極座標系ラスターデータ生成部は、直交座標系上において極座標系の座標点に対応する実数座標点を囲む直近の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて対応する実数座標点の画素階調値を補間し、算出した画素階調値を極座標系ラスターデータの画素階調値として生成する。
【0045】
本発明の極座標系ラスターデータ生成部が生成する画像データは極座標系で定められる座標点における画素階調値を有しており、この極座標系で定められる座標点は、ディスク状の記録媒体の中心部から放射状に配置した記録ヘッドを用いてライン状の記録を記録媒体の回転に同期して印字を行う際の印字ドット位置に対応するため、画像データの位置ずれを解消することができる。
【0046】
また、本発明の極座標系ラスターデータ生成部は、ディスク状メディアの中心点を原点とする極座標系を45°毎に8個のセグメントに分割し、各セグメントにおいて外周から内周に向かう径方向を主走査方向とし、周方向を副走査方向とし、この走査方向で定められる座標点においてラスターデータを生成する。このラスターデータの生成において、主走査方向を直交座標系のy軸方向に対応させ、副走査方向を直交座標系のx軸方向に対応させ、極座標系上において対応する実数座標点を囲む直近の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて対応する実数座標点の画素階調値を補間する。
【0047】
実数座標点における画素階調値の補間に用いる画素階調値として、上記したように副走査方向および主走査方向で定まる実数座標点の周囲の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いることによって、円滑な画像を形成することができる。
【0048】
また、本発明の極座標系ラスターデータ生成部が行う画素階調値の補間は、極座標系に対応する実数座標点と4点の整数座標点との距離に応じて、4点の整数座標点の画素階調値をバイリニア法による線形補間を適用することができる。
【0049】
また、本発明の印刷用画像データ変換部は、画像データの個数を拡大および縮小する画像拡大縮小部を備える。
【0050】
この画像拡大縮小部は、極座標系ラスターデータの副走査方向の個数を、セグメント内の円周方向の印字ドット数に合わせる。これによって、各印字ドットに対応した画素階調値を用意することができる。
【0051】
また、直交座標系の画像データの主走査方向の個数を、印字のピッチに合わせて拡大する。これによって、例えば、1/2ピッチ角で印刷を行う場合には、元画像データを2倍に拡大して印字のピッチに合わせることができる。
【0052】
また、本発明の極座標系ラスターデータ生成部は、印刷画質を向上させるためのデータ処理として、周方向で隣接するセグメントにおいて、主走査方向の境界の座標点における画素階調値を重複して生成する。画像拡大縮小部は、この重複して生成した境界の座標点を縮小し、周方向で隣接するセグメントにおいて、その主走査方向の境界の座標点について同一の画素階調値とする。これによって、ディスク状メディアを45°毎に8個のセグメントに分割し、各セグメントに生成されたラスターデータを用いて画像印刷を行う際に、境界部分での印刷ずれを解消する。
【0053】
この画像拡大縮小部は、座標点の画素階調値をバイリニア法による線形補間によって行うことができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の画像形成装置によれば、回転中心から外周方向に配列してなる印字ヘッドを用いて回転するディスク表面に印刷を行う場合に生じる問題を解消することができる。
【0055】
本発明によれば、回転の周方向で隣接する画素の一部を重ねて露光することによって、隣接する画素間に露光されない箇所が発生しないようにし、これによって不完全な塗りつぶし部分の発生を解消、また、印字ラインの抜けや重なりの問題を解消することができる。
【0056】
また、本発明の画像形成装置は、光学ユニットが備える複数の発光部において、半径方向の内周側の画素を露光する光量を、半径方向の外周側の画素を露光する光量より少量とすることによって、露光の重なりが多い半径方向の内周側の画素について、各露光で形成される濃度を小さくして重畳による濃淡の差を軽減することができる。
【0057】
また、本発明によれば、直交座標系上の整数座標点で定められた画素階調値の画像データを用いてディスク状の記録媒体に印字する際に生じる画素データの位置ずれを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成を説明するための概略斜視図である。
【図2】本発明の画像形成装置の概略構成を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の印字ドットと元画像データとの関係を示す図である。
【図4】本発明の画像形成装置の概略構成を説明するための図である。
【図5】本発明の極座標系ラスターデータ生成部の一構成例を説明するための図である。
【図6】本発明のプリンタ部が備えるプリンタ制御部の構成例を説明するための図である。
【図7】本発明の画像形成装置が備える印刷用画像データ形成部の動作例を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の直交座標系画像データと極座標系画像データとの関係を説明するための図である。
【図9】本発明の印刷用画像データ形成処理で設定するセグメントを説明するための図である。
【図10】本発明の印刷用画像データ形成処理で設定するセグメントを説明するための図である。
【図11】本発明の極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点を説明するための図である。
【図12】本発明の極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点を説明するための図である。
【図13】本発明の極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点をバイリニア法で求める方法を説明するための図である。
【図14】本発明の極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点をバイリニア法で求める方法を説明するための図である。
【図15】本発明の極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点をバイリニア法で求める方法を説明するための図である。
【図16】本発明の隣接するセグメントの境界部分の画像データの設定を説明するための図である。
【図17】本発明の極座標系ラスターデータの副走査サイズを円周ドットに合わせる調整処理を説明するための図である。
【図18】本発明の画像形成装置が備える消色ユニットを構成する光学ユニットの一構成例を説明するための図である。
【図19】隣接する画素間の露光の重なりを説明するための図である。
【図20】本発明のトーン補正を説明するための図である。
【図21】本発明の発光ユニットの発光部による露光量を説明するための図である。
【図22】本発明の発光ユニットの発光部のブロック構成を説明するための概略図である。
【図23】本発明の各ブロックをほぼ同数の発光部を含む構成とする第1の形態による動作を説明するための図である。
【図24】本発明の各ブロックをほぼ同数の発光部を含む構成とする第1の形態による動作を説明するための電流図である。
【図25】本発明の各ブロックに異なる数の発光部を含む構成とする第2の形態の動作について説明するための図である。
【図26】本発明の各ブロックに異なる数の発光部を含む構成とする第2の形態の動作について説明するための電流図である。
【図27】本発明の光量ムラ補正処理を説明するための図である。
【図28】本発明の光量ムラ補正処理を説明するための図である。
【図29】ディスク状記録媒体への印刷における印刷上の問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
はじめに、本発明の画像形成装置の実施形態について説明する。
【0060】
以下、本発明の画像形成装置について図を用いて詳細に説明する。
【0061】
はじめに、本発明の画像形成装置の概略構成について、図1の概略斜視図、図2の概略断面図を用いて説明する。
【0062】
図1に示す画像形成装置の概略構成図において、画像形成装置1は、メディア20を回転駆動する機構(図示していない)、およびメディア20の情報記録面に情報を光学的に記録するピックアップ7を備え、ピックアップ7は記録するデータに基づいてレーザ光をメディア20の情報記録面に照射することによって、記録を行う。なお、記録するデータは、画像データ、音声、音楽データ、文字データ等の種々のデータとすることができる。
【0063】
なお、図1に示す画像形成装置1では、メディア20を駆動する機構、ピックアップ7をメディア20に対して駆動する機構、記録するデータをレーザ光に変換する信号処理装置等については省略している。
【0064】
ここで、メディア20の少なくとも一方の面には、例えば、発色材(フォトクロミック)が塗布される。このフォトクロミック化合物は、紫外光を当てると発色し、その化合物が吸収する特定の波長の光を当てると特定の色が消えるという特性を有する物質である。例えば、紫外光により、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を含むものを用いることができる。
【0065】
画像形成装置1は、このメディア20の面の塗布された発色材を用いることによって、ディスク状のメディア20の面上に画像を形成する。画像形成装置1は、メディア20の面上に画像を形成する構成として、発色材を発色させる発色ユニット2と、発色ユニット2によって発色した発色材の色を消色させる消色ユニット3〜5と、発色した色を定着させる定着部6とを、メディア20の回転方向に順に配置して備える。
【0066】
発色ユニット2は、上記した紫外光を当てることで発色する発色材(フォトクロミック)を塗布したメディア20に画像を形成する場合には、紫外光の波長を発する光源を備える。この発色ユニット2の発する光の波長は紫外光の波長に限られるものではなく、メディア20に塗布される発色材の特性に応じて定められる。
【0067】
また、消色ユニット3〜5は、異なる波長の色を消色する第1の消色ユニット3,第2の消色ユニット4,および第3の消色ユニット5をメディア20の回転方向に配置して構成される。
【0068】
紫外光により、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)を発色するフォトクロミック化合物を含む発色材を用いる場合には、消色ユニットは、C(シアン)を消色する可視光のR(レッド)を発光する第1の消色ユニット3、M(マゼンダ)を消色する可視光のG(グリーン)を発光する第2の消色ユニット4、Y(イエロー)を消色する可視光のB(ブルー)を発光する第3の消色ユニット5の3つを備える。これにより、カラー印刷を行うことができる。なお、第1の消色ユニット3〜第3の消色ユニット5は、何れの消色ユニットがR,G,Bの可視光色を発光するかは任意に定めることができる。
【0069】
なお、消色ユニット3〜5が発光する光の波長は、可視光の波長に限られるものではなく、メディア20に塗布される発色材の特性に応じて定まり、例えば、赤外光等を用いることもできる。
【0070】
定着ユニット6は、発色材の発色した色を定着させる熱源を備える。この熱源は、電熱線、セラミックヒータ、あるいはハロゲンランプ等を用いることができる。
【0071】
なお、発色、消色、定着の各動作はこの順序で行われるが、発色ユニット2、消色ユニット3〜5,定着ユニット6の各ユニットをメディア20の円周方向に沿って配置する際の配置順は、必ずしも動作順と回転方向とを合わせる必要はなく、一つのメディアにおいて発色、消色、定着の順序で動作が行われるのであれば、任意の順序で配列してもよい。
【0072】
図2は、本発明の画像形成装置1の概略断面を示している。図2において、メディア20が配置される位置を境に、下方の位置に、メディア20の記録面にレーザ光等を照射してデータ記録を行う光ピックアップ7と、メディア20を回転駆動する回転駆動装置8を配置し、上方の位置に、前記した発色ユニット2、消色ユニット3〜5、定着ユニット6を配置する。なお、発色ユニット2、消色ユニット3〜5、定着ユニット6の配置位置は、メディア20に対して光ピックアップ7と同じ側に設けてもよい。この場合には、メディア20の面には、データを記録するための記録面が設けられているため、画像形成を行って印刷を行うレーベル面は、この記録面を除く部分となり、下方位置に配置される発色ユニット2、消色ユニット3〜5、定着ユニット6は、この記録面を除く部分に各波長の光を照射するように配置される。
【0073】
消色ユニット3〜5は、光源11,光源11からの光の像をメディア20のレーベル面21に結ばせるための、例えば、セルホックレンズ等の光学レンズ13等を備える。
【0074】
光源11は、複数のLED素子等の発光部12を、メディア20の半径方向に少なくとも1列分配列し、光ラインを形成する。この1列分の配列を用いて光を1回照射すると、メディア20上には、半径方向に沿った1ライン分の画素に対して露光が行われる。この1ライン分の画素の個数は、発光部12のLED素子の個数に対応する。なお、この発光部12のライン状の配列は1列に限らず複数列とすることができる。また、光源11は、発光した光を有効に利用するために反射板11aを備える構成としてもよい。
【0075】
また、発光部は、上述したLED素子のように自発発光する発光体に限らず、例えば、液晶シャッタのように光源からの光を遮断/透過あるいは反射させるものとしても良い。
【0076】
図3は、本発明の画像形成装置において、メディア20のレーベル面21に印刷を行う際の印字ドットと、この印刷に用いる元画像データとの関係を示している。印刷に用いる元画像データは直交座標系で定められる画像データであり、格子状の配列された各整数座標点に画素階調値が設定されている。図3(a)はこの直交座標系画像データ200を説明するための概略図である。ここでは、原点(0,0)で直交するx軸とy軸で定まる直交座標系の格子状の各整数座標点に画像の濃淡に応じた画素階調値が設定されている。
【0077】
本発明の画像形成装置は、この画像データを円盤状のメディア20に設けられたドーナツ状のレーベル面21に印刷する。図3(b)は、図3(a)に示す直交座標系画像データ200の内で、ドーナツ状のレーベル面21を印刷する座標点を示している。図3(b)中の2重円の内で半径rmaxを有する外側の円はレーベル面21の外周を示し、半径rminを有する内側の円はレーベル面21の内周を示す。この2重円で挟まれる部分は印刷領域210であり、この印刷領域210内に存在する直交座標系画像データ200を用いて印刷を行う。
【0078】
一方、図3(c)は、メディア20のレーベル面21と、このレーベル面21に印刷を行う印字ヘッド310および印字ドット311を示している。レーベル面21への印刷は、印字ヘッド310とレーベル面21とを相対的に回転移動させながら、回転位置と同期させて行う。したがって、印字ドット311は、メディア20の回転中心から径方向に延びるラインに沿って形成される。そのため、印字ドット311の配列は、直交座標系画像データ200のようにx、y方向に並ぶ格子状と一致しない。そのため、直交座標系画像データ200をそのままラスターデータとして印字ヘッド310に供給した場合には、画像データに位置ずれが生じることになり、画質の劣化を招くことになる。
【0079】
そこで、本発明の画像形成装置は、直交座標系画像データを、ライン状の印字ヘッドを用いて円盤状のメディア20のレーベル面21上に印刷する際に適した画像データとなるように変換する機能を備える。
【0080】
以下、図4〜図6を用いて本発明の画像形成装置1の概略構成について説明する。
【0081】
図4は本発明の画像形成装置1の概略構成を説明するための図である。図4において、画像形成装置1は、円盤状のメディア20のレーベル面21上に印刷を行うプリンタ部300と、このプリンタ部300で行う印刷に使用する印刷用画像データを形成する印刷用画像データ形成部400とを備える。
【0082】
プリンタ部300は、円盤状のメディア20のレーベル面21上に印刷を行うために、メディア20の径方向に配置されるライン状のヘッド310と、このメディア20を回転駆動するメディア駆動部330と、ヘッド310への画像データに送信や、メディア駆動部330の駆動を制御し、メディア20の回転動作とヘッド310による印刷動作とを同期制御するプリンタ制御部320を備える。プリンタ制御部320による制御は、所定の動作を記述したプログラムをCPUによって実行することで行うことができ、画像データを極座標変換して得られた極座標系ラスターデータを印刷用画像データ形成部400から入力し、この極座標系ラスターデータに対して補正処理を施す他、補正した極座標系ラスターデータを用いてヘッド310を駆動して印字を行う。
【0083】
これらの補正処理としては、例えば、内外周トーン補正処理や、光量ムラ補正処理等がある。これら補正処理については後述する。
【0084】
一方、印刷用画像データ形成部400は、直交座標系の画像データをデータ変換して、ライン状の印字ヘッドを用いて円盤状のメディア20のレーベル面21上への印刷に適した画像データを形成する。
【0085】
図4の印刷用画像データ形成部400は、画像データ入力部410、画像データ記憶部420、画像拡大縮小部430、極座標系ラスターデータ生成部440を備える。
【0086】
画像データ入力部410は外部から画像データを入力して画像データ記憶部420に記録する。ここで、入力した画像データは直交座標系における画像データであり、格子状の整数座標点の位置データと、その整数座標点上に設定された画像階調値とを含んでいる。極座標系ラスターデータ生成部440は、この直交座標系の画像データを極座標変換し、プリンタ部300で印刷可能な極座標系ラスターデータを形成する。画像データ記憶部420は、外部から入力した画像データ、あるいは極座標系ラスターデータ生成部440や画像拡大縮小部430の演算処理を行うために一時的に記憶する。
【0087】
画像拡大縮小部430は、画像データのデータサイズを拡大あるいは縮小する演算を行う。この演算は、例えば、バイリニア法等の線形補間によって行うことができる。ここでは、例えば、1/2ピッチ角で印刷するために、入力した直交座標系の画像データを拡大し、極座標系ラスターデータ生成部440で形成した極座標系ラスターデータの周方向のサイズを円周ドット数に合わせて縮小する。
【0088】
画像拡大縮小部430によって1/2ピッチ角印刷用に拡大され、極座標系ラスターデータ生成部440によって極座標系ラスターデータに変換され、さらに、画像拡大縮小部430によって円周ドット数に合わせて縮小された極座標系ラスターデータは、プリンタ部300のプリンタ制御部320に送られ、メディア20のレーベル面21上に印刷される。なお、画像拡大縮小部430による1/2ピッチ角印刷用の拡大処理は選択的であり、1/2ピッチ角で印刷を行わない場合には、省略することができる。
【0089】
図5は、極座標系ラスターデータ生成部440の一構成例を、その機能に即した形態で示している。
【0090】
極座標系ラスターデータ生成部440は、直交座標系の画像データを極座標変換して、プリンタ部300で印刷可能な極座標系ラスターデータを形成する機能を有し、極座標/直交座標変換部441、近傍データ読み出し部442,直交座標系画像データ記憶部443、画像データ補間部444を備える構成とすることができる。
【0091】
極座標/直交座標変換部441は、半径rと偏角θで表される極座標系の座標点を、x座標とy座標の直交座標系の座標点に変換する。これによって、メディア20のレーベル面21上において、極座標系の(r,θ)で表されるヘッドの印字ドットの座標点に対応する直交座標系上の座標点(px,py)を求める。
【0092】
例えば、CCDカメラ等の撮像手段によって取得される画像データは、直交座標系上の座標点における画素階調値で表され、通常、この画像データの直交座標系上の座標点(px,py)は整数によって表される。一方、極座標系上の座標点(r,θ)を直交座標系上で表した場合には実数となり、必ずしも、直交座標系上の座標点(px,py)で表される整数とならず、極座標/直交座標変換部441で変換された座標点(px,py)は整数の座標点との間に位置ずれを含む。
【0093】
したがって、外部から入力され、直交座標系画像データ記憶部443に格納されている画素階調値V(x,y)には、極座標/直交座標変換部441で変換された座標点(px,py)に対応する画素階調値は必ずしも含まれていない。なお、直交座標系画像データ記憶部443は画像データ記憶部420に含まれる一記憶領域によって構成することができる。
【0094】
そこで、近傍データ読み出し部442によって、直交座標系画像データ記憶部443から座標点(px,py)を囲む直近の近傍データを読み出し、画像データ補間部444によって、この読み出した近傍データを用いて座標点(px,py)に対応する画素階調値補間により算出し、極座標系上の座標点(r,θ)に対応するラスターデータVを生成する。
【0095】
画像データ補間部444による補間は、例えば、バイリニア法による線形補間を用いることができるが、バイリニア法に限られるものではなく、他の補間方法を用いてもよい。
【0096】
なお、極座標/直交座標変換部441において、極座標系の座標点(r,θ)から直交座標系上の座標点(px,py)を求め処理は、px=r・cosθ、py=r・sinθの演算によって行う他、極座標系の座標点(r,θ)が既知である場合には、予め前記した演算を行って対応する直交座標系上の座標点(px,py)を求めてテーブル等の形式を記録しておき、順に読み出すようにしてもよい。
【0097】
このとき、メディアの全周を例えば45°毎に分割して8個のセグメントとし、この内の一セグメントについて、極座標系から直交座標系への演算あるいはテーブルを形成しておき、セグメントの円周上の角度位置に応じて符号を付加することによって全周について変換するようにしてもよい。
【0098】
これによれば、演算時間を短縮することができる他、テーブルの形式で記憶しておく場合には、記憶のための容量を減らすことができる。
【0099】
次に、プリンタ部300が備えるプリンタ制御部320の構成例について、図6を用いて説明する。なお、ここでは、プリンタ制御部320が備える機能の内で、主に印刷用画像データ形成部400で形成した極座標系ラスターデータを用いて印刷を行う際の補正処理を行う構成について示している。
【0100】
図6において、プリンタ制御部320は、印刷用画像データ形成部400で形成した極座標系ラスターデータを入力し、メディアの内周部分と外周部分とで印字ドットが重なることで生じるトーンの偏りを補正する内外周トーン補正部322、光ユニットの発光部の発光光量の偏りによる印刷のムラを補正する光量ムラ補正部323、補正した極座標系ラスターデータを一時的に格納する一時記憶部324、一時記憶部324に格納される補正済みの極座標系ラスターデータを用いてヘッド316の駆動を制御するヘッド制御部325、メディアを回転駆動するメディア駆動部330を制御するメディア駆動制御部326、および、プリンタ制御部全体を制御する主制御部321を備える。
【0101】
主制御部321は、メディアの所定回転位置でヘッド316が印字を行うように、ヘッド制御部325とメディア駆動制御部326と同期制御する。
【0102】
次に、本発明の画像形成装置が備える印刷用画像データ形成部の動作例について、図7のフローチャート、図8〜図17の説明図を用いて説明する。なお、図8は直交座標系画像データと極座標系画像データとの関係を説明するための図であり、図9,10は印刷用画像データ形成処理で設定するセグメントを説明するための図であり、図11,12は極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点を説明するための図であり、図13〜15は極座標系の座標点に対応する直交座標系の実数座標点をバイリニア法で求める方法を説明するための図であり、図16は隣接するセグメントの境界部分の画像データの設定を説明するための図であり、図17は、極座標系ラスターデータの副走査サイズ(周方向のデータ数)を円周ドットに合わせる調整処理を説明するための図である。
【0103】
以下、図7のフローチャートに沿って説明する。なお、図7のフローチャートは、図4中に示した印刷用画像データ形成部400が行う動作と、プリンタ部300が行う動作を含んでいる。フローチャート中のS1〜S7の工程は印刷用画像データ形成部400が行う動作であり、S8〜S11の工程はプリンタ部300が行う動作である。
【0104】
印刷用画像データ形成部400は、はじめに画像データを読み込む。この画像データは、xy方向にマトリクス状に配列された整数座標点での画素階調値を有する直交座標系画像データである。このような直交座標系画像データとしては、例えば、CCDカメラ等の撮像装置によって取得される画像データがある(S1)。
【0105】
撮像装置の画素数によっては、印刷した際の画質を向上させるために、1/2画素のピッチで印刷を行う場合がある。このような1/2ピッチ角で印刷するために、画素間の画像データを補間して画像データを拡大する画像処理を行う。この画像処理は、画像拡大縮小部430による画像拡大によって行うことができる。この画像拡大処理は、例えば、バイリニア法等の補間処理によって、隣接する画像データの中間値を算出することで得ることができる(S2)。
【0106】
次に、S3〜S7の工程によって、直交座標系画像データから極座標系画像データを形成する。
【0107】
極座標系における座標点は、半径rと偏角θで表される。ディスク状のメディア20のレーベル面21には、径方向に配置したラインヘッドを相対的に回転移動させながら印刷が行われる。したがって、ヘッドで印字する画像データは半径rと偏角θで表される極座標系画像データが好適である。一方、入力される画像データは、xy方向のマトリクス状に配列された整数座標点に定められた直交座標系の画像データであるため、この直交座標系の整数座標点に設定された画素階調値をそのままラインヘッドに用いることができない。
【0108】
図8は、極座標系画像データ500に対する直交座標系画像データ200の関係を示している。図8(a)は直交座標系画像データ200を示し、ここではxy方向のマトリクス状に配列された整数座標点に対して画素階調値が設定されており、メディア20の印刷領域210に相当する部分に存在する整数座標点のみを示している。この各整数座標点には、その位置に対応する画素階調値が設定されているが、この整数座標点はラインヘッドの印字ドット位置と必ずしも一致しないため、その整数座標点に設定される画素階調値をそのまま用いることはできない。そこで、極座標系画像データ500の座標点に対する直交座標系画像データ200の座標点の関係を求めるために、極座標の座標点に該当する直交座標系の実数座標点を算出し(S3)、算出された実数座標点の近傍にある直交座標系に実際に設定されている整数座標点を求め、この近傍にある整数座標点に設定されている画素階調値を用いて極座標系に対応する実数座標点の画素階調値を求める。
【0109】
図8(b)は、極座標画像データを示し、横軸方向に半径rをとり、縦軸方向に偏角θをとっている。また、横軸の半径rはメディアの印刷領域210の最外周の半径rmaxから最内周の半径rminの間とし、縦軸の偏角θは、全周を45°ずつに分割して形成される各セグメント1〜セグメント8(図中の丸付き数字で示す)について示している。また、半径rが最外周の半径rmaxから最内周の半径rminに向かう方向を主走査方向とし、偏角θの方向を副走査方向とする。なお、副走査方向において、偏角θの増減は各セグメントによって設定される。
【0110】
図9はこのセグメントを説明するための図である。なお、図9では、円の右端の角度位置を0°とし、時計の時針が回る方向に角度が定めている。本発明が定めるセグメントでは、隣接するセグメントは偏角θの方向を互いに逆方向に設定している。例えば、セグメント1は225°〜270°の角度範囲であり、270°から225°に向かう方向(反時計回り方向)を偏角θの増加する方向に設定し、このセグメント1に反時計回りの方向で隣接するセグメント2は180°〜225°の角度範囲であり、180°から225°に向かう方向(時計回り方向)を偏角θの増加する方向に設定している。一方、このセグメント1に時計回りの方向で隣接するセグメント8は270°〜315°の角度範囲であり、270°から315°に向かう方向(時計回り方向)を偏角θの増加する方向に設定している。同様にして、隣接するセグメントは偏角θの方向を互いに逆方向に設定している。
【0111】
この各セグメントの設定は、極座標系から直交座標系への座標位置の変換において、45°を角度の単位として領域を定めることによって、各セグメント間の座標位置の関係を絶対値が同じで符号のみが異なる関係とすることができる。この関係とすることで、極座標系から直交座標系への演算あるいはテーブル用いた変換において、各セグメント内で定める角度であれば、セグメントの円周上の角度位置に応じて定まる符号を付加することで、同じ絶対値の位置を共用することができ、演算時間や記憶容量を低減させることができる。
【0112】
図10は、各セグメントにおける座標値の関係を示している。ここで、メディアの中心位置を直交座標系で(cx、cy)で表したとき、第1のセグメント(図8,9で丸付き数字(1)で示す領域)の直交座標系の座標点P1(px1,py1)は(cx−y,cy−x)で表される。なお、メディアの半径をr(rmin≦r≦rmax)とし、各セグメント内の偏角をθ(0°〜45°)としたとき、xは(r・cosθ)であり、yは(r・sinθ)である。
【0113】
同様に、第2のセグメント(図8,9で丸付き数字(2)で示す領域)の直交座標系の座標点P2(px2,py2)は(cx−x,cy−y)で表され、第3のセグメント(図8,9で丸付き数字(3)で示す領域)の直交座標系の座標点P3(px3,py3)は(cx−x,cy+y)で表され、第4のセグメント(図8,9で丸付き数字(4)で示す領域)の直交座標系の座標点P4(px4,py4)は(cx−y,cy+x)で表され、第5のセグメント(図8,9で丸付き数字(5)で示す領域)の直交座標系の座標点P5(px5,py5)は(cx+y,cy+x)で表され、第6のセグメント(図8,9で丸付き数字(6)で示す領域)の直交座標系の座標点P6(px6,py6)は(cx+x,cy+y)で表され、第7のセグメント(図8,9で丸付き数字(7)で示す領域)の直交座標系の座標点P7(px7,py7)は(cx+x,cy−y)で表され、第8のセグメント(図8,9で丸付き数字(8)で示す領域)の直交座標系の座標点P8(px8,py8)は(cx+y,cy−x)で表される。
【0114】
次に、前記したS3の工程で算出した極座標系の対応する実数座標点に相当する画素階調値を生成して極座標系でのラスターデータを生成する。
【0115】
図11は、極座標系の座標点(r,θ)を直交座標系に変換したとき、直交座標系における該当座標点が直交座標系に実際に設定された点の中に存在する場合を示している。
【0116】
例えば、直交座標系に実際に設定されている整数座標点の中に、極座標系の座標点A,B,C,D(図11(b))を直交座標系に変換して得られる座標点が存在する場合を示している。図11(a)では、極座標系の座標点A,B,C,Dに対応する座標点に対して、整数座標点a,b,c,dが存在する場合を示している。この場合には、極座標系の座標点A,B,C,Dの画素階調値として、直交座標系で対応する整数座標点a,b,c,dに設定されている画素階調値を用いることができる。
【0117】
これに対して、図12は、極座標系の座標点(r,θ)を直交座標系に変換したとき、直交座標系における対応する座標点が直交座標系に設定された整数座標点の中に存在しない場合を示している。
【0118】
例えば、極座標系の座標点E,F(図12(b))を直交座標系に変換して得られる実数座標点e,f(図12(a))は、直交座標系に実際に設定されている整数座標点中に存在しない。
【0119】
図12(a)では、極座標系に対応する実数座標点eの近傍に整数座標点e1,e2,e3,e4が存在し、極座標系に対応する実数座標点fの近傍に整数標点f1,f2,f3,f4が存在する場合を示している。この場合には、極座標系の座標点Eの画素階調値は、直交座標系の実数座標点eの近傍に存在する整数座標点e1,e2,e3,e4の画素階調値を用いて補間により求める。また、極座標系の座標点Fの画素階調値は、直交座標系の実数座標点fの近傍に存在する整数座標点f1,f2,f3,f4の画素階調値を用いて補間により求める。
【0120】
極座標系での画素階調値を、直交座標系上において、対応する実数座標点の近傍にある整数座標点の画素階調値を用いて補正により求める方法について図13を用いて説明する。
【0121】
図13は直交座標系での実数座標点を示している。ここで、点P(px1,py1)は極座標系の座標点(r,θ)が直交座標系上において対応する実数座標点を示している。ここでは、この点P(px1,py1)の近傍の周囲において、直交座標系で実際に画素階調値が設定されている整数座標点(m,n+1)、(m−1,n+1)、(m,n)、(m−1,n)が存在し、各整数座標点での画素階調値はそれぞれV0,V1,V2,V3である。
【0122】
点P(px1,py1)の画素階調値Vを、これらの近傍の4点の整数座標点をバイリニア法による線形補間によって算出する場合には、以下の式、
V=(1.0−Δy)(V0((1.0−Δx)+V2Δx)+Δy(V1(1.0−Δx)+V3Δx)
で表すことができる。
【0123】
ここで、mはx座標pxの実部であり、int[px]で表され、nはy座標pyの実部でありint[py]で表される。なお、[]は実数の整数化を表し、小数点以下を切り捨てる演算を行う。また、Δxはr・cosθで算出される直交座標xの小数部であり、Δyはr・sinθで算出される直交座標yの小数部である。
【0124】
上記式によって、極座標系上の点(r,θ)の画素階調値を、対応する直交座標系上の実数座標点の近傍4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて線形補間することで算出することができる(S4)。
【0125】
次に、上記のバイリニア法において、画素階調値の算出に用いる近傍4点の整数座標点の選出について図14を用いて説明する。
【0126】
図14(a)は、バイリニア法において、画素階調値の算出に用いる近傍4点の整数座標点を直交座標系上で選出する場合を示している。直交座標系では、通常、近傍4点の整数座標点をx方向およびy方向の各方向について同じ配列順で選出する。この場合には、直交座標系の整数座標点は整数座標値であり、各近傍4点の座標点は共通する直交座標系に対して配列されているため、同じ配列順で選出した場合であっても補間処理に含まれる誤差は同様となる。
【0127】
これに対して、本発明における補間では、極座標系で、かつ、全周をそれぞれ45°の角度範囲を有する8個のセグメントに分割した領域において算出した実数座標値を用いている。この8セグメントに対して、直交座標系と同様にxy方向に同じ方向の配列順で近傍4点を選出してバイリニア法を適用した場合には、補間処理に含まれる誤差が大きくなることを見出した。
【0128】
そこで、主走査方向(各セグメントにおいて半径rの方向)を直交座標系のy軸方向に対応させ、副走査方向(各セグメントにおいて偏角θの方向)を直交座標系のx軸方向に対応させ、極座標系上において対応する実数座標点を囲む直近の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて対応する実数座標点の画素階調値を補間する。
【0129】
図14(b)は、この配列順を説明するための概略図であり、図15はこの配列順を表で表している。例えば、角度範囲が225°〜270°で設定される第1のセグメント211では、副走査方向において偏角θが減少する方向を直交座標系のx軸方向に対応させ、主走査方向を直交座標系のy軸方向に対応させた配列順としている。このバイリニア法に用いる座標点の配列順を上記順とすることで、補間処理に含まれる誤差を低減することができる。
【0130】
上記したS4の工程による極座標系のラスターデータの生成を、各セグメントの偏角θについてセグメントの角度範囲である45°実施して副走査方向で行い(S5)、半径rを各セグメントのrmaxからrminまで実施して主走査方向で行う(S6)。
【0131】
次に、生成したラスターデータについて、副走査サイズの調整を行う。この副走査サイズの調整は、周方向の印字ドット数に合わせる調整を含んでいる。
【0132】
はじめに、隣接するセグメントの境界部分でのラスターデータの調整について説明する。
【0133】
上記各セグメントでのラスターデータの生成は、8個のセグメントでそれぞれラスターデータを生成しているため、隣接するセグメントの境界部分では、それぞれのセグメントが画素階調値を保有することになる。この各セグメントが保有するラスターデータを用いて印刷を行うと、境界部分で二重に印刷が行われることになり、印刷画質の劣化を招くことになる。
【0134】
そこで、画像拡大縮小部430において、この隣接するセグメントの境界部分の座標点を縮小して境界での重なりを解消する。図16は、このセグメントの境界部分の座標点の縮小を説明するための図である。図16(a)は第1のセグメント211が第2のセグメント212と隣接する部分の整数座標点を示し、図16(b)はこの整数座標点から補間によって算出したラスターデータの配列を示している。また、図16(c)は第2のセグメント212が第1のセグメント211と隣接する部分の整数座標点を示し、図16(d)はこの整数座標点から補間によって算出したラスターデータの配列を示している。この各セグメントが備えるラスターデータは境界部分の同じ主走査位置にそれぞれ画素階調値を有している。画像拡大縮小部430は、この同じ主走査位置にある2組みの画素階調値を縮小して1組みのみに縮小する。
【0135】
次に、ラスターデータを周方向の印字ドット数に合わせる調整について説明する。画像データから生成したラスターデータの副走査方向の個数と、各セグメント内において形成する印字ドットの個数とは必ずしも一致しないため、ラスターデータの副走査方向の個数を印字ドット数に合わせる必要がある。
【0136】
図17は、ラスターデータの副走査方向の個数を低減して印字ドット数に合わせる例を示している。図17(a)はラスターデータのデータ配列を示し、図17(b)はヘッドによって印字される印字ドットの配列を示している。ここでは、印字ドットの配列に対応する複数のラスターデータを選出し、このラスターデータをバイリニア法等の線形補間を行うことによって個数調整を行う例を示している(S7)。
【0137】
次に、プリンタ部側において、得られた極座標系のラスターデータに対して内外周のトーン補正処理(S8)、光量ムラ補正(S9)を行った後、印字処理を行う(S10)。このS8〜S10の処理を円周分について行うことによってメディア上に印刷を行う(S11)。
【0138】
以下、本発明の画像形成装置が備える消色ユニットを構成する光学ユニット10の一構成例について図18を用いて説明する。図18は、光学ユニット10の一構成例を説明するための斜視図であり、各構成部分を分離して示している。
【0139】
この構成例の光学ユニット10は、図2で説明したと同様に、光源11と光学レンズ13を備える。この光学ユニット10は、配置されたメディア20にレーベル面21の上方位置に固定して設置され。光源11の各発光部で発光した光は光学レンズ13を通ってレーベル面21上に照射される。
【0140】
この構成例が備える光学ユニット10の各発光部12は、メディア20上の全ての画素について、回転の周方向で隣接する画素の一部を重ねて露光する。光学ユニット10の発光部12は、一回の光照射によって、メディア20において半径方向に並ぶ一ライン分の画素30を露光する。この露光をメディア20の回転と同期させて繰り返すことにより、メディア20のレーベル面21に画像を形成する。
【0141】
このメディア20の回転と同期して行う露光において、回転の周方向で隣接する画素30a,30bの一部を重ねて露光する。このとき、少なくとも最外周の画素について、回転の周方向で隣接する画素30a,30bの一部が重なるように露光することによって、内周側に画素についても回転の周方向で隣接する画素30a,30bの一部が重なることになる。これにより、隣接する画素間においては、露光されない箇所が発生せず、不完全な塗りつぶし部分の発生を解消することができる。
【0142】
図19は、隣接する画素間の露光の重なりを説明するための図である。なお、図19では、発光した色を消色部からの光照射によって消色し、残った色によって画像形成を行う場合について示している。したがって、消色部から照射される光量が多いほど画像形成される色の濃度は薄くなるため、露光回数が多いほど画像形成される色の濃度は薄くなる。
【0143】
これに対して、発光部からの光によってそのまま発光する単色メディアを用いた場合には、発光部の光量が多いほど画像形成される色の濃度は濃くなる。
【0144】
図19(a)は、半径方向の最外周において、隣接する画素間部分に重なりがない状態を示している。この場合には、各発光部12の露光を印字ドットサイズのピッチ角で行う。この露光間隔によれば、半径方向の内周側では、周方向で隣接する画素間の一部を重ねることができるが、半径方向の最外周においては隣接する画素間部分に重なり部分がなく、露光されない部分が発生する。
【0145】
これに対して、図19(b)は、半径方向の最外周において、周方向で、印字ドッドの半径分だけ隣接する画素間部分と重なる状態を示している。この場合には、各発光部12の露光を印字ドットサイズの1/2ピッチ角で行う。この露光間隔によれば、半径方向の最外周においては、隣接する画素間部分に印字ドットサイズの半分が重なることになり、露光されない部分の面積を低減させることができる。
【0146】
この周方向で隣接する画素間の一部を重ねて露光させるには、発光部12による発光とメディアの回転とを同期させ、メディアが所定角度分だけ回転する毎に発光部を駆動し、発光部12の発光をメディアのレーベル面に照射することで行うことができる。
【0147】
例えば、各発光部12の露光を印字ドットサイズの1/2ピッチ角で行うには、メディア20が印字ドットサイズの1/2ピッチ角分だけ回転する毎に、発光部12を駆動して発光させる。
【0148】
上記構成では、発光部12の露光を印字ドットサイズの1/2ピッチ角で行う例を示しているが、印字ドットサイズの1/2ピッチ角に限らず、印字ドットサイズ以下であれば任意のピッチ角とすることができる。なお、この露光を行うピッチ角の間隔が短いほど重畳される程度が高まり、露光されずに残る部分の面積は小さくなるが、その分露光回数が増える。これによって、上述したように、重畳された部分の印刷濃度は低くなり、薄く印刷されることになる。
【0149】
この半径方向の内周側での印刷濃度の低下は、一様濃度を印刷しようとしたときに外周側から内周側に向かって濃度が低下する濃淡(グラデーション)の原因となる。
【0150】
そこで、本発明の発光ユニットは、光学ユニットが備える複数の発光部において、半径方向の内周側の画素を露光する光量を、半径方向の外周側の画素を露光する光量より少量とすることによって、露光の重なりが多い半径方向の内周側の画素について、各露光で形成される濃度の低下を小さくして重畳による濃淡の差を軽減する。
【0151】
以下、S8で行う内外周トーン補正処理について説明する。内外周トーン補正は、外周から内周までのトーン補正データを印字ヘッドのドット数分用意し、この補正データを元にして極座標系ラスターデータの画素階調値を内周方向に向かって薄くなるように演算し、得られた画素階調値によって印字ドット毎にトーン調整を行う。
【0152】
このトーン調整は、
(トーン補正出力階調値)=(入力階調値)・(ドット毎のトーン補正値)
によって算出することができる。
【0153】
ここで、トーン補正値は、補正階調値/最大階調値の比率で表すことができる。
【0154】
図20は、トーン補正を説明するための図である。図20(b)はトーン補正データの一例を示し、外周から内周に向かって階調値を低減させる方向で設定されている。図20(a)に示す入力階調値を、図20(b)のトーン補正データを用いて調整すると、図20(c)のトーン補正出力階調値が得られる。図20では、一様の階調値を有する入力階調値に対してトーン補正データを用いて調整した場合を示している。
【0155】
図21は、本発明の発光ユニットの発光部による露光量を説明するための図であり、上記したトーン補正データを用いて露光量の調整を行う。なお、ここでは、一様の濃度で印刷する場合を想定している。
【0156】
図21(a)は、半径方向に配列される一ライン分の発光部が、一回の照射で露光する露光量を概略的に示している。また、図21(b)は、各照射による露光を重ね合わせた場合の合計の露光量を示している。ここで、図中の上方は半径方向の外周側を示し、図中の下方は半径方向の内周側を示している。
【0157】
外周側から内周側に向かって発光部の露光量を、例えば70%から30%に漸次減少させる。メディアを回転させながら、ライン状の露光を繰り返すと、半径方向の内周側ほど多く重なるが、各発光部による露光量を上記のように内周側ほど少なくすることによって各露光による消色の量を減らし、合計した露光量をほぼ同様の濃度とすることができる(図21(b))。
【0158】
なお、上記例では、70%から30%まで5%ずつ減少させる例を示しているが、この減少率は一例であってこれに限られるものではなく、一律に線形の割合で減少させる他、非線形の割合で減少させてもよい。また、露光量についても任意に定めることができる。また、露光を重ね合わせした結果(図21(b))において、各画素の露光量が均一となるように、各発光部による露光量を定めてもよい。
【0159】
この各発光部の露光量は発光部が発光する発光量に依存する。本発明の発光部は、発光量を、発光部の駆動電流、発光部による露光時間、発光部による単位時間当たりの露光回数によって調整することができ、この調整によって半径方向の内周側と外周側で発光部が発光する光量を調整し、各画素での露光量を調整する。この、発光部の駆動電流、発光部による露光時間、発光部による単位時間当たりの露光回数による調整については、後述する。
【0160】
図21では、発光ユニットが備える複数の発光部について、各発光部を単位として発光する光量を調整する例を用いて説明しているが、本発明の発光ユニットは、複数の発光部を複数のブロックに分割する構成とし、このブロックを単位として露光を行うことができる。
【0161】
それぞれのブロック内にふくまれる発光部は、同一の駆動条件で駆動することも、あるいは異なる駆動条件で駆動することもできる。また、光学ユニットに含まれる全ブロックを同時に駆動する他、光学ユニットに含まれる全ブロックの中から選択したブロックを駆動してもよい。
【0162】
全ブロックの中から選択したブロックを駆動する構成によって、必要とするブロックのみを駆動して消費電力を低減する他、ブロックを順次駆動することによって少ない駆動電力で駆動することができる。
【0163】
光学ユニットは、複数の発光部を、一つ又は半径方向に隣接する複数の発光部によって複数のブロックに分割し、各ブロック内を単位として駆動し、半径方向の内周側のブロック内の発光部が発光する光量を、半径方向のブロック内の発光部が発光する光量より少なくする。
【0164】
このブロックに分割する構成としては、各ブロックをほぼ同数の発光部を含む構成とする第1の形態の他に、各ブロックは異なる数の発光部を含む構成とする第2の形態とすることができる。
【0165】
図22は本発明の発光ユニットの発光部のブロック構成を説明するための概略図である。発光ユニット10は、複数の発光部12を半径方向にライン状に配列して備える。各発光部12は、1つの発光部、あるいは半径方向に隣接する複数の発光部を含む複数のブロックに区分して構成し、このブロックを単位として各発光部を駆動する。図22は、3つの発光部12を含むブロック11A〜11Dに分割する例を示しているが、一ブロックが備える発光部12の個数は任意に定めることができる。
【0166】
第1の形態は、各ブロックに含まれる発光部の個数とほぼ同数とする構成である。ここで、ほぼ発光部を同数とする意味は、発光ユニットが備える全発光部を所定のブロック数で分割したとき、必ずしも割り切れるとは限らないためである。したがって、第1の形態では、各ブロックを同じ条件で駆動した際に、同様の光量が発光されるような個数を含む構成を含むものとする。
【0167】
また、第2の形態は、各ブロックに含まれる発光部の個数を異ならせる構成であり、より好ましくは、半径方向の内周側のブロックが含む発光部の個数を、半径方向の外周側のブロックが含む発光部の個数よりも多くする構成である。
【0168】
以下、図23,図24を用いて各ブロックをほぼ同数の発光部を含む構成とする第1の形態による動作について説明し、図25,図26を用いて各ブロックに異なる数の発光部を含む構成とする第2の形態の動作について説明する。
【0169】
はじめに、第1の形態による動作について説明する。図23において、半径方向にライン状に配列される発光部12を示し、図中の上方を外周側とし、図中の下方を内周側としている。
【0170】
図23(a)は、半径方向に隣接する同数(ここでは3個)の発光部12を組みとしてブロック11A〜11Cを構成し、各ブロック内に含まれる発光部12を同じ条件で駆動すると共に、内周側のブロックに含まれる各発光部の発光量が、外周側のブロックに含まれる各発光部の発光量よりも少なくなるような駆動条件で駆動する。ここで、駆動条件としては、駆動電流、駆動時間、単位時間あたりの駆動回数とすることができる。
【0171】
例えば、各ブロック内に含まれる各発光部12に対して同じ電流値の駆動電流を供給して駆動すると共に、内周側のブロックに含まれる各発光部への駆動電流を、外周側のブロックに含まれる各発光部への駆動電流よりも小さくなるように駆動する。
【0172】
図23(b)では、例えば、ブロック11Aに含まれる各発光部12を駆動電流Iで駆動し、ブロック11Bに含まれる各発光部12を駆動電流I/2で駆動し、ブロック11Cに含まれる各発光部12を駆動電流I/3で駆動する。図24(a)〜(c)は、上記した、駆動電流を駆動条件として各ブロックに含まれる発光部を駆動する場合において、各ブロックA〜Cの駆動電流を示している。
【0173】
これによって、ブロックA〜Cに含まれる各発光部12は、ブロックC→ブロックB→ブロックAの順に小さな電流で駆動されるため、発光の光量も同様のブロック順に少なくなる。
【0174】
ここで、半径方向で内周側にあるブロックは、外周側のブロックよりも露光の重なり分が多くなる。図23(b)はこの露光の重なり状態を、ブロック11Bについては1つ分の重なりによって、ブロック11Cについては2つ分の重なりによって模式的に示している。
【0175】
発光ユニットによって各画素に露光される露光量は、上記した各ブロック11A〜11Cでの発光の量と重なり分とを掛け合わせた光量に依存する。図23(c)は、各画素に露光される露光量を模式的に示し、図23(b)の各ブロックに含まれる発光部の発光光量と、重なり分から、各ブロックについてほぼ同量の発光光量となり、画素に対してほぼ同量の露光が行われる。
【0176】
図23では、駆動電流を駆動条件として各ブロックに含まれる発光部を駆動する場合を示しているが、駆動条件として、駆動時間、単位時間あたりの駆動回数とすることができる。
【0177】
図24(d)〜(f)は、駆動時間を駆動条件として各ブロックに含まれる発光部を駆動する場合において、各ブロックA〜Cの駆動時間を示している。なお、このときの駆動電流を各ブロックで同一としている。
【0178】
また、図24(g)〜(i)は、単位時間あたりの駆動回数を駆動条件として各ブロックに含まれる発光部を駆動する場合において、各ブロックA〜Cの単位時間あたりの駆動回数を示している。なお、このときの各駆動における駆動電流と駆動時間は各ブロックで同一としている。また、上記した各駆動条件を組み合わせてもよい。
【0179】
図23、図24では、ブロックに分割した場合について示したが、前記図21に示したように、各発光部を単位として駆動条件を定める場合についても同様に、駆動電流、駆動時間、単位時間当たりの駆動回数、あるいはこれらの組み合わせによって駆動条件を設定することができる。
【0180】
次に、第2の形態による動作について説明する。図25において、半径方向にライン状に配列される発光部12を示し、図中の上方を外周側とし、図中の下方を内周側としている。
【0181】
図25(a)は、半径方向の内周面(図25中の下方側)のブロックが含む発光部の個数を、外周面(図25中の上方側)のブロックが含む発光部の個数よりも多く設定する。図25(a)では、ブロック11Aが含む発光部12の個数を1とし、ブロック11Bが含む発光部12の個数を3とし、ブロック11Cが含む発光部12の個数を5とする例を示している。
【0182】
各ブロック11A〜11Cは、ブロックを単位として同じ駆動電流を供給して駆動し、各ブロック内では、供給された電流を等分割して駆動する。
【0183】
例えば、各ブロックに供給する駆動電流の電流量をIとすると、ブロック11A〜ブロックCには、同じ電流量Iが供給される。このとき、ブロック11Aは1つの発光部12を含んでいるため、発光部12は、電流量Iで駆動される。これに対して、ブロック11Bは3つの発光部12を含んでいるため、各発光部12は電流量I/3で駆動されることになり、また、ブロック11Cは5つの発光部12を含んでいるため、各発光部12は電流量I/5で駆動されることになる。
【0184】
図26は第2の形態による電流を説明する図であり、図26(a)〜(c)は各ブロックに供給される電流量を示し、図26(d)〜(f)は各ブロック内に含まれる各発光部に供給される電流量を示している。図26(d)〜(f)に示すように、ブロック内の各発光部に供給される電流量は、半径方向内周側は半径方向外周側よりも少ない電流値となる。これによって、内周側のブロックに含まれる発光部の発光量は、外周側のブロックに含まれる各発光部の発光量よりも少なくなる。
【0185】
ここで、前述したように、半径方向で内周側にあるブロックは、外周側のブロックよりも露光の重なり分が多くなる。図25(b)はこの露光の重なり状態を、ブロック11Bについては1つ分の重なりによって、ブロック11Cについては2つ分の重なりによって模式的に示している。
【0186】
発光ユニットによって各画素に露光される露光量は、上記した各ブロック11A〜11Cでの発光の量と重なり分とを掛け合わせた光量に依存する。図25(c)は、各画素に露光される露光量を模式的に示し、図25(b)の各ブロックに含まれる発光部の発光光量と、重なり分から、各ブロックについてほぼ同量の発光光量となり、画素に対してほぼ同量の露光が行われる。
【0187】
上記のように、半径方向の内周側と外周側の各画素に対する露光量を合わせることによって、発光した色を消色する量を同程度とし、これによって、半径方向において濃度に濃淡が発生することを抑えることができる。
【0188】
なお、上記説明では、メディアにレーベル面に塗布した発色材を発光ユニットで発光させ、消色ユニットによって消色することで所望の色を形成する例を示しているが、単色を発色する発色材の場合には、例えば、紫外光のみで発色させ消色工程を不要とすることができる。この単色を発色する場合や、異なる波長の赤外光で発色させる光熱変換記録や、RGBの露光して熱で現像し、光りで定着させる感光感熱記録などを用いる場合には、露光量と濃度との関係は、先に説明した関係と逆の関係となるが、半径方向の内周側の画素の露光量を半径方向の外周側の画素の露光量よりも少量とすることで、同様に、半径方向における濃度の濃淡の発生を抑制することができる。
【0189】
以下、S9で行う光量ムラ補正処理について図27、図28を用いて説明する。
【0190】
レンズ(セルフォック)を使用してLED光を露出させる場合、印字ドットの光量分布にムラが発生することがある。図27(a)は印字ドットの光量分布特性に含まれるムラの状態を示している。この印字ドットの光量分布にムラを含んだ状態で主走査方向の1ラインを印字すると、図27(b)に示すように濃度ムラが発生する。なお、図27(c)は濃度ムラがない場合を示している。
【0191】
そこで、ドット毎に光量を測定し、露光ピークを最低露光値に合わせてLED光量補正値を印字ドット毎に用意し、前記S8においてトーン補正出力した階調値に光量補正を施す。
【0192】
この光量ムラ補正は、
(出力階調値)=(トーン補正出力階調値)・(ドット毎の光量ムラ補正値)
によって算出することができる。
【0193】
ここで、光量ムラ補正値は、最低露光値/ピーク値の比率で表すことができる。
【0194】
図28(a)は印字ドットの光量分布特性に含まれるピーク特性を示し、図28(b)は光量補正データ例を示している。図28(d)の出力調整結果は、図28(c)に示すこの光量ムラを光量ムラ補正値を用いて補正した例を示している。
【符号の説明】
【0195】
1 画像形成装置
2 発色ユニット
3 第1消色ユニット
4 第2消色ユニット
5 第3消色ユニット
6 定着ユニット
7 ピックアップ
8 回転駆動装置
10 光学ユニット
11 光源
11A〜11D ブロック
12 発光部
13 光学レンズ
20 メディア
21 レーベル面
30a,30b 画像形成領域
101 濃淡(グラデーション)
102 不完全箇所
103 印字ラインの抜け
200 直交座標系画像データ
210 印刷領域
211〜218 セグメント
300 プリンタ部
310 ヘッド
311 印字ドット
320 プリンタ制御部
330 メディア駆動部
400 印刷用画像処理部
410 画像データ入力部
420 画像データ記憶部
430 画像拡大縮小部
440 極座標系ラスターデータ生成部
441 座標変換部
442 近傍データ読み取り部
443 直交座標系画像データ記憶部
444 画像データ補間部
500 極座標系画像データ
511〜518 セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ユニットより照射される光によりディスク状メディアの表面を画素ごとに露光して画像を形成する画像形成装置において、
前記ディスク状メディアの径方向に配列する複数の発光部を備える光学ユニットと前記ディスク状メディアとを、前記ディスク状メディアの周方向に相対的に回転させることでディスク状メディアの表面に画像を形成するプリンタ部と、
前記プリンタ部で印刷可能な印刷用画像データに変換する印刷用画像データ変換部とを備え、
前記印刷用画像データ変換部は、入力画像データである直交座標系の座標点の画素階調値を、印刷用画像データである極座標系の座標点の画素階調値に変換する極座標系ラスターデータ生成部を備え、
前記極座標系ラスターデータ生成部は、直交座標系上において極座標系の座標点に対応する実数座標点を囲む直近の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて対応する実数座標点の画素階調値を補間し、算出した画素階調値を極座標系ラスターデータの画素階調値とすることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記極座標系ラスターデータ生成部は、
ディスク状メディアの中心点を原点とする極座標系を45°毎に8個のセグメントに分割し、各セグメントにおいて外周から内周に向かう径方向を主走査方向とし、周方向を副走査方向とし、
前記主走査方向を直交座標系のy軸方向に対応させ、副走査方向を直交座標系のx軸方向に対応させ、極座標系上において前記対応する実数座標点を囲む直近の4点の整数座標点が備える画素階調値を用いて対応座標点の画素階調値を補間することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記極座標系ラスターデータ生成部は、前記対応する実数座標点と前記4点の整数座標点との距離に応じて、当該4点の整数座標点の画素階調値をバイリニア法による線形補間することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷用画像データ変換部は、画像データの個数を拡大および縮小する画像拡大縮小部を備え、
当該画像拡大縮小部は、前記極座標系ラスターデータの副走査方向の個数を、セグメント内の円周方向の印字ドット数に合わせすることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像拡大縮小部は、座標点の画素階調値をバイリニア法によって線形補間することを特徴とする、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像拡大縮小部は、前記極座標系ラスターデータ生成部によって周方向で隣接するセグメントの主走査方向の境界の座標点において重複して生成された画素階調値を縮小することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図24】
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【図26】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−244680(P2010−244680A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94228(P2010−94228)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2008−508551(P2008−508551)の分割
【原出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】