説明

画像形成装置

【課題】 像保持体の表面から磁性キャリアを除去することができ、画像形成の品質を長期にわたり維持することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光体10の表面に残留した残留トナーを除去するクリーニングブレード16よりも感光体10の回転における上流側に磁性キャリア除去部材15_1を接近乖離可能に配備し、その磁性キャリア除去部材15_1を感光体10の回転が再開された時点から所定時間だけ感光体10の表面に近接して、感光体10の表面に磁界を作用させて、感光体10の表面へ移行した磁性キャリアを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーと磁性キャリアとを含むいわゆる二成分現像剤を用いて電子写真方式によって画像を形成する、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタなどに用いられる画像形成装置では、ロール状の感光体に代表される像保持体の所定方向に循環移動する表面を帯電器によって帯電させ、帯電後の像保持体の表面に露光光を照射することによりその表面に静電潜像を形成し、形成した静電潜像を、トナーと磁性キャリアとを含むいわゆる二成分現像剤を用いて現像することで像保持体表面に現像像を形成し、その現像像を、所定の被転写面(記録媒体の表面や中間転写体の表面)に転写し最終的に記録媒体上に定着する画像形成プロセスによって、定着像からなる画像を形成することが行なわれている。
【0003】
ここで、記録媒体や中間転写体に転写を終えた像保持体表面には、未転写のトナーなどの残留物が存在するため、これらの残留物を次の画像形成プロセスに先立ってクリーニング手段により除去することが必要になる。
【0004】
残留物を除去するクリーニング方式として、板状のクリーニングブレード先端を像保持体表面に圧接させ、像保持体表面の残留物を機械的に掻き取る方式が知られている。このクリーニングブレードを用いた方式では、像保持体表面とクリーニングブレード先端との間に摺擦が生じるが、この摺擦が好適に保たれないと、ブレード先端が欠けてしまったり、像保持体表面が必要以上に磨耗してしまったり、像保持体表面が傷ついてしまったりする。
【0005】
ところで、トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いて現像像形成を行なった場合、上記残留物の中に磁性キャリアが含まれていることがある。この磁性キャリアは、磁力を持ったフェライトと、そのフェライトの表面に樹脂材料がコーティングされたコート部から構成されている。通常、磁性キャリアはトナーに対して逆極性に帯電することでトナーを帯電させ、磁気ブラシを形成して現像を行なう働きを持っており、それ自身が像保持体表面へ付着することはないはずであるが、例えば、画像形成が終了して像保持体の表面の循環移動が停止する時点において、像保持体への帯電終了タイミングと現像器への現像終了タイミングとのずれに起因して、これら像保持体と現像器との間で大きな電位差が発生すると、磁性キャリアが像保持体表面へ移行する場合がある。このように移行した磁性キャリアが上記残留物に含まれることとなる。
【0006】
残留物に含まれている磁性キャリアは、トナーよりは大きいものの砕けて小さくなったものが多く、クリーニングブレードの先端と像保持体表面との間に挟まりやすい。ここで、砕けて小さくなったうちのコート部は、樹脂材料からなるものであるため、像保持体表面を傷つけることはないものの、フェライトは金属材料からなるものであるため、像保持体表面を傷つけたり、あるいはブレード先端のカケを引き起こしたり、像保持体表面を必要以上に磨耗させたりする。
【0007】
そこで、磁性キャリアを像保持体表面から除去する方法として、ブラシロールの回転軸にマグネットを内蔵させておき、磁性キャリアをブラシロールに磁気的に引き寄せる作用も加えて磁性キャリアを像保持体表面から除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、ブラシロールの回転軸にマグネットを内蔵させたとしても、ブラシロールに植毛されているブラシの毛は数ミリ程度あるため、回転軸に内蔵したマグネットの磁力は像保持体表面では弱まり、磁性キャリアをブラシロールに磁気的に引き寄せる効果はさほど期待できない。
【0008】
また、磁性キャリアを像保持体表面から除去する他の方法として、像保持体の、被転写面に現像像が転写された後の表面に残留した残留トナーを表面から除去するクリーニング手段と、そのクリーニング手段よりも上流側で像保持体表面に接し、その表面に磁界を作用させる板状若しくはフィルム状の磁性キャリア除去部材とを備える提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。しかし、磁性キャリア除去部材が像保持体表面に接しているため、磁性キャリア除去部材と像保持体表面との間に挟まった磁性キャリアが磁性キャリア除去部材のカケを誘発し、キャリア除去能力は経時的に劣化していく。
【0009】
一方、磁性キャリアにおいて、像保持体上への飛散を抑制する目的で磁性キャリア粒度分布を狭くして、飛散し易い小径の磁性キャリアを減少させても、像保持体への飛散を完全に抑制することは困難である。
【特許文献1】特開2002−278403号公報
【特許文献2】特開2007−003814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、像保持体の表面から磁性キャリアを除去することができ、画像形成の品質を長期にわたり維持することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の画像形成装置は、
中心軸の回りを表面が所定方向に循環移動する、その表面に静電潜像が形成される像保持体と、
トナーと磁性キャリアとを含む現像剤を内部に保持し、その現像剤中のトナーで上記静電潜像を現像して上記像保持体上に現像像を形成する現像器と、
上記現像像を所定の被転写面に転写し最終的には記録媒体上に定着することによりその記録媒体上に定着像からなる画像を形成する転写定着部と、
上記像保持体表面の循環移動を停止、作動する移動制御部と、
上記像保持体の、上記被転写面に上記現像像が転写された後の表面に残留したトナーをその表面から除去するクリーニング部と、
上記クリーニング部よりも上記像保持体表面の循環移動方向上流側で、上記像保持体の、上記被転写表面に現像像が転写された後の表面に接近乖離可能な、その循環移動が停止後に作動された場合にその表面に接触あるいは近接してその表面に磁界を作用させる磁性キャリア除去部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、上記クリーニング部が、上記像保持体の表面に接触して上記トナーを掻き落とす、その接触している箇所でその表面にそのトナーのトナー溜まりを形成するものであり、
上記磁性キャリア除去部材が、上記トナー溜まりに近接してそのトナー溜まりに磁界を作用させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の画像形成装置によれば、像保持体の表面から磁性キャリアを除去することができ、一方で、像保持体表面のキズや磁性キャリア除去部材のカケ等を回避することができるので、画像形成の品質を長期にわたり維持することができる。
【0014】
請求項2記載の画像形成装置によれば、トナー溜まりに集まる磁性キャリアを効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態である画像形成装置1が示されており、この画像形成装置1には、ロール状の感光体10が備えられている。この感光体10は、中心軸10aの回りを矢印A方向に回転する。このような回転により、感光体10の表面は循環移動することとなる。また、感光体10の周囲には、帯電器11、露光器12、現像器13、転写ロール14、磁性キャリア除去装置15、およびクリーニングブレード16も備えられている。
【0018】
また、この画像形成装置1には、記録用紙が収容される記録用紙収容部17、その記録用紙収容部17から記録用紙を引き出して所定の搬送路に搬送する用紙搬送装置18、および定着器19が備えられている。
【0019】
さらに、画像形成装置1には、制御部20が備えられている。この制御部20は、画像形成装置1全体の制御を行なうとともに、本発明にいう移動制御部の役割を担うものでもある。具体的には、画像形成開始の指示を受けて図示しないメインモータをオンさせることにより感光体10の回転を開始し、画像形成終了の指示を受けてメインモータをオフさせることにより感光体10の回転を停止し、再度画像形成開始の指示を受けてメインモータをオンさせることにより感光体10の回転を再度開始するというように、感光体10の回転を停止したり再開したりする制御を行なう。また、この制御部20は、詳細は後述する磁性キャリア除去装置15の動作も制御する。
【0020】
感光体10は、本発明にいう像保持体の一例であり、ここではロール方式を採用しているが、表面の循環移動を実現する他の方式として循環ベルト方式を採用してもよい。また、この感光体10は、φ=30mmの外形寸法を有し、周面の移動線速度、即ちプロセススピードは169mm/sec程度に設定される。
【0021】
帯電器11は、感光体10に対して0時の位置に配備されており、感光体10の表面に接触した状態で回転する半導電性の帯電ロールである。帯電器11には、直流電圧に交流電圧を重畳させた帯電バイアス電圧(例えば−700V)が印加され、これにより感光体10との接触部近傍の微小空隙で放電が発生して感光体10が帯電される。
【0022】
露光器12は、感光体10の表面に向けて、画像データに基づく露光光を照射するものである。
【0023】
現像器13は、感光体10に対して3時の位置に配備されており、トナー粒子と磁性キャリアとを含む二成分現像剤を収容した現像剤収容体13_1と、現像剤収容体13_1中の現像剤を保持して感光体10の表面に対向した状態で回転する現像ロール13_2を有する。通常、磁性キャリアはトナーに対して逆極性に帯電することでトナーを帯電させ、現像ロール13_2の表面に磁気ブラシを形成して現像を行なう働きを担っており、トナー粒子は、感光体10の表面に静電的に移行する。尚、この現像器13に印可される現像バイアス電圧は、例えば−500Vである。
【0024】
図1に示す画像形成装置1において画像形成が行なわれる際には、まず、感光体10の表面に現像像を形成する現像像形成サイクルが実行される。この現像像形成サイクルでは、感光体10の表面が、帯電器11によって帯電された後、露光器12によって画像データに基づく露光光が照射され、感光体10の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器13によって現像され、感光体10の表面には現像像が形成され、現像像形成サイクルが終了する。また、記録用紙収容部17に収容されている記録用紙が、用紙搬送装置18により引き出されて所定の搬送路に搬送される。
【0025】
現像像形成サイクルによって感光体10の表面に形成された現像像は、感光体10と転写ロール14によって定まる転写領域において、感光体10の表面から上記記録用紙に転写される。図1に示す画像形成装置1では、転写ロール14を用いた直接転写方式が採用されているが、本発明の画像形成装置では、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式を採用してもよい。
【0026】
また、定着器19は、転写領域よりも用紙搬送における下流側に備えられており、この定着器19は、加熱機構を有する定着ロール19_1と、定着ロール19_1に対向するように設けられた圧力ロール19_2とを備えている。互いに対向する定着ロール19_1と圧力ロール19_2の間には、転写領域を通過した記録用紙が搬送されてくる。記録用紙上の現像像を構成するトナーは、定着ロール19_1の加熱機構により溶融され圧力ロール19_2からの圧力を受けて記録用紙に定着し、定着像からなる画像が形成される。ここで、転写ロール14および定着器19によって、本発明にいう転写定着部の一例が構成されている。
【0027】
一方、感光体10の、転写領域を通過した表面には、転写領域において記録用紙へ移行することができなかった残留トナーや、その残留トナーに付着していた外添剤粒子が残留している。さらに、感光体10の、転写領域を通過した表面には、トナー粒子よりは大きいものの砕けて小さくなった磁性キャリアも残留している。磁性キャリアは、本来、感光体10の表面へ付着することはないが、画像形成が終了して感光体10の回転が停止する時点において、感光体10への帯電終了タイミングと現像器13への現像終了タイミングとのずれに起因して、これら感光体10と現像器11との間で大きな電位差が発生すると、磁性キャリアがトナーとともに感光体10の表面へ移行する場合がある。以下、図2を参照して説明する。
【0028】
図2は、図1に示す感光体の回転が停止する時点(立ち下がりの時点)において、磁性キャリアが感光体の表面へ移行する様子を説明するための図である。
【0029】
図2の横軸,縦軸は、それぞれ、時間(sec),バイアス電圧を示す。また、図2に示す一点鎖線,破線は、それぞれ、感光体10への帯電バイアス電圧,現像器11への現像バイアス電圧を示す。尚、実線は、感光体10を回転駆動するメインモータをオン,オフする制御信号のタイミングを示す。
【0030】
図2の左側に示すように、感光体10の回転が停止する以前では、一点鎖線で示す帯電バイアス電圧(例えば−700V)が感光体10に通電されているとともに、点線で示す現像バイアス電圧(例えば−500V)が現像器11に通電されている。
【0031】
ここで、感光体10の回転を停止するにあたり、先ず、感光体10への帯電バイアス電圧と現像器11への現像バイアス電圧との双方のバイアス電圧の通電を終了させる。次いで、現像器11への現像バイアス電圧の通電が終了した時点から1秒経過後に、メインモータがオフして感光体10の回転が終了する。
【0032】
これらのバイアス電圧の通電を終了させるにあたり、以下に説明するように、感光体10への帯電バイアス電圧の通電終了タイミングと現像器11への現像バイアス電圧の通電終了タイミングとのずれに起因して、現像器11の内部に保持されている磁性キャリアが感光体10の表面へ移行する場合がある。具体的には、前述したように、帯電器11は感光体10に対して0時の位置に配備されており、また現像器13は感光体10に対して3時の位置に配備されているため、図2に示すように、感光体10に通電されている帯電バイアス電圧が終了し、その終了した時点から0.14秒(感光体10の1/4周分=感光体10の外周面の距離23.6mm)遅れて、現像器13に通電されている現像バイアス電圧が終了するように制御される。ここで、現像器13に通電されている現像バイアス電圧の終了するタイミングが本来のタイミングからずれると、感光体10と現像器13との間に約500Vという大きな電位差が生じてしまい、磁性キャリアが感光体10の表面へ移行するという現象が発生する。再び、図1に戻って説明を続ける。
【0033】
先ず、クリーニングブレード16について説明する。図1に示すクリーニングブレード16は、本発明のクリーニング部の一例に相当し、このクリーニングブレード16は、板状のクリーニングブレード先端を感光体10の表面に圧接させ、その表面の残留物を機械的に掻き取ることにより、感光体10の表面に残留した残留物を除去するものである。このクリーニングブレード16は、転写領域よりも感光体10の回転における下流側であって帯電ロール11よりも感光体10の回転における上流側の位置に配備されている。
【0034】
詳細には、このクリーニングブレード16は、先端に形成されたエッジ部を感光体10の表面に接触させた状態で、感光体10の中心軸10aの、図1の紙面に対して垂直方向に延びる板状のものである。
【0035】
また、このクリーニングブレード16は、感光体10の表面に接触して残留トナーを掻き落とし、これにより感光体10の表面に接触している箇所の表面に、残留トナーのトナー溜まりTを形成する。
【0036】
尚、ここでは、板状のクリーニングブレードにより残留物を除去するブレード方式が示されているが、本発明にいうクリーニング部は、このブレード方式以外の、ブラシにより残留物を除去するブラシ方式によるもの、静電気により残留物を除去する電気方式によるもの、あるいはブラシ方式と電気方式を併用した併用方式によるものであってもよい。
【0037】
また、図1に示す磁性キャリア除去装置15には、磁性キャリア除去部材15_1と磁性キャリア除去部材駆動部15_2が備えられている。
【0038】
磁性キャリア除去部材15_1は、転写領域よりも感光体10の回転における下流側であって、クリーニングブレード16よりも感光体10の回転における上流側に備えられている。この磁性キャリア除去部材15_1は、磁性キャリア除去部材駆動部15_2の、中心軸から所定の距離だけ離れた部分に連結されている。この磁性キャリア除去部材15_1は、トナー溜まりTに近接してそのトナー溜まりTに磁界を作用させるものである。
【0039】
また、この磁性キャリア除去部材15_1は、フェライト磁石を分散させたポリウレタンゴムからなる板状の弾性ブレードである。
【0040】
磁性キャリア除去部材駆動部15_2は、制御部20により制御される。具体的には、磁性キャリア除去部材駆動部15_2にはモータ(図示せず)が備えられており、このモータが制御部20からの制御信号によりオンすることにより、磁性キャリア除去部材15_1が、図1の矢印で示すように、感光体10の表面に接近乖離する。
【0041】
磁性キャリア除去部材15_1は、感光体10の回転が再開された時点で、感光体10の表面に近接して磁界を作用させる。以下、図3を参照して説明する。
【0042】
図3は、感光体の回転が再開された時点(立ち上がりの時点)で、磁性キャリア除去部材を感光体の表面に近接して磁界を作用させる様子を説明するための図である。
【0043】
図2を参照して説明したように、感光体10の回転が停止し、これにより感光体10への帯電バイアス電圧の通電終了タイミングと現像器11への現像バイアス電圧の通電終了タイミングとのずれに起因して、磁性キャリアが感光体10の表面へ移行している場合がある。このため、本実施形態では、再度画像形成開始の指示を受けてメインモータがオンして感光体10の回転が再開された時点で、以下に説明するようにして、磁性キャリア除去部材15_1を感光体10の表面に近接して磁界を作用させて、感光体10の表面へ移行している磁性キャリアを除去することとする。
【0044】
図3の横軸,縦軸は、それぞれ、時間(sec),バイアス電圧を示す。また、図3に示す一点鎖線,破線は、それぞれ、感光体10への帯電バイアス電圧,現像器11への現像バイアス電圧を示す。さらに、二点鎖線は、磁性キャリア除去部材15_1が感光体10の表面に近接してから離れるまでの時間を示す。尚、実線は、感光体10を回転駆動するメインモータをオン,オフする制御信号のタイミングを示す。
【0045】
先ず、メインモータをオンして感光体10の回転を開始する。また、制御部20からの制御信号により磁性キャリア除去部材駆動部15_2が回転駆動し、これにより磁性キャリア除去部材15_1が感光体10の表面に向けて移動する。このようにして、メインモータをオンしてから、およそ0.5秒経過後に、磁性キャリア除去部材15_1が感光体10の表面に近接する。
【0046】
次いで、メインモータをオンしてから1秒経過後に、一点鎖線で示す帯電バイアス電圧(例えば−700V)が感光体10に通電され、また点線で示す現像バイアス電圧(例えば−500V)が現像器11に通電される。ここで、以下に説明するように、感光体10への帯電バイアス電圧の通電開始(オン)タイミングと現像器11への現像バイアス電圧の通電開始(オン)タイミングとのずれに起因して、現像器11の内部に保持されている磁性キャリアが感光体10の表面へ移行する場合がある。具体的には、図1に示すように、帯電器11は感光体10に対して0時の位置に配備されており、また現像器13は感光体10に対して3時の位置に配備されているため、図3に示すように、感光体10に帯電バイアス電圧が通電された時点から0.14秒(感光体10の1/4周分=感光体10の外周面の距離23.6mm)遅れて、現像器13に現像バイアス電圧が通電されるように制御される。ここで、現像器13に通電される現像バイアス電圧の開始するタイミングがずれると、感光体10と現像器13との間に約700Vという大きな電位差が生じてしまい、トナーとともに磁性キャリアが感光体10の表面へ移行するという現象が発生する。
【0047】
しかし、このように感光体10の回転が再開された時点において磁性キャリアが感光体10の表面へ移行するとともに、前述したようにして感光体10の回転が停止したことに起因して既に磁性キャリアが感光体10の表面へ移行していても、磁性キャリア除去部材15_1が感光体10の表面に近接しているため、感光体10の表面へ移行している磁性キャリアを除去することができる。本実施形態では、図3に示すように、磁性キャリア除去部材15_1を感光体10の表面に近接させてから、その磁性キャリア除去部材15_1が感光体10の表面から離れるまでの時間は、1.5秒程度(感光体10の2.7周分程度)に設定される。従って、感光体10の表面の全域にわたって磁性キャリアが除去され、その後画像形成が行なわれる。また、このような回転の再開時以外では磁性キャリア除去部材15_1は感光体10表面から離れているので、感光体10のキズや磁性キャリア除去部材15_1のカケ等は生じない。
【0048】
尚、ここでは、感光体10の回転が再開された時点で、磁性キャリア除去部材15_1を感光体10の表面に近接する例で説明したが、本発明の画像形成装置では、感光体10の回転が再開された時点で、磁性キャリア除去部材15_1を感光体10の表面に接触してもよい。
【0049】
(実施例)
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
富士ゼロックス製Docu Centre Color500機を、図1に示す画像形成装置1と同様な構成に改造した。現像器には、磁性キャリアと重合法で作成されたトナーとを含む富士ゼロックス製Docu Centre Color500機用の現像剤を収容した現像剤収容体を有するものを用いた。以上の構成の装置を用いて、高温高湿(28℃、80%RH)の環境下における画像密度5%での10万枚の通紙と,低温低湿(10℃、15%RH)の環境下における画像密度5%での10万枚の通紙とを順に行ない、合計20万枚の走行試験を行なった。その後、画質評価を行なった。その結果、20万枚目まで画質に問題はなかった。
【0051】
一方、比較例1として、上記走行試験において、磁性キャリア除去部材なしで行なった場合には、ほぼ1万枚目から色筋が発生した。
【0052】
また、比較例2として、上記走行試験において、磁性キャリア除去部材なしで且つマグネット内蔵ブラシロールありの場合には、ほぼ4万枚目から色筋が発生した。
【0053】
さらに、比較例3として、上記走行試験において、磁性キャリア除去部材なしで且つ磁性ゴムブレードありの場合には、ほぼ15万枚目から色筋が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す感光体の回転が停止する時点(立ち下がりの時点)において、磁性キャリアが感光体の表面へ移行する様子を説明するための図である。
【図3】感光体の回転が再開された時点(立ち上がりの時点)で、磁性キャリア除去部材を感光体の表面に近接して磁界を作用させる様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
10 感光体
10a 中心軸
11 帯電器
12 露光器
13 現像器
14 転写ロール
15 磁性キャリア除去装置
15_1 磁性キャリア除去部材
15_2 磁性キャリア除去部材駆動部
16 クリーニングブレード
17 記録用紙収容部
18 用紙搬送装置
19 定着器
19_1 定着ロール
19_2 圧力ロール
20 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の回りを表面が所定方向に循環移動する、該表面に静電潜像が形成される像保持体と、
トナーと磁性キャリアとを含む現像剤を内部に保持し、該現像剤中のトナーで前記静電潜像を現像して前記像保持体上に現像像を形成する現像器と、
前記現像像を所定の被転写面に転写し最終的には記録媒体上に定着することにより該記録媒体上に定着像からなる画像を形成する転写定着部と、
前記像保持体表面の循環移動を停止、作動する移動制御部と、
前記像保持体の、前記被転写面に前記現像像が転写された後の表面に残留したトナーを該表面から除去するクリーニング部と、
前記クリーニング部よりも前記像保持体表面の循環移動方向上流側で、前記像保持体の、前記被転写表面に現像像が転写された後の表面に接近乖離可能な、該循環移動が停止後に作動された場合に該表面に接触あるいは近接して該表面に磁界を作用させる磁性キャリア除去部材とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニング部が、前記像保持体の表面に接触して前記トナーを掻き落とす、その接触している箇所で該表面に該トナーのトナー溜まりを形成するものであり、
前記磁性キャリア除去部材が、前記トナー溜まりに近接して該トナー溜まりに磁界を作用させるものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−8548(P2010−8548A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165655(P2008−165655)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】