説明

画像形成装置

【課題】 ワークフローにある電子文書の印刷許可状態を画像形成装置側で検知して、印刷の可否を制御すること。
【解決手段】 本発明の画像形成装置は、ワークフローを管理する管理サーバへ印刷データの印刷許可状態の問合せを行うワークフロー印刷許可状態問合せ部を設けて、該問合せの結果に基づいて印刷の可否を制御する方法により課題を解決した。さらに印刷データ中に特定文字列が存在する場合にのみワークフローに印刷許可を問い合わせるとすることして、ワークフロートは関係ないデータでの不必要な問い合わせにかかる時間を削減した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子文書の回覧システムであるワークフロー中の該電子文書の印刷許可状態を画像形成装置側で検知して、画像形成装置が印刷の可否を制御することを可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国でのSOX法(上場企業会計改革および投資家保護法)の制定を受けて、企業内文書での取り扱いに関して、一層のセキュリティの向上が必要とされるようになった。
【0003】
電子文書をグループ内の複数のユーザで操作するワークフローのシステムでは、電子文書を回覧して指定したユーザにのみ閲覧や印刷が可能とする機能がある。従来このワークフローのシステムでは、印刷可能なワークフロー状態であるかをホストに問い合わせを行い、印刷可能な状態であれば印刷するという印刷可否の制御をホスト側が行っていた。その制御方法としては、ホスト側のアプリケーション上で印刷ボタンを無効にしたり、グレーアウトにしたりなど、印刷データを作れる状態になってからボタンが有効になるという形式がとられていた。
【0004】
しかし、このホスト側制御によるワークフローの印刷の制限方法では、一旦ワークフローの電子文書をプリンタブルファイル化して何度でも送信可能な状態にした場合、印刷されるのが一度だけと指定してあるデータであっても複数回の印刷が可能になってしまう問題があった。これは、ホスト側のアプリケーションにのみ印刷可否制御を行わせるためであるが、これまで、画像形成装置がワークフローの電子文書の状態を検知して印刷を制御する方法は無かった。
【0005】
従来技術として、画像出力装置のセキュリティ装置において、入力されるプリントジョブ中の特定の出力内容の有無を検知する特定出力内容検知手段1と、画像出力装置の紙詰まりを検知する紙詰まり検知手段2と、紙詰まりが生じたページの再印刷処理を制御する再印刷制御手段3とから構成し、特定出力内容検知手段1の出力と紙詰まり検知手段2の出力によって再印刷制御・出力制御手段3を制御して、特定内容を有するページに紙詰まりが生じた場合には再印刷を禁止する方法がある(特許文献1参照)。
【0006】
また、ジョブ履歴を当該ジョブ履歴に関わったユーザ以外に参照できないように対策するとともに、全てのユーザのプライバシーに関する情報を取得できないように対策することで、セキュリティを向上させるデバイスおよび履歴表示制御方法を提供する方法がある(特許文献2参照)。
【0007】
しかし、これらの方法では、ワークフローにある電子文書の印刷許可状態を画像形成装置側で検知して、印刷の可否を制御することはできなかった。
【特許文献1】特開平07−125391号公報
【特許文献2】特開2007−87002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、ワークフローにある電子文書の印刷許可状態を画像形成装置側で検知して、印刷の可否を制御することはできなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像形成装置は、ワークフローの印刷データの印刷許可状態を管理サーバに問い合わせるワークフロー印刷許可状態問合せ部と、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部の問合せ結果に基づいて印刷するかしないかの判断をする印刷判断部とを有することを特徴とする。
【0010】
ここでワークフローとは、特定のグループ内で複数のユーザが電子文書を取り扱うことを可能とさせる電子文書回覧システムのことを指す。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、前記印刷データ中に特定文字列の存在を検知する特定文字列検知部を有し、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部は、前記特定文字列検知部が検知した前記特定文字列の存在の有無に基づいて前記印刷許可状態を問い合わせることを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部による前記印刷データの印刷許可状態の問合せ結果、印刷が不許可の場合に該印刷データを廃棄処理する不許可データ廃棄部を有することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置は、ワークフローの印刷データの印刷許可状態を管理サーバに問い合わせるワークフロー印刷許可状態問合せ部と、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部の問合せ結果に基づいて印刷するかしないかの判断をする印刷判断部とを有することを特徴とする。
【0014】
このため、従来行われていたホスト側での印刷許可をせずとも、画像形成装置自体がワークフロー中の印刷許可状態に応じて、印刷の可否の制御を行うことが可能となるために、ワークフローの電子文書の印刷に関するセキュリティが向上する。
【0015】
また、本発明の画像形成装置は、前記印刷データ中に特定文字列の存在を検知する特定文字列検知部を有し、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部は、前記特定文字列検知部が検知した前記特定文字列の存在の有無に基づいて前記印刷許可状態を問い合わせることを特徴としてもよい。
【0016】
このため、電子文書によってワークフローに問合せが必要なデータか不必要なデータかを印刷データを受け取った時点で確認可能となり、印刷データのワークフローを管理する管理サーバへの問合せに関する制御が簡単化される。
【0017】
また、本発明の画像形成装置は、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部による前記印刷データの印刷許可状態の問合せ結果、印刷が不許可の場合に該印刷データを廃棄処理する不許可データ廃棄部を有することを特徴としてもよい。
【0018】
このため、本来印刷されてはならない印刷データが画像形成装置内に残ることを禁止して常に廃棄することにより、印刷データのセキュリティが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ワークフローにある電子文書の印刷許可状態を画像形成装置側で検知して、印刷の可否を制御することはできなかった点を画像形成装置にワークフローを管理する管理サーバへの問合せ機能を設けて、該問合せの結果に基づいて印刷を制御する方法により解決した。
【実施例】
【0020】
[構成]
図1は、本発明の実施例に係わる画像形成装置の機能ブロック図である。
【0021】
画像形成装置101は、データインタフェース部111、本体設定部113、記憶部115、制御部117、出力設定部119、印刷制御部121、印刷部123、解析部131とを有している。解析部131は、本発明の本質的な機能を司る機能部であるが、その内部にさらに特定文字列検知部133、ワークフロー印刷許可状態問合せ部135、印刷判断部137、不許可データ廃棄部139とを有している。
【0022】
以下に各機能部について説明する。
【0023】
データインタフェース部111は、PC(Personal Computer)201から送信された印刷データを受信すると共に管理サーバ301とのデータの送受信を行う機能部である。インタフェースの規格はUSB、シリアル、パラレルないしはネットワークインタフェース等のいずれであってもよい。
【0024】
本体設定部113は、画像形成装置101本体の様々な初期設定を記録保持する機能部である。
【0025】
記憶部115は、半導体メモリ及び回転磁気ディスク装置等の記憶装置からなり、画像形成装置の動作に必要なプログラムやデータを記録すると共に、本発明の印刷データ及び印刷データリストを記録する。
【0026】
制御部117は、CPUと周辺回路を有し、画像形成装置101の動作の制御を行う。また、後述の解析部131が有する各機能部からの指示を得て、本発明の印刷許可に関する動作の制御を行う。
【0027】
出力設定部119は、画像形成装置101が印刷出力を行う際の設定事項の記録保存を行う。
【0028】
印刷制御部121は、印刷部123で印刷出力を行う際に必要な制御を行う。
【0029】
印刷部123は、印刷エンジンを有し、紙などの媒体に印刷出力D53を行う。
【0030】
解析部131は、本発明の最も本質的な機能を司る機能部であり、ワークフロー文書の管理を行う管理サーバ301に印刷可否状態を問合せ、その結果に基づく印刷の判断を行う。また、問合せを行うためのデータであるかどうかを判断するために印刷データ中の特定文字列の存在を検知する。各動作の詳細は以降の各機能部に記載する。
【0031】
特定文字列検知部133は、印刷データのヘッダ中にワークフローへの確認を行うかどうかの特定文字列が存在するかどうかを検知する。印刷データは一般的にページ記述言語で書かれており、そのヘッダ部分にはPJL(Printer Job Language)などによるプリンタコントロールのコマンドが書かれているが、同ヘッダ中にワークフローへの確認を行うことを表すワークフロー確認特定文字列を組み込んでおくと、その印刷データは保存することなく印刷が許可される。この文字列は、どのようなものであってもよいが、偶然にも同じ文字列が発生しないよう”%”や”&”などの特殊文字を埋め込んだ、例えば、”%%&&WORKFLOW&ID=xxyyzz&&%%”のようなものでよい。後半の”ID=xxyyzz”部分に問い合わせる管理サーバの情報、問合せ文書の情報などを含める方法とすることが可能である。
【0032】
ワークフロー印刷許可状態問合せ部135は、前記特定文字列検知部133がワークフロー確認特定文字列の存在を検知すると、管理サーバ301に印刷データがワークフローにおいて印刷許可のステータスを有しているかどうかの確認を行う。ワークフロー中の電子文書は、設定によって一度(ないしは所定の回数)印刷されると以降の印刷を許可しないなどの制御が可能である。
【0033】
従来は、ホスト(PC201等)側でこのような印刷許可の確認を管理サーバに問い合わせるか、ないしは送られてきた電子文書中に埋め込まれたステータス情報を基に印刷許可が与えられているかどうかを判断し、印刷データの生成の可否の制御を行ってきた。
【0034】
本実施例の画像形成装置101では、このようなホスト側の制御ではなく、たとえ画像形成装置101に印刷可能状態にされたファイルが送信されても、画像形成装置101自体がワークフローの管理サーバ301に問合せを行う方法により、印刷許可が得られていない文書に関しては印刷ができなくなり、より高いセキュリティを保つことが可能となる。
【0035】
印刷判断部137は、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部135の問合せ結果に基づいて印刷の可否の判断を行い、印刷可であれば印刷部123に印刷データを渡して印刷を行う。印刷不可であれば印刷は行わない。
【0036】
不許可データ廃棄部139は、前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部135の問合せ結果、印刷不可と判断された場合に該印刷データを画像形成装置101の記憶部115内にとどめずにデータの消去を行って廃棄処理をする。データの廃棄を確実に行うために、単にFAT(File Allocation Table)からのデータの消去を行うのではなく、実際にデータが記録されていた記憶部115(一次記憶と二次記憶の両方)の該当データ値を例えば全てNULL値に書き換えするなどの処理を行う。
【0037】
[フローチャート]
図2のフローチャートを用いて、画像形成装置101が管理サーバに問合せを行い、その結果に基づいて印刷の可否を制御する動作の流れについて説明する。
【0038】
最初のS11及びS13は、PC201上での処理動作である。
【0039】
S11:PC201において、印刷データを生成するが、その際にワークフローへの問合せを行うための特定文字列を付加するかどうかの設定を行う。
【0040】
S13:S11で特定文字列の付加ないしは不付加の設定がされた印刷データを画像形成装置101に送信し、印刷実行が指示される。
【0041】
以降のS21及びS23は画像形成装置101上での処理動作である。
【0042】
S21:データインタフェース部111は、印刷データのヘッダ部分を受信する。
【0043】
S23:特定文字列検知部133は、ワークフローを管理する管理サーバ301への該印刷データの印刷許可状態を問合せするワークフロー確認特定文字列が印刷データのヘッダ中にあるかどうかを検知する。前記ワークフロー確認特定文字列が存在したときは動作をS25に移行する。存在しない場合には動作をS35に移行する。
【0044】
S24:ワークフロー印刷許可状態問合せ部135は、管理サーバ301に印刷データが印刷許可状態であるかどうかの問合せを行う。
【0045】
以降のS25及びS27は管理サーバ301上での動作である。
【0046】
S25: 印刷許可状態の問合せを受信した管理サーバ301は、ワークフローのシステムに印刷許可状態を確認する処理を行う。
【0047】
S27:S25での確認の結果得られた印刷許可状態を画像形成装置101に返す。
【0048】
以降は、再度の画像形成装置101側における動作である。
【0049】
S29:ワークフロー印刷許可状態問合せ部135は問合せ結果を受け取って、内容の確認を行う。
【0050】
S31:印刷判断部137は、S29で受信した問合せの結果、印刷を許可するかどうかを判断する。印刷を許可する場合は動作をS33に移行する。印刷を許可しない場合には動作をS39に移行する。
【0051】
S33:データインタフェース部111は、残りの印刷データを受信する。S33へ流れるフローは、S31にて印刷許可状態と判断された場合と、後述のS35にてデータ受信が完了していないと判断された場合との2系統からの動作の流れがある。
【0052】
S35:制御部117は、印刷データの受信が完了したかどうかを判断する。印刷データの受信が終わっていなければ動作をS33に移行してデータ受信を継続する。印刷データの受信が終了した場合には動作をS37に移行する。
【0053】
S37:印刷許可がされたので、印刷部123にて印刷データの印刷出力を行う。
【0054】
S39:印刷許可がされなかったので、不許可データ廃棄部139は、印刷データの廃棄処理を行う。
【0055】
上記の一連の動作により、ワークフローにおける電子文書の印刷の許可状態を画像形成装置101が管理サーバ301に問い合わせて、該問合せの結果に基づいて印刷の可否を決定して印刷を行う動作を完了する。
【0056】
[実施例の効果]
本発明実施例の画像形成装置により、以下のことが可能となる。
【0057】
ワークフロー確認特定文字列の存在を検知することにより、ワークフローには関係のない電子文書に関しては通常の印刷を可能とし、ワークフローの電子文書に関しては管理サーバへの問合せを行って、印刷許可状態をチェックすることが可能となる。
【0058】
画像形成装置側でもワークフロー文書の印刷許可の制御が可能となるために、ホスト側での印刷制御のループ・ホールが発見されたとしても、画像形成装置側でセキュリティを守ることが可能となる。
【0059】
ワークフローの電子文書の印刷に関して画像形成装置側でもセキュリティをかけることが可能となるために、セキュリティ管理の責務がはっきりする。
【0060】
印刷データが印刷不許可だった場合には、該印刷データを廃棄処理するため、残った印刷データを取り出して他の方法で印刷しようとするのを妨げることができ、よりセキュリティが高まる。
【0061】
[その他]
本発明実施例では、特定文字列がヘッダ中に存在するかどうかを検知する方法としたが、ヘッダ中に限定せずに印刷データ全体中に存在するかどうかを検知する方法としてもよい。
【0062】
本発明実施例では、ワークフロー確認特定文字列が存在すると管理サーバ301への問合せを行うとの設定にしたが、例えばワークフロー確認特定文字列が存在しないと管理サーバ301への問合せを行うなどの他の設定によって動作させる方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明実施例の画像形成装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明実施例の画像形成装置の動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
101 画像形成装置
111 データインタフェース部
113 本体設定部
115 記憶部
117 制御部
119 出力設定部
121 印刷制御部
123 印刷部
131 解析部
133 特定文字列検知部
135 ワークフロー印刷許可状態問合せ部
137 印刷判断部
139 不許可データ廃棄部
201 PC(Personal Computer)
301 管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークフローの印刷データの印刷許可状態を管理サーバに問い合わせるワークフロー印刷許可状態問合せ部と、
前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部の問合せ結果に基づいて印刷するかしないかの判断をする印刷判断部とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置であって、
前記印刷データ中に特定文字列の存在を検知する特定文字列検知部を有し、
前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部は、前記特定文字列検知部が検知した前記特定文字列の存在の有無に基づいて前記印刷許可状態を問い合わせる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置であって、
前記ワークフロー印刷許可状態問合せ部による前記印刷データの印刷許可状態の問合せ結果、印刷が不許可の場合に該印刷データを廃棄処理する不許可データ廃棄部を有する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−99993(P2010−99993A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275365(P2008−275365)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】