説明

画像形成装置

【課題】部品点数が少なくて済み、装置本体のコンパクト化や装置の二次外観を損なわず、装置本体内にアクセスが容易な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像を用紙に出力可能な画像形成手段(10)を収納した装置本体(2)と、この装置本体に対して回動可能に支持されており、原稿を光学的に読み取り可能な画像読取手段(20)を収納した筐体(22)とから構成され、この装置本体には、回動可能に支持されており、その上面(7)が筐体の下面(66)に対峙する一方、その下面(8)が画像形成手段を外装する外壁部材(6) が設けられており、この外壁部材の上面に対面した筐体の下面に形成されたレール部材(80)と外壁部材を連結して、筐体の開閉動作に連動して外壁部材を開閉させる吊下機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等に代表される画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置は、その装置本体の上側に原稿搬送装置や画像読取手段、例えばスキャナ部を搭載しており、原稿搬送装置にセットされた原稿、或いは、スキャナ部に載置された原稿はスキャナ部で光学的に読み取られる。
そして、電子写真プロセスを用いる画像形成装置では、その画像形成手段の感光体ドラムを予め帯電し、このドラムの表面に光を照射して静電潜像を形成する。次いで、現像されたトナー画像を用紙に転写及び定着する。
【0003】
ここで、スキャナ部は筐体に収納されており、この筐体を本体から開放させることによって装置本体の内部を視認可能な状態にして、メンテナンスや部材の着脱を可能にする構造が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
詳しくは、特許文献1では、筐体の下面が装置本体の外装壁をなし、この筐体を装置本体に対して回動すると装置本体内にアクセスできる。一方、特許文献2では、筐体の下面に排紙トレイを兼ねた外壁部材が設けられ、この外壁部材が装置本体の外装壁も兼用しており、筐体の開放動作に伴って外壁部材が装置本体に対して開くと装置本体内にアクセスできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−101704号公報
【特許文献2】特開2005−62326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の原稿搬送装置やスキャナ部の重量がかなりあることを鑑みれば、特許文献1の如くスキャナ部の筐体が大きく開く構造よりも、特許文献2の如くスキャナ部の筐体が小さく開くだけで外壁部材が大きく開く構造の方が楽な操作により装置本体内に容易にアクセスできて好ましい。
しかしながら、上記従来の技術、特に特許文献2の構造を利用しても、部品点数が増えて複雑になり、装置本体が大型になる問題がある。
【0006】
なぜならば、この特許文献2の構造では、筐体の開閉動作に連動して外壁部材を開閉させるにあたり、この筐体や外壁部材の開放姿勢を保持するための複数のリンク部材を必要としているからである。
また、筐体を開いた状態の画像形成装置の二次外観にも見栄えが悪くならないように留意しなければならない。この特許文献2では、これら複数のリンク部材が装置本体に配置されており、筐体を装置本体から開いた際にリンク部材が前面から視えてしまうからである。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、部品点数が少なくて済み、装置本体のコンパクト化や装置の二次外観を損なわず、装置本体内にアクセスが容易な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、画像を用紙に出力可能な画像形成手段を収納した装置本体と、この装置本体に対して回動可能に支持されており、原稿を光学的に読み取り可能な画像読取手段を収納した筐体とから構成され、前記装置本体には、その上面が前記筐体の下面に対面する一方、その下面が前記画像形成手段を外装する外壁部材が設けられており、前記筐体の下面に形成されたレール部材と前記外壁部材を連結して、前記筐体の開閉動作に連動して前記外壁部材を開閉させる吊下機構が設けられている。
【0009】
第1の発明によれば、これらレール部材は、装置本体ではなく、筐体の下面と外壁部材の上面との対面部分、換言すれば、外壁部材の上面による筐体の下面への投影部分に配置されているので、従来に比して、装置本体に対する複数のリンク部材の配置スペースが不要になり、装置本体をコンパクトにできるとともに、画像読取手段を装置本体に対して開いた際にもレール部材が視え難くなり、装置の二次外観も損なわれない。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、外壁部材の上面は、排出された用紙の積層空間を形成しており、吊下機構は、外壁部材の上面のうち、この用紙の積層空間の外側領域に配置されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、吊下機構は、外壁部材の上面、具体的には、装置本体の内側領域と用紙の積層空間の外側領域との間のスペースに配置されており、この点も複数のリンク部材を装置本体に配置していた従来に比してコンパクトな装置本体の形成に寄与する。
【0011】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、装置本体に対する外壁部材の開放角度が、装置本体に対する画像読取手段の筐体の開放角度よりも大きいことを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、画像読取手段の筐体の開放角度に対して外壁部材の開放角度を大きくすれば、画像読取手段の筐体の開放角度が限られていても、外壁部材をより大きく開放でき、装置本体内へのアクセスが容易になる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明の構成において、外壁部材は、その開放動作によって、画像形成手段のうち交換用部品にアクセス可能にさせることを特徴とする。
第4の発明によれば、第3の発明の作用に加えてさらに、外壁部材の開放角度が画像読取手段の筐体の開放角度よりも大きいので、画像読取手段の限られた開放角度においても、交換用部品のメンテナンスを良好に行える。
【0013】
第5の発明は、第1から第4の発明の構成において、画像読取手段の筐体の下面と装置本体のうち外壁部材の外側領域との間に設けられており、画像読取手段の筐体の開放状態を保持可能な保持部材と、装置本体に設けられており、この保持部材に係止して筐体の画像読取手段の開放状態を保持するストッパとをさらに具備することを特徴とする。
【0014】
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、外壁部材の開放は、この外壁部材の上面に設けられた吊下機構で行われるのに対し、画像読取手段の筐体の開放姿勢は、この外壁部材の外側に設けられた保持部材やストッパで保持される。つまり、外壁部材よりも重量のある画像読取手段だけは装置本体側で支持するため、画像読取手段の筐体の他、外壁部材の保持をも装置本体側に配置していた従来に比して、画像読取手段の筐体と装置本体との対峙部分のスペースを有効に活用できる。
【0015】
第6の発明は、第5の発明の構成において、保持部材は、その一端側で筐体に揺動可能に連結され、他端側は装置本体に対して前記レール部材が延びる方向に沿って移動可能に支持されており、筐体を装置本体から開放位置に移動するのにともない、筐体の開放側から離れる方向に移動することを特徴とする。
第6の発明によれば、第5の発明の作用に加えてさらに、筐体の開放状態を保持する状態において、保持部材が開放側から離れた方向に移動するため、開放側でのメンテナンス作業における作業がより容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置本体に対して画像読取手段の筐体を開くのに連動して、装置本体に設けられた外壁部材を開閉させる吊下機構が、装置本体ではなく、筐体の下面と外壁部材の上面との対面部分に配置されているため、部品点数が少なくて済み、装置本体のコンパクト化や装置の二次外観を損なわず、装置本体内にアクセスが容易な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の複合機の外観斜視図である。
【図2】図1の複合機のコントローラを含めた概略構成図である。
【図3】図1の排紙トレイ周辺の拡大斜視図である。
【図4】図3のケーシングと外壁部材との連結の説明図である。
【図5】図3の上方からみた複合機の斜視図である。
【図6】図1の外壁部材の開放させた複合機の斜視図である。
【図7】図1の筐体と図6の筐体との支点を一致させて示した側面図である。
【図8】図7の外壁部材の閉じ状態を示した側面図である。
【図9】図7の外壁部材の開き状態を示した側面図である。
【図10】(a)は図7の閉じ状態における保持リンク、(b)は図7の開き状態における保持リンクの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるデジタル複合機、いわゆる多機能周辺機器(Multiple Function Peripheral、以下、MFPと称する)1が右前上方から示されている。同図では、ユーザに相対するMFP1の正面と、このMFP1の右側面とが見えている。このMFP1は箱型の装置本体2を備え、この装置本体2の上側に用紙が排出される。
【0019】
具体的には、この装置本体2の内部は、その上方から外壁部材6で覆われており、図1で見える外壁部材6の上面7が排紙トレイとして機能する。
また、本実施例の装置本体2は、図1で見て上面7に対する左右側及び奥側が上方に向けてそれぞれ突き出ており、この装置本体2の上方には光学式のスキャナ部(画像読取手段)20が設置される。
【0020】
さらに、この図では省略するが、スキャナ部20の上側には自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder、以下、ADFと称する)を搭載可能であり、MFP1を複写機やファクシミリ、ネットワークスキャナとして利用するときには、このADFから原稿を搬送し、その画像面はスキャナ部20にて光学的に読み取られる。
【0021】
スキャナ部20は後述のケーシング(筐体)22に収納され、このケーシング22の手前側には操作パネル28が設置されている。このパネル28には、ユーザの各種操作に供される複数の操作キー、文字情報や案内画像等の各種情報を表示する操作画面が設けられている。これらの操作内容は図2のコントローラ38に通知される。
【0022】
一方、装置本体10の下部にはフロントローディング式の用紙供給装置が配置される。詳しくは、この供給装置は給紙カセット4を有し(図1)、カセット4は枚葉の用紙を厚み方向に積層して収納でき、また、装置本体2に対して引き出し可能に構成される。
次に、図2はMFP1のコントローラ38を含めた概略構成図である。
【0023】
当該MFP1は、ネットワークインターフェース(IF)26を介してネットワークに接続され、さらに、公衆回線にも接続されている。そして、MFP1はプログラムの命令にしたがって各種動作を実行する。
このMFP1は、例えば、印刷機能(Copy機能)、送信機能(Send機能)及び保存機能(Box機能)を有する。
【0024】
具体的には、HDD32はボックス領域34を備え、クライアントPCから送信された印刷ジョブ、スキャナ部20で読み込まれたスキャンジョブ、FAX通信部24にて受信したファクシミリジョブ等の種々のデータを逐次保存しており、Box機能を有している。
さらに、MFP1はメモリ30を備えている。このメモリ30はROMやRAM等を有しており、各種処理動作のプログラム等が格納されている。
【0025】
上述のFAX通信部24はSend機能も有し、HDD32に保存されたファクシミリジョブを相手先に向けて送信する。
また、プリントエンジン(画像形成手段)10は、原稿をスキャナ部20の画像読取位置に搬送する上記ADF、用紙を収納する給紙カセット4、各色に対応した静電潜像を形成するドラムユニット14、対応色のトナーコンテナ18のトナーを用いてトナー画像を現像する現像ユニット16、トナー画像を用紙に転写する中間転写ベルト12に接続され、HDD32に保存された印刷ジョブ等を外壁部材6の上面7に排出しており、Copy機能を有している。
【0026】
なお、これら中間転写ベルト12、ドラムユニット14、現像ユニット16やトナーコンテナ18は、装置本体2内にて給紙カセット4の上側に収納されている。
再び図1に戻り、本実施例のケーシング22は、その長手方向がMFP1の正面の幅よりも大きな略直方体で形成され、その上面にはコンタクトガラス23が配置される。
【0027】
このスキャナ部20の構成部品は、ケーシング22内にてコンタクトガラス23の下側に収納されている。詳しくは、スキャナ部20は原稿の画像データを読み取るキャリッジやCCD(いずれも図示しない)等を有し、このキャリッジはコンタクトガラス23に向けて光を照射しつつ、ケーシング22の長手方向に沿って移動する。そして、この照射された光が上記CCDで読み取られて所定の信号に変換され、レーザユニット13により原稿画像の静電潜像をドラムユニット14の感光体ドラム上に形成できる。
【0028】
コンタクトガラス23を有した上面は操作パネル28の操作キーや操作画面を有したカバーの下面66に対峙し(図3)、これら上面と下面66の周縁は、図1に示されるように、前面60、背面62及び側面64に連なっている。具体的には、側面64,64はケーシング22の長手方向の両端部分で対峙する。これら側面64,64の手前端は、操作パネル28を配置した前面60に連なり、前面60は図1で見て奥側に位置する背面62に対峙する。
【0029】
この背面62の適宜位置には読取側支点68が設けられ(図7)、ケーシング22は装置本体2に回動自在に支持されている。
また、下面66のうち外壁部材6の上面7に対峙した位置には、この外壁部材6を連結する吊下機構が設けられる。具体的には、図3,4に示される如く、本実施例の吊下機構は、レール部材(開放用レール)80、腕部42、及びリンクピン(ピン部材)46からなり、まず、開放用レール80がケーシング22の下面66に形成されている。
【0030】
詳しくは、本実施例の開放用レール80は、図3で見て排紙トレイとして機能する上面7の左右端にそれぞれ位置し、MFP1の上下に向けて開口した筒状本体82を有する。この筒状本体82の開口は矩形状に形成され、その周縁には周壁が連なり、MFP1の正面から背面に向けて延びている。また、筒状本体82の周壁には、この周壁を貫通した外側溝部83や内側溝部84が穿設されている(図3,4,7)。
【0031】
より具体的には、内側溝部84は筒状本体82のうち上面7に近接配置され、MFP1の正面から背面に向けて延びている。一方、外側溝部83も同じくMFP1の正面から背面に向けて延びているが、内側溝部84の反対側に位置しており、これら外側溝部83と内側溝部84とは略同じ高さで対峙してリンクピン46を受容する。
【0032】
このリンクピン46は頭部47や脚部48を有しており、頭部47が内側溝部84に、脚部48が外側溝部83にそれぞれ配置される。
なお、筒状本体82のうち外側溝部83の奥端近傍には、回動支持部86が筒状本体82の周壁を貫通して穿設され(図8,9)、後述する保持リンク(保持部材)52を回動自在に支持する。
【0033】
ケーシング22には装置本体2に係合するフック部材72が設けられている(図7)。このフック部材72は、下面66から下方に向けて突出しており、ケーシング22から、コンタクトガラス23を有した上面や、操作パネル28の操作キーや操作画面を有したカバーを取り外した図5に示されるように、前面60の近傍にて装置本体2の上記突き出た左右側に係合可能に構成されている。
【0034】
さらに、図3,5で見て操作パネル28の右側の前面60には操作レバー70が配置され、この操作レバー70を手前側に引くと、フック部材72と装置本体2との係合を解除することができる。
一方、上述した腕部42は外壁部材6の上面7に設けられている。この腕部42もまた排紙トレイとして機能する上面7の左右端にそれぞれ形成され(図3)、筒状本体82の開口の下方から外側溝部83と内側溝部84がそれぞれ穿設された周壁との間に受容される(図4)。
【0035】
腕部42には、これら外側溝部83や内側溝部84に対応した挿通孔43がこの腕部42を貫通して穿設されている。挿通孔43を外側溝部83と内側溝部84との間に配置し、リンクピン46でケーシング22と外壁部材6とを連結すると、外壁部材6はケーシング22に吊り下げられる。
また、図7に示される如く、外壁部材6の奥端には外壁側支点38が設けられ、この外壁部材6も、ケーシング22と同様に、装置本体2に回動自在に支持されている。
【0036】
このように、ケーシング22と外壁部材6とは、この上面7が投影される下面66にて連結しているのに対し、ケーシング22と装置本体2とは、外壁部材6よりも外側で連結している。
詳しくは、図6,7に示されるように、外壁部材6から見て開放用レール80の外側溝部83が穿設された周壁よりもさらに外側には保持リンク52がそれぞれ設けられている。
【0037】
この保持リンク52の一端には回動部53が形成され、この回動部53が上述した外側溝部83近傍の回動支持部86に連結する。一方、保持リンク52の他端にはスライド部54が形成されており(図10(a))、このスライド部54は丸細ピン55を有し、この丸細ピン55が、装置本体2の上記突き出た左右側に形成された保持用レール50にスライド自在に支持される。
【0038】
なお、このスライド部54は図示しないアシスト用バネに付勢されている。具体的には、当該バネは丸細ピン55と装置本体2の背面側とを連結し、ケーシング22の開き動作時、つまり、保持リンク52で云えば図10(a)の姿勢から(b)の姿勢に移る場合には、スライド部54を装置本体2の背面側に向けて速やかに移動させる。これに対し、ケーシング22の閉じ動作時、つまり、図10(b)の姿勢から(a)の姿勢に戻る場合には、スライド部54を装置本体2の正面側に向けてゆっくり移動させるダンパー機能を有している。
【0039】
そして、当該MFP1では、図1の状態において、操作レバー70を手前側に引き、フック部材72と装置本体2との係合を解除すると、ケーシング22の前面60側が装置本体2から約10mm程度浮き上がる。これは、ケーシング22が図6に示された突起49で押し上げられたからである。より具体的には、装置本体2の上記突き出た左右側には図示しないトリガー用バネがそれぞれ設けられており、突起49を上方に向けて付勢している。これにより、フック部材72と装置本体2との係合が解除されると、突起49が当該バネの付勢力によってケーシング22の前面60側を押し上げる。
【0040】
続いて、ユーザがその手でケーシング22の前面60側を持ち上げると、開放用レール80が傾き、保持リンク52の回動部53はケーシング22の開放用レール80に対して回動しつつ、スライド部54が、保持用レール50に沿ってMFP1の正面側から背面側に向けて移動する。これにより、ケーシング22は読取側支点68を中心にして図7の矢印方向に開き始める。なお、この図7の保持リンク52は、図10(a)の姿勢と図10(b)の姿勢との中間姿勢も併せて示されている。
【0041】
同時に、外壁部材6の腕部42は、リンクピン46が、開放用レール80の外側溝部83や内側溝部84の手前側の位置、換言すれば、このピン46の脚部48が示された図8で見て外側溝部83の右端の位置から、開放用レール80が傾くために、外側溝部83や内側溝部84の奥側の位置、換言すれば、図9で見て外側溝部83の左端の位置に向けて案内されるため、外壁部材6は外壁側支点38を中心にして図9の矢印方向に開く(開放角度:約60°)。
【0042】
なお、この外壁部材6の開放角度は、読取側支点68と外壁側支点38との距離を遠ざければ、さらに大きくなる。
ここで、上述した保持用レール50にはストッパ56が設けられている(図10)。このストッパ56は、図7や図10(b)の姿勢による保持リンク52のスライド部54に接する位置に設けられ、ケーシング22の全開位置を保持することができる。
【0043】
詳しくは、このストッパ56はストッパ用バネ58によって上方向に付勢されており(図10(b))、図10(a)の姿勢のスライド部54が保持用レール50に沿ってMFP1の背面側に向けて移動してストッパ56に接すると、ストッパ56はこのバネ58の付勢力に抗して保持用レール50の下方に向けて押し込まれる。
【0044】
一方、スライド部54が、この押し込まれたストッパ56の位置からMFP1の背面側に向けてさらに移動すると、ストッパ56が当該バネ58の付勢力によって保持用レール50の上方に飛び出し、スライド部54を係止する。これにより、読取側支点68を中心にして図7の矢印方向に開いたケーシング22は、図6に示された姿勢で保持される(開放角度:約40°)。
【0045】
そして、この図6に示されるように、外壁部材6の下面8が外部から視認可能な状態になると、ユーザは、装置本体2に収納されたサービスユニット、本実施例で云えば、上述の中間転写ベルト12、ドラムユニット14、現像ユニット16やトナーコンテナ18等にアクセスでき、これらを容易に交換可能になる。
【0046】
以上のように、本実施例によれば、装置本体2にはプリントエンジン10が収納され、ケーシング22にはスキャナ部20を収納されており、このケーシング22は装置本体2に対して開閉可能である。
外壁部材6は、その上面7がケーシング22の下面66に対峙して排出された用紙の積層空間を形成し、その下面8がプリントエンジン10を外装するが、この外壁部材6も装置本体2に対して開閉可能である。
【0047】
ここで、吊下機構がケーシング22の下面66と外壁部材6の上面7との間に設けられている。
詳しくは、開放用レール80がケーシング22の下面66に形成され、これら開放用レール80と外壁部材6の腕部42とがリンクピン46で連結されており、外壁部材6は、ケーシング22の下面66に吊り下げられている。このように、開放用レール80とリンクピン46とで外壁部材6をケーシング22に連結すれば、従来に比して部品点数が少なくて済み、製造コストの低廉化を達成できる。
【0048】
そして、これら開放用レール80やリンクピン46は、装置本体2ではなく、ケーシング22の下面66と外壁部材6の上面7との対峙部分、換言すれば、外壁部材6の上面7によるケーシング22の下面66への投影部分に配置されているので、従来に比して、装置本体に対する複数のリンク部材の配置スペースが不要になり、装置本体2をコンパクトにできるとともに、スキャナ部20を装置本体2に対して開いた際にもこれら開放用レール80やリンクピン46が視え難くなり、MFP1の二次外観も損なわれない。
【0049】
また、本実施例の吊下機構は、外壁部材6の上面7、具体的には、装置本体2の内側領域と用紙の積層空間の外側領域との間のスペースに配置されており、この点も複数のリンク部材を装置本体に配置していた従来に比してコンパクトな装置本体の形成に寄与する。
さらに、ケーシング22の開放角度に対して外壁部材6の開放角度を大きくすれば、重量のあるスキャナ部20の開放角度が限られていても、外壁部材6をより大きく開放でき、装置本体2内へのアクセスが容易になる。
【0050】
さらにまた、外壁部材6の開放角度がケーシング22の開放角度よりも大きいので、スキャナ部20の限られた開放角度においても、交換用部品、本実施例で云えば中間転写ベルト12、ドラムユニット14、現像ユニット16やトナーコンテナ18等の着脱性が良好になる。
【0051】
また、外壁部材6の開放は、この外壁部材6の表面7に設けられた吊下機構で行われるのに対し、スキャナ部20の開放姿勢は、この外壁部材6の外側に設けられた保持リンク52やストッパ56で保持される。さらに、保持リンク52はスキャナ部20の開放姿勢を維持する状態において、開放側から離れた方向に移動する。これらの構成により、上記の作業がより容易になる。
【0052】
つまり、外壁部材6よりも重量のあるスキャナ部20だけは装置本体2側で支持するため、スキャナ部の他、外壁部材の保持をも装置本体側に配置していた従来に比して、スキャナ部20と装置本体2との対峙部分のスペースを有効に活用できる。
【0053】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上述したMFP1は画像形成装置の一例であり、本発明は、スキャナ部のケーシングの開放動作に連動して開く外壁部材を備えた複写機、プリンタやファクシミリ等にも当然に適用可能である。
【0054】
そして、これらいずれの場合にも上述と同様に、部品点数が少なくて済み、装置本体のコンパクト化や装置の二次外観を損なわず、装置本体内にアクセスが容易な効果を奏する。
【符号の説明】
【0055】
1 MFP(画像形成装置)
2 装置本体
6 外壁部材
7 表面
8 裏面
10 プリントエンジン(画像形成手段)
12 中間転写ベルト(交換用部品)
14 ドラムユニット(交換用部品)
16 現像ユニット(交換用部品)
18 トナーコンテナ(交換用部品)
20 スキャナ部(画像読取手段)
22 ケーシング(筐体)
46 リンクピン(吊下機構)
52 保持部材(保持リンク)
56 ストッパ
66 下面
80 レール部材(開放用レール、吊下機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を用紙に出力可能な画像形成手段を収納した装置本体と、
この装置本体に対して回動可能に支持されており、原稿を光学的に読み取り可能な画像読取手段を収納した筐体とから構成され、
前記装置本体には、前記装置本体に回動可能に支持されており、その上面が前記筐体の下面に対面する一方、その下面が前記画像形成手段を外装する外壁部材が設けられており、
前記筐体の下面に形成されたレール部材と前記外壁部材を連結して、前記筐体の開閉動作に連動して前記外壁部材を開閉させる吊下機構が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記外壁部材の上面は、排出された前記用紙の積層空間を形成しており、
前記吊下機構は、前記外壁部材の上面のうち、この用紙の積層空間の外側領域に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置であって、
前記装置本体に対する前記外壁部材の開放角度が、前記装置本体に対する前記筐体の開放角度よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置であって、
前記外壁部材は、その開放動作によって、前記画像形成手段のうち交換用部品にアクセス可能にさせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置であって、
前記筐体の下面と前記装置本体のうち前記外壁部材の外側領域との間に設けられており、前記筐体の開放状態を保持可能な保持部材と、
前記装置本体に設けられており、この保持部材に係止して前記筐体の開放状態を保持するストッパと
をさらに具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記保持部材は、その一端側で前記筐体に揺動可能に連結され、他端側は前記装置本体に対して前記レール部材が延びる方向に沿って移動可能に支持されており、
前記保持部材は、前記筐体を前記装置本体から開放位置に移動するのにともない、前記筐体の開放側から離れる方向に移動することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−137994(P2011−137994A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297776(P2009−297776)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】