説明

画像形成装置

【課題】帯電ローラの汚れを低減するとともに、経時では徐々に帯電ギャップを低減することで異常放電の発生を防止して、長期にわたって良好な画像を出力することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ギャップ保持部材103や感光体40のギャップ保持部材当接位置を研磨し、感光体40の回転時間に応じて帯電ギャップを徐々に小さくする。研磨ブレード90は帯電ローラ70の両端に取り付けられたギャップ保持部材103の部分のみに当接している。帯電ローラ70が回転することによりギャップ保持部材103を研磨する。研磨ブレード90はポリウレタンゴムを主材料とし、その中にアルミナ粒子を研磨粒子として分散させてある。厚いポリウレタンゴム中に研磨剤を分散させているので、経時で研磨ブレード90が摩耗しても研磨作用が持続し、長期間にわたってギャップ保持部材103を研磨できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機やプリンタ、ファクシミリ、これらの複合装置等の画像形成装置、特に像担持体に非接触配置された帯電ローラを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の帯電手段としてはコロナ放電による方式が広く用いられていたが、オゾン等の放電生成物の発生が少ない近接放電方式も用いられるようになってきている。近接放電方式の帯電手段の一つとして帯電ローラが用いられている。
【0003】
従来、帯電ローラは像担持体に接触配置して用いられていたが、最近では像担持体に非接触配置された非接触帯電ローラも実用化されている。このような非接触帯電ローラを用いた画像形成装置では、例えば特許文献1に開示されているように、帯電ローラを感光体と等速回転させることでギャップ保持部材の摩耗を防止して、経時に亘って帯電ギャップを安定して形成することに重点が置かれていた。
【0004】
一方で、例えば特許文献2に開示されているように、帯電ローラの加圧力を環境に応じて調整することが提案されている。これは、硬度が低めのゴムローラでは環境による硬度の変化で帯電ギャップが変化してしまうことに対応するためのものであり、その狙いとするところは、環境によらず帯電ギャップを一定に維持することである。
【0005】
ただし、硬度が比較的低めなゴムローラでは加圧力を変化させることで帯電ギャップを調整することが可能であるが、帯電部材を樹脂とした場合には硬度が高いため、加圧力を変化させても帯電ギャップはほとんど変化しない。
【0006】
なお、本願発明者が知るところでは、帯電ローラが経時で劣化して異常放電余裕度が低下することについては何ら考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、帯電ローラのような近接放電による帯電方式はコロナ放電による帯電方式に比べて、オゾン等の放電生成物が非常に少ないという利点があるが、帯電ローラが感光体に接触配置されて使用されていると、クリーニングをわずかにすり抜けたトナーやトナー外添剤や感光体に塗布された潤滑剤等が帯電ローラに付着しやすい。そして、これらの物質が付着して蓄積すると、帯電ローラの抵抗が上昇して帯電不良を発生させる。それに対して、帯電ローラを感光体に非接触に配置することで、クリーニングをすり抜けた物質が帯電ローラに接触して転移することを防止することができ、帯電ローラの寿命を向上することができる。
【0008】
しかしながら、帯電ローラを感光体に対して非接触配置した場合には、異常放電による帯電ムラが発生しやすい。これは、帯電ギャップが大きくなるほど発生しやすい。しかも、材料に起因して、均一帯電が可能な帯電ギャップの上限が存在する。この帯電ギャップ上限は、イオン導電性の材料に比べて電子導電性の材料の方が小さく、異常放電が発生しやすい傾向がある。そのため、非接触帯電ローラには主にイオン導電性材料が用いられていたが、イオン導電性の材料でも経時ではギャップ余裕度が低下して異常放電による帯電ムラが発生しやすくなることが判明した。
【0009】
従来の非接触帯電ローラでは特許文献1のように経時にわたって帯電ギャップを安定させることに注力したり、特許文献2の技術のように環境に応じて帯電ギャップを調整することが行われていたが、非接触帯電ローラの経時で発生する異常放電を防止することはなんら考慮されていなかった。
【0010】
本発明はこのような状況をふまえ、帯電ローラを非接触配置することにより、帯電ローラの汚れを低減するとともに、経時では徐々に帯電ギャップを低減することで異常放電の発生を防止して、長期にわたって良好な画像を出力することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、像担持体に対して微小空隙を介して非接触配置された帯電手段を備えた画像形成装置において、前記像担持体と前記帯電手段間の前記微小空隙を前記像担持体の回転時間とともに減少させる帯電空隙低減手段を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明の画像形成装置は、前記帯電手段がローラ形状を有するとともに、該帯電手段が、少なくとも、導電性支持体である芯金、及びイオン導電性材料を含む樹脂材料とからなる帯電部材と、該帯電部材の両端に配置され、前記像担持体の非画像部に当接して前記像担持体と前記帯電部材間に前記前記微小空隙をなすギャップを形成する絶縁性樹脂材料からなるギャップ保持部材とからなることを特徴とする。
【0013】
また本発明の画像形成装置は、前記帯電空隙低減手段が、前記ギャップ保持手段、または前記像担持体の前記ギャップ保持部材の当接位置を研磨して前記微小空隙を低減させることを特徴とする。

【0014】
また本発明の画像形成装置は、前記像担持体と前記ギャップ保持部材との間に回転速度差を発生させる手段を有することを特徴とする。
【0015】
また本発明の画像形成装置は、前記像担持体が有機感光体からなり、最表層に該有機感光体の摩耗を低減するための保護層を形成してなることを特徴とする。
【0016】
また本発明の画像形成装置は、前記像担持体が無機感光体からなることを特徴とする。
【0017】
また本発明の画像形成装置は、前記像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を備え、該潤滑剤供給手段は、前記ギャップ保持部材が当接する位置には潤滑剤を供給しないことを特徴とする。
【0018】
さらに本発明の画像形成装置は、少なくとも前記像担持体と前記帯電手段とを画像形成装置本体から一体で着脱可能なプロセスカートリッジとして構成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、像担持体と帯電手段と空隙を大きくすることで帯電手段の汚れが発生しにくくなり、経時では像担持体と帯電手段間の空隙が減少していくので帯電部材の劣化による異常画像の発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タンデム中間転写方式のフルカラー複写機に適用した例を示す全体構成図
【図2】画像形成ユニットの構成を示す図
【図3】クリーニングブレードの下流に潤滑剤供給手段を配置した例を示す図
【図4】帯電ローラの構成を示す図(A)、帯電ローラに研磨ブレードを当接させた例を示す図(B)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、一実施形態として、像担持体に対して微小空隙を形成して非接触配置された帯電手段を備えた画像形成装置において、像担持体と帯電手段間の空隙が像担持体手段の回転時間とともに減少するように構成する。この構成により、帯電手段の汚れを発生しにくくし、経時での帯電手段の劣化による帯電不良の発生を防止する。すなわち、像担持体と帯電手段と空隙を大きくすることで帯電手段の汚れが発生しにくくなる。また、経時では像担持体と帯電手段間の空隙が減少していくので帯電部材の劣化による異常画像の発生も防止し得る。
【0022】
また本発明は、前記の画像形成装置において、帯電手段は少なくとも、導電性支持体である芯金、及びイオン導電性材料を含む樹脂材料からなる帯電部材と、帯電部材の両端に配置され像担持体の非画像部に当接して像担持体と帯電部材間にギャップを形成する絶縁性樹脂材料からなるギャップ保持部材部と、から構成されるローラ形状のものとし、像担持体と帯電部材との間に安定したギャップを形成するものである。すなわち、帯電部材とギャップ保持部材を樹脂材料からなるローラ形状とすることで、高精度に加工することが可能で、環境変動が小さく安定した帯電ギャップを形成し得る。
【0023】
本発明は、また、前記の画像形成装置において、帯電手段のギャップ保持手段、または像担持体のギャップ保持部材当接位置を研磨して帯電ギャップを低減する帯電ギャップ低減手段を備え、像担持体の回転時間に応じて、帯電ギャップを低減させる構成としている。また本発明は、上述の画像形成装置において、像担持体とギャップ保持部材との間に速度差が発生するように構成し、像担持体とギャップ保持部材との間の速度差により、ギャップ保持部材またはギャップ保持部材の当接位置の像担持体を磨耗させる。このことで、研磨部材を追加する必要がなく、像担持体の回転時間に応じて帯電ギャップを徐々に減少させ得る。
【0024】
また本発明は、上述の画像形成装置において、像担持体が有機感光体であり、最表層に感光体の摩耗を低減するための保護層が形成されており、低コストで像担持体の耐久性を向上させている。有機感光体の表面に保護層を形成することで感光体の耐摩耗性を大幅に向上することができるので、像担持体とギャップ保持部材との間に速度差を設けた場合でも、感光層の劣化が発生しにくくなる。
【0025】
また本発明は、上述の画像形成装置において、像担持体を無機感光体とし、像担持体の耐久性を向上させている。すなわち、無機感光体は耐摩耗性が非常に優れているので、像担持体とギャップ保持部材との間に速度差を設けた場合でも、感光層の劣化が発生しにくくなる。
【0026】
さらに本発明は、前記の画像形成装置において、像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を備え、ギャップ保持部材が当接する位置には潤滑剤が供給されないようにしている。すなわち、画像領域では潤滑剤により像担持体を保護し、ギャップ保持部材当接位置では潤滑剤によりギャップ保持部材や像担持体が保護されて磨耗が低減するのを防止する。ギャップ保持部材の当接位置に潤滑剤が供給されないと、ギャップ保持部材を保護することがなく回転時間に応じてギャップ保持部材を磨耗させることが可能になる。
【0027】
本発明は、またさらに、前記した画像形成装置において、少なくとも像担持体と帯電手段とが本体から一体で着脱可能なプロセスカートリッジを構成しており、像担持体の回転時間により帯電ギャップの低減量を予測し得るようにしている。すなわち像担持体と帯電手段が一体のプロセスカートリッジをなす構成なので、像担持体の回転時間を記憶することで帯電ギャップの低減量を予測し得る。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
まず、画像形成装置の全体構成や基本的な動作については説明する。図1は、タンデム中間転写方式のフルカラー複写機に適用した例を示す全体構成図である。このフルカラー複写機は複写装置本体100、複写装置本体100を搭載する給紙装置200、複写装置本体上に取り付けるスキャナ300、スキャナ300上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400、等から構成されている。
【0029】
装置本体1の中央には、Y、C、M、Bkの4つの色用の画像形成ユニット18Y、18C、18M、18Bkを横に並べて配置してあり、タンデム画像形成装置20が構成されている。タンデム画像形成装置20の各画像形成ユニット18は、それぞれY、C、M、Bkの各色トナー像が形成される感光体40Y、40C、40M、40Bkを有している。なお以下では、色を特定する必要がなければ初回の記載を除き、単に画像形成ユニット18、感光体40等と記載する。この記載は、画像形成ユニット18や感光体40に限定されず、他の構成要素、構成機器についても同様とする。
【0030】
タンデム画像形成装置20の上方には、露光装置21が設けられている。露光装置21は、各色毎に用意されたレーザダイオード(LD)方式の4つの光源と、6面のポリゴンミラーとポリゴンモータから構成される1組のポリゴンスキャナと、各光源の光路に配置されたfθレンズ、長尺WTL等のレンズやミラーから構成されている。各色の画像情報に応じてLDから射出されたレーザ光はポリゴンスキャナにより偏向走査され各色の感光体40に照射される。
【0031】
タンデム画像形成装置の下方には、無端ベルト状の中間転写ベルト10が設置されている。中間転写ベルト10は、図示の例では3つの支持ローラ14、15、16に掛け回してあって図中時計回りに回転搬送可能であり、支持ローラ14は中間転写ベルト10を回転駆動する駆動ローラとしてある。また、第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間には、各色の感光体40から中間転写ベルト10にトナー像を転写する一次転写手段として一次転写ローラ62Y、62C、62M、62Bkが中間転写ベルト10を間に挟んで対応する各色の感光体色40に対向するように設けられている。
【0032】
第3の支持ローラ16の用紙搬送方向下流側には、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置17が設けられている。
【0033】
中間転写ベルト10の材質としてはポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料をシームレスベルトに成型し使用することができる。これらの材料はそのまま用いたり、カーボンブラック等の導電材により抵抗調整したりすることが可能である。また、これらの樹脂を基層として、スプレーやディッピング等の方法により表層を形成し、積層構造にしても良い。
【0034】
さらに中間転写ベルト10の下方には、2次転写装置22を備える。2次転写装置22は、図示の例では、2つのローラ23、23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写ベルト10を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置し、中間転写ベルト10上の画像を転写材に転写する。2次転写ベルトとしては中間転写ベルト10と同様の材料を用いることができる。
【0035】
2次転写装置22の横には、転写材上のトナー像を画像として定着させる定着装置25を設ける。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。
【0036】
この2次転写装置22には、画像転写後の転写材を定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えている。もちろん、2次転写装置22として、転写ローラや転写チャージャを配置してもよく、そのような場合は、この転写材搬送機能を別途備える必要がある。
【0037】
なお、図示の例では2次転写装置22および定着装置25の下方に、上述したタンデム画像形成装置20と平行に、転写材を反転排紙したり、転写材の両面に画像を形成するために転写材を反転して再給紙したりするシート反転装置28を備えている。
【0038】
このフルカラー複写機を用いてコピー動作を行うときは、ADF400の原稿台30上に原稿をセットする。または、ADF400を開いてスキャナのコンタクトガラス32上に原稿をセットし、ADF400を閉じて原稿を押さえる。そして、図示していない操作部のスタートスイッチを押すと、ADF400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動した後にスキャナを駆動し、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは直ちにスキャナを駆動し、第1走行体33および第2走行体34を駆動走行させる。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。その後、図示しない操作部でのモード設定が行われた場合、あるいは操作部で自動モード選択が設定されている場合には、原稿の読み取り結果に従い、フルカラーモードまたは白黒モードで画像形成動作を開始する。
【0039】
フルカラーモードが選択された場合には、各色の感光体40が図1で反時計回り方向にそれぞれ回転する。そして、それら各色の感光体40の表面が帯電装置である後述する帯電ローラにより一様に帯電される。そして、各色の感光体40には露光装置21から各色の画像に対応するレーザ光がそれぞれ照射され、各色の画像データに対応した潜像がそれぞれ形成される。各潜像は感光体40が回転することにより各色の現像装置60Y、60C、60M、60Bkで各色のトナーが現像される。各色のトナー像は中間転写ベルト10の搬送とともに、中間転写ベルト10上に順次転写されて中間転写ベルト10上にフルカラー画像を形成する。転写後の感光体40は除電ランプにより光除電され、クリーニング手段により転写残のトナーが除去される。
【0040】
一方、給紙装置200の給紙ローラ42の1つを選択回転し、給紙テーブル43に多段に備える給紙カセット44の1つから転写材を送り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して本体内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。または、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上の転写材を送り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。そして、中間転写ベルト10上のフルカラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写ベルト10と2次転写装置との間に転写材を送り込み、2次転写装置で転写して転写材上にトナー像を転写する。
【0041】
トナー像が転写された転写材は、2次転写装置で搬送されて定着装置25へと送り込まれ、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写材に定着された後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。または、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと再給紙され、裏面にも画像を記録した後、排出ローラで排紙トレイ上に排出される。以降、2枚以上の画像形成が指示されているときには、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0042】
所定枚数の画像形成が終了した後には作像後処理を行ってから感光体40の回転を停止する。作像後処理では帯電バイアス、転写バイアスをオフした状態で感光体40を1周以上回転させ、その際に除電手段により感光体40の表面の電荷を除電して、感光体40が除電したまま放置されて感光体40が劣化することを防止する。
【0043】
白黒モードが選択された場合には、支持ローラ15が下方に移動し、中間転写ベルト10を感光体40から離間させる。Bkの感光体40Bkのみが図1の反時計回り方向に回転し、感光体40Bkの表面が帯電ローラにより一様に帯電され、Bkの画像に対応するレーザ光が照射され、潜像が形成され、Bkのトナーにより現像されてトナー像となる。このトナー像は中間転写ベルト10上に転写される。この際、Bk以外の3色の感光体40Y、40C、40M、現像装置60は停止しており、感光体40や現像剤の不要な消耗を防止する。
【0044】
一方、給紙カセット44から転写材が給紙され、レジストローラ49により、中間転写ベルト10上に形成されているトナー像と一致するタイミングで搬送される。トナー像が転写された転写材は、フルカラー画像の場合と同様に定着装置25で定着され、指定されたモードに応じた排紙系を通って処理される。以降、2枚以上の画像形成が指示されているときには、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0045】
画像形成ユニット18の構成を図2に示す。像担持体である感光体40の周りには、感光体40を均一に帯電する帯電ローラ70、感光体40の電位を検知する電位センサ71、感光体40に形成された静電潜像を現像する現像装置60、トナー像が転写された後の感光体40の表面を除電する除電ランプ72、転写残トナーをクリーニングするためのクリーニング装置として2本のブラシローラ73、74とクリーニングブレード75が配置されている。また、画像形成ユニット18のケースには露光装置21からの露光光76を通過させるための開口が設けられている。
ブラシローラ74には固形の潤滑剤78が当接しており、潤滑剤供給部材としての機能も持っている。固形の潤滑剤の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸コバルト、オレイン酸マグネシウム、パルチミン酸亜鉛のような脂肪酸金属塩や、カルナウバワックスのような天然ワックスや、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系の樹脂を用いることができる。
【0046】
ブラシローラや、ポリウレタンゴムからなるクリーニングブレードにより感光体40から掻き取られたトナーは、トナー搬送コイル79により回収され、図示しない廃トナー収納部に搬送するように構成されている。
【0047】
この実施例では転写後に除電された感光体40をクリーニングするように構成されているが、転写後にクリーニングされた感光体40を除電するように構成してもよい。
【0048】
上記の実施例ではクリーニング手段内に潤滑剤供給手段が配置されているが、この構成ではクリーニングに入力してくるトナー量により潤滑剤の供給が影響を受けやすいという欠点があった。これはクリーニング手段内に潤滑剤供給手段が併設されているために、クリーニングに入力してくるトナー量(転写残トナーや、フルカラー画像形成装置では上流で形成されたトナー像による逆転写トナー)が変動した場合に、潤滑剤の供給効率が影響を受けてしまうことによる。それに対して、図3のようにクリーニングブレード75の下流に潤滑剤供給手段である潤滑剤78と潤滑剤供給ブラシ74と潤滑剤塗布ブレード80を配置することで、形成される画像面積により転写残トナーや逆転写トナーの入力量が変化しても像担持体に潤滑剤を安定に供給することができる。
【0049】
図4(A)に本実施例で使用可能な帯電ローラ70の構成を示す。帯電ローラ70は導電性支持体である芯金101と、帯電部材としての樹脂層102と、ギャップ保持部材103から構成される。
【0050】
芯金はステンレス等の金属が用いられる。芯金が細すぎると帯電部材の切削加工時や、感光体40に加圧されたときのたわみの影響が無視できなくなり、必要なギャップ精度が得られにくい。また、芯金が太すぎる場合には帯電ローラ70が大型化したり、質量が重くなったりする問題があるため、芯金の直径としては6〜10mm程度が望ましい。また帯電ローラ70の樹脂層は10〜10Ωcmの体積抵抗を持つ材料が好ましい。抵抗が低すぎると感光体40にピンホール等の欠陥があった場合に帯電バイアスのリークが発生しやすく、抵抗が高すぎると放電が十分に発生せず均一な帯電電位を得ることができない。基材となる樹脂に導電性材料を配合することで所望の体積抵抗を得ることができる。基材樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂を用いることができる。これらの基材樹脂は、成形性が良いので容易に成形加工することができる。
【0051】
導電性材料としては四級アンモニウム塩基を有する高分子化合物のようなイオン導電性材料が好ましい。四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンの例としては、四級アンモニウム塩基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンーエチルアクリレート共重合、エチレンーメチルアクリレート共重合、エチレン−酢酸ビニル共重合、エチレン−プロピレン共重合、エチレン−ヘキセン共重合等のポリオレフィンである。本実施の形態においては、四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンについて例示したが、四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィン以外の高分子化合物であっても構わない。
【0052】
前記のイオン導電性材料は、二軸混練機、ニーダー等の手段を用いることにより、前記の基材樹脂に均一に配合される。配合された材料を芯金上に射出成形、あるいは押出成形にすることにより、容易にローラ形状に成型することができる。イオン導電性材料と基材樹脂の配合量は基材樹脂100重量部に対してイオン導電性材料30〜80重量部が望ましい。帯電ローラ70の樹脂層の厚さとしては0.5〜3mmが望ましい。樹脂層が薄すぎると成型が困難である上に強度の面でも問題がある。樹脂層が厚すぎると帯電ローラ70が大型化するうえに樹脂層の実際の抵抗が大きくなるため帯電効率が低下してしまう。
【0053】
樹脂層を成形した後、樹脂層の両端にあらかじめ成形しておいたギャップ保持部材を圧入や接着、あるいはその両方を併用して、芯金に固定する。このようにして、帯電部材とギャップ保持部材を一体化してから、切削や研削等の加工を行って帯電ローラ70の外径を整えることで帯電部材とギャップ保持部材のフレの位相を揃えることができ、帯電ギャップの変動を低減することができる。
【0054】
ギャップ保持部材の材質としては帯電部材の基材と同様にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂を用いることができる。ただし、感光層にギャップ保持部材を当接させるので感光層が損傷するのを防止するために、帯電部材より硬度の低いグレードを用いることが望ましい。また、摺動性に優れ感光層に損傷を与えにくい樹脂材料として、ポリアセタール、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の樹脂を用いることもできる。
【0055】
また、樹脂層やギャップ保持部材にはコーティング等により、トナー等が付着しにくい表層を数10μm程度の厚さで形成することもできる。ギャップ保持部材を感光体40の画像領域外に付き当てることで、帯電ローラ70の樹脂層と感光体40との間にギャップを形成する。帯電ローラ70は芯金の端部に取り付けられたギヤが感光体40のフランジに形成されたギヤとかみ合っており、感光体40を駆動するモータにより感光体40が回転すると帯電ローラ70も連れ回り方向に回転する。樹脂層と感光体40が接触することがないので、帯電ローラ70として硬い樹脂材料と有機感光体を使用した場合でも画像領域の感光層に傷が付いたりすることはない。また、ギャップが広がりすぎると異常放電が発生し均一に帯電できなくなるため、最大ギャップは100μm程度以下に抑える必要がある。このような感光体40と帯電ローラ70間にギャップを設けた帯電ローラ70を使用する場合には、帯電バイアスとしてDC電圧にAC電圧を重畳することが望ましい。
帯電部材、ギャップ保持部材を樹脂材料で構成しているので、加工が容易で高精度の帯電ローラ70を製造することができる。
【0056】
また、帯電ローラ70にはローラ表面をクリーニングするためのクリーニングローラ77が当接している。このクリーニングローラは金属製の芯金上にメラミンフォームを取り付けたローラであり、帯電ローラ70に自重で当接しており帯電ローラ70の回転にともない連れ回り回転しながら帯電ローラ70表面に付着したトナー等の汚れを除去する。クリーニングローラは帯電ローラ70に常時接触させておいても良いが、クリーニングローラの接離機構を備えて、普段は離間させておき必要に応じて定期的に帯電ローラ70に当接させて間欠的に帯電ローラ70表面をクリーニングするように構成することもできる。
【0057】
各現像装置60は構成が同一のものであり、それらは使用するトナーの色のみが異なる二成分現像方式の現像装置60であり、各色の現像装置60内にはトナーとキャリアからなる二成分現像剤が収容されている。現像装置60は感光体40に対向した現像ローラ61、現像剤を搬送・撹拌するスクリュー63a、63b、トナー濃度センサ64等から構成される。現像ローラ61は外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。トナー濃度センサの出力に応じて、図示しないトナー補給装置より必要量のトナーが補給される。
【0058】
トナーは結着樹脂、着色剤、電荷制御剤を主成分とし、必要に応じて、他の添加剤が加えられて構成されている。結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、等を用いることができる。トナーに使用される着色材(例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)としては、トナー用として公知のものが使用できる。着色材の量は結着樹脂100重量部に対して0.1から15重量部が適当である。
【0059】
電荷制御剤の具体例としては、ニグロシン染料、含クロム錯体、4級アンモニウム塩などが用いられ、これらはトナー粒子の極性により使い分けされる。荷電制御剤量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。トナー粒子には流動性付与剤を添加しておくのが有利である。流動性付与剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物の微粒子及びそれら微粒子をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等によって表面処理したものや、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマー微粒子、などが用いられる。これら流動性付与剤の粒径は0.01〜3μmの範囲のものが使用される。これら流動性付与剤の添加量は、トナー粒子100重量部に対して0.1〜7.0重量部の範囲が好ましい。
【0060】
二成分現像剤用トナーを製造する方法としては、種々の公知の方法、またはそれらを組み合わせた方法により製造することができる。例えば、混練粉砕法では、結着樹脂とカーボンブラックなどの着色材及び必要とされる添加剤を乾式混合し、エクストルーダー又は二本ロール、三本ロール等にて加熱溶融混練し、冷却固化後、ジェットミルなどの粉砕機にて粉砕し、気流分級機により分級してトナーが得られる。また、懸濁重合法や非水分散重合法により、モノマーと着色材、添加剤から直接トナーを製造することも可能である。
【0061】
キャリアは芯材それ自体からなるか、芯材上に被覆層を設けたものが一般に使用される。本実施例において用いることのできる樹脂被覆キャリアの芯材としては、フェライト、マグネタイトである。この芯物質の粒径は20〜60μm程度が適当である。キャリア被覆層形成に使用される材料としては、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルケトンがある。被覆層の形成法としては、従来と同様、キャリア芯材粒子の表面に噴霧法、浸漬法等の手段で樹脂を塗布すればよい。
【0062】
また感光体40の一例としては導電性支持体上に構成された感光層である電荷発生層、電荷輸送層からなる積層型有機感光体が挙げられる。導電性支持体は、体積抵抗1010Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の管材を切削、超仕上げ、研磨等で表面処理したものからなる。
【0063】
電荷発生層は、電荷発生材料を主成分とする層である。電荷発生材料には、無機又は有機材料が用いられ、代表的なものとしては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、アモルファスシリコン等が挙げられる。これら電荷発生材料は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。電荷発生層は、電荷発生材料を適宜バインダー樹脂とともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、2−ブタノン、ジクロルエタン等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を塗布することにより形成できる。電荷発生層の塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法等により行うことができる。
【0064】
用い得るバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン、アクリル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド等の樹脂を挙げることができる。バインダー樹脂の量は、重量基準で電荷発生材料1部に対して0〜2部が適当である。
【0065】
なお電荷発生層は、公知の真空薄膜作製法によっても形成することができる。また電荷発生層の膜厚は、通常は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。電荷輸送層は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
【0066】
電荷輸送材料のうち、低分子電荷輸送材料には、電子輸送材料と正孔輸送材料とがある。電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド等の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0067】
正孔輸送材料としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。これらの正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0068】
電荷輸送材料と共に電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル、シリコーン、エポキシ、メラミン、ウレタン、フェノール、アルキッド等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、2−ブタノン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン等が挙げられる。
【0069】
電荷輸送層の厚さは、10〜40μmの範囲で所望の感光体特性に応じて適宜選択すればよい。所望により電荷輸送層に添加される可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等、樹脂に汎用の可塑剤を挙げることができ、その使用量は、重量基準でバインダー樹脂に対して0〜30%程度が適当である。所望により電荷輸送層に添加されるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられ、その使用量は、重量基準でバインダー樹脂に対して0〜1%程度が適当である。
【0070】
なお、感光層に含有される電荷輸送材量の含有量は、電荷輸送層の30重量%以上とするのが好ましい。30重量%未満では、感光体40へのレーザ書き込みにおけるパルス光露光において高速電子写真プロセスでの十分な光減衰時間が得られず好ましくない。
【0071】
感光体40には、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成することもできる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤を用いて塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン、アルキッド−メラミン、エポキシ等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0072】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末を加えてもよい。この下引き層は、上記の感光層と同様、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層を用いることも有用である。この他に、下引き層には、Alを陽極酸化したものにより形成したもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO、TiO、ITO、Ce0等の無機物を真空薄膜作製法により形成したものも有効である。下引き層の膜厚は、0〜5μmが適当である。
【0073】
また感光体40には、感光層の保護及び耐久性の向上を目的に感光層の上に保護層を形成することもできる。この保護層はバインダー樹脂に耐摩耗性を向上する目的でアルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の金属酸化物微粒子が添加された構成である。バインダー樹脂としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル、フェノール、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ等の樹脂が挙げられる。
【0074】
保護層に添加される金属酸化物微粒子の量は、重量基準で通常は、5〜30%である。金属酸化物微粒子の量が5%未満では、摩耗が大きく耐摩耗性を向上する効果が小さく耐久性に劣り、30%を越えると、露光時における明部電位の上昇が著しくなって、感度低下が無視できなくなるので望ましくない。保護層の形成法としては、スプレー法等通常の塗布法が採用される。保護層の厚さは、1〜10μm、好ましくは3〜8μm程度が適当である。保護層の膜厚が薄すぎると耐久性に劣り、保護層の膜厚を厚くしすぎると感光体40の製造時の生産性が低下するだけでなく、経時での残留電位の上昇が大きくなってしまう。保護層に添加する金属酸化物粒子の粒径としては0.1〜0.8μmが適当である。金属酸化物微粒子の粒径が大きすぎる場合には保護層表面の凹凸が大きくなりクリーニング性が低下する上、露光光が保護層で散乱されやすく解像力が低下し画像品質が劣る。金属酸化物微粒子の粒径が小さすぎると耐摩耗性に劣る。
【0075】
さらに保護層には、基材樹脂への金属酸化物微粒子の分散性を向上させるために分散助剤を添加することができる。添加される分散助剤は塗料等に使用されるものが適宜利用できその量は重量基準で通常は含有する金属酸化物微粒子の量に対して0.5〜4%、好ましくは、1〜2%である。
【0076】
また、保護層に電荷輸送材料を添加することで、保護層中の電荷の移動を促進することができる。保護層に添加する電荷輸送材料としては電荷輸送層と同じ材料を用いることができる。
【0077】
また、本実施例で使用する感光体40には耐環境性の改善のため、とりわけ感度低下や残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、およびレベリング剤等を添加することができる。
【0078】
本発明のように感光体40と帯電ローラ70との間に微少な帯電ギャップを形成した場合、感光体40と帯電ローラ70の回転に伴い帯電ギャップは一定範囲の中で常に変動する。このような状況で感光体40を均一に帯電させるには、帯電部材に印加する帯電バイアスとして、DC電圧に加えてACバイアスを重畳することが有効である。
【0079】
ここで、印加するACバイアスの周波数が低いとストライプ状の帯電ムラが目立つため、少なくとも感光体40の線速[mm/s]の6倍以上の周波数[Hz]に設定することが望ましい。また、印加するACバイアスの周波数が高すぎる場合には過剰な放電が発生し、感光体40の摩耗量が増大する、あるいは感光体40にトナーやトナー外添剤のフィルミングが発生しやすくなるため、感光体40の線速[mm/s]の10倍以下の周波数[Hz]に設定することが望ましい。また、ACバイアスを重畳する場合に感光体40に接触配置された帯電ローラ70ではAC電流が一定になるように定電流制御することで、環境によるローラ抵抗の変動を受けにくくできることが知られている。しかしながら、感光体40に非接触配置された帯電ローラ70の場合には感光体40と帯電ローラ70の回転に伴い帯電ギャップが変動するため、AC定電流制御では高圧電源が帯電ギャップ変動に追従しきれずオーバーシュートやアンダーシュートによる異常画像(横スジ状の濃度ムラ)が発生することがある。そのため、AC電圧を定電圧制御とすることが望ましい。このとき、必要なAC電圧はローラ抵抗の環境変動や、帯電ギャップの大きさにより異なり、ローラ抵抗が高く、帯電ギャップが大きいほど大きなAC電圧が必要となる。このため、帯電ローラ70に流れるAC電流を検知可能とし、AC電流の制御目標値を設定してAC電流の検出値が制御目標値となるようにAC電圧を調整することで、ローラ抵抗や帯電ギャップの個体差の影響を受けずに適正なAC電圧に設定することができる。AC電圧の調整動作は非画像形成時に実施しても良いし、作像動作中にAC電流を検知して紙間でAC電圧を変更するようにしても良い。
【0080】
帯電ローラ70の寿命を決める大きな要因は、帯電ローラ70表面へトナーやトナー外添剤や潤滑剤などが付着する帯電ローラ70汚れによる帯電不良の発生であるが、感光体40と帯電ローラ70との間に微少な帯電ギャップを形成することで、わずかながらクリーニングをすり抜けて感光体40上に存在するトナーやトナー外添剤や潤滑剤等が帯電ローラ70に接触して転移することがないので、帯電ローラ70が汚れにくく帯電ローラ70の長寿命化に有利である。ただし、帯電バイアスにより感光体40上のトナーやトナー外添剤や潤滑剤等が飛翔して帯電ローラ70に付着することがあるため帯電ローラ70の汚れを完全に防止することはできない。しかしながら、下記の表1、2のローラ番号2、4の結果を比較するとわかるように、帯電ギャップが2倍になっても、必要な帯電バイアスは2倍になるわけではないので、帯電ギャップが広いほど帯電ローラ70と感光体40間の電界が弱くなるので、感光体40上のトナーやトナー外添剤や潤滑剤等が帯電ローラ70に飛翔しにくくなるので、帯電ギャップを広く設定したほうが帯電ローラ70汚れは発生しにくくなる。
【表1】

【表2】

【0081】
一方で、帯電ローラ70の材料に起因する帯電ギャップ上限が存在し、上限以上の帯電ギャップでは帯電バイアスをどんなに大きくしても異常放電が解消できず、均一帯電ができないという課題がある。帯電ギャップの上限は帯電ローラ70の導電剤として、電子導電性の材料よりイオン導電性の材料を用いたほうが帯電ギャップの上限が大きい傾向があり、イオン導電性の材料を用いることが望ましい。これはイオン導電性の材料のほうが基材樹脂中に均一に分散しやすく、分子レベルでのミクロ的な抵抗ムラが小さいためであると推定される。
【0082】
このようなイオン導電性の材料を用いた非接触帯電ローラ70でも、長期間使用していくと帯電ローラ70の使用が進むにつれて、均一帯電が可能な帯電ギャップが徐々に小さくなっていくことが判明した。
【0083】
その実験は図1の画像形成装置を用いて行った。感光体40は直径60mmのアルミニウム基体上に、3.5μmの下引き層、0.15μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層、最上層には粒径0.3μmのアルミナ粒子を10重量%含む厚さ5μmの保護層を形成したものである。帯電ローラ70はステンレスからなる外径10mmの芯金上に、基材樹脂のABS樹脂40重量部にイオン導電材料であるポリエーテルエステルアミド60重量部を配合して得た樹脂組成物からなる帯電部材を射出成形により成形し、その表面にアクリルシリコン樹脂、イソシアネート系硬化剤、および導電剤からなる表層を塗布し、外径が12.7mmの帯電ローラ70を作製した。この帯電ローラ70の両端には帯電ギャップを形成する高分子ポリエチレンからなるギャップ保持部材を取り付けてある。この画像形成装置のプロセス線速は350mm/sであり、帯電バイアスはDC成分は電圧V=−700V、AC周波数f=2.5kHzの正弦波を印加している。
【0084】
ギャップ保持部材の外径を一定として、帯電部材の外径を調整することで帯電ギャップの異なる帯電ローラ70を作製した。それぞれの帯電ローラ70の帯電ギャップの測定結果を表1に示した。帯電ギャップは軸方向の7箇所で測定し、帯電ローラ70と感光体40を回転させながら測定した最大値、最小値、平均値を記載した。ここで、帯電ギャップは感光体40の精度の影響も受けるため、それぞれ通紙試験を行うときに使用する感光体40を組み合わせて帯電ギャップを測定している。
【0085】
これらの帯電ローラ70を用いて通紙試験を行った。ここでは帯電ローラ70の端部に取り付けたギヤが感光体40の端部に取り付けたギヤとかみ合って、感光体40の回転に同期して帯電ローラ70が感光体40とほぼ等速で連れまわり方法に回転するように構成した。通紙は実験室環境で実施し、10万枚通紙毎に帯電ローラ70汚れや異常放電の発生しやすい10℃15%の低温低湿環境で画像確認を行い、その結果を表2に示した。ここで、必要なVppとは異常放電の発生しない最低のVpp電圧である。実用的なVppの上限である3.0kVに設定しても異常放電が解消できない場合には×で示している。帯電ローラ70汚れは全面ハーフトーン画像を出力して、帯電ローラ70に起因する縦黒スジ状の有無を確認した。
【0086】
帯電ローラ70を感光体40にほぼ等速で回転させているので、通紙試験後も帯電ギャップは初期と同等で変化がなかった。上に記載した表2のように帯電ギャップが広くなるほど、均一帯電に必要なVppは大きくなる。また、通紙が進むにつれて必要なVppはより大きくなり、帯電ギャップが大きくなると経時で異常放電が発生してしまい均一帯電ができない。
【0087】
このような帯電ギャップの上限が経時で変化する理由は、電界が長時間作用することで、帯電部材中でイオン導電剤の移動が起こり分散状態に変化が生じて発生するものと推定される。一方で、帯電ギャップが狭い場合には均一帯電には余裕があるものの、長期間使用した場合には帯電ローラ70汚れによる異常画像が発生してしまう。したがって、従来のように帯電ギャップを一定に維持する方法では、異常放電防止と帯電ローラ70汚れの両立が難しく帯電ローラ70の長寿命化には限界があったが、本実施例のように、感光体40の回転時間に応じて帯電ギャップが徐々に小さくなるように構成することで、異常放電防止と帯電ローラ70汚れの防止を両立させることができる。

【0088】
経時で徐々に帯電ギャップを小さくするには、帯電ローラ70と感光体40間に速度差が生じるようにギヤ駆動する。このことで、ギャップ保持部材あるいは感光体40を磨耗させることができる。この場合、ギャップ保持部材の磨耗量と感光体40の磨耗量の和で帯電ギャップが狭くなる。帯電ローラ70と感光体40の速度差としては、帯電ローラ70を感光体40の速度に対して、1.2〜2.5倍の速度で回転させることが望ましい。帯電ギャップの低減量としては、10万枚の出力あたり5〜20μmとすることが望ましいので、帯電ギャップの低減量が目的の範囲となるように、帯電ローラ70と感光体40間の速度差やギャップ保持部材の材質を選択すればよい。感光体40の磨耗が進みすぎると帯電バイアスのリークが発生してしまうため、有機感光体の場合には保護層を備えた耐磨耗性に優れた感光体を用いることが望ましい。また、感光体としてアモルファスシリコンのような無機感光体を用いると、機械的強度が非常に高いため感光体を40磨耗させることなくギャップ保持部材を磨耗させることができる。
【0089】
経時で徐々に帯電ギャップを低減するための別の方法として、ギャップ保持部材や感光体40のギャップ保持部材当接位置を研磨するための研磨手段を用いることもできる。研磨手段としては、プラスティックフィルムに研磨粒子をコーティングしたラッピングフィルムや、ポリウレタンゴム中に研磨粒子を分散させた研磨ブレード等を当接させることで感光体40の回転時間に応じて帯電ギャップを徐々に小さくすることができる。研磨粒子としては酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコンカーバイドなどの無機粒子を用いることができ、粒径としては0.01〜0.5μm程度で、分散量としては10〜50重量%が望ましい。ギャップ保持部材の材質と研磨部材の当接圧とを調整することにより、研磨量を調整することができる。
【0090】
図4(B)に帯電ローラ70に研磨ブレードを当接させた実施例を示した。研磨ブレード90は帯電ローラ70の両端に取り付けられたギャップ保持部材103の部分のみに当接しており、帯電ローラ70が回転することによりギャップ保持部材103を研磨する。研磨ブレード90は厚さ2mmのポリウレタンゴムを主材料とし、その中に粒径0.1μmのアルミナ粒子が40重量%分散させてある。厚いポリウレタンゴム中に研磨剤を分散させているので、経時で研磨ブレード90が摩耗しても研磨作用が持続し、長期間にわたってギャップ保持部材103を研磨することができる。
【0091】
図4(B)では帯電ローラ70のギャップ保持部材103に研磨ブレード90を当接させているが、感光体40のギャップ保持部材103の当接位置に研磨ブレード90を配置して感光体40を研磨することでも帯電ギャップを経時で減少させることができるし、帯電ローラ70と感光体40の双方に研磨ブレード90を配置することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
100:装置本体
200:給紙装置
300:スキャナ
400:原稿自動搬送装置(ADF)
10:中間転写ベルト
14、15、16:支持ローラ
17:中間転写ベルトクリーニング装置
18Y、18C、18M、18Bk:画像形成ユニット
20:タンデム画像形成装置
21:露光装置
22:2次転写装置
23:ローラ
24:2次転写ベルト
25:定着装置
26:定着ベルト
27:加圧ローラ
28:シート反転装置
30:原稿台
32:コンタクトガラス
33:第1走行体
34:第2走行体
35:結像レンズ
36:読取りセンサ
40Y、40C、40M、40Bk:感光体
42:給紙ローラ
43:給紙テーブル
44:給紙カセット
45:分離ローラ
46:給紙路
47:搬送ローラ
48:給紙路
49:レジストローラ
50:給紙ローラ
51:手差しトレイ
52:分離ローラ
53:手差し給紙路
55:切換爪
56:排出ローラ
57:排紙トレイ
60Y、60C、60M、60Bk:現像装置
61:現像ローラ
62Y、62C、62M、62Bk:一次転写ローラ
63a、63a:スクリュー
64:トナー濃度センサ
70:帯電ローラ
71:電位センサ
72:除電ランプ
73、74:ブラシローラ
75:クリーニングブレード
76:露光光
78:潤滑剤
79:トナー搬送コイル
80:潤滑剤塗布ブレード
101:芯金
102:帯電部材としての樹脂層
103:ギャップ保持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】特開2001−350321号公報
【特許文献2】特開2002−139893号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に対して微小空隙を介して非接触配置された帯電手段を備えた画像形成装置において、
前記像担持体と前記帯電手段間の前記微小空隙を前記像担持体の回転時間とともに減少させる帯電空隙低減手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記帯電手段がローラ形状を有するとともに、
該帯電手段が、少なくとも、
導電性支持体である芯金、及びイオン導電性材料を含む樹脂材料とからなる帯電部材と、
該帯電部材の両端に配置され、前記像担持体の非画像部に当接して前記像担持体と前記帯電部材間に前記前記微小空隙をなすギャップを形成する絶縁性樹脂材料からなるギャップ保持部材と、
からなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2の画像形成装置において、
前記帯電空隙低減手段が、
前記ギャップ保持手段、または前記像担持体の前記ギャップ保持部材の当接位置を研磨して前記微小空隙を低減させる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3の画像形成装置において、
前記像担持体と前記ギャップ保持部材との間に回転速度差を発生させる手段を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記像担持体が有機感光体からなり、最表層に該有機感光体の摩耗を低減するための保護層を形成してなる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記像担持体が無機感光体からなる、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記像担持体に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を備え、
該潤滑剤供給手段は、前記ギャップ保持部材が当接する位置には潤滑剤を供給しない、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置において、
少なくとも前記像担持体と前記帯電手段とを画像形成装置本体から一体で着脱可能なプロセスカートリッジとして構成してなる、
ことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−186013(P2011−186013A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48507(P2010−48507)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】