説明

画像形成装置

【課題】 潤滑用トナーを速く効率よくクリーニングブレードの端部まで供給でき、感光ドラムの損傷を防ぐ画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 クリーニングブレードへ潤滑用トナーが供給された後、反転現像方式では感光ドラムの軸方向外側を、正規現像方式では軸方向中央側を露光することで、露光部を除電する。その結果、感光ドラム上で電位差が生じる為、クリーニングブレード上のトナーは露光で形成された感光ドラム上の電界による静電気力を受けて感光ドラム外側方向へ搬送される。これにより、クリーニングブレードの端部までトナーを速く効率良く、搬送することができるようになり、感光ドラムの損傷を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用して形成された感光体上の現像剤像を弾性体ブレードにて除去する構成の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンタ等の画像形成装置では、トナー像の転写材への転写後、感光体に残留したトナー(現像剤)をクリーニングすることが必要である。このためのクリーニング手段として、ウレタンゴムなどの弾性体材料からなるクリーニングブレードを用いたものが知られている。かかる構成はクリーニングブレードに形成したエッジを、感光体の回転方向に対して、帯電手段よりも上流側で、かつ転写部位よりも下流側で感光体表面に圧接して残留トナーを掻き取るものである。ところが、感光体上の画像印字領域がクリーニングブレードによってクリーニングされる領域よりもクリーニングブレードの長手方向において小さく、残留トナーはクリーニングブレードと感光体の当接部の長手方向端部まで充分に供給されにくい。したがって、トナーが供給されないクリーニングブレードと感光体の当接部では、クリーニングブレードと感光体の摩擦抵抗が増える。この当接部に滞留するトナーが十分でないと、シートなどの転写材から出る紙片によって、感光体が傷つけられやすくなる。特にクリーニングブレードを感光体とカウンタ方向に当接している場合、クリーニングブレードの当接部の長手方向端部に潤滑剤となるトナーが供給されないと、クリーニングブレードのめくれや破損が発生しやすくなる。
【0003】
これに対し、画像情報に関係なく潤滑用トナー像(補助画像)を形成し、この潤滑用トナー像を転写材に転写せずに、トナーをクリーニングブレードに供給し、滞留させることにより、クリーニングブレードのめくれや破損を抑制し、クリーニングブレードのクリーニング性能を確保することが知られている(特許文献1、2)。
【0004】
感光体上に画像情報に基づいたトナー像を形成し、これを転写材に転写する動作期間を画像形成期間としたとき、上述のような潤滑処理動作は、この画像形成期間とは異なる非画像形成期間に行われ、例えば、印刷されたシートの累積印刷枚数が規定枚数を超えたときや1ジョブの画像形成動作の終了後に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−148084号公報
【特許文献2】特開平2−289885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、クリーニングブレードの当接部の長手方向端部まで充分にトナーが供給されないうちに、画像形成動作を行うと、感光体の損傷が起る恐れがある。また、クリーニングブレードの感光体への当接方向が感光体の回転方向に対してカウンタ方向である場合に、クリーニングブレードの捲れが起こる恐れがある。このため、クリーニングブレードの当接部の全域にトナーを供給する必要がある。しかし、感光体の長手方向における寸法で、潤滑用トナー像がクリーニングブレードよりも短い場合は、トナーをクリーニングブレードの端部までに搬送するには時間がかかり、クリーニングブレードへの潤滑処理動作の完了を待ってプリントを行う際に、生産性(単位時間当たりのプリント枚数)の低下を招く恐れがある。また、クリーニングブレードの当接部の長手方向端部までのトナー搬送時間を短くしようと、供給するトナー量を多くすると、トナー消費量が増加してしまい、廃トナー量の増加による廃トナー容器の大型化が問題となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トナーを少ない量で且つ短い時間で効率よくクリーニングブレードの当接部の長手方向端部まで供給でき、感光体の端部の損傷を抑制する画像形成装置を提供することである。また、別の目的とするところは、クリーニングブレードが感光体の回転方向に対してカウンタ方向で感光体に当接している場合に、クリーニングブレード捲れの発生を良好に防ぐ画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、回転する感光体と、前記感光体を所定の極性に帯電させる帯電手段と、帯電した前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、現像剤を前記静電潜像に付着させて現像剤像を形成する現像手段と、前記現像剤像を転写材に転写する転写手段と、前記感光体の回転方向において前記転写手段よりも下流且つ前記帯電手段よりも上流で前記感光体に当接して、前記感光体に残留している現像剤を除去する弾性体ブレードと、を有し、非画像形成期間の所定のタイミングで前記現像手段が前記感光体の表面へ現像剤を供給して補助画像を形成し、前記補助画像を構成していた現像剤を転写材に転写させずに前記弾性体ブレードによって滞留させる画像形成装置であって、前記感光体の長手方向における寸法で、前記補助画像の長さをLt、前記弾性体ブレードと前記感光体との当接部の長さをLb、前記帯電手段による前記感光体の帯電領域の長さをLc、として、Lt<Lb且つLt<Lcの関係が成立し、前記帯電手段が前記感光体の前記補助画像の在る区域とは別の区域を前記長さLcの範囲で帯電して所定の帯電区域を形成し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と同極性の場合は前記露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の外側に対応する外側区域を露光し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と逆極性の場合は前記露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の内側に対応する中央側区域を露光して、前記感光体の長手方向において中央側区域の電位よりも、外側区域の電位が前記現像剤の帯電極性とは逆の方向に偏倚した所定の電位差区域を形成し、前記所定の電位差区域を、前記補助画像を構成していた現像剤を滞留させている弾性体ブレードを通過させることを特徴としている。
【0009】
また、別の本発明は、回転する感光体と、前記感光体を所定の極性に帯電させる帯電手段と、帯電した前記感光体を露光して静電潜像を形成する第1の露光手段と、現像剤を前記静電潜像に付着させて現像剤像を形成する現像手段と、前記現像剤像を転写材に転写する転写手段と、前記感光体の回転方向において前記転写手段よりも下流且つ前記帯電手段よりも上流で前記感光体に当接して、前記感光体に残留している現像剤を除去する弾性体ブレードと、を有し、非画像形成期間の所定のタイミングで前記現像手段が前記感光体の表面へ現像剤を供給して補助画像を形成し、前記補助画像を構成していた現像剤を転写材に転写させずに前記弾性体ブレードによって滞留させる画像形成装置であって、前記感光体を露光する第2の露光手段を有し、前記感光体の長手方向における寸法で、前記補助画像の長さをLt、前記弾性体ブレードと前記感光体との当接部の長さをLb、前記帯電手段による前記感光体の帯電領域の長さをLc、として、Lt<Lb且つLt<Lcの関係が成立し、前記帯電手段が前記感光体の補助画像の在る区域とは別の区域を前記長さLcの範囲で帯電して所定の帯電区域を形成し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と同極性の場合は前記第2の露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の外側に対応する外側区域を露光し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と逆極性の場合は前記第2の露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の内側に対応する中央側区域を露光して、前記感光体の長手方向において中央側区域の電位よりも、外側区域の電位が前記現像剤の帯電極性とは逆の方向に偏倚した所定の電位差区域を形成し、前記所定の電位差区域を、補助画像を構成していた現像剤を滞留させている弾性体ブレードを通過させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感光体上に電位差区域を形成し、この電位差区域をクリーニングブレードの当接部を通過させると、電位差区域に形成された電界の作用で、クリーニングブレードに滞留している潤滑用トナーがクリーニングブレードの長手方向の外側へ速く広がっていく。この結果、クリーニングブレードへのトナー供給を行う際に、クリーニングブレードの当接部の長手方向端部までトナーを短い時間で、搬送することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の構成概略図である。
【図2】実施例1における制御ブロック図である。
【図3】実施例1における潤滑処理動作のフローチャートである。
【図4】通常の印刷動作時と、潤滑処理動作のシーケンス図である。
【図5】実施例1における電位差区域の様子と感光ドラム表面の電位を表す図である。
【図6】実施例3における電位差区域の様子と感光ドラム表面の電位を表す図である。
【図7】潤滑処理動作期間における感光ドラムの回転時間とクリーニングブレードに供給する潤滑用トナーの移動量の関係を表す図である。
【図8】実施例4における露光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
本発明の第1の実施例を、図面に沿って説明する。図1に、本実施例の画像形成装置の一例を示す。装置本体の内側には、像担持体としてドラム形の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)1を備えている。感光ドラム(感光体)1は駆動力が伝達されることにより、軸を中心に図1中の矢印R1方向に所定の周速度(プロセススピード)、例えば、200mm/secで回転駆動される。感光ドラム1の材質には有機感光体(OPC)やアモルファスシリコンなどが挙げられ、感光ドラム1の導電性基体は電気的に接地されている。
【0013】
感光ドラム1の表面は、帯電ローラ(帯電手段)2によって帯電される。感光ドラム1の軸方向(感光ドラムの軸に沿った方向)における、帯電ローラ2による感光ドラム1の帯電領域の長さをLcとする。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(不図示)によって、例えば交流電圧と直流電圧とが重畳された帯電バイアスが摺動接点を介して印加される。これにより、感光ドラム1表面が所定の極性、所定の電位に均一に帯電される。本実施例においては、感光ドラム1表面は負極性の電位Vd(暗部電位)に帯電される。また、Vdは−600V(ボルト)である。
【0014】
帯電後の感光ドラム1表面は、露光装置によって静電潜像が形成される。露光装置3は、レーザスキャナ3a、ミラー3b等を有しており、画像情報に基づいてレーザ光で感光ドラム1表面を軸方向に走査してレーザ光照射部分の電荷を除去し、静電潜像が形成される。ここでは、照射部分の電位はVl(明部電位)とする。また、Vlは−150Vである。
【0015】
こうして感光ドラム1表面に形成された静電潜像は、現像装置4の現像スリーブにより、帯電した感光ドラム1と同極性である負極性に帯電されたトナー(現像剤)が感光ドラム1に対向するトナー供給口である現像装置開口部から供給され、トナー像(現像剤像)として現像される(反転現像)。感光ドラム1表面に形成されたトナー像は、転写ローラ5によって給紙カセット7から供給されるシート(転写材)12上に転写される。このシート12は、給紙カセット7に収納され、給紙ローラ8や搬送ローラ9、レジストローラ10によって感光ドラム1上のトナー像の回転と同期をとって転写部に供給されたものである。転写ローラ5に、転写バイアス印加電源(不図示)から転写バイアスが印加されることによって、感光ドラム1上のトナー像がシート12上に転写される。なお、本実施例では感光ドラム1上のトナー像がシート12へ直接転写される画像形成装置であるが、本発明は中間転写体を持つ画像形成装置にも適用でき、転写材としては、紙などのシートのほか、中間転写体も含まれる。
【0016】
シート12に対するトナー像の転写後に表面に残ったトナーがクリーニング装置6によって除去された後、感光ドラム1は次の画像形成に供される。なお、クリーニング装置6については、後に詳述する。一方、トナー像転写後のシート12は、定着装置11に搬送され、定着ローラ、加圧ローラによる加熱、加圧を受けて、表面のトナー像が定着される。トナー像定着後のシート12は、装置本体外部に排出され、これにより、画像形成が完了する。画像形成プロセスを行う上記部材のうち、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング装置6を一体構成して、プロセスカートリッジとしても良い。
【0017】
次に、クリーニング装置6について説明する。クリーニング装置6は、クリーニング部材としてクリーニングブレード(弾性体ブレード)61を備えている。クリーニングブレード61は、そのエッジを感光ドラム1の表面に常時圧接させている。なお、本実施例のクリーニングブレード61は、図1に示すように、感光ドラム1の回転方向R1に対し、カウンタ方向に当接されているが、当接される方向は順方向であっても良い。クリーニングブレード61は、弾性体で形成されたほぼ長方形の板状の部材であり、適度な弾性を有している。クリーニングブレード61に用いられる弾性部材として、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、ブタジエンゴムなどが用いられる。クリーニングブレード61は、その長手方向を軸方向と平行にした状態で支持されており、トナー供給領域の軸方向長さよりも長く設定されている。このとき、軸方向において、クリーニングブレード61の感光ドラム1との当接部は、トナー供給領域を包含する。なお、トナー供給領域の軸方向長さとは、現像ローラから感光体にトナーが供給される領域の軸方向長さである。また、さらに詳しくは、このトナー供給領域の軸方向長さは、本実施例の画像形成装置でプリント可能な最大サイズのシート幅である画像形成可能領域の軸方向長さと同等か、又はこれよりも長く設定される。
【0018】
クリーニングブレード61は、感光ドラム1の表面に担持されて、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴ってクリーニングブレード61まで搬送されてくる残留トナーを、クリーニングブレード61のエッジにより掻き落としてクリーニング装置6に回収させる。この回収時に、感光ドラム1から掻き落としたトナーは、クリーニングブレード61と感光ドラム1との当接部に滞留し、クリーニングブレード61と回転する感光ドラム1との間の摩擦係数を低減させる潤滑剤として機能する。
【0019】
本実施例でも、従来と同じく、非画像形成期間に潤滑用トナー像(補助画像)14を感光ドラム1の表面に形成し、このトナー像を構成するトナーを転写位置で転写することなくクリーニングブレード61に供給する。潤滑用トナー像14の形成は、画像形成期間におけるトナー像の形成と同じプロセスにより形成される。ただし、本実施例の潤滑用トナー像14は、トナー供給領域の軸方向全域からトナーが供給されることで形成され、形成されうるトナー像のうち軸方向長さが最大のものが形成される。
【0020】
図2に、本実施例の制御ブロック図を示す。制御部999はCPU、ROM、RAMから構成されている。制御部999には、ユーザからの印刷命令が入力される。制御部999は、感光ドラム1、帯電ローラ2、レーザ露光装置3、現像装置4に対し、感光ドラム1の回転、帯電ローラ2の帯電バイアス、レーザ露光装置3の露光、現像装置4の現像動作を制御する。本実施例に従う画像形成装置の動作フローを図3のフローチャートを用いて説明する。
【0021】
制御部999は、ユーザからの印刷命令を受けて動作を開始する。まず、これまでに印刷した累積印刷枚数が装置本体に予め入力された規定枚数を超えているかどうかを判断する(S101)。この規定枚数は、クリーニングブレード61と感光ドラム1との摩擦力が増大しないうちに、潤滑処理動作が行われるように決定される。例えば、潤滑用トナー像が形成されない画像形成期間が続いてクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部に滞留するトナーが少なくなることで、クリーニングブレード61と感光ドラム1との摩擦力が増大し始めるタイミングで潤滑処理動作が開始されるように決定される。ステップS101にて累積印刷枚数が規定枚数を超えていなければ、制御部999は累積印刷枚数を1増加させ、感光ドラム1を回転駆動させて装置に印刷動作を開始させる(S102、S103)。S103の印刷動作の終了後、S106へ処理フローが移行する。S101にて累積印刷枚数が規定枚数を超えていれば、制御部999は累積印刷枚数を0(ゼロ)にリセットし(S104)、潤滑処理動作が開始される(S105)。つまり、この潤滑処理動作は非画像形成期間内であって、累積印刷枚数が規定枚数を超えたときに行われる。そして、S105にて潤滑処理動作が行われた後、潤滑処理動作S106へ移行する。S106では、制御部999が、次に搬送されるシートに対して印刷動作を行う(連続プリントする)かどうか判断し、連続プリントであれば、ステップS101へと移行し、そうでなければ動作が終了される。
【0022】
以下で、本実施例の潤滑処理動作の特徴を従来例との比較により説明する。まず、通常の印刷動作シーケンスを、図4(a)を用いて説明する。通常の印刷動作は、感光ドラム1の駆動後、まず帯電ローラ2に帯電バイアスが印加される。次に、画像情報をもとに、感光ドラム1表面の画像形成可能領域に対し露光装置3がレーザ露光し、現像装置4が動作し、現像バイアスが印加されることで、レーザ露光により形成された静電潜像がトナーにより現像されてトナー像が形成される。その後、レーザ露光、現像、帯電、感光ドラム駆動の順に動作が終了する。ここで、図4(a)において、レーザ露光の動作のオン/オフと現像バイアスの印加のオン/オフに若干の時間差があるのは、レーザにより露光された部分が感光ドラム1の回転によって現像部に到達する直前に、現像バイアスの印加が行われる為である。
【0023】
図4(c)は、本実施例の印刷動作と潤滑処理動作のシーケンスである。本発明の潤滑処理動作について図4(c)と、従来例のシーケンスである図4(b)を踏まえて説明する。本実施例における潤滑用トナー像14の形成は、画像情報に基づいて形成されたトナー像を、転写材に転写しない、非画像形成期間に行われる。潤滑用トナー像14の軸方向の長さをLtとする。図4(c)のシーケンスにおいては、通常の印刷動作後が非画像形成期間にあたり、図4(c)のシーケンスは、非画像形成期間を通常の印刷動作後として潤滑用トナー像の形成を行う一例である。
【0024】
本実施例において、通常の印刷動作後に、潤滑用トナー像14が形成される。その後、潤滑用トナー像14は、転写ローラ5により転写材に転写されずに、感光ドラム1の回転によりクリーニングブレード61へ供給される。その後、感光ドラム1を数周回転させ続ける。クリーニングブレード61のエッジへと搬送された潤滑用トナー像14を構成するトナーは、感光ドラム1の回転によって、徐々にクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部へと搬送されて、やがてクリーニングブレード61と感光ドラム1との当接部の軸方向全域へと搬送される。
【0025】
従来例では、潤滑用トナー像のクリーニングブレード61への搬送において、クリーニングブレード61の当接部の軸方向長さが、画像形成可能領域の軸方向の長さよりも長い為、クリーニングブレード61に供給される潤滑用のトナーが少なくなるほど、クリーニングブレード61の該当接部端部までトナーを供給するのに、感光ドラム1を回転させ続ける時間を長くする必要がある(図4(b))。
【0026】
これに対し、本実施例は、潤滑用のトナーをクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部まで供給する時間(感光ドラム1を回転させ続ける時間)を短くする(図4(c))。本実施例における、潤滑用トナーをクリーニングブレード61に供給するための構成を図5(a)に示す。なお、本実施例において、軸方向長さLt、Lc、Lbの寸法関係は、Lt<Lb<Lcである。図5(a)は潤滑用トナー像14が感光ドラム1の表面に形成された後、軸方向において潤滑用トナー像14の外部にある感光ドラム1表面の帯電領域が露光装置3によってレーザ露光され、電位差区域15が形成された様子を示す図である。また、図5(b)は、図5(a)に示した線分Xに沿った、電位差区域15のうちクリーニングブレード61の通過域に対応する感光体ドラム1の表面電位を示す図である。
【0027】
図5(a)に示される潤滑用トナー像14が形成され、電位差区域15が形成されるシーケンスについて、図4(c)を用いて詳述する。なお、本実施例においても、潤滑用トナー像14の形成は非画像形成期間に行われる。
【0028】
本実施例で形成される潤滑用トナー像14の形状は、図5(a)に示されるような軸方向に延びる帯状形状である。図4(c)のシーケンスにおいて、潤滑用トナー像14を形成するためのレーザ露光及び現像の範囲、タイミングは従来例である図4(b)のシーケンスと同様である。また、潤滑用トナー像14を転写材に転写させずにクリーニングブレード61へと供給、クリーニングブレード61でせき止めて当接部に滞留させ、感光ドラム1の回転によって潤滑用トナーをクリーニングブレード61と感光ドラム1との当接部の軸方向端部へ搬送することも従来例と同様である。従来例と異なるのは、潤滑用トナー像14の形成のためのレーザ露光後に、潤滑用トナー像14の在る区域とは別の区域を帯電し、この別の区域のうち軸方向において潤滑用トナー像と外側に隣接する領域に対応する領域を、露光装置3によってレーザ露光することである。このレーザ露光によって、図5(a)に示すように露光区域15bがレーザ露光されていない非露光区域15aを軸方向において挟むようにして形成されて、図5(b)に示すように帯電区域のうち感光ドラム1の中央部の非露光区域15aの電位をVdその外側の露光区域15bの電位をVlとする電位差区域15が形成される。電位差区域15の形成後、制御部999は、この電位差区域15が一様帯電されて消去されないように帯電ローラ2の帯電バイアスをオフにし、感光ドラム1を数周回転させ続ける。すなわち、この電位差区域15は、感光ドラム1の回転に従って、潤滑用トナーが滞留するクリーニングブレード61を通過する。
【0029】
このように、電位差区域15がクリーニングブレード61のトナー滞留部を通過するたびに、クリーニングブレード61に対する感光ドラム1表面の回転運動によってトナーをクリーニングブレード61の軸方向端部側へ向って拡散させようとする力に加えて、電位差区域15よって生じる電界が負極性帯電トナーをクリーニングブレード61の軸方向端部側へ向って拡散させようとする静電気力が滞留部のトナーに作用するので、電位の絶対値が大きい中央部から電位の絶対値の小さいクリーニングブレード61の端部方向へ勢い良く搬送され、クリーニングブレード61の該当接部の軸方向端部までトナーが早く、効率的に搬送される。図7はクリーニングブレード61に供給する潤滑用トナーの量を、レーザ露光して電位差区域15を形成するときとレーザ露光せずに電位差区域15を形成しないときとで一定とした場合の、感光ドラム1の回転時間と、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部側へのトナー移動距離の関係を表したものである。レーザ露光して電位差区域15を形成したものは、電位差区域15を形成しなかったものに比べ、短い時間で潤滑用トナーを遠くまで搬送できることが分かる。
【0030】
なお、電位差区域15を形成するためにレーザ露光を行う際には、露光装置3のレーザ露光の発光強度を画像形成期間におけるレーザ露光の発光強度よりも上げる、もしくは、感光ドラム1のプロセススピードを画像形成期間におけるプロセススピードよりも下げると、より効果的である。これは、レーザ露光の発光強度を上げる、もしくはプロセススピードを下げることで、露光区域15bを形成する際の露光量が多くなり、露光区域15bの電位Vlの絶対値を小さくすることができ、非露光区域15aの電位Vdとの電位差を大きくすることができるからである。
【0031】
また、本実施例では、図4(c)で示されるように、電位差区域15の形成後、この電位差区域15が一様帯電されて消去されないように帯電ローラ2の帯電バイアスをオフにしているが、潤滑処理動作期間終了まで、潤滑用トナー像14の形成後、常に電位差区域15を形成するように露光装置3によるレーザ露光をし続ければ、潤滑処理動作期間中、帯電ローラ2の帯電バイアスをオンにし続けても、本発明と同様の効果が得られる。
【0032】
以上のように本実施例を用いれば、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部までトナーを早く供給できるようになり、クリーニングブレード61への潤滑処理動作の完了を待ってプリントを行う際に、生産性を低下させずに充分に感光ドラム1の損傷を防ぐことができ、またクリーニングブレード61の捲れを防止することができる。
【0033】
(実施例2)
実施例1では、露光区域15bを形成するレーザ露光を行うタイミング、すなわち電位差区域15を形成するタイミングは、潤滑用トナー像14の形成後であった。本実施例においては、このタイミングを潤滑用トナー像14の形成前とした。図4(d)に本実施例における潤滑用トナー供給動作のシーケンスを示した。なお、潤滑用トナー像14を形成するためのレーザ露光及び現像の範囲は実施例1と同様である。また、潤滑用トナー像14を転写材に転写させずにクリーニングブレード61へと供給し、感光ドラム1の回転によって潤滑用トナーをクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部へ搬送すること、潤滑用トナー像14の形成後、電位差区域15が消去されないように帯電ローラ2の帯電バイアスをオフにし、感光ドラム1を数周回転させ続けることも実施例1と同様である。なお、特に説明がない限り、本実施例の画像形成装置は実施例1と構成を同じくし、符号、記号は実施例1のものを援用する。
【0034】
本実施例と実施例1との違いは、潤滑処理動作期間において帯電ローラ2の帯電バイアスを一時的にオフした時点に、電位差区域15が帯電ローラ2の位置を通過することである。これは、潤滑用トナー像14の形成のために帯電バイアスをオンにしたままであるときに、潤滑用トナー像14の形成前に形成された電位差区域15が、帯電ローラ2によって消去されてしまうのを防ぐためである。
【0035】
(実施例3)
実施例1及び2では、軸方向における、潤滑用トナー像14と帯電領域とクリーニングブレード61の当接部との寸法関係はLt<Lb<Lcであった。本実施例においては、Lt<Lc<Lbとすることに特徴がある。本実施例は電位差区域15の形成において、実施例1と同様に、潤滑用トナー像14の形成後にレーザ露光を行っている。なお、特に説明がなければ、本実施例の画像形成装置は実施例1のものと同様の構成とし、記号、符号は実施例1のものを援用する。
【0036】
図6(a)は本実施例にて形成される電位差区域15の様子である。Lc<Lb、つまり帯電ローラ2による感光ドラム1の帯電領域の軸方向長さがクリーニングブレード61の当接部の軸方向長さより短い場合には、クリーニングブレード61の当接部を通過する範囲内であって、帯電ローラ2によって帯電されない領域を有する電位差区域15が形成される。図6(b)は、図6(a)に示した線分Xに沿った、電位差区域15のうちクリーニングブレード61の通過域に対応する電位差区域15の感光ドラム1表面の電位変化の様子である。図6(b)に示すように、この電位差区域15の電位は、非露光区域15aがVd、露光区域15bであって帯電ローラ2により帯電される区域がVl、露光区域15bであって帯電ローラ2により帯電されない区域が0(ゼロ)となる。この電位が0(ゼロ)となる区域が形成されるのは、感光ドラム1が電気的に接地されているためである。本実施例の場合、クリーニングブレード61に滞留するトナーは、実施例1と同様に電位差(Vd−Vl)によりクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部側へと搬送され、さらに露光区域15bの帯電領域端で生じる電位差(Vl−0)によって、よりクリーニングブレード61の当接部の端部まで搬送され易くなる。なお、感光ドラム1は電気的に接地されてはいるが、画像形成期間中にクリーニングブレード61との摺擦により摩擦帯電していることもありうるので、露光区域15bを形成する際には、図6(a)に示すように、クリーニングブレード61と当接する軸方向端部までレーザ露光しておくことが好ましい。
【0037】
(実施例4)
実施例1乃至3では、電位差区域15を形成するのに、露光装置3によるレーザ露光の露光パターンは図5(a)及び図6(a)に示す通り、矩形である。本実施例は、実施例1乃至3までのレーザ露光の露光パターンとは異なる露光パターンにより電位差区域15を形成することに特徴がある。以下で、露光パターンを工夫することにより、クリーニングブレード61に滞留するトナーをより速く効果的にクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部まで搬送する構成について、説明する。なお、本実施例に示す画像形成装置の構成は図1と同様とし、実施例1の説明を援用し、ここでの説明は省略する。
【0038】
実施例1乃至3においては、帯電区域を矩形状に一様にレーザ露光することで、レーザ露光されていない非露光区域15aと帯電した露光区域15bとの間で一意的な電位差を生じさせ、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部へとトナーが搬送されやすくした。本実施例によれば、露光区域15bを含む帯電区域のうち、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部へ向かって単位面積当たりの平均電位の絶対値が段階的に小さくなることで、時間的に速くより効率的に潤滑用トナーをクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部まで搬送することができる。なお、本実施例の特徴は露光区域15bの露光パターンを工夫することにあるため、トナー供給動作シーケンス及び寸法関係は実施例1乃至3のものを適用することができる。
【0039】
図8に本実施例におけるレーザ露光の露光パターンの一例を示す。図8の最も小さな四角は、1ドットを表している。また、塗りつぶし部分はレーザ点灯部、塗りつぶされていない部分はレーザ消灯部である。図8(a1)に示す露光パターンの例では、感光ドラムの軸方向で露光装置3によって露光させるドット数を変えることで、感光ドラム1上の単位面積当たりの平均電位を変化させている。なお、露光区域15bの区域L1は、軸方向において潤滑用トナー像14と重なりなく且つ距離なく隣接している。図8(a1)に示される区域L1の面積は、区域L2、L3と等しく、この面積を単位面積としたとき、区域L1、L2、L3の単位面積当たりの電位は図8(a2)に示されるとおりであり、単位面積当たりの平均電位の絶対値は、軸方向において帯電区域の中央側から外側へ向うにしたがって段階的に小さくなっている。つまり、単位面積当たりの平均電位は、軸方向において帯電区域の中央側から外側へ向うにしたがって、段階的にトナーの帯電極性と逆の方向に偏倚している。
【0040】
潤滑用トナーが搬送される様子は以下の通りである。まず、感光ドラム1上に形成された潤滑用トナー像14を構成するトナーは実施例1乃至3と同様に、クリーニングブレード61へ供給され、クリーニングブレード61の当接部に滞留する。滞留するトナーは、感光ドラム1上の電位差区域15がこの当接部を通過する際に、電位差(Vd−Vl1)による電界により、まず、区域L1へ搬送される。そして、感光ドラム1のR1方向の回転に従って、区域L1に搬送されたトナーは、電位差(Vl1−Vl2)による電界の力を受けて、区域L2へ搬送される。同様に、区域L2のトナーは、電位差(Vl2−Vl3)により区域L3へ搬送され、露光区域15bの露光のパターンを矩形状にしたときよりも早くより効率的にクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部までトナー搬送ができる。
【0041】
また、図8(b1)に示す露光のパターンの例では、感光ドラム1が回転するに伴って、露光区域15b内の露光幅を徐々に帯電区域中央側から外側の方向へ狭くすることで、感光ドラム1上の単位面積当たりの平均電位を変化させている。図8(b1)に示される露光パターンも図8(a1)と同様に、区域L1の面積を単位面積としたときに、区域L1、L2、L3の単位面積当たりの平均電位は図8(b2)に示される通りであり、単位面積当たりの平均電位の絶対値は、軸方向において帯電区域の中央側から外側へ向うにしたがって段階的に小さくなっている。なお、露光区域15bの区域L1は、軸方向において潤滑用トナー像14と重なりなく且つ距離なく隣接している。
【0042】
図8(b1)の露光パターンにより潤滑用トナーが搬送される様子は以下の通りである。まず、形成された電位差区域15がクリーニングブレード61のトナー滞留部を通過する際に、滞留部のトナーは非露光区域15aと露光区域15b内の区域L1との電位差(Vd−Vl)により、区域L1に搬送される。トナーが区域L1に搬送された後、感光ドラム1の回転に伴い、区域L1と区域L2との間に電位差(Vd−Vl)が生じる期間があり、区域L1と区域L2との間の電位差(Vd−Vl)によって、区域L2へトナーが搬送される。区域L2と区域L3についても同様に、トナーが区域L2に搬送された後、感光ドラム1の回転に伴い、区域L2と区域L3との間に電位差(Vd−Vl)が生じる期間でトナーが区域L2から区域L3へ搬送される。このようにして、効率的に速くクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部までトナー搬送が可能となる。
【0043】
以上、露光パターンの形態例を図8(a1)、図8(b1)に示したが、露光パターンはこれに限られるものではなく、露光の有無をドット単位で制御せず、ドット4つ等の複数個を単位として露光区域15bの露光パターンを制御するなどしても良く、露光区域15bを含む帯電区域において、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部へ向うにしたがって、単位面積当たりの平均電位が段階的にトナーの帯電極性と逆の方向に偏倚するような露光パターンであれば良い。
【0044】
(実施例5)
これまでに説明した実施例1乃至4の画像形成装置は、画像形成期間での印刷動作における静電潜像の形成のための露光も電位差区域15の形成のための露光も、露光装置3(第1の露光手段)のレーザ露光によって行う構成であった。しかし、本発明の特徴である、電位差区域15を形成するに当たって、露光装置3のレーザ露光の代わりにLEDアレイ(第2の露光手段)を用いて電位差区域15を形成する構成であっても良い。この場合、制御部999はLEDアレイ13の露光を制御するように構成される。本実施例では、図1に示されるように、感光ドラム1の回転方向において、転写ローラ5より下流かつクリーニング装置6より上流に、感光ドラム1の軸方向における端部を露光できるようなLEDアレイ13を設ける。
【0045】
本実施例の他の実施例に対する違いは、前述の通り、電位差区域15を形成するための露光を露光装置3ではなく、LEDアレイ13を用いて行うことである。そのため、実施例1乃至4夫々の実施例において電位差区域15を形成する露光をLEDアレイ13によって行うとして、実施例1乃至4の構成をそのまま本実施例に適用することができ、効果も同様である。なお、本実施例ではLEDアレイ13が用いられているが、光線を照射して感光ドラム1表面の帯電領域を選択的に除電するものであれば、これに限らず、例えばタングステン球や蛍光灯などを用いても良い。
【0046】
(実施例6)
これまでの実施例1乃至5では、トナー像の現像を反転現像方式によって行う画像形成装置であった。しかし、本発明は、帯電した感光ドラム1を露光し、露光されなかった部位である暗部電位部に、感光ドラム1の帯電極性と逆極性のトナーが付着してトナー像が現像される正規現像方式の画像形成装置にも適用できる。本実施例では、現像が正規現像方式で行われる画像形成装置に本発明を適用したものを説明する。なお、特に説明がない限り、本実施例の画像形成装置は実施例1と構成を同じくし、符号、記号は実施例1のものを援用する。本実施例では、感光ドラム1の帯電極性を負極性、トナーの帯電極性を正極性として説明する。
【0047】
本実施例の他の実施例との違いは、トナーが感光ドラム1の帯電極性と逆極性であり、現像が正規現像方式であること、そのためトナーを付着させない部位を露光することである。つまり、潤滑用トナー像14と電位差区域15の形成の方法が、他の実施例と異なる。まず、潤滑用トナー像14の形成について図5を用いて説明する。潤滑用トナー像14は、図5(a)で示される、軸方向長さLcで帯電した感光ドラム1の帯電区域のうち、感光ドラム1の両端側の軸方向長さ(Lc−Lt)領域を露光して、露光されない暗部電位部となるLt領域にトナーが付着することで形成される。次に、電位差区域15の形成について説明する。電位差区域15は、図5に示された、電位がVdに相当するところを露光して「Vl」に、Vlに相当するところを露光せずに「Vd」として形成される。このようにして形成された電位差区域15がクリーニングブレード61のトナー滞留部を通過すると、滞留している正極性であるトナーは電位差区域15に形成された電界の効果により、負極性で電位の絶対値が大きい、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部側へ搬送される。ここでは、図5(a)のように、寸法関係をLt<Lb<Lcとして、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部が帯電区域に含まれるようにし、トナーが搬送される過程で、非帯電区域と帯電区域の電位差(0−Vd)による、トナー搬送を妨げる力がトナーに加わらないようにした。なお、図6(a)のようにLt<Lc<Lbとしても、帯電区域とそれに隣接する非帯電区域との間にできる電位差によって多少軸方向端部へ搬送されにくくなるが、帯電区域内の暗部電位部と明部電位部との間の電位差(Vd−Vl)によりトナーを搬送する力を利用できる。
【0048】
また、本実施例は実施例1のように、電位差区域15を形成するのに、露光装置3によるレーザ露光の露光パターンは矩形である。しかし、正規現像方式をとっている本実施例においても、実施例4のように感光ドラム1の長手方向において潤滑用トナー像14の外側に対応する領域(外側区域)の露光パターンを工夫することで、クリーニングブレード61に滞留するトナーをより速く効果的にクリーニングブレード61の当接部の軸方向端部まで搬送することができる。本実施例は正規現像を利用しているため、露光パターンは、図8(a1)、図8(b1)の露光パターンに対し、塗りつぶし部分をレーザ消灯部、塗りつぶされていない部分はレーザ点灯部であるとすれば良い。また、図8(a2)、図8(b2)はVdを「Vl」、Vlを「Vd」と読み替え、感光体中央部から端部へ向かうにしたがって、電位がVlからVdへと段階的にトナーの帯電極性(正極性)と逆の方向に偏倚していくことになる。もちろん露光パターンの形態は図8(a1)、図8(b1)に限られるものではなく、露光の有無をドット単位で制御せず、ドット4つ等の複数個を単位として露光区域15bの露光パターンを制御するなどしても良く、露光区域15bを含む帯電区域において、クリーニングブレード61の当接部の軸方向端部へ向うにしたがって、単位面積当たりの平均電位がトナーの帯電極性と逆の方向に偏倚するような露光パターンであれば良い。
【0049】
また、実施例5で述べたように、本実施例においても電位差区域15を形成する上で、LEDアレイ13などの露光装置3以外の光源を用いて露光を行っても良い。
【0050】
これまでの実施例1乃至6においては、電位差区域15に対し、潤滑用トナー像14を構成するトナーの滞留するクリーニングブレード61の当接部を通過させるのに、1回の潤滑処理動作につき電位差区域15と潤滑用トナー像14の形成はそれぞれ1回ずつ行っていた。しかし、これらを独立に複数回行っても良いし、セットとして複数回行っても良い。電位差区域15の形成を複数回とする場合は、最終回で形成された電位差区域15を消去しないように、この電位差区域15が帯電ローラ2を通過する間は帯電バイアスを切っておくか、又は、潤滑処理動作の期間の終了まで帯電バイアスをオンにし続けて且つレーザ露光又はLEDアレイ13による露光により電位差区域15を形成し続ければ良い。電位差区域15の形成を複数回とする場合でも特に、感光ドラム1が1周回転する度に電位差区域15を形成する場合は、最終回の電位差区域15の形成のための帯電区域を形成するまで帯電バイアスをオンにし続けたままでも良い。これは、最終回よりも前に形成された電位差区域15は帯電ローラ2によって消去されるが、感光ドラム1の回転方向において帯電ローラ2よりも下流かつクリーニングブレード61よりも上流にある露光装置3によって再び電位差区域15が形成され、クリーニングブレード61の当接部を通過することできるからである。潤滑用トナー像14の形成については、その形成回数に関わらず、それぞれの潤滑用トナー像14が電位差区域15とは別の区域で形成され、その形成過程で最終回の電位差区域15が消去されないように帯電バイアスのオン/オフを制御する。
【0051】
また、実施例1乃至6において、露光区域15bは、軸方向で潤滑用トナー像14と重なりなく接しているが、露光区域15bは軸方向で潤滑用トナー像14と多少重なっていても良い。クリーニングブレード61に滞留する潤滑用トナーの軸方向端部への搬送は、露光により形成される電位差ΔV(=Vd−Vl)と、露光区域15bと潤滑用トナー像14との重なり幅Cに影響される。ΔVが大きくなるほど、電位差による電界の効果で潤滑用トナーは搬送されやすくなるが、Cが大きくなるほど、電界の効果が減衰して搬送されにくくなる。これらの事情を考慮すると、C/ΔV=10mm/kV以下であれば本発明の効果は失われず、潤滑用トナーを早く効率的に搬送することができる。また、このΔVとCの関係は、露光区域15bと軸方向で潤滑用トナー像14とが離れている状況にも適用でき、離れ幅をDとした時に、D/ΔV=10mm/kV以下であれば、本発明の効果を奏することができる。
【0052】
また、潤滑用トナー像14の形成タイミングについてであるが、実施例1乃至6では潤滑用トナー像14の形成を印刷動作間の非画像形成期間に行う場合であったが、これに限られるものではなく、印刷命令、すなわち印刷ジョブの間の非画像形成期間に行うものであっても良いし、印刷ジョブ後の後処理として行われても良い。
【0053】
そして、実施例1乃至6において、潤滑用トナー像14として、トナー供給領域の軸方向全域からのトナー供給により、形成されうる最大の軸方向長さのものが形成された。潤滑用トナーを早くクリーニングブレード61の当接部端部へ搬送することを考えれば、感光ドラム1の軸方向全域を露光して形成し得る最大の軸方向長さの潤滑用トナー像14を形成することが好ましい。しかし、本発明は電位差区域15による電界効果でトナー搬送を容易にするものであるため、潤滑用トナー像14として、最大の軸方向長さでなく、電位差区域15による電界効果が及ぶ限りにおいて小さいものが形成されるようにしても良い。
【0054】
また、実施例1乃至6では、潤滑用トナー像14を形成する非画像形成期間に電位差区域15を形成したが、潤滑用トナー像14を構成するトナーがクリーニングブレード61の当接部に滞留している間に該電位差区域15が該当接部を通過するようなタイミングで電位差区域15を形成してもよい。例えば、非画像形成期間に潤滑用トナー像14を形成してクリーニングブレード61の当接部へと潤滑用トナーを供給し、画像形成期間にシート1枚分のみの印刷動作を行い、次の非画像形成期間に電位差区域15を形成して該電位差区域15をクリーニングブレード61の当接部を通過させても良い。
【0055】
実施例1乃至6では、潤滑用トナー像14を形成するために、帯電、露光、現像のシーケンスがあったが、現像のシーケンスのみ、つまり現像装置4の現像ローラから感光ドラム1の非露光域上にトナーを転移させることのできる大きさと極性を持つ現像バイアスのみによって潤滑用トナー像14を形成しても良い。
【0056】
なお、本発明は、帯電ローラ2による感光ドラム1の帯電極性が負極性である反転現像方式及び正規現像方式の画像形成装置に利用されたが、感光ドラム1の帯電極性が正極性である反転現像方式及び正規現像方式の画像形成装置に利用されても良い。
【0057】
これまでの実施例1乃至6では、感光ドラム1の回転方向に対してカウンタ方向に当接したクリーニングブレード61を備えた画像形成装置であったが、本発明はカウンタ方向ではなく、順方向に当接したクリーニングブレードを備えた画像形成装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
61 クリーニングブレード
13 LEDアレイ
14 潤滑用トナー像
15 電位差区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する感光体と、前記感光体を所定の極性に帯電させる帯電手段と、帯電した前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、現像剤を前記静電潜像に付着させて現像剤像を形成する現像手段と、前記現像剤像を転写材に転写する転写手段と、前記感光体の回転方向において前記転写手段よりも下流且つ前記帯電手段よりも上流で前記感光体に当接して、前記感光体に残留している現像剤を除去する弾性体ブレードと、を有し、非画像形成期間の所定のタイミングで前記現像手段が前記感光体の表面へ現像剤を供給して補助画像を形成し、前記補助画像を構成していた現像剤を転写材に転写させずに前記弾性体ブレードによって滞留させる画像形成装置であって、
前記感光体の長手方向における寸法で、前記補助画像の長さをLt、前記弾性体ブレードと前記感光体との当接部の長さをLb、前記帯電手段による前記感光体の帯電領域の長さをLc、として、Lt<Lb且つLt<Lcの関係が成立し、
前記帯電手段が前記感光体の前記補助画像の在る区域とは別の区域を前記長さLcの範囲で帯電して所定の帯電区域を形成し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と同極性の場合は前記露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の外側に対応する外側区域を露光し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と逆極性の場合は前記露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の内側に対応する中央側区域を露光して、前記感光体の長手方向において中央側区域の電位よりも、外側区域の電位が前記現像剤の帯電極性とは逆の方向に偏倚した所定の電位差区域を形成し、前記所定の電位差区域を、前記補助画像を構成していた現像剤を滞留させている弾性体ブレードを通過させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定の電位差区域の形成時において、前記露光手段の露光における発光強度が、画像形成期間での発光強度よりも高いことを特徴とする請求項1の画像形成装置。
【請求項3】
回転する感光体と、前記感光体を所定の極性に帯電させる帯電手段と、帯電した前記感光体を露光して静電潜像を形成する第1の露光手段と、現像剤を前記静電潜像に付着させて現像剤像を形成する現像手段と、前記現像剤像を転写材に転写する転写手段と、前記感光体の回転方向において前記転写手段よりも下流且つ前記帯電手段よりも上流で前記感光体に当接して、前記感光体に残留している現像剤を除去する弾性体ブレードと、を有し、非画像形成期間の所定のタイミングで前記現像手段が前記感光体の表面へ現像剤を供給して補助画像を形成し、前記補助画像を構成していた現像剤を転写材に転写させずに前記弾性体ブレードによって滞留させる画像形成装置であって、
前記感光体を露光する第2の露光手段を有し、
前記感光体の長手方向における寸法で、前記補助画像の長さをLt、前記弾性体ブレードと前記感光体との当接部の長さをLb、前記帯電手段による前記感光体の帯電領域の長さをLc、として、Lt<Lb且つLt<Lcの関係が成立し、
前記帯電手段が前記感光体の補助画像の在る区域とは別の区域を前記長さLcの範囲で帯電して所定の帯電区域を形成し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と同極性の場合は前記第2の露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の外側に対応する外側区域を露光し、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と逆極性の場合は前記第2の露光手段が前記所定の帯電区域のうち前記感光体の長手方向において前記補助画像の内側に対応する中央側区域を露光して、前記感光体の長手方向において中央側区域の電位よりも、外側区域の電位が前記現像剤の帯電極性とは逆の方向に偏倚した所定の電位差区域を形成し、前記所定の電位差区域を、補助画像を構成していた現像剤を滞留させている弾性体ブレードを通過させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の帯電区域内の単位面積当たりの平均電位が、前記感光体の長手方向において前記所定の帯電区域の中央側から外側へ向うにしたがって、段階的に前記現像剤の帯電極性とは逆の方向に偏倚するように前記所定の電位差区域が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項5】
前記外側区域内の単位区画内での露光パターンが、前記感光体の長手方向の位置によって異なることを特徴とする請求項4の画像形成装置。
【請求項6】
前記所定の電位差区域の形成時において、前記感光体の周速度が、画像形成期間での周速度よりも低いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と同極性の場合はLt<Lc<Lbであり、前記現像剤の帯電極性が前記所定の極性と逆極性の場合はLt<Lb<Lcであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−215549(P2011−215549A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86189(P2010−86189)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】