説明

画像形成装置

【課題】帯電部材の表面に付着した異物を長期間に亘って効果的に除去可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】マグネットローラ20は、周方向にN極及びS極が交互に配置された複数の磁極(ここでは8極)を有しており、帯電ローラ3との間に所定の間隔を隔てて配置されている。マグネットローラ20の表面には磁性キャリアとトナーから成る二成分現像剤が予め担持されている。そして、N極及びS極で形成される磁界によりマグネットローラ20表面にトナー及びキャリアがブラシ状に起立する磁気ブラシMが形成される。マグネットローラ20の回転により磁気ブラシMが帯電ローラ3表面を摺擦すると、帯電ローラ3表面の異物が電気的に磁気ブラシMに吸着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法を用いた画像形成装置に関するものであり、特に感光体表面を接触若しくは非接触の状態で帯電させる帯電部材の清掃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体ドラムの表面を均一に帯電させる好適な手段としては、コロナ放電器を備えたコロナ帯電方式と、帯電ローラに代表される導電性の帯電部材を備えた接触帯電方式とがある。コロナ放電器はオゾン等のコロナ生成物が多く発生するので、オゾンにより空気中の成分が分解され、NOxやSOx等のイオン生成物が生成される。そのため、近年ではコロナ帯電方式に代えて接触帯電方式が採用される傾向が認められる。この接触帯電方式は、特に直流電圧若しくは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することによりオゾン、NOx、SOx等の発生を抑制可能である。
【0003】
このような接触帯電方式を用いる場合、像担持体である感光体表面がトナーの成分や転写紙の紙粉等の異物で汚染されていると、これらの異物が帯電ローラ等の帯電部材の表面に移動し帯電不良を起こす原因となり、帯電不良による画像品質の低下が生じていた。かかる帯電ローラの汚染(異物の付着)を防止するため、従来、帯電ローラに対して、回転式若しくは固定式のブラシやスポンジ等のクリーニング部材を接触させることにより、帯電ローラの清掃が行われていた。
【0004】
しかし、クリーニング部材を帯電ローラに当接させると、帯電ローラの円周方向に発生する縦スジ等の清掃ムラやクリーニング部材の劣化等が生じ、長期間に亘って清掃性能を十分に発揮できず、帯電不良を防止できないという問題があった。かかる問題に対処するため、例えば、特許文献1には、帯電ローラの軸方向にクリーニング部材を移動させることで帯電ローラの円周方向に縦スジを発生させずに帯電ローラ表面の付着物(外添剤)を直接清掃する方法が開示されている。また、特許文献1にはクリーニング部材を帯電ローラに対して接離等させる方法も提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、潜像担持体(像担持体)に静電的に付着させたトナーを接触帯電部材に接触通過させて接触帯電部材を清掃することにより、新たな構成部品を増設することなく、接触帯電部材に付着するトナーや外添剤を低減する方法が開示されている。また、特許文献2には、像担持体上のトナーが接触帯電部材に接触通過する間、接触帯電部材に交流電圧を重畳した直流電圧を印加することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−248740号公報
【特許文献2】特開2002−196569号公報(段落[0044]〜[0045]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、クリーニング部材を用いて帯電ローラ表面の付着物(外添剤)を直接清掃するため、クリーニング部材の圧接力を強くすると帯電ローラ表面に付着した異物をさらに押し付けて強固に固着させるおそれがあり、かえって異物を十分に除去できないおそれがあった。また、クリーニング部材の変形によるクリーニング性能の低下を抑制するためにはクリーニング部材を帯電ローラに対して接離させる機構が必要となり、構成の複雑化やコストアップにも繋がるという問題点があった。
【0008】
さらに、クリーニング時以外は帯電ローラとクリーニング部材とを離間させたとしても、クリーニング時における帯電ローラへの圧接により、ブラシ状のクリーニング部材を用いた場合は毛抜けや毛倒れが、スポンジやウレタンフォーム製のクリーニング部材を用いた場合は変形や汚染等が経時的に発生する。そのため、長期間に亘ってクリーニング性能を維持することが困難であり、結果として帯電ローラの長寿命化を達成することができなかった。
【0009】
また、特許文献2の方法では、帯電ローラに交流電圧を重畳した直流電圧(帯電バイアス)を印加しながら像担持体表面のトナーを帯電ローラに接触させているため、像担持体表面のトナーの帯電量が増加してトナーと像担持体表面との間に静電気力が生じたり、帯電ローラと像担持体との間にトナーが帯電ローラから像担持体へと移動する方向の電位差が生じたりするおそれがあった。
【0010】
かかる場合、像担持体表面のトナーが帯電ローラ表面に付着し難くなるため、像担持体表面のトナーを帯電ローラ表面に接触させても、帯電ローラ表面の全周にわたって軸方向に略均一に付着させることは困難となる。そのため、帯電ローラ表面に対して該表面の異物を回収するために十分なトナーを付着させることができず、異物を十分に回収できないおそれがあった。
【0011】
なお、感光体表面を非接触の状態で帯電させる場合においても、帯電部材と感光体とが近接している場合は、上述したような接触帯電方式と同様に帯電部材へ異物が付着するという問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、帯電部材の表面に付着した異物を長期間に亘って効果的に除去可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、表面に感光層を有し静電潜像が形成される像担持体と、該像担持体の表面に接触若しくは非接触状態で帯電バイアスを印加することで前記像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記帯電部材に磁気ブラシを接触させて前記帯電部材の表面を清掃する帯電クリーニング部材と、を備えた画像形成装置である。
【0014】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記帯電クリーニング部材は、周方向にN極及びS極が交互に配置された複数の磁極を有するマグネットローラの表面に磁気ブラシを形成したものであり、前記マグネットローラは、前記帯電部材の表面に磁気ブラシが接触するように前記帯電部材に対し所定の間隔を隔てて回転することを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記帯電部材が前記像担持体に接触しながら回転する帯電ローラであり、前記マグネットローラは、前記帯電ローラとの対向面において前記帯電ローラに対しカウンタ方向に回転することを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、前記帯電クリーニング部材は、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いて磁気ブラシを形成することを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の画像形成装置において、磁気ブラシを形成するトナーは、画像形成に用いられるトナーに含まれる外添剤と逆極性であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の構成によれば、帯電部材に帯電クリーニング部材の磁気ブラシを接触させて帯電部材の表面を清掃することで、ブラシやスポンジ等により物理的に清掃する方法に比べて経時的な清掃能力の低下が生じず、物理的なクリーニングのように帯電ローラに異物を押し付けて強固に固着させるおそれもない。従って、帯電部材の汚染による帯電性能の低下及びそれに伴う画像品質の低下を長期間に亘って防止できるとともに、物理的なクリーニングに比べて帯電部材に対する負荷も低減されるため帯電部材の長寿命化にも有利となる。
【0019】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の画像形成装置において、帯電クリーニング部材を、周方向にN極及びS極が交互に配置された複数の磁極を有するマグネットローラの表面に磁気ブラシを形成し、マグネットローラの回転により帯電部材の表面に磁気ブラシのみが接触する構成とすることにより、簡単な構成で磁気ブラシを形成できる帯電クリーニング部材となる。
【0020】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の画像形成装置において、帯電部材を像担持体に接触しながら回転する帯電ローラとし、マグネットローラを帯電ローラとの対向面において帯電ローラに対しカウンタ方向に回転させることにより、単位時間当たりに帯電ローラ表面を通過する磁気ブラシ量が多くなるため、より効率的なクリーニングを行うことができる。
【0021】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の画像形成装置において、帯電クリーニング部材は、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いて磁気ブラシを形成することにより、粒径が比較的大きいキャリアで帯電ローラ表面を摺擦して固着した異物を引き剥がし、粒径が比較的小さく表面積の大きいトナーでより多くの異物を吸着して取り込むことができる。
【0022】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第4の構成の画像形成装置において、磁気ブラシを形成するトナーとして、画像形成に用いられるトナーに含まれる外添剤と逆極性のトナーを用いることにより、磁気ブラシが主たる異物であるトナー外添剤を引き付ける力がより強くなり、磁気ブラシによるクリーニング性能を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面図
【図2】本実施形態の画像形成装置に用いられる感光体ドラム周辺を示す概略拡大断面図
【図3】図2における帯電ローラ及び帯電クリーニング部材の拡大図
【図4】帯電ローラのクリーニング部材として図3に示したような帯電クリーニングローラを用いた場合(本発明)と、ファーブラシを用いた場合(比較例)とで、連続印字枚数と帯電ローラの体積抵抗のlog値との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。画像形成装置(ここではモノクロプリンタ)100内には画像形成部Pが配設されている。この画像形成部Pは、帯電、露光、現像及び転写の各工程により所定の画像を形成する。
【0025】
この画像形成部Pには、可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)2が配設されており、感光体ドラム2上に形成されたトナー像が、シート(記録媒体)6上に転写され、さらに、定着ユニット7においてシート6上に定着された後、装置本体より排出される構成となっている。駆動モータ(図示せず)により感光体ドラム2を図1において所定の回転方向(ここでは時計方向)に回転させながら、感光体ドラム2に対する画像形成プロセスが実行される。
【0026】
次に、画像形成部Pについて詳細に説明する。回転自在に配設された感光体ドラム2の周囲及び上方には、感光体ドラム2を帯電させる帯電ローラ(帯電部材)3と、感光体ドラム2に画像情報を露光して静電潜像を形成する露光ユニット4と、感光体ドラム2上の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像ユニット5と、感光体ドラム2上のトナー像を記録媒体上に転写する転写ローラ17と、感光体ドラム2上に残留した現像剤(トナー)を回収するクリーニング装置9と、感光体ドラム2上の残留電荷を除去する除電器10と、が設けられている。
【0027】
先ず、帯電ローラ3によって感光体ドラム2の表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、感光体ドラム2上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像ユニット5は、感光体ドラム2と対向して配置された現像ローラ5aを有し、現像ユニット5には磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤が所定量充填されている。この現像剤中のトナーは、現像バイアス電源26(図2参照)によりトナーと同極性の現像バイアスが印加された現像ローラ5aから感光体ドラム2表面に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。トナー像の形成によって現像ユニット5内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ11から現像ユニット5にトナーが補給される。なお、帯電ローラ3の詳細については後述する。
【0028】
トナー像が転写されるシート6は、シート6を収納する複数の給紙カセット12a、12b、12cと、その上方に設けられるスタックバイパス(手差しトレイ)12dに収容されており、給紙ローラ13、レジストローラ対14を介して、トナー像が形成された感光体ドラム2に向けて搬送される。
【0029】
このとき画像書き出し信号がONとなり、シート6の所定位置にトナー像が転写されるように感光体ドラム2上に画像形成を行う。そして、感光体ドラム2の下部において、所定の転写バイアスが印加された転写ローラ17で電界付与することにより、感光体ドラム2上のトナー像がシート6上に転写される。
【0030】
トナー像が転写されたシート6は、定着ユニット7へと搬送される。また、トナー像が転写された後の感光体ドラム2は、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、その表面に残留したトナーがクリーニング装置9により回収される。定着ユニット7に搬送されたシート6は、定着ローラ7aにより加熱及び加圧されてトナー像がシート6の表面に定着され、所定の画像が形成される。画像が形成されたシート6は、その後排出ローラ18によって排出トレイ19に排出される。
【0031】
図2は、本実施形態の画像形成装置に用いられる感光体ドラム周辺の概略拡大断面図である。なお、図2において、直線矢印方向は、シート6の搬送方向を示す。図1と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。感光体ドラム2としては、例えばアモルファスシリコン(a−Si)ドラムを用いることができる。また、感光体ドラム2は、不図示の駆動ギアを介して駆動モータ(図示せず)と連結されることにより、画像形成時には図中時計方向に回転するようになっている。
【0032】
感光体ドラム2の上方には、感光体ドラム2に接触して該ドラム表面を帯電する帯電ローラ3が配置されている。帯電ローラ3は、例えば、金属製のシャフト(芯金)3aの周面に抵抗値105〜106Ω、表面粗さRZ=10μmのエピクロルヒドリンゴム等から成るゴム層(弾性層)を形成した導電性ゴムローラ等のソリッドタイプを好適に用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。その他、例えば、発泡ゴムローラにチューブを被せたスポンジタイプ等を用いることもできる。
【0033】
帯電ローラ3は、装置本体に回転可能に支持されている。また、帯電ローラ3は、感光体ドラム2に所定のニップ圧で圧接されており、感光体ドラム2に従動して回転するようになっている。また、画像形成時、帯電ローラ3には正極性の帯電バイアスが印加されるようになっている。
【0034】
具体的には、帯電ローラ3の芯金3aは、帯電バイアス電源25と電気的に接続され、帯電バイアス電源25から帯電ローラ3に対して交流電圧を重畳した直流電圧から成る帯電バイアスが印加される。かかる帯電バイアスの印加によって帯電ローラ3のゴム層の抵抗に応じて流れる電流により、感光体ドラム2表面を帯電することができる。なお、帯電バイアス電源25から帯電ローラ3に対して、直流電圧のみを印加することもできる。
【0035】
また、転写ローラ17の芯金17aは、転写バイアス電源27と電気的に接続され、画像形成時、転写バイアス電源27から転写ローラ17に対してトナーとは逆極性である負極性の転写バイアスが印加されるようになっている。
【0036】
クリーニング装置9には、感光体ドラム2表面の残留トナーを除去するためのクリーニングブレード22と、感光体ドラム2表面の残留トナーを除去するとともに感光体ドラム2表面を摺擦して研磨するクリーニングローラ23と、トナー排出手段としての回収スクリュー24と、が設けられている。クリーニングブレード22は、感光体ドラム2の表面に、該ドラムの回転方向(図2の時計方向)に対しカウンタとなるよう当接している。クリーニングブレード22の厚みは、装置構成等に応じて例えば1.2mmとすることができる。
【0037】
感光体ドラム2表面の残留トナーや外添剤は、クリーニングブレード22により除去され、クリーニングローラ23及び回収スクリュー24によってトナー排出口(図示せず)からクリーニング装置9の外部に排出される。なお、図示しないが、クリーニング装置9には、クリーニングローラ23表面のトナーを所定の層厚とするためのスクレーパや、クリーニング装置9内の廃トナーを外部に漏らさないためのウレタンシール等も設けられている。
【0038】
ところで、クリーニング装置9を設けることによって、上記の通り残留トナーやシリカ、酸化チタン等のトナー外添剤、用紙の填料等は、その大部分がクリーニングブレード22及びクリーニングローラ23により除去されるが、除去されずにクリーニングブレード22を摺り抜けるトナーや外添剤等の異物も存在する。クリーニングブレード22を摺り抜け、感光体ドラム2表面に付着したまま感光体ドラム2の回転方向下流側に移動する異物のうち、トナーと逆極性を帯びているものは、帯電バイアスにより帯電ローラ3表面に付着する。
【0039】
帯電ローラ3表面に異物が付着すると、付着した部分は帯電ローラ3表面の抵抗が他の部分とは異なるため、帯電ローラ3表面の電位にムラが発生して感光体ドラム2表面の帯電不良が生じるおそれがある。そして、感光体ドラム2表面に帯電不良が生じると画像上に黒点等となって出現する画像不良が発生するおそれがある。そこで本発明では、帯電ローラ3の上方に磁気ブラシによって帯電ローラ3表面の異物を除去するマグネットローラ20が配置されている。
【0040】
次に、マグネットローラ20の構成について説明する。図3は、図2における帯電ローラ3及びマグネットローラ20周辺の拡大図である。図3に示すように、マグネットローラ20は、周方向にN極及びS極が交互に配置された複数の磁極(ここでは8極)を有しており、帯電ローラ3の長手方向(図3の紙面表裏方向)略全域に沿って、帯電ローラ3との間に所定の間隔を隔てて配置されている。マグネットローラ20は、帯電ローラ3の回転方向(図3の反時計方向)と同方向、即ち帯電ローラ3の対向面に対しカウンタ方向に回転する。
【0041】
マグネットローラ20の表面には磁性キャリアとトナーから成る二成分現像剤(クリーニング剤)が予め担持されている。そして、N極及びS極で形成される磁界によりマグネットローラ20表面にトナー及びキャリアがブラシ状に起立する磁気ブラシMが形成される。図3に示すように、磁気ブラシMは各磁極付近で山状に突出し、磁極間においては隣接する異極性の磁極により発生する水平方向(ローラ周方向)の磁界により谷状に凹んでいる。
【0042】
マグネットローラ20の表面から磁気ブラシMの先端までの高さは、マグネットローラ20を構成する各磁極の磁力や、マグネットローラ20に担持される二成分現像剤の量によって決まる。また、帯電ローラ3とマグネットローラ20との間隔は、磁気ブラシMが帯電ローラ3の表面を摺擦可能な寸法に設定される。
【0043】
マグネットローラ20が回転すると、磁気ブラシMは帯電ローラ3表面を摺擦しながらマグネットローラ20と共に移動する。上述したように、帯電ローラ3の表面に付着しているトナー外添剤や用紙の填料等の異物はトナーと逆極性の電荷を帯びているものが多い。そのため、帯電ローラ3表面に磁気ブラシMが接触すると、帯電ローラ3表面の異物が電気的に磁気ブラシMに吸着される。これにより、トナー外添剤や用紙の填料等の異物が帯電ローラ3表面からマグネットローラ20に回収される。
【0044】
このようなマグネットローラ20を設けることにより、帯電ローラ3表面に付着した異物を磁気ブラシによって効果的に除去することができる。磁気ブラシはブラシ状、スポンジ状のクリーニング部材のように使用による変形や破損がない。また、磁気ブラシを形成するクリーニング剤は磁性キャリアとトナーから構成される微粒子であるため表面積が大きく、異物の回収許容量が大きい。そのため、マグネットローラ20を用いた磁気ブラシによるクリーニングはクリーニング性能が経時的に低下しない。
【0045】
また、帯電ローラ3表面にクリーニング部材を圧接させて異物を物理的に除去する方法では、クリーニング部材の圧接力を強めると逆に外添剤等の異物を帯電ローラ3に押し付けてしまい、かえって異物の付着力が高まるおそれがあるが、本発明のように磁気ブラシで摺擦する方法ではそのような心配もない。さらに、本発明の方法では物理的なクリーニングに比べて帯電ローラ3に対する負荷も低減されるため、帯電ローラ3の長寿命化にも有利となる。従って、帯電ローラ3の汚染による帯電性能の低下及びそれに伴う画像品質の低下を長期間に亘って効果的に防止することができる。
【0046】
また、マグネットローラ20を帯電ローラ3の対向面に対しカウンタ方向に回転させることにより、単位時間当たりに帯電ローラ3表面を通過する磁気ブラシ量が多くなるため、より効率的なクリーニングを行うことができる。
【0047】
なお、マグネットローラ20表面に磁気ブラシMを形成するクリーニング剤は、帯電ローラ3表面の異物を回収可能であれば特に限定されず、クリーニング剤として磁性キャリアのみを用いることもできる。しかし、一般的にキャリアの粒径はトナーに比べて大きいため、帯電ローラ表面の摺擦力は大きい反面、トナー外添剤等の異物を取り込む能力は低い。そのため、粒径の比較的大きいキャリアで帯電ローラ表面を摺擦して固着した異物を引き剥がし、粒径の比較的小さいトナーで異物を取り込むことのできる二成分現像剤を用いることが好ましい。その他、磁性一成分現像剤(磁性トナー)を用いることもできる。
【0048】
特に、画像形成用のトナーに含まれるトナー外添剤と逆極性のトナーをクリーニング剤として用いた場合、トナー外添剤を引き付ける力がより強くなり、磁気ブラシによるクリーニング性能を一層向上させることができる。例えば、トナー外添剤として正帯電性のシリカを用いる場合はクリーニング剤として負帯電性のトナーを用いれば良い。
【0049】
その他、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記した感光体ドラム2や帯電ローラ3の材質や外径、線速等は、特に限定されるものではなく、装置構成等に応じて適宜設定することができる。また、上記実施形態では、正帯電トナーを用いて画像形成を行う画像形成装置を例に挙げて説明したが、負帯電トナーを用いる画像形成装置に適用することもできる。
【0050】
また、マグネットローラ20の構成も、表面に磁気ブラシを形成可能であれば上記実施形態に限定されず、例えばN極及びS極が周方向に交互に配置された図3のようなマグネットローラの外側にスリーブを設け、マグネットローラを固定してスリーブのみを回転させる構成としても良い。
【0051】
また、上記実施形態において、帯電ローラ3は、感光体ドラム2の表面に接触した状態で感光体ドラム2の表面を帯電させるように構成されているが、帯電ローラ3が感光体ドラム2の表面に近接して配置され、非接触の状態で帯電させるように構成される実施形態においても、実質的に同じ作用により実質的に同じ効果を奏することができる。
【0052】
また本発明は、デジタル複合機やタンデム式のカラー複写機、アナログ方式のモノクロ複写機等の複写機、或いはモノクロ及びカラープリンタ、ファクシミリ等、種々の画像形成装置に適用可能である。
【実施例】
【0053】
図1に示すような試験機を用い、帯電ローラ3のクリーニング手段として図3に示したようなマグネットローラ20を用いた場合(本発明)と、従来のファーブラシを用いた場合(比較例)とで、連続印字後の帯電ローラ表面の汚染を比較した。
【0054】
試験機の条件としては、直径30mmのアモルファスシリコン感光体ドラムを用い、感光体ドラムの周速を230mm/secとし、ドラム表面電位は白地部電位(V0)を300V、画像部電位(VL)を20Vとした。また、現像ローラの周速を345mm/secとし、20Vの直流バイアスにVpp=1.5kV、周波数4.0kHz、Duty=40%の矩形波の交流バイアスを重畳した現像バイアスを印加した。
【0055】
現像剤としては、粉砕法により製造された平均粒径6.8μmの正帯電トナーと平均粒径45μmのコーティングフェライトキャリアとから成る二成分現像剤を用い、キャリアに対するトナーの混合比率(T/C)を12重量%とした。
【0056】
帯電ローラは、直径8mmの芯金に外径12mmのエピクロルヒドリンゴム製の弾性層を設けたものを用い、感光体ドラムに従動回転させた。そして、450Vの直流バイアスにVpp=1.2kV、周波数2.0kHzの正弦波の交流バイアスを重畳した帯電バイアスを印加した。
【0057】
本発明に用いたマグネットローラは、N極及びS極が周方向に交互に8極配置された直径12mmの円柱状のマグネットであり、帯電ローラに近接するように配置した。N極及びS極の磁力は共に600mTとし、マグネットローラは帯電ローラと同一周速で帯電ローラの対向面に対しカウンタ方向に回転させた。また、帯電クリーニングローラと帯電ローラとの間隔を300μmとし、クリーニング剤としてT/Cが12%である二成分現像剤を12g担持させた。
【0058】
比較例に用いたファーブラシは、太さ2デニールの導電性ナイロン製フィラメントを40,000本/cm2のフィラメント密度で外径11.5mmのローラ状に形成したものであり、ブラシ抵抗値は1.0×107Ωであった。また、ファーブラシの周速を276mm/sec(感光体に対し1.2倍)とした。
【0059】
帯電ローラ表面の汚染の評価方法としては、帯電ローラ表面の汚染と帯電ローラの体積抵抗とが相関することを用いて、印字率5%のテスト画像を連続して印字し、所定枚数毎に帯電ローラの体積抵抗を測定した。評価結果を図4に示す。
【0060】
図4から明らかなように、帯電クリーニングローラを用いて磁気ブラシでクリーニングする本発明(□のデータ系列で表示)では、連続印字開始時に5.7であった体積抵抗値の対数(logΩ)が50万枚印字後においても6.0を超えず、帯電ローラが汚染されていないことが認められた。これに対し、ファーブラシを用いてクリーニングする比較例(◇のデータ系列で表示)では、10万枚を超えたあたりから体積抵抗が徐々に上昇し始め、50万枚印字後の体積抵抗値の対数(logΩ)が6.9まで上昇し、帯電ローラの汚染が認められた。
【0061】
以上の結果より、磁気ブラシを用いて帯電ローラ表面をクリーニンする本発明では、ファーブラシを用いるクリーニングに比べて長期間に亘って帯電ローラの汚染による体積抵抗の上昇を抑制できることが確認された。
【0062】
なお、上記実施例は本発明の一構成例にすぎず、ドラム表面電位や現像ローラ及び磁気ローラへの電圧印加条件等は装置の仕様や使用環境に応じて適宜設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、像担持体に対し接触若しくは近接して配置された帯電部材を用いて像担持体表面を帯電させる方式の画像形成装置に利用可能であり、帯電部材に磁気ブラシを接触させて帯電部材の表面を清掃する帯電クリーニング部材を設けたものである。
【0064】
これにより、帯電部材に付着した異物が磁気ブラシによって確実に回収され、帯電部材の汚れによる帯電ムラやそれに起因する画像濃度ムラの発生を効果的に抑制できるとともに、経時的にクリーニング性能が低下しないため、長期間に亘って安定した画像品質を維持可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
2 感光体ドラム(像担持体)
3 帯電ローラ(帯電部材)
4 露光ユニット
5 現像ユニット
6 シート
7 定着ユニット
9 クリーニング装置
17 転写ローラ
20 マグネットローラ(帯電クリーニング部材)
25 帯電バイアス電源
26 現像バイアス電源
27 転写バイアス電源
100 プリンタ
M 磁気ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層を有し静電潜像が形成される像担持体と、
該像担持体の表面に接触若しくは非接触状態で帯電バイアスを印加することで前記像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に磁気ブラシを接触させて前記帯電部材の表面を清掃する帯電クリーニング部材と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電クリーニング部材は、周方向にN極及びS極が交互に配置された複数の磁極を有するマグネットローラの表面に磁気ブラシを形成したものであり、前記マグネットローラは、前記帯電部材の表面に磁気ブラシが接触するように前記帯電部材に対し所定の間隔を隔てて回転することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記帯電部材が前記像担持体に接触しながら回転する帯電ローラであり、前記マグネットローラは、前記帯電ローラとの対向面において前記帯電ローラに対しカウンタ方向に回転することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電クリーニング部材は、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いて磁気ブラシを形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
磁気ブラシを形成するトナーは、画像形成に用いられるトナーに含まれる外添剤と逆極性であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−232592(P2011−232592A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103378(P2010−103378)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】