説明

画像形成装置

【課題】標高の違いに起因する画質の劣化を抑制する。
【解決手段】画像形成ユニットにより像担持体の表面に形成され、転写手段によって記録用紙上に転写されたトナー画像を定着手段によって記録用紙上に定着させる画像形成装置であって、標高が高くなる程に定着手段における定着温度が低くなるような標高と定着温度との関係を第1のテーブルとして記憶し、外部から入力された情報に基づいて標高を特定し、当該特定した標高と第1のテーブルとに基づいて標高に応じた定着温度を設定する制御手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体ドラム上に形成されたトナー画像が直接またはた中間転写ベルトを介して記録用紙に転写され、その後に当該記録用紙に定着処理が施されることによってトナー画像が記録用紙上に形成される。定着処理の方式には、定着ローラ方式、定着ベルト方式及びIH方式などがあり、いずれの方式も未定着のトナー画像を加熱及び加圧することにより熱圧定着させている。例えば、定着ローラでは、内部にヒータを備えた加熱ローラと、加熱ローラに圧接される圧接ローラとによって記録用紙を挟持搬送することによりトナー画像を定着させている。例えば、下記特許文献1及び特許文献2には、このような定着ローラが搭載された画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3698961号公報
【特許文献2】特許第3863152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術において、記録用紙表面の粗さ、すなわち表面の凹凸によって記録用紙に転写されたトナーの付着量にムラが生じてしまう。例えば、高地では、記録用紙中に含まれる水分の沸点が低くなるために、転写ムラが生じた記録用紙を低地と同じ定着温度で加熱すると、過剰加熱のためにトナー付着量の多い画素の光沢度が高くなり、トナー付着量の少ない画素の光沢度が低くなってしまい、画像の色ムラが生じてしまう。さらに、高地では気圧が低くなるために、例えば、現像プロセス及び1次転写プロセスの中でトナーの帯電量が高くなった場合に、2次転プロセスにおいてトナーから記録用紙に放電しやすくなり、転写ムラが発生してしまう。そして、この転写ムラの発生したトナー画像を低地と同じ定着温度で加熱すると、画素の光沢度の違いが目立ってしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、標高の違いに起因する画質の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、画像形成ユニットにより像担持体の表面に形成され、転写手段によって記録用紙上に転写されたトナー画像を定着手段によって記録用紙上に定着させる画像形成装置であって、標高が高くなる程に定着手段における定着温度が低くなるような標高と定着温度との関係を第1のテーブルとして記憶し、外部から入力された情報に基づいて標高を特定し、当該特定した標高と第1のテーブルとに基づいて標高に応じた定着温度を設定する制御手段を具備する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、制御手段は、外部から入力された地域情報に基づいて標高を特定するという手段を採用する。
【0008】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、制御手段は、記録用紙の表面粗さが粗くなる程に定着温度が低くなるような表面粗さと定着温度との関係を第2のテーブルとして記憶し、記録用紙の種類に基づいて当該記録用紙の表面粗さを特定し、当該特定した表面粗さと第2のテーブルとに基づいて記録用紙の表面粗さに応じた定着温度を設定する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、両面画像形成におけるうら面画像形成時には、おもて面画像形成時よりも定着温度を低く設定するという手段を採用する。
【0010】
本発明では、第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、制御手段は、標高が高くなる程に2次転写電圧が高くなるような標高と2次転写電圧との関係を示す第3のテーブルを記憶し、特定した標高と第3のテーブルとに基づいて標高に応じた2次転写電圧を設定する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれか1つの解決手段において、画像形成ユニットは、トナーとキャリアとが混合された2成分現像剤を用いて像担持体の表面にトナー画像を形成し、制御手段は、標高が高くなる程に2成分現像剤のトナー/キャリア比率が高くなるような標高とトナー/キャリア比率との関係を示す第4のテーブルを記憶し、特定した標高と第4のテーブルとに基づいて標高に応じたトナー/キャリア比率を設定する、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれか1つの解決手段において、転写手段は、1次転写電圧を用いることにより像担持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体に1次転写させ、2次転写電圧を用いて中間転写体上のトナー画像を記録用紙上に2次転写させ、制御手段は、標高が高くなる程に1次転写電圧が低くなるような標高と1次転写電圧との関係を示す第5のテーブルを記憶し、特定した標高と第5のテーブルとに基づいて標高に応じた1次転写電圧を設定する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、第8の解決手段として、上記第1〜第6のいずれか1つの解決手段において、トナー色に対応する複数の画像形成ユニットが前記中間転写体に沿って配置されたタンデム方式の画像形成装置であって、制御手段は、標高が所定高さよりも低い場合は2次転写位置から離れた画像形成ユニット程に対応する一次電圧を低く、かつ、標高が所定高さよりも高い場合には全ての画像形成ユニットに対する1次転写電圧を等しくするような標高と1次転写電圧との関係を転写制御テーブルとして記憶し、特定した標高と転写制御テーブルとに基づいて標高に応じた1次転写電圧を設定する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、標高が高くなる程に定着温度を低くするので、水分の沸点が低い高地であっても、定着処理における過剰加熱を防ぎ、定着処理後のトナー画像の画素の光沢度差を目立たなくできるので、トナー画像の色ムラを抑制できる。したがって、本発明によれば、標高の違いに起因する画質の劣化を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る複合機Aの特徴的な構成要素を示す機能構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る複合機Aの設定テーブルを示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る複合機Aの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態におけるトナー各色に応じた1次転写電圧と2次転写電圧とを示す図(a)及び実際の画像形成によるモトル(まだら度合い)を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る複合機(画像形成装置)Aは、コピー機能、プリント機能、スキャン機能、ファクシミリ送信/受信機能及び電子メール送信機能を併せ持つ。複合機Aは、図1に示すように、画像形成ユニット1、中間転写部(中間転写体)2、1次転写ローラ(1次転写手段)3、2次転写ローラ(2次転写手段)4、定着装置(定着手段)5、操作表示部6及び画像形成エンジン(制御手段)7を備える。なお、複合機Aについては、上述の特徴的な構成要素のみ説明し、それ以外の構成要素については説明を省略する。
【0017】
各画像形成ユニット1は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の各色に対応するトナーからなる画像を形成するものであり、複合機Aの正面から視て水平方向に所定間隔で配置され、図1に示すようにそれぞれ感光体ドラム(像担持体)11と、帯電部12と、レーザスキャニングユニット13と、現像ユニット(現像手段)14と、クリーナ15とを備えている。すなわち、この複合機Aは、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)からなる各トナー色に対応する4つの画像形成ユニット1が中間転写部2に沿って配置され、トナー像をイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の順で中間転写部2上に1次転写させるタンデム方式の画像形成装置(カラー画像形成装置)である。
【0018】
感光体ドラム11は、静電潜像に基づいて形成されたトナー画像を周面に担持する円筒部材からなり、複合機Aの正面から視て奥行き方向に延在して配置され、画像形成エンジン7の制御の下、モータ等の速度調整が可能な駆動源(図示なし)により画像形成時に周面方向に回転する。帯電部12は、感光体ドラム11に対して対向配置され、画像形成エンジン7の制御の下、感光体ドラム11の周面を帯電状態にするものである。レーザスキャニングユニット13は、画像形成エンジン7の制御の下、レーザ光を帯電状態の感光体ドラム11の周面に照射することで静電潜像を形成するものである。
【0019】
現像ユニット14は、トナーとキャリア(磁性キャリア)とが混合された2成分現像剤を内部に収容し、画像形成エンジン7の制御の下、感光体ドラム11の周面に対してトナーを供給することによって感光体ドラム11の周面上に静電潜像に基づくトナー画像を形成(現像)するものであり、現像容器14a、攪拌ローラ14b、磁気ローラ14c、現像ローラ14d、トナーコンテナ14e及び磁気センサ14fを備えている。
【0020】
現像容器14aは、トナー及びキャリアの2成分から構成される2成分現像剤を収容するものであり、攪拌ローラ14b、磁気ローラ14c及び現像ローラ14dを収容する。攪拌ローラ14bは、トナーを攪拌・帯電し、磁気ローラ14cの表面にキャリアとトナーからなる磁気ブラシを形成する。
【0021】
磁気ローラ14cは、表面に磁気ブラシが形成され、現像ローラ14dとの間の電位差によって、現像ローラ14dの表面にトナーのみの薄層を形成する。現像ローラ14dは、形成されたトナーの薄層に、直流及び交流が重畳された現像バイアスを印加することにより、磁気ローラ14cによって感光体ドラム11にトナーを供給し、感光体ドラム11の周面上に静電潜像に基づくトナー画像が形成(現像)されることになる。
【0022】
トナーコンテナ14eは、現像容器14aの外部に設けられ、現像容器14aに補給するトナーを収容するものである。トナーコンテナ14eは、補給モータ(図示なし)に駆動連結されており、画像形成エンジン7の制御の下、補給モータの回転によって現像容器14aにトナーを補給する。このトナーコンテナ14eは、補給モータの回転速度変更によって、単位時間あたりのトナーの補給量を調整することにより2成分現像剤のトナー/キャリア比率を制御する。
【0023】
磁気センサ14fは、現像容器14a内の2成分現像剤の透磁率を検出するものであり、検出結果を検出信号として画像形成エンジン7に出力する。画像形成エンジン7は、磁気センサ14fから入力された検出信号によって示される2成分現像剤の透磁率に基づいてトナーとキャリアとの比率(トナー/キャリア比率)を算出することにより検知する。クリーナ15は、画像形成エンジン7の制御の下、感光体ドラム11から記録用紙にトナー画像が転写された後に、感光体ドラム11に残存するトナーを除去する。
【0024】
中間転写部2は、感光体ドラム11に接するように設けられ、感光体ドラム11に形成されたトナー画像が1次転写されるものであり、ベルト部材21、駆動ローラ22、従動ローラ23及びテンションローラ24から構成されている。
【0025】
ベルト部材21は、駆動ローラ22、従動ローラ23及びテンションローラ24に張架された無端ベルトであり、各画像形成ユニット1における感光体ドラム11と1次転写ローラ3との間を通過するように設けられ、駆動ローラ22の回転に従って矢印で示すように走行する。ベルト部材21は、1次転写ローラ3から印加される電圧(1次転写電圧)により各画像形成ユニット1の感光体ドラム11の周面上に形成されたトナー画像が1次転写される。すなわち、ベルト部材21上には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の順でトナー画像が1次転写される
【0026】
駆動ローラ22は、従動ローラ23及びテンションローラ24とともにベルト部材21を支持し、ベルト部材21に走行力を付与するローラであり、モータなどの駆動源(図示なし)がクラッチを介して連結されている。すなわち、駆動ローラ22は、画像形成エンジン7の制御の下、駆動源によって回転駆動されることによりベルト部材21を走行させる。従動ローラ23は、上記ベルト部材21の走行に伴って回転するローラである。テンションローラ24は、駆動ローラ22の回転に従動して回転する従動ローラの一種であり、バネ機構を有してベルト部材21に張力を与える。
【0027】
1次転写ローラ3は、ベルト部材21を挟むように感光体ドラム11に対向配置されており、ベルト部材21に所定の1次転写電圧を印加する帯電器を備えるとともにモータなどの駆動源(図示なし)がクラッチを介して連結されている。1次転写ローラ3は、画像形成エンジン7の制御の下、駆動源によって回転駆動されながら帯電器によって1次転写電圧をベルト部材21に印加することにより感光体ドラム11からベルト部材21にトナー画像を1次転写させる。
【0028】
2次転写ローラ4は、ベルト部材21を挟むように駆動ローラ22に対向配置されており、給紙カセット(図示なし)から搬送された記録用紙にベルト部材21に形成されているトナー画像を2次転写するものであり、ベルト部材21に所定の電圧(2次転写電圧)を印加する帯電器を備えるとともにモータなどの駆動源(図示なし)がクラッチを介して連結されている。2次転写ローラ4は、画像形成エンジン7の制御の下、駆動源によって回転駆動されながら帯電器によって2次転写電圧を記録用紙に印加することによりベルト部材21と2次転写ローラ4との間に搬送される記録用紙にベルト部材21上のトナー画像を2次転写させる。
【0029】
定着装置5は、内部にヒータを備えた加熱ローラ51と、加熱ローラに圧接される圧接ローラ52と、加熱ローラ51の温度を検出するサーミスタ53とから構成され、2つのローラでトナー画像が転写された記録用紙を挟持搬送することで記録用紙を加熱及び加圧して、トナー画像を記録用紙上に定着させる。そして、定着装置5によってトナー画像が定着された記録用紙は、排紙トレイ(図示なし)に向け搬送される。画像形成エンジン7は、サーミスタ53から入力される検出信号に示される加熱ローラ51の温度を基に加熱ローラ51を目的の温度(定着温度)まで加熱する。
【0030】
操作表示部6は、操作キー及びタッチパネルを備えており、ユーザと複合機Aとを関係付けるマンマシンインタフェースとして機能する。操作表示部6は、押下された各操作キーの操作指示を画像形成エンジン7に出力するとともに、画像形成エンジン7の制御の下、タッチパネルに種々の画面を表示する。
画像形成エンジン7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び上述の各部と信号の入出力を行うインタフェース回路などから構成されており、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて複合機Aの全体動作を制御する。
【0031】
上記画像形成エンジン7は、複合機Aの制御処理に用いる第1のテーブル、第2のテーブル及び付加制御テーブルを記憶している。第1のテーブルには、図2(a)に示すように、地域情報に応じた標高及び外気圧が登録されるとともに、標高0m(基準標高)に応じた加熱ローラ51の定着温度a(基準定着温度)を基準に標高が高くなるに従って低くなり(つまり標高が低くなるに従って高くなる)定着温度が標高毎に登録されている。すなわち、このような第1のテーブルは、複合機Aが設置される地域と当該地域の標高及び外気圧と定着温度との関係を示すデータセットである。このような第1のテーブルは、標高が高くなるにつれて記録用紙に含まれる水分の沸点が低くなるために、転写ムラによる各画像のトナー付着量の違いが過剰加熱により画素の光沢度差として顕著にならないように定着温度を設定するためである。
【0032】
続いて、第2のテーブルには、図2(b)に示すように、記録用紙の基準表面粗さに応じた加熱ローラ51の定着温度a(基準定着温度)を基準に表面粗さが粗くなるに従って低くなり(つまり表面粗さが細かくなるに従って高くなる)定着温度が表面粗さ毎に登録されている。すなわち、このような第2のテーブルは、複合機Aが設置される場所の標高と定着温度との関係を示すデータセットである。このような第2のテーブルは、記録用紙の種類と表面粗さと定着温度との関係を示すデータセットである。このような第2のテーブルは、記録用紙の表面が粗いほど記録用紙に転写されたトナーの付着量にムラが生じてしまうので、各画像のトナー付着量の違いが過剰加熱により画素の光沢度差として顕著にならないように定着温度を設定するためである。
【0033】
続いて、付加制御テーブルには、図2(c)に示すように、標高0m(基準標高)に応じたトナー/キャリア比率(基準トナー/キャリア比率)、1次転写電圧(基準1次転写電圧)、2次転写電圧(基準2次転写電圧)を基準にトナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧が標高毎に登録されている。すなわち、このような付加制御テーブルは、複合機Aが設置される地域の標高と2成分現像剤のトナー/キャリア比率と1次転写電圧と2次転写電圧との関係を示すデータセットである。このような付加制御テーブルは、本実施形態における第3〜第5のテーブルである。
【0034】
このような付加制御テーブルのトナー/キャリア比率は、基準トナー/キャリア比率を基準に標高が高くなるに従って高くなりかつ標高が低くなる(b1>b2>b3)。また、付加制御テーブルの1次転写電圧は、基準1次転写電圧を基準に標高が高くなるに従って低くなりかつ標高が低くなるに従って高くなる(c1<c2<c3)。また、付加制御テーブルの2次転写電圧は、基準2次転写電圧を基準に標高が高くなるに従って高くなりかつ標高が低くなるに従って低くなる(d1>d2>d3)。これは、標高の高い場所は放電しやすいので、標高の高い場所において現像ユニット14及び1次転写ローラ3におけるトナーの帯電量を低くするとともに2次転写ローラ4の2次転写電圧を高くすることで2次転写時にベルト部材21上のトナーから記録用紙に放電しにくくして、放電による転写ムラを発生させないようにするためである。
【0035】
次に、上記構成の本実施形態に係る複合機Aの動作について詳しく説明する。
まず、図3(a)を参照して、定着装置5の加熱ローラ51の定着温度の設定動作について説明する。
複合機Aを新たな地域に設置する場合に、サービスマンは、環境に応じて複合機Aに初期設定を行う。
【0036】
初期設定において、画像形成エンジン7は、操作表示部6の操作により地域情報(複合機Aの設置地域)が入力されると、第1のテーブルに基づいて標高及び外気圧を特定する(ステップS1)。そして、画像形成エンジン7は、ステップS1の後に、第1のテーブル及び特定した標高に基づいて標高に応じた定着温度を初期設定として設定する(ステップS2)。例えば、画像形成エンジン7は、操作表示部6の操作により地域Cが入力されると、地域Cが標高2300mかつ外気圧760hpaであることを特定し、第1のテーブル(図2(a)参照)に基づいて基準定着温度である定着温度aから10℃を引いた定着温度を設定する。
【0037】
図3に戻り、画像形成エンジン7は、ステップS2の後に、操作表示部6の操作によりコピー開始指示を受け付けると、コピーに使用する記録用紙の種類に基づいて記録用紙の表面粗さを特定する(ステップS3)。例えば、画像形成エンジン7は、記録用紙Cを使用する場合には、記録用紙Cの表面粗さが粗い(Rt=15〜20μm)ことを特定する。図3に戻り、画像形成エンジン7は、ステップS3の後に、第2のテーブル及び特定した表面粗さに基づいて記録用紙の表紙の表面粗さに応じた定着温度を設定する(ステップS4)。
【0038】
より具体的には、画像形成エンジン7は、入力された地域情報が地域Cである場合に、上述したように標高に対する定着温度として定着温度a−10℃を設定し、かつ記録用紙Cを使用する場合には第2のテーブル(図2(b)参照)に基づいて表面粗さに対する定着温度として定着温度a−10℃を設定する。そして、画像形成エンジン7は、標高に対する定着温度と表面粗さに対する定着温度とに基づいて定着温度a−20℃を加熱ローラ51の定着温度として設定し、サーミスタ53から検出信号を基に加熱ローラ51を定着温度a−20℃まで加熱する。
【0039】
この結果、記録用紙上の画像に転写ムラが発生したとしても、画素の光沢度差が目立たないので、画像の色ムラを抑制できる。例えば、レッド色をつくるには、イエローとマゼンダとのトナーを混ぜ合わせる必要があるが、転写ムラが生じるとレッド色にイエロー色が点在するような画像が形成される。このような場合でも、レッド色とイエロー色との光沢度差が見立たないので色ムラを抑制できる。
【0040】
続いて図3(b)を参照して、トナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧の設定動作について説明する。
初期設定のために、画像形成エンジン7は、操作表示部6の操作により地域情報が入力されると、第1のテーブルに基づいて標高及び外気圧を特定する(ステップS11)。そして、画像形成エンジン7は、ステップS1の後に、付加制御テーブル及び特定した標高に基づいて標高に応じたトナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧を設定する(ステップS12)。
【0041】
つまり、画像形成エンジン7は、ステップS12において、2次転写時にベルト部材21上のトナーから記録用紙に放電しないようにするために、標高が高い、すなわち放電しやすい場所では、トナー/キャリア比率を高くし、1次転写電圧を低くしかつ2次転写電圧を高くするように設定する。より具体的に、画像形成エンジン7は、標高の高い場所においてトナー/キャリア比率を10%から12%に設定し直し、トナーコンテナ14eに現像容器14a内にトナーを補給させ、磁気センサ14fから入力される検出信号に基づいて現像容器14a内の2成分現像剤のトナー/キャリア比率を12%に調整する。このように、2成分現像剤のトナーの比率を上げることでトナーの帯電量が低減するので、放電しにくくなる。
【0042】
また、1次転写ローラ3の1次転写電圧を下げることで1次転写時のベルト部材21上上のトナーの帯電量を抑制することができる。さらに、2次転写ローラ4の2次転写電圧を高くすることでベルト部材21から記録用紙の表面凹凸部に生じた空隙にトナー転移を促進することができる。これにより、放電しやすい高地であっても、2次転写時にベルト部材21から記録用紙にトナーを確実に転写させるので、ベルト部材21上のトナーから記録用紙に放電しにくくなり、転写ムラが発生しにくい。
【0043】
以上のように、本実施形態は、標高が高くなるに従って定着温度を低くするので、水分の沸点が低い高地であっても、定着処理における過剰加熱を防ぎ、定着処理後のトナー画像の画素の光沢度差を目立たなくできるので、画像の色ムラを抑制できる。また、本実施形態は、記録用紙の表面粗さが粗くなる従って定着温度を低くするので、従来、表面粗さの粗い記録用紙においてトナー付着量が多い部分(凸部)と、トナー付着量の少ない部分(凹部)とで光沢度差が目立っていたものを、光沢度差を目立たなくすることができる。さらに、本実施形態は、高地においてトナー/キャリア比率を高め、1次転写ローラ3の1次転写電圧を下げ、さらに、2次転写ローラ4の2次転写電圧を高くするので、2次転写時にベルト部材21上のトナーから記録用紙に放電しにくくなり、転写ムラが発生しにくい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態において記録用紙の両面画像形成する場合に、うら面画像形成時には、おもて面画像形成時よりも定着温度を低く設定してもよい。おもて面画像形成後の記録用紙は、定着処理により水分が蒸発するので、おもて面画像形成前より水分量が少ない。そのため、うら面画像形成時に、おもて面画像形成よりも低い定着温度で定着処理をすることにより過剰加熱を防ぎ、画像の画素の光沢度差を目立たなくすることができる。例えば、上記ステップS4によって設定された定着温度をおもて面画像形成時に用い、うら面画像形成時には、この定着温度から所定値を差し引いた定着温度を用いることが考えられる。
【0045】
(2)上記実施形態では、ローラ方式の定着装置5を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、トナーの定着方式として、ローラ方式の代わりに定着ベルト方式またはIH方式が用いられる場合には、その定着方式において複合機Aに搭載されている定着手段の定着温度を設定してもよい。
【0046】
(3)上記実施形態では、操作表示部6の操作により入力された地域情報に基づいて標高を特定したが、本発明これに限定されない。例えば、画像形成エンジン7は、操作表示部6の操作により入力された標高情報から現在の場所の標高を特定し、特定した標高に基づいて定着温度を設定してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、操作表示部6の操作により入力された情報に基づいて標高を特定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作表示部6ではなく、USBコネクタなどの外部インタフェース(図示なし)を介してUSBメモリなどの記憶媒体から入力された情報に基づいて標高を特定してよい。
【0048】
(4)上記実施形態では、特定した標高に基づいて定着温度を設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1のテーブルに、地域情報に応じた外気圧のみ登録するとともに、基準外気圧(例えば、図2(a)の1010hpa)に応じた定着温度a(基準定着温度)を基準に外気圧が高くなるに従って高くなりかつ外気圧が低くなるに従って低くなる定着温度を外気圧毎に登録する。そして、画像形成エンジン7は、操作表示部6が操作されることにより入力された地域情報に基づいて外気圧を特定し、第1のテーブル及び特定した外気圧に基づいて外気圧に応じた定着温度を設定してもよい。
【0049】
また、付加制御テーブルに、外気圧毎にトナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧を登録する。そして、画像形成エンジン7は、付加制御テーブル及び特定した外気圧に基づいて外気圧に応じたトナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧を設定してもよい。
【0050】
さらに、第1のテーブルから外気圧を無くして地域情報、標高及び定着温度だけを登録するようにしてもよい。画像形成エンジン7は、操作表示部6の操作により入力された地域情報に基づいて標高のみを特定し、第1のテーブル及び特定した標高に基づいて標高に応じた定着温度を設定してもよい。
【0051】
(5)上記実施形態では、トナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧を標高に応じて変えることにより転写ムラを抑制したが、本発明はこれに限定されない。トナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧のうち、何れか1つあるいは2つを標高に応じて変えることにより転写ムラをある程度抑制することが可能である。例えば、1次転写電圧と2次転写電圧とでは2次転写電圧の方が転写ムラに関する寄与率が大きいので、トナー/キャリア比率と2次転写電圧とを標高に応じて変え、一方、1次転写電圧については標高が変化しても変えないことが考えられる。さらに、本発明は、トナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧を変えずに、標高及び記録用紙の表面粗さに応じて定着温度のみを変えるようにしてもよい。
【0052】
(6)上記実施形態では、記録用紙の表面粗さに応じて定着温度を変えることにより光沢度差を抑制したが、本発明はこれに限定されない。例えば、記録用紙の表面粗さに応じて定着温度を変えずに、標高のみに応じて定着温度を変えると共に、トナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧のうち何れか1つあるいは2つまたは全てを変えるようにしてもよい。さらに、本発明は、記録用紙の表面粗さに応じて定着温度を変えないだけでなく、標高に応じてトナー/キャリア比率、1次転写電圧及び2次転写電圧を変えず、標高のみに応じて定着温度を変えるようにしてもよい。
【0053】
(7)上記実施形態では、4つの画像形成ユニット1が形成した各トナー色のトナー画像をベルト部材21に順次1次転写する際に、各トナー色の1次転写ローラ3の1次転写電圧に特に差を設けていないが、本発明はこれに限定されない。例えば、標高が所定高さよりも低い場合は、2次転写位置から離れる程に一次電圧を低く、つまりイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の順に一次電圧を高く設定し、標高が所定高さよりも高い場合には、2次転写位置からの距離に関係なく、各標高においてイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の1次転写電圧を全て等しくすることが考えられる。
【0054】
例えば、画像形成エンジン7は、図4(a)に示すように、標高が0mの場合は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の順で1次転写電圧を順次高く設定し(Y0<C0≦M0<K0)、標高が1000m、2000m、3000m、4000mの場合には、各標高についてイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(BK)の1次転写電圧を全て等しく設定する(Y1=C1=M1=K1,Y2=C2=M2=K2,Y3=C3=M3=K3,Y4=C4=M4=K4)。画像形成エンジン7は、図4(a)に示すような転写制御テーブルを予め記憶し、転写制御テーブルと自らが特定した標高とに基づいて1次転写電圧及び2次転写電圧を設定する。
【0055】
また、標高が1000m、2000m、3000m、4000mの場合には、標高が高くなるに従って1次転写電圧を低く設定し(Y0≧Y1≧Y2≧Y3≧Y4,C0≧C1≧C2≧C3≧C4,M0≧M1≧M2≧M3≧M4,K0≧K1≧K2≧K3≧K4,)、かつ標高が高くなるに従って2次転写電圧を高く設定する(A0≦A1≦A2≦A3≦A4)。なお、1次転写電圧と2次転写電圧とでは、2次転写電圧の方が画質に対する影響が大きいので、標高が変化した場合に一次転写電圧を必ずしも変化させる必要はない。
【0056】
図4(b)は、図4(a)に基づく1次転写電圧及び2次転写電圧を等価的な1次転写電流及び2次転写電流として具体的に設定して画像形成を行った場合のモトルを示している。なお、モトルとは、色のまだら度合いを示すものであり、値が小さい程色が均一であり、色ムラが抑制されている状態を示す。この画像形成における1次転写電流は、Y0=−14μA、C0=M0=−16μA、K0=−20μA、Y1=C1=M1=K1=−13μA、Y2=C2=M2=K2=−12μA、Y3=C3=M3=K3=−11μA、Y4=C4=M4=K4=−10μA、2次転写電流は、A0=30μA、A1=35μA、A2=43μA、A3=48μA、A4=55μAである。なお、比較例は、1次転写電流をY3=−14μAかつ2次転写電流をA3=30μAを設定した場合である。実施例1〜5ではモトルが0.7近辺となることにより色ムラが抑制された状態になるが、比較例ではモトルが0.9となり、問題となるレベルの色ムラが生じている。
【符号の説明】
【0057】
A…複合機、1…画像形成ユニット、2…中間転写部、3…1次転写ローラ(1次転写手段)、4…2次転写ローラ(2次転写手段)、5…定着装置(定着手段)、6…操作表示部、7…画像形成エンジン(制御手段)、11…感光体ドラム(像担持体)、12…帯電部、13…レーザスキャニングユニット、14…現像ユニット(現像手段)、15…クリーナ、14a…現像容器、14b…攪拌ローラ、14c…磁気ローラ、14d…現像ローラ、14e…トナーコンテナ、14f…磁気センサ、21…ベルト部材(中間転写体)、22…駆動ローラ、23…従動ローラ、24…テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成ユニットにより像担持体の表面に形成され、転写手段によって記録用紙上に転写されたトナー画像を定着手段によって記録用紙上に定着させる画像形成装置であって、
標高が高くなる程に前記定着手段における定着温度が低くなるような標高と定着温度との関係を第1のテーブルとして記憶し、外部から入力された情報に基づいて標高を特定し、当該特定した標高と前記第1のテーブルとに基づいて標高に応じた定着温度を設定する制御手段を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、外部から入力された地域情報に基づいて標高を特定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、記録用紙の表面粗さが粗くなる程に定着温度が低くなるような表面粗さと前記定着温度との関係を第2のテーブルとして記憶し、記録用紙の種類に基づいて当該記録用紙の表面粗さを特定し、当該特定した表面粗さと前記第2のテーブルとに基づいて記録用紙の表面粗さに応じた定着温度を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、両面画像形成におけるうら面画像形成時には、おもて面画像形成時よりも定着温度を低く設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、標高が高くなる程に2次転写電圧が高くなるような標高と2次転写電圧との関係を示す第3のテーブルを記憶し、特定した標高と前記第3のテーブルとに基づいて標高に応じた2次転写電圧を設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成ユニットは、トナーとキャリアとが混合された2成分現像剤を用いて像担持体の表面にトナー画像を形成し、
前記制御手段は、標高が高くなる程に2成分現像剤のトナー/キャリア比率が高くなるような標高とトナー/キャリア比率との関係を示す第4のテーブルを記憶し、特定した標高と前記第4のテーブルとに基づいて標高に応じたトナー/キャリア比率を設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写手段は、1次転写電圧を用いることにより前記像担持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体に1次転写させ、2次転写電圧を用いて前記中間転写体上のトナー画像を記録用紙上に2次転写させ、
前記制御手段は、標高が高くなる程に1次転写電圧が低くなるような標高と1次転写電圧との関係を示す第5のテーブルを記憶し、特定した標高と前記第5のテーブルとに基づいて標高に応じた1次転写電圧を設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー色に対応する複数の画像形成ユニットが前記中間転写体に沿って配置されたタンデム方式の画像形成装置であって、
前記制御手段は、標高が所定高さよりも低い場合は2次転写位置から離れた画像形成ユニット程に対応する一次電圧を低く、かつ、標高が所定高さよりも高い場合には全ての画像形成ユニットに対する1次転写電圧を等しくするような標高と1次転写電圧との関係を転写制御テーブルとして記憶し、特定した標高と前記転写制御テーブルとに基づいて標高に応じた1次転写電圧を設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−108503(P2012−108503A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237058(P2011−237058)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】