説明

画像形成装置

【課題】 電源が供給されない状況なのか、所定の時間内にゼロクロス信号を検出できていない状況なのかを切り分けるようにする。
【解決手段】 画像形成装置に電力が供給されなくなった場合にはアクチュエータを駆動することによって、低圧電源内に残留している電荷を比較的早く消費させ、エンジンコントローラへの電力供給も早く断つことができる。また、電力は供給されているがゼロクロス信号が所定時間内に検出できなかった場合にはアクチュエータを駆動しても、電力は供給されつづけるのでゼロクロス回路故障であると判断でき、ユーザにその旨を報知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスで形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる熱定着方式などに用いられる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを用いた複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置では、転写材や感光紙などの被記録材に転写方式あるいは直接方式で担持させた未定着画像(トナー像)を熱定着させる加熱装置(熱定着装置)として、ハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の熱定着装置や、セラミック面発ヒータを熱源とするフィルム加熱式の熱定着装置が知られている。
【0003】
一般に、セラミックヒータは、トライアックなどのスイッチング素子を介して交流電源に接続されており、交流電源により電力が供給される。加熱装置には、温度検出素子、例えばサーミスタ感温素子が設けられている。この温度検出素子により加熱装置の温度が検出され、その検出温度情報を基に、エンジンコントローラは、スイッチング素子のオン/オフ制御を行うことによりセラミックヒータへの電力供給をオン/オフし、加熱装置の温度が目標の一定温度となるように制御する。
【0004】
このセラミックヒータのオン/オフ制御は、交流電源の波数制御または位相制御により行われる。すなわち、交流電源の電源電圧が正から負あるいは負から正に切り替わるポイントを含み、電源電圧が所定の閾値より正であるか負であるかをレベル信号で報知する信号(以下、ゼロクロス信号という)を基に、トリガをかけて位相制御または波数制御を行う。図7に示すような低圧電源回路において、入力商用電源波形をダイオードブリッジ701により全波整流した後、平滑コンデンサ702により平滑化しトランス703を介して昇圧している。また、入力商用電源波形からゼロクロス検知回路704を介して得られるゼロクロス信号は、オフ状態からオン状態に変化する立ち上がりのエッジ、あるいはオンからオフに変化する立ち下がりのエッジでトリガをかけてヒータへの通電パターンを生成している。
【0005】
また、電源オン時や熱定着器の加熱装置の立ち上げ時などの所定のタイミングでエンジンコントローラがゼロクロス信号のパルス周期を測定し、このパルス周期に基づき所定の位相角に対応した時間を算出し、ゼロクロス信号にトリガをかけてヒータへの電力供給を制御する。
【0006】
この測定したパルス周期がエンジンコントローラにおいて設定されている所定の周波数範囲内であった場合は、このパルス周期を用い、ヒータに通電するためのスイッチング素子を制御する。また、測定されたパルス周期が所定の周波数範囲外であった場合やゼロクロス信号を所定時間以内に検出できない場合は、入力商用電源異常もしくはゼロクロス回路故障と判断してゼロクロス故障としている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このパルスの測定は、所定時間内に所定回数繰り返し、平均化処理やノイズ除去処理によって、商用電源周波数もしくは2倍の周波数が検出できるようにしている。
【0008】
ゼロクロス故障と判断した場合、エンジンコントローラはヒータへの電力供給を停止し、ユーザにゼロクロス故障であることを報知する。
【0009】
また、ゼロクロス故障中は正常に位相制御または波数制御を行えなくなるため、エンジンコントローラへの電力供給が停止するまでゼロクロス故障の状態を維持しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−79257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、環境を考慮した省電力の機器が増加しており、画像形成装置も消費電力の低い構成が望まれている。このような画像形成装置では画像形成動作を停止している状態の消費電力(以下、待機時消費電力という)は極めて低くなるような構成になっている事が多い。
【0012】
このように待機時消費電力が低い構成では、画像形成装置への電力供給を断った場合でも、図7の平滑コンデンサ702に溜まった電荷により、図6に示すように一定時間エンジンコントローラへ電力が供給されている。エンジンコントローラはゼロクロス信号が検出できないのでゼロクロス故障を報知してしまう。通常、この状態を継続しているとエンジンコントローラへの電力供給がなくなり、ゼロクロス故障を報知しなくなる。
【0013】
しかしながら、図8に示すようにゼロクロス故障を報知した後、エンジンコントローラへの電力供給がなくなる前に画像形成装置への電力供給を再開すると、ゼロクロス故障を報知したままでヒータへの電力供給制御ができない状態になってしまう。
【0014】
特に瞬断のように画像形成装置に一定時間電力が供給されなくなる状態おいて、このような現象が発生してしまう。
【0015】
本発明では、上記のように電源が供給されない状況なのか、所定の時間内にゼロクロス信号を検出できていない状況なのかを切り分けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
加熱手段と、アクチュエータを駆動する駆動手段と、商用電源のACラインからゼロクロス信号を検出するゼロクロス検出手段と、前記加熱手段を加熱するための駆動信号に前記ゼロクロス検出手段から検出したゼロクロス信号を用いる加熱量制御手段と、前記ゼロクロス検出手段でゼロクロス信号を検出していない間の時間を計測するゼロクロスカウント手段と、を備えた画像形成装置において、前記ゼロクロスカウント手段が第1の所定の値に達した場合に、前記駆動手段を駆動することを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記駆動手段の駆動開始後に前記ゼロクロスカウント手段が第1の所定の値より大きい第2の所定の値に達したとき前記駆動手段を停止することを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記駆動手段の駆動開始に基づいて動作する計時手段を備え、前記計時手段が第3の所定の値に達したとき前記駆動手段を停止することを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記駆動手段の駆動開始に基づいて駆動パルスをカウントする駆動パルスカウント手段を備え、前記パルスカウント手段が第4の所定の値に達したとき前記駆動手段を停止することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項2、3、4のいずれかに記載の発明において、
前記駆動手段の駆動開始から駆動停止までの間に前記ゼロクロス検出手段がゼロクロス信号を検出した場合、前記駆動手段を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、画像形成装置に電力が供給されなくなった場合にはアクチュエータを駆動することによって、低圧電源内に残留している電荷を比較的早く消費させ、エンジンコントローラへの電力供給を早く断つことができる。また、電力は供給されているがゼロクロス信号が所定時間内に検出できなかった場合にはアクチュエータを駆動しても、電力は供給されつづけるのでゼロクロス回路故障であると判断でき、ユーザにその旨を報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例のゼロクロス故障のフローチャート
【図2】画像形成装置の全体構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例を表すブロック図
【図4】本発明の実施例の制御手段を用いて電源供給が遮断された場合のタイミング図
【図5】従来のゼロクロス故障のフローチャート
【図6】従来の制御手段を用いて電源供給が遮断された場合のタイミング図
【図7】低圧電源内のゼロクロス信号に関する回路図
【図8】従来の制御手段を用いて電源供給が遮断されゼロクロス故障検知した場合のタイミング図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施例1]
本発明に基づく、画像形成装置の動作について図面を用いて説明する。本実施例は、画像形成装置に電力が供給されなくなった際にアクチュエータを駆動させる例である。
【0023】
図2は、本実施例の画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【0024】
201は、電子写真方式の画像形成装置である。
【0025】
202は、画像形成装置201内の各部を回転駆動するためのメインモータである。
【0026】
203は、画像を形成する用紙を収納するための給紙トレイである。
【0027】
204は、給紙トレイ203に収納された用紙を1枚ずつピックアップするための給紙ローラであり、給紙ソレノイド206で伝達状態とすることでメインモータ202の駆動力から回転力が与えられる。
【0028】
205は、分離パッドであり給紙ローラ204により給紙トレイ203からピックアップされた用紙が重送されないように1枚ずつに分離するためのものである。
【0029】
207は、感光ドラムであり、高電圧電源216から帯電電圧が印加される帯電ローラ209により所定電位に帯電され、またレーザスキャナユニット214によりレーザビームが照射され、高電圧電源216から現像電圧が印加される現像ローラ210によりトナーが現像されるものである。
【0030】
208は、転写ローラであり、感光ドラム207上のトナー像を用紙に転写すべく高電圧電源216から転写電圧が印加されるものである。
【0031】
211は、定着ローラであり、内部に用紙上のトナー像を熱定着させるためのセラミックヒータを備える。そして、定着ローラ211は対向する位置に設けられた加圧ローラ212と接するニップ部において用紙上のトナー像を熱定着させる。
【0032】
213は、排紙ローラであり定着ローラ211及び加圧ローラ212により加圧及び加熱されてトナー像が定着した用紙を排紙トレイ215に排出するものである。
【0033】
なお、図2の斜線で示すように、感光ドラム209、加圧ローラ212、排紙ローラ213、給紙ローラ204はメインモータ202から駆動力が与えられて回転する。
【0034】
また図示しない低圧電源からメインモータ202・高電圧電源216・センサ等に電力を供給している。
【0035】
図3は、本実施例の構成を表すブロック図である。
【0036】
AC電源を入力とする低圧電源301は画像形成に必要なVcc1、Vcc2を出力する。Vcc1はゼロクロス検知回路302、エンジンコントローラ303、各センサ、各駆動回路、各カウンタ等に入力されている。Vcc2は各アクチュエータ等に入力されている。
【0037】
ゼロクロス検知回路302はAC入力からゼロクロス信号を生成し出力する。
【0038】
エンジンコントローラ303は温度センサ304でヒータ305の温度をモニタしている。設定温度に応じてエンジンコントローラ303はヒータ305を駆動するための駆動信号をヒータ駆動回路306に送信する。その際、波数制御によりゼロクロス信号をトリガとしてあらかじめ決められた通電パターンを用いてヒータ305を駆動している。
【0039】
ゼロクロスカウンタ307は所定周期毎にカウントアップしている。エンジンコントローラ303はゼロクロス信号を検知するとゼロクロスカウンタ307にクリア信号を出力する。
【0040】
また、図5のようにエンジンコントローラ303はゼロクロスカウンタ307の値を取得し(S501)、ゼロクロスカウンタ307が故障閾値を超えているか判断している(S502)。故障閾値を超えていた場合はゼロクロス故障と判断し、ヒータ305、モータ309を含め全ての駆動を停止するために、ヒータ駆動回路306、モータ駆動回路308への駆動信号を停止し、図示しない外部報知手段にゼロクロス故障である事を報知する(S503)。
【0041】
ここで本発明に関する制御手段について説明する。図1に示すようにエンジンコントローラ303はゼロクロスカウンタ307の値を取得し(S101)、ゼロクロスカウンタ307がモータ駆動閾値を超えているか判断している(S102)。モータ駆動閾値を超えていた場合はメモリ内のモータ駆動中フラグが0か判断している(S103)。モータ駆動中フラグはエンジンコントローラ303がモータ駆動回路308にモータ駆動信号を送信しているときに1となり、モータ駆動信号が停止しているときに0となる。モータ駆動中フラグが0であればメモリ内のゼロクロスモータフラグを1にして、モータ駆動中フラグを1にする。更にモータ309を駆動させるためにモータ駆動回路308にモータ駆動信号を送信する(S104)。次にゼロクロスカウンタ307が故障閾値を超えているか判断している(S105)。故障閾値を超えていた場合は、ゼロクロス故障と判断し、ゼロクロスモータフラグ・モータ駆動中フラグを0にして、ヒータ305、モータ309を含め全ての駆動を停止するために、ヒータ駆動回路306、モータ駆動回路308への駆動信号を停止する。また、図示しない外部報知手段にゼロクロス故障である事を報知する(S106)。S102でゼロクロスカウンタ307がモータ駆動閾値を超えていない場合、エンジンコントローラ303はゼロクロスモータフラグが1か判断して(S107)、ゼロクロスモータフラグが1ならばゼロクロスモータフラグ・モータ駆動中フラグを0にして、モータ駆動信号を停止する(S108)。尚、このとき故障閾値はモータ駆動閾値以上の値である。
【0042】
この制御手段を用いた電源供給装置において電源供給が遮断された場合のタイミング図を図4に示す。電源遮断された際、エンジンコントローラ303はゼロクロスカウンタ307がモータ駆動閾値を超えたと判断した場合、モータ駆動回路308にモータ駆動信号を送信する。モータ309が駆動する事により低圧電源内に残留している電荷を消費させ、エンジンコントローラ303への入力電圧を早く降下させる。このような制御を行うことで電力供給が遮断された際にゼロクロス故障を報知しなくなる。
【0043】
本実施例ではモータ309を駆動させると説明したが、モータ309が回転しない程度の低デューティのPWM信号をモータ駆動回路308に送信してもよい。また、本実施例ではモータを例としたが、その他1つ以上のアクチュエータを駆動させてもよい。
【0044】
また、本実施例ではゼロクロスカウンタ307を使用し故障閾値に達したときにゼロクロス故障を報知する処理を用いたが、モータ駆動開始と同時にスタートするタイマを使用し所定の値に達したときにゼロクロス故障を報知する処理や、モータ駆動開始からモータ309の駆動パルスをカウントする駆動パルスカウンタを用い所定の値に達したときにゼロクロス故障を報知する処理でもよい。
【符号の説明】
【0045】
201 画像形成装置
202 メインモータ
203 給紙トレイ
204 給紙ローラ
205 分離パッド
206 給紙ソレノイド
207 感光ドラム
208 転写ローラ
209 帯電ローラ
210 現像ローラ
211 定着ローラ
212 加圧ローラ
213 排紙ローラ
214 レーザスキャナユニット
215 排紙トレイ
216 高電圧電源
301 低圧電源
302 ゼロクロス検知回路
303 エンジンコントローラ
304 ヒータ
305 温度センサ
306 ヒータ駆動回路
307 ゼロクロスカウンタ
308 モータ駆動回路
309 モータ
701 ダイオードブリッジ
702 平滑コンデンサ
703 トランス
704 ゼロクロス検知回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段と、アクチュエータを駆動する駆動手段と、商用電源のACラインからゼロクロス信号を検出するゼロクロス検出手段と、前記加熱手段を加熱するための駆動信号に前記ゼロクロス検出手段から検出したゼロクロス信号を用いる加熱量制御手段と、前記ゼロクロス検出手段でゼロクロス信号を検出していない間の時間を計測するゼロクロスカウント手段と、を備えた画像形成装置において、前記ゼロクロスカウント手段が第1の所定の値に達した場合に、前記駆動手段を駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段の駆動開始後に前記ゼロクロスカウント手段が第1の所定の値より大きい第2の所定の値に達したとき前記駆動手段を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動手段の駆動開始に基づいて動作する計時手段を備え、前記計時手段が第3の所定の値に達したとき前記駆動手段を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段の駆動開始に基づいて駆動パルスをカウントする駆動パルスカウント手段を備え、前記パルスカウント手段が第4の所定の値に達したとき前記駆動手段を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動手段の駆動開始から駆動停止までの間に前記ゼロクロス検出手段がゼロクロス信号を検出した場合、前記駆動手段を停止することを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−137592(P2012−137592A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289430(P2010−289430)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】