説明

画像形成装置

【課題】搬送方向に沿ってしわや弛みが伝播する場合でも、安定して記録媒体を検出する。
【解決手段】記録媒体Mを搬送方向に搬送する搬送経路の少なくとも一部において前記記録媒体Mを支持する記録媒体支持部50と、前記搬送経路に設けられた検出領域に対して検出光L1を照射する発光器22と、前記検出領域に存在する前記記録媒体Mによる前記検出光L1の反射光L2を受光する受光器23とを含む検出部と、前記搬送経路に設けられた押付領域において前記記録媒体Mを前記記録媒体支持部50に向かって押し付ける押付ローラー52と、を備え、前記搬送方向において前記押付領域が設けられた位置は、前記検出領域よりも上流であり、前記搬送方向の直交方向において前記押付領域が設けられた範囲は、当該直交方向において前記検出領域が設けられた範囲全体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路における記録媒体の存在有無を検出する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送経路に設けられた検出領域に検出光を照射し、その反射光を受光部が受光する場合に、検出領域に記録媒体が存在すると判定する技術が提案されている(特許文献1、参照)。特許文献1において、記録媒体を搬送する搬送方向の直交方向における検出領域の外側にローラーが設けられている。搬送方向の直交方向における検出領域の外側にローラーを設けることにより、ローラーが検出光や反射光の妨げとなることなく、検出領域において記録媒体の姿勢を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−97608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送方向の直交方向における検出領域の外側に備えられた特許文献1のローラーによって、搬送方向に沿って検出領域にしわや弛みが伝播することが防止できないという問題があった。記録媒体のしわや弛みが検出領域に伝播すると、受光部が受光可能な方向とは異なる方向へと検出光が反射され、検出領域に記録媒体が存在するにも拘わらず、記録媒体が存在しないと誤判定されてしまう。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、搬送方向に沿ってしわや弛みが伝播する場合でも、安定して記録媒体を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送経路の少なくとも一部において記録媒体を支持する記録媒体支持部を備える。検出部は発光器と受光器とを備え、発光器は搬送経路に設けられた検出領域に検出光を照射する。受光器は、検出領域に存在する記録媒体による検出光の反射光を受光する。押付ローラーは、搬送経路に設けられた押付領域にて記録媒体を記録媒体支持部に向かって押し付ける。ここで、記録媒体の搬送方向において押付領域が設けられた位置は、検出領域よりも上流とされる。さらに、搬送方向の直交方向において押付領域が設けられた範囲は、当該直交方向において検出領域が設けられた範囲全体を含む。
【0006】
押付ローラーによって記録媒体を記録媒体支持部に押し付けることにより、押付領域において記録媒体のしわや弛みを解消できる。ここで、押付領域は検出領域よりも搬送方向の上流に位置するため、搬送方向に沿って搬送方向の上流から記録媒体のしわや弛みが検出領域へと伝播することが防止できる。さらに、搬送方向の直交方向において押付領域が設けられた範囲は検出領域が設けられた範囲全体を含むため、検出領域の広範囲において搬送方向に沿って搬送方向の上流からしわや弛みが伝播することが防止できる。従って、検出領域にて記録媒体を平坦に保つことができ、検出領域における反射光の反射角度を安定化することができる。すなわち、検出部の受光器は安定して反射光を受光することができる。また、検出領域に記録媒体の先頭端部が位置する場合に、検出領域よりも上流の押付領域において記録媒体を記録媒体支持部に押し付けることができ、先頭端部における反射光の反射角度も安定化することができる。
【0007】
さらに、検出領域よりも下流の下流押付領域において記録媒体支持部に記録媒体を押し付ける下流押付ローラーを備えさせてもよい。これにより、搬送方向に沿って搬送方向の下流から記録媒体のしわや弛みが検出領域へと伝播することが防止できる。また、検出領域に記録媒体の後方端部が位置する場合に、検出領域よりも下流の押付領域において記録媒体を記録媒体支持部に押し付けることができ、後方端部における反射光の反射角度を安定化することができる。
【0008】
さらに、記録媒体支持部からの離反を許容するように押付ローラーを支持すローラー支持部と、押付ローラーを記録媒体支持部に接近するように付勢する弾性部材とを備えさせてもよい。ここで、押付ローラーは記録媒体を記録媒体支持部に押し付けるため、記録媒体は押付ローラーと記録媒体支持部との間において搬送される。すなわち、記録媒体を搬送させるにあたり、記録媒体を押付ローラーと記録媒体支持部との間に挿入しておく必要がある。これに対して、ローラー支持部を備えることにより、押付ローラーを記録媒体支持部から離反させて、記録媒体を押付ローラーと記録媒体支持部との間に挿入することができる。また、押付ローラーを記録媒体支持部に接近するように付勢する弾性部材を備えさせることにより、押付ローラーによって記録媒体を記録媒体支持部に押し付けることができる。
【0009】
押付領域においては押付ローラーにより記録媒体が平坦化されるが、検出領域と押付領域との間で記録媒体が変形すると、検出領域における記録媒体の角度が不安定となる。巻芯に巻かれた記録媒体を巻き出すことにより記録媒体を搬送経路に供給する供給部を備える場合、記録媒体は、巻芯に巻かれた状態の形状を復元するように、搬送方向における検出領域と押付領域との間で湾曲しようとする。特に、記録媒体の剛性が高いほど巻芯に巻かれた形状への復元力が強くなり、巻芯の径が小さいほど小さい曲率半径で記録媒体が湾曲しようとする。従って、記録媒体の剛性が高く、供給ロールの径が小さいほど、搬送方向における検出領域と押付領域との距離を短くして、検出領域と押付領域との間で記録媒体が湾曲することを防止するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像形成装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】(2A)は画像形成装置の側面図、(2B)は記録媒体支持部の正面図である。
【図3】(3A)〜(3D)は押付ローラーの側面図、(3E)は記録媒体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。
(1)画像形成装置の構成:
(2)搬送経路の構成:
(3)検出領域と押付領域との距離:
(4)他の実施形態:
【0012】
(1)画像形成装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる画像形成装置1の回路構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、制御部10と検出回路20と印刷ヘッド制御回路30と搬送制御回路40とを含む。制御部10はCPU,ROM,RAM,ASIC等を備え、検出回路20と印刷ヘッド制御回路30と搬送制御回路40とを制御するための各種演算処理を実行する。
【0013】
検出回路20は、発光器22と受光器23とを含む検出部21と接続する。検出回路20は、制御部10からの制御信号に基づいて検出部21の発光器22を発光させるための駆動電流を生成し、発光器22に出力する。発光器22は、例えば駆動電流が供給されることにより所定波長の可視光を所定の検出領域に向けて照射する発光ダイオードを備える。受光器23は、例えば受光した可視光の受光強度に応じた直流電流を生じさせるフォトダイオードを備え、当該直流電流を検出信号として検出回路20に出力する。検出回路20は、受光器23から出力された検出信号を取得し、当該検出信号に基づいて発光器22における受光強度が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。検出回路20は、受光強度が閾値よりも大きいか否かを示す判定データを制御部10に出力する。
【0014】
発光器22における受光強度が閾値よりも大きいこと示す判定データを取得した場合、制御部10は、検出領域に記録媒体が存在すると判定する。反対に、受光強度が閾値以下であることを示す判定データを取得した場合、制御部10は、検出領域に記録媒体が存在しないと判定する。さらに、受光強度が閾値以下であることを示す判定データを取得する状態から、受光強度が閾値よりも大きいことを示す判定データを取得する状態へと転じた場合、制御部10は、記録媒体の先頭端部が検出領域を通過したと判定する。反対に、受光強度が閾値よりも大きいことを示す判定データを取得する状態から、受光強度が閾値以下であることを示す判定データを取得する状態へと転じた場合、制御部10は、記録媒体の後方端部が検出領域を通過したと判定する。
【0015】
印刷ヘッド制御回路30は、制御部10からの制御信号に基づいて印刷ヘッド31を駆動させるための駆動信号を生成し、印刷ヘッド31に出力する。本実施形態の画像形成装置1は、いわゆるラインプリンターであり、印刷ヘッド31は記録媒体の搬送方向の直交方向において、記録媒体の幅よりも大きい幅を有する。印刷ヘッド31は、記録媒体の搬送方向の直交方向に配列する複数の吐出ノズルを備える。印刷ヘッド31は複数の吐出ノズルのそれぞれに対応する駆動素子を備え、駆動素子が駆動信号に基づいて駆動することにより複数の吐出ノズルからインク滴を吐出させる。複数の吐出ノズルから吐出されたインク滴は記録媒体上に着弾し、記録媒体上において搬送方向の直交方向に配列するドットが形成される。
【0016】
搬送制御回路40は、制御部10からの制御信号に基づいて搬送モーター41を駆動させるための駆動信号を生成し、搬送モーター41に出力する。搬送モーター41の駆動力は図示しない歯車やベルトを介して搬送駆動ローラー41aに伝達され、搬送駆動ローラー41aが回転駆動する。搬送駆動ローラー41aが回転駆動することにより、記録媒体を搬送するための力が記録媒体に伝達され、記録媒体が搬送方向に搬送される。また、搬送制御回路40は、制御部10からの制御信号に基づいて供給モーター42を駆動させるための駆動信号を生成し、供給モーター42に出力する。供給モーター42の駆動力は図示しない歯車やベルトを介して供給部としての供給ロール42aに伝達され、供給ロール42aが回転駆動する。供給ロール42aが回転することにより、記録媒体が搬送経路へと巻き出される。
【0017】
(2)搬送経路の構成:
図2Aは、画像形成装置1の搬送経路を概略的に示す側面図である。画像形成装置1は、供給ロール42aの巻芯42a1に巻かれた記録媒体Mを本体筐体1a内の印刷ヘッド31とプラテン54との間まで搬送し、当該印刷ヘッド31が記録媒体Mに向けてインク滴を吐出することにより記録媒体Mにドットを形成する。記録媒体Mの搬送方向は、供給ロール42aから印刷ヘッド31に向かう方向(図2Aにおいて斜め左下に向かう方向)である。記録媒体Mは、搬送方向の直交方向(幅方向)に一定の幅を有する。
【0018】
搬送経路の最上流に位置する供給ロール42aは、巻芯42a1と当該巻芯42a1の側面に沿って巻かれた記録媒体Mとを含む。巻芯42a1は円柱状に形成されており、巻芯42a1の中心軸の方向は記録媒体Mの搬送方向の直交方向と一致する。記録媒体Mは、供給ロール42aが中心軸まわりに回転することにより下流の搬送経路へと巻き出される。本実施形態の記録媒体Mは、異種の材料で形成された複数のフィルムを厚み方向に積層することにより形成され、例えば印刷後に溶着成形を行うことより包装用の袋へと加工される。また、例えば袋の内容物を光線等から保護するために、一部のフィルムに金属が蒸着され、記録媒体Mは高い反射率を有する。
【0019】
記録媒体支持部50は、記録媒体Mの搬送方向において供給ロール42aよりも下流に備えられる。供給ロール42aから巻き出された記録媒体Mは、記録媒体支持部50によって下方から支持される。記録媒体支持部50は略板状であり、記録媒体Mは記録媒体支持部50の平面状の上面に対して平行となるように接し、当該上面上を摺動しながら下流へと搬送される。これにより、記録媒体支持部50の上面上にて記録媒体Mを安定して搬送できる。なお、記録媒体Mは供給ロール42aから巻き出されて供給される場合に限らず、搬送方向の所定の長さ単位で切断された単票の記録媒体Mを記録媒体支持部50上に載置することによっても供給される。図2Aにおいて、記録媒体支持部50の上面に垂直な方向をZ方向と示す。
【0020】
搬送駆動ローラー41aと搬送従動ローラー41bとは、記録媒体Mの搬送方向において記録媒体支持部50よりも下流に備えられる。記録媒体支持部50の上面上に沿って搬送された記録媒体Mは、下方の搬送駆動ローラー41aと上方の搬送従動ローラー41bとの間に挟まれる。搬送駆動ローラー41aと搬送従動ローラー41bとは、それぞれの中心軸の軸方向が記録媒体Mの搬送方向の直交方向と一致する円柱状に形成されており、当該中心軸まわりに回転する。搬送駆動ローラー41aには搬送モーター41の駆動力が伝達され、当該駆動力により搬送駆動ローラー41aは回転駆動する。搬送駆動ローラー41aが回転駆動することにより、搬送駆動ローラー41aと搬送従動ローラー41bとの間に挟まれた記録媒体Mが搬送方向の下流に搬送される。搬送駆動ローラー41aによって記録媒体Mが搬送されるのに従って搬送従動ローラー41bが従動的に回転する。
【0021】
印刷ヘッド31とプラテン54とは、記録媒体Mの搬送方向において搬送駆動ローラー41aと搬送従動ローラー41bよりも下流に備えられる。すなわち、搬送駆動ローラー41aと搬送従動ローラー41bからさらに下流へと搬送された記録媒体Mは、印刷ヘッド31とプラテン54との間に供給される。さらに、記録媒体Mを下流へ搬送すると、記録媒体Mは本体筐体1a外へと排出される。
【0022】
図2Bは、記録媒体支持部50の上面をZ方向から見て示す図である。記録媒体支持部50には、記録媒体支持部50をZ方向に貫通する貫通穴51が形成されている。貫通穴51は、記録媒体支持部50において、記録媒体M(破線)の搬送方向、および、その直交方向の中央の位置に形成されている。図2Aに示すように、検出部21が貫通穴51のZ方向上方に備えられており、発光器22が貫通穴51に向けて検出光L1を照射する。記録媒体Mのうち、貫通穴51をZ方向上方から塞ぐ位置に存在する部分に対して検出光L1が照射され、当該部分にて検出光L1が照射される領域である検出領域A(円形のハッチング)が形成される。検出領域Aに照射された検出光L1は、記録媒体M上にて全反射(鏡面反射)し、反射光L2となる。
【0023】
ここで、記録媒体支持部50の上面に対して記録媒体Mが平行に支持された場合に、記録媒体Mに対する検出光L1の入射角(Z方向と検出光L1の光軸方向との差)が記録媒体Mの臨界角以上となるように、発光器22の発光光軸と角度が設定されている。また、受光器23の受光光軸は、検出領域Aの中心を通過するZ方向の軸まわりに発光器22の発光光軸を180度回転させた軸と一致する。これにより、記録媒体Mが貫通穴51を上方から塞ぐ位置に存在し、かつ、記録媒体支持部50の上面に対して記録媒体Mが平行に近い角度で支持された場合に、検出光L1が全反射した反射光L2が受光器23によって受光される。なお、検出領域Aは貫通穴51よりも小さい。
【0024】
ここで、記録媒体Mが貫通穴51を上方から塞ぐ位置に存在しない場合、検出光L1は貫通穴51を貫通し、受光器23は反射光L2を受光しない。従って、受光器23の受光強度が所定の閾値以下であると判定され、制御部10は検出領域Aに記録媒体Mが存在しないと判定する。また、記録媒体Mが貫通穴51を上方から塞ぐ位置に存在するが、貫通穴51にて記録媒体Mの角度が記録媒体支持部50の上面に対して平行に近くなっていない場合、反射光L2の光軸が受光器23の受光光軸からずれる。ここで、検出領域Aは所定の範囲(例えば直径1mmの円)を有し、受光器23は受光光軸の角度に所定の許容範囲を有するため、検出領域Aにおける記録媒体Mと、記録媒体支持部50の上面とが厳密に平行でなくても、受光器23は反射光L2を受光する。ただし、検出領域Aにおける記録媒体Mと記録媒体支持部50の上面との角度差が大きいほど、受光器23が受光する反射光L2の受光強度は小さくなる。すなわち、検出領域Aにおける記録媒体Mと記録媒体支持部50の上面との角度差が所定角度よりも小さい場合、制御部10は検出領域Aに記録媒体Mが存在すると判定することとなる。反対に、検出領域Aにおける記録媒体Mと記録媒体支持部50の上面との角度差が所定角度以上である場合、制御部10は検出領域Aに記録媒体Mが存在しないと判定することとなる。
【0025】
図2A,2Bに示すように、記録媒体Mの搬送方向において、検出領域Aよりも上流に押付ローラー52が備えられている。また、記録媒体Mの搬送方向において、検出領域Aよりも下流に下流押付ローラー53が備えられている。押付ローラー52と下流押付ローラー53とは、それぞれ中心軸の方向が記録媒体Mの搬送方向の直交方向と一致する円柱状に形成されており、当該中心軸を回転軸として回転する。記録媒体Mの搬送方向の直交方向における押付ローラー52と下流押付ローラー53の長さは、互いに等しく、記録媒体Mの搬送方向の直交方向における検出領域Aの幅よりも長い。搬送方向の直交方向における押付ローラー52と下流押付ローラー53の中央の位置と、搬送方向の直交方向における検出領域Aの中央の位置とは一致する。
【0026】
図3A,3Bは押付ローラー52を記録媒体Mの搬送方向の直交方向外側から見て示す側面図である。なお、下流押付ローラー53は押付ローラー52と同様の構成を有するため、下流押付ローラー53の図示と説明は省略する。押付ローラー52は、揺動部材52aの下端と回転軸P1を介して連結されている。揺動部材52aの上端には記録媒体Mの搬送方向の直交方向と軸方向が一致する回転軸P2が設けられており、当該回転軸P2を介して揺動部材52aの上端と連結部材52bとが連結されている。連結部材52bは、固定部材52cと剛体接合されている。また、図示しないが固定部材52cは、本体筐体1aと剛体接合されている。揺動部材52aは上端の回転軸P2まわりに回転できるため、揺動部材52aの下端に連結された押付ローラー52が記録媒体支持部50の上面に対して接近(図3A)した状態から離反(図3B)することが許容される。また、固定部材52cと揺動部材52aとは、弾性部材としてのばね52dを介して連結され、ばね52dが伸びようとする弾性力により、揺動部材52aは下端に連結された押付ローラー52を記録媒体支持部50に接近させるように付勢される。
【0027】
以上説明したローラー支持部(52a〜52d)の構成により、図3Bに示すように、ばね52dの弾性力に抗して押付ローラー52を記録媒体支持部50から離反させながら、単票の記録媒体Mの先頭端部を搬送駆動ローラー41aと搬送従動ローラー41bとの間まで挿入することができる。下流押付ローラー53についても同様に記録媒体支持部50から離反させることができる。
【0028】
一方、図3Aのように記録媒体Mが記録媒体支持部50の上面上を搬送される場合には、記録媒体支持部50に接近させるように付勢された押付ローラー52によって記録媒体Mを記録媒体支持部50に押し付けることができる。むろん、押付ローラー52は、記録媒体Mの搬送方向の直交方向の回転軸P1まわりに従動的に回転するため、押付ローラー52の摩擦抵抗が記録媒体Mの搬送に与える影響を抑制できる。押付ローラー52と下流押付ローラー53とが記録媒体Mを記録媒体支持部50に向かって押し付けることより、図2Bに示すように押付ローラー52と下流押付ローラー53とが記録媒体Mを押し付ける押付領域B1(矩形のハッチング)と下流押付領域B2(矩形のハッチング)とが記録媒体M上に形成される。ここで、図2Bの横軸(搬送方向)にて太線で示すように、押付ローラー52に対応する押付領域B1は検出領域Aよりも上流の位置となり、下流押付ローラー53に対応する下流押付領域B2は検出領域Aよりも下流の位置となる。また、図2Bの縦軸(搬送方向の直交方向)にて太線で示すように、記録媒体Mの搬送方向の直交方向において押付領域B1と下流押付領域B2とが設けられた範囲は、当該直交方向において検出領域Aが設けられた範囲全体を含む。
【0029】
以上のように、搬送方向において押付領域B1および下流押付領域B2がそれぞれ検出領域Aよりも上流および下流に設けられるため、搬送方向に沿って搬送方向の上流および下流から記録媒体Mのしわや弛みが検出領域Aへと伝播することが防止できる。さらに、搬送方向の直交方向において押付領域B1および下流押付領域B2が設けられた範囲は検出領域Aが設けられた範囲全体を含むため、検出領域Aの広範囲において搬送方向に沿って搬送方向の上流および下流からしわや弛みが伝播することが防止できる。従って、検出領域Aにて記録媒体Mを平坦かつ記録媒体支持部50に対して平行に保つことができ、検出領域Aにて反射した反射光L2の反射角度を安定化することができる。すなわち、検出部21の受光器23は安定して反射光L2を受光することができる。従って、検出領域Aに記録媒体Mが存在するにも拘わらず、記録媒体Mが存在しないと判定されることが防止できる。すなわち、検出領域Aに記録媒体Mが存在するにも拘わらず、記録媒体Mの補充や交換を促したり、搬送異常警告を発したりする不具合を防止できる。
【0030】
例えば、記録媒体Mが斜めに搬送された場合(記録媒体Mの幅方向の縁が搬送駆動ローラー41aの中心軸の軸方向に直交しないように搬送された場合)、記録媒体Mの幅方向の縁が、記録媒体支持部50にて記録媒体Mを幅方向外側からガイドするガイド部(不図示)に接触し、記録媒体Mが幅方向に波打ったしわが生じ得る。このように、しわが発生した場合でも、当該しわが搬送方向に沿って搬送方向の上流および下流からしわや弛みが検出領域Aへと伝播することが防止できる。また、搬送方向の直交方向において検出領域Aよりも押付領域B1と下流押付領域B2の方が幅広くなっているため、搬送方向の直交方向における検出領域Aの外側においてしわが発生した場合においても、押付領域B1と下流押付領域B2よりも内側の検出領域Aへとしわが伝播することが防止できる。
【0031】
また、本実施形態の搬送経路において、搬送駆動ローラー41aと供給ロール42aとが記録媒体Mに対して外力を伝達する。従って、搬送駆動ローラー41aと供給ロール42aとが記録媒体Mにしわや弛みを生じさせる起点となりやすい。例えば、搬送駆動ローラー41aによる記録媒体Mの搬送量よりも供給ロール42aによる記録媒体Mの巻出量が大きい場合、供給ロール42aを起点に記録媒体Mに弛みが生じ得るが、この弛みが押付領域B1を超えて検出領域Aに伝播することが防止できる。反対に、搬送駆動ローラー41aによる記録媒体Mの搬送量よりも供給ロール42aによる記録媒体Mの巻出量が小さい場合、搬送駆動ローラー41aと供給ロール42aとの間において記録媒体Mに過剰な張力を生じ、搬送駆動ローラー41aにて幅方向に不均一な滑りが生じる。この場合、記録媒体Mの張力が幅方向に不均一となるため、搬送駆動ローラー41aを起点に幅方向に波打つしわが生じ得るが、このしわが下流押付領域B2を超えて検出領域Aに伝播することが防止できる。
【0032】
図3C,3Dは、搬送方向における記録媒体Mの端部が検出領域Aに位置する状態を示す側面図である。図3Cに示すように、検出領域Aに記録媒体Mの先頭端部が位置する場合、検出領域Aよりも上流には記録媒体Mが存在する。従って、検出領域Aよりも上流の押付領域B1において記録媒体Mを記録媒体支持部50に押し付けることができ、記録媒体Mの先頭端部を安定して検出できる。さらに、図3Dに示すように、検出領域Aに記録媒体Mの後方端部が位置する場合、検出領域Aよりも下流には記録媒体Mが存在する。従って、検出領域Aよりも下流の下流押付領域B2において記録媒体Mを記録媒体支持部50に押し付けることができ、記録媒体Mの後方端部を安定して検出できる。
【0033】
(3)検出領域と押付領域との距離:
図3C,3Dに示すように、検出領域Aから押付領域B1までの区間、および、検出領域Aから下流押付領域B2までの区間において記録媒体Mが記録媒体支持部50に対して平行に接していれば、記録媒体Mの先頭端部と後方端部とを安定して検出できる。しかしながら、これらの区間において記録媒体Mが湾曲することにより、検出領域Aにおける反射光L2の反射角度が受光器23の受光光軸から大きくずれ、記録媒体Mの先頭端部と後方端部とが安定して検出できなくなる。特に、供給ロール42aから記録媒体Mを供給する場合、記録媒体Mが供給ロール42aに巻かれた状態の形状に復元しようとして、Z方向上方に凸となるように湾曲しようとする。なお、本実施形態のように異種の材料で形成された複数のフィルムを厚み方向に積層することにより形成される記録媒体Mは、厚み方向において機械特性が不均一となるため、記録媒体Mが湾曲しやすい。
【0034】
図3Eは、検出領域Aから押付領域B1までの区間において記録媒体Mが湾曲する様子を示す模式図である。図3Eに示すように、押付領域B1の縁から記録媒体MがZ方向上方に湾曲し、再び先頭端部が記録媒体支持部50に接触するように記録媒体Mが湾曲する。ここで、記録媒体Mの剛性EIが高いほど、重力や搬送駆動ローラー41aと供給ロール42aとの間の張力に抗して供給ロール42aに巻かれた形状を維持するため、破線で示すように記録媒体Mは大きく湾曲する。また、供給ロール42aの径が小さいほど、小さい曲率半径で記録媒体Mが変形できるため、破線で示すように記録媒体Mは大きく湾曲する。なお、供給ロール42aの半径は巻芯42b1の半径r(図2A)まで小さくなり得る。すなわち、記録媒体Mの剛性EIが高いほど、巻芯42b1の半径rが小さいほど、検出領域Aに位置する先頭端部と記録媒体支持部50の上面との角度差が大きくなる。ここで、検出領域Aにおける記録媒体Mと記録媒体支持部50の上面との角度差が限界角度αと等しい場合に、受光器23が受光する反射光L2の受光強度が閾値と等しくなることとする。すなわち、検出領域Aにおける記録媒体Mと記録媒体支持部50の上面との角度差が限界角度αよりも大きい場合、検出領域Aに記録媒体Mが存在しないと判定される。
【0035】
本実施形態では、以下の手順で検出領域Aから押付領域B1までの距離D1を設定する。すなわち、画像形成装置1が搭載し得る供給ロール42aのうち最も記録媒体Mの剛性EIが高く、巻芯42b1の半径rが小さい供給ロール42aを画像形成装置1に搭載させる。なお、巻芯42b1の近くに巻かれた記録媒体Mが巻き出されるように、記録媒体Mの残量が所定量よりも少ない供給ロール42aを画像形成装置1に搭載させることとする。そして、検出領域Aから押付領域B1までの距離dを変えながら、検出領域Aに位置する記録媒体Mの先頭端部と記録媒体支持部50の上面との角度差を調査することにより、当該角度差と限界角度αとを等しくさせる距離dを特定する。なお、検出領域Aから押付領域B1までの距離dが小さいほど、記録媒体Mの先頭端部と記録媒体支持部50の上面との角度差は小さくなる。距離dを特定すると、距離dに所定の安全距離(例えば、0.1×d)を減じた距離を検出領域Aから押付領域B1までの距離D1の上限値とする。これにより、画像形成装置1に搭載された供給ロール42aに拘わらず、記録媒体Mの先頭端部を安定して検出できる。さらに、押付領域B1と下流押付領域B2とが貫通穴51に干渉せず、かつ、押付ローラー52と下流押付ローラー53とが記録媒体支持部50に接近した状態と離反した状態のいずれにおいても検出光L1と反射光L2、および、検出部21自体と干渉しない距離を距離D1の下限値とする。以上のように設定した下限値から上限値までの範囲に属する距離D1を設定する。なお、検出領域Aと下流押付領域B2との距離D2も同様の手法により設定する。
【0036】
(4)他の実施形態:
前記実施形態の画像形成装置1は、押付ローラー52と下流押付ローラー53とを備えたが、画像形成装置1が押付ローラー52のみを備える場合でも、搬送方向の上流から検出領域Aにしわや弛みが伝播することを防止できる。また、押付ローラー52と下流押付ローラー53とは、記録媒体Mを記録媒体支持部50に対して押し付けることができればよく、例えば押付ローラー52と下流押付ローラー53との自重によって記録媒体Mを記録媒体支持部50に対して押し付けてもよい。押付ローラー52と下流押付ローラー53とは、ばね52d以外の弾性部材によって付勢されてもよく、例えばゴム等の高弾性樹脂によって付勢されてもよい。また、ばね52dは、図3A,3Bに示すようなコイルばねに限らず、板ばねやトーションばね等であってもよい。さらに、上流から記録媒体Mが挿入されることを妨げないようにすればよく、必ずしも下流押付ローラー53を記録媒体支持部50に対して離反可能に支持しなくてもよい。すなわち、押付ローラー52のみを記録媒体支持部50に対して離反可能に支持するようにしてもよい。
【0037】
また、搬送方向の直交方向において、押付領域B1と下流押付領域B2とが設けられた範囲は検出領域Aが設けられた範囲全体を含めばよく、押付領域B1と下流押付領域B2とが設けられた範囲と検出領域Aが設けられた範囲とが等しくてもよい。直交方向において押付領域B1と下流押付領域B2とが設けられた範囲は、広いほど望ましく、例えば押付ローラー52と下流押付ローラー53とが生じさせる摩擦抵抗が記録媒体Mの搬送を妨げない限度において広くされてもよい。むろん、搬送方向の直交方向において、押付領域B1と下流押付領域B2とが設けられた範囲は互いに異なってもよい。記録媒体支持部50は、広く記録媒体Mを支持するのが望ましいが、本発明において少なくとも押付領域B1と下流押付領域B2と対向する領域に記録媒体支持部50が設けられていればよい。
【0038】
さらに、本発明は、搬送経路において搬送される記録媒体Mを検出する搬送画像形成装置1であればどのような画像形成装置1にも適用し得る。例えば、インクジェット方式のシリアルプリンターや、インクジェット方式以外のレーザープリンター等の他の記録方式の画像形成装置においても本発明が適用できる。また、従動的な回転のみする供給ロール42aが備えられた画像形成装置1に押付ローラー52を備えさせてもよいし、供給ロール42aを備えず単票の記録媒体Mをのみ供給する供給部を備える画像形成装置1に押付ローラー52を備えさせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…画像形成装置、10…制御部、20…検出回路、21…検出部、22…発光器、23…受光器、30…印刷ヘッド制御回路、31…印刷ヘッド、40…搬送制御回路、41…搬送モーター、41a…搬送駆動ローラー、41b…搬送従動ローラー、42…供給モーター、42a…供給ロール、42a1…巻芯、50…記録媒体支持部、51…貫通穴、52…押付ローラー、52a…揺動部材、52b…連結部材、52c…固定部材、53…下流押付ローラー、A…検出領域、B1…押付領域、B2…下流押付領域、L1…検出光、L2…反射光、M…記録媒体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送経路の少なくとも一部において前記記録媒体を支持する記録媒体支持部と、
前記搬送経路に設けられた検出領域に対して検出光を照射する発光器と、前記検出領域に存在する前記記録媒体による前記検出光の反射光を受光する受光器とを含む検出部と、
前記搬送経路に設けられた押付領域において前記記録媒体を前記記録媒体支持部に向かって押し付ける押付ローラーと、を備え、
前記搬送方向において前記押付領域が設けられた位置は、前記検出領域よりも上流であり、
前記搬送方向の直交方向において前記押付領域が設けられた範囲は、当該直交方向において前記検出領域が設けられた範囲全体を含む、
画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送方向における前記検出領域よりも下流の下流押付領域において前記記録媒体を前記記録媒体支持部に向かって押し付ける下流押付ローラーをさらに備える、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体支持部からの離反を許容するように前記押付ローラーを支持するローラー支持部と、
前記押付ローラーを前記記録媒体支持部に接近するように付勢する弾性部材と、
をさらに備える請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
巻芯に巻かれた前記記録媒体を巻き出すことにより前記記録媒体を前記搬送経路に供給する供給部をさらに備え、
前記搬送方向における前記検出領域と前記押付領域との距離は、前記記録媒体の剛性が高く、前記巻芯の径が小さいほど、短くされる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148840(P2012−148840A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7561(P2011−7561)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】