説明

画像形成装置

【課題】潤滑剤塗布量が変動しても、帯電後における感光体上の潤滑剤量を適正に維持して、潤滑剤塗布過不足による問題の発生を防止する。
【解決手段】作像ユニット100の帯電ローラ121に交流電圧を印加する電源装置123とこの電源装置123が印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を変更する交流ピーク間電圧変更手段124を配置する。交流ピーク間電圧変更手段124は、感光体ドラム110の画像面積率が小さくなるにつれて交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくし、画像面積率が大きくなるにつれて交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に係り、特に潤滑剤塗布機構を搭載する電子写真式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンターのカラー化、高速化、高画質化の進展とともに、電子写真式画像形成装置では、4連タンデム方式の画像形成装置が主流となってきている。また、環境意識への高まりから、リサイクル、高信頼性、高寿命化もますます要望されている。さらに、オフィス環境への配慮から、オゾン発生量、粉塵発生量に関しても、意識が高まっている。
【0003】
そのため、上述のような画像形成装置では、帯電部材として、オゾン発生量が少ない帯電ローラを採用したものが多い。さらに、装置の高寿命化を図るため、感光体に微小ギャップ(間隙)を持って対向配置される帯電ローラが使用されることもある。また、高画質化への要求から、帯電ローラに帯電電流が十分に流れて帯電電位が安定する交流電圧を印加するものも多くなってきている。
【0004】
しかし、帯電ローラに交流電圧を印加すると、帯電電流で感光体表面が破壊されてしまうことがある。そこで、感光体表面を保護するため、感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置を採用することがある。また、感光体に潤滑剤塗布を行うと、感光体表面の摩擦係数を下げることができ、クリーニングブレードエッジの挙動を安定させて、クリーニング性能が向上する効果も期待できる。
【0005】
潤滑剤塗布装置としては、一般に、感光体クリーニング部材の感光体回転方向上流側に配置されたブラシローラに、棒状の固形潤滑剤をスプリング等で押し付け、ブラシローラによって削り取った潤滑剤を感光体表面に塗布し、さらに感光体クリーニングブレードで薄膜化する構成が採用される。
【0006】
図12は従来の画像形成装置の作像ユニットを示す断面図である。この作像ユニット300は、感光体ドラム310と、帯電装置320と、潤滑剤塗布装置330と、現像装置340と、クリーニングブレード350とを備え、感光体ドラム310に作成した潜像を現像装置340で現像してトナー像を作成し、このトナー像を中間転写ベルト360に転写するものである。帯電装置320は、高画質化、高寿命化のため、交流電圧を印加する帯電ローラ321を、感光体ドラム310から所定寸法(ギャップ)だけ離間して配置して構成している。また、帯電装置320には、帯電ローラ321清掃用のクリーニングローラ322が配置される。
【0007】
潤滑剤塗布装置330は、交流電流による感光体ドラム310の表面破壊防止のため設けられる。潤滑剤塗布装置330は、感光体ドラム310の回転方向に対して、クリーニングブレード350の上流側に配置されたブラシローラ331に固形の潤滑剤332を圧縮スプリング333で押し付けて、潤滑剤332をブラシローラ331で削り取り、削り取った潤滑剤を感光体ドラム310へと塗布するものである。また、クリーニングブレード350は感光体ドラム310の残留トナーを除去するほか、塗布された潤滑剤を薄膜化する。なお、図中符号351は廃トナーを搬送する廃トナー搬送部材を示している。
【0008】
このような、作像ユニット300では、帯電装置320の下流側において、感光体ドラム310に潜像形成用の光線LBが図示しない露光装置から入射し、さらに下流に配置された現像装置340で感光体ドラム310に形成された潜像はトナーで現像され、中間転写ベルト360に転写される。
【0009】
従来の潤滑剤塗布装置では、感光体ドラム310における転写残画像面積の大小により、感光体表面と潤滑剤塗布部材の接触面積が変化するために、潤滑剤の感光体への塗布量は、作像している画像の画像面積率により変化する。ここで、画像面積率とは、全作像面積と実際にトナーが乗る画像面積の割合をいう。
【0010】
図13は従来の作像ユニットにおいて適正な量の潤滑剤が塗布された状態を示す断面図、図14は同じく画像面積率が小さく潤滑剤が過剰な状態を示す断面図、図15は同じく画像面積率が大きく潤滑剤が不足する状態を示す断面図、図16は画像面積率と潤滑剤塗布量との関係を示すグラフである。
【0011】
すなわち、画像面積率が狙いの潤滑剤塗布量の設定範囲にあると、感光体ドラム310には、残留トナーTが適度に残っており、図13に示すように、潤滑剤Lは、潤滑剤塗布部材、すなわちブラシローラ331により、感光体ドラム310表面に適正量が塗布され、クリーニングブレード350で薄膜化される。このため、帯電ローラ321には過剰な潤滑剤Lが付着せず、帯電ローラ321は適正に作動する。なお、図13中残留トナーTは小さな黒点で、潤滑剤Lは大きな黒点で示している(以下同じ)。
【0012】
画像面積率が小さいとき、特に非作像時には、図14に示すように、感光体ドラム310の表面と潤滑剤塗布部材、すなわちブラシローラ331の接触面積が大きくなる。このような場合には、ブラシローラ331による潤滑剤Lの塗布量が多くなり、潤滑剤Lが塗布過剰の状態となる。すると、過剰な潤滑剤Lにより、帯電ローラ321の汚れが促進され、この汚れが蓄積すると、やがて帯電不良による縦スジ等が発生する。
【0013】
逆に画像面積率が大きい場合には、図15に示すように、感光体ドラム310の表面とブラシローラ331の接触面積が小さくなり、潤滑剤Lの塗布量が少なくなる。このように、潤滑剤が塗布不足となると、感光体ドラム310の保護作用が不足になり、帯電交流電流による感光体表面破壊が進行して、感光体フィルミングの問題が発生したり、感光体表面の潤滑性が悪くなり、クリーニングブレードエッジの挙動が不安定となり、クリーニング不良の問題が発生したりする。
【0014】
図16に示すように、通常潤滑剤の塗布量は圧縮スプリング333の圧力により、オフィス用の通常画像である画像面積率が3%〜10%程度の画像を作像する場合に適量となるよう設定している。これに対して、潤滑剤塗布部材、すなわちブラシローラと感光体表面の接触面積が大きい(すなわち画像面積率が小さい)と、潤滑剤の塗布量が多くなり、帯電ローラの汚れが促進される。一方、潤滑剤塗布部材、すなわちブラシローラと感光体表面の接触面積が小さい(すなわち画像面積率が大きい)と、潤滑剤塗布不足となり感光体保護作用不足による感光体フィルミング等が発生する。
【0015】
潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置として、特許文献1には、像担持体と、該像担持体に対して接触または近接させて配置された状態で一様帯電可能な帯電手段を備え、一様帯電された像担持体に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理した後、可視像とされたトナー像を被転写体に転写した後、前記像担持体表面に残留するトナーをクリーニング装置により除去する手段と、前記像担持体に対して潤滑剤を供給する手段とを具備し、前記帯電手段は、画像形成回数若しくは前記像担持体の回動時間をカウントするカウンタを有し、カウンタ値によって画像形成時と非画像形成時とで印加される交流電圧値の比を制御する制御手段に接続されている画像形成装置が記載されている。
【0016】
同じく特許文献2には、像担持体の表面を均一に帯電する帯電手段と、帯電手段で均一に帯電された像担持体の表面を画像情報に基づいて走査露光して静電潜像を形成する書き込み手段と、書き込み手段で形成された静電潜像を顕像化してトナー画像を形成する現像手段と、現像手段で形成されたトナー画像を被転写体Pに転写する転写手段と、転写手段で担持するトナー画像を転写後の像担持体の表面に像担持体の表面の地汚れトナー量に応じて潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段とからなる画像形成装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来の画像形成装置にあっても、上述のように、画像面積率の変動により感光体表面と潤滑剤塗布部材の接触面積が変化し、潤滑剤塗布量の過剰による帯電ローラ汚れによる帯電不良に起因する縦スジ等の発生や、潤滑剤塗布量の不足による感光体保護作用不足に起因する感光体フィルミング、クリーニング不良が発生するという問題がある。
【0018】
そこで本発明は、潤滑剤塗布量が変動しても、帯電後における感光体上の潤滑剤量を適正に維持して、潤滑剤塗布過多および塗布不足による問題の発生を防止することができる画像形成装置を提供することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決する請求項1の発明は、感光体を帯電させる帯電部材と、この帯電部材に交流電圧を印加する電源装置と、前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置とを備える画像形成装置において、感光体に形成されるトナー像の画像面積率に対応して、前記電源装置を制御して帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を変化させる交流ピーク間電圧変更手段を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0020】
同じく請求項2の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記交流ピーク間電圧変更手段は、前記画像面積率が小さくなるにつれて、前記帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくすることを特徴とする。
【0021】
同じく請求項3の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記交流ピーク間電圧変更手段は、前記画像面積率が大きくなるにつれて、帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくすることを特徴とする。
【0022】
同じく請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記潤滑剤塗布装置が棒状の固形潤滑剤をブラシローラで削り取り、前記感光体表面へ塗布する構造を備えることを特徴とする。
【0023】
同じく請求項5の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、前記潤滑剤塗布装置が前記感光体の回転方向に対して感光体クリーニング装置の上流側に配置されることを特徴とする。
【0024】
同じく請求項6の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、前記潤滑剤塗布装置が感光体の回転方向に対して感光体クリーニング装置の下流側に搭載されることを特徴とする。
【0025】
同じく請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記帯電部材が、接触帯電ローラを備えることを特徴とする。
【0026】
同じく請求項8の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記帯電部材が、感光体に微小ギャップを持って対向配置される帯電ローラを備えることを特徴とする。
【0027】
同じく請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の画像形成装置において、前記潤滑剤が、少なくとも脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)を含有することを特徴とする。
【0028】
同じく請求項10の発明は、請求項9に記載の画像形成装置において、前記脂肪酸金属塩(A)が、ステアリン酸亜鉛であり、前記無機潤滑剤(B)が、窒化ホウ素であることを特徴とする。
【0029】
同じく請求項11の発明は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の画像形成装置において、作像ユニットとして、前記感光体を含み、帯電装置、現像装置、感光体クリーニング装置のうち少なくとも一つを含むプロセスカートリッジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、帯電部材を通過した後の感光体上に残存する潤滑剤量を適正な量とし、潤滑剤塗布過剰による帯電ローラ汚れや、潤滑剤塗布不足による感光体フィルミング、クリーニング不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係る画像形成装置の内部機構を概念的に示す断面図である。
【図2】同じく作像装置を示す断面図である。
【図3】同じく画像面積率が数%の状態における作像装置の要部を示す断面図である。
【図4】同じく転写残トナーがない状態での作像装置の要部を示す断面図である。
【図5】同じく画像面積率が大きい状態での作像装置の要部を示す断面図である。
【図6】同じく画像面積率に対する潤滑剤の塗布量及び交流ピーク間電圧変更手段の交流ピーク間電圧値の変更状態を示すグラフである。
【図7】同じく交流ピーク間電圧変更手段の画像面積率に対する潤滑剤の塗布量及び交流ピーク電圧変更手段の交流ピーク間電圧値の他の変更状態を示すグラフである。
【図8】実施例2に係る作像装置を示す断面図である。
【図9】同じくクリーニングブレードが摩耗した状態での作像装置の要部を示す断面図である。
【図10】同じくクリーニングブレードが摩耗した状態での作像装置の要部を示す断面図である。
【図11】同じくクリーニングブレードが摩耗した状態での画像面積率に対する潤滑剤の塗布量及び交流ピーク間電圧変更手段の交流ピーク間電圧値の変更状態を示すグラフである。
【図12】従来の作像ユニットを示す断面図である。
【図13】同じく作像ユニットにおいて適正な量の潤滑剤が塗布された状態を示す断面図である。
【図14】同じく画像面積率が小さく潤滑剤が過剰な状態を示す断面図である。
【図15】同じく画像面積率が大きく潤滑剤が不足する状態を示す断面図である
【図16】同じく画像面積率と潤滑剤塗布量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態に係る画像形成装置は、感光体を帯電させる帯電部材と、この帯電部材に交流電圧を印加する電源装置と、前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置とを備える画像形成装置において、前記電源装置を制御して帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を変化させる交流ピーク間電圧変更手段を備え、前記画像面積率が小さくなるにつれて、前記帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくし、前記画像面積率が大きくなるにつれて、帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくする。これにより、画像形成装置は、帯電部材を通過した後の感光体上に残存する潤滑剤量を適正な量とし、潤滑剤塗布過剰による帯電ローラ汚れや、潤滑剤塗布不足による感光体フィルミング、クリーニング不良の発生を防止することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例(以下では単に実施例と記載する)に係る画像形成装置について説明する。以下、いくつかの例について説明するが、本発明はこれらに限定されず、かつ本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱せずに、数多くの改良、変更、変形、置換をなすこと及び応用例を想到することが当業者には可能であろう。
【0034】
<実施例1>
実施例1に係る画像形成装置として4連タンデム型カラー複写装置を例として説明する。図1は実施例1に係る画像形成装置の内部機構を概念的に示す断面図である。画像形成装置1は、図1に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーを用いてカラー画像形成を行う。画像形成装置1は、その下部に記録媒体としての用紙を収納する給紙カセット11、12を配した給紙部10を設け、その上方に作像部20及び転写部30を配置した構成を備える。
【0035】
作像部20は、像担持体である感光体ドラム110Y、110M、110C、110K(以下、特に色を特定する必要がなければ感光体ドラム110と言う、他の部材もおなじ)を備えた4個の作像ユニット100Y、100M、100C、100Kを備える。転写部30は、複数のローラ31、32、33に巻き掛けられた可撓性を有する無端ベルトで構成した中間転写体としての中間転写ベルト34と、各感光体ドラム110Y、110M、110C、110Kに潜像を形成する潜像形成装置である光書込ユニット40と、用紙にトナー像を定着させる定着装置50等が配置されている。また、給紙カセット11、12から定着装置50までの間には、用紙を搬送する搬送経路60が形成されている。
【0036】
また、中間転写ベルト34には、ローラ32と対向する部位に2次転写装置となる2次転写ローラ35を搬送経路に臨ませて設置し、ローラ31と対向する部位にベルト表面を清掃するベルトクリーニング装置37を設置している。
【0037】
作像部20は、中間転写ベルト34のうちローラ31とローラ32との間に配置される中間転写ベルト34の下部側ベルト走行辺に対向するように配置されている。各作像ユニット100Y、100M、100C、100Kは、中間転写ベルト34に接するように各感光体ドラム110Y、110M、110C、110Kを配置している。各感光体ドラム110Y、110M、110C、110Kが中間転写ベルト34に接する位置における中間転写ベルト34の内側には、1次転写を行う転写装置としての転写ローラ36Y、36M、36C、36Kがそれぞれ設けてある。なお、図中符号70Y、70M、70C、70Kは補給用トナーを収納するトナーボトルを示している。
【0038】
実施例1に係る画像形成装置1では、作像ユニット100Y、100M、100C、100Kの感光体ドラム110Y、110M、110C、110Kが光書込ユニット40で所定パターンによって露光され、感光体ドラム110Y、110M、110C、110Kが現像ユニットで現像されるのに呼応して、給紙カセット11、12から搬送された転写用紙は、作像部20に搬送され、転写部30で感光体ドラム110Y、110M、110C、110Kから順次トナーが転写され、定着装置50で定着され排出される。
【0039】
次に作像ユニット100について説明する。図2は実施例に係る作像ユニットを示す断面図である。作像ユニット100Y、100M、100C、100Kは、使用するトナーの色が異なる他、同一の構造を備えている。このため、1つの作像ユニット100についてその構造を符号に添え字を付さずに説明する。作像ユニット100において、感光体ドラム110の周囲には、帯電手段120、現像器130、潤滑剤塗布装置140,クリーニング装置150がそれぞれ配置してある。
【0040】
帯電手段120は、感光体ドラム110に隙間(ギャップ)を持って配置された帯電ローラ121と、帯電ローラ121の汚れを除去するクリーニングローラ122とを備える。また、帯電ローラ121には、帯電ローラ121に交流電圧を印加する電源装置123が接続され、この電源装置123が帯電ローラ121に印加するピーク間電圧(Vp−p)を調整する交流ピーク間電圧変更手段124が接続されている。実施例1に係る画像形成装置1では、交流ピーク間電圧変更手段124は、画像面積率が小さくなるにつれて、帯電ローラ121に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくし、画像面積率が大きくなるにつれて、帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくするよう電源装置123を制御する。ここで、画像面積率は、光書込ユニット40に入力される画像データに基づいて計算される。
【0041】
現像器130は、現像ローラ131と、攪拌ローラ132、133とを備えている。また、潤滑剤塗布装置140は、感光体ドラム110の回転方向に対して、クリーニング装置150の上流側に配置されており、固形の潤滑剤141と、この潤滑剤141と感光体ドラム110とに接触して回転し、潤滑剤141を削って感光体ドラム110に塗布するブラシローラ142と、潤滑剤141をブラシローラ142側に押付ける圧縮スプリング143とを備える。
【0042】
さらに、クリーニング装置150は、感光体ドラム110に接触して感光体ドラム110の残留トナーを除去すると共に、潤滑剤塗布装置140で塗布された潤滑剤を薄膜化するクリーニングブレード151と、このクリーニングブレード151を支持する支持部材152とを備える。なお、符号153は、除去された廃トナーを搬送する廃トナー搬送部材を示している。
【0043】
以下、実施例1に係る画像形成装置1における帯電手段120の制御について説明する。図3は実施例1に係る画像形成装置における画像面積率が数%における状態での作像装置の要部を示す断面図、図4は同じく転写残トナーがない状態での作像装置の要部を示す断面図、図5は同じく画像面積率が大きい状態での作像装置の要部を示す断面図、図6は画像面積率に対する潤滑剤の塗布量及び交流ピーク間電圧変更手段の交流ピーク間電圧値の変更状態を示すグラフである。
【0044】
実施例1に係る画像形成装置において、作像ユニット100の基本構造は、従来技術として示したものと同じであるので、潤滑剤141の感光体ドラム110への塗布量は、感光体ドラム110の画像面積率の大小で変化する(図6中一点鎖線で示した)。また、潤滑剤141の塗布量は潤滑剤塗布装置140の圧縮スプリング143を設定することにより、オフィス用機器の通常画像である画像面積率が3%〜10%程度の画像を作像する場合に、適量となるように設定している。この場合、図3に示すように、感光体ドラム110表面に塗布された潤滑剤Lは適正量となり、潤滑剤塗布の過不足が無く、帯電ローラ121の汚れが促進されたり、感光体ドラム110の破壊が進行したり、クリーニング不良が発生することはない。これは、図6中一点鎖線で示した曲線が3%〜10%で適正量となっていることで示されている。
【0045】
画像面積率が小さい、特に画像形成装置1の非作像時には、図4に示すように、感光体ドラム110表面には残留トナーTがほとんどなく、感光体ドラム110とブラシローラ142との接触面積が大きくなり、潤滑剤の塗布量が多くなる(図6中潤滑剤塗布量曲線の3%以下参照)。こうした場合、実施例1に係る画像形成装置1では、交流ピーク間電圧変更手段124は電源装置123を制御して、帯電ローラ121へ印加する交流電圧の交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくし、帯電電流を大きくする(図6中Vp−p曲線実線3%以下参照)。
【0046】
これにより、帯電ローラ121による帯電電流で破壊消費される潤滑剤の量を大きくし、過剰塗布された潤滑剤を破壊消費する。そのため、感光体上の過剰な潤滑剤が帯電ローラに付着することを防止でき、帯電ローラ汚れを抑制して、汚れによる帯電不良、スジ画像といった問題発生を防止できる。帯電部通過後の感光体上に残存する潤滑剤量を適正に維持できる。例えば、潤滑剤塗布量が通常画像作像時の1.2倍程度となったとき、帯電交流ピーク間電圧を通常画像作像時:1.9kVp−pに対して、非作像時は、2.0kVp−pとし、帯電交流ピーク間電圧を大きくする。
【0047】
さらに、画像面積率が大きい場合(画像面積率で、例えば10%以上)には、図5に示すように、感光体ドラム110表面の残留トナーTが多くなり、感光体ドラム110表面とブラシローラ142の接触面積が小さくなり、潤滑剤Lの塗布量が少なくなる(図6中潤滑剤塗布量曲線の10%以上参照)。こうした場合、実施例1に係る画像形成装置1では、交流ピーク間電圧変更手段124は、電源装置123を制御して、帯電ローラ121へ印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくし、帯電電流を小さくし(図6中Vp−p曲線実線の10%以上参照)、帯電電流の感光体ドラム110への攻撃作用を小さくする。
【0048】
これにより、感光体ドラム110を保護するため、破壊消費される潤滑剤量を少なくして、潤滑剤の塗布不足による、感光体表面破壊の進行、それによる感光体フィルミング、潤滑不足によるクリーニング不良等の発生を防止する。例えば、潤滑剤の塗布量が通常画像作像時の0.5倍程度のとき、帯電交流ピーク間電圧を通常画像作像時:1.9kVp−pに対して、全ベタ画像時は、1.6kVp−pとし、帯電交流ピーク間電圧を小さくする。
【0049】
この交流ピーク間電圧変更手段124による交流ピーク間電圧(Vp−p)の変更制御についてまとめると以下のようになる。図6中実線で描いた曲線は実施例1における交流ピーク間電圧変更手段124での交流ピーク間電圧(Vp−p)の制御の一例を示し、一点鎖線で描いた曲線は潤滑剤塗布量を示すものである。
【0050】
交流ピーク間電圧変更手段124は、交流ピーク間電圧(Vp−p)一定時の画像面積率の変化に伴う潤滑剤塗布量の変化状態(図6中一点鎖線)を相殺するよう交流ピーク間電圧(Vp−p)を連続して変更するようにしている。ここで、画像面積率が3〜10%のとき、潤滑剤の塗布量が適正値となり、画像面積率が3%を下回ると潤滑剤の塗布量が増大し始め、画像面積率が10%を上回ると潤滑剤が減少し始める。
【0051】
交流ピーク間電圧変更手段124は、画像面積率が小さく潤滑剤塗布量が増大するとき交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくし、逆に画像面積率が大きく潤滑剤塗布量が減少するとき交流間ピーク電圧(Vp−p)を小さくして、交流電流により、破壊消費される潤滑剤量を増減させて、帯電部材を通過した後の感光体上に残存する潤滑剤量を適正な量に維持して、潤滑剤塗布の過不足による問題の発生を防止する。
【0052】
また、交流ピーク間電圧変更手段124による電源装置123の交流ピーク間電圧(Vp−p)の変更は、段階的に行うことができる。図7は実施例1に係る画像形成装置における交流ピーク間電圧変更手段の交流ピーク間電圧値の他の変更状態を示すグラフである。この例では、潤滑剤塗布量の変化に対応して交流ピーク間電圧(Vp−p)を6段階に変更するようにしている。
【0053】
<実施例2>
次に実施例2に係る画像形成装置について説明する。図8は実施例2に係る作像装置を示す断面図、図9及び図10は同じくクリーニングブレードが摩耗した状態での作像装置の要部を示す断面図である。実施例2に係る図画像形成装置は、画像面積率の変動により、潤滑剤塗布部材と感光体表面との接触面積が変動して、潤滑剤供給過不足が発生することを防止するために、作像ユニット200として、図8に示すように、感光体ドラム110の回転方向に対して、感光体ドラム110から残留トナーTを除去するクリーニング装置250の下流側に潤滑剤塗布装置240を配置したものを採用している。この作像ユニット200では、潤滑剤塗布装置240の下流に感光体ドラム110に接触して潤滑剤塗布装置240が塗布した潤滑剤を薄膜化して感光体ドラム110に塗布する潤滑剤塗布ブレード261を配置する。
【0054】
潤滑剤塗布装置240は、潤滑剤241と、ブラシローラ242と、圧縮スプリング243を備える。また、クリーニング装置250は、クリーニングブレード251を支持部材252で支持して配置されている。さらに、潤滑剤塗布ブレード261は、支持部材262で支持されている。
【0055】
このような、作像ユニット200でも、経時でクリーニングブレード251のエッジが摩耗してくると、図9に示すように、クリーニング装置250をすり抜けるトナーT1が増加する。そうして、クリーニングブレード251のエッジの摩耗が進行すると、画像面積率の変動により、クリーニングすり抜けトナーT1が変動するようになる。特に、画像面積率が大きな画像の場合に、すり抜けトナーT1が増加して、ブラシローラ242と感光体ドラム110表面の接触面積が減少して、潤滑剤塗布不足となり、感光体保護作用が不足して、感光体破壊が進行し、感光体フィルミングといった問題が発生したり、感光体潤滑剤不足によるクリーニング不良が発生したりすることとなる。
【0056】
そこで、実施例2に係る画像形成装置の作像ユニット200では、クリーニングブレード251の使用時間を記録し、この記録した使用時間に基づいてクリーニングブレード251のエッジ摩耗量を予測する。このクリーニングブレード251の使用時間はクリーニングブレード251の交換時からその使用時間を計測するものであり、計測は画像形成装置の制御部で行うことができる。
【0057】
そして、実施例2に係る作像ユニット200では、クリーニングブレード251の使用時間が、エッジ摩耗が進行して、すり抜けトナーが増加するだけの時間となると、実施例1の作像ユニット100と同様に帯電ローラ121に印加する交流電圧の交流ピーク間電圧(Vp−p)の制御を実施する。
【0058】
すなわち、高画像面積率の場合に、図10に示すように、帯電ローラへ印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくし、帯電電流を小さくして、帯電電流の感光体ドラムの攻撃作用を小さくする。感光体保護のため破壊消費される潤滑剤の必要量を少なくして、潤滑剤塗布不足による、感光体表面破壊の進行、それによる感光体フィルミング、潤滑不足によるクリーニング不良等の発生を防止する。
【0059】
図11は実施例2における画像面積率に対する潤滑剤の塗布量及び交流ピーク間電圧変更手段の交流ピーク間電圧値の変更状態を示すグラフである。図11中実線で描いた曲線は実施例2における交流ピーク間電圧変更手段124での交流ピーク間電圧(Vp−p)の制御の一例を示す。
【0060】
交流ピーク間電圧変更手段124は、交流ピーク間電圧(Vp−p)一定時の画像面積率の変化に伴う潤滑剤塗布量の変化状態(図11中一点鎖線)を相殺するよう交流ピーク間電圧(Vp−p)を連続して変更するようにしている。ここで、画像面積率が20%を上回ると潤滑剤塗布量が減少し始める。
【0061】
実施例2では交流ピーク間電圧変更手段124は、画像面積率が20%より高くなったとき交流間ピーク電圧(Vp−p)を小さくして、交流電流による潤滑剤消費量を減少させて、潤滑剤塗布不足とならないようにしている。
【0062】
前記実施例1及び実施例2に係る画像形成装置において、作像ユニットは、感光体と、帯電装置、感光体クリーニング装置、潤滑剤塗布装置が一体となったプロセスカートリッジとして構成し、プロセスカートリッジを一体として画像形成装置本体に着脱可能とし、このプロセスカートリッジを交換することにより作像ユニットを交換することができるよう構成している。
【0063】
この画像形成装置によれば、作像ユニットを一体化してプロセスカートリッジとしているので、各部材の画像形成装置への設置性、メインテナンス性を向上させることができる他、感光体ドラムへの設置位置精度を向上させることができる。
【0064】
また、前記各実施例に係る画像形成装置の潤滑剤塗布装置に使用する潤滑剤は、脂肪酸金属塩(A)と、無機潤滑剤(B)を含有している。脂肪酸金属塩が、帯電電流により破壊されて、感光体表面が破壊されるのを防止すると同時に、帯電電流では破壊されない無機潤滑剤により、潤滑作用が(潤滑剤が脂肪酸金属塩のみの場合よりも)よりよい状態で維持されるため、感光体クリーニングをより良好に維持することが可能となる。
【0065】
脂肪酸金属塩(A)の例としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレインサン銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム及びそれらの混合物があるが、これに限るものではない。また、これらを混合して使用してもよい。本発明においては、中でもステアリン酸亜鉛が特に像担持体への成膜性に優れることから、最も好ましく用いられる。
【0066】
無機潤滑剤(B)は、自身が劈開して潤滑する、あるいは内部滑りを起こす無機化合物をいう。具体的な物質としては、タルク・マイカ・窒化ホウ素・二硫化モリブデン・二硫化タングステン・カオリン・スメクタイト・ハイドロタルサイト化合物・フッ化カルシウム・グラファイト・板状アルミナ・セリサイト・合成マイカなどがあるが、これに限るものではない。中でも窒化ホウ素は、原子がしっかりと組み合った六角網面が広い間隔で重なり、層間に働く力は弱いファンデルワールス力のみであるため、容易に劈開、潤滑することから、最も好ましく用いられる。
【0067】
なお、これらの無機潤滑剤は疎水性付与等の目的で、必要に応じて表面処理がなされていても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 画像形成装置
10 給紙部
11、12 給紙カセット
20 作像部
30 転写部
31、32、33 ローラ
34 中間転写ベルト
35 2次転写ローラ
36Y、36M、36C、36K 転写ローラ
37 ベルトクリーニング装置
40 光書込ユニット
50 定着装置
60 搬送経路
100 作像ユニット
100Y、100M、100C、100K 作像ユニット
110 感光体ドラム
110Y、110M、110C、110K 感光体ドラム
120 帯電手段
121 帯電ローラ
122 クリーニングローラ
123 電源装置
124 交流ピーク間電圧変更手段
130 現像器
131 現像ローラ
132、133 攪拌ローラ
140 潤滑材塗布装置
141 潤滑剤
142 ブラシローラ
143 圧縮スプリング
150 クリーニング装置
151 クリーニングブレード
152 支持部材
200 作像ユニット
240 潤滑剤塗布装置
241 潤滑剤
242 ブラシローラ
243 圧縮スプリング
250 クリーニング装置
251 クリーニングブレード
252 支持部材
261 潤滑剤塗布ブレード
262 支持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2010−8998号公報
【特許文献2】特開2006−47517号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を帯電させる帯電部材と、この帯電部材に交流電圧を印加する電源装置と、前記感光体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置とを備える画像形成装置において、
感光体に形成されるトナー像の画像面積率に対応して、前記電源装置を制御して帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を変化させる交流ピーク間電圧変更手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記交流ピーク間電圧変更手段は、前記画像面積率が小さくなるにつれて、前記帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記交流ピーク間電圧変更手段は、前記画像面積率が大きくなるにつれて、帯電部材に印加する交流ピーク間電圧(Vp−p)を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記潤滑剤塗布装置が棒状の固形潤滑剤をブラシローラで削り取り、前記感光体表面へ塗布する構造を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記潤滑剤塗布装置が前記感光体の回転方向に対して感光体クリーニング装置の上流側に配置されることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記潤滑剤塗布装置が感光体の回転方向に対して感光体クリーニング装置の下流側に搭載されることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電部材が、接触帯電ローラを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯電部材が、感光体に微小ギャップを持って対向配置される帯電ローラを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記潤滑剤が、少なくとも脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)を含有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記脂肪酸金属塩(A)が、ステアリン酸亜鉛であり、前記無機潤滑剤(B)が、窒化ホウ素であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
作像ユニットとして、前記感光体を含み、帯電装置、現像装置、感光体クリーニング装置のうち少なくとも一つを含むプロセスカートリッジであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−177866(P2012−177866A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41867(P2011−41867)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】