説明

画像形成装置

【課題】イオン導電性を有する転写ベルトの抵抗が上昇するのを簡易な構成で抑制することができる画像形成装置を得る。
【解決手段】二次転写ベルト52の表面に設けられた導電性ロール60からの電流は対向部64で二次転写ベルト52の表面から裏面に流れ、対向部66で二次転写ベルト52の裏面から表面に流れる。このように周回する二次転写ベルト52には、常に等量で正逆両方向の電流が作用することとなる。このため、イオンの偏在及びイオンの分極は起こらず、抵抗変化がみられない画像形成装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置着に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子写真装置に用いられる半導電性ベルトが記載されている。この半導電性ベルトは、薄肉円筒状の弾性芯体層の外側周面にこの弾性芯体層より柔らかい弾性表面層を積層した積層構造体である。そして、この半導電性ベルトの弾性芯体層の表面抵抗率が、ベルト全体の体積抵抗率よりも2桁以上高いようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−101675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、イオン導電性を有する転写ベルトの抵抗が上昇するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る画像形成装置は、 回転可能に支持され、トナー画像が表面に形成される像保持体と、回転可能に支持され、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を前記像保持体と対向する転写位置で被転写物に転写させる転写部材と、前記転写部材に巻き掛けられ、前記転写部材が回転することで前記転写部材と前記像保持体とに挟まれながら周回すると共に、イオン導電性を有する無端状の転写ベルトと、回転可能に支持され、前記転写部材に対して前記転写位置で前記転写ベルトを挟むように対向して配置される対向部材と、前記転写位置で、前記転写部材と前記対向部材との間に転写電流が流れるように電圧を印加する転写電圧印加部材と、前記転写位置とは異なる位置で、前記転写ベルトに前記転写電流とは逆向きの電流が流れるように対象部材との間で電圧が印加される導電性を有する導電性部材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、請求項1に記載において、前記対象部材は、前記対向部材であって、前記導電性部材は、前記転写ベルトを挟んで前記転写部材の反対側に設けられ、前記導電性部材もしくは前記対向部材の一方に電圧を印加することで、前記導電性部材と前記転写部材との間に前記転写部材を介して電流が流れることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項2に記載において、前記転写部材がイオン導電性を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載において、前記導電性部材は、円柱状とされ、周回する前記転写ベルトに当って従動回転することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載において、前記転写ベルトの表面に接して前記転写ベルトを清掃する清掃部材が設けられ、前記清掃部材は、前記転写ベルトと前記像保持体との第一接触部に対して前記転写ベルトの周回方向下流側であって、前記転写ベルトと前記導電性部材との第二接触部に対して前記転写ベルトの周回方向上流側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の画像形成装置によれば、転写ベルトに転写電流とは逆向きの電流が流れない構成と比して、イオン導電性を有するベルトの抵抗が上昇するのを抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2の画像形成装置によれば、導電性部材が、転写ベルトを挟んで転写部材の反対側に設けられていない場合と比して、簡易な構成で転写ベルトに転写電流とは逆向きの電流を流すことができる。
【0012】
本発明の請求項3の画像形成装置によれば、転写部材が電子導電性を有する場合と比して、転写部材の抵抗むらを防止した上で転写部材の抵抗が上昇するのを抑制することができる。
【0013】
本発明の請求項4の画像形成装置によれば、導電性部材が転写ベルトに当って従動回転しない場合と比して、導電性部材が転写ベルトに当ることで生じる転写ベルトの負荷を軽減することができる。
【0014】
本発明の請求項5の画像形成装置によれば、転写ベルトと対向部材との第一接点に対して転写ベルトの周回方向下流側で、転写ベルトと導電性部材との第二接点に対して転写ベルトの周回方向上流側に清掃部材が設けられていない場合と比して、導電性部材が汚れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に用いられる二次転写ロール及び二次転写ベルト等を示した構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置及び比較形態に係る画像形成装置の評価結果を棒グラフで示した図面である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に対して比較するための比較形態に係る画像形成装置に用いられる二次転写ロール及び二次転写ベルト等を示した構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置に用いられる二次転写ロール及び二次転写ベルト等を示した構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置及び比較形態に係る画像形成装置の評価結果を棒グラフで示した図面である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置に用いられる二次転写ロール及び二次転写ベルト等を示した構成図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る画像形成装置に用いられる二次転写ロール及び二次転写ベルト等を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一例について図1〜図4に従って説明する。
【0017】
(全体構成)
図3に示されるように、画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを備えている。なお、以降、YMCKを区別する必要がある場合は、符号の後にY、M、C、Kの何れかを付して説明し、YMCKを区別する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略する。
【0018】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、対向部材の一例としてのバックアップロール34と複数の張架ロール32とに巻き掛けられて周回(回転)する無端状の像保持体の一例としての中間転写ベルト30(一次転写ベルト)の進行方向に対して、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの順番で直列に配列されている。
【0019】
そして、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kに備えられた感光体12Y,12M,12C,12Kに対して中間転写ベルト30を挟んで反対側には、感光体12の表面に形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト30に転写する一次転写ロール16Y、16M,16C,16Kが設けられている。詳細には、一次転写ロール16Y、16M,16C,16Kに転写バイアス電圧が印加され、静電吸引力によって、各色のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次一次転写されるようになっている。
【0020】
次に、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの構成を代表してイエロートナー画像を形成する画像形成ユニット10Yについて説明する。なお、各画像形成ユニット10は同様の構成とされている。
【0021】
中間転写ベルト30に対して感光体12Yを挟んで反対側には、感光体12Yの表面と接して感光体12Yの表面を一様に帯電すると共に、感光体12Yの回転に伴なって従動回転する帯電ロール13Yが設けられている。
【0022】
さらに、帯電ロール13Yに対して帯電した感光体12Yの表面を露光光により露光してイエロー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置14Yが設けられている。
【0023】
また、帯電ロール13Yに対して感光体12Yの回転方向下流側には、露光装置14が形成した静電潜像をイエロートナー画像として可視化(現像)する現像装置15Yが設けられている。詳細には、現像装置15Yには、感光体12Yの回転に伴なって回転する現像ロール18Yが設けられている。そして、マイナス電圧に帯電したトナーが現像ロール18Yの外周面から感光体12Yの表面に形成された静電潜像に転移して、静電潜像がイエロートナー画像として可視化(現像)されるようになっている。
【0024】
そして、前述したように、各色の感光体12の表面に形成されたトナー画像が、各一次転写ロール16によって、中間転写ベルト30に順次転写されるようになっている。
【0025】
さらに、帯電ロール13Yに対して感光体12Yの回転方向上流側には、感光体12Yの表面から中間転写ベルト30に転写されずに残留した残留トナーを感光体12Yの表面から掻き落とすブレード19Yが設けられている。
【0026】
一方、バックアップロール34に対して中間転写ベルト30を挟んで反対側には、転写部材の一例としての二次転写ロール36が回転可能に設けられている。さらに、この二次転写ロール36と二次転写ロール36の隣りに配置された従動ロール50とには、無端状の転写ベルトの一例としての二次転写ベルト52が巻き掛けられている。そして、二次転写ロール36は、記録媒体としてのシート部材Pが積載される給紙部38から送り出されて中間転写ベルト30と二次転写ベルト52との間を挟持搬送されるシート部材Pに中間転写ベルト30に形成されたトナー画像が転写されるようになっている。なお、二次転写ロール36及び二次転写ベルト52等については、転写バイアス電圧の印加方法等を含めて詳細を後述する。
【0027】
さらに、二次転写ロール36に対してシート部材Pの搬送方向下流側には、シート部材Pに転写されたトナー画像を熱と圧力でシート部材Pに定着させる定着装置31が設けられている。
【0028】
一方、バックアップロール34に対して中間転写ベルト30を挟んで反対側には、中間転写ベルト30からシート部材Pに転写されなかった残留トナーを清掃する清掃ロール33が設けられている。
【0029】
以上の構成により、図3に示されるように、画像形成装置100を作動させると、各色の感光体12の表面は、帯電ロール13により一様に帯電される。次に、各色の露光装置14により、露光光が帯電した感光体12に照射され、感光体12の表面には、各色のトナー画像に対応した静電潜像が形成される。
【0030】
さらに、各色の感光体12の表面に形成された静電潜像には、現像バイアスが印加された各色のトナーが現像ロール18の外周面から転移し、各色の静電潜像がトナー画像として可視化(現像)される。
【0031】
また、各色の感光体12の表面に形成されたトナー画像は、一次転写ロール16の圧接力と、一次転写ロール16に印加された転写バイアス電圧による静電吸引力によって、中間転写ベルト30上に順次一次転写される。つまり、中間転写ベルト30上に、順次、Y,M,C,Kの各色トナー画像が重ねられ、多重のトナー画像(例えばカラートナー画像)が形成される。
【0032】
そして、中間転写ベルト30上に形成された多重のトナー画像は、周回する中間転写ベルト30により、二次転写ベルト52と対向する位置に搬送される。さらに、二次転写ロール36は、給紙部38から送り出されて中間転写ベルト30と二次転写ベルト52との間を挟持搬送されるシート部材Pに中間転写ベルト30に形成されたトナー画像が転写する。
【0033】
トナー画像が転写されたシート部材Pは、二次転写ベルト52に沿って定着装置31に向けて搬送される。定着装置31へ搬送されたシート部材Pに形成されるトナー画像は、熱と圧力とによりシート部材Pに定着され、シート部材Pは図示せぬ排出部に排出される。
【0034】
(要部構成)
次に、二次転写ロール36、二次転写ベルト52及び転写バイアス電圧の印加方法等について説明する。
【0035】
図1に示されるように、図示せぬモータからの駆動力で回転する二次転写ロール36は、回転軸となるφ14mmの円柱状の芯金54と、芯金54の外周面にもうけられた弾性変形可能な弾性層56とを備えている。詳細には、この弾性層56は、発泡させた硬度35°(アスカー硬度)のEPDMゴムにカーボンブラック(CB)を添加されて成形されることで、二次転写ベルト52は電子導電性とさている。そして、弾性層56の抵抗は、5.5LogΩとされている。また、芯金54は、電圧が印加されなく電圧が逃げもしない状態、つまり、電気的にフロートとされている。
【0036】
また、この二次転写ロール36に巻き掛けられた二次転写ベルト52は、NBRゴムとヒドリンゴムとをブレンドして厚さ0.5mmに形成され、表面に厚み0.005mm程度のオーバーコート(OC)層(図示省略)を備えている。そして、二次転写ベルト52の抵抗は、7.5LogΩ・cmとされると共に、二次転写ベルト52のゴム層がイオン導電性とされ、オーバーコート(OC)層が電子電導性とされている。つまり、イオン導電性を有する二次転写ベルト52を用いることで、二次転写ベルト52に生じる抵抗むらが抑制されるようになっている。
【0037】
さらに、二次転写ベルト52の表面と当って従動回転する円柱状の導電性部材の一例としての導電性ロール60が、二次転写ロール36に対して二次転写ベルト52を挟んで反対側に設けられている。
【0038】
また、中間転写ベルト30の表面に形成されたトナー画像をシート部材Pに転写するため、二次転写ロール36とバックアップロール34との間にトナー画像をシート部材Pに転写させるための電流(以下転写電流)が流れるように導電性ロール60とバックアップロール34との間に電圧を印加する転写電圧印加部材の一例としての電源62が設けられている。詳細には、電源62により電圧が印加されることで、導電性ロール60と二次転写ロール36とが対向する対向部64では、導電性ロール60から二次転写ロール36に向って電流が流れ(図中矢印参照)、二次転写ロール36とバックアップロール34とが対向する対向部66(転写位置)では、二次転写ロール36からバックアップロール34に向って電流が流れるようになっている(図中矢印参照)。つまり、対向部64では、二次転写ベルト52に対しては表面から裏面に向って電流が流れ、対向部66では、二次転写ベルト52の裏面から表面に向って電流が流れるようになっている。
【0039】
また、二次転写ベルト52と中間転写ベルト30との第一接触部70に対して二次転写ベルト52の周回方向下流側であって、二次転写ベルト52と導電性ロールとの第二接触部72に対して二次転写ベルト52の周回方向上流側には、二次転写ベルト52の表面に接して二次転写ベルト52を清掃する清掃部材の一例としての清掃ブレード74が、二次転写ベルト52を挟んで従動ロール50の反対側に設けられている。
【0040】
(要部構成の作用)
次に、中間転写ベルト30上に形成されたトナー画像が、シート部材Pに転写される作用について説明する。
【0041】
図1に示されるように、先ず、導電性ロール60とバックアップロール34との間に電源62によって、芯金54が電気的にフロートとされるように、電圧が印加される(本実施例では、導電性ロール60側にプラスの電圧が印加される)。
【0042】
これにより、図中矢印に示されるように、対向部64では、導電性ロール60から二次転写ロール36に向って電流が流れ、対向部66では、二次転写ロール36からバックアップロール34に向って電流が流れる。つまり、対向部64では、二次転写ベルト52の表面から裏面に向って電流が流れ、対向部66では、二次転写ベルト52の裏面から表面に向って電流が流れる。これにより、イオン導電性を有する二次転写ベルト52のイオンが分極したり偏在したりするのが抑制される。
【0043】
一方、図示せぬモータから駆動力が伝達されて二次転写ロール36が回転し、これにより、二次転写ロール36に巻き付けられた二次転写ベルト52も周回する。
【0044】
さらに、中間転写ベルト30上に形成されたマイナス電圧に帯電したトナー画像は、周回する中間転写ベルト30によって、二次転写ベルト52と対向する位置に搬送される。そして、二次転写ロール36は、給紙部38(図3参照)から送り出されて中間転写ベルト30と二次転写ベルト52との間を挟持搬送されるシート部材Pに中間転写ベルト30に形成されたトナー画像を転写する(電圧が印加されることで転写電流が流れる)。
【0045】
ここで、本第1実施形態に係る二次転写ベルト52と本第1実施形態に対する比較形態に係る二次転写ベルトとの抵抗維持性を評価した。
【0046】
本第1実施形態の評価に際しては、二次転写ロール36と従動ロール50とに二次転写ベルト52を巻き付け、二次転写ロール36に対して二次転写ベルト52の反対側には、バックアップロール34としてφ50の金属パイプを用いた。さらに、導電性ロール60とバックアップロール34との間の電流が100μAとなる電圧を印加(定電流電源使用)しながら450mm/sの速度で二次転写ベルト52を90時間(Hr)周回させ、二次転写ベルト52の抵抗を測定した。
【0047】
これに対し、比較形態の評価に際しては、図4に示されるように、本第1実施形態のように導電性ロール60を用いず、二次転写ロール80とバックアップロール34との間の電流が100μAとなる電圧を二次転写ロール80とバックアップロール34との間に印加(定電流電源使用)しながら450mm/sの速度で二次転写ベルト82を90時間(Hr)周回させ、二次転写ベルト82の抵抗を測定した。
【0048】
なお、本第1実施形態及び比較形態の両方の評価において、トナーを用いなかったため、清掃ブレード74を取り外して評価を行った。
【0049】
図2には、初期及び90時間後の本第1実施形態の評価結果、並びに初期及び90時間後の比較形態の評価結果が縦軸を体積抵抗率(LogΩ・cm)とした棒グラフで示されている。
【0050】
この評価結果から分かるように、比較形態では、90時間後に体積抵抗率(抵抗)が上昇しているのに対し、本第1実施形態では、90時間も体積抵抗率(抵抗)が一定(初期から変化が無い)であるのが分かる。つまり、本第1実施形態の二次転写ベルト52は、比較形態と比して、抵抗維持性が向上していることが分かる。なお、この評価結果から次のようなことが考えられる。
【0051】
比較形態で用いた二次転写ロール80の芯金からの電流は、バックアップロール34が当接する部分では、二次転写ベルト82の裏面から表面に向って流れる。二次転写ベルト82に着目すると、二次転写ベルト82の所定の部分が、バックアップロール34に回転してきたときに、二次転写ベルト82の裏面から表面に向って電流は流れその向きは常に一定である。これにより、イオン導電性を有する二次転写ベルト82の内部ではイオンの偏在及びイオンの分極が生じて二次転写ベルト82の抵抗が上昇してしまう。
【0052】
一方、本第1実施形態では、二次転写ベルト52の表面に設けられた導電性ロール60からの電流は対向部64で二次転写ベルト52の表面から裏面に流れ、対向部66で二次転写ベルト52の裏面から表面に流れる。このように周回する二次転写ベルト52には、常に等量で正逆両方向の電流が作用することとなる。このため、イオンの偏在及びイオンの分極は起こらず、抵抗変化が見られなくなると考えられる。
【0053】
以上説明したように、導電性ロール60及び電源62を設けてイオンの偏在及びイオンの分極を防止することで、イオン導電性を有する二次転写ベルト52の抵抗の上昇が簡易な構成で抑制される。
【0054】
また、二次転写ベルト52の抵抗の上昇が抑制されることで、転写電流が安定する。
【0055】
また、転写電流が安定することで、トナー画像のシート部材Pへの転写不良が抑制される。
【0056】
また、導電性ロール60は、円柱状とされ、周回する二次転写ベルト52に当って従動回転するため、導電性ロール60が二次転写ベルト52に当ることで生じる二次転写ベルト52の負荷が軽減される。
【0057】
また、第一接触部70に対して二次転写ベルト52の周回方向下流側であって、第二接触部72に対して二次転写ベルト52の周回方向上流側に、二次転写ベルト52を清掃する清掃ブレード74が設けられている。これにより、導電性ロール60の汚れが抑制される。
【0058】
また、従来の形態(比較形態)に対して、導電性ロール60を追加する構成となっているため、画像形成装置100が大型化されるのが抑制される。
【0059】
また、対向部66では、電流は、常に二次転写ロール36からバックアップロール34に流れるため(転写電流として一定方向に流れるため)、転写位置で逆方向にも電流が流れる構成と比して、生産性が低下するのが抑制される。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の一例について図5、図6に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
本第2実施形態では、第1実施形態とは違い二次転写ロール90は、イオン導電性を有している。つまり、イオン導電性を有する二次転写ロール90を用いることで、電子導電性と比して、二次転写ロール90に生じる抵抗むらが抑制されるようになっている。
【0062】
詳細には、二次転写ロール90は、回転軸となるφ14mmの円柱状の芯金54と、芯金54の外周面に設けられた弾性変形可能な弾性層92とを備えている。この弾性層92は、ウレタン発泡材にイオン導電剤として4級アンモニウム塩を含有させて抵抗を7.3LogΩとされ、硬度35°(アスカー硬度)とされている。
【0063】
ここで、第1実施例と同様に、本第2実施形態に係る二次転写ベルト52及び二次転写ロール90の抵抗維持性と、比較形態に係る二次転写ベルト及び二次転写ロールの抵抗維持性とを評価した。
【0064】
本第2実施形態の評価に際しては、第1実施形態の評価に用いた物に対して二次転写ロール90の仕様のみ変更した。評価方法については第1実施形態と同様とした。
【0065】
これに対し、比較形態の評価に際しては、第1実施形態の比較形態の評価に用いた物と同様の物を用いて評価した。
【0066】
評価方法については、第2実施形態及び比較形態共に、第1実施形態で説明した方法と同様である。また、評価項目については、初期及び90時間後の二次転写ベルトの抵抗及び二次転写ロールの抵抗について評価を行った。
【0067】
図6には、初期及び90時間後の本第2実施形態の評価結果、並びに初期及び90時間後の比較形態の評価結果が縦軸を体積抵抗率(LogΩ・cm)とした棒グラフで示されている。
【0068】
この評価結果から分かるように、本第2実施形態の90時間後の二次転写ベルト52の抵抗及び二次転写ロール90の体積抵抗率(抵抗)の上昇が、比較形態に比べて、第1実施形態と同様の理由で抑制されていることが分かる。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置の一例について図7に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図7に示されるように、本第3実施形態では、中間転写ベルト30の表面に形成されたトナー画像をシート部材Pに転写するため、二次転写ロール36とバックアップロール34との間に転写電流が流れるように二次転写ロール36の芯金54とバックアップロール34との間に電圧を印加する転写電圧印加部材の一例としての電源96が設けられている。結果として、芯金54は、電気的にフロートとされていない。
【0071】
以上説明した構成により、中間転写ベルト30の表面に形成されたトナー画像をシート部材Pに転写する場合には、電源96により二次転写ロール36とバックアップロール34との間に電圧が印加され、対向部66では、転写電流が二次転写ベルト52の裏面から表面に向って流れる。このため、イオン導電性を有する二次転写ベルト52のイオンが分極したり偏在したりする。
【0072】
そして、二次転写ベルト52のイオンが分極したり偏在したりすることにより二次転写ベルト52の抵抗が上昇するのを抑制するモード(クリーニングモード)では、電源62により導電性ロール60とバックアップロール34との間に電圧が印加される。これにより、対向部64では、二次転写ベルト52の表面から裏面に向って電流が流れ、二次転写ベルト52の抵抗の上昇が抑制される。
【0073】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第3実施形態では、電源62により導電性ロール60とバックアップロール34との間に電圧を印加することで、二次転写ベルト52の表面から裏面に向って電流を流したが、電源により導電性ロールと二次転写ロールとの間に電圧を印加することで、二次転写ベルトの表面から裏面に向って電流を流してもよい。
【0074】
次に、本発明の第4実施形態に係る画像形成装置の一例について図8に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図8に示されるように、本第4実施形態では、中間転写ベルト30の表面に形成されたトナー画像をシート部材Pに転写するため、二次転写ロール36とバックアップロール34との間に転写電流が流れるように二次転写ロール36の芯金54とバックアップロール34との間に電圧を印加する転写電圧印加部材の一例としての電源110が設けられている。結果として、芯金54は、電気的にフロートされていない。
【0076】
さらに、二次転写ベルト52は、二次転写ロール36と従動ロール50と導電性を有する材料で形成された従動ロール102とに巻き掛けられている。そして、従動ロール102に対して二次転写ベルト52を挟んで反対側には、二次転写ベルト52と当って従動回転する円柱状の導電性部材の一例としての導電性ロール104が設けられている。
【0077】
また、導電性ロール104から従動ロール102に向って電流が流れるように、導電性ロール104と従動ロール102との間に電圧を印加する電源106が設けられている。
【0078】
以上説明した構成により、中間転写ベルト30の表面に形成されたトナー画像をシート部材Pに転写する場合には、電源110により二次転写ロール36とバックアップロール34との間に電圧が印加され、対向部66では、転写電流が二次転写ベルト52の裏面から表面に向って流れる。このため、イオン導電性を有する二次転写ベルト52のイオンが分極したり偏在したりする。
【0079】
そして、二次転写ベルト52のイオンが分極したり偏在したりすることにより二次転写ベルト52の抵抗が上昇するのを抑制するモード(クリーニングモード)では、電源106により導電性ロール104と従動ロール102との間に電圧が印加され、導電性ロール104と従動ロール102とが対向する対向部108では、二次転写ベルト52の表面から裏面に向って電流が流れ、二次転写ベルト52の抵抗の上昇が抑制される。
【0080】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1〜4実施形態では、二次転写ベルト52に本発明の構成を用いて二次転写ベルト52の抵抗の上昇を抑制したが、本実施形態を中間転写ベルト(一次転写ベルト)に用いて中間転写ベルトの抵抗の上昇を抑制してもよい。また、感光体上に形成されたトナー画像を直接シート部材Pに転写するための直接転写ベルトに用いて直接転写ベルトの抵抗の上昇を抑制してもよい。
【符号の説明】
【0081】
30 中間転写ベルト(像保持体の一例)
34 バックアップロール(対向部材の一例)
36 二次転写ロール(転写部材の一例)
52 二次転写ベルト(転写ベルトの一例)
60 導電性ロール(導電性部材の一例)
62 電源(転写電圧印加部材の一例)
70 第一接触部
72 第二接触部
74 清掃ブレード(清掃部材の一例)
90 二次転写ロール(転写部材の一例)
96 電源(転写電圧印加部材の一例)
100 画像形成装置
104 導電性ロール(導電性部材の一例)
110 電源(転写電圧印加部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持され、トナー画像が表面に形成される像保持体と、
回転可能に支持され、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を前記像保持体と対向する転写位置で被転写物に転写させる転写部材と、
前記転写部材に巻き掛けられ、前記転写部材が回転することで前記転写部材と前記像保持体とに挟まれながら周回すると共に、イオン導電性を有する無端状の転写ベルトと、
回転可能に支持され、前記転写部材に対して前記転写位置で前記転写ベルトを挟むように対向して配置される対向部材と、
前記転写位置で、前記転写部材と前記対向部材との間に転写電流が流れるように電圧を印加する転写電圧印加部材と、
前記転写位置とは異なる位置で、前記転写ベルトに前記転写電流とは逆向きの電流が流れるように対象部材との間で電圧が印加される導電性を有する導電性部材と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記対象部材は、前記対向部材であって、
前記導電性部材は、前記転写ベルトを挟んで前記転写部材の反対側に設けられ、
前記導電性部材もしくは前記対向部材の一方に電圧を印加することで、前記導電性部材と前記転写部材との間に前記転写部材を介して電流が流れる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写部材がイオン導電性を有する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記導電性部材は、円柱状とされ、周回する前記転写ベルトに当って従動回転する請求項1〜3の何れか1項に記載された画像形成装置。
【請求項5】
前記転写ベルトの表面に接して前記転写ベルトを清掃する清掃部材が設けられ、
前記清掃部材は、前記転写ベルトと前記像保持体との第一接触部に対して前記転写ベルトの周回方向下流側であって、前記転写ベルトと前記導電性部材との第二接触部に対して前記転写ベルトの周回方向上流側に配置される請求項1〜4の何れか1項に記載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−181344(P2012−181344A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44017(P2011−44017)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】