説明

画像形成装置

【課題】大きな滴のドット径を確保しつつ圧力変動及びメニスカス振動による小さな滴のドット位置ずれやドット抜けによる白スジの発生を低減することができない。
【解決手段】駆動波形Pv1は、各々が液滴を吐出させる複数の吐出パルスP1ないしP3と、複数の吐出パルスP1ないしP3よりも時系列で後に配置された付加パルスP4とを含み、付加パルスP4よりも前に配置された、吐出パルスP1ないしP3によって大滴を吐出させ、吐出パルスP3によって小滴を吐出させ、付加パルスP4は、大滴を吐出させる吐出パルスP1ないしP3とともに選択されたとき、次の駆動周期における小滴の代替滴を吐出させ、単独で選択されたとき、液滴が吐出されないパルスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような画像形成装置において、階調印刷(階調印字)を行なうため、ノズルが連通する圧力発生室と、この圧力発生室の容積を収縮、膨張させる圧力発生手段とを有する液滴吐出ヘッドと、1印刷周期内に複数の駆動パルスを発生する駆動信号発生手段とを備え、1印刷周期内で複数の駆動パルスを選択して圧力発生手段に与えることで大きさの異なる滴を連続して吐出させるものが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、印字命令と非印字命令が交互に繰り返されるときなどのインクのメニスカス残留振動の影響を受けやすいに場合に、液滴の着弾位置がずれたり、余分な液滴を噴射してしまうことなどを防止し、印字品質の高くするため、連続印字時には、1ドット当たりに4つの液滴を噴射する駆動波形1を用い、直前及び直後ともに印字命令がない場合には、1ドット当たりの噴射液滴数が少ない駆動波形2を選択するようにしたものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−041039号公報
【特許文献2】特開2001−277507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、印字命令により液滴を噴射した後、ノズル内に張っているメニスカスに振動が残り、駆動周波数によっては、次の印字命令による液滴の噴射に対して影響を与え、液滴の飛翔速度が変動してドット位置ずれが生じ、あるいは、滴噴射方向が曲がることがある。特に、高速印刷を行うために駆動周波数を高くした場合、印字命令が同じ滴サイズの液滴を連続して吐出させるときには安定した吐出を行うことができるのに対し、異なる滴サイズの液滴を連続して吐出させる場合、例えば大滴を連続して吐出した直後、間を置かず小滴を吐出した場合、ノズルのメニスカスの振動の影響が増幅され、小滴の飛翔速度が変動してドット位置ずれや周辺滴へのマージによる滴の消失が生じるという問題がある。こうした噴射異常(異常吐出)は、滴種変更境界付近に「白スジ」として画像に表れ画像品位を低下させることになる。
【0008】
そこで、特許文献2に開示されている構成にあっては、不吐出を挟む大滴吐出時は、通常の大滴連続吐出時と比べて、パルスの少ない第2の大滴波形を選択することで、メニスカス振動及び圧力変動を低減するようにしている。
【0009】
しかしながら、この特許文献2に開示の構成にあっては、圧力変動及びメニスカス振動を低減するために大滴のドット径を犠牲にしており、上記外乱の低減と大滴のドット径確保の関係がトレードオフの関係になる可能性があるという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、大きな滴のドット径を確保しつつ圧力変動及びメニスカス振動による小さな滴のドット位置ずれやドット抜けによる白スジの発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
1駆動周期ごとに、時系列的に複数の駆動パルスから構成される駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記複数の駆動パルスから吐出させる液滴の滴サイズに応じた1又は2以上の前記駆動パルスを選択する選択手段と、を備え、
前記駆動波形は、各々が液滴を吐出させる複数の吐出パルスと、前記複数の吐出パルスよりも時系列で後に配置された少なくとも1つの付加パルスと、を含み、
前記付加パルスよりも前に配置された、前記複数の吐出パルスの全部又は一部によって第1滴を吐出させ、前記複数の吐出パルスの一部によって第2滴を吐出させ、
前記第1滴は前記第2滴よりも大きな滴サイズの液滴であり、
前記付加パルスは、前記第1滴を吐出させる吐出パルスとともに選択されたとき、次の駆動周期における前記第2滴の代替滴を吐出させ、単独で選択されたとき、液滴が吐出されない駆動パルスである
構成とした。
【0012】
ここで、第1駆動周期で前記第1滴に対応するドットを形成させ、前記第1駆動周期の次の第2駆動周期で前記第2滴に対応するドットを形成するとき、前記第1駆動周期では前記第1滴を吐出させる吐出パルスと共に前記付加パルスを選択し、前記第2駆動周期ではいずれの駆動パルスも選択しない構成とできる。
【0013】
また、前記第1滴は吐出可能な滴サイズのうちの最大サイズの液滴である構成とできる。
【0014】
また、前記第2滴は吐出可能な滴サイズのうちの最小サイズの液滴である構成とできる。
【0015】
また、前記付加パルスは、時系列的に他の駆動パルスの最後尾に配置されている構成とできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、駆動波形は、各々が液滴を吐出させる複数の吐出パルスと、複数の吐出パルスよりも時系列で後に配置された少なくとも1つの付加パルスと、を含み、付加パルスよりも前に配置された、複数の吐出パルスの全部又は一部によって第1滴を吐出させ、複数の吐出パルスの一部によって第2滴を吐出させ、第1滴は第2滴よりも大きな滴サイズの液滴であり、付加パルスは、第1滴を吐出させる吐出パルスとともに選択されたとき、次の駆動周期における第2滴の代替滴を吐出させ、単独で選択されたとき、液滴が吐出されないパルスである構成としたので、付加パルスによって吐出する代替的で第1滴吐出後の次の駆動周期の第2滴によるドットを形成でき、次の駆動周期による第2滴の吐出を行わないようにすることができ、大きな滴のドット径を確保しつつ圧力変動及びメニスカス振動による小さな滴のドット位置ずれやドット抜けによる白スジの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】同画像形成装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向の断面説明図である。
【図4】同液体吐出ヘッドの液室短手方向の断面説明図である。
【図5】同画像形成装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図6】同制御部の印刷制御部及びヘッドドライバの一例を示すブロック説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態における駆動波形の説明図である。
【図8】同駆動波形を用いた滴吐出の第1例の説明に供する説明図である。
【図9】同じく滴吐出の様子を示す模式的説明図である。
【図10】比較例の駆動波形及び駆動波形を用いた滴吐出の説明に供する説明図である。
【図11】同比較例の滴吐出の様子を示す模式的説明図である。
【図12】同駆動波形を用いた滴吐出の第2例の説明に供する説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態における駆動波形の及び滴吐出の一例の説明に供する説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態における駆動波形及び滴吐出の一例の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0019】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0020】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
【0021】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0022】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0023】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0024】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0025】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0026】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0027】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0028】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0029】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0030】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターンで帯電され、この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0031】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0032】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0033】
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【0034】
この液体吐出ヘッドは、流路板101と、この流路板101の下面に接合した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である加圧液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
【0035】
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2個(図3では1列のみ図示)の積層型圧電部材121と、この圧電部材121を接合固定するベース基板122とを備えている。この圧電部材121には、分割しないスリット加工で溝を形成することで複数の圧電柱121A、121Bを形成している。この例では、圧電柱121Aは駆動波形を印加する駆動圧電柱とし、圧電柱121Bは駆動波形を印加しない非駆動圧電柱としている。また、圧電部材121の駆動圧電柱121Aには図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
【0036】
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電部材121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するための液体供給口であるインク供給穴132を形成している。
【0037】
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0038】
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電部材121の圧電柱121A、121Bを接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
【0039】
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
【0040】
圧電部材121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電部材121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電部材121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電部材121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。
【0041】
このように構成した液体吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば駆動圧電柱121Aに印加する電圧を基準電位Veから下げることによって駆動圧電柱121Aが収縮し、振動板102が下降して液室106の体積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後駆動圧電柱121Aに印加する電圧を上げて駆動圧電柱121Aを積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の体積を収縮させることにより、液室106内のインクが加圧され、ノズル104からインク滴が吐出(噴射)される。
【0042】
そして、駆動圧電柱121Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0043】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0044】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU511と、CPU511が実行するプログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0045】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形生成手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパ部材83の移動などを行なう維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511などを備えている。
【0046】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0047】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0048】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像を出力するためドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行なうことも、制御部500で行なうこともできる。
【0049】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を共通駆動波形としてヘッドドライバ509に対して出力する。
【0050】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる共通駆動波形を構成する駆動パルスを選択して吐出パルスを生成し、記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電素子に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0051】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0052】
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図6を参照して説明する。
印刷制御部508は、画像形成時に1印刷周期(1駆動周期)内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部702を備えている。
【0053】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ209の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべきパルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0054】
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714と、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715を備えている。
【0055】
このアナログスイッチ715は、各駆動圧電柱121Aの選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部701からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号M0〜M3をデコーダ713でデコードした結果に応じてアナログスイッチ715がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要のパルス(あるいは波形要素)が通過して(選択されて)駆動圧電柱121Aに印加される。
【0056】
次に、本発明の第1実施形態における駆動波形について図7の説明図を参照して説明する。なお、駆動パルスとは駆動波形を構成する要素としての記録ヘッドのアクチュエータ手段に印加されるパルスを示す用語として、吐出パルスとは圧力発生手段に印加されて液滴を吐出させるパルスを示す用語とし、非吐出パルスとは圧力発生手段に印加されるが滴を吐出させない(ノズル内のインクを流動させる)パルスを示す用語として用いる。
【0057】
駆動波形生成部701からは、図7に示すような駆動波形(共通駆動波形)Pv1が出力される。この駆動波形Pv1は、1印刷周期(1駆動周期)内で、図示しない基準信号に同期して、4つの駆動パルスP1〜P4を時系列で生成した波形である。なお、基準信号は、形成する画像の密度に応じてキャリッジ33の主走査方向位置に対応して出力される信号である。
【0058】
ここで、駆動波形Pv1の駆動パルスP1,P2、P3は、それぞれ液滴を吐出させる吐出パルスであり、吐出パルスP1ないしP3を選択することで大滴が吐出され、吐出パルスP2、P3が選択されることで中滴が吐出され、吐出パルスP3が選択されることで小滴が吐出される。そして、これらの吐出パルスP1ないしP3からなる吐出パルス群よりも時系列で後側であって、駆動波形Pv1の最後尾に駆動パルスP4が配置され、この駆動パルスP4は付加パルスである。
【0059】
この付加パルスP4は、付加パルスP4が単独で選択されたときには液滴が吐出されない非吐出パルス(メニスカスを振動させるだけの微駆動パルス)となるが、大滴用の吐出パルスP1ないしP3とともに選択されたときには、前段の吐出パルスP1ないしP3によるメニスカスの振動との共振によって小滴に相当する滴サイズの液滴(代替滴)を吐出させる吐出パルスとなる。この付加パルスP4によって吐出される代替滴の滴速度は、次の駆動周期で小滴を吐出させたときの着弾位置に着弾する滴速度に設定されている。
【0060】
なお、この駆動波形Pv1においては、本発明における「第1滴」は大滴、「第2滴」は小滴、吐出パルスP1ないしP3が第1滴を吐出させる駆動パルス、吐出パルスP3が第2滴を吐出させる駆動パルスとなる。
【0061】
ここで、付加パルスP4に非吐出パルス及び吐出パルスとしての機能を持たせるには、立ち下がり後のホールド時間Tw、立ち上がり時間Tf、立ち下がり時間Tr、立ち上がり電圧Vf、パルス間隔Tbのパラメータを設定する。これにより、吐出パルスP1ないしP3で吐出される大滴に飛翔中にマージせず、かつ、小滴の滴量に相当する液滴(代替滴)を、前段の大滴より遅れて吐出させることができる。
【0062】
次に、この駆動波形Pv1を用いた滴吐出の第1例について図8を参照して説明する。なお、図8は大滴及び小滴を吐出させたときの説明図である。
ここでは、基準信号でタイミングがとられて、同図(a)に示すように、各駆動周期T1ないしT4毎に上記の駆動波形Pv1が繰り返し生成出力される。一方、同図(b)に示すように、各駆動周期で吐出させる滴サイズに応じて滴制御信号MNが出力され、この滴制御信号MNは、同図(c)に示すように、駆動周期T1では駆動波形Pv1の吐出パルスP1ないしP3を選択し、駆動周期T2では駆動波形Pv1の吐出パルスP1ないしP3及び付加パルスP4を選択し、駆動周期T3では駆動波形Pv1の付加パルスP4を選択し、駆動周期43では駆動波形Pv1の吐出パルスP3を選択する信号である。なお、滴制御信号MNは、前記滴制御信号M0〜M3を時系列化して1つの信号として示すものである。
【0063】
これにより、同図(d)に示すように、駆動周期T1では吐出パルスP1ないしP3によって大滴Da1が吐出され、駆動周期T2では吐出パルスP1ないしP3によって大滴Da2が吐出されるとともに、付加パルスP4によって小滴の代替滴(これを「代替小滴」という。)Ddが吐出され、駆動周期T3では付加パルスP4によって微駆動が行われるだけで滴は吐出されず、駆動周期T4では吐出パルスP3によって小滴(この小滴を「正規小滴」ともいう。」Dcが吐出される。
【0064】
なお、この例では、本発明における「第1駆動周期」は駆動周期T2、「第2駆動周期」は駆動周期T3となる。
【0065】
このとき、大滴Da1、Da2、正規小滴Dcは、いずれも、現駆動周期で紙面上に着弾するが、付加パルスP4によって吐出される代替小滴Ddは、吐出速度との関係で、駆動周期T2の次の駆動周期T3で、正規小滴の目標着弾位置に着弾することになる。
【0066】
なお、上述した付加パルスP4によって吐出される代替小滴Ddの着弾位置を次の駆動周期の正規小滴の目標着弾位置に着弾させる吐出速度は、解像度、ヘッドと紙面とのギャップ、用紙搬送速度、小滴の飛翔速度などによって設定することになる。例えば、搬送方向の解像度を600dpi、紙間ギャップ=1mm、小滴の飛翔速度Vj=7m/s、用紙搬送速度V=1m/sとしたとき、付加パルスP4で吐出させる代替小滴Ddの飛翔速度(吐出速度)Vjを、4.5m/sに設定することで、正規小滴の目標着弾位置に着弾させることができる。
【0067】
ここで、付加パルスP4を持たない駆動波形(吐出パルスP1ないしP3のみで構成された駆動波形)を使用して上述した実施形態と同様な滴吐出を行った場合の比較例について図10を参照して説明する。
【0068】
この比較例においては、図10(b)、(c)に示すように、駆動周期T3で滴制御信号MNは吐出パルスP3を選択する信号となって、吐出パルスP3で正規小滴Dcが吐出されることになる。その他の滴制御信号MNは前記実施形態と同様である。これにより、図10(d)に示すように、駆動周期T1で大滴Da1、駆動周期T2で大滴Da2、駆動周期T3で小滴Dc1、駆動周期T4で小滴Dc2が、それぞれ紙面に着弾する。
【0069】
ところが、大滴Da2を吐出した直後、間を置かず小滴Dc1を吐出した場合、ノズル内インクのメニスカスの振動の影響が増幅され、小滴Dc1の飛翔速度が変動して、例えば目標着弾位置D0からずれた位置に着弾する。あるいは、例えば図11に示すように、飛翔中に先行する大滴Da2にマージしてしまい、目標着弾位置D0に着弾する液滴が消失して白スジが発生することがある。
【0070】
これに対して、上述した実施形態では、付加パルスP4を含む駆動波形Pv1を使用して、大滴の連続吐出後の小滴として現駆動周期における付加パルスP4によって生成する代替小滴で吐出させて次の駆動周期における目標着弾位置に代替小滴を着弾させることができる。
【0071】
つまり、例えば図9に示すように、同一駆動周期内の、吐出パルス群(吐出パルスP1ないしP3)により吐出された大滴Da2と、付加パルスP4により吐出された代替小滴Ddが、飛翔中にマージせず、代替小滴Ddが適度に遅い飛翔速度で吐出することにより、次の駆動周期に相当する隣接ドットを形成する着弾位置に着弾する(隣接ドットを補う)ことができて、上述した比較例のような白スジを低減することができる。
【0072】
ここで、図10に示すように、吐出パルスP3で小滴を形成する場合には、吐出パルスP3は吐出滴体積、吐出滴速度をともに決められた数値に制御するパルスであるために、前述のように大滴Da2を吐出した直後のような外乱がある場合に容易に吐出状態が変動してしまう。これに対して、図8に示すように、付加パルスP4によって代替小滴Ddを次の駆動周期の正規小滴の目標着弾位置に着弾させる場合は、もともとが非吐出パルスであるために大滴Da2を吐出した直後の圧力変動を含む状態にマッチングしてパルス形状を設定でき、また、印加のタイミングも吐出パルス終了後のため最適なタイミングを選定できる。これにより、大滴Da2を吐出した直後の小滴を吐出パルスP3で形成する場合に比べ目標着弾位置への着弾を制御することが容易となる。
【0073】
また、このような代替滴による画像形成は大滴吐出した直後に小滴を形成する場合に常に行うものではなくてもよい。例えば大滴が規定の回数連続した後に小滴を形成する場合だけに行うなど、前滴の吐出による圧力変動が問題となるタイミングで実施すれば足りる。
【0074】
このように、駆動波形は、各々が液滴を吐出させる複数の吐出パルスと、複数の吐出パルスよりも時系列で後に配置された少なくとも1つの付加パルスと、を含み、付加パルスよりも前に配置された、複数の吐出パルスの全部又は一部によって第1滴を吐出させ、複数の吐出パルスの一部によって第2滴を吐出させ、第1滴は第2滴よりも大きな滴サイズの液滴であり、付加パルスは、第1滴を吐出させる吐出パルスとともに選択されたとき、次の駆動周期における第2滴の代替滴を吐出させ、単独で選択されたとき、液滴が吐出されないパルスである構成とすることで、付加パルスによって吐出する代替的で第1滴吐出後の次の駆動周期の第2滴によるドットを形成でき、次の駆動周期による第2滴の吐出を行わないようにすることができ、大きな滴のドット径を確保しつつ圧力変動及びメニスカス振動による小さな滴のドット位置ずれやドット抜けによる白スジの発生を低減することができる。
【0075】
次に、前記駆動波形Pv1を用いた滴吐出の第2例について図12を参照して説明する。なお、図12は中滴及び小滴を吐出させたときの説明図である。
ここでは、基準信号でタイミングがとられて、同図(a)に示すように、各駆動周期T1ないしT4毎に上記の駆動波形Pv2が繰り返し生成出力される。一方、同図(b)に示すように、各駆動周期で吐出させる滴サイズに応じて滴制御信号MNが出力され、この滴制御信号MNは、同図(c)に示すように、駆動周期T1では駆動波形Pvの吐出パルスP2、P3を選択し、駆動周期T2では駆動波形Pvの吐出パルスP2、P3及び付加パルスP4を選択し、駆動周期T3では駆動波形Pvの付加パルスP4を選択し、駆動周期43では駆動波形Pvの吐出パルスP3を選択する信号である。
【0076】
これにより、同図(d)に示すように、駆動周期T1では吐出パルスP2、P3によって中滴Db1が吐出され、駆動周期T2では吐出パルスP2、P3によって中滴Db2が吐出されるとともに、付加パルスP4によって代替小滴Ddが吐出され、駆動周期T3では付加パルスP4によって微駆動が行われるだけで滴は吐出されず、駆動周期T4では吐出パルスP3によって正規小滴Dcが吐出される。
【0077】
このとき、中滴Db1、Db2、正規小滴Dcは、いずれも、現駆動周期で紙面上に着弾するが、付加パルスP4によって吐出される代替小滴Ddは、吐出速度との関係で、駆動周期T2の次の駆動周期T3で、正規小滴の目標着弾位置に着弾することになる。
【0078】
このように、付加パルスよりも前の駆動パルスを大きい滴を吐出する吐出パルスとして使用する限りは、大きい滴と付加パルスによる小さい滴の分離が可能であり、チューニングによって付加パルス(微駆動パルス)による代替滴の吐出が可能となる
【0079】
次に、本発明の第2実施形態における駆動波形及び滴吐出の一例について図13の説明図を参照して説明する。
本実施形態の駆動波形(共通駆動波形)Pv2は、図13(a)に示すように、前記第1実施形態の付加パルスP4に代えて、2つの駆動パルスP41、P42からなる付加パルス14を吐出パルスP3の後側に配置している。
【0080】
この付加パルスP14のうちの駆動パルスP41が単独で選択されたときには非吐出パルスとなるが、大滴用の吐出パルスP1ないしP3とともに付加パルスP14(駆動パルスP41及びP42のいずれも)が選択されたときには、前段の吐出パルスP1ないしP3によるメニスカスの振動との共振によって中滴に相当する滴サイズの液滴(代替的)を吐出させる吐出パルスとなる。この付加パルスP14によって吐出される代替滴の滴速度は、次の駆動周期で中滴を吐出させたときの着弾位置に着弾する滴速度に設定されている。
【0081】
なお、この駆動波形Pv2においては、本発明における「第1滴」は大滴、「第2滴」は中滴、吐出パルスP1ないしP3が第1滴を吐出させる駆動パルス、吐出パルスP2、P3が第2滴を吐出させる駆動パルスとなる。
【0082】
次に、この駆動波形Pv2を用いて大滴及び中滴を吐出させたときの例を上記の図13を参照して説明する。
ここでは、図13(a)に示すように、各駆動周期T1ないしT4毎に上記の駆動波形Pv2が繰り返し生成出力される。一方、同図(b)に示すように、各駆動周期で吐出させる滴サイズに応じて滴制御信号MNが出力され、この滴制御信号MNは、同図(c)に示すように、駆動周期T1では駆動波形Pv2の吐出パルスP1ないしP3を選択し、駆動周期T2では駆動波形Pv2の吐出パルスP1ないしP3及び付加パルスP14(駆動パルスP41及びP42のいずれも)を選択し、駆動周期T3では駆動波形Pv2の付加パルスP14のうちの非吐出パルスP41を選択し、駆動周期T4では駆動波形Pv2の吐出パルスP2、P3を選択する信号である。
【0083】
これにより、同図(d)に示すように、駆動周期T1では吐出パルスP1ないしP3によって大滴Da1が吐出され、駆動周期T2では吐出パルスP1ないしP3によって大滴Da2が吐出されるとともに、付加パルスP14によって中滴の代替滴(これを「代替中滴」という。)Deが吐出され、駆動周期T3では付加パルスP14の非吐出パルス41によって微駆動が行われるだけで滴は吐出されず、駆動周期T4では吐出パルスP2、P3によって中滴(この中滴を「正規中滴」ともいう。)Dbが吐出される。
【0084】
このとき、大滴Da1、Da2、正規中滴Dbは、いずれも、現駆動周期で紙面上に着弾するが、付加パルスP14によって吐出される代替中滴Deは、吐出速度との関係で、駆動周期T2の次の駆動周期T3で、正規中滴の目標着弾位置に着弾することになる。
【0085】
すなわち、この例では、付加パルスを複数のパルスで構成する(あるいは、それぞれを付加パルスとしたときには、複数の付加パルスとする)ことで、代替滴を大きくしている。なお、駆動波形の波形長を短縮するため、上述したように非吐出パルスを付加パルスと併用することが好ましい。
【0086】
また、駆動周期T2において付加パルス14の2つの駆動パルスP41、P42のうちのどちらか一方だけを印加することにより、小滴の代替滴を形成することも可能である。たとえば、駆動パルスP41を小滴の代替滴にマッチングし、駆動パルスP42を駆動パルスP41と合わせて印加したときに中滴の代替滴となるようにマッチングすればよい。これにより、大滴Da2の直後でも小滴、中滴による画像形成が安定してできるようになる。
【0087】
次に、本発明の第3実施形態における駆動波形及び滴吐出の例について図14の説明図を参照して説明する。
本実施形態の駆動波形(共通駆動波形)Pv3は、図14(a)に示すように、時系列で、吐出パルスP21、P22、付加パルスP24,液滴を吐出させる吐出パルスP23の順に各駆動パルスを生成出力する。
【0088】
ここで、吐出パルスP21、P22を選択することで中滴が吐出され、吐出パルスP23が選択されることで小滴が吐出される。そして、吐出パルスP21、P22からなる吐出パルス群よりも時系列で後側の付加パルスP24は、付加パルスP24が単独で選択されたときには液滴が吐出されない非吐出パルスとなるが、中滴用の吐出パルスP21、P22とともに選択されたときには、前段の吐出パルスP21、P22によるメニスカスの振動との共振によって小滴に相当する滴サイズの液滴(代替的)を吐出させる吐出パルスとなる。この付加パルスP4によって吐出される代替滴の滴速度は、次の駆動周期で小滴を吐出させたときの着弾位置に着弾する滴速度に設定されている。
【0089】
なお、この駆動波形Pv3においては、本発明における「第1滴」は中滴、「第2滴」は小滴、吐出パルスP21、P22が第1滴を吐出させる駆動パルス、吐出パルスP23が第2滴を吐出させる駆動パルスとなる。
【0090】
次に、この駆動波形Pv3を用いた滴吐出の一例について中滴及び小滴を吐出させたときの例を上記の図14を参照して説明する。
ここでは、図14(a)に示すように、各駆動周期T1ないしT4毎に上記の駆動波形Pv3が繰り返し生成出力される。一方、同図(b)に示すように、各駆動周期で吐出させる滴サイズに応じて滴制御信号MNが出力され、この滴制御信号MNは、同図(c)に示すように、駆動周期T1では駆動波形Pv3の吐出パルスP21、P22を選択し、駆動周期T2では駆動波形Pv3の吐出パルスP21、P22及び付加パルスP24を選択し、駆動周期T3では駆動波形Pv3の付加パルスP24を選択し、駆動周期T4では駆動波形Pv3の吐出パルスP23を選択する信号である。
【0091】
これにより、同図(d)に示すように、駆動周期T1では吐出パルスP21、P22によって中滴Db1が吐出され、駆動周期T2では吐出パルスP21、P22によって中滴Db2が吐出されるとともに、付加パルスP24によって代替小滴Ddが吐出され、駆動周期T3では付加パルスP24によって微駆動が行われるだけで滴は吐出されず、駆動周期T4では吐出パルスP23によって正規小滴Dcが吐出される。
【0092】
このとき、中滴Db1、Db2、正規小滴Dcは、いずれも、現駆動周期で紙面上に着弾するが、付加パルスP24によって吐出される代替小滴Dcは、吐出速度との関係で、駆動周期T2の次の駆動周期T3で、正規小滴の目標着弾位置に着弾することになる。
【0093】
このように、駆動波形の中間部に付加パルスを配置しても、付加パルスより前にある吐出パルス群より形成される液滴と、付加パルスによる液滴を分離して吐出させることができる。
【0094】
なお、上述した付加パルスを含む駆動波形は駆動波形を設計する上での自由度を下げることとなる。そこで、例えば、装置の環境温度を検出する温度検出手段を備えて、特に高温環境下でのみ付加パルスを含む駆動波形を使用するようにすれば、高温環境以外で使用する駆動波形が煩雑になることを防止できる。
【0095】
なお、本発明に係る画像形成装置は、シリアル型画像形成装置に限らず、ライン形画像形成装置でも適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
500 制御部
508 印刷制御部
701 駆動波形生成部
702 データ転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
1駆動周期ごとに、時系列的に、前記記録ヘッドの圧力発生手段を駆動する複数の駆動パルスから構成される駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記複数の駆動パルスから吐出させる液滴の滴サイズに応じた1又は2以上の前記駆動パルスを選択する選択手段と、を備え、
前記駆動波形は、各々が液滴を吐出させる複数の吐出パルスと、前記複数の吐出パルスよりも時系列で後に配置された少なくとも1つの付加パルスと、を含み、
前記付加パルスよりも前に配置された、前記複数の吐出パルスの全部又は一部によって第1滴を吐出させ、前記複数の吐出パルスの一部によって第2滴を吐出させ、
前記第1滴は前記第2滴よりも大きな滴サイズの液滴であり、
前記付加パルスは、前記第1滴を吐出させる前記吐出パルスとともに選択されたとき、次の駆動周期における前記第2滴の代替滴を吐出させ、単独で選択されたとき、液滴が吐出されない駆動パルスである
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
第1駆動周期で前記第1滴に対応するドットを形成させ、前記第1駆動周期の次の第2駆動周期で前記第2滴に対応するドットを形成するとき、前記第1駆動周期では前記第1滴を吐出させる吐出パルスと共に前記付加パルスを選択し、前記第2駆動周期ではいずれの駆動パルスも選択しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1滴は吐出可能な滴サイズのうちの最大サイズの液滴であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2滴は吐出可能な滴サイズのうちの最小サイズの液滴であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記付加パルスは、時系列的に他の駆動パルスの最後尾に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−183723(P2012−183723A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48355(P2011−48355)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】