説明

画像形成装置

【課題】複数のヘッドタンクから同時に排気するときにヘッドの圧力が不安定になって液垂れや気泡の引き込みが生じて吐出不良を発生させる。
【解決手段】排気部200は、複数のインク室104の排気ポート111が開口する排気室106と、複数のインク室104の排出ポート111を同時に開閉する大気開放弁80と、大気開放弁80を開閉する駆動レバー82及び駆動ピン83と、駆動ピン83が設けられた可撓性のフィルム86で一部の壁面が形成され、排出チューブ112に通じているピン駆動室85と、排気室105とピン駆動室85とを連通するチョーク流路89とを有し、チョーク流路89に液体が介在した状態で、排気ポンプ60で排気流路88を吸引してピン駆動室85の容積を収縮させることで、大気開放弁80が排気ポート111を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置(単なる液体吐出装置を含む)を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を媒体に着弾させる、即ち液滴吐出装置ないし液体吐出装置と称されるものを含む)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、DNA試料、パターニング材料などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
記録ヘッドとして用いる液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)としては、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、液室内に通電によって発熱する発熱体を設けて、発熱体の発熱により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出させるサーマル型ヘッドが知られている。
【0005】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、特に画像形成スループットの向上、すなわち画像形成速度の高速化が望まれており、本体据え置きの大容量のインクカートリッジ(メインタンク)からチューブを介して記録ヘッド上部のヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクと称されるものを含む。)にインクを供給する方式が行なわれている。
【0006】
ところで、ヘッドタンクにはインクカートリッジから樹脂チューブなどを用いてインクを供給するとき、ヘッドタンクの容積を常に100%インクで満たして使用することは困難であり、ヘッドタンク内の上部には空気層が形成される。ヘッドタンク内の空気の量は、樹脂チューブやヘッドタンク壁面からの透気やインクカートリッジの脱着時に混入する気泡によって経時で増加する傾向がある。
【0007】
ここで、ヘッドタンク内の空気の量が少量であれば特に不都合はないが、空気量が多くなり過ぎると、温度変化に対する空気の体積変化量が大きくなり、ある範囲内の負圧に維持されるべきヘッドタンク内圧が許容範囲外となり、ヘッドのノズルからインクが染み出したり、正常な吐出を行うことができなくなったりなる。また、ヘッドタンク内の空気が多いと、ヘッド内にインクと共に空気が混入して、滴吐出ができなくなるなどの不都合も生じる。
【0008】
そのため、ヘッドタンク内の圧力を一定の負圧に保つと同時に、空気が所定量以上にならないようにすることが必要である。
【0009】
そこで、従来、ヘッドへ液体を供給する液体供給流路の途中に設けられて液体中のエアを一時的に蓄えるエア貯留部と、エア貯留部から外部へ至る排気通路を開閉するバルブと、排気通路内の圧力に応じて変形する可撓性部材とを備え、排気通路に生じさせた負圧により、可撓性部材を変形させてバルブを開放すると共に、エア貯留部内のエアを排気通路を介して外部へ排出する排気機構を備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010120263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成にあっては、排気通路に生じさせた負圧(排気圧)により、排気通路の一部に設けた可撓性部材を変形させてバルブ(弁)を開放する構成としているため、バルブが開いた際の排気圧がヘッドの圧力に影響して、ヘッド内にノズルから空気を巻き込みやすいという課題がある。
【0012】
つまり、弁を開くためには排気通路に大きな負圧をかける必要があるが、その場合、弁が開くとその負圧がダイレクトにヘッドに作用する。特に、複数のエア貯留部から同時に排気する場合には必要な負圧が更に大きくなり、ヘッドの圧力を安定保持しながら排気を行うことが困難である。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドの圧力を安定に保持しながら複数のヘッドタンクから同時に排気できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記液体を供給する複数の液体貯留室を有するヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクから空気を排出する排出経路を有する排気手段と、
前記排出経路に接続された吸引手段と、を備え、
前記排気手段は、
前記複数の液体貯留室の排気口が開口する排気室と、
前記複数の液体貯留室の排気口を同時に開閉する弁部材と、
前記弁部材を開閉する弁駆動部材と、
前記弁駆動部材が設けられた可撓性部材で一部の壁面が形成され、前記排出経路に通じている弁駆動室と、
前記排気室と前記弁駆動室とを連通するチョーク流路と、を有し、
前記チョーク流路に液体が介在した状態で、前記吸引手段で前記排出流路を吸引して前記弁駆動室の容積を収縮させることで、前記弁部材が前記排気口を開く
構成とした。
【0015】
ここで、前記チョーク流路は、前記排気室の下部と前記弁駆動室の下部を連通させている構成とできる。
【0016】
また、前記弁駆動室には、前記弁駆動室の容積を増加させる方向に付勢する付勢手段が設けられている構成とできる。
【0017】
また、前記液体貯留室には、液面の上昇によって前記排気口の流体抵抗を上昇させる排気調整弁を備えている構成とできる。
【0018】
また、前記液体貯留室には、液面の位置を検知する液面検知手段が備えている構成とできる。
【0019】
また、前記弁駆動室の容積を検知する容積検知手段を備えている構成とできる。
【0020】
この場合、前記弁駆動室が一定時間収縮状態を継続したことを前記容積検知手段が検知したときに、前記排出流路からの吸引を停止する構成とできる。
【0021】
また、前記排出経路からの吸引停止後、前記弁駆動室の容積が膨張したことを前記容積検知手段が検知することで前記ヘッドタンクからの空気の排出動作が完了したと判断する構成とできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、排気手段は、複数の液体貯留室の排気口が開口する排気室と、複数の液体貯留室の排気口を同時に開閉する弁部材と、弁部材を開閉する弁駆動部材と、弁駆動部材が設けられた可撓性部材で一部の壁面が形成され、排出経路に通じている弁駆動室と、排気室と弁駆動室とを連通するチョーク流路と、を有し、チョーク流路に液体が介在した状態で、吸引手段で排出流路を吸引して弁駆動室の容積を収縮させることで、弁部材が排気口を開く構成としたので、ヘッドの圧力を安定に保持しながら複数のヘッドタンクから同時に排気できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を示す概略平面説明図である。
【図2】同じく概略正面説明図である。
【図3】同じく概略側面説明図である。
【図4】同装置の記録ヘッドの説明に供する要部拡大説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態にヘッドタンクの平面説明図である。
【図6】同ヘッドタンクの正面説明図である。
【図7】排出部の側面説明図である。
【図8】図7のA−A線に沿う断面説明図である。
【図9】図7のB−B線に沿う断面説明図である。
【図10】排気部による排気動作の説明に供するヘッドタンクの正面説明図である。
【図11】排気動作中の排気部の状態を説明する断面説明図である。
【図12】排気動作中の排気部の状態を説明する断面説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態におけるヘッドタンクの正面説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態におけるヘッドタンクの正面説明図である。
【図15】排気部の排気動作の説明に供する断面説明図である。
【図16】排気部の排気動作の説明に供する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の概略平面説明図、図2は同じく概略正面説明図、図3は同じく概略側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、本体フレーム30に立設された左右の側板123L、123Rに横架したガイド部材であるガイドロッド122と、本体フレーム30に横架される後フレーム128に取付けられたガイドレール124とで、キャリッジ120を主走査方向(ガイドロッド長手方向)に摺動自在に保持し、キャリッジ120を図示しない主走査モータとタイミングベルトによってガイドロッド122の長手方向(主走査方向)に移動走査する。
【0025】
このキャリッジ120には、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインク滴を吐出する1又は複数の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド1が搭載され、記録ヘッド1は複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0026】
ここで、記録ヘッド1は、図4に示すように、発熱体基板2と液室形成部材3から構成され、ベース部材20に形成されたインク供給路を介して共通流路7及び液室(個別流路)6に順次供給されるインクを液滴として吐出する。この記録ヘッド1は、発熱体4の駆動によるインクの膜沸騰により吐出圧を得るサーマル方式のものであり、液室6内の吐出エネルギー作用部(発熱体部)へのインクの流れ方向とノズル5の開口中心軸とを直角となしたサイドシュータ方式の構成のものである。
【0027】
なお、記録ヘッドとしては、圧電素子を用いて振動板を変形させ、また、静電力で振動板を変形させて吐出圧を得るものなど様々な方式があり、いずれの方式のものも本発明に係る画像形成装置に適用することができる。
【0028】
一方、キャリッジ120の下方には、記録ヘッド1によって画像が形成される用紙8が主走査方向と垂直方向(副走査方向)に搬送される。図3に示すように、用紙8は、搬送ローラ125と押えコロ126で挟持されて、記録ヘッド1による画像形成領域(印字部)に搬送され、印写ガイド部材128上に送られ、排紙ローラ対127で排紙方向に送られる。
【0029】
このとき、主走査方向へのキャリッジ120の走査と記録ヘッド1からのインク吐出を画像データに基づいて適切なタイミングで同調させ、用紙8に1バンド分の画像を形成する。1バンド分の画像形成が完了した後、副走査方向に用紙8を所定量送り、前述と同様の記録動作を行う。これらの動作を繰り返し行い、1ページ分の画像形成を行なう。
【0030】
一方、記録ヘッド1の上部には吐出するインクを一時的に貯留するためのインク室104(後述)が形成されたヘッドタンク(バッファタンク、サブタンク)101が一体的に接続される。ここでいう「一体的」とは、記録ヘッド1とヘッドタンク101がチューブ、管等で接続されることも含んでおり、どちらも一緒にキャリッジ120に搭載されているという意味である。
【0031】
このヘッドタンク101には、装置本体側の主走査方向の一端部側に設けられるカートリッジホルダなどに着脱自在に装着される各色のインクを収容した液体タンクであるインクカートリッジ(メインタンク)76から液体供給チューブ16を介して所要の色のインクが供給される。
【0032】
また、ヘッドタンク101には排気チューブ112を介して吸引手段として吸引ポンプ60が接続されている。
【0033】
また、装置本体の主走査方向の他端部側には記録ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構31が配置されている。この維持回復機構31は、記録ヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ32と、キャップ32内を吸引する吸引ポンプ34と、吸引ポンプ34で吸引されたインクの廃液を排出する排出経路33などを含み、排出経路33から排出される廃液は本体フレーム30側に配置された廃液タンクに排出される。この維持回復機構31にはキャップ32を記録ヘッド1のノズル面に対して進退移動(この例では昇降)させる移動機構を備えている。また、維持回復機構31には、図示しないが、記録ヘッド1のノズル面をワイピングするワイパ部材をワイピングユニットにて保持してノズル面に対して進退可能に配設している。
【0034】
次に、このインクジェット記録装置に適用した本発明の第1実施形態について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は同実施形態におけるヘッドタンクの平面説明図、図6は同ヘッドタンクの正面説明図である。また、各図は理解を助けるために適宜部品の記載を省略したり、部分的に断面図としたりしている。
【0035】
ヘッドタンク101はY,M,C,Kの4色のインクを収容する液体貯留室であるインク室104Y,104M,104C,104K(区別しないときには、単に「インク室104」といい、区別するときには「Y,M,C,K」のサブ符号を付加する。)が一体的に配置されている。ヘッドタンク101の内部には、記録ヘッド1との接続部の近傍にフィルタ109が設けられ、インクをろ過して異物などを除去したインクを、供給口21を介して記録ヘッド1に供給する。
【0036】
また、ヘッドタンク101の一壁面には凸状に成型された可撓性部材であるフィルム部材107が設けられ、ばね108によってヘッドタンク101の容積を拡大する方向に付勢されている。また、ヘッドタンク101の上部には、ヘッドタンク内の空気量を検知する空気量検知センサ103が設けられている。
【0037】
ここで、空気量検知センサ103は電極対構成であり、二つの電極間の電気抵抗の変化に基づいてインク室104内のインク液面を検知するようになっている。ヘッドタンク101には、前述したように各色の液体供給チューブ16の一端側が接続され、各液体供給チューブ16の他端側はインクカートリッジ76に接続される。インクカートリッジ76は、記録ヘッド1のノズル面よりも下方に配置され、水頭差で記録ヘッド1の内部を適正な負圧に保持している。
【0038】
そして、ヘッドタンク101の上部には各インク室104の空気を排出流路である排出チューブ112を介して排出する排出手段である排出機構(排出部)200が設けられている。
【0039】
次に、この排出部200について図7ないし図9を参照して説明する。なお、各図は図4のA部を拡大したものであり、図7は同排出部の側面説明図、図8は図7のA−A線に沿う断面説明図、図9は図7のB−B線に沿う断面説明図である。
【0040】
排出部200は、各インク室104の上部に設けられた排気口である排気ポート111が開口する、各インク室104に共通の排気室105を有している。この排気室105の上部は部材106により閉じられている。
【0041】
この排気室105内には、各インク室104の排気ポート111を同時に開閉する弁部材である大気解放弁80が設けられている。この大気開放弁80は、シール部材80bが一部に備えられた弁体80aが付勢手段である付勢ばね81によって排気ポート111の開口側に押し付けられる常閉弁である。そして、この大気開放弁80は、下方に配置されたL字型の駆動レバー82によって上方に持ち上げられた時に排気ポート111を開放する。なお、駆動レバー82は支軸82aにて揺動可能に支持されている。
【0042】
また、排気室105は、その下部の開口(排出口)89aからチョーク流路89を介して弁駆動室であるピン駆動室85の下部に連通している。チョーク流路89は、細い管路であり、ヘッドタンク101の壁面に形成した溝の開口部をフィルム86で塞いで形成している。
【0043】
ピン駆動室85には、前記駆動レバー82に対して進退可能に配設され弁駆動部材である駆動ピン83と、この駆動ピン83を駆動レバー82から離間させる方向に付勢する付勢ばね84が設けられている。このピン駆動室85の壁面も可撓性部材である前記フィルム86で形成され、フィルム86が内方に変形することで駆動ピン83が駆動レバー82を押す方向に移動する。
【0044】
なお、ピン駆動室85と排気室105の間には、駆動ピン83が通過する貫通穴が形成されているが、変形自在なシール部材87によってピン駆動室85と排気室105との間はチョーク流路89以外では連通しない構造としている。
【0045】
そして、ピン駆動室85は排気流路88に連通し、排出チューブ112を介して排気ポンプ60で吸引排気できるようにしている。
【0046】
排気ポンプ60としては、ギヤポンプやダイヤフラムポンプなど、停止時には流路を開放するものが好ましいが、例えばチューブポンプのように停止時に流路を閉塞するものであっても、分岐路を設けて大気開放できる構成であれば使用することができる。
【0047】
次に、排気部200による排気動作について図10ないし図12も参照して説明する。なお、図10はヘッドタンクの正面説明図、図11及び図12は排気動作中の排気部の異なる状態を説明する断面説明図である。
【0048】
まず、図10に示すように、インク室104に空気が蓄積することで液面が低下するので、空気量検知センサ103によって液面が所定高さ以下に低下したこと、つまり、インク室104内に空気が一定量以上蓄積したことが検知される。
【0049】
そこで、排気ポンプ60によって排気を開始すると、まず図11に示すように、最初は大気開放弁80が閉じているので、ピン駆動室85の空気が排出される。その結果、フィルム86が内方に引かれることで駆動ピン83が付勢バネ84の付勢力に抗して押し込まれ、図12に示すように、駆動レバー82が矢示方向に揺動し、大気開放弁80が開放される。大気開放弁80が開くことで、各インク室104内の空気が排出ポート111を通じて排気室105に排出される。
【0050】
このとき、排気流量を大きくし過ぎると、インク室104の内部の負圧が大きくなり、記録ヘッド1のノズルから空気を吸い込む不具合が起こる。したがって、排気流量は0.1〜0.2cc/s程度にすることが好ましい。他方、排気流量が小さいと、ピン駆動室85内の負圧が小さくなるので、大気開放弁80が閉じることになる(図11)。大気開放弁80が閉じると、再度ピン駆動室85内の負圧が大きくなるので、大気開放弁80が開きインク室104の排気が行われる。したがって、図11と図12の間の状態を繰り返しながら、インク室104の排気が進行する。
【0051】
本実施形態では空気量検知センサ103を備えているので、空気量検知センサ103の検知結果で排気ポンプ60を停止させることができる。
【0052】
ここで、本実施形態では、複数のインク室104から1つの排気経路(排出ポート111から排気室105、チョーク流路89、ピン駆動室85、排気流路88、排出チューブ112、排気ポンプ60に至る経路)で排気するものである。
【0053】
この排気動作を行うとき、図12に示すように大気開放弁80が完全に開かず、弁体80aがわずかに上昇するのみで、一部のインク室104の排気ポート111が開かない場合が起こりうる。この場合には、排気が終了したインク室104のインクが排気ポート111から排気室105に流れ出す。この流れ出したインクは、チョーク流路89に流れ込む。チョーク流路89にインクが入ることにより、ピン駆動室85内の負圧が急増し、駆動ピン83の押し込み量が最大となり大気開放弁80を完全に上昇させる。これにより、全てのインク室104の排気ポート111が開くので、排気が行われないインク室104をなくすことができる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について図13を参照して説明する。なお、図13は動実施形態におけるヘッドタンクの正面説明図である。
本実施形態では、前記第1実施形態における空気量検知センサ103に代えて、フロート弁110を各インク室104に備えている。
【0055】
このように構成しても、排気ポンプ60の駆動によって排気を行うと、前述のように図11と図12の間の状態を繰り返しながら、各インク室104の排気が進行する。そして、排気が進んでインク室104内のインク液面が上昇すると、フロート弁110によって排気ポート111が塞がれるので、自動的にインク室104と排気室105が遮断される。
【0056】
つまり、記録ヘッド1の負圧を破壊しないために排気流量を小さくしたとき、この排気流量が小さいことに起因して、一部のインク室104の排気ポート111が開かない場合が生じても、排気されたインク室104からフロート弁110によって吸引元が塞がれていくので、その度にピン駆動室85内の負圧が増大し、最終的には全部のインク室104の排気ポート111を開くことができ、排気が行われないインク室104をなくすことができる。
【0057】
次に、本発明の第3実施形態について図14ないし図16を参照して説明する。なお、図14は同実施形態におけるヘッドタンクの正面説明図、図15及び図16は排気部の排気動作の説明に供する異なる状態を示す断面説明図である。
本実施形態では、前記第2実施形態において、ピン駆動室85の壁面を形成している可撓性部材であるフィルム86の変位を検知することで駆動ピン83の位置を検知するための光学センサからなる位置検知センサ91を備えている。
【0058】
つまり、前述したように全てのインク室104の空気がなくなった状態では、排気経路内がチョーク状態となるので、図15に示すようにピン駆動室85は完全に収縮した状態となる。この収縮した時間が一定時間以上継続した場合は、排気が完了したことと判断でき、排気ポンプ60を停止することができる。
【0059】
その後、主に排気ポンプ60側からの流体(空気やインク)の逆流によってピン駆動室85の容積が回復していき、駆動ピン83による駆動レバー82の押圧が弱まり、大気開放弁80が閉まる。
【0060】
したがって、位置検出センサ91で駆動ピン83の位置を検知することで、大気開放弁80が閉まったことを確認できるので、無駄な待ち時間なく印字動作等の次の動作に移行することができる。なお、本実施形態では、ピン駆動室85内に容積を拡大する方向に作用する付勢ばね84が備えられているので、排気ポンプ60を停止した際の駆動ピン85の位置復帰を大きく、確実にすることができる。
【0061】
なお、以上の説明においては、複数のヘッドに異なる色のインクが供給される例で本発明の動作、効果を説明したが、同一色のインクを複数のヘッドに供給する場合や、色ではなく処方の異なるインクを複数のヘッドに供給する場合にも同様に適用することができる。また、複数のノズル列を1ヘッド内に有するヘッドで、1つのヘッドから異なる種類の液体を吐出する場合の液体供給システムについても適用することができる。また、狭義のインクを吐出する画像形成装置に限定されるものではなく、様々な液体を吐出する液体吐出装置(本発明でいう「画像形成装置」に含まれる。)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
16 液体供給チューブ
30 サブタンク
60 排気ポンプ
76 インクカートリッジ(メインタンク:液体タンク)
80 大気開放弁
82 駆動レバー
83 駆動ピン
85 ピン駆動室
86 フィルム(可撓性部材)
88 排気流路
89 チョーク流路
104 インク室(液体貯留室)
105 排気室
111 排気ポート(排気口)
112 排出チューブ
120 キャリッジ
200 排出部(排出機構、排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに前記液体を供給する複数の液体貯留室を有するヘッドタンクと、
前記ヘッドタンクから空気を排出する排出経路を有する排気手段と、
前記排出経路に接続された吸引手段と、を備え、
前記排気手段は、
前記複数の液体貯留室の排気口が開口する排気室と、
前記複数の液体貯留室の排気口を同時に開閉する弁部材と、
前記弁部材を開閉する弁駆動部材と、
前記弁駆動部材が設けられた可撓性部材で一部の壁面が形成され、前記排出経路に通じている弁駆動室と、
前記排気室と前記弁駆動室とを連通するチョーク流路と、を有し、
前記チョーク流路に液体が介在した状態で、前記吸引手段で前記排出流路を吸引して前記弁駆動室の容積を収縮させることで、前記弁部材が前記排気口を開く
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記チョーク流路は、前記排気室の下部と前記弁駆動室の下部を連通させていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記弁駆動室には、前記弁駆動室の容積を増加させる方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記液体貯留室には、液面の上昇によって前記排気口の流体抵抗を上昇させる排気調整弁を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記液体貯留室には、液面の位置を検知する液面検知手段が備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記弁駆動室の容積を検知する容積検知手段を備えていることを特徴とする請求項1なし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記弁駆動室が一定時間収縮状態を継続したことを前記容積検知手段が検知したときに、前記排出流路からの吸引を停止することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記排出経路からの吸引停止後、前記弁駆動室の容積が膨張したことを前記容積検知手段が検知することで前記ヘッドタンクからの空気の排出動作が完了したと判断することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−192618(P2012−192618A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58139(P2011−58139)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】