説明

画像形成装置

【課題】操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の回動動作中の操作部の装置本体からの突出量を小さくし、占有空間を小さくすることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録材Pに画像を形成する装置本体3と、装置本体3を操作するために操作面を上向きにして装置本体3に取り付けられた操作部11と、を有する画像形成装置1は、操作部11を操作する側へ引き出すのと同時に、操作部11を操作する側へ向けるように回動させるヒンジ機構300(300L、300R)を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成部が収納された筐体に操作面を上向きにした操作部が配置された画像形成装置に関し、より詳しくは、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させる構造に特徴を有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成部(例えば電子写真方式又はインクジェット方式)が収納された筐体の上部に画像読取部(例えばフラットベッドスキャナ)を配置し、液晶画面を備えた操作部を、画像読取部の高さ位置に配置した画像形成装置が実用化されている。このような画像形成装置では、一般に、操作する側から画像読取部の読取面へ原稿を載置する際の邪魔にならないように、操作部の上向きの操作面は、読取面よりも低い位置に配置されている。
【0003】
しかし、背丈の高い画像形成装置の筐体の上部に操作面を上向きにした操作部が配置されている場合、例えば小児や車椅子使用者にとって、液晶画面の表示画像を見ながら操作部に各種の設定を行ったり操作したりすることが容易ではない場合がある。このため、通常は操作面が上向きに配置されている操作部を、必要に応じて起立させて、操作する側の低い位置から容易に操作できるようにした画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、本願の図14及び図15に示すように、画像形成装置の筐体の上部に配置された操作部500を、正面側へスライドさせて引き出し(図14(a))、その引き出した位置で下方へ回動させる(図14(b))ようにした画像形成装置が開示される。更に説明すると、特許文献1に記載の画像形成装置は、操作部500の左右中央奥側端部に配置された回動軸で操作部500を下方へ回動可能に支持して、可動範囲の中間位置で保持可能な自在ヒンジ機構504(図15)を有する。又、該画像形成装置は、自在ヒンジ機構504の固定側部材を、操作部500を操作する側へ引き出し可能に支持するためのスライド機構としてスライダ506を有する。該スライダ506は、支持ユニット507に形成された左レール508と右レール509とに案内されて前後方向へ円滑に移動可能である。表示/入力ユニット501を前後に移動させるとき、スライダ506に一体的に回転支持されたレールコロ505が、左レール508と右レール509とに案内される。又、該画像形成装置には、画像形成部の筐体面の内側に、操作部500に一端が接続されて下方へ垂れ下がる束線511の余長部分の移動空間が形成される(図15)。又、操作部500の引き出し経路を塞ぐように配置された画像形成部の筐体面には、引き出し方向に移動可能に束線511を貫通させる細長い開口部510(図15)が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−102143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるスライド機構の場合、次のような課題がある。
【0007】
即ち、自在ヒンジ機構504が操作部500の左右中央奥側端部に配置されており、引き出し操作によって最大引き出し位置(図14(a))まで操作部500が引き出された後、そこから下方へ回動させるようになっている。そのため、回動動作中、操作部500の装置本体からの突出量が大きく、占有空間が大きくなる。よって、操作者が装置本体から離れた位置で作業しなければならないため、作業し難いことがある。
【0008】
従って、本発明の目的は、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の回動動作中の操作部の装置本体からの突出量を小さくし、占有空間を小さくすることのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、記録材に画像を形成する装置本体と、前記装置本体を操作するために操作面を上向きにして前記装置本体に取り付けられた操作部と、を有する画像形成装置において、前記操作部を操作する側へ引き出すのと同時に、前記操作部を操作する側へ向けるように回動させるヒンジ機構を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の回動動作中の操作部の装置本体からの突出量を小さくし、占有空間を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を引き出すと同時に回動させた状態の斜視図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部を最大回動位置まで回動させた状態の斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の要部分解斜視図である。
【図7】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の要部分解斜視図である。
【図8】本発明の一実施例に係る画像形成装置の操作部の(a)要部断面図、(b)底面図である。
【図9】本発明の一実施例に係る画像形成装置のヒンジ機構の一部を詳細に示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施例に係る画像形成装置のヒンジ機構の操作説明図である。
【図11】本発明の一実施例に係る画像形成装置のヒンジ機構の動作説明図である。
【図12】本発明の他の実施例に係る画像形成装置のヒンジ機構の一部を詳細に示す側面図である。
【図13】本発明の他の実施例に係る画像形成装置のヒンジ機構の動作説明図である。
【図14】従来例の操作部の斜視図である。
【図15】従来例の操作部を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0013】
実施例1
1.画像形成装置
図1は、本実施例の画像形成装置1の構成の説明図である。尚、以下の説明において、図1の紙面手前側を画像形成装置1の「前(正面)」、紙面奥側を「後」とする。又、画像形成装置1について左右は、画像形成装置1を正面から見た場合の左右であり、上下は、鉛直方向の上下であるものとする。画像形成装置1の正面側は、通常、操作者が画像形成装置1を操作する側である。
【0014】
図1に示すように、本実施例の画像形成装置1は、中間転写ベルト12の画像担持面の移動方向に沿って、電子写真方式によりトナー像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKを配置した、タンデム型のフルカラー複合機である。
【0015】
画像形成装置1の本体(装置本体)3に収納された第1の画像形成部PYでは、イエロートナー像が形成されて、中間転写ベルト12に一次転写される。第2の画像形成部PMでは、マゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト12上のイエロートナー像に重ねて一次転写される。第3、第4の画像形成部PC、PKでは、それぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト12上のトナー像に位置を重ねて順次一次転写される。
【0016】
中間転写ベルト12に担持された4色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送され、別途二次転写部T2に搬送される記録材Pへ一括して二次転写される。
【0017】
二次転写部T2でトナー像を二次転写された記録材Pは、縦パス部4に収納された定着装置14で加熱及び加圧を受けて、表面にトナー像が定着された後に、排出ローラ15によって排紙トレイ5へ排出される。
【0018】
装置本体3の下部に、給紙カセット2が、正面側へ引き出し可能に配置される。給紙カセット2から1枚ずつ引き出された記録用紙などの記録材Pは、二次転写部T2の手前で待機し、中間転写ベルト12上のトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2へ送り出される。
【0019】
装置本体3の上方には、縦パス部4を介して画像読取部(本実施例ではフラットベッドスキャナ)6が配置される。画像読取部6は、読取面(本実施例ではガラス板)に載置された原稿の下面の画像を光学的に読み取って、画像データに変換するものである。自動原稿給送装置(ADF)7を持ち上げた状態で、読取面6aに原稿を載置することができる。自動原稿給送装置7は、原稿トレイ8に積載した束原稿から、原稿を1枚ずつ分離して読取面6aを通過させて、画像読取部6に原稿を流し読みさせる。
【0020】
操作部11は、画像読取部6の高さ位置に操作面を上向きにして配置されているが、操作する側である正面側へ引き出して下方へ回動させることにより、図1に破線で示す位置に操作面を正面側へ向けて起立させることが可能である。尚、操作部11の操作面は、操作部11上の被操作要素群で形成される主平面であり、本実施例では、後述する液晶表示部102の表面、或いは後述する入力キー群の被押圧部を含む平面で代表される。
【0021】
操作部11の直下の縦パス部4には、排紙ローラ15を含む記録材Pの搬送機構、各種センサ、送風ファンなどが収納されている。
【0022】
装置本体3から出力された記録材Pを積載する積載部としての排紙トレイ5は、装置本体3と画像読取部6との間に配置されて、装置本体3で画像が形成された記録材Pを、正面側から取り出し可能に積載する。
【0023】
2.操作部の基本構成
図2は、本実施例の画像形成装置1の斜視図である。図3は、操作部11の斜視図である。図4は、操作部11を引き出すと同時に回動させた状態の斜視図である。図5は、操作部11を最大回動位置まで回動させた状態の斜視図である。
【0024】
図2に示すように、操作部11は、画像読取部6の読取面6a以下の高さ位置として、読取面6aよりも低い位置で、画像読取部6よりも正面側に配置される。操作部11の下方には、記録材Pの搬送方向において排紙トレイ5の上流側の縦パス部4を覆うように、縦パス部カバー10が配設されている。
【0025】
自動読取モードにおいては、自動原稿給送装置7の原稿トレイ8上に原稿をセットする。手動読取モードにおいては、自動原稿給送装置7を後側へ回動させて上方へ開放することで、画像読取部6の読取面6aにアクスセス可能となる。読取面6aに原稿をセットする操作のアクセス性を妨げないよう、操作部11は、常に読取面6aより低い位置に最上部を位置させている。
【0026】
そして、自動原稿給送装置7の原稿トレイ8(又は画像読取部6の読取面6a)に原稿をセットした後、操作部11を通じて、白黒又はカラーの読取モードや、コピー出力サイズ、記録材Pの種類、コピー枚数などの情報を入力する。
【0027】
操作部11に入力された情報に基づいて、画像読取部6において原稿の画像情報が読み取られる。そして、給紙カセット2内又は開放した手差しトレイ9上に積載された記録材Pが給紙され、装置本体3で画像形成がされ、縦パス部4を経由して排紙トレイ5に排出されて積載される。
【0028】
図3に示すように、操作部11の表示/入力ユニット101には、画像形成装置1の動作状態を表示したり、後述するキー類の代用となるタッチパネル機能を有する液晶表示部102が配置されている。又、表示/入力ユニット101には、コピー動作やプリント動作を開始するためのスタートキー103、動作を中止するためのストップキー104が配置されている。又、表示/入力ユニット101には、プリント枚数やFAX番号、電子メールアドレスなどを入力する数字/アルファベットキー105などが配置されている。これらの入力キー群は、複数のスイッチ作動部材(ボタン)群を有する。
【0029】
図4に示すように、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201によって正面側へ引き出すと同時に回動させることが可能なように支持されている。支持ユニット201は、装置本体3に固定されている。従って、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に対して前後方向に自在に移動可能である。より詳細には、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に対して、後方へ押し込んだ収納位置(第1の位置)と、正面側へ引き出すと同時に回動させた最大回動位置(第2の位置)との間を移動可能である。
【0030】
支持ユニット201には、表示/入力ユニット101を引き出した際の外観品位を向上させるために、装置本体3又は操作部11の外装カバーと同一又は類似の外観色及び/又は表面処理が施された、トレイ様のカバー311が取り付けられている(図4、図5)。
【0031】
本実施例では、表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に沿って正面側へ引き出すと同時に回動させて、支持ユニット201に対し下方へ回動させることで、液晶表示部102を正面側へ向けるように自重にて起立可能である。本実施例では、表示/入力ユニット101が最大回動位置にあるとき、液晶表示部102が水平に対して下方に50度程度の角度になるように設定されている。
【0032】
従って、操作部11が高い位置に設置されていても、例えば低身長又は車椅子使用者などの視線が低い操作者は、操作部11を手前に引き出すと同時に下方へ回動させることにより、液晶表示部102を見易く設定できる。このように、表示/入力ユニット101の角度を変更(チルト)することにより、液晶表示102の視認性及び操作部11の操作性が向上する。
【0033】
又、表示/入力ユニット101は、その最大回動位置において、後方の頂点位置が原稿読取部6の読取面6a以下の位置を保つように、表示/入力ユニット101の正面側が下方に倒れるように回動する。このため、図2に示すように、操作部11の後方で且つ操作部11より高い位置にある画像読取部6の読取面6aへのアクセス性が確保できる。
【0034】
又、表示/入力ユニット101は、画像読取部6よりも正面側で且つ排紙トレイ5より右側へ配置されるため、表示/入力ユニット101をチルトさせても、排紙トレイ5へのアクセス性を確保することが可能である。排紙トレイ5へ積載された記録材Pを正面側へ取り出す際に表示/入力ユニット101が邪魔になる場合は、一時的に、表示/入力ユニット101を上方へ回動させておけばよい。
【0035】
又、表示/入力ユニット101が収納位置にある状態では、図2に示すように、操作部11の正面側の側面と縦パス部カバー10の正面側の側面とが同一面上にあるので、外観品位が向上する。
【0036】
3.ヒンジ機構
図6及び図7はそれぞれ、操作部11の要部分解斜視図である。図8(a)は、操作部11の要部を左右方向に切った断面図(図8(b)中のA−A線断面)である。図8(b)は、後述する操作部ステイを下方から見た図である。図9は、ヒンジ機構の一部の詳細図である。図10は、ヒンジ機構の操作説明図である。図11は、ヒンジ機構の動作説明図である。
【0037】
図6を参照して、支持ユニット201の固定部材202は、図示しない複数の固定ネジによって、画像読取部6及び装置本体3に固定されている。又、図6に示すように、板状のカム部材を有するヒンジ機構としての左側のヒンジ部300Lと右側のヒンジ部300Rは、操作部ステイ312の左右端部に、それぞれネジ309、310で固定される。又、ヒンジ部300R、300Lは、後述するように固定部材202に固定される。操作部ステイ312は、表示/入力ユニット101内の液晶表示部102や、図示しない液晶表示部102や数字/アルファベットキー105などの電気基板(制御基板)などの各ユニットを取り付けるためのものである。これら各ユニットは、固定板320を介して操作部ステイ312に固定される。従って、表示/入力ユニット101は、ヒンジ部300R、300Lを介して、後述するように回動及び引き出し可能に固定部材202に固定される。
【0038】
左側のヒンジ部300Lと右側のヒンジ部300Rはそれぞれ、以下の(1)〜(4)に示す構成・機能を有する。尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lは、右側のヒンジ部300Rと対称の形態を有している。従って、以下、主に右側のヒンジ部300R(以下、単に「ヒンジ部」ともいう。)を例に詳しく説明する。しかし、名称が同じものは、左側のヒンジ部300Lについても、左右対称に設けられることを除いて右側のヒンジ部300Rのものと実質的に同一の構成・機能を有する。
【0039】
(1)ヒンジ部300Rは、板状のカム部材としてのカム板301を有する。図9に示すように、カム板301は、表示/入力ユニット101をスライドさせるための溝部としての、略直線状のカム溝301aを有する。カム溝301aは、表示/入力ユニット101を引き出すと同時に回動させるときに、後述するスライドボス307がガタなく円滑にスライドできる幅を有する。本実施例では、カム溝301aは、ヒンジ部300Rが組み立てられ、表示/入力ユニット101が収納位置にある状態で、その長手方向が略水平方向に延在し、その両端がやや上方に湾曲されている。これにより、後述する回動アーム303の回動に伴って表示/入力ユニット101をスムーズにスライドできるようになっている。カム板301は、ネジ穴301bに通されるネジ309によって操作部ステイ312の右側端部に固定される。
【0040】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lのカム板302は、右側のヒンジ部300Rのカム板301と同一部品を使用している。
【0041】
(2)ヒンジ部300Rは、回動部材としての回動アーム303を有する。図9に示すように、回動アーム303は、略直線状の厚肉板状部材又は棒状部材である。本実施例では、回動アーム303は、ヒンジ部300Rが組み立てられ、表示/入力ユニット101が収納位置にある状態で上側に凸に屈曲されている。回動アーム303の一方の端部側には、後述する回動ボス305aが回動可能に嵌入されて回動アーム303の回動中心を構成する第1の回動穴303aが形成されている。又、回動アーム303の他方の端部側には、回動アーム303を操作部ステイ312に回動可能に接続するための後述する接続回動ボス305bが回動可能に嵌入される第2の回動穴303bを有する。
【0042】
尚、本実施例では、左側のヒンジ部300Lの回動アーム303は、右側のヒンジ部300Rの回動アームと同一部品を使用している。
【0043】
(3)ヒンジ部300Rは、回動アーム303の回動軸を構成する軸状突部としての回動ボス305aを有する。図7に示すように、回動ボス305aは、固定部材202の正面側の右端部に上方に起立して形成された固定部(曲げ部)202aの回動軸穴202bに固定される。そして、回動ボス305aは、固定部材202の内側に配置される回動アーム303の第1の回動穴303aに挿入され、回動アーム303を回動可能に固定部材202に接続する。又、ヒンジ部300Rは、操作部11の回動方向の移動方向を規定する作用部を構成する軸状突部としての接続回動ボス305bを有する。接続回動ボス305bは、操作部ステイ312の接続回動軸穴312aに固定される。そして、接続回動ボス305bは、固定部材202の内側に配置される回動アーム303の第2の回動穴303bに挿入され、回動アーム303を回動可能に操作部ステイ312に接続する。ヒンジ部300Rが組み立てられ、表示/入力ユニット101が収納位置にある状態で、後述するスライドボス307よりも後方に回動ボス305aがあり、回動ボス305aよりも後方に接続回動ボス305bがある。これにより、スライドボス307、回動ボス305aは、固定部材202の正面端部よりに設けられ、接続回動ボス305bは、操作部ステイ312の後端部よりに接続されている。
【0044】
(4)ヒンジ部300Rは、ガイド用突部を構成する軸状突部としてのスライドボス307を有する。図7に示すように、スライドボス307は、固定部材202の正面側の右端部に上方に突起して形成された固定部(曲げ部)202aのガイド用突部穴202cに固定される。スライドボス307は、固定部材202の外側に配置されるカム板301のカム溝301a内にスライド移動可能に挿入(係合)される。スライドボス307は、表示/入力ユニット101を引き出すと同時に回動させるときに、カム板301を介して表示/入力ユニット101のスライド移動方向を規定し、スライドさせる。
【0045】
尚、本実施例では、回動ボス305a、接続回動ボス303b、スライドボス307としては、段ネジを用いた。
【0046】
上述のように左側のヒンジ部300Lは、右側のヒンジ部300Rと対称の形態を有している。即ち、図6に示すように、左側のヒンジ部300Lは、カム板302、回動アーム304、回動ボス306a、接続回動ボス306b、スライドボス308、ネジ310を有する。固定部材202の正面側の左端部には、上方に起立して形成された固定部(曲げ部)202aが形成されている。
【0047】
このように、本実施例では、画像形成装置1は、記録材Pに画像を形成する装置本体3と、装置本体3を操作するために操作面を上向きにして装置本体3に取り付けられた操作部11と、を有する。そして、本実施例では、画像形成装置1は、操作部11を操作する側へ引き出すのと同時に、操作部11を操作する側へ向けるように回動させるヒンジ機構300(300L、300R)を有する。特に、本実施例では、ヒンジ機構300は、上記引き出す方向と略直交する方向における操作部11の両端部において装置本体側に設けられたガイド用突部307を有する。又、ヒンジ機構300は、操作部11の上記両端部に固定され、それぞれにガイド用突部307がその中を移動することで上記引き出す方向への操作部11の移動方向を規定する溝部301aが形成された板状のカム部材301を有する。又、ヒンジ機構300は、操作部11の上記両端部において装置本体側に設けられた回動軸305aを有する。又、ヒンジ機構300は、操作部11の上記両端部においてそれぞれの一端部が回動軸305aに回動可能に取り付けられると共に他端部が操作部11に回動可能に取り付けられたアーム303を有する。そして、操作部11を引き出すときに、操作部11の姿勢は、溝部301aの中(溝部内)を移動するガイド用突部307と、回動軸305aの周りを回動するアーム303とにより決定される。
【0048】
4.動作
次に、表示/入力ユニット101を引き出すと同時に回動させる動作について説明する。
【0049】
図6及び図8(b)に示すように、表示/入力ユニット101には、その筐体の一部である操作部ステイ312の左右中央部の正面側端部の下面(底面)に把手部106が一体的に形成されている。把手部106には、操作者の手指を引っ掛けることができるような凹所106aが形成されている。又、支持ユニット201には、把手部121に対応する配置と形状で切り欠き部203(図6)が形成されている。
【0050】
尚、図2に示す縦パス部カバー10は、操作部11の操作する側の側面に連続するように装置本体3の筐体面を形成している。そのため、この縦パス部カバー10にも、把手部106の凹所106aへ向かう手指の進入経路となる窪み10aが形成されている。
【0051】
このように、本実施例では、操作部11の操作する側の下面には引き出し操作用の把手部106が形成されている。又、本実施例では、操作部11の操作する側の側面に連続するように配置された装置本体3の筐体面に、把手部106へ向かう手指の進入経路となる切り欠き部203が形成されている。
【0052】
図3に示すように、表示/入力ユニット101が支持ユニット201によって収納位置に保持されている場合、把手部106にアクセスすることで、表示/入力ユニット101を支持ユニット201から容易に引き出すと同時に回動させることが可能である。即ち、操作部11は、操作する側へ引き出されると同時に回動し、操作する側から排紙トレイ5を遮蔽する方向(下方)に回動可能である。
【0053】
図10及び図11を参照して更に説明する。図11では、操作部ステイ312、表示/入力ユニット101の図示は省略されている。表示/入力ユニット101は、支持ユニット201に沿って引き出すと同時に、下方へ回動可能とされている。表示/入力ユニット101は、ヒンジ部300R、300Lを介して支持ユニット201によって支持され、収納位置から最大回動位置まで回動し、自重にて最大回動位置に保持される。このように、本実施例では、操作部11を限界まで引き出したとき、操作部11は自重でその位置を保つ。
【0054】
即ち、図11(a)に示す収納位置から表示/入力ユニット101が引き出される際には、固定部材202に固定されたスライドボス307の、操作部ステイ312に固定されたカム板301のカム溝301a内のスライドが開始される。スライドボス307のスライドが開始されると、操作部ステイ312は正面側に向けて移動していく。これと同時に、固定部材202に固定された回動ボス305aを回動軸として、回動アーム303の図中矢印方向への回動が開始される。回動アーム303の回動が開始されると、接続回動ボス303bによる回動アーム303と操作部ステイ312との接続部が上方に持ち上げられていく。これにより、表示/入力ユニット101の支持ユニット201からの引き出し動作が開始される。表示/入力ユニット101が収納位置にあるとき、スライドボス307は、カム溝301aの正面側の端部301a1に突き当たっている。又、表示/入力ユニット101が収納位置にあるとき、回動アーム303は回動可能範囲の一方の限界位置にある(接続回動ボス305bが後側にある)。
【0055】
そして、図10(a)に示すように、表示/入力ユニット101を更に引き出していくと、スライドボス307がカム溝301a内を更にスライドする。これと同時に、回動アーム303が図中矢印方向に更に回動する。回動アーム303が回動することによって、接続回動ボス303bと操作部ステイ312との接続部が最上部を過ぎると、操作部ステイ312は正面側に移動しつつ下方に移動していく。
【0056】
その後、図10(b)、図11(b)に示すように、表示/入力ユニット101は最大回動位置となる。即ち、スライドボス307がカム溝301aの後側の端部301a2に突き当たり、又回動アーム303が回動範囲の他方の限界位置(接続回動ボス305bが正面側にある)まで移動すると、表示/入力ユニット101は最大回動位置となる。最大回動位置まで移動した後は、表示/入力ユニット101は、その自重にてその位置に保持される。
【0057】
このように、本実施例の機構によれば、表示/入力ユニット101は、前後方向に円滑にスライドすると同時に回動し、所定の傾き角度に回動されるので、回動軌跡の占有空間が小さくなる。そのため、操作者が装置本体3により近い位置で操作をすることができるため、操作性の向上が図られる。即ち、本実施例の機構では、操作部11の正面側への引き出し動作をすると同時に、操作部11の上向きの操作面が読取面よりも低い位置まで回動して操作面を正面向きにすることができる。そのため、装置本体3からの突出量が少なく、操作部11の視認性と操作性とを共に高めることができるという効果が得られる。
【0058】
又、特許文献1のような機構では、回動後に操作部500の先端に操作者が不用意にぶつかった時に、操作部500がダメージを受けることがある(図14、図15)。これに対して、本実施例の機構では、操作部11は、回動後は、操作部11自体の自重で最大回動位置に保持される。そのため、例えば操作部11の先端に操作者がぶつかるなどの力が加わっても、操作部11が退避するため、操作部11へのダメージが低減できるという効果が得られる。
【0059】
このように、本実施例によれば、操作面を操作する側へ向けるように操作部を起立させ得る構成において、操作部の回動動作中の操作部の装置本体からの突出量を小さくし、占有空間を小さくすることができる。
【0060】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0061】
図12は、本実施例におけるカム板301を示す。又、図13は、本実施例における最大回動位置にある状態の右側のヒンジ部300Rを示す。尚、実施例1と同様、左側のヒンジ部300Lは、右側のヒンジ部300Rと対称の形態を有している。
【0062】
本実施例では、実施例1におけるカム板301に設けたカム溝301aの後側の端部301a2に、操作部11が最大回動位置にある状態で、スライドボス307の移動を規制する、保持用溝部としての保持用カム溝301cを追加した。
【0063】
保持用カム溝301cは、操作部11を最大回動位置に引出した時にスライドボス307の位置を規制する。カム溝301aと保持用カム溝301cとの間には、溝の内側に向けて突出した突形状部301dが形成されている。この突形状部301dは、操作部11を最大回動位置に引出した時に、正面側乃至上側に向かって突出している。この突形状部301dは、操作部11の先端に操作者がぶつかるなどの力が加わった時は、スライドボス307がこれを乗り越えて保持用カム溝301cからカム溝301aの領域に戻れる程度の突形状を有している。このように、本実施例では、溝部301aの端部に、操作部11を限界まで引き出した位置でガイド用突部307の移動を規制する保持用溝部301cを有する。
【0064】
この保持用カム溝301cにより、操作部11を最大回動位置に引出した時、操作者が操作部11への入力動作を行う時、操作部11が不用意に動くのを防止する効果が得られる。
【0065】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。操作部が引き出されると同時に回動する限りにおいて、上述の実施例の構成の一部又は全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施例でも本発明を実施できる。又、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に限らず、インクジェット方式の画像形成装置でも実施できる。又、本発明は、中間転写ベルトを用いる画像形成装置に限らず、記録材搬送ベルトに担持された記録材へトナー像を転写する画像形成装置でも実施できる。又、本発明は、ベルト部材に沿って複数の感光ドラムを配置したタンデム型のみならず1個の感光ドラムを配置した1ドラム型でも実施できる。
【符号の説明】
【0066】
11 操作部
101 表示/入力ユニット
106 把手部
201 支持ユニット
202 固定部材
300 ヒンジ部
301、302 カム板
301a カム溝
301b 保持用カム溝
303、304 回動アーム
305、306 回動ボス
307、308 スライドボス
312 操作部ステイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する装置本体と、前記装置本体を操作するために操作面を上向きにして前記装置本体に取り付けられた操作部と、を有する画像形成装置において、
前記操作部を操作する側へ引き出すのと同時に、前記操作部を操作する側へ向けるように回動させるヒンジ機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ヒンジ機構は、前記引き出す方向と略直交する方向における前記操作部の両端部において前記装置本体側に設けられたガイド用突部と、前記操作部の前記両端部に固定され、それぞれに前記ガイド用突部がその中を移動することで前記引き出す方向への前記操作部の移動方向を規定する溝部が形成された板状のカム部材と、前記操作部の前記両端部において前記装置本体側に設けられた回動軸と、前記操作部の前記両端部においてそれぞれの一端部が前記回動軸に回動可能に取り付けられると共に他端部が前記操作部に回動可能に取り付けられたアームと、を有し、前記操作部を引き出すときに、前記操作部の姿勢は、前記溝部内を移動する前記ガイド用突部と、前記回動軸の周りを回動する前記アームとにより決定されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記溝部の端部に、前記操作部を限界まで引き出した位置で前記ガイド用突部の移動を規制する保持用溝部を有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記操作部を限界まで引き出したとき、前記操作部は自重でその位置を保つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記操作部の操作する側の下面には引き出し操作用の把手部が形成され、前記操作部の操作する側の側面に連続するように配置された前記装置本体の筐体面に、前記把手部へ向かう手指の進入経路となる切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−234101(P2012−234101A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103883(P2011−103883)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】