説明

画像形成装置

【課題】ヘッドタンク内のインクを十分に攪拌することができず、供給チューブ及びヘッドタンク内のインクの均質化を図れない。
【解決手段】計時手段520をチェックして送液ポンプ241の非稼動時間が予め定めた所定時間以上になったか否かを判別し、送液ポンプ241の非稼動時間が予め定めた所定時間以上になったときには、送液ポンプ241を逆転駆動して、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10に予め設定した設定量のインクを一気に逆送した後、送液ポンプ241を正転駆動してインクカートリッジ10からヘッドタンク35にヘッドタンク35が所定量になるまでインクを一気に送液する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてのインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような画像形成装置において、記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンク(サブタンク、バッファタンクとも称される。)を備え、装置本体側に着脱自在(交換可能)に装着されるメインタンクであるインクカートリッジからヘッドタンクに1本の供給チューブを介して液体を供給する方式のものが知られている。
【0004】
一方、液体の種類としては、例えば染料系インクや顔料系インクがある。また、プリント回路基板に部品の配置や種類を明示するために所要のマークや文字などを印刷する装置にあっては、例えば酸化チタンを顔料として溶剤に懸垂させた液体が用いられている。
【0005】
ところが、これまでのインク供給システムにあっては、供給チューブの材質が透湿性のために、長期間使用しない場合、チューブ内のインクが次第に増粘し、次に使用するときにヘッドに増粘したインクが供給され、正常な吐出が得られないという問題がある。
【0006】
また、顔料系インクは、優れた耐候性を有するが、一方で、色材が溶液に拡散しているために長時間放置する等した場合にはインク中の色材が沈降し、ヘッドタンク内で濃度差が生じるという課題がある。しかも、特に白色系インクの顔料として使用される酸化チタンなどの無機顔料の場合においては、インクが流動していない期間(休止期間)に沈降しやすいという問題がある。
【0007】
そこで、従来、ポンプの正逆転によって液体貯蔵部と液体保持部とを連通する第1及び第2の流路のインクを揺動し、流路の内壁に付着した粘度の高い生成物を再溶解させ又はインク中に回収することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−82500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ポンプを正逆転して液体貯蔵部と液体保持部とを連通する第1及び第2の流路のインクを揺動するだけでは、ヘッドタンク内のインクを十分に攪拌することができず、供給チューブ及びヘッドタンク内のインクの均質化を図れないという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、長期間使用されなかった供給チューブやヘッドタンク内の液体の均質化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液し、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに前記液体を逆送する可逆型の送液手段と、を備え、
前記メインタンクと前記ヘッドタンクとは1つの供給路で接続され、
前記送液手段を駆動して前記液体の送液したときから前記送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、前記送液手段を駆動して前記ヘッドタンクから前記メインタンクに予め設定した設定量の前記液体を一気に逆送した後、前記送液手段を駆動して前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記ヘッドタンクが所定量になるまで前記液体を一気に送液する動作を制御する手段を有している
構成とした。
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液し、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに前記液体を逆送する可逆型の送液手段と、を備え、
前記メインタンクと前記ヘッドタンクとは1つの供給路で接続され、
前記送液手段を駆動して前記液体の送液したときから前記送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、前記送液手段を駆動して前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記ヘッドタンクが所定量になるまで前記液体を一気に送液した後、前記送液手段を駆動して前記ヘッドタンクから前記メインタンクに予め設定した設定量の前記液体を一気に逆送する動作を制御する手段を有している
構成とした。
【0013】
ここで、前記所定量及び前記設定量は、前記ヘッドタンク内の圧力が前記記録ヘッドのメニスカスを保持できる圧力範囲内に収まる量である構成とできる。
【0014】
また、前記ヘッドタンクには液量を検出する液量検出手段を有し、
前記制御する手段は、前記液量検出手段の検出結果に基づいて前記送液及び逆送の動作を制御する
構成とできる。
【0015】
また、前記所定量及び前記設定量は、前記供給チューブの容量よりも多い構成とできる。
【0016】
また、前記ヘッドタンク内には、前記供給チューブからの液体供給口付近に、前記液体の対流を促進する部材を有している構成とできる。
【0017】
また、前記ヘッドタンク内には、前記供給チューブから供給される前記液体の対流を促進する案内流路が設けられている構成とできる。
【0018】
また、前記送液するときの送液速度は、前記メインタンクから前記ヘッドタンクの前記液体を補充供給するときの送液速度よりも速い構成とできる。
【0019】
また、前記送液及び逆送の動作を複数回行う構成とできる。
【0020】
また、前記供給チューブから前記ヘッドタンク内への前記液体の供給口部の液体の流れの方向と直交する方向の断面積は前記供給チューブの液体の流れの方向と直交する方向の断面積より小さい構成とできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る画像形成装置によれば、送液手段を駆動して液体の送液したときから送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、送液手段を駆動してヘッドタンクからメインタンクに予め設定した設定量の液体を一気に逆送した後、送液手段を駆動してメインタンクからヘッドタンクにヘッドタンクが所定量になるまで液体を一気に送液する動作を制御する手段を有している構成としたので、ヘッドタンク内を含めて増粘した液体を確実に流動化させることができ、長期間使用されなかった供給チューブやヘッドタンク内の液体の均質化を図ることができる。
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、送液手段を駆動して液体の送液したときから送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、送液手段を駆動してメインタンクからヘッドタンクにヘッドタンクが所定量になるまで液体を一気に送液した後、送液手段を駆動してヘッドタンクからメインタンクに予め設定した設定量の液体を一気に逆送する動作を制御する手段を有している構成としたので、ヘッドタンク内を含めて増粘した液体を確実に流動化させることができ、長期間使用されなかった供給チューブやヘッドタンク内の液体の均質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】ヘッドタンクの一例を示す模式的平面説明図である。
【図4】同じく図3の模式的正面説明図である。
【図5】インク供給排出系の説明に供する模式的説明図である。
【図6】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図7】ヘッドタンクのインク残量又は負圧に応じた異なる状態の説明に供する模式的説明図である。
【図8】ヘッドタンクのインク残量と負圧の関係の一例の説明に供する説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態における液体流動化制御(処理)の説明に供するフロー図である。
【図10】本発明の第2実施形態における液体流動化制御(処理)の説明に供するフロー図である。
【図11】本発明を適用した具体的事例の第1例の説明に供する説明図である。
【図12】本発明を適用した具体的事例の第2例の説明に供する説明図である。
【図13】本発明を適用した具体的事例の第3例の説明に供する説明図である。
【図14】本発明を適用した具体的事例の第4例の説明に供する説明図である。
【図15】本発明の作用効果の説明に供する模式的説明図である。
【図16】ヘッドタンク内の流動化を促進する構成の異なる例の説明に供する模式的説明図である。
【図17】インクカートリッジ内の流動化を促進する構成の異なる例の説明に供する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、後述する主走査モータによってタイミングベルトを介してキャリッジ主走査方向に移動走査する。
【0025】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0026】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0027】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のメインタンクであるインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0028】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0029】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0030】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、後述する副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0031】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0032】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0033】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0034】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0035】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0036】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0037】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0038】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0039】
次に、ヘッドタンク35の一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的上面説明図、図4は同ヘッドタンクの1つのヘッド分の模式的正面説明図である。
ヘッドタンク35は、インクを保持するための一側部が開口したインク収容部202を形成するタンクケース201を有し、このタンクケース201の開口部は可撓性フィルム203で密閉し、タンクケース201内に配置した弾性部材としてのバネ204によってフィルム203を常時外方へ付勢している。これにより、タンクケース201のフィルム203がバネ204によって外方への付勢力が作用しているので、タンクケース201内のインク残量が減少することによって負圧が発生する。
【0040】
また、タンクケース201の外側には、一端部を支軸202で揺動可能に支持され、タンクケース201側に向けて付勢されている変位部材である検知フィラ205がフィルム状部材203に接着などで固定されている。
【0041】
これにより、フィルム状部材203の動きに連動して検知フィラ205が変位するので、装置本体側に配置された光学センサからなる検知センサ301によって検知フィラ205の変位量を検知することによりヘッドタンク35内のインク残量などを検知することができる。
【0042】
また、タンクケース201の上部には、インクカートリッジ10からインクを供給するための供給口部209があり、供給チューブ36に接続されている。また、タンクケース201の側部には、ヘッドタンク35内を大気に開放する大気開放機構207が設けられている。この大気開放機構207は、ヘッドタンク35内に連通する大気開放路207aを開閉する弁体207b及びこの弁体207bを閉弁状態に付勢するスプリング207cなどを備え、装置本体側の大気開放ソレノイド302によって弁体207bを押すことで開弁されて、ヘッドタンク35内に大気開放状態(大気に連通した状態)になる。
【0043】
また、ヘッドタンク35内のインク残量を検出するための電極ピン208aと208bが取り付けられている。インクは電導性を持っており、電極ピン208aと208bの所までインクが到達すると、電極ピン208aと208b間に電流が流れて両者の抵抗値が変化するため、インク液面高さが所定高さ以下になった、すなわち、ヘッドタンク35の空気量が所定量以上になった、或いは、ヘッドタンク35の液体残量が所定量以下になったことを検出することができる。
【0044】
次に、この画像形成装置におけるインク供給排出系について図5を参照して説明する。
まず、インクカートリッジ(メインタンク)10からヘッドタンク35に対するインク供給は、供給ユニット24の送液手段である送液ポンプ241によって供給チューブ36を介して行なわれる。なお、供給ポンプ241は、チューブポンプなどで構成した可逆型ポンプであり、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給する送液動作と、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを戻す逆送動作とを行なえるようにしている。
【0045】
また、維持回復機構81は、前述したように記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする吸引キャップ82aと、吸引キャップ82aに接続された吸引ポンプ812を有し、キャップ82aでキャッピングした状態で吸引ポンプ812を駆動することで吸引チューブ811を介してノズルからインクを吸引することによってヘッドタンク35内のインクを吸引することができる。なお、吸引された廃インクは廃液タンク100に排出される。
【0046】
また、装置本体側にはヘッドタンク35の大気解放機構207を開閉する押圧部材である大気開放ソレノイド302が配設され、この大気開放ソレノイド302を作動させることで大気解放機構207を開放することができる。さらに、装置本体側にはヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する光学センサからなるセンサ301が設けられている。
【0047】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係る送液及び逆送の制御を実行させるプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0048】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302を駆動するソレノイド駆動部512と、送液ポンプ241を駆動するポンプ駆動部516と、インクカートリッジ10に設けられて不揮発性メモリ(ここでは、EEPROM)521に対するデータの読み出し及び書き込みのための通信を行うカートリッジ通信部522などを備えている。
【0049】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0050】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0051】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0052】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0053】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド33の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド33を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0054】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。このI/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したヘッドタンク35の検知フィラ205を検知する検知センサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号も入力される。
【0055】
また、この制御部500は、送液ポンプ241の非稼働時間を計測する計時手段520を備えている。
【0056】
次に、この画像形成装置におけるインク補充動作について説明する。
この画像形成装置では、ヘッドタンク35を大気開放状態にしてインクカートリッジ10からインクを補充供給する大気開放充填と、大気開放状態にしないでインクを補充供給する通常充填とを行うことができる。
【0057】
まず、大気開放充填動作では、ヘッドタンク35の大気開放機構207を開放状態にする。これにより、ヘッドタンク35は大気開放されることで、バネ1204の復元力によりフィルム状部材203が外方に押されるので、ヘッドタンク35の容量が増加する(負圧発生部が膨張)する。この状態で、送液ポンプ241を正転駆動して、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを送液して補充供給し、電極ピン208a、208bの先端に液面が触れたことを検出して送液を停止する。その後、大気開放弁機構207を閉じてヘッドタンク35内を大気開放から遮断した状態にする。
【0058】
そして、吸引キャップ82aで所要の記録ヘッド34のノズル面をキャッピングして吸引ポンプ812を駆動し、記録ヘッド34のノズル側から吸引を行って、所定量のインクを排出する。あるいは、送液ポンプ241を逆転駆動してヘッドタンク35から所要量のインクをインクカートリッジ10に戻す。これにより、ヘッドタンク35のフィルム状部材203がバネ204の付勢力に抗して内方に変形してヘッドタンク35の容積が減少(負圧発生部が収縮)し、初期負圧が発生する。その後、検知フィラ205の位置をセンサ301によって検知して記憶する。
【0059】
また、大気開放充填動作としては、例えば、ヘッドタンク35内を大気開放した状態で、検知フィラ205によってフィルム状部材203をバネ204に抗して内方側へ押圧してヘッドタンク35の容量を小さくした後、インクカートリッジ10からインクをヘッドタンク35に送液して補充供給する。
【0060】
その後、大気開放弁機構207を閉状態にしてヘッドタンク35内を大気開放から遮断した状態にし、検知フィラ205による押圧を解除することによって、バネ204の付勢力でフィルム状部材203が外方に付勢され、ヘッドタンク35内には負圧が発生する。
【0061】
次に、通常充填動作では、記録ヘッド34から吐出した滴数をソフトカウントしてインク消費量Vを検出する。そして、検出したインク消費量が所要の消費量になったときに、ヘッドタンク35内を大気開放することなく、インクカートリッジ10からインクをヘッドタンク35に送液して所要の充填量だけ補充供給する。なお、このときの充填量は送液ポンプ241の駆動時間で管理することで制御することができる。
【0062】
その後、ヘッドタンク35内のインクが消費するに連れてフィルム状部材203がさらに凹むため、検知フィラ205もそれに連れてヘッドタンク35側に移動(変位)することになる。
【0063】
そこで、通常充填の場合は、この変位レバー204の位置が記憶した元の位置に来たことをセンサ301で読み取って、そこで充填動作を停止するようにしている。これによって、ヘッドタンク35内の容量をほぼ一定にし、通常充填動作直後には元の初期負圧を維持することができるようになる。
【0064】
上述した大気開放充填動作はヘッドタンク35のインク消費量がある一定量以上になった場合にだけ行い、それ以外の場合には通常充填動作を行うようにしている。
【0065】
次に、ヘッドタンク35内のインクの増減による負圧変動について図7及び図8を参照して説明する。
図7(a)はヘッドタンク35が大気開放されて圧力が大気圧(負圧=0)となった状態である。図7(b)は所要量のインクを排出してヘッドタンク35内部が負圧値(−a)となった状態である。図7(c)は、所定のカウント分のインクが消費されてヘッドタンク35内部が負圧値(−b)となった状態である。なお、図7におけるスケール700は、キャリッジ33の位置を検出するエンコーダスケールとエンコーダスケールを読み取るエンコーダセンサからなるリニアエンコーダを模式的に表したものである。
【0066】
図8は大気開放状態からインクの排出量(または、変位レバーの位置)に対するヘッドタンク35内の圧力状態を示している。
記録ヘッド35の滴吐出特性から、適切な負圧値の範囲である(−a〜−b)を設定し、初期負圧形成に必要な排出量、および、通常充電動作が必要となるインク消費量V(滴数カウント値)を設定し、ヘッドタンク35内のインク量A状態からインク量B状態の範囲に保てばよいことが分かる。
【0067】
次に、本発明の第1実施形態における液体流動化処理について図9のフロー図を参照して説明する。
まず、計時手段520をチェックして送液ポンプ241の非稼動時間が予め定めた所定時間以上になったか否かを判別し、送液ポンプ241の非稼動時間が予め定めた所定時間以上になったときには、送液ポンプ241を逆転駆動して、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10に予め設定した設定量のインクを一気に逆送した後、送液ポンプ241を正転駆動してインクカートリッジ10からヘッドタンク35にヘッドタンク35が所定量になるまでインクを一気に送液する。なお、「一気に」とは「途切れなく連続的に」という意味である。
【0068】
このとき、ヘッドタンク35の検知フィラ205が図7(b)に示す位置になるまでインクカートリッジ10からヘッドタンク35に一旦インクを補充した後、送液ポンプ241を逆回転駆動して設定量のインクをヘッドタンク35からインクカートリッジ10に一気に逆送し、その後、送液ポンプ241を正転駆動してインクカートリッジ10からヘッドタンク35にヘッドタンク35が所定量になるまでインクを一気に送液する。
【0069】
あるいは、ヘッドタンク35の検知フィラ205が図7(c)に示す位置になるまでヘッドタンク35からインクカートリッジ10に一旦インクを逆送して、そこからインクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを所定量になるまで一気に送液し、さらに所定量までインクカートリッジ10にインクを逆送する。
【0070】
ここで、送液時の「所定量」及び逆送時の「設定量」は、いずれも、前記ヘッドタンク内の圧力が前記記録ヘッドのメニスカス保持できる圧力範囲内に収まる量とすることで、印刷中の送液、逆送動作を行うこともできる。また、所定量及び設定量は、供給チューブ36の容量よりも多い量とすることで、増粘したインクを確実に流動化することができる。なお、所定量と設定量とは、これらの条件を満たしていれば、同じで量であっても、異なる量であってもよい。
【0071】
そして、この逆送及び送液動作を予め定めた設定回数(1回以上複数回でもよい。)繰り返したか否かを判別し、設定回数分繰り返したときには、送液ポンプ241の非稼動時間を計測する計時手段520をリセットし、非稼働時間の計測を再開する。
【0072】
このように、送液手段を駆動して液体の送液したときから送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、送液手段を駆動してヘッドタンクからメインタンクに予め設定した設定量の液体を一気に逆送した後、送液手段を駆動してメインタンクからヘッドタンクにヘッドタンクが所定量になるまで液体を一気に送液する動作を制御する手段を有している構成とすることで、ヘッドタンク内を含めて増粘した液体を確実に流動化させることができ、長期間使用されなかった供給チューブやヘッドタンク内の液体の均質化を図ることができる。
【0073】
次に、本発明の第2実施形態における液体流動化処理について図10のフロー図を参照して説明する。
まず、計時手段520をチェックして送液ポンプ241の非稼動時間が予め定めた所定時間以上になったか否かを判別し、送液ポンプ241の非稼動時間が予め定めた所定時間以上になったときには、送液ポンプ241を正転駆動して、インクカートリッジ10からヘッドタンク10に所定量のインクを一気に送液した後、送液ポンプ241を逆転駆動してヘッドタンク35からインクカートリッジ10に予め設定した設定量のインクを一気に逆送する。
【0074】
そして、この逆送及び送液動作を予め定めた設定回数(1回以上複数回でもよい。)繰り返したか否かを判別し、設定回数分繰り返したときには、送液ポンプ241の非稼動時間を計測する計時手段520をリセットし、非稼働時間の計測を再開する。
【0075】
このように、送液手段を駆動して液体の送液したときから送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、送液手段を駆動してメインタンクからヘッドタンクに所定量の液体を一気に送液した後、送液手段を駆動してヘッドタンクからメインタンクに予め設定した設定量の液体を一気に逆送する動作を制御する手段を有している構成とすることで、ヘッドタンク内を含めて増粘した液体を確実に流動化させることができ、長期間使用されなかった供給チューブやヘッドタンク内の液体の均質化を図ることができる。
【0076】
ここで、供給ポンプ241の非稼動時間の閾値となる所定時間は例えば1ヶ月であるが、所定時間は、インクや供給チューブ36、ヘッドタンク35の耐乾燥性に応じて設定することが好ましい。また、インクの乾燥度合いは外部環境(特に、温度や相対湿度)によっても影響を受けるため、ポンプ非稼働時間として、環境に応じて重み付けた時間を用いることも有効である。また、装置内部の計時手段520は、装置の電源状態(電源オン、オフ)にかかわらず常時供給ポンプ241の非稼動時間を計測する、あるいは、装置の電源がオン状態のとき(通電時)の供給ポンプの非稼動時間を計測してこれを累積した値が所定時間を経過したか否かを判別するようにすることもできる。
【0077】
次に、上記の処理を適用した場合の具体的な事例について図11ないし図14を参照して説明する。
先ず、図11に示す第1例は、放置が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)未満である場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ印字が終了し、供給ポンプ241による供給動作を行った後、次に印字指示が1ヶ月を経過する前に与えられた場合であり、このときには、ヘッドタンク35内のインクを流動させるための供給ポンプ241による送液及び逆送動作は行われない。
【0078】
次に、図12に示す第2例は、放置が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)以上である場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ印字が終了し、供給ポンプ241による供給動作を行った後、そのまま放置されて1ヶ月を経過したことから供給ポンプ241を駆動して送液及び逆送動作を行わせて流路内のインクを流動させ、その後1ヶ月経過前に印字指示が与えられた場合である。
【0079】
次に、図13に示す第3例は、インクの補充供給が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)以上停止した場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ、印字中に供給ポンプ241による供給動作を行ない、印字が終了し、その後、印字が何度か行なわれたが供給ポンプ241による供給動作が行われないまま1ヶ月が経過したことから、供給ポンプ241を駆動して送液及び逆送動作を行わせて流路内のインクを流動させ、その後1ヶ月経過前に印字指示が与えられた場合である。
【0080】
次に、図14に示す第4例は、インクの補充供給が所定期間(所定時間、ここでは1ヶ月とする。)以上停止した場合で、電源オン中の供給ポンプの非稼動時間を計測する場合の例である。つまり、印字指示が与えられて印字が行なわれ、印字中に供給ポンプ241による供給動作を行ない、印字が終了し、その後、印字が何度か行なわれ、最終的には電源がオフ状態にされた。そして、その後、再度、電源がオン状態にされて印字が行われたが、供給ポンプ241による供給動作が行われないまま、電源オン中で供給ポンプ241を停止している時間を累積した累積時間が1ヶ月を経過したことから、供給ポンプ241を駆動して送液及び逆送動作を行わせて流路内のインクを流動させ、その後1ヶ月経過前に印字指示が与えられた場合である。
【0081】
このように、この実施形態においては、ヘッドタンク35や供給チューブ36などのインク供給経路内でのインクの滞留時間を供給ポンプ241の非稼動時間として計測し、この計測結果が所定時間以上になったときには、供給ポンプ241を駆動して流路内のインクを流動させるようにしているので、流路内で乾燥などによって粘度が上昇したインクを流動化することができて、供給不全の発生を低減ないし抑制することができるようになる。
【0082】
次に、メインタンクからヘッドタンクに送液する所定量について供給経路内におけるインクの増粘現象と併せて図15を参照して説明する。
まず、通常の使用状態では、図15(a)に示すようにインク600はインクカートリッジ10からヘッドタンク35に至る供給経路内で均一(均質)な状態にある。
【0083】
しかしながら、長期間使用せずに放置された場合に、図15(b)に示すように、供給チューブ36の透湿性などによりインクの水分が蒸発し、インク600は供給チューブ36内で粘度が上昇して増粘したインク601となる。このままの状態で使用すると、供給チューブ36内の増粘したインク601がヘッドタンク35内に入り、それがヘッド34から吐出ことによって吐出特性に影響を及ぼしたり画像濃度が変化したりする。
【0084】
また、長期間使用せずに放置した場合に、図15(c)に示すように、インク600の顔料成分が沈降して濃度分布ができた状態のインク602となる。顔料の沈降は、ヘッドタンク35内、インクカートリッジ10及び供給チューブ36内で発生する。このままの状態で使用すると、ヘッド34から吐出されるインクの顔料濃度が高く、目詰まりする可能性が高くなる。また、インクカートリッジ10から供給は、供給チューブ36が接続された部分に近い領域、即ちこの例ではインクカートリッジ10上部から供給されるため、顔料濃度の低いインクが優先的に補給され、インクカートリッジ10内のインクの顔料濃度は上昇し、結果的に得られる画像濃度が変化する。
【0085】
そこで、上述した実施形態のように供給ポンプ241による送液及び逆送を実行することで、供給経路内のインクは攪拌されて、均一な濃度となり、図15(b)、(c)の状態を同図(a)の状態に戻すことが可能できる。
【0086】
このとき、供給チューブ36内のインク全体が一旦インクカートリッジ10内部に入り、インクカートリッジ10側から新鮮なインクが供給チューブ36に供給されることが必要である。したがって、送液及び逆送を行うときのストローク(インク体積:所定量)を供給経路の内容積以上の量に設定することが好ましい。これにより、供給チューブ内のインクを新鮮なインクに置換することができる。
【0087】
次に、送液ポンプによる送液及び逆送動作とヘッドタンクの圧力範囲との関係について説明する。
まず、前述したようにメインタンク10とヘッドタンク35との間でインクを送液及び逆送することによって、ヘッドタンク35の負圧値が変動する。このとき、ヘッド34のメニスカスを破壊しない圧力範囲であること、つまり、メニスカスを保持できる圧力範囲であることが必要である。
【0088】
メニスカスを破壊しない圧力範囲は、インクの特性やノズル径、ノズル面の溌インク性によって左右されるが、通常は、±3kPaほどであり、その範囲で送液及び逆送を行う。より好ましくは、図8で説明した適正負圧範囲(−a〜−b)で送液及び逆送を行う。このようにすれば、ヘッド34の滴吐出特性が一定条件化で実施されるので、たとえば印刷中に実行することも可能になる。
【0089】
したがって、前述したように、送液時の「所定量」及び逆送時の「設定量」は、いずれも、前記ヘッドタンク内の圧力が前記記録ヘッドのメニスカス保持できる圧力範囲内に収まる量とすることが好ましい。
【0090】
次に、上述した送液及び逆送動作を実施することによる他の作用効果について説明する。
例えば、画像形成装置の製造から出荷段階では装置内にインクは充填されないが、ヘッド34内部の濡れ性を上げて使用前のインクを初期充填を行うときの充填性を向上するため、ヘッドタンク35内に無色の液体(充填液)を充填した状態で出荷される場合が多い。
【0091】
そして、使用前にインクの初期充填動作を実行するが、インクカートリッジ10からヘッドタンク35にインクを供給しつつ記録ヘッド34のノズルから充填液を排出する。このとき、十分に充填液を排出しないとインクの濃度が薄くなるため、複数回繰り返す必要があり、インクを無駄に排出してしまうことになる。
【0092】
ここで、本発明のような送液及び逆送動作を実施することで、充填液はインクカートリッジ10内のインクも含む多量のインクと混合することが可能であり、完全にノズルから排出しなくてもインク濃度の低下を抑えることができ、無駄にインクを排出する必要が無くなる。
【0093】
また、別の効果として、前述したように、通常使用状態においては、ヘッドタンク35からインクが消費された分をインクタンク35から間欠的に補充することで、ヘッドタンク35内のインク量を一定にしているが、インクカートリッジ10から補充動作を行ってもヘッドタンク35内に所定量のインクが補充されないときインクカートリッジ10のインクエンド(又はインクニアーエンド)と判定することが行われる。
【0094】
ここで、送液の目標をヘッドタンク35の通常満タン状態よりも過剰な状態に設定して実行すれば、同様にインクタンク35内のインクがなくなったことを検知して、その後一定量のインクを逆送してヘッドタンク35内を通常満タン状態にすれば、インクタンク35内には若干のインクを保有したまま、まもなくエンド状態になることを予め検知することが可能となり、ユーザーが新しいインクカートリッジ10を準備する時間的余裕ができるという利点もある。
【0095】
次に、ヘッドタンク35内におけるインク流動性を高める構成について図16を参照して説明する。
図16(a)に示すように、ヘッドタンク35の供給チューブ36からの供給口部209や、ヘッドタンク35内の液面より下方(ヘッド34側)で、ヘッドタンク35の中心ではなく端部に配置している。これにより、ヘッドタンク35に送液したときにヘッドタンク35の収容部202ないで矢印801で示すような渦流が形成され、ヘッドタンク35内のインクを効率的に攪拌することができる。
【0096】
この場合、図16(b)に示すように、供給口部209の収容部202に開口する開口部209a付近に攪拌を促す攪拌促進手段としての円弧状に湾曲した整流板802を設けることによって更に渦流801が発生し易くなる。この整流板802はヘッドタンク35の中心からの同心円の一部の形状を有することが好ましい。
【0097】
また、図16(c)に示すように、供給口部209の収容部202に開口する開口部209aを先細る形状、特に供給チューブ36より細くする。つまり、液体の供給口部の液体の流れの方向と直交する方向の断面積は供給チューブの液体の流れの方向と直交する方向の断面積より小さくすることで、流速が加速され、より強い渦流を発生させることができて、撹拌効率をさらに向上できる。
【0098】
次に、メインタンクであるインクカートリッジ10内におけるインク流動性を高める構成について図17を参照して説明する。
上述したようにヘッドタンク35からインクカートリッジ10にインクを逆送する構成においては、インクカートリッジ10側も上述したヘッドタンク35と同様に撹拌効率を向上させることが好ましい。
【0099】
例えば、図17(a)に示すように、インクカートリッジ10内に供給口部240から天面10aに沿って延びて供給口部240が設けられた側壁面に対向する側壁面に沿って下方に湾曲したインク供給経路221を設けることで、インクを逆送したときにインクカートリッジ10内でインクの対流を促進することができる。
【0100】
また、図17(b)に示すように、インクカートリッジ10内に供給口部240から供給口部240が設けられた側壁面から内底面に向かって湾曲したインク供給経路221を設けることでも、インクを逆送したときにインクカートリッジ10内でインクの対流を促進することができる。
【0101】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0102】
「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0103】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0104】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0105】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0106】
10 インクカートリッジ(メインタンク)
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 ヘッドタンク
36 供給チューブ
81 維持回復機構
241 送液ポンプ
500 制御部
600 ホスト(情報処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液し、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに前記液体を逆送する可逆型の送液手段と、を備え、
前記メインタンクと前記ヘッドタンクとは1つの供給路で接続され、
前記送液手段を駆動して前記液体の送液したときから前記送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、前記送液手段を駆動して前記ヘッドタンクから前記メインタンクに予め設定した設定量の前記液体を一気に逆送した後、前記送液手段を駆動して前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記ヘッドタンクが所定量になるまで前記液体を一気に送液する動作を制御する手段を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を供給するヘッドタンクと、
前記記録ヘッドに供給する液体を収容する交換可能なメインタンクと、
前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記液体を送液し、前記ヘッドタンクから前記メインタンクに前記液体を逆送する可逆型の送液手段と、を備え、
前記メインタンクと前記ヘッドタンクとは1つの供給路で接続され、
前記送液手段を駆動して前記液体の送液したときから前記送液手段を駆動することなく所定の時間が経過したときには、前記送液手段を駆動して前記メインタンクから前記ヘッドタンクに前記ヘッドタンクが所定量になるまで前記液体を一気に送液した後、前記送液手段を駆動して前記ヘッドタンクから前記メインタンクに予め設定した設定量の前記液体を一気に逆送する動作を制御する手段を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記所定量及び前記設定量は、前記ヘッドタンク内の圧力が前記記録ヘッドのメニスカス保持できる圧力範囲内に収まる量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ヘッドタンクには液量を検出する液量検出手段を有し、
前記制御する手段は、前記液量検出手段の検出結果に基づいて前記送液及び逆送の動作を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定量及び前記設定量は、前記供給チューブの容量よりも多いことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ヘッドタンク内には、前記供給チューブからの液体供給口付近に、前記液体の対流を促進する部材を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ヘッドタンク内には、前記供給チューブから供給される前記液体の対流を促進する案内流路が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記送液するときの送液速度は、前記メインタンクから前記ヘッドタンクの前記液体を補充供給するときの送液速度よりも速いことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記送液及び逆送の動作を複数回行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記供給チューブから前記ヘッドタンク内への前記液体の供給口部の液体の流れの方向と直交する方向の断面積は前記供給チューブの液体の流れの方向と直交する方向の断面積より小さいことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−240284(P2012−240284A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111990(P2011−111990)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】