説明

画像形成装置

【課題】一次転写ローラ14として剛体のローラを使用したタンデム型の画像形成装置で、二次転写部T2で転写抜けを生じることを低減できる構造を実現する。
【解決手段】各一次転写ローラ14を各感光ドラム10に対して、中間転写ベルト16の回転方向下流にずらして配置する。且つ、下流側のステーションほど一次転写ローラ14の中間転写ベルト16に対する侵入量を小さくする。これにより、トナー像が多く重なる下流のステーションほど、一次転写ローラ14と感光ドラム10との間に作用する圧力を低減して、トナーの凝集を生じにくくし、二次転写部T2で転写抜けが生じることを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術を利用した、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関し、特に、複数の画像形成ステーションを並べて配置したタンデム型の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、カラー画像を高速かつ高画質に形成することを目的として、所謂フルカラーのタンデム機が提案されている。このタンデム機の代表的なものとしては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成ステーションを互いに並列的に配置した構造が挙げられる。この構造では、各画像形成ステーションにて順次形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー像を、中間転写ベルト上に一旦、多重に転写(一次転写)する。その後、この中間転写ベルトから記録材上に一括して転写(二次転写)する。そして、この記録材上に形成されたトナー像を定着することによって、フルカラーや白黒(モノクロ)の画像を形成する。
【0003】
また、一次転写部は、トナー像が形成される感光ドラムと中間転写ベルトを介して一次転写ローラを配置することにより構成されるが、この一次転写ローラとして金属ローラを使用した構造が知られている(特許文献1参照)。金属ローラのような剛体のローラを使用した場合、ローラ自体に弾性を有さないため、中間転写ベルトの厚さのみを介して感光ドラムに対向させると、ローラにより感光ドラムを損傷させてしまう可能性がある。このため、剛体のローラを使用する場合、感光ドラムに対してローラを下流にずらすようにする。これにより、中間転写ベルトの弾性を利用して、ローラが感光ドラムを損傷させることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−259639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タンデム型の画像形成装置の場合、中間転写ベルト上に順次トナー像が重ねて転写されるため、下流の画像形成ステーションほど感光ドラムと一次転写ローラとの間でトナー像に作用する圧力が高くなる傾向となる。即ち、トナー像がない時の感光ドラムと一次転写ローラとの間の圧力が各画像形成ステーションで同じとした場合、重ねられるトナー像が多い分、下流の画像形成ステーションでトナー像に作用する圧力が高くなる。
【0006】
トナー像に高い圧力が作用するとトナーが凝集し、二次転写部で記録材に転写する際に転写抜け(転写ボソ)が生じ易くなる。即ち、高い圧力が作用することによりトナー像の一部でトナーが集まって塊が生じ、この塊部分が記録材に転写されない現象が生じる。このような現象は、地合いの悪い(表面の平滑度が低い)記録材を使用した場合に生じ易くなる。使用環境によっては、このような記録材を使用する頻度が多い場合もあり、記録材の種類に拘らず転写抜けを低減できる構造が望まれる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、一次転写ローラとして剛体のローラを使用したタンデム型の画像形成装置で、二次転写部で転写抜けを生じることを低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転する無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトの回転方向に並べて配置される第1像担持体及び第2像担持体と、前記第1像担持体にトナー像を形成する第1トナー像形成手段と、前記第2像担持体にトナー像を形成する第2トナー像形成手段と、前記第1像担持体と前記中間転写ベルトを介して対向する位置に配置され、転写電圧が印加されることにより前記第1像担持体に形成された第1トナー像を前記中間転写ベルトに転写する剛体の第1転写ローラと、前記第2像担持体と前記中間転写ベルトを介して対向する位置に配置され、転写電圧が印加されることにより前記第2像担持体に形成された第2トナー像を、前記第1トナー像に重ねて前記中間転写ベルトに転写する剛体の第2転写ローラと、を備え、前記中間転写ベルトに重ねて転写された前記第1トナー像及び前記第2トナー像を二次転写部で記録材に転写する画像形成装置において、前記第1転写ローラ及び前記第2転写ローラは、それぞれ、対向する像担持体の半径をR、転写ローラの半径をr、前記像担持体と前記転写ローラとの中心間距離をdとしたときに、d>R+rとなるように、前記像担持体に対して前記回転方向下流にずらして配置され、且つ、前記第1像担持体と前記第2像担持体とにそれぞれ前記中間転写ベルト側で接する仮想平面に直交する方向に関し、前記第2転写ローラが前記仮想平面に対して前記第2像担持体に近づく侵入量が、前記第1転写ローラが前記仮想平面に対して前記第1像担持体に近づく侵入量よりも小さい、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2転写ローラの侵入量を第1転写ローラの侵入量よりも小さくしているため、第2転写ローラと第2像担持体との間に作用する圧力を、第1転写ローラと第1像担持体との間に作用する圧力よりも小さくできる。このため、第1トナー像と第2トナー像とが重ねられた状態で第2転写ローラと第2像担持体との間を通過しても、これらトナー像に過大な圧力が作用することを防止して、トナーの凝集を生じにくくし、二次転写部で転写抜けが生じることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】感光ドラムに対する一次転写ローラの位置決め構成を示す斜視図。
【図3】本実施形態の一次転写部を示す模式図。
【図4】感光ドラムと一次転写ローラとの間の圧力分布を示す模式図。
【図5】トナーの凝集化を説明するための模式図。
【図6】豹柄の発生メカニズムを説明するための図。
【図7】中間転写ベルトと一次転写ローラとの間で生じる電界の方向を説明するための模式図。
【図8】(a)は一次転写ローラに対する中間転写ベルトの巻き付き量が小さい場合の、(b)は同じく巻き付き量が大きい場合の、一次転写部下流における中間転写ベルトの表面電位を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。なお、各図面において同一の符号を付したものは、同一の構成又は作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0012】
[画像形成装置]
まず、図1を用いて本発明の対象となる画像形成装置の概略構成について説明する。画像形成装置1は、所謂タンデム型の中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdを有する。本実施形態の場合、これらの画像形成ステーションは、中間転写ベルト16の回転方向(矢印β方向)上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に配置されている。
【0013】
本実施の形態において、各画像形成ステーションは、矢印α方向に回転する像担持体である感光ドラム10a、10b、10c、10dをそれぞれ有する。ここで、これら各感光ドラムの2つを取り出して、上流に配置される感光ドラムを第1像担持体、下流に配置される感光ドラムを第2像担持体とする。これら各感光ドラムの周囲には、電子写真用デバイスが順次配設されている。
【0014】
例えば、感光ドラムの回転方向に、一次帯電器11a、11b、11c、11d、露光装置12a、12b、12c、12d、現像装置13a、13b、13c、13d、クリーニング装置15a、15b、15c、15dが配置されている。また、これら各感光ドラム10a、10b、10c、10dは、中間転写ベルト16の回転方向に並べて配置される。以下、各画像形成ステーションの基本的構成はほぼ同じであるため、必要に応じて添え字を省略して説明する。
【0015】
一次帯電器11は、感光ドラム10の表面を所定の電位に帯電させる。露光装置12は、所定の電位に帯電された感光ドラム10の表面を露光して、この表面に静電潜像を形成する。現像装置13は、各色成分トナーが収容されて感光ドラム10の表面に形成された静電潜像をトナーにより可視像化(トナー像と)する。感光ドラム10上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト16に順次一次転写される。クリーニング装置15は、感光ドラム10上の残留トナーを除去する。
【0016】
これら一次帯電器11、露光装置12、現像装置13によりトナー像形成手段を構成する。また、上述の第1像担持体に相当する感光ドラムにトナー像を形成するトナー像形成手段を第1トナー像形成手段とし、第2像担持体に相当する感光ドラムにトナー像を形成するトナー像形成手段を第2トナー像形成手段とする。
【0017】
各感光ドラム10から中間転写ベルト16にトナー像を一次転写するために、感光ドラム10a、10b、10c、10dと中間転写ベルト16を介して対向するそれぞれの位置に一次転写ローラ14a、14b、14c、14dを配置している。ここで、上述の第1像担持体に相当する感光ドラムと対向する一次転写ローラを第1転写ローラとし、第2像担持体に相当する感光ドラムと対向する一次転写ローラを第2転写ローラとする。これら各一次転写ローラ14にはそれぞれ所定の転写電圧が印加される。これにより、各画像形成ステーションにて感光ドラム10上に形成された各色成分のトナー像は、一次転写部T1a、T1b、T1c、T1dで順次中間転写ベルト16に一次転写される。
【0018】
中間転写ベルト16上に転写された重畳トナー像は、二次転写部T2で記録材Pに一括転写(二次転写)させる。二次転写部T2は、中間転写ベルト16のトナー像担持面側に配置される二次転写外ローラ24と、この二次転写外ローラ24と中間転写ベルト16を介して対向する2次転写内ローラ22によって構成される。そして、二次転写外ローラ24に所定の転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト16上に担持された重畳トナー像が記録材Pに転写される。
【0019】
なお、二次転写内ローラ22は、例えば、EPDMゴムからなり、ローラ径が20mm、ゴム厚0.5mmとなるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定される。一方、二次転写外ローラ24は、例えば、NBRゴムやEPDMゴム等からなる弾性層と芯金からなり、ローラ径が24mmになるように形成されている。二次転写外ローラ24には高圧電源が取り付けられており、印加バイアスは可変となっている。
【0020】
記録材Pは、記録材が収容された不図示のカセット或いはトレイから所定のタイミングでピックアップローラにより搬送される。ピックアップローラにて繰り出された記録材Pは、レジストローラ26により中間転写ベルト16に転写されたトナー像とタイミングを合わせて、二次転写部T2へ搬送される。
【0021】
記録材に転写されたトナー像は、定着装置Aで加熱、加圧されることにより記録材P上に定着される。二次転写後の中間転写ベルト16上の残留トナーや紙粉は、中間転写ベルト16の二次転写部T2の下流に配置された中間転写ベルトクリーニング装置25により除去される。これら各装置(各部)の動作は、制御部Cで制御される。
【0022】
ここで、本実施形態の中間転写体である中間転写ベルト16は、例えば、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂または各種ゴム等にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたものが用いられる。また、その体積抵抗率が10〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚みは例えば0.04〜0.1mm程度のフィルム状の無端状のベルトで構成されている。また、その表面抵抗率は、10〜1014Ω/□とすることが好ましい。
【0023】
このように構成される中間転写ベルト16は、複数の張架ローラによって張架された状態で所定の速度で循環駆動(回転)されている。具体的には、二次転写内ローラを兼用する駆動ローラ22は、定速性に優れたモータにより駆動されて中間転写ベルト16を回転させる。また、アイドラローラ20、21は、各感光ドラム10の配列方向両側で中間転写ベルト16を支持する。本実施形態では、一次転写ローラ14aの中間転写ベルト16の回転方向上流に配置されたアイドラローラ20を上流張架ローラとする。また、最下流に配置された一次転写ローラ14dの下流に隣接して配置されたアイドラローラ21を下流張架ローラとする。
【0024】
また、テンションローラ23は、中間転写ベルト16に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト16の蛇行を防止する補正ローラとして機能する。なお、テンションローラ23に対するベルトテンションは3〜10kgf(≒30〜100N)程度になるように構成されている。
【0025】
また、各一次転写ローラ14は、剛体のローラであり、材質がSUMあるいはSUSの金属ローラで構成されている。そして、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっている。これにより、各々の感光ドラム10上のトナー像が中間転写ベルト16に順次、静電吸引され、中間転写ベルト16上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。なお、金属ローラはスラスト方向にストレートの形状であり、ローラ径は6〜10mm程度のもので構成されている。また、本実施形態の一次転写ローラ14の対象となる剛体のローラは、表面が金属面である金属ローラ以外に、例えば、金属ローラの表面に薄いゴム層を設けたもので、ほぼ剛体として扱えるものも含む。
【0026】
[一次転写部]
次に、本実施形態の一次転写部の構成について、図1に加えて図2及び図3を参照して説明する。本実施形態では、上述のように一次転写ローラ14として剛体のローラである金属ローラを使用している。このため、図1に示すように、各一次転写ローラ14は、それぞれ感光ドラム10に対して下流にずらして配置している。また、一次転写ローラ14の感光ドラム10に対する位置をそれぞれ規制して、後述するように、各一次転写ローラ14の侵入量を下流側の画像形成ステーションほど小さくなるようにしている。以下、具体的に説明する。
【0027】
まず、図2に示すように、一次転写ローラ14を回転自在に支持する軸受30を感光ドラム10の画像形成が行われない軸方向両端部へ突き当てる構成を採用することにより、感光ドラム10と一次転写ローラ14との表面間の距離を規制している。即ち、軸受30は、不図示の装置の固定の部分に感光ドラム10に対する遠近動自在に配置され、感光ドラム10に向けて付勢されている。また、軸受30は、中間転写ベルト16の幅方向に外れる位置で、一次転写ローラ14の回転軸30bの軸方向両端部を支持している。そして、軸受30が中間転写ベルト16を跨いで感光ドラム10の軸方向両端部外周面に当接することにより、一次転写ローラ14の位置決めを図っている。
【0028】
軸受30の感光ドラム10側の周縁部には、感光ドラム10の軸方向両端部外周面の外径と同じかこの外径よりも僅かに大きい曲率半径を有する切欠30aが形成されている。このため、この切欠30aが感光ドラム10の両端部外周面に当接することにより、軸受30の位置決めが安定して図られる。
【0029】
また、各一次転写ローラ14の各感光ドラム10に対する、中間転写ベルト16の回転方向に関する位置を、次のように規制している。まず、図3に示すように、それぞれ、対向する感光ドラムの半径をR、一次転写ローラの半径をr、感光ドラムと一次転写ローラ14との中心間距離をdとする。このときに、d>R+rとなるように、各一次転写ローラ14が各感光ドラム10に対して、それぞれ中間転写ベルト16の回転方向下流にずらして配置される。
【0030】
且つ、各一次転写ローラ14の中間転写ベルト16に対する侵入量を、下流側の画像形成ステーションほど小さくなるようにしている。ここで、一次転写ローラ14の侵入量とは、図1及び図3に示すように、各感光ドラム10と中間転写ベルト側で接する仮想平面Sに直交する方向に関し、一次転写ローラ14が仮想平面Sに対して感光ドラム10に近づく量である。言い換えれば、一次転写ローラ14が中間転写ベルト16を仮想平面Sよりも感光ドラム10側に押し付ける量が、侵入量に相当する。
【0031】
そして、本実施形態では、下流側の第2転写ローラが仮想平面Sに対して第2像担持体に近づく侵入量が、上流側の第1転写ローラが仮想平面Sに対して第1像担持体に近づく侵入量よりも小さくなるようにしている。即ち、各一次転写ローラ14の侵入量を下流側の画像形成ステーションほど小さくなるように、各一次転写ローラ14の各感光ドラム10に対する位置を規制している。
【0032】
例えば、図3に示すように、感光ドラム10と一次転写ローラ14との間の距離eを、上流のステーションから順に、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mmに設定する。また、一次転写ローラ14が感光ドラム10に対して下流にオフセットするオフセット量fを全て6mmに設定する。このオフセット量fは、感光ドラム10の中心軸から中間転写ベルト16に引いた垂線と、中間転写ベルト16の回転方向に関する一次転写ローラ14の中心軸との距離である。
【0033】
上述の距離eは、0.5〜2mmで適宜下流のステーションほど小さくなるように設定しても良い。また、上述のオフセット量fは、2〜10mmに設定しても良く、上述の条件を満たせば、各ステーションでオフセット量を異ならせても良い。
【0034】
また、本実施形態の場合、一次転写ローラ14に対して中間転写ベルト16が巻き付く量が、下流のステーションほど大きくなるようにしている。具体的には、下流の一次転写ローラ14ほど外径が大きくなるようしている。即ち、下流の第2転写ローラに対して中間転写ベルト16が巻き付く量が、上流の第1転写ローラに対して中間転写ベルト16が巻き付く量よりも大きくなるように、第2転写ローラの外径を第1転写ローラの外径よりも大きくしている。このため、本実施形態では、最下流の一次転写ローラ14dの外径を最も大きくしている。
【0035】
更に、一次転写ローラ14dの下流に隣接する下流張架ローラであるアイドラローラ21の仮想平面Sに直交する方向に関する位置を、仮想平面Sよりも各感光ドラム10から離れる方向にずらしている。そして、最下流の一次転写ローラ14dに対する中間転写ベルト16の巻き付き量がより大きくなるようにしている。
【0036】
[トナー]
次に、本実施形態で使用するトナーについて説明する。本実施形態では、現像剤のトナー粒子として、オイルレス定着を達成するためにワックス成分を含有する粉砕トナー(ワックス分散型粉砕トナー)を使用している。このようなトナー粒子は、バインダ樹脂、ワックス、着色剤、荷電制御剤を混練したのち、粉砕、分級して得られる。なお、生成法はこの手法に限るものではなく、混練冷凍粉砕法等で作製しても構わず、又、他の添加物が入っていても構わない。何れにしても、本実施形態のようなワックス成分を含有する粉砕トナーは、その他の例えば重合トナーに比べ、比較的安価に作成可能であるが、その作成方法からワックス成分がトナー表層近傍に存在しやすい。このため、現像スリーブにワックスが染み出しやすく、結果として、トナーの凝集度が高い傾向にある。
【0037】
本実施形態では、凝集度が15〜50%のワックス分散型粉砕トナーを使用している。次に、トナーの凝集度の測定方法について説明する。試料(トナー)の流動特性を測定する一手段として凝集度が用いられ、この凝集度の値が大きいほど試料の流動性は悪いと判断する。測定装置としては、パウダーテスター(細川ミクロン社製)を用いる。
【0038】
測定方法としては、振動台に200メッシュ、100メッシュ、60メッシュのふるいを目開の狭い順位、すなわち、60メッシュのふるいが最上位にくるように200メッシュ、100メッシュ、60メッシュのふるい順に重ねてセットする。このセットした60メッシュのふるい上に正確に秤量した試料5gを加え、振動台への入力電圧を21.7Vになるようにし、その際の振動台の振幅が60〜90μmの範囲に入るように調整し(レオスタット目盛約2.5)、約15秒間振動を加える。その後、各ふるい上に残った試料の重量を測定して次式に基づいて凝集度を導出する。なお、試料は23℃、60%RHの環境下で約12時間放置したものを用い、測定環境は23℃、60%RHとする。
【0039】
【数1】

【0040】
このように構成される本実施形態によれば、凝集度が大きくなりやすい15〜50%のワックス分散型粉砕トナーを使用しても、二次転写部で転写抜け(転写ボソ)が生じることを低減できる。即ち、本実施形態の場合、一次転写ローラ14の侵入量を下流のステーションほど小さくしているため、一次転写ローラ14と感光ドラム10との間に作用する圧力を下流のステーションほど小さくできる。このため、重ねられるトナー像が多くなる下流のステーションで、これらトナー像が一次転写ローラ14と感光ドラム10との間を通過しても、これらトナー像に過大な圧力が作用すること防止できる。そして、トナーの凝集を生じにくくし、二次転写部で転写抜けが生じることを低減できる。
【0041】
この点について、図4及び図5を参照して説明する。この転写ボソと呼ばれる現象は、特に地合いの悪い転写材で発生することが確認されており、中間転写ベルト16上のトナー像が記録材Pにうまく転写されず、局所的に転写抜けが発生してしまう現象である。この現象は各種の原因によって発生することが分かっており、その1つとして、感光ドラム10と一次転写ローラ14との間に働く圧力(ピーク圧)に感度があることが確認されている。
【0042】
図4は感光ドラム10と一次転写ローラ14との間における圧力分布を示している。この圧力分布は、感光ドラム10と一次転写ローラ14との位置関係によって変わる。即ち、一次転写ローラ14の侵入量が大きいほど、感光ドラム10と一次転写ローラ14との間(一次転写部T1)に作用する圧力が大きくなる傾向となる。そして、図5に示すように、一次転写部T1に作用する圧力により、中間転写ベルト16上に転写されたトナー像の一部が局所的(例えば破線で囲んだ部分)に凝集し易い。このように凝集したトナーの塊は、二次転写部T2において記録材にうまく転写されず、転写抜けしてしまうおそれがある。特に、凝集度が15%〜50%であるワックス分散型粉砕トナーを使用している本実施形態においては、トナーの凝集が発生し易く、一次転写部に作用する圧力を適切に管理しないと転写抜けが生じ易くなる。
【0043】
また、本実施形態のようにタンデム型の構成の場合、下流側のステーションほどトナー像が多く重ねられる。このため、下流側のステーションほどトナーの凝集が生じ易い。そこで、上述のように、下流のステーションほど一次転写ローラ14の侵入量を小さくすることにより、下流のステーションほど一次転写部T1で作用する圧力を小さくしている。そして、下流のステーションであってもトナーの凝集を生じにくくし、上述の転写ボソの発生を低減している。
【0044】
一方、感光ドラム10と一次転写ローラ14との間の圧力(ピーク圧)が弱すぎると、次述するように、一次転写部下流で豹柄と呼ばれる現象が生じる可能性がある。次に、この豹柄について図6ないし図8を参照して説明する。
【0045】
まず、豹柄の発生メカニズムについて説明する。図6は、例えば、スポンジローラのように表層に弾性層を有する一次転写ローラ14Aの一次転写部下流における豹柄の発生過程を示す説明図である。まず、図6(a)に示すように、一次転写部下流での中間転写ベルト16の電位が高くなり過ぎると、感光ドラム10と中間転写ベルト16との間で異常放電が発生する。このときトナー画像は異常放電発生箇所で縞模様になる。次に異常放電箇所は中間転写ベルト16の移動にともなって図6(b)のように下流側へ移動する。そして、異常放電箇所が十分下流側へ移動すると、再び異常放電の発生条件を満たすため図6(c)のように異常放電が起き、縞模様ができる。図6(a)〜図6(c)の過程を繰り返すことにより、「豹柄」と呼ばれる画像ムラが発生する。これは、本実施形態のように一次転写ローラとして金属ローラを使用した場合も同様である。
【0046】
ここで、一次転写部下流での中間転写ベルト16の電位が高くなり過ぎる理由について説明する。図7に示すように、一次転写ローラ14と中間転写ベルト16との接触領域では、一次転写ローラ14から中間転写ベルト16の方向へ働く電界と、中間転写ベルト16から一次転写ローラ14の方向へ働く逆電界が発生している。このような接触領域では一次転写ローラ14から中間転写ベルト16へトナー担持電荷とそれ以外の余剰電荷が供給されるが、逆電界の効果によって余剰電荷は一次転写ローラ14へ戻される。そのため、トナー担持電荷のみがトナーとペアとなって中間転写ベルト16の下流側へ移動していく。
【0047】
このとき、十分な接触領域を確保できないと逆電界が発生せず、中間転写ベルト16内へ余剰電荷が流れ込み過ぎるため、図8(a)に示すように、一次転写部下流での中間転写ベルト16の電位が高くなり易い状態となり、豹柄が発生する。これに対して、一次転写ローラ14と中間転写ベルト16との接触領域を確保すると、逆電界の効果により余剰電荷が一次転写ローラ14に戻され、図8(b)に示すように、一次転写部下流での中間転写ベルト16の電位が高くなることを防止できる。そして、豹柄の発生を防止できる。また、このような余剰電荷は下流側のステーションほど溜まり易く、より豹柄が発生し易い。したがって、下流側のステーションほど接触領域を十分に確保する必要がある。
【0048】
また、上述したように下流側のステーションほど一次転写ローラ14と中間転写ベルト16との間に作用する圧力を小さくした場合、何ら対策を施さないと、下流側のステーションほど豹柄が生じ易い傾向となる。即ち、単に一次転写ローラ14の中間転写ベルト16に対する侵入量を小さくすると、一次転写ローラ14と中間転写ベルト16との接触領域が狭くなる。このため、この侵入量が小さくなる下流側のステーションほど、豹柄が生じ易い傾向となる。
【0049】
そこで、本実施形態の場合、下流側のステーションほど、一次転写ローラ14に対して中間転写ベルト16が巻き付く量を大きくして、下流側のステーションほど一次転写ローラ14と中間転写ベルト16との接触領域を確保するようにしている。そして、下流側のステーションで、一次転写ローラ14と中間転写ベルト16との間で逆電界を発生させて、余剰電荷を一次転写ローラ14に戻し易くしている。この結果、下流のステーションでも豹柄が発生することを低減できる。
【0050】
なお、豹柄の発生を低減することのみに着目すれば、一次転写ローラ14に対する中間転写ベルト16の巻き付け量を全ステーションで大きくすることも考えられる。但し、中間転写ベルト16の巻き付け量が全ステーションで大きくなると、ベルト走行性が不安定になるため、細線などの位置ずれ等の画像不良が発生する可能性がある。このため、本実施形態のように、豹柄の発生し易さに応じて、下流のステーションほど巻き付き量が大きくなるようにすることが、ベルト走行の安定性の観点から好ましい。
【0051】
このように本実施形態の場合、下流側のステーションほど、一次転写ローラ14の侵入量を小さくすると共に、一次転写ローラ14に対して中間転写ベルト16が巻き付く量を大きくしている。この結果、転写ボソを低減することと、豹柄の発生を抑えることとの両立を図れる。
【0052】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図9を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、中間転写ベルト16に対する一次転写ローラ14の侵入量を下流のステーションほど小さくなるように設定した。これに対して本実施形態では、上流側の画像形成ステーションPa、Pb、Pcの一次転写ローラ14の侵入量をほぼ同じとし、最下流の画像形成ステーションPdの一次転写ローラ14の侵入量を他のステーションよりも小さくしている。
【0053】
このため、本実施形態では、最下流の画像形成ステーションPdの感光ドラム10dが第2像担持体に、一次転写ローラ14dが第2転写ローラに、一次帯電器11d、露光装置12d、現像装置13dが第2トナー像形成手段に相当する。一方、上流側の画像形成ステーションPa、Pb、Pcの何れかの感光ドラム10が第1像担持体に、一次転写ローラ14が第1転写ローラに、一次帯電器11、露光装置12、現像装置13が第1トナー像形成手段に相当する。
【0054】
また、一次転写ローラ14に対する中間転写ベルト16の巻き付け量に対しても同様としている。即ち、上流側の画像形成ステーションPa、Pb、Pcでの巻き付け量はほぼ同じとし、最下流の画像形成ステーションPdの巻き付け量を他のステーションよりも大きくしている。
【0055】
このために本実施形態では、一次転写ローラ14dの下流に隣接する下流張架ローラであるアイドラローラ21の仮想平面Sに直交する方向に関する位置を、上流張架ローラであるアイドラローラ20よりも各感光ドラム10から離れる方向にずらしている。各画像形成ステーションの一次転写ローラ14の外径は同じとしている。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0056】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図10を用いて説明する。上述の第2の実施形態では、下流張架ローラであるアイドラローラ21の位置をずらすことにより、最下流の一次転写ローラ14dに対する中間転写ベルト16の巻き付き量を大きくした。これに対して本実施形態では、最下流の一次転写ローラ14dの外径を他のステーションの一次転写ローラ14の外径よりも大きくすることにより、中間転写ベルト16の巻き付き量を大きくしている。アイドラローラ21の位置は、アイドラローラ21の外周面が仮想平面Sと接する位置としている。その他の構造及び作用は、上述の第2の実施形態と同様である。
【0057】
<他の実施形態>
中間転写ベルト16に対する各一次転写ローラ14の侵入量は、軸受30を付勢するバネなど、各一次転写ローラ14を各感光ドラム10方向に付勢する総圧で管理しても良い。この場合、下流ステーションほどバネ圧を弱く設定すればよい。この場合も、上流側ステーションPa、Pb、Pcのバネ圧は同じで、最下流のステーションPdのみバネ圧を小さく設定しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1・・・画像形成装置、10a、10b、10c、10d・・・感光ドラム(第1像担持体、第2像担持体)、14a、14b、14c、14d・・・一次転写ローラ(第1転写ローラ、第2転写ローラ)、16・・・中間転写ベルト、20・・・アイドラローラ(上流張架ローラ)、21・・・アイドラローラ(下流張架ローラ)、P・・・記録材、S・・・仮想平面、T1a、T1b、T1c、T1d・・・一次転写部、T2・・・二次転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの回転方向に並べて配置される第1像担持体及び第2像担持体と、
前記第1像担持体にトナー像を形成する第1トナー像形成手段と、
前記第2像担持体にトナー像を形成する第2トナー像形成手段と、
前記第1像担持体と前記中間転写ベルトを介して対向する位置に配置され、転写電圧が印加されることにより前記第1像担持体に形成された第1トナー像を前記中間転写ベルトに転写する剛体の第1転写ローラと、
前記第2像担持体と前記中間転写ベルトを介して対向する位置に配置され、転写電圧が印加されることにより前記第2像担持体に形成された第2トナー像を、前記第1トナー像に重ねて前記中間転写ベルトに転写する剛体の第2転写ローラと、を備え、
前記中間転写ベルトに重ねて転写された前記第1トナー像及び前記第2トナー像を二次転写部で記録材に転写する画像形成装置において、
前記第1転写ローラ及び前記第2転写ローラは、それぞれ、対向する像担持体の半径をR、転写ローラの半径をr、前記像担持体と前記転写ローラとの中心間距離をdとしたときに、d>R+rとなるように、前記像担持体に対して前記回転方向下流にずらして配置され、
且つ、前記第1像担持体と前記第2像担持体とにそれぞれ前記中間転写ベルト側で接する仮想平面に直交する方向に関し、前記第2転写ローラが前記仮想平面に対して前記第2像担持体に近づく侵入量が、前記第1転写ローラが前記仮想平面に対して前記第1像担持体に近づく侵入量よりも小さい、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2転写ローラに対して前記中間転写ベルトが巻き付く量が、前記第1転写ローラに対して前記中間転写ベルトが巻き付く量よりも大きくなるように、前記第2転写ローラの外径を前記第1転写ローラの外径よりも大きくした、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2転写ローラの前記回転方向下流に隣接して配置され、前記中間転写ベルトを張架する下流張架ローラを有し、
前記第2転写ローラに対して前記中間転写ベルトが巻き付く量が、前記第1転写ローラに対して前記中間転写ベルトが巻き付く量よりも大きくなるように、前記下流張架ローラの前記仮想平面に直交する方向に関する位置を、前記仮想平面よりも前記第1像担持体及び前記第2像担持体から離れる方向にずらした、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1トナー像形成手段及び前記第2トナー像形成手段で使用するトナーは、凝集度が15〜50%である、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1転写ローラ及び前記第2転写ローラは、金属ローラである、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−247756(P2012−247756A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121915(P2011−121915)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】