説明

画像形成装置

【課題】転写ベルトを張架しているローラの位置変更による蛇行修正だけでなく、転写ベルトユニットの位置を調整することにより蛇行を抑制する画像形成装置を提供する。
【解決手段】制御部83は、転写ベルトの通紙時と非通紙時の移動量の差を求め、その絶対値が第1の閾値以上であるか否かを判定する。第1の閾値以上であれば、転写ベルトユニット位置調整モータ76を駆動し、第1の閾値未満になるように、感光体ドラム22に対する転写ベルトユニットの角度を調整する。第1の閾値未満であれば、転写ベルトの移動量と、予め設定しておいた設計値との差の絶対値を求め、その差が第2の閾値以上か否かを判定する。第2の閾値未満であれば、処理を終え、第2の閾値以上であれば、第2の閾値未満になるように、駆動ローラ位置調整モータ63により、感光体ドラム22に対する駆動ローラ52の角度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に担持されたトナー像を、転写ベルトにより用紙に転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の転写ベルトは、感光体ドラム(像担持体)上に形成されたトナー像を用紙に転写する役割を果たす。この場合、感光体ドラム上に形成された静電潜像にトナーが付着してトナー像が形成され、転写ベルトを感光体ドラムとは逆電位に帯電させる。転写ベルトに吸着されて搬送される用紙に、感光ドラムのトナー像が転写される。
【0003】
さて、このような画像形成装置では、転写ベルトの蛇行によるベルト破損、画像の位置精度の悪化、画質の低下という問題が発生している。この問題を解消するためにリブをベルト端部の裏側に貼り付け、リブとベルトを架けたローラの端部とを接触させることによってベルトの蛇行を抑制するものがある。
【0004】
また、特許文献1では、転写ベルト端部位置をラインセンサで検出して、転写ベルトが蛇行している場合は、転写ベルト従動ローラの一端を支点にして他端を回動させて蛇行を修正後、従動ローラの軸をネジ固定する。その後、転写ベルト、ローラ等からなる転写ベルトユニット自体を回動させて、レジストローラによる用紙搬送方向と従動ローラの位置調整を行った転写ベルトの用紙搬送方向を合わせネジ固定する。
【0005】
また、特許文献2では、転写ベルト端部位置をセンサで検出して、転写ベルトが蛇行している場合は、転写ベルト従動ローラの一端を支点にして他端を偏心カムにより自動的に回動させて蛇行を修正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−138986号公報
【特許文献2】特開平4−50992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
転写ベルト端部の裏側にリブを貼り付ける方法では、リブが削れたり、リブの先端と後端が対向するリブの継ぎ目からベルトが破損したりして、ベルトの寿命が短くなる。更に、リブを貼り付ける工程が必要となり生産時間も増えてしまう。リブが無い状態では従来の寿命の2倍が達成可能であることが実験より判明している。しかし、ベルトに貼り付けるリブを廃止すると、ベルトが蛇行した場合の修正機構が必要となる。
【0008】
転写ベルトの蛇行には転写ベルトを張架しているローラの傾きだけでなく、転写ベルトユニットそのものが感光体に対して位置ズレしていることも原因がある。転写ベルトユニットは像担持体と接触しながら駆動しているので、通紙時、非通紙時で変化する転写ベルトにかかる力により、転写ベルトユニットの角度がずれてしまうことがある。
【0009】
また、特許文献1では、転写ベルトや転写ベルトユニットそのものの位置調整を可能としているが、位置調整自体は自動で行われるわけではなく、あくまでもユーザが行わなければならない。位置調整が容易化されたとはいえ、それなりの熟練度が要求されることになる。
【0010】
また、特許文献2では、ローラの位置変更による蛇行修正は行っているが、転写ベルトユニットの位置調整を含めて自動制御しているわけではない。したがって、ベルトの蛇行を十分に防止できると言い難い。
【0011】
本発明では、転写ベルトを張架しているローラの位置変更による蛇行修正だけでなく、転写ベルトユニットの位置を調整することにより蛇行を抑制する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、像担持体と、複数のローラに張架された転写ベルトを駆動する転写ベルトユニットとを備え、前記像担持体に形成されたトナー像を、前記転写ベルトにより用紙に転写する画像形成装置であって、
前記転写ベルトの所定時間における用紙の通紙時と非通紙時との移動量を計測する転写ベルト移動量計測手段と、前記像担持体に対する前記転写ベルトユニットの角度を調整する転写ベルトユニット位置調整手段と、前記像担持体に対する前記ローラの少なくとも一つの角度を調整するローラ位置調整手段と、通紙時と非通紙時における前記転写ベルトの計測移動量の差の絶対値に応じて、前記転写ベルトユニット位置調整手段と前記ローラ位置調整手段のいずれを用いて調整するかを決定し、前記計測移動量の差を減少させるように調整する制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、前記制御手段は、前記計測移動量の差の絶対値が第1の閾値以上の場合、前記転写ベルトユニット位置調整手段により前記転写ベルトユニットと前記像担持体との角度を調整して前記計測移動量の差の絶対値が前記第1の閾値未満とすることを特徴とする。
【0014】
また、前記制御手段は、前記計測移動量の差の絶対値が第1の閾値未満で、且つ通紙時の計測移動量と通紙時の設計上の移動量の差の絶対値が第2の閾値以上であった場合、前記ローラ位置調整手段を用いて、前記ローラの少なくとも1つと前記像担持体との角度を調整して前記計測移動量の差の絶対値が前記第2の閾値未満とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛇行を抑えるように、通紙時と非通紙時における転写ベルトの計測移動量の差の絶対値に応じて、転写ベルトユニット位置調整手段とローラ位置調整手段のいずれかを用いて調整するかを決定するので、簡単に位置調整の必要な時を検出できると共に、これに基づいて転写ベルトユニットやローラの像担持体に対する傾きを自動的に調整できる。転写ベルトユニットが像担持体に対して傾いていると、像担持体の回転により、転写ベルトが蛇行する方向に力が働いてしまうのを補正する。また、転写ベルトユニットのローラが像担持体に対して傾いていても蛇行をする場合があるので、その場合においても蛇行を抑えることができる。さらに、転写ベルト端部裏面の蛇行防止リブを廃止でき、生産時間の短縮と転写ベルトの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を適用した画像形成装置を示す断面図である。
【図2】転写ベルトユニットを示す概略図である。
【図3】駆動ローラの位置調整を示す図である。
【図4】転写ベルトユニットの位置調整を示す図である。
【図5】転写ベルトの蛇行調整処理に関する部分を示すブロック図である。
【図6】転写ベルトの蛇行調整処理を示すフローチャートである。
【図7】図6に従って転写ベルトユニットの位置調整を行う処理内容の表である。
【図8】図6に従って駆動ローラの位置調整を行う処理内容の表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態を適用した画像形成装置を示す断面図である。画像読み取り部2は、透明ガラスからなる原稿載置台11、原稿載置台11上へ自動的に原稿を供給するための両面対応自動原稿送り装置(RADF)12、原稿載置台11上に載置された原稿の画像を走査して読み取るための原稿画像読み取りユニット、すなわちスキャナユニット13から構成されている。
【0019】
RADF12は、所定の原稿トレイ上に複数枚の原稿を一度にセットしておき、セットされた原稿を1枚ずつ自動的にスキャナユニット13の原稿載置台11上へ送給する公知の装置である。そして、RADF12は、使用者の選択に応じて原稿の片面または両面をスキャナユニット13に読み取らせるように、片面原稿のための搬送経路、両面原稿のための搬送経路、搬送経路切り換え手段などから構成されている。
【0020】
スキャナユニット13は、原稿面上を露光するランプリフレクタアセンブリと、原稿からの反射光像を電気的画像信号に変換する光電変換素子(CCD)17に導くための第1反射ミラーを搭載した第1走査ユニット14および第2、第3反射ミラーを搭載した第2走査ユニット15、反射光像をCCD17上に結像するための光学レンズ体16から構成される。第1走査ユニット14は原稿載置台11に沿って左から右へ一定速度Vで走行し、第2走査ユニット15はV/2の速度で同一方向に走行するように走査制御される。
【0021】
これにより、画像読み取り部2では、RADF12とスキャナユニット13の関連した動作によって、原稿載置台11上に読み取るべき原稿を順次載置させながら、原稿載置台11の下面に沿ってスキャナユニット13を移動させて、原稿載置台11上に載置された原稿の画像を1ライン毎に順次CCD17に結像させて、原稿画像を読み取る。
【0022】
原稿画像をスキャナユニット13で読み取ることにより得られた画像データは、各種処理が施された後、メモリに一旦記憶され、出力指示に応じてメモリから画像データを画像形成部3に出力して、感光体ドラム(像担持体)22上に可視画像として再現した後、用紙上に画像を転写してトナー像を形成する。
【0023】
この画像形成部3は、レーザ書き込みユニット(LSU)21および画像を形成するための電子写真プロセス部20を備えている。レーザ書き込みユニット21は、メモリから読み出した画像データまたはパーソナルコンピュータ等の外部機器から転送されてきた画像データに応じてレーザ光を出射する半導体レーザ、レーザ光を等角速度偏向するポリゴンミラー、等角速度偏向されたレーザ光が電子写真プロセス部20の感光体ドラム22上を等速度で走査するように補正するf−θレンズ等を有している。電子写真プロセス部20は周知の態様に従い、感光体ドラム22の周囲に帯電装置23、現像装置24、転写装置25、剥離装置26、クリーニング装置27、除電装置を配置し、さらに感光体ドラム22の下流側に定着装置28を配置して構成される。
【0024】
給紙部4は、第1〜3カセット31〜33および手差しトレイ35、さらにオプションとして大容量カセット34を第5のトレイを有している。第1カセット31は、第1のトレイ及び第2のトレイを収容するタンデムトレイで、両トレイを装置本体から同時に引き出し可能となっている。第2カセット32、第3カセット33は、それぞれ第3のトレイ、第4のトレイを収容する。つまり、3つのカセット(31〜33)に4つのトレイが収容されている。大容量カセット34は大容量のトレイであるので、最も使用頻度の高い、例えばA4サイズの標準紙を収容することができる。給紙搬送部37,38は、給紙部4から感光体ドラム22と転写装置25との間の転写位置に用紙を搬送するために、給紙ローラ、搬送ローラ、レジストローラを備えている。
【0025】
この給紙部4における第1〜3カセット31〜33内の4つのトレイ及び大容量カセット34には、用紙がサイズ毎に積載されて収容されており、使用者が所望するサイズの用紙が収容されているカセットあるいはトレイを選択すると、そのトレイ内の用紙束の上から1枚ずつ送り出され、給紙搬送部37,38の搬送経路を経由して順次電子写真プロセス部20へ向けて搬送される。
【0026】
レーザ書き込みユニット21および電子写真プロセス部20において、メモリから読み出された画像データは、レーザ書き込みユニット21によってレーザ光線を走査させることにより感光体ドラム22の表面上に静電潜像として形成され、現像装置24のトナーにより可視像化されたトナー像は給紙部4から搬送された用紙の表面上に転写装置25により静電転写され、定着装置28によって定着される。
【0027】
定着装置28より用紙搬送方向下流側には、用紙排出路29が設けられており、この用紙排出路29は排紙部5の排紙搬送路41と、両面複写のための搬送部42とに分岐している。
【0028】
このようにして画像が形成された用紙は定着装置28から排紙部5へ送られ、あるいは両面複写のための搬送部42へと選択的に搬送される。排紙部5に送られた用紙は、必要に応じてソートあるいはステープル処理等の所定の処理が施され、第1排出卜レイ43または第2排出卜レイ44にスタックされる。また、両面複写の搬送部42に送られた用紙は、ここで反転され再び電子写真プロセス部20に搬送されて、用紙の裏面に画像が形成され、定着後排出される。
【0029】
図2は、転写装置を示す概略図である。(a)は外観図、(b)は断面図である。以下に転写ユニットの構造とその動作概略を説明する。
【0030】
転写装置25は、転写ベルトユニット30と、その他の部分からなる構成である。転写ベルトユニットは、転写ベルト51、駆動ローラ52、従動ローラ53、転写ローラ59、支持枠78,79からなる構成である。
【0031】
感光体ドラム22の下方に配置された転写ベルト51は、駆動ローラ52と従動ローラ53に張架され、矢印の搬送方向に駆動される。駆動ローラ軸54の一端側に、転写ベルト駆動モータ55により回転駆動を与えて、駆動ローラ52を回転させる。図2ではベルト58により回転駆動力を与えているが、ギアにより回転駆動力を与える構造でもよい。感光体ドラム22に当接する転写ベルト裏面側には、転写ベルト51に感光体ドラム22とは逆電位を付与する転写ローラ59が備えられており、感光体ドラム22に形成されたトナー像を転写ベルト51上の用紙に転写する。
【0032】
非通紙時には転写ベルト51は、感光体ドラム22に接触して移動し、通紙時には転写ベルト51は、用紙を介して感光体ドラム22と接触して移動する。通紙時の方が転写電位の関係で転写ベルトに働く力が大きい。従って、転写ベルトユニット30の位置がズレていると、感光体ドラム22の回転によって、転写ベルト51が蛇行する方向へ力が働く。転写ベルトユニット30の組み付けが正確であっても、通紙時、非通紙時の感光体ドラム22との駆動により転写ベルト51にかかる力の方向が少しでもズレると、転写ベルトユニット30が、その力の方向にズレてゆく。こうして、転写ベルトユニット30の位置がズレた状態で駆動し続けると転写ベルト51が蛇行することとなる。転写ベルトユニット30の角度がズレていない場合でも、転写ベルト51を張架しているローラの軸がズレていると転写ベルトが蛇行してしまう。
【0033】
そこで、本実施形態は、蛇行防止のために転写ベルトユニット30やローラの位置調整可能な構造を有している。以下に詳しく説明する。
【0034】
駆動ローラ軸54の一端側は、支点軸受56により回転自在に支持される。この支点軸受56は、本体側に固定された支持台57に回動自在に支持されて、駆動ローラ軸54をどの方向にも回動することができる。
【0035】
支持台61上に移動可能に載置された取付台62に駆動ローラ位置調整モータ63を固定し、駆動ローラ軸54の他端側を軸受64に回転自在に支持する。また、軸受64は、駆動ローラ位置調整モータ63の雄ねじが形成されたモータ軸65を、雌ねじが形成され軸受64に挿入している。従って、駆動ローラ位置調整モータ63の回転により、駆動ローラ52の軸端を支点軸受56を支点として、駆動ローラ軸54の他端をX軸方向に移動が可能である。この様子を図3に示す。これは図2(b)のC方向から見た図である。軸受64は、駆動ローラ軸54を回転自在に支持する部分と、ローラ軸端を矢印方向へ移動可能にする雌ネジを備えた部分とが一体に形成されている。
【0036】
支点軸受56を支点に、駆動ローラが図2のX方向に移動可能である。
【0037】
従動ローラ軸66の両軸端は、軸受71,72に回転自在に支持され、この軸受71,72は支持台73,74の上にスライド可能に載置される。
【0038】
支持台75に固定された転写ベルトユニット位置調整モータ76は、モータ軸に配置された転写ベルトユニット位置調整カム77を回転させることで、カム77の周面が転写ベルト51を支持している支持枠78と摺接し、支点軸受56を支点として転写ベルトユニット30の支持枠78をY方向へ移動させる。
【0039】
図4は、転写ベルトユニット30の位置調整を示す図である。これは図2(b)のD方向から見た図である。図4の(a)はY+方向に移動調整した図、(b)は移動調整しない図、(c)はY−方向に移動調整した図である
【0040】
転写ベルトユニット位置調整モータ76によりカム77を図2の+方向へ回すと、カム77の摺接部に対して反対側の転写ベルト支持枠78と支持台81に接続しているスプリング80が、支持枠78をY+方向へ押し出す。図4(a)に示すように、転写ベルトユニット30は、支点軸受56を支点に回転移動する。
【0041】
転写ベルトユニット位置調整モータ76によりカム77を図2の−方向へ回すと、カム77がスプリング力に抗して、支持枠78をY−方向へ移動させる。図4(b)に示すように、転写ベルトユニット30は、支点軸受56を支点に回転移動する。
【0042】
ここで、転写ベルト駆動モータ55と転写ベルトユニット位置調整モータ76は、装置本体側に固定されている。また支持台57,61,73,74,75も装置本体に固定されている。駆動ローラ位置調整モータ63と転写ベルトユニット位置調整モータ76は、ステップモータを使用し、ステップ数で回転を制御する。
【0043】
ベルト裏面には印が付けられており、発光受光センサからなる転写ベルト移動量検知センサ82でベルト速度を測定し、速度から移動量(移動距離)を割り出す。
【0044】
図5は、転写ベルトの蛇行調整処理に関する部分を示すブロック図である。
制御部83は、転写ベルト駆動モータ55を制御して転写を行うと同時に、転写ベルト移動量検知センサ82の計測による移動量に基づいて、駆動ローラ位置調整モータ63と転写ベルトユニット位置調整モータ76を制御して、転写ベルト51の蛇行調整を行う。
【0045】
図6は、転写ベルトの蛇行調整処理を示すフローチャートである。
制御部83は、転写ベルト駆動モータ55を駆動し、転写ベルトを駆動する(ステップS1)。制御部83は、転写ベルト移動量検知センサからの計測値により、通紙時の転写ベルトの移動量(所定時間における)を求める(ステップS2)。次に制御部83は、転写ベルト移動量検知センサからの計測値により、非通紙時の転写ベルトの移動量を求める(ステップS3)。
【0046】
制御部83は、転写ベルトの通紙時と非通紙時の移動量の差を求め、その絶対値が第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。この第1の閾値は、2.5mmとしているが、これは予め設定しておく。第1の閾値以上であれば、ステップS5に進み、制御部83は、転写ベルトユニット位置調整モータ76を駆動し、第1の閾値未満になるように、感光体ドラム22に対する転写ベルトユニット30の角度を調整する(ステップS5)。このとき、転写ベルトユニット位置調整カム77をどちら向きにどれだけ回転させるかは、予め求めておいて、例えばルックアップテーブルなどに記憶させておき、移動量の差から求められるようにしておく。
【0047】
ステップS4において、第1の閾値未満であれば、ステップS6に進み、転写ベルトの計測した移動量と、予め設定しておいた設計値(転写ベルトの設計上の速度から求まる所定時間の設計上の移動量)との差の絶対値を求め、その差が第2の閾値以上か否かを判定する。ここでは、第2の閾値を6mmとする。この値も予め設定しておく。第2の閾値未満であれば、処理を終える。第2の閾値以上であれば、第2の閾値未満になるように、駆動ローラ位置調整モータ63により、感光体ドラム22に対する駆動ローラ52の角度を調整する。駆動ローラ52の片側をどれだけ移動させるかは予め求めておいて、例えばルックアップテーブルなどに記憶させておき、移動量の差から求められるようにしておく。
【0048】
このように、通紙時と非通紙時の計測移動量の差に基づいて調整制御を行うので、制御部83は、転写ベルトユニット30や駆動ローラ52の位置調整が必要な時期を簡単に、しかも的確に判断でき、転写ベルトユニット位置調整モータ76と駆動ローラ位置調整モータ63のいずれかを用いて自動的に蛇行防止の位置調整ができる。さらに、転写ベルト51の端部裏面の蛇行防止リブを廃止でき、生産時間の短縮と転写ベルトの寿命を延ばすことができる。
【0049】
<実験結果>
ここで、転写ベルト駆動ローラの位置が下図のようになる位置に調整し、転写ベルトの移動距離を測定する実験を行った。本実験に使用した構成部品の主なデータは以下の通りである。
【0050】
構成部品の主なデータ
1)転写ベルト物性
NBR系ゴムベルト t=400〜700μm
裏面加工無し、表面フッ素系コーティング
2)転写ローラ物性
転写ローラ径 φ14mm
EPDM系発泡ゴムローラ(硬度約 40 JIS-C)
3)転写ベルト径 φ60mm
4)従動ローラ径 φ17mm
5)プロセス速度 400mm/s(で転写ベルトを回転)
6)感光体 OPC
【0051】
図7は、図6に従って転写ベルトユニットの位置調整を行う処理内容の表である。図8は、図6に従って駆動ローラの位置調整を行う処理内容の表である。
ユニット及びローラの位置の変更を行うかどうかの閾値は転写ベルト、感光体、等の寸法、材質等に影響されるので、適宜決めればよい。ここでは、転写ベルトユニット調整と駆動ローラ調整の閾値を図7、図8の表のように決めた。
【0052】
この表の実験の結果、通紙時と非通紙時の転写ベルト移動量の差と転写ベルトの移動量の設計値に対する測定値との差からユニットの位置(感光体ドラムに対する角度)の調整をするか、転写ローラを張架しているローラの角度を調整するかを決定し、ユニットまたはローラの位置を調整する制御を行えば、蛇行を抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0053】
22 感光体ドラム
25 転写装置
30 転写ベルトユニット
52 駆動ローラ
53 従動ローラ
54 駆動ローラ軸
55 転写ベルト駆動モータ
56 支点軸受
57,61,73,74,75,76,81 支持台
63 駆動ローラ位置調整モータ
64,71,72 軸受
65 モータ軸
66 従動ローラ軸
76 転写ベルトユニット位置調整モータ
77 転写ベルトユニット位置調整カム
78,79 支持枠
80 スプリング
82 転写ベルト移動量検知センサ
83 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、複数のローラに張架された転写ベルトを駆動する転写ベルトユニットとを備え、前記像担持体に形成されたトナー像を、前記転写ベルトにより用紙に転写する画像形成装置であって、
前記転写ベルトの所定時間における用紙の通紙時と非通紙時との移動量を計測する転写ベルト移動量計測手段と、
前記像担持体に対する前記転写ベルトユニットの角度を調整する転写ベルトユニット位置調整手段と、
前記像担持体に対する前記ローラの少なくとも一つの角度を調整するローラ位置調整手段と、
通紙時と非通紙時における前記転写ベルトの計測移動量の差の絶対値に応じて、前記転写ベルトユニット位置調整手段と前記ローラ位置調整手段のいずれを用いて調整するかを決定し、前記計測移動量の差を減少させるように調整する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記計測移動量の差の絶対値が第1の閾値以上の場合、前記転写ベルトユニット位置調整手段により前記転写ベルトユニットと前記像担持体との角度を調整して前記計測移動量の差の絶対値が前記第1の閾値未満とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記計測移動量の差の絶対値が第1の閾値未満で、且つ通紙時の計測移動量と通紙時の設計上の移動量の差の絶対値が第2の閾値以上であった場合、前記ローラ位置調整手段を用いて、前記ローラの少なくとも1つと前記像担持体との角度を調整して前記計測移動量の差の絶対値が前記第2の閾値未満とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32598(P2012−32598A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171780(P2010−171780)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】