説明

画像形成装置

【課題】サービス開口を開閉するカバーに連動して切り換わる電力遮断構造を簡素化して低コスト化でき、しかも、カバーを開放した状態では、加熱ローラの熱源への通電を確実に遮断してメンテナンス作業の安全性を向上できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱ローラおよび加圧ローラと、加熱ローラに組み付けられる熱源と、熱源に対して電力を供給する接触式の給電構造を含む定着装置を有する。定着装置に臨むサービス開口に、該開口を開閉自在に覆うカバーが設けてある。給電構造は、加熱ローラの側に設けられる受電体と、受電体に対して接離自在に支持される給電体と、給電体を受電体に向かって押し付け付勢する給電体ばねと、給電体を受電体に対して導通状態と分離状態とに切り換える遮断体を含む切り換え構造を備えている。カバーの開放動作に連動して、給電体を遮断体で分離状態に切り換えて通電を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ローラの内部に設けた熱源に対して、接触式の給電構造を介して電力を供給する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタまたは複写機などの画像形成装置の定着装置において、加熱ローラの内面或いは外面に抵抗発熱体(面状発熱体)を設けて、起動時の待機時間を短縮することが行なわれている。たとえば、特許文献1の画像形成装置では、アルミニウム合金製の加熱ローラの内面に絶縁層を介して抵抗発熱体を配置している。抵抗発熱体は、フランジ構造の一対の電極で支持されており、電極に摺接する給電ブラシを介して電力が供給される。
【0003】
特許文献2の画像形成装置においては、加熱ローラの内部に抵抗発熱体と2次電池を配置し、2次電池の電力で抵抗発熱体を発熱できるようにしている。また、2次電池を充電するために加熱ローラの一側に一対の電極を設け、これらの電極に対して給電ブラシを接触させている。因みに、2次電池に対する充電は、画像形成装置が待機している状態でのみ行なわれる。
【0004】
本発明の定着装置では、画像形成装置のカバーの開閉に連動して、接触式の給電構造の通電状態を遮断して安全な状態を確保するが、この種の安全対策としてインターロックスイッチを用いることが一般に行なわれている。たとえば、特許文献3の画像形成装置においては、カバーが開放されるのに連動して、熱源と電源とを導通する供給ラインをインターロックスイッチで遮断できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−155495号公報(段落番号0015、図2)
【特許文献2】特開2004−163614号公報(段落番号0023、図4)
【特許文献3】特開2006−058440号公報(段落番号0019、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の画像形成装置のように、接触式の給電構造を備えている定着装置においては、メンテナンス時或いは紙詰まりした記録紙を除去するときの感電を避ける必要上、何らかの安全対策が必要となる。たとえば、特許文献3のようなインターロックスイッチを経由して抵抗発熱体に電力を供給すると、カバーの開放に連動して抵抗発熱体への電力供給を遮断できる。しかし、インターロックスイッチはコストが高く付く。また、スイッチでカバーの開閉を検知し、リレーで電力を遮断する安全装置も同様にコストが嵩む。さらに、スイッチの端子部分の電気的な耐用時間に限界があるので、定期的なメンテナンスが不可欠になる。
【0007】
本発明の目的は、サービス開口を開閉するカバーに連動して通電状態を切り換える電力遮断構造を簡素化して低コスト化でき、しかも、カバーを開放した状態では熱源への通電を遮断して、メンテナンス作業を安全に行なえる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は定着装置を備えている。定着装置3は、加熱ローラ15および加圧ローラ16と、加熱ローラ15に組み付けられる熱源22と、熱源22に対して電力を供給する接触式の給電構造を含む。定着装置3に臨むサービス開口9に、該開口9を開閉自在に覆うカバー10が設けてある。図1に示すように、給電構造は、加熱ローラ15の側に設けられる受電体36と、受電体36に対して接離自在に支持される給電体37と、給電体37を受電体36に向かって押し付け付勢する給電体ばね39を備えている。さらに、給電構造は、給電体37を受電体36に対して導通状態と分離状態とに切り換える遮断体51を含む切り換え構造を備えている。カバー10の開放動作に連動して、遮断体51で給電体37を分離状態に切り換えることを特徴とする。
【0009】
加熱ローラ15、加圧ローラ16、および給電構造は、定着装置3のハウジング18に収容してある。切り換え構造は、ハウジング18で変位可能に支持されて、遮断位置と待機位置との間を変位できる遮断体51と、遮断体51を遮断位置へ向かって付勢する遮断体ばね52を備えている。さらに、切り換え構造は、カバー10に設けられて、遮断体51を遮断体ばね52の付勢力に抗して待機位置に保持する保持体53を備えている。カバー10の開放動作に連動して、遮断体51が遮断体ばね52の付勢力で遮断位置へ切り換わるようにする。
【0010】
図1に示すように、絶縁材で形成した遮断体51を、ハウジング18で遮断位置と待機位置との間をスライドできるように支持する。遮断体51には、給電体37の出入りを許す通電開口54を形成する。カバー10を閉止した状態において、遮断体51を保持体53で待機位置に保持して、給電体37が通電開口54を介して受電体36と接触して導通状態を保持できるようにする。
【0011】
図6に示すように、絶縁材で形成した遮断体51を、ハウジング18で遮断位置と待機位置との間を揺動できるように支持する。給電体37を遮断体51に装着して、受電体36に対して接離できるようにする。カバー10を閉止した状態において、遮断体51を保持体53で待機位置に保持して、給電体37が受電体36と接触して導通状態を保持できるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る画像形成装置の定着装置3では、加熱ローラ15に設けた受電体36と、受電体36に対して接離する給電体37と、給電体37を受電体36に向かって付勢する給電体ばね39と、遮断体51を備えた切り換え構造とで給電構造を構成した。そのうえで、カバー10が開放されるとき、カバー10の開放動作に連動する遮断体51で給電体37を分離状態に切り換えて、定着装置3の熱源22に対する電力の供給を遮断できるようにした。
【0013】
このように本発明においては、遮断体51をカバー10の開閉に連動して作動させて、給電体37を導通状態と分離状態とに切り換えるので、インターロックスイッチ或いはリレーを併用する従来の安全装置に比べて、電力遮断構造を簡素化し低コスト化できる。また、給電体37を遮断体51を含む切り換え構造で機械的に切り換えるので、カバー10を閉止しない限りは給電体37を導通状態へ復帰できず、したがって、カバー10を開放した状態で行なうメンテナンス作業を常に安全に行なうことができる。さらに、加熱ローラ15に設けた熱源22の絶縁構造が破壊されていたとしても、カバー10を開放した状態では熱源22に対する電力の供給を遮断できるので、感電などの事故を確実に防止できる。
【0014】
遮断体51と、遮断体51を遮断位置へ付勢する遮断体ばね52と、遮断体51を遮断体ばね52に抗して待機位置に保持する保持体53などで切り換え構造を構成すると、遮断体51を遮断体ばね52の付勢力で自立的に遮断位置へ移行できる。したがって、カバー10と遮断体51とを連動構造を介して機械的に連結する場合に比べて、切り換え構造を簡素化して、給電構造の全体コストをさらに低コスト化できる。
【0015】
カバー10を閉止した状態において、遮断体51に設けた通電開口54を介して給電体37と受電体36を接触させるようにすると、給電体37が通電開口54の内部に位置している状態でのみ、熱源22に電力を供給できる。したがって、カバー10の開閉領域の殆どの部分において、給電体37を遮断体51で分離状態に保持して、メンテナンス作業時の安全性をさらに向上することができる。また、カバー10を開放した状態では、給電体37の導通面45の側を遮断体51で受け止めて、給電体37を分離状態に保持するので、誤って給電体37に触れてしまうのを遮断体51で遮って、感電事故を防止できる利点もある。
【0016】
遮断体51に給電体37を装着し、遮断体51が揺動するとき、給電体37を受電体36に対して接離する切り換え構造によれば、給電体37を保持するためのホルダー38を省略できる。したがって切り換え構造を簡素化し、その分だけ給電構造の製造コストを削減できる。また、カバー10に設けた保持体53で遮断体51を待機位置に保持するので、導通状態において給電体37に振動或いは外力が作用するような場合でも、給電体37が受電体36から分離するのを保持体53で規制して、常に安定した状態で給電を行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る給電構造を示す、図3におけるA−A線断面図である。
【図2】本発明に係る定着装置の適用例を示す画像形成装置の概念図である。
【図3】本発明に係る定着装置の平面図である。
【図4】本発明に係る給電構造を示す、図3におけるB−B線断面図である。
【図5】遮断状態に切り換えた給電構造を示す、図1に相当する断面図である。
【図6】本発明に係る給電構造の別の実施例を示す、図1に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例) 図1から図5に、本発明に係る画像形成装置をコピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機に適用した実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図1から図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0019】
図2において、複合機1は、画像形成部2、および定着装置3等が配置された本体部4と、本体部4の上部の画像読取部5などを備えており、本体部4の下側に配置した給紙カセット6と本体部4の上側の排出部7との間に記録紙の搬送路8が設けてある。搬送路8の下部に画像形成部2が、上部に定着装置3が配置してある。定着装置3に臨む本体部4の周囲壁には、サービス開口9と、サービス開口9を開閉するカバー10が設けてある。カバー10を開放することにより、定着装置3のメンテナンスを行なうことができ、さらに定着装置3およびその周辺の搬送路8に詰まった記録紙を取り除くことができる。
【0020】
画像形成部2は、感光ドラム11およびトナーカートリッジ12などで構成してあり、給紙カセット6から送給された記録紙に対してトナー像を転写して画像を形成する。画像読取部5の前面には、各種の操作ボタンを備えた操作パネル13が設けてあり、上面側には自動原稿搬送装置(ADF)14が設けてある。本等の綴られた原稿の画像は、画像読取部5の上面のプラテンガラスに載置した状態で読み込むことができ、さらに枚葉状の原稿は自動原稿搬送装置14を通すことにより読み込むことができる。
【0021】
図3において定着装置3は、記録紙を加熱する加熱ローラ15と、加熱ローラ15の周面に押し付けられる加圧ローラ16と、加圧ローラ16を加熱ローラ15に向かって押し付け付勢する前後一対の加圧ばね17・17などで構成してある。加熱ローラ15は、定着装置3のハウジング18に組み付けられてユニット部品化してある。加熱ローラ15は、ハウジング18の内面に設けた前後一対のブラケット25でベアリング42を介して回転自在に支持され、加圧ローラ16はカバー10の側に支持されている。画像形成部2でトナー像が形成された記録紙を、加熱ローラ15と加圧ローラ16との間に通すことにより、トナー像を加熱しながら加圧して記録紙に定着することができ、定着された記録紙は排出部7へと送給される。
【0022】
図4に示すように、加熱ローラ15は、円筒状の内管20を基体にして、その周囲に断熱筒21と、抵抗発熱体(熱源)22と、外管23を多重筒状に配置して構成してある。内管20は、アルミニウム合金製の管材を素材にして形成してあり、外管23は、ステンレス鋼を深絞り成形して得られる薄肉の筒体で形成してある。断熱筒21は、シリコン発泡体を筒状に成形して形成してあり、抵抗発熱体22の熱が内管20の側へ伝導するのを遮断する。外管23の外面には、ふっ素樹脂製のシートで形成した剥離層24が巻装してある。このように剥離層24を設けることで、定着された記録紙の剥離を促進できる。
【0023】
抵抗発熱体22は、耐熱性と電気絶縁性を備えたポリイミド製のシート基材26の片面に発熱体27を固定して形成してある。発熱体27は、ステンレス箔にエッチングを施して、ひと筆書き状に連続するパターンとして形成してあり、通電時にジュール熱を発生して加熱ローラ15の外表面を加熱する。抵抗発熱体22は、その発熱体27が断熱筒21の外周面に密着する状態で巻装してある。抵抗発熱体22の外面を、熱容量が小さな薄肉の外管23で覆うので、面状発熱体22による外管23の加熱を短時間で効果的に行なうことができ、複合機1を起動する時の待機時間を短縮できる。
【0024】
加圧ローラ16は、金属軸30の周囲に加圧層31を配置して二重筒状に構成してある。加圧層31は発泡ゴムまたは発泡プラスチック材を素材にして、無端筒状に形成してある。金属軸30の両端寄りは軸受32で回転自在に軸支してあり、さらに金属軸30の両端が、カバー10の内面に設けたガイド枠33で往復スライドのみ可能に案内してある。先の加圧ばね17は圧縮コイルばねからなり、カバー10と軸受32との間に配置されて、加圧ローラ16を加熱ローラ15へ向かって押し付け付勢する。カバー10を開放操作すると、加圧ローラ16がカバー10に同行して本体部4の外方へ揺動しながら変位して加熱ローラ15から分離する(図5参照)。
【0025】
図3に示すように、発熱体27に対して電力を供給するために、加熱ローラ15の両端に接触式の給電構造を設けている。給電構造は、加熱ローラ15の両側に配置される受電軸(受電体)36と、受電軸36に接離する給電体37と、給電体37を支持するホルダー38と、給電体37を付勢する給電体ばね39と、後述する切り換え構造などで構成する。
【0026】
図4に示すように、加熱ローラ15の両端は絶縁ブロック40で支持されており、絶縁ブロック40の外端面に受電軸36が固定してある。銅合金で形成した受電軸36と抵抗発熱体22とは、絶縁ブロック40の内部で接続してある。図3において、符号41は片方の受電軸36に固定したギヤであり、このギヤ41を図示していない駆動構造で駆動することにより、加熱ローラ15を図1に矢印で示す向きへ回転駆動できる。符号42は絶縁ブロック40を軸支するベアリングである。
【0027】
給電体37は断面が四角形の銅合金製の軸体からなり、図4に示すように、その下端側に受電軸36の周面に外接する導通面45が形成され、その上端側に給電リード46が接続してある。ホルダー38は電気絶縁性を備えたプラスチック成形品からなり、ハウジング18の前後壁の内面に固定してある。給電体37を受電軸36に対して接離自在に支持するために、ホルダー38の突端に、下向きに開口する四角枠状のガイド部47を設け、その内部に給電体37の給電リード46側の軸部を収容して案内している。圧縮コイル形のばねからなる給電体ばね39は、給電体37とガイド部47との間に配置してあり、これにより給電体37を給電体ばね39で受電軸36へ向かって常に押し出し付勢できる。
【0028】
導通面45は、受電軸36の周面に対応して部分円弧状に凹ませてある。そのため、給電体37が受電軸36の周面に外接する状態においては、導通面45が受電軸36に面接触状に密着する。このように、導通面45を面接触状に密着させると、加熱ローラ15が回転駆動されるとき、導通面45に対して受電軸36の回転方向に沿った摩擦力が作用する。しかし、給電体37はガイド部47で確りと保持してあるので、給電体37がぐらつくことはなく、安定した状態で給電を行なえる。導通面45の左右に連続して、面取り状の傾斜面48が形成してある。
【0029】
切り換え構造は、カバー10の開閉に連動して、給電体37を受電軸36に対して導通する状態と分離する状態とに切り換えるために設けられており、遮断体51と、遮断体ばね52と、保持体53などで構成する。図1に示すように、遮断体51は、電気絶縁性を備えた長方形状のプラスチック成形品からなり、板面の中央に給電体37の出入りを許す通電開口54が形成してある。遮断体51の前側の長辺部の上下には、帯状のスライド壁55が張り出してあり、左側の短辺部の前後中央にはばね受座56が張り出してある。
【0030】
通電開口54は、給電体37よりひと回り大きな長方形状に形成してあり、そのばね受座56側の辺部の内面には、給電体37を給電体ばね39の押し付け力に抗して押し上げるためのくさび面57が形成してある。くさび面57に連続する板面は、遮断体51が遮断状態に切り換えられたとき、受電軸36と給電体37との間に入り込んで、両者36・37間の導通を遮断する絶縁部58として機能する。図4に示すように、ハウジング18の前後壁の内面にはガイド溝59が形成してあり、このガイド溝59でスライド壁55を案内することにより、遮断体51は図5に示す遮断位置と、図1に示す待機位置との間を左右にスライド変位できる。
【0031】
遮断体ばね52は圧縮コイル形のばねからなり、図1に示すように、ハウジング18の内奥壁と遮断体51のばね受座56との間に配置されて、遮断体51を遮断位置へ向かって付勢する。保持体53は、遮断体51を遮断体ばね52の付勢力に抗して待機位置に保持するために設けてあり、この実施例では、先に説明したガイド枠33が保持体53を兼ねるようにした。詳しくは、図1に示すように、カバー10を閉止した状態において、ガイド枠33(保持体53)の突端の押圧部61が遮断体51に当接して、遮断体51を遮断体ばね52の付勢力に抗して待機位置に保持できるようにした。この状態では、給電体37が通電開口54に入り込んで受電軸36と接触しており、したがって給電体37と受電軸36との導通状態を保持することができる。
【0032】
以上のように構成した給電構造によれば、カバー10が開放されるとき、カバー10の開放動作に追随して自立的にスライドする遮断体51で、給電体37を分離状態に切り換えて、定着装置3の熱源22に対する電力の供給を遮断できる(図5参照)。また、カバー10を閉じた場合には、遮断体51が給電体ばね39のばね力に抗して、待機位置へ復帰操作されるので、給電体37は遮断体51に設けた通電開口54を介して受電体36と接触して導通状態に切り換わる(図1参照)。
【0033】
このように、遮断体51をカバー10の開閉に連動して作動させて、給電体37を導通状態と分離状態とに切り換えると、インターロックスイッチ或いはリレーを併用する従来の安全装置に比べて、電力遮断構造を簡素化し低コスト化できる。また、給電体37を、遮断体51、遮断体ばね52、および保持体53などの切り換え構造で機械的に切り換えるので、カバー10を閉止しない限りは給電体37を導通状態へ復帰することができない。したがって、カバー10を開放した状態で行なわれるメンテナンス作業を常に安全に行なうことができる。さらに、加熱ローラ15に設けた熱源22の絶縁構造が破壊されていたとしても、カバー10を開放した状態では熱源22に対する電力の供給を遮断できるので、感電などの事故を未然に防止できる。
【0034】
遮断体51に設けた通電開口54を介して給電体37と受電体36を接触させるので、カバー10を閉止し、給電体37が通電開口54の内部に位置している状態でのみ熱源22に電力を供給できる。したがって、カバー10の開閉領域の殆どの部分において、給電体37を遮断体51で分離状態に保持できることとなり、メンテナンス作業時の安全性をさらに向上できる。また、カバー10を開放した状態では、給電体37の導通面45の側を遮断体51で受け止めて、給電体37を分離状態に保持するので、誤って給電体37に触れてしまうのを遮断体51で遮って感電事故を防止できる利点もある。
【0035】
図6は給電構造の別の実施例を示す。そこでは遮断体51をハウジング18で上下へ揺動可能に支持して、遮断体51に設けたガイド部47で給電体37を支持するようにした。遮断体51は、電気絶縁性を備えたプラスチック成形品からなり、揺動基端に位置するボス63と、ボス63に連続する受動アーム64と、受動アーム64の中途部に配置されるガイド部47とを一体に備えている。遮断体51は、そのボス63がハウジング18の内奥壁に設けたブラケット65で揺動軸66を介して揺動可能に支持してある。これにより、遮断体51は図6に実線で示す待機位置と、図6に想像線で示す遮断位置との間を揺動できる。
【0036】
遮断体ばね52は引っ張りコイル形のばねからなり、その一端を受動アーム64の基端部に設けたばね掛け部67に掛止し、他端をハウジング18の掛止片68に掛止することにより、遮断体51を遮断位置へ向かって上向きに引っ張り付勢している。図示していないが、ガイド部47には給電体37の押し出し限界を規定するストッパーが設けてあり、したがって、遮断体51が遮断位置へ切り換わった状態において、給電体37がガイド部47から抜け落ちることはない。同様に図示していないが、ブラケット65には遮断体51の揺動限界を規定するストッパーが設けてあり、遮断体51が遮断位置を越えて揺動することはない。
【0037】
保持体53はガイド枠33の突端の上隅に連続して形成してあり、ガイド枠33の突端面の上部に連続して斜めに傾斜する押圧部61を備えている。押圧部61は斜面カムとして機能し、カバー10が開放位置から閉止されるとき、遮断位置に保持された受動アーム64の先端に外接して、遮断体51の全体を遮断体ばね52の付勢力に抗しながら待機位置へ切り換え操作する。この状態では、給電体37が受電軸36と接触して導通状態になっている。上記の状態からカバー10を開放すると、保持体53がカバー10に同行して、遮断体51から遠ざかる。そのため、受動アーム64は押圧部61に沿って遮断位置側へ揺動し、その結果、給電体37を受電軸36から分離して、両者を分離状態に切り換えることができる。他は、先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
上記のように構成した切り換え構造によれば、給電体37を遮断体51に直接に装着して、遮断体51の揺動に連動して給電体37を受電体36に対して接離できるので、給電体37を保持するためのホルダー38を省略できる。したがって、切り換え構造を簡素化し、その分だけ製造コストを削減できる。また、カバー10に設けた保持体53で遮断体51を待機位置に保持するので、導通状態において給電体37に振動或いは外力が作用するような場合でも、給電体37が受電体36から分離するのを保持体53で規制して、常に安定した状態で給電を行なえる。
【0039】
上記の実施例では、加熱ローラ15の前後端のそれぞれに給電構造を設けたが、その必要はなく、加熱ローラ15の前後いずれかに給電構造を集約して配置することができる。また上記の実施例では、加熱ローラ15に内蔵した抵抗発熱体22で加熱ローラ15を加熱するようにしたが、その必要はない。たとえば、円筒状の加熱ローラ15の内部に配置したハロゲンランプを熱源22にして、加熱ローラ15を加熱することができる。
【0040】
給電体37は受電体36の軸周面に接触させる必要はなく、軸端面に接触させることができる。図6の給電構造では、遮断体51をハウジング18で、水平の揺動軸66の回りに上下へ揺動可能に支持したがその必要はなく、遮断体51を垂直軸或いは傾斜軸の回りに揺動させて、待機位置と遮断位置に切り換えることができる。必要があれば、保持体53はガイド枠33とは別の専用の部材で形成することができる。
【符号の説明】
【0041】
3 定着装置
9 サービス開口
10 カバー
15 加熱ローラ
16 加圧ローラ
17 加圧ばね
18 定着装置のハウジング
22 熱源(抵抗発熱体)
36 受電体(受電軸)
37 給電体
39 給電体ばね
51 遮断体
52 遮断体ばね
53 保持体
54 通電開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ローラおよび加圧ローラと、
前記加熱ローラに組み付けられる熱源と、
前記熱源に対して電力を供給する接触式の給電構造を含む定着装置を有し、
前記定着装置に臨むサービス開口に、該開口を開閉自在に覆うカバーが設けてある画像形成装置であって、
前記給電構造は、前記加熱ローラの側に設けられる受電体と、
前記受電体に対して接離自在に支持される給電体と、
前記給電体を前記受電体に向かって押し付け付勢する給電体ばねと、
前記給電体を前記受電体に対して導通状態と分離状態とに切り換える遮断体を含む切り換え構造とを備えており、
前記カバーの開放動作に連動して、前記遮断体で前記給電体を分離状態に切り換えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱ローラ、前記加圧ローラ、および前記給電構造が、前記定着装置のハウジングに収容されており、
前記切り換え構造は、前記ハウジングで変位可能に支持されて、遮断位置と待機位置との間を変位できる前記遮断体と、
前記遮断体を遮断位置へ向かって付勢する遮断体ばねと、
前記カバーに設けられて、前記遮断体を前記遮断体ばねの付勢力に抗して待機位置に保持する保持体とを備えており、
前記カバーの開放動作に連動して、前記遮断体が前記遮断体ばねの付勢力で遮断位置へ切り換わる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
絶縁材で形成した前記遮断体が、前記ハウジングで遮断位置と待機位置との間をスライドできるよう支持されており、
前記遮断体には、前記給電体の出入りを許す通電開口が形成されており、
前記カバーが閉止された状態において、前記遮断体が前記保持体で待機位置に保持されて、前記給電体が前記通電開口を介して前記受電体と接触して導通状態を保持している請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
絶縁材で形成した前記遮断体が、前記ハウジングで遮断位置と待機位置との間を揺動できるよう支持されており、
前記給電体は前記遮断体に装着されて、前記受電体に対して接離でき、
前記カバーが閉止された状態において、前記遮断体が前記保持体で待機位置に保持されて、前記給電体が前記受電体と接触して導通状態を保持している請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−47970(P2012−47970A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189875(P2010−189875)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】