説明

画像形成装置

【課題】高耐久性と優れたクリーニング性を併せ持つクリーニングブレードを用いることにより、長期に亘って高品質の画像形成が可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジ、並びに前記画像形成装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】クリーニングブレード62の感光体と当接する先端部の、ブレード部材長手方向に対して垂直な断面(カット面)において、アクリレート重合体が表面から含浸しており、前記クリーニングブレードの切片の顕微IR(透過法)により得られた1700cm−1のピーク面積値A、1597cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bの、アクリレートを塗布していないクリーニングブレードの1700cm−1のピーク面積値A0、1597cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0との比率が1.1になる箇所の、前記カット面表面からの距離が5μm〜100μmであることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐久クリーニングブレードを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ、並びに前記画像形成装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置では、感光体に対して帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程を施すことにより画像形成が行なわれる。帯電工程で生成し感光体表面に残る放電生成物および転写工程後に感光体表面に残る(転写)残トナーまたはトナー成分はクリーニングプロセスを経て除去される。
【0003】
画像形成装置の信頼性向上の観点から、感光体には、アモルファスシリコンのような無機系材料を用いたり、有機感光体の表面にアクリレート系材料や無機微粒子を分散させた表面層を有する高耐久感光体が用いられたりするようになってきた。これらの感光体は、クリーニングブレードに対する耐摩耗性に優れるため、従来よりも遥かに長い寿命を実現することができ、メンテナンスの回数を大幅に減らし、感光体の交換を少なくでき、コスト的にも、環境的にも非常に好ましいものであった。
【0004】
しかし、感光体の長寿命化が図れても、クリーニングブレードの寿命も長くできなければ、メンテナンスの回数を減らすことはできない。また、最近の電子写真装置においては、メンテナンスを容易にするため、感光体とクリーニングブレード等の部材を一体にした、所謂プロセスカートリッジが用いられることが多くなってきた。そのため、感光体は充分に使用可能であるにもかかわらず、クリーニングブレードの寿命が律速となってしまい、プロセスカートリッジを交換しないといけなくなっていた。
【0005】
クリーニングブレードは、一般的には、ポリウレタンゴムなどの短冊形状の弾性体であり、クリーニングブレードの基端を支持部材で支持して先端稜線部を感光体の周面に押し当て、感光体上に残留するトナーをせき止めて掻き落とし除去する。
【0006】
近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された小粒径で球形に近いトナー(以下、重合トナーと称する。)を用いた画像形成装置が知られている。この重合トナーは、従来の粉砕トナーに比べて転写効率が高いなどの特徴があり、上記要求に応えることが可能である。しかし、重合トナーは、クリーニングブレードを用いて感光体表面から除去しようとしても充分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。これは、小粒径で且つ球形度に優れた重合トナーが、クリーニングブレードと感光体との間に形成されるわずかな隙間をすり抜けるからである。
【0007】
かかるすり抜けを抑えるには、感光体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要がある。しかし、クリーニングブレードの当接圧を高めると、図9(a)に示すように、感光体(23)とクリーニングブレード(262)との摩擦力が高まり、クリーニングブレード(262)が感光体(23)の移動方向に引っ張られて、クリーニングブレード(262)の先端稜線部(262c)がめくれてしまう。このクリーニングブレード(262)の先端稜線部(262c)がめくれた状態でクリーニングをし続けると、図9(b)に示すように、クリーニングブレード(262)の先端面(262b)の先端稜線部(262c)から数μm離れた場所に局所的な摩耗が生じてしまう。
このような状態で、さらにクリーニングを続けると、この局所的な摩耗が大きくなり、最終的には、図9(c)に示すように、先端稜線部(262c)が欠落してしまう。先端稜線部(262c)が欠落してしまうと、トナーを正常にクリーニングできなくなり、クリーニング不良を生じてしまい、クリーニングブレードの寿命となる。
【0008】
クリーニングブレードの高寿命化に対し、例えば特許文献1(特開2005−107376号公報)には、ポリウレタンエラストマーからなるブレード材料の感光体との当接部に、イソシアネートを0.1mm積層したクリーニングブレードが開示されている。しかしながらこのクリーニングブレードは、アモルファスシリコンのように、表面が平滑な感光体に対しては優れた性能を示すものの、クリーニング性あるいは感光体の耐摩耗性を向上させた、無機微粒子を表面層に用いた有機感光体等の表面を荒らした感光体においては、感光体と接する先端が早期に欠けてしまい、クリーニング不良を発生することが多かった。
【0009】
また、特許文献2(特開2000−66555号公報)には、クリーニングブレードに低摩耗化処理層を設けることにより、感光体とクリーニングブレードの摩擦力を低減させた画像形成装置が開示されている。このクリーニングブレードは、画像形成をそれほど行なっていない初期の場合には、非常に優れたクリーニング性を有している。しかしながら、画像形成を繰り返していると、低摩耗処理層の最表面の低摩耗処理物質が脱落してしまい、感光体とクリーニングブレードの摩擦力が高くなってしまい、クリーニングブレードの欠けが部分的に起きてしまい、クリーニング不良が発生してしまっていた。
【0010】
特許文献3(特許第3602898号公報)には、ポリウレタンエラストマーからなるクリーニングブレードの少なくとも当接部に、アクリルウレタンモノマーを含浸させ、UV光を照射して硬化させたクリーニングブレードが開示されている。このクリーニングブレードは、画像形成を行なう初期においてはクリーニング性に問題はないものの、画像形成を繰り返していくと、感光体と接する先端が欠け、クリーニング不良を引き起こすことが多かった。
特許文献3のアクリルウレタンモノマーの硬度は、ポリウレタンエラストマー中に含浸した状態では測定できないので、アクリルウレタンモノマーをガラス板上に塗布し、UV光を照射して硬化させた膜は、充分な硬度を有していることが確認できたが、アクリルウレタンモノマーを含浸させ、UV光を照射したウレタンエラストマーの硬度は、予想されるよりも遥かに小さく、何も処理していないウレタンエラストマーの硬度とほとんど変化がなかったり、逆に柔らかくなっていることもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、特許文献3のクリーニングブレードの性能が悪い理由を詳細に調べたところ、ウレタンエラストマー中に浸透したアクリルウレタンモノマーの多くが、重合していない、あるいは分子量の小さいオリゴマーにしかなっていないことを見出した。
【0012】
アクリルウレタンモノマーの重合は、アクリルウレタンモノマーに添加されている重合開始剤が、UV光を吸収することでラジカルが発生し、アクリルウレタンモノマーの二重結合を連鎖的に開裂させ、重合していく。ラジカルの寿命は通常数十ナノ秒と短く、多くのラジカルは酸素等により失活してしまうが、充分な光量のUV光が照射され、発生したラジカルの周りにモノマーが存在していれば、重合は円滑に進む。しかし、クリーニングブレードに浸透したアクリルウレタンモノマーの場合、UV光はウレタンエラストマーを介して進入してくるので、ラジカルの発生量が非常に少なく、アクリルウレタンモノマーの濃度そのものも少ないため、ほとんどのアクリルウレタンモノマーが重合できず、重合できている領域は多くて数μmにすぎないことが分かった。ウレタンエラストマー中の未反応のアクリルウレタンモノマー、オリゴマーは、ウレタンエラストマーの強度を弱めてしまうため、クリーニングブレードがわずかに磨耗した段階で、クリーニングブレードが欠け、クリーニング不良を引き起こすことをつきとめた。
【0013】
また本発明者らは、クリーニングブレードの感光体と当接する先端部の、ブレード部材長手方向に対して垂直な断面(カット面)に、アクリルウレタンモノマーを含浸させることで、ブレードめくれを抑制・防止し、耐久性を大幅に向上できることを見出した。
【0014】
本発明者らは、小粒経のトナーをクリーニングするためには図9(a)に示すようなブレードめくれが生じることは避けられないが、前記クリーニングブレードのカット面にアクリルウレタンモノマーを含浸させることで、カット面表面及び近傍の硬度と柔軟性が適度に保たれることにより、ブレードめくれが最小限に抑制されることをつきとめた。また同時に、前記カット面表面の耐摩耗性が上がることで、図9(b)及び(c)に示すような局所的な磨耗及び欠落を防止することができ、クリーニングブレードの耐久性が向上することをつきとめた。
【0015】
本発明は、従来からの諸問題を解決し、高耐久性と優れたクリーニング性を併せ持つクリーニングブレードを用いることにより、長期に亘って高品質の画像形成が可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジ、並びに前記画像形成装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジは、具体的には下記(1)〜(5)に記載の技術的特徴を有する。
【0017】
(1):感光体と、該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナー像化する現像手段と、現像されたトナー像を転写体へ転写する転写手段と、転写残のトナー像をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング手段と、を備える画像形成装置であって、前記クリーニングブレードの前記感光体と当接する先端部のブレード部材長手方向に対して垂直な断面(カット面)において、アクリレート重合体が表面から含浸しており、前記クリーニングブレードの切片の顕微IR(透過法)により得られた1700cm−1のピーク面積値A、1597cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bの、アクリレートを塗布していないクリーニングブレードの1700cm−1のピーク面積値A0、1597cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0との比率が1.1になる箇所の、カット面表面からの距離が5μm〜100μmであることを特徴とする画像形成装置である。
(2):前記クリーニングブレードのカット面は、弾性体ブレードと、該弾性体ブレードの表面に積層されてなる表面層と、を有し、該表面層は、前記アクリレート重合体を含有してなり、厚みが0.1〜3μmであることを特徴とする上記(1)項に記載の画像形成装置である。
(3):上記(1)項または(2)項に記載の、クリーニングブレードを備える画像形成装置を製造する、画像形成装置の製造方法であって、前記クリーニングブレードは、〔工程(I)〕弾性体ブレードを重合性アクリレートモノマーに含浸させた後、〔工程(II)〕エネルギー線を照射することにより、重合性アクリレートモノマーを重合させて製造することを特徴とする画像形成装置の製造方法である。
(4):前記工程(II)は、酸素濃度が2%以下の環境でエネルギー線を照射することを特徴とする上記(3)項に記載の画像形成装置の製造方法である。
(5):上記(1)項または(2)項に記載の画像形成装置に用いられ、クリーニング手段を備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高耐久性と優れたクリーニング性を併せ持つクリーニングブレードを用いることにより、長期に亘って高品質の画像形成が可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジ、並びに前記画像形成装置の製造方法を提供することができる。
すなわち、上記(1)項に記載の構成により、クリーニングブレードのカット面におけるアクリレート重合体の含浸深さを正確に把握でき、前記含浸深さが5μm〜100μmの深さまで含浸することにより、クリーニングブレードのカット面表面近傍の硬度及び柔軟性を適度に保ち、ブレードめくれを最小限に抑制できることで耐久性が大幅に向上し、長期にわたって高画質の画像形成が可能な画像形成装置を提供することができる。
また、上記(2)項に記載の構成により、クリーニングブレードのカット面表面の硬度が適度に上がり、カット面表面の耐摩耗性が向上することで、カット面の局所的な磨耗及び欠落を防ぐことで、耐久性が大幅に向上し、長期にわたって高画質の画像形成が可能な画像形成装置を提供することができる。
さらに、上記(3)項に記載の構成により、アクリレート重合体の重合を短時間で行なうことができる高耐久性ブレードを用いることにより、長期にわたって高画質の画像形成が可能な画像形成装置の製造方法を提供することができる。
さらに、上記(4)項に記載の構成により、クリーニングブレード内部のアクリレートの重合を完全に行なうことができるため、クリーニングブレードの耐久性が大幅に向上し、長期にわたって高画質の画像形成が可能な画像形成装置の製造方法を提供することができる。
さらにまた、上記(5)項に記載の構成により、長期にわたって高画質の画像形成が可能な画像形成装置用のプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態におけるクリーニングブレード(62)の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のクリーニングブレード(62)の拡大断面図である。
【図3】赤外顕微鏡でシリコンウェハ上の切片を見た様子である。
【図4】IRスペクトルの1700cm−1付近を拡大した図である。
【図5】比率をカット面からの距離でプロットしたグラフである。
【図6】本発明に係る画像形成装置の一実施の形態におけるプリンタの要部を示す概略構成図である。
【図7】(a)実際のトナー投影形状の外周長C1、その投影面積Sを示す説明図である。(b)投影面積Sと同じ面積の真円の外周長C2を示す説明図である。
【図8】摩耗幅及び摩耗形態を説明するためのクリーニングブレードを下面側から見た説明図である。
【図9】従来のクリーニングブレードの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る画像形成装置は、感光体と、該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナー像化する現像手段と、現像されたトナー像を転写体へ転写する転写手段と、転写残のトナー像をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング手段と、を備え、前記クリーニングブレードの前記感光体と当接する先端部のブレード部材長手方向に対して垂直な断面(以下カット面と称する)において、アクリレート重合体が表面から含浸しており、前記クリーニングブレードの切片の顕微IR法(透過法)により得られた1700cm−1のピーク面積値A、1597cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bの、アクリレートを塗布していないクリーニングブレードの1700cm−1のピーク面積値A0、1597cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0との比率が1.1になる箇所の、当接面表面からの距離が5μm〜100μmであることを特徴とする。
【0021】
波長1700cm−1のピークはカルボキシル基に対応しており、カルボキシル基はウレタンゴム中にも存在するが、アクリレート重合体中の方が多く存在し濃度が高い。そのため、アクリレート集合体がウレタンゴム中に含浸し、含浸濃度が高くなるほど1700cm−1のピーク面積値Aは大きくなり、ピーク面積値Aの大きさを定量化できればアクリレート重合体の含浸度合いを把握することができる。ピーク面積値Aの大きさを定量化は、ウレタンゴム中のエステル基に対応した波長1597cm−1のピーク面積値Bで規格化し、値A/Bを算出することで行った。この値A/Bがウレタンゴムへのアクリレート重合体の含浸度合いの指標といえる。
そして、値A/Bをアクリレート重合体含浸前のウレタンゴムにおける波長1700cm−1面積値A0、及び1597cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0と比較することにより、ウレタンゴムへのアクリレート重合体の含浸が薄い場合でも把握することができる。
つまり、比率〔(A/B)/(A0/B0)〕の値が1以上であればアクリレート重合体がウレタンゴムへ含浸していると考えられるが、微量な測定誤差も考慮すると、値が1.1以上であればアクリレート重合体は確実にウレタンゴムへ含浸していると言える。比率〔(A/B)/(A0/B0)〕の値が1.1になる箇所が、ウレタンゴムへのアクリレート重合体の含浸深さに対応している。
【0022】
ここで、本発明者らは、顕微IR法(透過法)を用いることにより、前記クリーニングブレードのカット面におけるアクリレートの含浸深さを正確に把握し、前記含浸深さを5μm〜100μmに制御できることを見出した。
また、アクリルウレタンモノマーの重合が酸素により阻害されるのであるのなら、低酸素濃度の環境であれば、UV光の光量が低く、アクリレートモノマーの濃度が低い状況においても、アクリレートの重合が円滑に進行するのではないかと考え、鋭意検討を重ねた。
この結果、低酸素濃度、特に酸素濃度が2%以下の環境であれば、クリーニングブレード中にアクリレートモノマーを含浸させ、重合ができることを見出した。
そのようにして作製したクリーニングブレードが、非常に優れた耐久性とクリーニング性を併せ持つことを見出し、本発明に至った。
【0023】
次に、本発明に係る画像形成装置についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
<クリーニングブレード>
図1は、クリーニングブレード(62)の斜視図であり、図2は、クリーニングブレード(62)の拡大断面図である。
クリーニングブレード(62)は、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー(621)と、短冊形状の弾性体ブレード(622)とで構成されている。弾性体ブレード(622)は、ホルダー(621)の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー(621)の他端側は、クリーニング装置(6)のケースに片持ち支持されている。
【0025】
〔弾性体ブレード〕
本発明の画像形成装置の用いられるクリーニングブレードの母体に使用される弾性体ブレード(以下、クリーニングブレードの母体とも称する。(622)は、従来公知の組成、工法で製造することができる。
弾性体ブレード(622)としては、感光体(3)の偏心や感光体表面の微小なうねりなどに追随できるように、高い反発弾性率を有するものが好ましく、ウレタン基を含むゴムであるウレタンゴム(ポリウレタンエラストマー)などが好適である。また、この弾性体ブレード(622)は後述する表面層(623)をその表面に有する構成とすることが好ましい。
【0026】
ポリウレタンエラストマーは、通常、ポリオール成分としてポリエチレンアジペートエステルやポリカプロラクトンエステルを用い、ポリイソシアネート成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いてプレポリマーを調製し、これに硬化剤及び必要に応じて触媒を加えて、所定の型内にて架橋し、炉内にて後架橋させた後、常温で放置熟成することによって製造されている。
【0027】
高分子量ポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体であるポリエステルポリオール、例えば、エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、エチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオールのようなアルキレングリコールとアジピン酸とのポリエステルポリオール等のポリエステル系ポリオール、カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルポリオール等のポリカプロラクトン系ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール等が用いられる。
【0028】
他に低分子量ポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン−ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフエニルメタン、4,4’−ジアミノジフエニルメタン等の二価アルコールや、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,1,1−トリス(ヒドロキシエトキシメチル)プロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の三価及びそれ以上の多価アルコールを挙げることができる。
【0029】
硬化触媒の具体例として、例えば、2−メチルイミダゾールや1,2−ジメチルイミダゾールを挙げることができるが、特に、1,2−ジメチルイミダゾールが好ましく用いられる。このような触媒は、通常、主剤100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で用いられる。
【0030】
クリーニングブレードのカット面表面から5μm〜100μm、好ましくは8μm〜80μm、さらに好ましくは10μm〜60μmの深さまで、アクリレート重合体を含浸させる。
【0031】
アクリレート重合体がクリーニングブレードのカット面に含浸している深さが5μmより小さいと、カット面表面及び近傍の硬度を適度に上げることができないため、ブレードめくれを予防できず、アクリレート重合体を含浸していないクリーニングブレードよりもむしろ耐久性、クリーニング性を悪化させてしまう。また、アクリレート重合体が含浸している深さをクリーニングブレードの長手方向全体にわたって均一にすることは難しいため、クリーニングブレードの機械的特性にばらつきが生じてしまい、機械的特性の弱い場所からクリーニングブレードが欠けやすくなってしまう。
また、クリーニングブレード母体(弾性体ブレード)のカット面表面に、アクリレート重合体を積層する(アクリレート重合体を含む表面層を積層する)場合では、アクリレート重合体の含浸している深さが5μmより小さいと、表面に積層したアクリレート重合体膜の割れや剥離が生じやすく、クリーニングブレードの耐久性は非常に短くなってしまう。
【0032】
アクリレート重合体がクリーニングブレードのカット面に含浸している深さが100μmより大きいと、クリーニングブレード全体の柔軟性が低下するため、クリーニング性が低下するとともに、クリーニングブレードの欠けも生じやすくなる。
【0033】
クリーニングブレード母体(弾性体ブレード)のカット面にアクリレート重合体を積層する(アクリレート重合体を含む表面層を積層する)際には、アクリレートモノマーをクリーニングブレード母体にスプレー、ディッピング等の方法により供給して、かつ充分に含浸させ、しかる後にUV光、電子線等のエネルギー線を照射することで、クリーニングブレード母体のカット面表面に表面層が積層されると共に、クリーニングブレード母体中にアクリレート重合体を適切に含浸させることができる。
【0034】
エネルギー線を照射する際のクリーニングブレード付近の酸素濃度は、2%以下、好ましくは1%以下であることが好ましい。クリーニングブレード付近の酸素濃度が2%より高くなると、クリーニングブレード内部のアクリレートモノマーは、未反応あるいはオリゴマーにしかならないので、内部でのクリーニングブレードの強度を低下させてしまい、クリーニングブレードの欠けが生じやすく、好ましくない。
【0035】
アクリレートモノマーや、必要によりアクリレートモノマーの粘度を下げる溶剤には、溶存酸素を通常含んでいるため、ヘリウムやアルゴン、窒素等の不活性ガスをバブリングしたり、減圧脱気を行なうことにより、溶存酸素を除去していることが好ましい。
【0036】
〔表面層〕
表面層(623)の材質としては、樹脂が好ましく、樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ラクトン変性アクリルウレタン、アクリルシリコーン、熱可塑性ウレタン、フェノール樹脂等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これに限定するものではないが、クリーニングブレード内に含浸させたアクリレート重合体と同一の物質であることが、表面層の接着性を高め、クリーニングブレードの耐久性を向上させるうえで好ましい。
【0037】
表面層(623)の当接面の層厚は0.1〜3μmにすることが好ましい。層厚が0.1μmより小さくすることは、表面層を設けない場合と変わらずクリーニングブレードのめくれが生じやすくなる。また、表面層がクリーニングブレードに含浸しているアクリレート重合体と同一の場合、0.1μmよりも薄くすること自体が難しい。3μmより大きいと、剛性が強くなりクリーニングブレードの欠けが発生しやすくなり、また耐摩耗性が悪化する。
【0038】
[顕微IR法(透過法)]
次に本発明に用いた顕微IR法(透過法)について説明する。
本発明のクリーニングブレードの顕微IR法(透過法)は、クリーニングブレードの切片の測定を行なう。前記クリーニングブレードの切片はクライオミクロトームで切片を作製したものであり、前記切片をシリコンウェハ上に載せ、測定を行なう。
【0039】
〔切片作製〕
本発明で用いたクライオミクロトームの装置はEM FCS(Leica社製)である。
液体窒素により、サンプルの温度を−100℃に冷却して切削する。クライオミクロトームの切削方向は、カット面に垂直な方向に行なう。切削する箇所は当接先端部からカット面に沿って5〜10mmの距離である。前記箇所であると、クライオミクロトームによる切片作製が安定して行なえる。切片の厚さは300〜500nmが望ましい。300nm以下であると、薄すぎるために測定データの感度が下がり、正確な含浸深さを測定できない上、切片が途中で切れてしまうことがある。500nm以上であると、厚すぎるために光が透過せずに測定データがうまく得られない上、切片が丸まりやすく回収しにくい。
【0040】
〔ピーク面積値測定〕
前記クライオミクロトームにより作製した切片をシリコンウェハ上に載せ、顕微IR(透過法)により測定する。本発明で用いたIR装置本体はFT/IR−6100、赤外顕微鏡はIRT−5000(日本分光社製)である。前記赤外顕微鏡で切片を見た様子を図3に示す。図3の右側半分が切片、左側半分がシリコンウェハであり、境界がカット面表面である。アパーチャサイズは当接面の垂直方向×当接面方向で、3×20μm角で行ない、シリコンウェハ上の切片のカット面表面側から垂直方向に3μmずつづらして連続で測定する。各測定点におけるカット面からの距離は、切片にかかる測定領域の中心とした。
前記測定方法で得られたスペクトルの1700cm−1付近を拡大した様子を図4に示す。本発明で用いる1700cm−1のピーク面積値Aとは、ピークトップが1733cm−1のピークの低波長側の肩の部分の吸収スペクトラムの積分面積である。また、1579cm−1のピーク面積値Bとは、ピークトップが1579cm−1のピークの吸収スペクトラムの積分面積である。前記A及びBを求める際のバックグラウンドの始点(低波長点)及び終点の波数及び面積の積分範囲を下記の表1に示す。
A0及びB0の算出方法も前記と同様で、アクリレート重合体を塗布していないクリーニングブレードの切片を顕微IR(透過法)で測定することで得られる。
上記の方法を用いれば、顕微ATR法でも同様の結果が得られる。
【0041】
【表1】

【0042】
〔A/BのA0/B0との比率〕
前記A、B、A0、B0から、A/B及びA0/B0を算出し、A/BのA0/B0に対する比率を求める。前記比率はクリーニングブレード中のアクリレート重合体の含浸濃度が小さくなるに伴い1に近づく。前記比率をカット面からの距離でプロットしたグラフを図5に示す。本発明では前記比率が1.1に達した箇所をアクリレート重合体の含浸深さと判断し、含浸深さの制御に用いる。前記比率が1.1以上であれば、アクリレート重合体の含浸が確実であると判断でき、1.1に達した箇所を読むことで正確に含浸深さ判定が行なえる。図5ではアクリレート重合体の含浸深さは16.5μmと判断される。
【0043】
[画像形成装置]
次に本発明に係る画像形成装置の一実施の形態である電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。
図6は、本実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。プリンタは、単一色の複写を行なうものであり、図示しない画像読み取り部で読み取った画像データに基づいてモノクロ画像形成を行なう。
【0044】
図6に示すように、プリンタは、像担持体としてのドラム状の感光体(3)を備えている。感光体(3)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0045】
感光体(3)の周囲には帯電手段としての帯電装置(4)、潜像をトナー像化する現像手段である現像装置(5)、トナー像を記録媒体としての転写紙(転写体)に転写する転写手段としての転写装置(7)、転写後の感光体(3)上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング装置(6)、感光体(3)上に滑剤を塗布する滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置(10)、感光体(3)を除電する除電ランプ(不図示)等が配置されている。
【0046】
帯電装置(4)は、感光体(3)に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体(3)を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電装置(4)によって一様帯電された感光体(3)は、図示しない潜像形成手段たる露光装置から画像データに基づいて光Lが照射され静電潜像が形成される。
【0047】
現像装置(5)は、現像剤担持体としての現像ローラ(51)を有している。この現像ローラ(51)には、図示しない電源から現像バイアスが印加されるようになっている。
現像装置(5)のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ(52)及び攪拌スクリュ(53)が設けられている。また、現像ローラ(51)に担持された現像剤を規制するためのドクタ(54)も設けられている。供給スクリュ(52)及び攪拌スクリュ(53)の2本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ(51)に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ(54)により規制され、感光体(3)と対向する現像領域でトナーが感光体(3)上の潜像に付着する。
【0048】
クリーニング装置(6)は、クリーニングブレード(62)を有しているがファーブラシをさらに有する構成としてもよい。クリーニングブレード(62)は、感光体(3)の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体(3)に当接している。なお、クリーニングブレード(62)の詳細については前述したとおりである。
【0049】
潤滑剤塗布装置(10)は、固形潤滑剤(103)、潤滑剤加圧スプリング(不図示)、ファーブラシ(101)等を備え、固形潤滑剤(103)を感光体(3)上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ(101)を用いている。固形潤滑剤(103)は、図示しないブラケットに保持され、潤滑剤加圧スプリング(不図示)によりファーブラシ(101)側に加圧されている。そして、感光体(3)の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ(101)により固形潤滑剤(103)が削られて感光体(3)上に潤滑剤が塗布される。感光体への潤滑剤塗布により感光体表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。
【0050】
帯電装置(4)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の手段が用いられる。
これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。接触帯電方式あるいは非接触の近接配置方式の場合、感光体(3)からトナーなどが帯電装置(4)に移行し汚染されるため、帯電装置(4)のクリーニング機構(8)を設けることが好ましい。
【0051】
また、図示しない露光装置、除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800nmの長波長光を有するため、良好に使用される。
【0052】
次に、プリンタにおける画像形成動作を説明する。
図示しない操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電装置(4)、現像ローラ(51)にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、露光装置及び除電ランプなどにもそれぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体(3)が時計回りの方向に回転駆動される。
【0053】
感光体(3)が時計回りの方向に回転すると、まず感光体表面が、帯電装置(4)によって所定の電位に帯電される。そして、図示しない露光装置から画像信号に対応した光Lが感光体(3)上に照射され、光Lが照射された部分の感光体(3)上が除電され静電潜像が形成される。
【0054】
静電潜像の形成された感光体(3)は、現像装置(5)との対向部で現像ローラ(51)上に形成された現像剤の磁気ブラシで感光体(3)表面を摺擦される。このとき、現像ローラ(51)上の負帯電トナーは、現像ローラ(51)に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。このように、本実施形態では、感光体(3)上に形成された静電潜像は、現像装置(5)によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
【0055】
感光体(3)上に形成されたトナー像は、図示しない給紙部から上レジストローラと下レジストローラとの対向部を経て、感光体(3)と転写装置(7)との間に形成される転写領域に給紙される転写紙に転写される。このとき、転写紙は上レジストローラと下レジストローラとの対向部で画像先端と同期を取り転写ベルト(14)上に供給される。また、転写紙への転写時には、所定の転写バイアスが印加される。トナー像が転写された転写紙は感光体(3)から分離され、図示しない定着手段としての定着装置へ搬送される。そして、定着装置を通過することにより、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙上に定着されて、転写紙は機外に排出される。
【0056】
一方、転写後の感光体(3)の表面は、クリーニング装置6で転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置(10)によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
【0057】
尚、以上説明した例は感光体(3)から転写体としての転写紙にトナー像を直接転写される方式を採用した実施形態であるが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。即ち、感光体(3)から中間転写体としての中間転写ベルトにトナー像を1次転写し、この中間転写ベルト上のトナー像を転写紙に(2)次転写する、所謂中間転写方式を採用してもよい。
この他、各色に対応した複数の現像装置(5)を有しカラー画像を形成する、周知慣用のカラー画像形成方式を採用したカラー画像形成装置としてもよい。
【0058】
また、本プリンタにおいては、感光体(3)と、プロセス手段として帯電装置(4)、現像装置(5)、クリーニング装置(6)、潤滑剤塗布装置(10)などが枠体(2)に収められており、プロセスカートリッジ(1)として装置本体から一体的に着脱可能となっている。なお、本実施形態では、プロセスカートリッジ(1)としての感光体(3)とプロセス手段とを一体的に交換するようになっているが、感光体(3)、帯電装置(4)、現像装置(5)、クリーニング装置(6)、潤滑剤塗布装置(10)のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
【0059】
〔トナー〕
次に、本プリンタに好適なトナーについて説明する。
本プリンタに用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。
特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5μm以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5μmのものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
【0060】
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1万個/μlとなるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図7(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図7(b)に示す真円の外周長をC2としたときのC2/C1を求め、その平均値を円形度とした。
【0061】
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。
具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析するのである。より詳しくは、1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理する。そして、別のビーカーに電解水溶液100〜200mlを入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。アパーチャーとしては、100μmのものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上32.0μm以下のトナー粒子を対象とする。そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、Xは各チャンネルにおける代表径、Vは各チャンネルの代表径における相当体積、fは各チャンネルにおける粒子個数である。
【実施例】
【0062】
表面層(623)の材質、層厚、含浸処理をそれぞれ変化させて、耐久試験を行なった。
【0063】
[母体の弾性体ブレード]
弾性体ブレード(622)としては、リコー製 imagio Neo C4500で用いられているポリウレタン製のクリーニングブレードを使用した。
【実施例1】
【0064】
[表面層]
実施例1ではスプレー塗工により当接先端部に表面層を形成した。
スプレー装置は、オリンポス社製 PC−308WIDEを用い、当接先端部から40mm離れたところから、0.5MPaの圧力で7mm/sの速度でスプレーガンを移動させながら所定の層厚となるように吐出量を調整して塗工した。その後、5分間放置後、30℃で10分間真空乾燥を行なった後、紫外線(UV)照射(1000mJ/cm)を行ない、表面層を形成すると共に含浸した重合性アクリレートモノマーを重合させた。
スプレー塗工液に用いた薬品は、全て凍結真空脱気を行ない、酸素を除去したものを用いた。スプレー塗工、乾燥は、ガラス製容器内で酸素濃度が100ppm以下の環境で行なった。
【0065】
(アクリレート材料1)
日本化薬社製 KAYARAD DPCA−120:27部
チバケミカル社製I−184:1部
2−ブタノール:72部
【0066】
(アクリレート材料2)
日本化薬社製 KAYARAD TMPTA:27部
チバケミカル社製I−184:1部
2−ブタノール:72部
【0067】
(アクリレート材料3)
日本化薬社製 KAYARAD R−526:27部
チバケミカル社製I−184:1部
2−ブタノール:72部
【0068】
以下に示す実施例1〜6および比較例1〜4のそれぞれについて、同一条件で作製したクリーニングブレードを二本準備し、一本の長手方向中央をクライオミクロトームで厚さ400nmの切片を作製し、シリコンウェハ上に切片を載せ、光学顕微鏡及びSEMによりカット面表面層の膜厚を測定した。また、クリーニングブレードの端部よりカット面に沿って5mmの箇所から内側に向かって、顕微IR(透過法)により測定を行ない、アクリレート重合体の含浸の深さを測定した。アクリレート重合体の含浸の深さは、前記A/BのA0/B0に対する比率が1.1に達した箇所で評価した。
【0069】
アクリレート重合体1(アクリレート材料1が重合したもの)
表面層の厚み:0.9μm
アクリレート重合体の含浸深さ:6.5μm
【実施例2】
【0070】
アクリレート重合体2(アクリレート材料2が重合したもの)
表面層の厚み:0.5μm
アクリレート重合体の含浸深さ:11.5μm
【実施例3】
【0071】
アクリレート重合体3(アクリレート材料3が重合したもの)
表面層の厚み:0.5μm
アクリレート重合体の含浸深さ:15.5μm
【実施例4】
【0072】
弾性体ブレードを入れたガラス製容器内を10mmHgまで減圧し、容器内を減圧した状態で、弾性体ブレードの所望の箇所にアクリレート材料1が含浸するようにアクリレート材料1を容器内に注入し、30秒間その状態を保持した。容器内を常圧にし、弾性体ブレード表面のアクリレート材料1をマイクロワイプによりふき取った後、実施例1と同様に乾燥、UV照射を行ない、表面層を形成すると共に含浸した重合性アクリレートモノマーを重合させた。
【0073】
表面層の厚み:0.2μm
アクリレート重合体の含浸深さ:45.5μm
【実施例5】
【0074】
実施例4おいて、アクリレート材料1を容器内に注入した後、2分間その状態を保持する以外は実施例4と同様に乾燥、UV照射を行ない、表面層を形成すると共に含浸した重合性アクリレートモノマーを重合させた。
【0075】
表面層の厚み:0.1μm
アクリレート重合体の含浸深さ:92.5μm
【実施例6】
【0076】
実施例3において、UV照射を行なう際、酸素濃度が、1.8%の環境で行なう以外は、実施例3と同様にクリーニングブレードを作製した。
【0077】
表面層の厚み:0.5μm
アクリレート重合体の含浸深さ:11.5μm
【0078】
[比較例1]
母体の弾性体ブレードの未処理品をそのままクリーニングブレードとした。
【0079】
[比較例2]
実施例1において、アクリレート材料3の2−ブタノールを74部から140部とする以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。
【0080】
表面層の厚み:0.1μm
アクリレート重合体の含浸深さ:4.5μm
【0081】
[比較例3]
実施例4において、アクリレート材料1の代わりに、アクリレート材料3を用い、アクリレート材料3を容器内に注入した後、20分間その状態を保持する以外は実施例4と同様に乾燥、UV照射を行ない、表面層を形成すると共に含浸した重合性アクリレートモノマーを重合させた。
【0082】
表面層の厚み:0.1μm
アクリレート重合体の含浸深さ:115.5μm
【0083】
[比較例4]
実施例3において、アクリレート材料3の2−ブタノールを72部から120部とし、スプレー塗工、乾燥、UV照射を全て大気中で行ない、表面層を形成すると共に含浸した重合性アクリレートモノマーを重合させた以外は実施例3と同様に、クリーニングブレードを作製した。
【0084】
表面層の厚み:0.6μm
アクリレート重合体の含浸深さ:0.5μm
【0085】
[比較例5]
母体の弾性体ブレード以外は特許文献3の実施例2と同様の方法でクリーニングブレードを作製した。
【0086】
表面層の厚み:15μm
アクリレート重合体の含浸深さ:0.5μm
【0087】
次に、検証実験を行なった画像形成装置の構成について説明する。
上記のクリーニングブレードをリコー製カラー複合機imagio Neo C4500に取り付け、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例4の画像形成装置を作製した。また、トナーは重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
【0088】
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9μm
外添剤:小粒径シリカ1.5部(クラリアント社製 H2000)
小粒径酸化チタン:0.5部(テイカ社製 MT−150AI)
大粒径シリカ:1.0部(電気化学工業社製 UFP−30H)
【0089】
検証実験は、実験室環境:21℃・65%RH、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4横)で行なった。そして、以下の項目を評価した。
【0090】
[評価項目]
クリーニング不良発生:有無(目視観察:良好なものから順に◎、○、△、×、××で評価し、◎及び○を合格とした。)
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43mm幅、3本チャート出力20枚(A4横)
クリーニングブレードエッジ摩耗幅、摩耗形態:図8に示すようにクリーニングブレード下面側からみた摩耗幅、摩耗形態
【0091】
以下に実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例5のクリーニングブレードの検証実験結果を示す。なお、表面層の層厚は、キーエンス社製 マイクロスコープ VHX−100を用い、別途同様に塗工した弾性体ブレードの断面により測定した。試料は日進EM社製
SEM試料作製用トリミングカミソリを用い断面を切断したものとした。
【0092】
【表2】

【0093】
上記表2は、実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例5の検証実験の結果をまとめたものである。
実施例1〜実施例6においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができた。また摩耗形態も未処理品の比較例1はえぐれが発生していたが、実施例1〜6はえぐれは発生しておらず、エッジから綺麗な摩耗をしていた。また、摩耗幅も未処理品と比べて小さくなっており、耐摩耗性が向上していることが確認できた。それに対して、比較例2〜3は、未処理品と同様にえぐれが発生しており、摩耗幅も未処理品と同等レベルであった。また、比較例4は、欠けが多く発生しておりそれによってクリーニング性が大幅に悪化していた。比較例5も同様に、欠けが多く発生しておりそれによってクリーニング性が大幅に悪化していた。同様に、特許文献3(例えば同特許文献3の実施例2その他箇所)において、「含浸」という言葉が使われているものの、前記本明細書記載の方法で含浸の深さを測定すると、含浸していないことが確認され、本発明の比較例5において実際に含浸の深さを測定すると、0.5μmとほとんど含浸していなかった。
【符号の説明】
【0094】
1 プロセスカートリッジ
2 枠体
3 感光体
4 帯電装置
5 現像装置
6 クリーニング装置
7 転写装置
10 潤滑剤塗布装置
14 転写ベルト
51 現像ローラ
52 供給スクリュ
53 攪拌スクリュ
54 ドクタ
62 クリーニングブレード
62a 先端面
62b ブレード下面
62c 先端稜線部
101 ファーブラシ
103 固形潤滑剤
262 クリーニングブレード
262a 先端面
262b ブレード下面
262c 先端稜線部
621 ホルダー
622 弾性体ブレード
623 表面層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2005−107376号公報
【特許文献2】特開2000−66555号公報
【特許文献3】特許第3602898号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
該感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナー像化する現像手段と、
現像されたトナー像を転写体へ転写する転写手段と、
転写残のトナー像をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング手段と、
を備える画像形成装置であって、
前記クリーニングブレードの前記感光体と当接する先端部の、
ブレード部材長手方向に対して垂直な断面(カット面)において、
アクリレート重合体が表面から含浸しており、
前記クリーニングブレードの切片の顕微IR(透過法)により得られた1700cm−1のピーク面積値A、1597cm−1のピーク面積値Bから算出される値A/Bの、
アクリレートを塗布していないクリーニングブレードの1700cm−1のピーク面積値A0、1597cm−1のピーク面積値B0から算出される値A0/B0との比率が1.1になる箇所の、
前記カット面表面からの距離が5μm〜100μmであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニングブレードのカット面は、
弾性体ブレードと、該弾性体ブレードの表面に積層されてなる表面層と、を有し、
該表面層は、前記アクリレート重合体を含有してなり、
厚みが0.1〜3μmであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の、クリーニングブレードを備える画像形成装置を製造する、
画像形成装置の製造方法であって、
前記クリーニングブレードは、
〔工程(I)〕弾性体ブレードを重合性アクリレートモノマーに含浸させた後、
〔工程(II)〕エネルギー線を照射することにより重合性アクリレートモノマーを重合さ
せて製造することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(II)は、酸素濃度が2%以下の環境でエネルギー線を照射することを特徴と
する請求項3に記載の画像形成装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の画像形成装置に用いられ、クリーニング手段を備えることを
特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−58528(P2012−58528A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202251(P2010−202251)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】