説明

画像形成装置

【課題】非画像形成時において感光体ドラムのドラム表面が逆帯電することを抑制して、地カブリ、諧調不良等の画像欠陥を抑制することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、転写部材46に対して、第1バイアスおよび第1バイアスとは逆極性の第2バイアスを印加する第1印加部53と、ドラム表面16に対して、第1バイアスとは逆極性のドラムバイアスを印加する第2印加部52と、第1印加部53および第2印加部52を制御するバイアス制御部Uとを含む。バイアス制御部Uは、非画像形成時において、第1印加部53を制御して、第1バイアスおよび第2バイアスを交互に所定の周期で転写部材46に印加させることにより、転写部材46に付着したトナーを転写部材46から除去しつつ、第2印加部52を制御してドラムバイアスをドラム表面16に印加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置は、トナー像が形成される感光体ドラムと、感光体ドラムのドラム表面にトナーを供給してドラム表面上にトナー像を形成する現像器と、ドラム表面との間でニップ部を形成し、ドラム表面上のトナー像を用紙上に転写する転写ローラとを、主要な構成要素として含む。感光体ドラムとして、例えば、正負のいずれにも帯電可能な特性を備えたOPCドラムが用いられる。
【0003】
この種の画像形成装置では、画像形成動作を続けていると、感光体ドラムから転写ローラにトナーが移動して、転写ローラ上にトナーが堆積する。転写ローラ上に堆積するトナーの大部分は、正帯電されているが、一部が転写ローラに印加されているバイアスによって逆帯電される。また、キャリアを用いず、トナーのみを含む一成分現像剤でトナー像を形成する現像器が用いられている場合でも、所謂リフレッシュ動作によって感光体ドラムのドラム表面に排出された逆帯電のトナーが転写ローラに移動し、堆積する。転写ローラ上に堆積したトナーは、用紙の裏面汚れを引き起こす。
【0004】
そのような不都合を抑制するために、堆積したトナーは、次のようにして転写ローラから除去されることが一般的である。すなわち、転写ローラに対して、画像形成時に転写ローラに印加される順バイアスと、順バイアスとは逆極性の逆バイアスとを交互に印加することで、転写ローラ上からトナーを除去する。逆バイアスにより、正帯電したトナーを除去することができ、順バイアスにより、逆帯電したトナーを除去することができる。
【0005】
図8は、感光体ドラムのドラム表面に印加されるドラムバイアス、現像器の現像ローラに印加される現像バイアスおよび転写ローラに印加される転写バイアスのシーケンス制御を示す図である。同図に示すように、画像形成時では、まず、ドラム表面にドラムバイアスが印加され、次に、適切なタイミングで、現像バイアスが現像ローラに印加され、転写順バイアスが転写ローラに印加される。そのため、現像ローラとドラム表面との間、およびドラム表面と転写ローラとの間のそれぞれに電位差が形成され、トナーがそれらの電位差に従って現像ローラ、ドラム表面、ニップ部を通過しようとしている用紙の順に移動する。これにより、用紙上にトナー像が転写される。このようにトナー像の転写が行われる一方で、トナーが電位差に従ってドラム表面から転写ローラに移動し、堆積する。
【0006】
一方、非画像形成時において上記のトナー除去方法が実行される。トナー除去を行うに当たり、図8に示すように、ドラムバイアスおよび現像バイアスは停止され、転写バイアスは、順バイアスと逆バイアスとが所定の周期で交互に印加されるように制御される。これにより、上記したように転写ローラ上から堆積トナーが除去される。
【0007】
例えば、特許文献1の画像形成装置では、感光体ドラムのドラム表面上のトナーがニップ部に到達する前に、転写ローラに対して、画像形成時に印加される順バイアスとは逆極性の、かつトナーとは逆極性の逆バイアス(マイナスバイアス)を印加することで、画像形成動作の終了後にトナーが転写ベルト上に堆積することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−89942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8に示すように、非画像形成時(つまり、トナー除去の実行時)では、ドラム表面に対してドラムバイアスが印加されていない。また、特許文献1の画像形成装置においても、転写ローラに対して逆バイアスが印加されているとき、ドラムバイアスは印加されていない。そのため、感光体ドラムが、正負のいずれにも帯電可能な特性を備えたOPCドラムである場合、転写ローラと接触状態にあるドラム表面は、転写ローラに対して印加されている逆バイアスにより、画像形成時とは逆の極性に帯電する。
【0010】
具体的には、ドラム表面に対して画像形成時に印加されるドラムバイアスがプラスバイアスであり、転写ローラに対して非画像形成時に印加される順バイアスがマイナスバイアスである場合、ドラム表面は、その順バイアスにより、図9に示すようにマイナスに帯電される。
【0011】
したがって、このようにドラム表面がマイナスに帯電した状態で、画像形成動作を開始するためにドラム表面に対してドラムバイアス(プラスバイアス)を印加すると、ドラム表面は通常よりも低い電位(0V以下)から立ち上がることになる。そのため、ドラム表面の電位は、図9において矢印Aで示すように、約250Vまでしか達せず、ドラム表面は十分な電位を得ることが難しくなる。現像ローラに印加される現像バイアスは約200Vであるため、ドラム表面と現像ローラとの間に十分な電位差が形成されない。その結果、十分な量のトナーが現像ローラからドラム表面に移動せず、地カブリ、諧調不良等の画像欠陥が引き起こされる。
【0012】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、非画像形成時において感光体ドラムのドラム表面が逆帯電することを抑制して、地カブリ、諧調不良等の画像欠陥を抑制することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、正負の両方に帯電する特性を備えたドラム表面を有し、該ドラム表面上にトナー像が形成される感光体ドラムと、前記感光体ドラムの前記ドラム表面にトナーを供給して前記トナー像を形成する現像器と、前記感光体ドラムの前記ドラム表面に接触した状態で対向配置された転写部材であって、用紙が通過するニップ部を前記ドラム表面との間で形成し、前記ドラム表面上の前記トナー像を前記ニップ部において前記用紙上に転写する転写部材と、前記転写部材に対して、第1バイアスおよび前記第1バイアスとは逆極性の第2バイアスのうちの一方を選択的に印加する第1印加部と、前記感光体ドラムの前記ドラム表面に対して、前記第1バイアスとは逆極性のドラムバイアスを印加する第2印加部と、前記第1印加部および前記第2印加部を制御するバイアス制御部とを含む。前記バイアス制御部は、前記ドラム表面上に前記トナー像が形成される画像形成時において、前記第1印加部を制御して前記第1バイアスを前記転写部材に印加させると共に、前記第2印加部を制御して前記ドラムバイアスを前記ドラム表面に印加させることにより、前記ドラム表面上の前記トナー像が前記用紙上に転写されるように前記転写部材と前記ドラム表面との間に電位差を生じさせ、一方、前記ドラム表面上に前記トナー像が形成されない非画像形成時において、前記第1印加部を制御して、前記第1バイアスおよび前記第2バイアスを交互に所定の周期で前記転写部材に印加させることにより、前記転写部材に付着したトナーを前記転写部材から除去しつつ、前記第2印加部を制御して前記ドラムバイアスを前記ドラム表面に印加させる。
【0014】
本発明に係る画像形成装置では、画像形成時においてドラム表面上のトナーの一部が転写部材に移動し、帯電した状態で堆積するが、バイアス制御部は、非画像形成時において、第1印加部を制御して、転写部材に対して第1バイアスおよび第2バイアスを交互に所定の周期で印加させる。これにより、転写部材から帯電した状態の堆積トナーが除去される。そして、このとき、バイアス制御部は、第2印加部を制御して、第1バイアスとは逆極性のドラムバイアスをドラム表面に対して印加させている。そのため、感光体ドラムが正負の両方に帯電する特性を備えたドラム(例えば、OPCドラム)であっても、転写部材と接触状態にあるドラム表面が、第1バイアスによって該第1バイアスの極性と同一の極性に帯電されることが抑制される。これにより、画像形成動作が再開され、ドラムバイアスがドラム表面に印加されたとき、ドラム表面が十分な電位を得ることが容易となる。その結果、地カブリ、諧調不良等の画像欠陥の発生が抑制され、ドラム表面上に良好なトナー像が形成される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記バイアス制御部は、前記非画像形成時において前記ドラム表面に印加される前記ドラムバイアスが前記画像形成時よりも小さくなるように前記第2印加部を制御する。
【0016】
この構成によれば、ドラムバイアスによるドラムへの負荷を軽減することができる。
【0017】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記感光体ドラムは、回転可能に構成されており、前記ドラム表面は、前記非画像形成時において前記ドラムバイアスが最も先に印加される印加部位を有し、前記バイアス制御部は、前記非画像形成時において、前記感光体ドラムの回転に伴って前記印加部位が前記ニップ部に到達するタイミングに合わせて前記転写ローラに対して前記第1バイアスを印加させる。
【0018】
この構成によれば、ドラム表面の印加部位がニップ部に到達するタイミングに合わせて転写ローラに対して第1バイアスが印加される。そのため、感光体ドラムの回転方向から見てドラム表面における印加部位よりも上流側部位が、転写ローラに対して印加された第1バイアスによって該第1バイアスの極性と同一の極性に帯電されることが抑制される。これに対し、非画像形成時においてドラムバイアスと第1バイアスとが印加されるタイミングが同一であると、ドラム表面の印加部位は、ドラムバイアスの極性と同一の極性に帯電されるものの、ドラム表面の前記上流側部位は、第1バイアスの極性と同一の極性に帯電されてしまう。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る画像形成装置によれば、非画像形成時において感光体ドラムのドラム表面が逆帯電することを抑制して、地カブリ、諧調不良等の画像欠陥を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像形成装置の内部構造を概略的に示す図である。
【図2】画像形成装置のバイアスの制御系を示す模式図である。
【図3】感光体ドラムのドラム表面に印加されるドラムバイアス、現像器の現像ローラに印加される現像バイアスおよび転写ローラに印加される転写バイアスのシーケンス制御を示す図である。
【図4】ドラム表面および転写ローラの電位の変化を経時的に示す図である。
【図5】ドラムバイアス、現像バイアスおよび転写バイアスの他のシーケンス制御を示す図である。
【図6】ドラム表面に対するドラムバイアスの印加タイミングを説明するための模式図である。
【図7】ドラム表面に対するドラムバイアスの印加タイミングを説明するための模式図である。
【図8】感光体ドラムのドラム表面に印加されるドラムバイアス、現像器の現像ローラに印加される現像バイアスおよび転写ローラに印加される転写バイアスの従来のシーケンス制御を示す図である。
【図9】図8の従来のシーケンス制御例におけるドラム表面および転写ローラの電位の変化を経時的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。尚、本発明の一実施形態として、以下の説明では、画像形成装置としてモノクロタイプのプリンタを示すが、本発明は、これに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機などの他の画像形成装置にも適用可能である。
【0022】
図1は、画像形成装置1の内部構造を概略的に示す図である。図2は、画像形成装置1のバイアスの制御系を示す模式図である。画像形成装置1は、外部(例えばパーソナルコンピュータ)からの画像データに基づいて用紙P上にトナー像を形成する画像形成部4と、用紙P上に形成されたトナー像を加熱して用紙P上に定着させる定着部5と、用紙Pを収容する給紙カセット7と、用紙Pが排出される排紙トレイ12と、給紙カセット7から画像形成部4および定着部5を経由して排紙トレイ12に向けて用紙Pを搬送する搬送路6と、画像形成装置1の図1における右側面に設けられた手差しトレイ3と、各種のメニューを設定する複数のメニュー設定キー等が配置された操作部(図示せず)とを含む。
【0023】
画像形成部4は、感光体ドラム10と、帯電器42と、露光器43と、現像器44と、トナーカートリッジ45と、転写ローラ(転写部材)46と、トナー除去器47とを含む。感光体ドラム10の回転方向(図1では時計回りの方向)から見て、帯電器42、現像器44、転写ローラ46、トナー除去器47の順に、感光体ドラム10の周方向に沿って配置されている。露光器43は、帯電器42の上方に配置されている。
【0024】
感光体ドラム10は、本実施形態では、OPCドラム(有機感光体ドラム)が用いられている。OPCドラムは、ドラム表面16に、有機感光材料からなる有機感光層を有する。有機感光層には、電荷発生剤や電荷輸送剤が分散されている。また、有機感光層は、正負の両方に帯電可能な特性を備える。
【0025】
帯電器42は、帯電ローラ50を有する。帯電ローラ50は、その周面が有機感光層であるドラム表面16に略点接触した接触帯電方式のものであり、直流電圧と交流電圧が重畳されたドラムバイアスをドラム表面16に対して印加することにより、ドラム表面16の表面電位を均一に帯電させる。ドラムバイアスは、本実施形態では、プラスバイアスである。帯電器42は、ドラム印加部(第2印加部)52に接続されており、ドラム印加部52によってドラム表面16に対してドラムバイアスが印加される。
【0026】
露光器43は、外部PC(パーソナルコンピュータ)等から入力された画像データに基づくレーザ光Lを感光体ドラム10のドラム表面16に導くポリゴンミラー(図示せず)を有している。ポリゴンミラーは、所定の駆動源によって回転しつつ、感光体ドラム10のドラム表面16上にレーザ光Lを走査して、ドラム表面16に静電潜像を形成する。
【0027】
現像器44は、静電潜像にトナーを供給してドラム表面16上にトナー像を形成するものである。現像器44は、本実施形態では、キャリアを含まず、磁性体のトナーのみを含む一成分現像剤を使用するものであって、図1に示すように、該現像器44の内部空間を画定する現像容器21と、現像容器21の底壁に形成された現像剤貯留部11と、現像容器21の開口に配置された現像ローラ22とを、基本的な構成要素として含む。
【0028】
現像剤貯留部11は、現像器44の長手方向(図1の紙面に対して垂直方向)に延びる2つの隣り合う現像剤貯留室14,15から構成されている。現像剤貯留室14,15は、例えばアルミニウム等の金属からなる仕切り板17によって長手方向において互いに仕切られているが、長手方向における両端部において互いに連通されている。
【0029】
また、各現像剤貯留室14,15には、回転により現像剤を攪拌しつつ搬送するスクリューフィーダ18,19が回転可能に装着されている。スクリューフィーダ18,19は、搬送方向が互いに逆方向に設定されているので、現像剤は、現像剤貯留室14および現像剤貯留室15間を攪拌されつつ搬送される。この攪拌により、磁性体のトナーが帯電される。本実施形態では、トナーの帯電極性はプラスである。トナーの大部分はプラスに正帯電されるが、印字率の低い画像形成が続いたりすると、一部のトナーが繰り返し帯電され、劣化して過剰帯電したり、マイナスに逆帯電される。劣化したトナーは、所謂リフレッシュ動作によって現像器44から感光体ドラム10のドラム表面16上に排出される。
【0030】
現像ローラ22は、その外周面と感光体ドラム10のドラム表面16との間に0.2mm〜0.4mmの隙間が形成された状態でドラム表面16に対向配置されている。現像ローラ22の内部には、所謂汲上げ極が配置されており、その磁力により、現像剤貯留室14内のトナーが現像ローラ22の外周面上に磁気的に付着する。
【0031】
現像ローラ22の外周面上のトナーは、現像ローラ22の回転に伴って感光体ドラム10のドラム表面16に向けて運ばれ、現像ローラ22に印加される現像バイアスと感光体ドラム10のドラム表面16に印加されるドラムバイアスとの電位差に従って感光体ドラム10のドラム表面16の静電潜像に付着する。これにより、ドラム表面16上にトナー像が形成される。現像バイアスは、本実施形態では、プラスバイアスである。良好なトナー像を形成するためには、現像ローラ22とドラム表面16との間の電位差が100V以上であることが好ましい。現像ローラ22は、現像印加部51に接続されており、現像印加部51によって現像ローラ22に対して現像バイアスが印加される。
【0032】
転写ローラ46は、感光体ドラム10のドラム表面16上に形成されたトナー像を用紙P上に転写する部材である。転写ローラ46は、SUS、Fe等の芯金上に、カーボン、イオン導電性フィラー等によりその抵抗を1×106〜1×1010[Ω]としたスポンジゴム層を形成したローラ部材である。転写ローラ46は、感光体ドラム10に対して平行に延びていると共に、ドラム表面16との間でニップ部がN形成されるように搬送路6においてドラム表面16に接触した状態で配置されている。用紙Pはニップ部Nを通過する。
【0033】
転写ローラ46には、転写印加部(第1印加部)53が接続されており、転写印加部53により、転写ローラ46に対して転写バイアスが印加される。具体的には、転写ローラ46に対して、順バイアス(第1バイアス)と、順バイアスとは逆の極性の逆バイアス(第2バイアス)とが選択的に印加される。本実施形態では、順バイアスはマイナスバイアスであり、逆バイアスはプラスバイアスである。したがって、転写ローラ46に対して印加される順バイアスは、ドラム表面16に対して印加されるドラムバイアス(プラスバイアス)とは逆極性のバイアスである。
【0034】
ドラム表面16上にトナー像が形成された状態で、ドラムバイアスがドラム表面16に対して印加されると共に、順バイアスが転写ローラ46に対して印加されると、ドラム表面16と転写ローラ46との間の電位差に従って、プラスに帯電している、トナー像のトナーは転写ローラ46側に引き付けられる。これにより、ニップ部Nを通過する用紙P上にトナー像が転写される。
【0035】
トナー除去器47は、トナー像が用紙P上に転写された後にドラム表面16上に残留するトナーを除去並びに回収する。
【0036】
ニップ部Nを通過した用紙Pは搬送路6を通って定着部5に搬送される。定着部5は、用紙P上のトナー像を、用紙P上に加熱定着する。定着処理された用紙Pは、搬送路6を通って排紙トレイ12に搬送される。
【0037】
画像形成装置1は、図2に示すように、バイアス制御部Uをさらに含む。バイアス制御部Uは、ドラム印加部52、現像印加部51および転写印加部53を制御する。バイアス制御部Uは、ドラム印加部52、現像印加部51および転写印加部53を適宜制御することにより、画像形成モードおよびクリーニングモードを実行する。
【0038】
画像形成モードは、感光体ドラム10のドラム表面16上にトナー像が形成される画像形成時に実行される。これに対し、クリーニングモードは、ドラム表面16上にトナー像が形成されない非画像形成時に実行され、転写ローラ46上に堆積したトナーが除去される。
【0039】
以下、画像形成モードおよびクリーニングモードについて、図3を参照しながら説明する。図3は、ドラム表面16に印加されるドラムバイアス、現像ローラ22に印加される現像バイアスおよび転写ローラ46に印加される転写バイアスのシーケンス制御を示す図である。
【0040】
バイアス制御部Uは、画像形成モードを実行するにあたり、時点T1においてドラム印加部52を制御して、ドラムバイアスをドラム表面16に対して印加させる。そして、バイアス制御部Uは、時点T2において現像印加部51を制御して、現像バイアスを現像ローラ22に印加させる。これにより、現像ローラ22とドラム表面16との間で電位差が生じ、現像ローラ22上のトナーがドラム表面16上の静電潜像に付着して、トナー像が形成される。
【0041】
バイアス制御部Uは、画像形成モード(図3に示す時点T1から時点T4までの期間)を実行する前から転写印加部53を制御して、逆バイアスを転写ローラ46に対して印加させているが、現像バイアスを印加させた後、時点T3において転写印加部53を制御して順バイアスを転写ローラ46に対して印加させる。これにより、ドラム表面16上のトナー像のトナーが転写ローラ46側に引き付けられる電位差がドラム表面16と転写ローラ46との間で生じる。その結果、ニップ部Nを通過する用紙P上にトナー像が形成される。
【0042】
バイアス制御部Uは、転写ローラ46に対して順バイアスを所定の期間だけ印加させた後、転写印加部53を再び制御して逆バイアスを転写ローラ46に印加させる。そして、バイアス制御部Uは、時点T4において、現像印加部51を制御して現像バイアスをオフ(OFF)させると共に、ドラム印加部52を制御して、ドラムバイアスのレベルを、画像形成時(時点T1〜時点T4までの期間)よりも小さくなるように設定する。ドラムバイアスのレベルを画像形成時よりも小さく設定したときでも、ドラムバイアスの極性はプラスに維持されている。
【0043】
そして、バイアス制御部Uは、ドラムバイアスのレベルを画像形成時よりも小さく設定した状態でクリーニングモード(時点T5から時点T7までの期間)を実行する。
【0044】
上記構成の画像形成装置1では、画像形成動作を続けていると、ドラム表面16および転写ローラ46間の電位差に従ってドラム表面16から転写ローラ46にトナーが移動し、転写ローラ46上に堆積する。転写ローラ46上に堆積するトナーの大部分は、プラスに正帯電されているが、一部が転写ローラ46に印加される順バイアス(マイナスバイアス)によってマイナスに逆帯電される。また、現像器において行われるリフレッシュ動作によって現像器からドラム表面16上に排出された逆帯電トナーが転写ローラ46上に堆積する。クリーニングモードは、転写ローラ46上に堆積したトナーを除去するために行われる。
【0045】
バイアス制御部Uは、クリーニングモードを実行するにあたり、時点T5において転写印加部53を制御して、転写ローラ46に対して、順バイアスおよび逆バイアスを交互に所定の周期で印加させる。逆バイアスは、プラスバイアスなので、プラスに正帯電したトナーを転写ローラ46から除去することができ、順バイアスは、マイナスバイアスなので、マイナスに逆帯電したトナーを転写ローラ46から除去することができる。これにより、用紙Pがニップ部Nを通過する際に用紙Pの裏面がトナーで汚れてしまう裏面汚れが抑制される。なお、バイアス制御部Uは、クリーニングモードを行うとき、現像バイアスを転写ローラ46に印加させない。
【0046】
バイアス制御部Uは、上述のように転写印加部53を制御して用紙Pの裏面汚れを抑制しつつ、ドラム印加部52を制御して、画像形成時よりも小さく設定されたドラムバイアス(プラスバイアス)を、ドラム表面16に対して印加させ続けている。そのため、転写ローラ46と接触しているドラム表面16が、転写ローラ46に対して印加されているマイナスバイアスである順バイアスによって順バイアスの極性と同一の極性、つまりマイナスに帯電されることが抑制される。
【0047】
図4は、ドラム表面16および転写ローラ46の電位の変化を経時的に示す図である。本実施形態では、画像形成モード時(つまり、画像形成時)に設定されるドラムバイアスのレベルは、約400Vであり、クリーニングモード時(つまり、非画像形成時)に設定されるドラムバイアスのレベルは、約350Vである。図4に示すように、非画像形成時において転写ローラ46に対して順バイアスおよび逆バイアスが交互に所定の周期で印加されていても、ドラム表面16には、約350Vのプラスのドラムバイアスが印加されているので、ドラム表面16は、順バイアスの極性であるマイナスに帯電されない。クリーニングモード時では、ドラム表面16に対するドラムバイアスの印加時間と、転写ローラ46に対する転写バイアスの印加時間とは、略同一に設定されている。また、それらの印加時間は、印字枚数や、周囲環境の温度・湿度等に応じて適宜設定される。なお、クリーニングモード時に転写ローラ46に対して印加される順バイアスのレベルは、画像形成モード時よりも低く設定されている。
【0048】
バイアス制御部Uは、クリーニングモードを終了するにあたり、時点T6においてドラム印加部52を制御してドラムバイアスの印加を停止させると共に、時点T7において転写印加部53を制御して転写バイアスの印加を停止させる。これにより、ドラム表面16および転写ローラ46の各電位は0Vとなる。
【0049】
このように、クリーニングモード終了後はドラム表面16の電位が0Vになっている。そのため、ユーザによって印字開始の指示が出され、バイアス制御部Uが画像形成モードを開始し、ドラム印加部52を制御してドラム表面16に対してドラムバイアスを印加したとき、ドラム表面16の電位は、2〜3秒程度で迅速に約400Vに達し、十分な電位を得ることができる。これにより、現像ローラ22とドラム表面16との間で十分な電位差が生じる。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る画像形成装置1では、トナーの一部が転写ローラ46に移動し、帯電した状態で堆積するが、バイアス制御部Uは、非画像形成時においてクリーニングモードを実行する。クリーニングモードにより、転写印加部53が制御され、転写ローラ46に対して順バイアスおよび逆バイアスが交互に所定の周期で印加される。これにより、転写ローラ46から帯電した状態の堆積トナーが除去される。
【0051】
そして、クリーニングモード時(時点T5から時点T7までの期間)では、バイアス制御部Uは、ドラム印加部52を制御して、順バイアス(マイナスバイアス)とは逆極性のドラムバイアス(プラスバイアス)をドラム表面16に対して印加させている。そのため、感光体ドラム10が正負の両方に帯電する特性を備えたドラム(例えば、OPCドラム)であっても、転写ローラ46と接触状態にあるドラム表面16が、順バイアスによって該順バイアスの極性(マイナス)と同一の極性に帯電されることが抑制される。これにより、画像形成動作が再開され、ドラムバイアスがドラム表面16に印加されたとき、ドラム表面16が十分な電位を得ることが容易となる。その結果、地カブリ、諧調不良等の画像欠陥の発生が抑制され、ドラム表面16上に良好なトナー像が形成される。
【0052】
また、バイアス制御部Uは、非画像形成時(クリーニングモード時)においてドラム表面16に印加されるドラムバイアスが画像形成時(画像形成モード時)よりも小さくなるようにドラム印加部52を制御する。これにより、ドラムバイアスによる感光体ドラム10への負荷を軽減することができる。
【0053】
図5は、ドラムバイアス、現像バイアスおよび転写バイアスの他のシーケンス制御を示す図である。図5のシーケンス制御例では、バイアス制御部Uは、画像形成モード終了時にドラムバイアスの印加を停止させる。なお、図5のシーケンス制御例においても、転写ローラ46に対する逆バイアスの印加は、画像形成モード終了後であっても行われている。そして、バイアス制御部Uは、クリーニングモード(図5に示す時点T55から時点T77までの期間)を実行するに当たり、時点T55においてドラム印加部52を制御してドラム表面16に対してドラムバイアスを印加させ、次に、時点T56において、つまりドラムバイアスの印加から所定の時間Tが経過したときに転写印加部53を制御して順バイアスを印加させる。
【0054】
具体的には、ドラム表面16は、図6に示すように、帯電器42によってドラムバイアスが印加される印加部位Dを有する。印加部位Dは、ニップ部Nから、ドラム表面16の周方向長さの約1/2だけ離れた位置に設定されており、クリーニングモード時において最も先に印加される部位である。バイアス制御部Uは、ドラム印加部52を制御して印加部位Dにドラムバイアスを印加させる(時点T55)。これにより、印加部位Dおよび感光体ドラム10の回転方向Rから見て印加部位Dよりも下流側部位は、感光体ドラム10の回転に伴ってプラスに帯電される。
【0055】
そして、バイアス制御部Uは、時点T56において、印加部位Dが感光体ドラム10の回転に伴って破線で示すようにニップ部Nに到達するタイミングに合わせて転写印加部53を制御して転写ローラ46に対して順バイアスを印加させる。したがって、所定の時間Tは、ドラム表面16の印加部位Dが感光体ドラム10の回転に伴ってニップ部Nに到達するまでに要する時間である。
【0056】
順バイアスの印加は、印加部位Dがニップ部Nに到達したとき(時点T56)に行われるので、感光体ドラム10の回転方向Rから見た印加部位Dよりも上流側部位が、転写ローラ46に印加されている順バイアスによってマイナスに帯電されることが抑制される。
【0057】
そして、バイアス制御部Uは、時点T57において、感光体ドラム10が一回転するタイミングに合わせてドラム印加部52を制御してドラムバイアスのドラム表面16に対する印加を停止させ、次に、時点T58において、つまり所定の時間T分だけ遅れたタイミングで転写印加部53を制御して転写ローラ46に対する印加を順バイアスから逆バイアスに切り替える。
【0058】
さらに、バイアス制御部Uは、時点T59においてドラム印加部52を制御してドラム表面16に対してドラムバイアスを印加させると共に、時点T60において、つまり所定の時間Tが経過したタイミングで転写印加部53を制御して転写ローラ46に対する印加を逆バイアスから順バイアスに切り替える。バイアス制御部Uは、次に、時点T61において、感光体ドラム10が一回転するタイミングに合わせてドラム印加部52を制御してドラムバイアスのドラム表面16に対する印加を停止させると共に、時点T62において、つまり所定の時間T分だけ遅れたタイミングで転写印加部53を制御して転写ローラ46に対する印加を順バイアスから逆バイアスに切り替える。最後に、バイアス制御部Uは、逆バイアスを転写ローラ46に対して所定の期間だけ印加させた後、時点T63において転写印加部53を制御して転写ローラ46に対する逆バイアスの印加を停止させる。これにより、クリーニングモードが終了する。
【0059】
図5に示すシーケンス制御例によれば、上述したように、ドラムバイアスの印加部位Dへの印加のタイミング(時点T55)と、順バイアスの転写ローラ46への印加のタイミング(時点T56)とは、印加部位Dがニップ部Nに到達するのに要する時間T分だけ互いにずれているので、ドラム表面16における印加部位Dよりも上流側部位がマイナスに帯電されることが抑制されている。
【0060】
言い換えれば、ドラムバイアスの印加部位Dへの印加のタイミング(時点T55)と、順バイアスの転写ローラ46への印加のタイミング(時点T56)とが略同一であると、図7に示すように、感光体ドラム10の回転方向Rから見たドラム表面16におけるニップ部Nよりも上流側部位が、順バイアスによってマイナスに帯電されてしまう。マイナスに帯電してしまった上流側部位は、画像形成モード時にドラムバイアスが印加されても、十分な電位の上昇が得られない。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置
10 感光体ドラム
16 ドラム表面
22 現像ローラ
44 現像器
46 転写ローラ(転写部材)
51 現像印加部
52 ドラム印加部(第2印加部)
53 転写印加部(第1印加部)
D 印加部位
N ニップ部
P 用紙
R 感光体ドラムの回転方向
U バイアス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負の両方に帯電する特性を備えたドラム表面を有し、該ドラム表面上にトナー像が形成される感光体ドラムと、
前記感光体ドラムの前記ドラム表面にトナーを供給して前記トナー像を形成する現像器と、
前記感光体ドラムの前記ドラム表面に接触した状態で対向配置された転写部材であって、用紙が通過するニップ部を前記ドラム表面との間で形成し、前記ドラム表面上の前記トナー像を前記ニップ部において前記用紙上に転写する転写部材と、
前記転写部材に対して、第1バイアスおよび前記第1バイアスとは逆極性の第2バイアスのうちの一方を選択的に印加する第1印加部と、
前記感光体ドラムの前記ドラム表面に対して、前記第1バイアスとは逆極性のドラムバイアスを印加する第2印加部と、
前記第1印加部および前記第2印加部を制御するバイアス制御部と、
を備え、
前記バイアス制御部は、前記ドラム表面上に前記トナー像が形成される画像形成時において、前記第1印加部を制御して前記第1バイアスを前記転写部材に印加させると共に、前記第2印加部を制御して前記ドラムバイアスを前記ドラム表面に印加させることにより、前記ドラム表面上の前記トナー像が前記用紙上に転写されるように前記転写部材と前記ドラム表面との間に電位差を生じさせ、
一方、前記ドラム表面上に前記トナー像が形成されない非画像形成時において、前記第1印加部を制御して、前記第1バイアスおよび前記第2バイアスを交互に所定の周期で前記転写部材に印加させることにより、前記転写部材に付着したトナーを前記転写部材から除去しつつ、前記第2印加部を制御して前記ドラムバイアスを前記ドラム表面に印加させる画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記バイアス制御部は、前記非画像形成時において前記ドラム表面に印加される前記ドラムバイアスが前記画像形成時よりも小さくなるように前記第2印加部を制御する画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記感光体ドラムは、回転可能に構成されており、
前記ドラム表面は、前記非画像形成時において前記ドラムバイアスが最も先に印加される印加部位を有し、
前記バイアス制御部は、前記非画像形成時において、前記感光体ドラムの回転に伴って前記印加部位が前記ニップ部に到達するタイミングに合わせて前記転写ローラに対して前記第1バイアスを印加させる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−98403(P2012−98403A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244433(P2010−244433)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】