説明

画像形成装置

【課題】 画像形成装置において、画質を劣化させずに、より多くの割込ジョブを実行可能とする。
【解決手段】 メモリー管理部25は、割込ジョブの場合、その割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域があるか否かを判定し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がある場合には、デフォルト割当サイズの記憶領域をメモリー14において確保し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がない場合には、デフォルト割当サイズより小さく、かつ所定のジョブ種別のジョブを実行可能な所定の割込時割当サイズの記憶領域をメモリー14において確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合機などの画像形成装置では、ジョブ開始時に、そのジョブ用の所定サイズのメモリー領域を確保し、メモリー領域が不足した場合には、追加のメモリー領域を確保する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ハードディスクドライブなどの大容量記憶装置を搭載しない画像形成装置では、割込ジョブを実行する場合、先行ジョブにより使用されていない空き領域に、割込ジョブ用のメモリー領域を確保してから割込ジョブを実行する。割込ジョブ用のメモリー領域が確保できない場合には、割込ジョブの実行が拒否される。
【0004】
割込ジョブ用メモリー領域のサイズは、割込ジョブが取り扱う画像データのサイズなどにより決定される。このため、割込ジョブが取り扱う画像データのサイズを小さくすることで、割込ジョブ用メモリー領域のサイズも小さくて済む。画像データのサイズを小さくする技術としては、画像の圧縮率を変更するものや、画像の解像度や階調を変更するものがある(例えば特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−79279号公報
【特許文献2】特開2000−101851号公報
【特許文献3】特開平8−32781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにして、割込ジョブが取り扱う画像データのサイズを小さくすると、画質が劣化してしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、画質を劣化させずに、より多くの割込ジョブを実行可能とする画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、メモリーと、ジョブごとにそのジョブが画像データの記憶に使用する記憶領域をメモリーにおいて確保するメモリー管理部とを備える。そして、メモリー管理部は、割込ジョブの場合、その割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域があるか否かを判定し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がある場合には、デフォルト割当サイズの記憶領域をメモリーにおいて確保し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がない場合には、デフォルト割当サイズより小さく、かつ所定のジョブ種別のジョブを実行可能な所定の割込時割当サイズの記憶領域をメモリーにおいて確保する。
【0010】
これにより、割込時割当サイズの記憶領域で実行可能な割込ジョブは実行されるため、画質を劣化させることなく、より多くの割込ジョブが実行される。
【0011】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、デフォルト割当サイズは、画像データの最悪圧縮率に基づいて設定されている。
【0012】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、メモリー管理部は、実行中の先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズを特定し、先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズに基づいて、上述の空き領域のサイズを特定する。
【0013】
これにより、先行ジョブにより使用される記憶領域が動的に変化しても、割込ジョブ発生時の空き領域が正確に特定される。
【0014】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、上述の割込ジョブは、コピージョブまたは印刷ジョブである。
【0015】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、割込時割当サイズは、原稿サイズがA4であるモノクロコピーを実行可能なサイズである。
【0016】
これにより、一般的に実行されることの多い原稿サイズがA4であるモノクロコピーが割込ジョブとして実行可能であるため、画質を劣化させることなく、より多くの割込ジョブが実行される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像形成装置において、画質を劣化させずに、より多くの割込ジョブが実行される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、割込要求が検出されたときの、図1に示す画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示す画像形成装置において、割込ジョブに割り当てられる記憶領域のサイズを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像形成装置は、プリンター機能とスキャナー機能とを有する。この画像形成装置1は、印刷装置11、画像読取装置12、操作パネル13、メモリー14、通信装置15、およびコントローラー16を有する。
【0021】
印刷装置11は、印刷用画像データに基づいて1ページずつ画像を印刷用紙に電子写真方式で印刷する内部装置である。印刷用画像データは、画像読取装置12によるスキャンで生成されたラスター画像データ(例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)画像データ)、PDL(Page Description Language)データから生成されたラスター画像データ、図示せぬ内蔵ファクシミリ装置によるファクシミリ受信で生成されたラスター画像データなどである。
【0022】
また、画像読取装置12は、原稿の画像を1ページずつ光学的に読み取り、各ページ画像の画像データを生成する内部装置である。
【0023】
また、操作パネル13は、画像形成装置の筐体表面に配置され、ユーザーに対して各種情報を表示する表示装置と、ユーザー操作を検出する入力装置とを有する。表示装置としては例えば液晶ディスプレイが使用される。入力装置としては、キースイッチ、タッチパネルなどが使用される。
【0024】
また、メモリー14は、当該画像形成装置によるジョブ実行時に画像データなどを一時的に記憶する半導体メモリーである。メモリー14としては、揮発性のDRAM(Dynamic Random Access Memory)などが使用される。
【0025】
また、通信装置15は、図示せぬコンピューターネットワークに接続され、そのネットワークに接続された他の装置(ホスト装置など)とデータ通信を行う回路である。
【0026】
また、コントローラー16は、マイクロコンピューターやASIC(Application Specific Integrated Circuit)で各種処理部を実現する。この実施の形態では、コントローラー16において、印刷制御部21、スキャン制御部22、パネル制御部23、ジョブ制御部24、メモリー管理部25、および通信制御部26が実現される。
【0027】
印刷制御部21は、印刷用画像データに基づいて印刷データを生成して印刷装置11に供給し、印刷を実行させる。印刷用画像データは、ラスター画像データである。印刷データは、例えば、ハーフトーニングなどの画像処理により印刷用画像データから得られるデータである。
【0028】
スキャン制御部22は、画像読取装置12を制御して、原稿(印刷物)の画像をページごとに読み取らせ、各ページ画像のラスター画像データを生成する。
【0029】
パネル制御部23は、操作パネル13を制御して、各種情報を操作パネル13に表示させたり、操作パネル13に対するユーザー操作を受け付けたりする。
【0030】
ジョブ制御部24は、通信装置15及び通信制御部26を介して図示せぬホスト装置から受信されたジョブ要求および操作パネル13に対するユーザー操作に基づくジョブ要求を受け付け、印刷制御部21、スキャン制御部22などを使用して、受け付けたジョブを実行する。例えば、ジョブ制御部24は、図示せぬホスト装置から、ページ記述言語で記述された印刷ジョブ要求を受け付けると、その印刷ジョブ要求からラスター画像データを生成し、そのラスター画像データに基づいて印刷制御部21に印刷を実行させる。
【0031】
ジョブ制御部24は、ジョブ要求を受け付けると、そのジョブの実行に必要な所定サイズの記憶領域を、メモリー管理部25に確保させる。また、ジョブ制御部24は、あるジョブを実行しているときに、割込要求を検出すると、実行中のジョブを停止して、割込要求に係るジョブを実行する。割込要求は、操作パネル13に対する所定のユーザー操作(割込キーの押下など)に基づき発生したり、図示せぬホスト装置から供給される。
【0032】
メモリー管理部25は、ジョブ制御部24により受け付けられたジョブごとに、そのジョブが画像データの記憶に使用する記憶領域をメモリー14において確保し、ジョブが完了するとその記憶領域を解放する。メモリー管理部25は、割込ジョブの場合、その割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域があるか否かを判定し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がある場合には、デフォルト割当サイズの記憶領域をメモリー14において確保し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がない場合には、デフォルト割当サイズより小さく、かつ所定のジョブ種別のジョブを実行可能な所定の割込時割当サイズの記憶領域をメモリー14において確保する。
【0033】
この実施の形態では、メモリー管理部25は、実行中の先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズを特定し、先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズに基づいて、上述の空き領域のサイズを特定する。
【0034】
なお、デフォルト割当サイズは、割込時ではない場合(つまり先行ジョブが存在しない場合)に、ジョブに割り当てられる記憶領域のサイズである。この実施の形態では、デフォルト割当サイズは、実験などで得られる、JPEG画像データの最悪圧縮率(つまり、様々な原稿から得られる固定の圧縮パラメーターでのJPEG圧縮後の画像データサイズのうちの最大値)に基づいて設定されている。また、割込時割当サイズは、原稿サイズがA4であるモノクロコピーを実行可能なサイズとされている。このため、割込時割当サイズは、デフォルト割当サイズより小さい値を有する。
【0035】
また、この割込ジョブは、コピージョブまたは印刷ジョブである。印刷ジョブは、ホスト装置からの要求に基づき印刷を行うプリンタージョブ、図示せぬ内蔵ファクシミリ装置で受信されたファクシミリ画像の印刷を行うファクシミリ受信印刷ジョブ、および図示せぬ内蔵文書ボックスに蓄積されている原稿画像を印刷するボックス印刷ジョブを含む。
【0036】
通信制御部26は、通信装置15を制御して、図示せぬホスト装置からジョブ要求を受信したり、図示せぬホスト装置へ通知を送信したりする。
【0037】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。図2は、割込要求が検出されたときの、図1に示す画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。図3は、図1に示す画像形成装置において、割込ジョブに割り当てられる記憶領域のサイズを説明する図である。
【0038】
ジョブ制御部24により割込要求が検出されると(ステップS1)、メモリー管理部25は、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズを特定するとともに(ステップS2)、実行中の先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズを特定する(ステップS3)。デフォルト割当サイズは、予め設定されている固定値であって、図示せぬ不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリーなど)に記憶されている。メモリー管理部25は、その記憶装置からデフォルト割当サイズのデータを読み出して、デフォルト割当サイズを特定する。なお、実行中の先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズは、図3に示すようにジョブ開始時確保される領域と実行中に追加確保される領域があるため、動的に変化する。
【0039】
次に、メモリー管理部25は、図3に示すように、メモリー14のうち、コントローラー16がジョブの実行に使用可能な所定のワークメモリー領域のサイズ、および先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズに基づいて、ワークメモリー領域内の空き領域のサイズを特定する。ワークメモリー領域のサイズから、および先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズを減算した値がワークメモリー領域内の空き領域のサイズとなる。そして、メモリー管理部25は、デフォルト割当サイズが空き領域のサイズ以下であるか否か(つまり、デフォルト割当サイズの記憶領域を確保できるか否か)を判定する(ステップS4)。
【0040】
メモリー管理部25は、デフォルト割当サイズが空き領域のサイズを超えている場合、割込時割当サイズを特定し(ステップS5)、割込時割当サイズが空き領域のサイズ以下であるか否か(つまり、割込時割当サイズの記憶領域を確保できるか否か)を判定する(ステップS6)。割込時割当サイズは、予め設定されている固定値であって、図示せぬ不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリーなど)に記憶されている。メモリー管理部25は、その記憶装置から割込時割当サイズのデータを読み出して、割込時割当サイズを特定する。
【0041】
そして、メモリー管理部25は、割込時割当サイズが空き領域のサイズ以下である場合、ワークメモリー内に、その割込時割当サイズの記憶領域を確保して割込ジョブに割り当てる(ステップS7)。メモリー管理部25により割込ジョブの記憶領域が割り当てられると、ジョブ制御部24は、その記憶領域を使用して割込ジョブを実行する(ステップS8)。例えば図3に示すように、空き領域のサイズが、デフォルト割当サイズ未満であり、割込時割当サイズ以上である場合には、割込時割当サイズの記憶領域が確保される。
【0042】
例えば、割込ジョブがコピージョブである場合、ジョブ制御部24は、画像読取装置12およびスキャン制御部22により得られた画像データをその記憶領域に記憶し、その記憶領域を使用してその画像データに対する画像処理を実行し、その後、印刷装置11および印刷制御部21を使用して、その記憶領域に記憶されている画像データに基づく画像を印刷させる。
【0043】
一方、ステップS4において、メモリー管理部25は、デフォルト割当サイズが空き領域のサイズ以下である場合、ワークメモリー内に、そのデフォルト割当サイズの記憶領域を確保して割込ジョブに割り当てる(ステップS9)。メモリー管理部25により割込ジョブの記憶領域が割り当てられると、ジョブ制御部24は、その記憶領域を使用して割込ジョブを実行する(ステップS10)。
【0044】
また、ステップS6において、割込時割当サイズが空き領域のサイズを超えている場合、メモリー管理部25は、割込ジョブの記憶領域を確保できないことを示す通知をジョブ制御部24に出力し、ジョブ制御部24は、その通知を受け付けると、割込ジョブを実行せずに、エラー処理を実行する(ステップS11)。このとき、ジョブ制御部24は、割込ジョブを実行できないことを示すメッセージを、パネル制御部23を使用して操作パネル13に表示させたり、通信制御部26を使用して図示せぬホスト装置へ送信したりする。
【0045】
以上のように、上記実施の形態によれば、メモリー管理部25は、割込ジョブの場合、その割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域があるか否かを判定し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がある場合には、デフォルト割当サイズの記憶領域をメモリー14において確保し、割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がない場合には、デフォルト割当サイズより小さく、かつ所定のジョブ種別のジョブを実行可能な所定の割込時割当サイズの記憶領域をメモリー14において確保する。
【0046】
これにより、割込時割当サイズの記憶領域で実行可能な割込ジョブは実行されるため、メモリー14に記憶される画像データのサイズを小さくして画質を劣化させることなく、より多くの割込ジョブが実行される。つまり、デフォルト割当サイズの記憶領域が割り当てられない場合でも、割込ジョブの実行を拒否せず、割込時割当サイズの記憶領域で割込ジョブを実行するため、実行される割込ジョブが多くなる。
【0047】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、ハードディスクドライブなどの大容量補助記憶装置を有さない画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
14 メモリー
25 メモリー管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリーと、
ジョブごとにそのジョブが画像データの記憶に使用する記憶領域を前記メモリーにおいて確保するメモリー管理部とを備え、
前記メモリー管理部は、割込ジョブの場合、前記割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域があるか否かを判定し、前記割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がある場合には、前記デフォルト割当サイズの記憶領域を前記メモリーにおいて確保し、前記割込ジョブについてのデフォルト割当サイズ以上の空き領域がない場合には、前記デフォルト割当サイズより小さく、かつ所定のジョブ種別のジョブを実行可能な所定の割込時割当サイズの記憶領域を前記メモリーにおいて確保すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記デフォルト割当サイズは、前記画像データの最悪圧縮率に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記メモリー管理部は、実行中の先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズを特定し、前記先行ジョブにより使用されている記憶領域のサイズに基づいて、前記空き領域のサイズを特定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記割込ジョブは、コピージョブまたは印刷ジョブであることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記割込時割当サイズは、原稿サイズがA4であるモノクロコピーを実行可能なサイズであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17010(P2013−17010A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147942(P2011−147942)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】