説明

画像形成装置

【課題】簡便な構成の装置によって,トナー像に付着しているトナー量を良好に測定できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】カラープリンター1は,カラートナー像を形成するものであって,トナー像に光を照射してその反射光の強度を取得するセンシング部と,トナー像の濃度制御を補正する濃度補正部と,像担持体上の被センシング位置に,あらかじめ定めた目標濃度のトナーパッチを形成するパッチ形成部とを有し,センシング部は,像担持体上のトナー像に光を照射する発光素子と,発光素子から照射された光の像担持体による正反射位置に設けられ,受光量を出力する受光素子とを有し,発光素子は,像担持体上の完全被覆トナーパターンによる受光素子での受光量が,像担持体のトナーレスエリアによる受光素子での受光量の1/10以下となる波長の光を照射するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式,静電記録方式等の画像形成装置に関する。さらに詳細には,複数色のトナーを使用して,カラーのトナー像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,トナーを用いて静電潜像を現像する方式の画像形成装置では,形成されたトナー像のトナー付着量を検出し,その結果に基づいて各部を制御することが行われている。そのために,トナー付着量を検出するトナー濃度センサーが使用されている。トナー濃度センサーとして,トナー付着面に光を照射し,その反射光を受光することによるものがある。
【0003】
トナー付着面は,例えば感光体や転写ベルト等の像担持体上に,トナー粒が付着している状態のものである。トナー付着面に照射された光は,トナー粒および像担持体の両方によって反射され,トナー濃度センサーが受光する光にはその両方が含まれる。ここで,像担持体は略平滑面であるため,像担持体による反射光は,正反射成分がほとんどである。一方,トナー像は細かいトナー粒子の重なりであるため,トナー像による反射光は,反射方向は限られず,ほぼ全方向へと反射される。つまり,トナー像による反射光には,像担持体による正反射方向へ反射されるものもある程度は含まれる。トナー濃度センサーが受光する受光量は通常これらを合わせたものであるため,単に受光量だけに基づいてトナー付着量を把握することはできない。
【0004】
これに対し,例えば特許文献1に記載されているセンサーは,発光素子を1個と,受光素子を2個備え,偏光フィルターを用いて偏光光を投光するものである。受光素子にも偏光フィルターを用いることにより,正反射光と拡散反射光とを選択して受光している。そして,この文献では,正反射光量と拡散反射光量とに基づいて,トナー付着量を取得できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−250480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の技術では,発光素子や受光素子にそれぞれ偏光フィルターを備えているため,構成が複雑であるとともにコストが大きいものとなっている。そのため,より簡便な構成で,低コストなトナー付着量検出の技術が望まれていた。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,簡便な構成の装置によって,トナー像に付着しているトナー量を良好に測定できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,像担持体と,複数の色のトナーを用いて像担持体上にカラートナー像を形成するトナー像形成部とを有する画像形成装置であって,トナー像形成部によって像担持体上に形成されたトナー像に光を照射してその反射光の強度を取得するセンシング部と,トナー像形成部における,形成されるトナー像の濃度制御を補正する濃度補正部と,トナー像形成部によって像担持体上の被センシング位置に,あらかじめ定めた目標濃度のトナーパッチを形成するパッチ形成部とを有し,センシング部は,像担持体上のトナー像に光を照射する発光素子と,発光素子から照射された光の像担持体による正反射位置に設けられ,受光量を出力する受光素子とを有し,発光素子は,像担持体上の完全被覆トナーパターンによる受光素子での受光量が,像担持体のトナーレスエリアによる受光素子での受光量の1/10以下となる波長の光を照射するものであり,濃度補正部は,パッチ形成部に,像担持体上に完全被覆トナーパターンより薄い目標濃度でトナーパッチを形成させ,トナーパッチによる受光素子の受光量が目標濃度に対して過剰である場合に,そのトナーパッチの目標濃度に対応する濃度条件を,濃度を上昇させる方向に変更するように補正し,トナーパッチによる受光素子の受光量が目標濃度に対して不足である場合に,そのトナーパッチの目標濃度に対応する濃度条件を,濃度を低下させる方向に変更するように補正するものである。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば,センシング部は,発光素子とその正反射位置に設けられた受光素子とを有している。そして,発光素子として,像担持体上の完全被覆トナーパターンによる受光素子での受光量が,像担持体のトナーレスエリアによる受光素子での受光量の1/10以下となる波長の光を照射するものを用いているので,受光素子での受光量を,像担持体による反射光とみなすことができる。例えば,受光量が目標より大きいとは像担持体の露出部分が多いということであり,トナー濃度が薄いということになる。これにより,簡便な構成の装置によって,トナー像に付着しているトナー量を良好に測定できる。そこで,目標濃度のトナーパッチを形成してセンシング部で検出し,その結果に基づいて濃度条件を変更することにより,トナー像の濃度を補正することができる。
【0010】
さらに本発明では,トナー像形成部は,トナーとして,ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの4色を使用するものであり,発光素子から照射される光の波長が400〜490nmの範囲内である第1のセンシング部と,発光素子から照射される光の波長が560〜590nmの範囲内である第2のセンシング部とを有し,濃度補正部は,パッチ形成部に,第1のセンシング部による被センシング位置に,ブラックトナーによるトナーパッチとイエロートナーによるトナーパッチとを形成させ,第2のセンシング部による被センシング位置に,マゼンタトナーによるトナーパッチとシアントナーによるトナーパッチとを形成させることが望ましい。
各センシング部の発光素子により照射される光の波長がこのように選択されていれば,それぞれの被センシング部に形成されるトナーパッチのトナーによる反射光量はごく小さい。つまり,受光素子での受光量は像担持体による反射光量であるとみなすことができる。
【0011】
さらに本発明では,トナー像形成部は,トナーとして,ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの4色を使用するものであり,発光素子から照射される光の波長が400〜420nmの範囲内であり,濃度補正部は,パッチ形成部に,上記各色のトナーによるトナーパッチをそれぞれ,センシング部による被センシング位置に形成させることが望ましい。
このようなものであっても,受光素子が受光する反射光に含まれる,トナーによる反射光の割合は小さい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像形成装置によれば,簡便な構成の装置によって,トナー像に付着しているトナー量を良好に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本形態のカラープリンターの概略構成図である。
【図2】トナー濃度調整動作の制御ブロック図である。
【図3】本形態のセンシング部を示す説明図である。
【図4】トナー付着量とセンシング部の出力値との関係を示すグラフ図である。
【図5】センシング部とトナーパッチの配置を示す説明図である。
【図6】トナーの分光反射率の例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「第1の形態」
以下,本発明を具体化した第1の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,タンデム方式のカラープリンターに本発明を適用したものである。
【0015】
本形態のカラープリンター1は,図1にその概略構成を示すように,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが中間転写ベルト11に沿って並べられた,いわゆるタンデム方式のものである。以下の文中では,特に区別する必要のない場合には,Y,M,C,Kの添字を省略して表記する。
【0016】
カラープリンター1はさらに,図1中で下部に示した給紙カセット12と,図中で右側に示した記録媒体の経路に沿って,2次転写部13,定着部14,排紙ローラー15等を有している。また,カラープリンター1は,中間転写ベルト11の図中上方にセンシング部18,中間転写ベルト11の図中左方にベルトクリーナー19を有している。なお,センシング部18は,中間転写ベルト11の幅方向(図中奥行き方向)について,両端部に対向する位置にそれぞれ設けられている。また,各画像形成部10は,画像形成用の一般的な装置であり,それぞれ,感光体21と,その周囲に配置された帯電装置22,露光装置23,現像装置24,転写装置25,クリーニング装置26等を有している。
【0017】
画像形成時には,感光体21の表面は,帯電装置22によって一様に帯電される。その後,露光装置23によって画像データに基づいた静電潜像が形成される。さらに,その静電潜像に現像装置24によってトナーが供給されることによりトナー像が形成される。各色の画像形成部10の各感光体21上に形成された各色のトナー像は,順に中間転写ベルト11に転写されて重ね合わされる。転写後も感光体21上に残るトナーは,クリーニング装置26によって除去される。
【0018】
一方,給紙カセット12から記録媒体が1枚ずつ給紙される。そして,中間転写ベルト11上に重ね合わされたトナー像が,2次転写部13において記録媒体に転写される。トナー像が転写された記録媒体は,定着部14に導かれる。さらに,定着部14において,加圧されるとともに加熱されることにより,トナーが記録媒体に定着される。画像が定着された記録媒体は,排紙ローラー15によって外部に排出される。2次転写後も中間転写ベルト11上に残るトナーはベルトクリーナー19によって除去される。
【0019】
さらに,本形態のカラープリンター1は,画像形成動作とは別に,画像形成時の画像の濃度を適切な範囲のものとするための,トナー濃度調整動作を行うことがある。トナー濃度調整動作とは,画像形成時に形成される画像の濃度が,適切な範囲内となるように,トナー像のトナー付着量に影響を与えるデバイスのトナー像形成条件の値を決定する動作のことである。なお,本形態でいうトナー付着量は,像担持体(ここでは,中間転写ベルト11)の単位面積当たりに付着しているトナーの重量のことである。
【0020】
トナー濃度調整動作が実行されると,本形態のカラープリンター1は,トナー像形成条件の値が異なる複数のテスト用のトナー像を形成し,そのそれぞれのトナー付着量を検出する。そして,トナー付着量が適切な狙いの値となるように,トナー像形成条件を決定する。なお,本形態のカラープリンター1は,このトナー濃度調整動作を,例えば主電源投入時やユーザーによって実行指示された場合等の画像形成時以外のタイミングで行う。
【0021】
例えば本形態のカラープリンター1では,現像装置24に印加される現像バイアス電圧の交流成分のDutyをトナー像形成条件の値としてトナー濃度調整動作を行う。例えば,複数の異なるDutyでそれぞれ目標濃度のトナー像を形成し,そのトナー付着量を取得する。そして,トナー像のトナー付着量が予め決めた適切な範囲内の値となるDutyを決定するのである。なお,このトナー濃度調整動作によって補正されるトナー像形成条件は,Dutyに限らないし,現像バイアス電圧以外でも良い。
【0022】
次に,本形態のカラープリンター1のトナー濃度調整動作のための機能構成を,図2に示す。本形態のカラープリンター1においては,システムバス31を介して,制御部32,記憶部33,通信部34,印刷部35,センシング部18,表示操作部37の間でデータの授受ができるようになっている。制御部32は,トナー濃度調整動作に係る制御を司るものである。制御部32は,テスト画像形成部41,トナー付着量算出部42,現像バイアス制御部43を備えている。
【0023】
本形態の制御部32のテスト画像形成部41は,トナー濃度調整動作でテスト用のトナー像を中間転写ベルト11上に形成するものである。トナー付着量算出部42は,テスト用のトナー像のトナー付着量を算出するものである。さらに制御部32は,算出されたトナー付着量の値に基づいて、画像形成時に使用するDutyを決定する。現像バイアス制御部43は,画像形成時に,トナー濃度調整動作によって決定されたDutyを用いて現像バイアスを制御するものである。
【0024】
カラープリンター1は,トナー濃度調整動作の実行時には,制御部32の制御に基づき,印刷部35によって,中間転写ベルト11上にテスト用のトナー像を形成する。そして,カラープリンター1は,2次転写部13による転写を行わずに中間転写ベルト11を回転して,センシング部18の位置までテスト用のトナー像を移動させる。さらに,センシング部18は,そのトナー像に光を照射して反射光を受け,受光量を出力する。本形態の制御部32は,センシング部18の出力を受けて,トナー像形成条件としてのDutyを決定する。
【0025】
記憶部33は,HDDや不揮発性のメモリー等を有し,制御部32の制御に基づいて,各種の情報を記憶するものである。通信部34は,機外との通信を担う部材であり,例えば,双方向性通信媒体を介してホストコンピューター45等との通信を行うものである。本形態のカラープリンター1は,通信部34を介して,ホストコンピューター45から送信される各種の設定情報や画像データ等を受信することができる。また,通信部34は,ホストコンピューター45に向けて,カラープリンター1の内部状態や画像形成条件等を必要に応じて送信する場合にも使用される。
【0026】
印刷部35は,図1中に示した各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと中間転写ベルト11とを含むものである。表示操作部37は,スイッチやLCD等を有し,ユーザーによる入力を受けるとともに,ユーザーに向けて各種の情報を表示するものである。ユーザーは,表示操作部37を介して,例えば,印刷の実行の指示や印刷条件の設定,トナー濃度調整動作の実行の指示等をカラープリンター1に対して入力することができる。
【0027】
次に,本形態のセンシング部18について説明する。センシング部18は,図3に示すように,LED等の発光素子51とセンサーである受光素子52とをそれぞれ1個ずつ有する光学式反射型のものである。本形態のセンシング部18の受光素子52は,中間転写ベルト11について発光素子51の正反射位置となるように配置されている。なお,発光素子51と受光素子52との位置関係は,中間転写ベルト11に平行な面内については,どのような向きであっても良い。つまり,図中に示した中間転写ベルト11は,その幅方向,走行方向,またはそれら以外の方向のいずれの方向の断面であっても良い。
【0028】
発光素子51は,図3に示すように,中間転写ベルト11上の検査箇所(テスト用のトナー像が付着している箇所)へ向けて光を照射するように配置されている。そして,本形態のセンシング部18は,発光素子51から照射された光のうち,検査箇所によって反射された光を受光素子52によって正反射位置において受光し,その反射光の強度を取得するものである。そして,センシング部18は,受光した反射光の受光量を出力値として出力する。
【0029】
本形態のセンシング部18による検査箇所は,中間転写ベルト11にトナーがある程度付着しているが,中間転写ベルト11自体の露出している箇所も残っている状態の箇所である。中間転写ベルト11は光沢面であり,可視光の範囲内では,どの波長の光でもその大部分を反射する。また,中間転写ベルト11による反射光はほとんどが正反射方向に反射される。一方,トナーはその色ごとに,可視光の範囲内での反射強度分布の特性が異なる。また,トナーによる反射には方向性はない。よって,正反射位置の受光素子52で受光されるトナーによる反射光は,トナーによる全反射光のうちのごく一部分である。
【0030】
そして,本形態のセンシング部18の発光素子51は,中間転写ベルト11によってはよく反射されるが,検査箇所のトナーによってはあまり反射されない波長の光を照射するものである。より詳細には,発光素子51は,中間転写ベルト11上の完全被覆トナーパターンによる受光素子52の受光量が,中間転写ベルト11のトナーレスエリアによる受光素子52の受光量の1/10以下となる波長の光を照射するものである。完全被覆トナーパターンとは,中間転写ベルト11の表面が検査対象のトナーで完全に覆われ,中間転写ベルト11の露出箇所がない状態の箇所である。また,トナーレスエリアとは,トナーの付着がない中間転写ベルト11のみの箇所である。
【0031】
従って,本形態のセンシング部18の受光素子52が受光する光は,そのほとんどが中間転写ベルト11によって反射された光である。受光光にトナーによって反射された光が含まれているとしても,その量はごくわずかである。そこで,本形態のセンシング部18の出力値は,すべて中間転写ベルト11による反射光量であるとしてもそれほど現実から乖離しない。従って,本形態のセンシング部18を使用して,トナーが付着した中間転写ベルト11を検査すると,中間転写ベルト11の露出面積が大きいほど大きい出力値が得られることになる。つまり,トナーの付着量が多いほど,出力値は小さい。よって,センシング部18の出力値から,トナーの付着量を取得することができる。
【0032】
本形態のセンシング部18の出力値は,例えば図4に示すようになる。検査箇所にトナーが全く付着していない場合に,出力値は最大である。中間転写ベルト11のうちトナーによって覆われている面積が大きくなるにつれて出力値は次第に小さくなり,ある程度以上のトナーが付着したら,それ以上では出力値はほとんど0となる。つまり,トナーが中間転写ベルト11を覆い尽くしてはいない程度の濃度であれば,このセンシング部18の出力値に基づいて,トナー像のトナー濃度を取得することができる。
【0033】
トナーはその色によって,ほとんど反射しない光の波長はそれぞれ異なる。つまり,トナーの色ごとに,発光素子51として適切な波長を発光するものを選択すれば,トナーによる反射光をほとんど含まず,中間転写ベルト11による反射光のみを検出するものとすることができる。しかしそれでは,4色のトナーを備えるカラープリンター1においては,4つのセンシング部18を備える必要があることになる。しかし,4色のトナーにそれぞれ対応するセンシング部18を備えることは,装置構成が複雑となりあまり好ましいことではない。
【0034】
本形態のカラープリンター1は,図5の上部に示すように,中間転写ベルト11の幅方向の両端部に対向して,波長の異なる発光素子51を有する2つのセンシング部18a,18bを有している。中間転写ベルト11の幅方向について,図5中で左側(図1中で手前側)の端部には波長450nm程度の青紫の光を発光する発光素子51を有する第1センシング部18aが配置されている。さらに,中間転写ベルト11の幅方向について,図中右側の端部には,波長580nm程度の黄緑の光を発光する発光素子51を有する第2センシング部18bが配置されている。このように波長を限定できる発光素子としては,例えば,適切な単波長のLEDを用いると良い。
【0035】
これらのセンシング部18a,18bの波長の選択について説明する。そのために,本発明者はまず,本形態のカラープリンター1で使用している各色のトナーについて,分光反射率を測定した。一般に,4色構成のトナーの分光反射率は,波長400〜850nmの範囲内の光に対して図6に示すようなものである。本形態のトナーも,この図のものと同様の結果であった。
【0036】
本形態のカラープリンター1で使用しているトナーは,図6に示したように,各色ごとにその反射特性が異なっている。例えば,ブラックトナー(BK)の反射率は,図中に実線BKで示すように,この図の範囲では,波長にかかわらず10%未満である。そして,イエロートナー(Y)による反射率は,図中に一点鎖線Yで示すように,波長400〜490nmの範囲の光については10%以下であった。また,シアントナー(C)(図中に破線Cで示す)とマゼンタトナー(M)(図中に二点鎖線Mで示す)とによる反射率は,波長560〜580nmの範囲の光に対しては,ともに分光反射率が10%以下であった。
【0037】
なお,分光反射率で50%以下の波長であれば,前述の条件(中間転写ベルト11上の完全被覆トナーパターンによる受光素子52の受光量が,中間転写ベルト11のトナーレスエリアによる受光素子52の受光量の1/10以下)は満たされる。特に,分光反射率が10%以下の波長の光を用いれば,トナーによる反射光量はほとんどないといえる。そこで本形態では,センシング部18の発光素子51として,検査対象のトナーによる分光反射率が10%以下である範囲内の波長の光を発光するものを用いることとした。
【0038】
本形態のカラープリンター1の第1センシング部18aは,青紫色の光を発する発光素子51を有している。従って,この第1センシング部18aを用いれば,ブラックトナーとイエロートナーとをともに検査対象として,適切にその付着量を取得することができる。また,第2センシング部18bは,黄緑色の光を発する発光素子51を有している。従って,この第2センシング部18bを用いれば,シアントナーとマゼンタトナーとをともに検査対象として,適切にその付着量を取得することができる。
【0039】
本形態のカラープリンター1は,センシング部18を使用して,トナー濃度調整動作を実行する。このときまず,各色のトナーで検査用のトナー像(トナーパッチ)を形成する。その際,これらのセンシング部18a,18bの配置に合わせて,例えば図5に示すように,中間転写ベルト11の幅方向の両端部に色ごとに分けて,それぞれ複数水準のものを配置する。この図5では,トナー像形成条件を変えて,各色ともそれぞれ4水準のトナー濃度のトナーパッチを形成した様子を示している。ただし,これらのトナーパッチのトナー濃度は,いずれも完全被覆よりは薄いものである。これらを対応するセンシング部18a,18bによって検出すれば,それぞれのトナーパッチのトナー濃度を検出することができる。
【0040】
例えば,図5の例では,第1センシング部18aが配置されている側である中間転写ベルト11の図中左端側に沿って,ブラック(B1〜B4)とイエロー(Y1〜Y4)のトナーパッチが交互に形成されている。また,第2センシング部18bが配置されている側である中間転写ベルト11の幅方向の図中右端側に沿って,シアン(C1〜C4)とマゼンタ(M1〜M4)のトナーパッチが交互に形成されている。このように2色を交互に形成することにより,効率よくトナーパッチの形成を行うことができる。
【0041】
このようにして形成した各トナーパッチを,センシング部18a,18bによって検出し,それぞれの出力値を得る。本形態のカラープリンター1は,これを用いて,トナー像の濃度補正を行うことができる。ここで得られた出力値は,例えば,図4に示すように,そのトナーパッチの目標濃度Pに対応する出力値pからややずれている場合もあり得る。出力値pより大きい出力値q1が得られた場合は,トナー像の濃度が目標濃度Pより薄い濃度Q1であることを示している。そこで,この場合には,制御部32は,トナー像の濃度がより濃いものとなるように,トナー像形成条件を変更して補正する。
【0042】
あるいは,出力値pより小さい出力値q2が得られた場合は,トナー像の濃度が目標濃度Pより濃い濃度Q2であることを示している。そこで,この場合には,制御部32は,トナー像の濃度がより薄いものとなるように,トナー像形成条件を変更して補正する。このとき変更するトナー像形成条件は,変更することによってトナー像の濃度が変更されるものであれば何でも良い。画像形成部10の帯電装置22,露光装置23,現像装置24,転写装置25に関わるいかなるパラメータでも良い。例えば,現像装置24に印加される現像バイアス電圧の交流成分のDutyとすればよい。また,本形態のトナー濃度調整動作は,画像全体としてのトナー濃度の調整にも,階調の調整にも適用できる。
【0043】
以上詳細に説明したように,本形態のカラープリンター1は,発光素子51と受光素子52とを1個ずつ含むセンシング部18を有している。受光素子52は,発光素子51の正反射位置に配置されている。また,本形態のセンシング部18は,発光素子51の発光する波長が,中間転写ベルト11による反射はあり,トナーによる反射はほとんどない波長が選択されている。従って,カラープリンター1は,センシング部18の出力値からトナー像のトナー濃度を取得することができる。従って,簡便な構成の装置によって,トナー像に付着しているトナー量を良好に測定できるものとなっている。
【0044】
「第2の形態」
次に,本発明を具体化した第2の形態について説明する。本形態は,センシング部の構成が第1の形態のものと異なるのみであり,その他の共通な部材については共通の符号を付し,説明を省略する。
【0045】
本形態のカラープリンターは,センシング部を1つのみ有するものである。第1の形態において図6に示した結果から,センシング部の発光素子として波長400〜420nm程度の紫色の光を発光するLEDを採用すれば,全ての色のトナーによる分光反射率を50%未満とすることができることが分かる。分光反射率が50%未満であれば,中間転写ベルト11上の完全被覆トナーパターンによる受光素子52の受光量が,中間転写ベルト11のトナーレスエリアによる受光素子52の受光量の1/10以下となる。すなわち,正反射位置で受光されるトナーによる反射光の強度は,中間転写ベルト11による反射光の強度に比較して,かなり小さいものとなる。全く無視できるほどではないが,検査結果に大きな影響を与えることはない。
【0046】
そこで,本形態のセンシング部18は,紫色の光を発光する発光素子51と発光素子51に対して中間転写ベルト11について正反射位置に設けられた受光素子52とを有するものである。このようにすれば,1つのみのセンシング部18によって,各色のトナーに四つトナー像の濃度を適切に取得することができる。そこで,センシング部18に対向する位置にテスト用のトナー像を作成し,センシング部18でそのトナー像の濃度を取得することにより,トナー像形成条件の調整を行うことができる。
【0047】
以上詳細に説明したように,本形態のカラープリンターによっても,第1の形態と同様に,簡便な構成の装置によって,トナー像に付着しているトナー量を良好に測定できる。さらに,センシング部18が1つのみであるので,第1の形態に比較して構成が簡単なものとなっている。
【0048】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の各形態では,各色4水準のトナーパッチを作成するとしたが,4水準に限るものではない。また,トナーパッチの大きさや形状も,上記の形態の例に限らない。センシング部の視野範囲をカバーする程度の大きさがあればよい。また例えば,上記の形態では,4色のトナーを用いる画像形成装置を例示しているが,4色に限るものではない。2色または3色のトナーを用いる装置や,5色以上のトナーを用いる装置についても適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 カラープリンター
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
11 中間転写ベルト
18,18a,18b センシング部
32 制御部
41 テスト画像形成部
51 発光素子
52 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と,複数の色のトナーを用いて前記像担持体上にカラートナー像を形成するトナー像形成部とを有する画像形成装置において,
前記トナー像形成部によって前記像担持体上に形成されたトナー像に光を照射してその反射光の強度を取得するセンシング部と,
前記トナー像形成部における,形成されるトナー像の濃度制御を補正する濃度補正部と,
前記トナー像形成部によって前記像担持体上の被センシング位置に,あらかじめ定めた目標濃度のトナーパッチを形成するパッチ形成部とを有し,
前記センシング部は,
前記像担持体上のトナー像に光を照射する発光素子と,
前記発光素子から照射された光の前記像担持体による正反射位置に設けられ,受光量を出力する受光素子とを有し,
前記発光素子は,前記像担持体上の完全被覆トナーパターンによる前記受光素子での受光量が,前記像担持体のトナーレスエリアによる前記受光素子での受光量の1/10以下となる波長の光を照射するものであり,
前記濃度補正部は,
前記パッチ形成部に,前記像担持体上に完全被覆トナーパターンより薄い目標濃度でトナーパッチを形成させ,
トナーパッチによる前記受光素子の受光量が前記目標濃度に対して過剰である場合に,そのトナーパッチの目標濃度に対応する濃度条件を,濃度を上昇させる方向に変更するように補正し,
トナーパッチによる前記受光素子の受光量が前記目標濃度に対して不足である場合に,そのトナーパッチの目標濃度に対応する濃度条件を,濃度を低下させる方向に変更するように補正するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記トナー像形成部は,前記トナーとして,ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの4色を使用するものであり,
前記発光素子から照射される光の波長が400〜490nmの範囲内である第1の前記センシング部と,
前記発光素子から照射される光の波長が560〜590nmの範囲内である第2の前記センシング部とを有し,
前記濃度補正部は,前記パッチ形成部に,
前記第1のセンシング部による被センシング位置に,ブラックトナーによるトナーパッチとイエロートナーによるトナーパッチとを形成させ,
前記第2のセンシング部による被センシング位置に,マゼンタトナーによるトナーパッチとシアントナーによるトナーパッチとを形成させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記トナー像形成部は,前記トナーとして,ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの4色を使用するものであり,
前記発光素子から照射される光の波長が400〜420nmの範囲内であり,
前記濃度補正部は,前記パッチ形成部に,上記各色のトナーによるトナーパッチをそれぞれ,前記センシング部による被センシング位置に形成させることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−20163(P2013−20163A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154588(P2011−154588)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】