説明

画像形成装置

【課題】移動可能なベルト体と転写手段との間の不連続の放電による異常画像の発生を抑制し、より高品位の画像を提供することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体22が担持するトナー像を中間転写ベルト30に転写するために像担持体22とは反対の側から中間転写ベルト30に接触するフィルム状の部材42を備えた転写手段31と、を有する画像形成装置において、フィルム状の部材42の表面抵抗率は、(a)前記ベルト体が中間転写体である場合には、1.0×107Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下であり、(b)前記ベルト体が転写材搬送体である場合には、1.0×108Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下であり、フィルム状の部材42に対し、フィルム状の部材42とベルト体30との接触領域の反対側の面に転写電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に担持されたトナー像を、中間転写体、又は、転写材搬送体が担持する転写材に転写する、例えば、プリンタ、複写機等の画像形成装置に関し、特に転写手段にフィルム状の部材を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真技術として、トナー像を担持する像担持体と転写ローラにて挟持(ニップ)されるベルト状の中間転写体、即ち、中間転写ベルト上に像担持体上のトナー像を転写する画像形成装置がある。また、転写材を担持搬送するベルト状の転写材搬送体、即ち、転写材搬送ベルトが、像担持体と転写ローラにニップされ、像担持体上のトナー像をベルト上の転写材に転写する画像形成装置がある。
【0003】
ここで、転写ローラと上記ベルトが接触する領域、所謂、転写ニップ領域は、良好な転写性を確保するために重要である。
【0004】
しかしながら、転写ローラを用いた場合、転写ニップ領域を大きくするためには、ローラ径を大きくするか、転写ローラの硬度を小さくするしかなく、装置の小型化や、製造上の安定性を考慮すると限界がある。
【0005】
このような背景に基づき、転写部材として転写ローラの代わりに導電性のフィルム状の部材を備えたものが提案されている。例えば、特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−156455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方式では、転写手段(フィルム部材)と中間転写ベルト或いは搬送ベルトとの間に異常放電が発生し、トナー像を乱すといった問題がある。
【0008】
つまり、本願添付の図2(a)、(b)に示すように、一次転写手段31は、中間転写ベルト30を介して、感光ドラム22に対向している。一次転写手段31は、圧縮弾性を有する弾性体(弾性部材)41と、フィルム部材42から構成されている。弾性部材41の弾性によって、フィルム部材42を、中間転写ベルト30を介して感光ドラム22に対して押し当て、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nを形成している。
【0009】
フィルム部材42は、その上流端42aが支持部材44に固定されており、下流端の自由端部42bが弾性部材41によって押圧され、中間転写ベルト30に接触している。弾性部材41は、保持手段である台座45によって保持されている。
【0010】
しかしながら、フィルム部材42に導電体を用いると、フィルム部材42が一次転写電圧の電位に帯電されることにより、不連続の放電が発生する場合がある。これは、中間転写ベルト30とフィルム部材42の接触領域の上流部分に存在する微小な空隙Gにおいて、中間転写ベルト30とフィルム部材42との間に大きな電位差が生じるためである。不連続の放電は、一次転写電圧として高い電圧(+1000〜1500V程度)が必要となる低温低湿環境で特に発生し易い。
【0011】
接触領域上流の空隙Gにおいて不連続の放電が発生すると、中間転写ベルト30上のトナー像が乱される。トナー像の乱れは、転写材上における異常画像となり画像品質を損なう。
【0012】
そこで、本発明の目的は、移動可能なベルト体と転写手段との間の不連続の放電による異常画像の発生を抑制し、より高品位の画像を提供することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像が形成される像担持体と、前記トナー像が転写される中間転写体か、又は、前記トナー像が転写される転写材を搬送する転写材搬送体とされる無端状のベルト体と、前記像担持体が担持するトナー像を前記中間転写体か又は前記転写材に転写するために前記ベルト体に前記像担持体とは反対の側から接触するフィルム状の部材を備えた転写手段と、を有する画像形成装置において、
前記フィルム状の部材の表面抵抗率は、
(a)前記ベルト体が中間転写体である場合には、1.0×107Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下であり、
(b)前記ベルト体が転写材搬送体である場合には、1.0×108Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下であり、
前記フィルム状の部材に対し、前記フィルム状の部材と前記ベルト体との接触領域の反対側の面に転写電圧を印加することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写手段を構成するフィルム部材に中抵抗の樹脂シートを用いることによって、移動可能なベルトと転写手段との間の不連続の放電による異常画像の発生を抑制することが可能となる。従って、より高品位の画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例であるカラー画像形成装置の概略構成図である。
【図2】一次転写手段の一実施例を説明する図であり、図2(a)は、一次転写手段と、感光ドラム及び中間転写ベルトとの関係を説明する図であり、図2(b)は、一次転写手段を構成する弾性部材の斜視図である。
【図3】一次転写手段の他の実施例を説明する図である。
【図4】一次転写手段の他の実施例を説明する図である。
【図5】一次転写手段の他の実施例を説明する図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の他の実施例であるカラー画像形成装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
実施例1
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施例である電子写真方式のカラー画像形成装置の概略構成図を示す。本実施例にて、画像形成装置は、中間転写体(移動可能なベルト)30を採用したタンデム方式のカラー画像形成装置とされる。
【0018】
本実施例にてカラー画像形成装置は、複数の画像形成部、即ち、画像形成ステーションSを備えている。本実施例では、4つの現像色分並置した画像形成ステーション、即ち、イエロー画像ステーションSY、マゼンタ画像ステーションSM、シアン画像ステーションSC、ブラック画像ステーションSKを備えている。イエロー画像形成ステーションSYは、像担持体としてのドラム状の感光体(以下、「感光ドラム」という。)22Yを備えている。感光ドラム22Yの回りには、帯電手段を構成する帯電器23Y、露光手段としての露光装置24Y、現像手段を構成する現像器26Y及びクリーニング手段27Yが配置されている。なお、現像器26Yにはトナーカートリッジ25Yが取り付けられている。
【0019】
他の画像形成ステーションSM、SC、SKは、上記イエロー画像形成ステーションSMと同じ構成とされるので、説明は省略する。
【0020】
本実施例では、画像形成ステーションS(SY、SM、SC、SK)の下方部に位置して中間転写体である無端状のベルト体(以下、「中間転写ベルト」という。)30が配置されている。中間転写ベルト30は、ローラ34(34a、34b、34c)に張設され、矢印方向に循環移動可能とされる。中間転写ベルト30を介して各画像形成ステーションの感光ドラム22Y、22M、22C、22Kと対向して一次転写手段31Y、31M、31C、31Kが配置される。また、ローラ34cと対向して二次転写手段としての二次転写ローラ32が設けられ、ローラ34bと対向して中間転写ベルト30のクリーニング手段33が配置されている。
【0021】
更に、本実施例では、画像形成装置の下方部には給紙部21a及び21bが配置され、側方部には、定着部50が配置されている。
【0022】
上記構成のカラー画像形成装置の動作について説明する。
【0023】
本実施例の画像形成装置は、感光ドラム22上に画像信号に基づいて制御部40が制御した露光により静電潜像を形成する。この静電潜像を現像手段26にて現像して単色トナー像を形成し、中間転写ベルト30上に単色トナー像を重ね合わせて多色トナー像を形成する。中間転写ベルト30上の多色トナー像を記録媒体である転写材11へ転写し、その転写材11上の多色トナー像を定着させる。
【0024】
更に説明すると、感光ドラム22(22Y、22M、22C、22K)は、アルミシリンダの外周に有機光導伝層を塗布して構成し、図示しない駆動モータの駆動力が伝達されて反時計回り方向に回転する。
【0025】
イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各ステーション毎に感光ドラム22は、帯電器23(23Y、23M、23C、23K)にて一様に帯電される。帯電された感光ドラム22(22Y、22M、22C、22K)は、スキャナ部24(24Y、24M、24C、24K)による露光により、静電潜像が形成される。
【0026】
感光ドラム22上の静電潜像は、ステーション毎にイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4個の現像器26(26Y、26M、26C、26K)により可視化される。
【0027】
中間転写ベルト30は、樹脂製の無端状ベルトで構成され、感光ドラム22Y、22M、22C、22Kに接触しており、図示しない駆動モータは中間転写ベルト30を時計回り方向に回転させる。中間転写ベルト30は、画像形成動作に応じて感光ドラム22Y、22M、22C、22Kの回転に伴って回転する。一次転写手段31(31Y、31M、31C、31K)に電圧を印加することにより、感光ドラム上の単色トナー像が順次中間転写ベルト30に転写される(一次転写)。
【0028】
感光ドラム22上に残った転写残トナーは各感光ドラム22上に設けられた感光ドラムクリーニング手段27(27Y、27M、27C、27K)によって回収される。
【0029】
予め給紙部21a若しくは21bに用意された転写材11は、給紙ローラ28(28a、28b)とレジストローラ29によって搬送される。その後、中間転写ベルト30と中間転写ベルト30に当接するように設けられた二次転写手段32が転写材11を狭持搬送し、二次転写手段32に電圧を印加することによって、転写材11に中間転写ベルト30上の多色トナー像が転写される(二次転写)。
【0030】
中間転写ベルト30のクリーニング手段33は、中間転写ベルト30上に残ったトナーをクリーニングするものである。多色トナー像を転写材11に転写した後に中間転写ベルト30上に残留した廃トナーは、クリーニング手段33によって中間転写ベルト30から掻き落とされ、図示しないクリーナ容器に蓄えられる。
【0031】
定着手段50は、転写材11を狭持搬送しながら、転写された多色トナー像を溶融定着させるものであり、図1に示すように転写材11を加熱する定着ローラ51と転写材11を定着ローラ51に圧接させるための加圧ローラ52を備えている。
【0032】
トナー像定着後の転写材11は、その後排紙ローラ53及び54によって、排出トレイ55に排出され、画像形成動作を終了する。
【0033】
次に、図2(a)、(b)を用いて、一次転写手段31の構成について詳細に述べる。
【0034】
画像形成ステーション毎に設けられた感光ドラム22Y、22M、22C、22K、及び、一次転写手段31Y、31M、31C、31Kは、同様の構成であるため、ここでは、総括して感光ドラム22及び一次転写手段31として説明する。
【0035】
中間転写ベルト30は、一般的にポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン等の樹脂フィルムが用いられている。本実施例では、厚さ70μm、表面抵抗率1.0×1012Ω/□のポリイミド製の無端状フィルムを用いている。表面抵抗率は、(株)三菱化学アナリテック製の抵抗率計ハイレスタUP MCP−HT450型により測定した値である。以下に記載する表面抵抗率及び体積抵抗率も、同抵抗率計を用いて測定したものである。
【0036】
図2(a)、(b)に示すように、一次転写手段31は、中間転写ベルト30を介して、感光ドラム22に対向している。一次転写手段31は、圧縮弾性を有する弾性体(弾性部材)41と、フィルム状の部材(フィルム部材)42から構成されている。弾性部材41の弾性によって、フィルム部材42を、中間転写ベルト30を介して感光ドラム22に対して押し当て、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nを形成している。
【0037】
フィルム部材42は、その上流端42aが支持部材44に固定されており、下流端の自由端部42bが弾性部材41によって押圧され、中間転写ベルト30に接触している。弾性部材41は、図2(b)に示すように、中間転写ベルト30の移動方向に直交する断面形状が、厚さt、幅wの矩形状(正方形或いは長方形)とされ、ベルト幅方向に延在した略直方体とされる。
【0038】
弾性部材41は、保持手段である台座45によって保持されている。これは、フィルム部材42にて転写に必要な部分は、中間転写ベルト30との接触領域だけであるものの、接触領域だけではフィルム部材42の固定が困難なことや、弾性部材41の姿勢が安定せず、接触領域を安定して確保できないためである。
【0039】
一次転写電圧(例えば、+300〜1500V程度)をフィルム部材42に印加すると、感光ドラム22と一次転写手段31との間に発生する電界により、感光ドラム22上のトナー像は、中間転写ベルト30上に転写される。
【0040】
フィルム部材42は、従来、一次転写電圧を印加するため導電樹脂フィルム等の導電体が一般的に用いられている。
【0041】
しかしながら、フィルム部材42に導電体を用いると、フィルム部材42が一次転写電圧の電位に帯電されることにより、不連続の放電が発生する場合がある。これは、中間転写ベルト30とフィルム部材42の接触領域Nの上流部分に存在する微小な空隙Gにおいて、中間転写ベルト30とフィルム部材42との間に大きな電位差が生じるためである。不連続の放電は、一次転写電圧として高い電圧(+1000〜1500V程度)が必要となる低温低湿環境で特に発生し易い。
【0042】
接触領域上流の空隙Gにおいて不連続の放電が発生すると、中間転写ベルト30上のトナー像が乱される。例えば、マゼンダ(M)のステーションで発生する異常放電は、すでに中間転写ベルト30上に転写されたイエロー(Y)のトナー像を乱す。トナー像の乱れは、転写材上における異常画像となり画像品質を損なう。
【0043】
そこで、本実施例においては、フィルム部材42に中抵抗のポリエチレンフィルム(厚さ100μm)を用い、弾性部材41に導電性のゴムスポンジ(厚さ(t)5mm、幅(w)が4mm、体積抵抗率1.0×104Ω・cm)を用いた。一次転写電圧は、電源46によって弾性部材41に対して印加し、弾性部材41とフィルム部材42の接触領域Nを介して、感光ドラム22に対して電界が形成される。本実施例では、接触領域Nは、5〜7mmとされた。
【0044】
フィルム部材42の表面抵抗率が中抵抗であるため、フィルム部材42の電位は、弾性部材41との接触領域Nから中間転写ベルト30の移動方向上流に離れるに従って減衰する。中間転写ベルト30とフィルム部材42との微小な空隙Gにおける、中間転写ベルト30とフィルム部材42との電位差も小さくなることから、当該空間における電界が弱まり、不連続の放電が抑制される。
【0045】
表1は、フィルム部材42の表面抵抗率を変えた際の、放電による異常画像の発生の有無を確認したものである。温度15℃、湿度10%の環境下で、一次転写電圧は一次転写電流が均一となる条件で確認した。これは、トナーを転写するのに必要な電流を確保することで、等しい転写効率の条件で比較するためである。フィルム部材42の表面抵抗率は、同環境下での測定値である。
【0046】
【表1】

【0047】
表中の×は不連続の放電による異常画像が発生しており、△は軽微な異常画像が発生しており、○は異常画像の発生がないことを表している。
【0048】
表1から分かる通り、フィルム部材42の表面抵抗率が高くなるにつれて、異常画像の発生が抑えられていることが分かる。フィルム部材42の表面抵抗率が低いと、先に述べたフィルム部材42の表面方向での電位の減衰効果が小さくなるため、微小な空隙における電位差が大きくなり、不連続の放電が発生し易くなる。
【0049】
そのため、中間転写ベルト30とフィルム部材42の微小な空隙Gにおける不連続の放電を抑制するためには、表面抵抗率が高い程有利である。
【0050】
しかし一方で、表面抵抗率が高すぎると、フィルム部材42がチャージアップすることで表面方向での電位の減衰効果が失われ、放電による異常画像が発生する。また、表面抵抗率が高くなる程、フィルム部材42と中間転写ベルト30との間の静電吸着力が増大し、中間転写ベルト30の駆動トルクが増加するという問題や、フィルム部材42の断面方向の抵抗が大きくなることにより、必要な一次転写電圧が増加するといった問題も発生する。
【0051】
そのため、本実施例では、上記表1からも理解されるように、フィルム部材42の表面抵抗率は、1.0×107Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下とされる。また、フィルム部材42に対し、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域の反対側の面に転写電圧を印加する。
【0052】
本実施例においては、表面抵抗率1.0×108Ω/□に調整した中抵抗のポリエチレンフィルムを用いた。フィルム部材42に中抵抗の樹脂フィルムを用いることにより、中間転写ベルト30とフィルム部材42との微小な空隙Gにおける不連続の放電を抑え、異常画像の発生を抑制することが可能となる。
【0053】
次に、フィルム部材42と、中間転写ベルト30及び弾性部材41との接触領域N、Ndの関係について述べる。
【0054】
図2に示したように、本実施例では、弾性部材41によってフィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nを形成しており、フィルム部材42と弾性部材41との接触領域Ndは、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nに含まれている。従って、一次転写電圧は、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nに対して印加されている。
【0055】
別の構成として、図3に示すように、弾性部材41がフィルム部材42と中間転写ベルト30が接していない空隙Gに当たる部分にまでフィルム部材42と接触しているとする。この場合には、フィルム部材42と中間転写ベルト30の間の電位差が大きくなり、不連続の放電が発生し易くなる。
【0056】
そのため、本実施例に示したように、転写電圧は、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nの反対側の面に対して印加することが望ましい。
【0057】
なお、本実施例では、一次転写電圧を導電性の弾性部材41に印加するとしたが、図4に示すように、フィルム部材42の裏面に導電層43を設けて、導電層43に対して一次転写電圧を印加してもよい。また、図5に示すように、弾性部材41とフィルム部材42の間の接触領域Ndに導電層43を設け、導電層43に対して一次転写電圧を印加してもよい。この場合は、弾性部材41は絶縁体であってもよい。
【0058】
導電層43としては、金属シートや、フィルム部材42の裏面或いは弾性部材41の表面を導電性物質でコートするといった手段が考えられる。
【0059】
また、本実施例では、タンデム方式のカラー画像形成装置について説明したが、ロータリー方式で中間転写ベルト30を用いたカラー画像形成装置であっても良い。斯かるロータリー方式のカラー画像形成装置は、当業者には周知であるので、詳しい説明は省略する。
【0060】
また、本実施例では、中間転写ベルト30の表面抵抗率を1.0×1012Ω/□として説明したが、異なる表面抵抗率であっても良い。ただし、中間転写ベルト30の表面抵抗率が高すぎると(例えば、1.0×1014Ω/□以上)、中間転写ベルト30がチャージアップしてフィルム部材42との電位差が大きくなり、異常放電が発生する虞がある。そのため、中間転写ベルト30の表面抵抗率は自己減衰領域であることが望ましい。
【0061】
以上のように本実施例では、一次転写手段31を構成するフィルム部材42に中抵抗の樹脂フィルムを用い、フィルム部材42に対し、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域の反対側の面に転写電圧を印加することによって、不連続の放電による異常画像の発生を抑制することが可能となる。
【0062】
実施例2
第2の実施例について、図6を用いて説明する。
【0063】
本実施例は、第1の実施例とは、移動可能なベルトが転写材11を搬送するベルト状の転写材搬送体、即ち、搬送ベルトであり、感光ドラム22上のトナー像を転写材11上に直接転写するという点で異なる。
【0064】
なお、装置の大部分の構成と動作は前述した第1の実施例と同一であるため、同じ構成及び作動をする部材には同じ参照番号を付し、詳しい説明は省略して、ここでは前述した実施例と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
本実施例では、第1の実施例での中間転写ベルト30の代わりに、搬送ベルト60が移動可能なベルトとなっている。転写材11は吸着ローラ62により搬送ベルト60に吸着され、搬送ベルト60の移動に伴って搬送される。
【0066】
搬送ベルト60には、第1の実施例において説明した中間転写ベルト30と同様に、一般的にポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン等の樹脂フィルムが用いられている。本実施例では、厚さ70μm、表面抵抗率1.0×1012Ω/□のポリイミド製の無端状フィルムを用いている。
【0067】
転写手段61Y、61M、61C、61Kは、第1の実施例における一次転写手段31と同様に搬送ベルト60を介して、感光ドラム22Y、22M、22C、22Kに対向して各ステーションSY、SM、SC、SKに設けられている。
【0068】
転写手段61は、第1の実施例の一次転写手段31と同様の構成とされ、例えば図2〜図5に示す様に、弾性部材41とフィルム部材42から構成されている。
【0069】
第1の実施例では、感光ドラム22上のトナー像を中間転写ベルト30に一次転写し、さらに中間転写ベルト30上の多色トナー像を転写材11上に二次転写していた。それに対し、本実施例では、感光ドラム22上のトナー像を転写手段61により、転写材11上に直接転写し、順次単色トナー像を転写材11上に重ね合わせて多色トナー像を形成していく。転写材11に転写するため、転写電圧は第1の実施例における一次転写電圧に比べ、より高い電圧が必要となる(例えば、+1000〜3500V)。
【0070】
転写材11上の多色トナー像は、第1の実施例と同様に、定着手段(不図示)によって溶融定着させられる。
【0071】
第1の実施例と同様に、搬送ベルト60と、転写手段61を構成するフィルム部材42との間には、接触領域Nの上流部分に微小な空隙Gが存在し、不連続の放電が発生する場合がある。不連続の放電が発生すると、転写材11上にすでに転写されたトナー像が乱され、異常画像の発生につながる。
【0072】
第1の実施例に比べると、必要とされる転写電圧が高いため、搬送ベルト60とフィルム部材42の間の放電はより起こり易くなっている。
【0073】
表2は、フィルム部材42の表面抵抗率を変えた際の、放電による異常画像の発生の有無を確認したものである。第1の実施例と同様に、温度15℃、湿度10%の環境下で、転写電圧は転写電流が均一となる条件で確認した。転写材11には、キヤノン製レーザービームプリンター用紙CS−814(81.4g/cm2)を用いた。第1の実施例と同様に、フィルム部材42の抵抗を中抵抗とすることで、放電による異常画像の発生を抑えられることが分かる。
【0074】
【表2】

【0075】
本実施例では、上記表2から理解されるように、フィルム部材42の表面抵抗率は、1.0×108Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下とされる。また、フィルム部材42に対し、フィルム部材42と中間転写ベルト30との接触領域Nの反対側の面に転写電圧を印加する。
【0076】
そこで本実施例では、転写手段61を構成するフィルム部材42に表面抵抗率1.0×109Ω/□に調整した中抵抗のポリエチレンフィルムを用いた。フィルム部材42に中抵抗の樹脂フィルムを用いることにより、搬送ベルト60とフィルム部材42との微小な空隙Gにおける不連続の放電を抑え、異常画像の発生を抑制することが可能となる。
【0077】
以上のように、本実施例によれば、搬送ベルト60を用いた直接転写方式の画像形成装置の転写手段においても、フィルム部材42に中抵抗の樹脂フィルムを用い、フィルム部材42に対し、フィルム部材42と搬送ベルト60との接触領域の反対側の面に転写電圧を印加する。これにより、不連続の放電による異常画像の発生を抑制することが可能となる。
【0078】
以上、第1及び第2の実施例において、カラー画像形成装置での実施例を説明したが、単色の画像形成装置においても適用可能である。
【0079】
以上説明したように本発明によれば、転写手段を構成するフィルム部材に中抵抗の樹脂シートを用いることによって、移動可能なベルトと転写手段との間の不連続の放電による異常画像の発生を抑制することが可能となる。従って、より高品位の画像を提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
11 記録媒体
22(22Y、22M、22C、22K) 感光ドラム(像担持体)
23(23Y、23M、23C、23K) 帯電器(帯電手段)
24(24Y、24M、24C、24K) スキャナ部(露光手段)
26(26Y、26M、26C、26K) 現像器(現像手段)
30 中間転写ベルト(中間転写体)
31(31Y、31M、31C、31K) 一次転写手段
32 二次転写手段
41 弾性部材
42 フィルム部材
43 導電層
60 搬送ベルト(転写材搬送体)
61(61Y、61M、61C、61K) 転写手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体と、前記トナー像が転写される中間転写体か、又は、前記トナー像が転写される転写材を搬送する転写材搬送体とされる無端状のベルト体と、前記像担持体が担持するトナー像を前記中間転写体か又は前記転写材に転写するために前記ベルト体に前記像担持体とは反対の側から接触するフィルム状の部材を備えた転写手段と、を有する画像形成装置において、
前記フィルム状の部材の表面抵抗率は、
(a)前記ベルト体が中間転写体である場合には、1.0×107Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下であり、
(b)前記ベルト体が転写材搬送体である場合には、1.0×108Ω/□以上かつ1.0×1011Ω/□以下であり、
前記フィルム状の部材に対し、前記フィルム状の部材と前記ベルト体との接触領域の反対側の面に転写電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記フィルム状の部材は、樹脂シートであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写手段は、前記フィルム状の部材を前記ベルト体へと押圧する弾性部材を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、導電性であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写手段は、前記弾性部材に転写電圧を印加し、前記フィルム状の部材を介して電流が流れることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写手段は、前記フィルム状の部材を前記ベルト体へと押圧する弾性部材を有し、前記弾性部材と前記フィルム状の部材との間に導電層を設け、前記導電層に転写電圧を印加し、前記フィルム状の部材を介して電流が流れることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記ベルト体の移動方向に直交する断面形状が矩形状とされ、前記ベルト幅方向に延在した略直方体であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記フィルム状の部材は、前記ベルト体と接触する面とは反対側の面に導電層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記転写手段は、前記導電層に転写電圧を印加し、前記フィルム状の部材を介して電流が流れることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−24941(P2013−24941A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157062(P2011−157062)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】