説明

画像形成装置

【課題】比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合の像担持体へのリークの発生を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明は、給紙カセット13及び手差給紙トレイ16から転写材を給紙する給紙部15,17と、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム30と、各給紙部15,17から給紙された転写材を重合状態で搬送する搬送経路18と、感光体ドラム30に静電潜像に応じたトナー像を形成する画像形成部21と、各給紙部15,17で取り出された転写材にトナー像を転写する転写デバイス33と、を備え、搬送経路18は、重合状態で搬送する複数の転写材のうち、画像形成処理対象の転写材として感光体ドラム30側に位置する上段の転写材の先端よりも、転写デバイス33側に位置する下段の添紙の先端の方が先に感光体ドラム30に到達するように搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、スキャナ、プリンタ、或いはこれらを複合的に備えた複合機などの画像形成装置、特に、複数の転写材収納用の収納手段(例えば、給紙カセットや手差しトレイなど)を備え、これら複数の収納手段から同時に転写材を添紙として取り出して重さね合わせの状態で搬送・画像形成処理を行う重送を可能とした画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、スキャナ、プリンタ、或いはこれらを複合的に備えた複合機などの画像形成装置には、ハガキ、或いは、表面側に位置するシール紙材と裏面側に位置する台紙材とからなるラベル紙などのように、電気的に高抵抗で比較的厚紙なものを転写材として用いることを可能としたものが周知である。
【0003】
また、このような画像形成装置には、複数の転写材収納用の収納手段(例えば、給紙カセットや手差しトレイなど)を備え、これら複数の収納手段から同時に転写材を添紙として取り出して重さね合わせた状態で搬送・画像形成処理を行う重送を可能とした画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−313446号公報
【特許文献2】特開平05−155502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示の重送は、透明なOHPシートを転写材として用いて画像形成処理を行う際に、OHPシートに画像形成処理した際の画像の見易さと携帯性とを改善することを目的としている。そして、例えば、画像形成処理対象となるOHPシートを第1の給紙カセットに収納すると共に、通常のコピー用の転写紙(以下、『添紙』と称する)を第2の給紙カセットに収納し、OHPシートと添紙とを同時に給紙し、そのままOHPシートに画像形成処理を施したうえで、OHPシートと添紙とを搬送路終端の積載トレイ等に集積するものである。
【0006】
また、特許文献2に開示の重送は、例えば、大量の画像形成処理を行う際、通常の白色の普通紙への画像形成処理の合間(例えば、100枚単位)で、区切りを示すための有色(白色以外)の普通紙を挿入することを目的としている。そして、例えば、記録用の白色の普通紙を第1の給紙カセットに収納すると共に、区切り用の有色の普通紙(以下、『添紙』と称する)を第2の給紙カセットに収納し、所定枚数毎(例えば、100枚単位)に記録用の普通紙と添紙とを同時に給紙し、そのまま記録用の普通紙に画像形成処理を施したうえで、記録用の普通紙と添紙とを搬送路終端の積載トレイ等に集積するものである。
【0007】
しかしながら、これらの重送にあっては、何れの場合にあっても、基本的に同一サイズの用紙を転写材として用い、その厚さも一般的な厚さの用紙を転写材として用いていた。
【0008】
一方、ハガキ、或いは、ラベル紙といった比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合、像担持体としての感光体(ドラム)に形成されたトナー像を転写ローラで圧接しつつ転写バイアスを印加する際には、その電圧は転写材の抵抗によって変動し、転写材抵抗が高いほど高い電圧を印加する必要がある。この時、転写材の端部よりも外側の、感光体と転写ローラーの間にもより高い電圧が印加されることになり、感光体と転写ローラとの間に隙間が発生し易い紙端部のエッジ付近にて感光体へのリークが発生してしまうという問題が生じていた。
【0009】
このようなリークの発生は、感光体の寿命を短くしてしまうばかりでなく、以降の画像形成処理時に画像不良が発生する虞があった。
【0010】
そこで、本発明は、比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合の像担持体へのリークの発生を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、転写材を収納する複数の収納手段と、前記複数の収納手段から転写材を給紙する複数の給紙手段と、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記複数の給紙手段からそれぞれ給紙された複数の転写材を前記像担持体に向けて重合状態で搬送する搬送手段と、該像担持体の表面にトナーを付着させて静電潜像に応じたトナー像を形成する現像手段と、前記給紙手段で取り出された転写材を前記像担持体に向けて圧接すると共に前記像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材へと転写する転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記複数の給紙手段は、その一つから画像形成処理対象の転写材を取り出して前記搬送手段に向けて給紙すると共に、その他の一つから画像形成処理対象の転写材よりも幅広の転写材を添紙として取り出して前記搬送手段に向けて給紙し、前記搬送手段は、重合状態で搬送する複数の転写材のうち、画像形成処理対象の転写材として前記像担持体側に位置する上段の転写材の先端よりも、前記転写手段側に位置する下段の添紙の先端の方が先に前記像担持体に到達するように搬送することを特徴とする。
【0012】
本発明の画像形成装置によれば、比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合の像担持体へのリークの発生を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、前記転写手段は、転写材を搬送する弾性部の幅が上段の転写材の幅よりも広くかつ下段の添紙の幅と同じかそれより狭いことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の画像形成装置によれば、像担持体へのリークの発生をより一層確実に抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、前記転写手段は、転写材を前記像担持体に向けて圧接する圧接力が可変であることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の画像形成装置によれば、像担持体へのリークの発生をさらに抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、前記転写手段よりも下流側で上段の転写材と下段の添紙とを分離する重送分離手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の画像形成装置によれば、このような比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合に、単に普通紙を添紙として重送を行ってそのまま排紙したのでは、添紙が邪魔となってしまう。したがって、画像形成処理後の排紙時には、ハガキやラベル紙等の本来の転写対象である転写材のみを排紙することが望ましいことから、画像転写後の重送を解除することを可能とすることを目的とする。
【0019】
請求項5に記載の発明では、前記重送分離手段は、前記転写手段と前記定着手段との間に配置されて上段の転写材のみを前記定着手段へと搬送することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の画像形成装置によれば、添紙の再利用を可能とすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記転写手段の下流側で定着済みの転写材を表裏を反転しつつ前記像担持体よりも上流側の前記搬送手段に定着済みの転写材を再搬送する反転手段を備え、前記重送分離手段は、分離後の下段の添紙を前記反転手段の中途部で合流させることを特徴とする。
【0022】
比較的厚肉な用紙からなる転写材を複数枚用いて画像形成処理する際には、先の重送解除後の添紙を、そのまま添紙として再利用することが望ましい。また、厚みや斤量の異なる転写材や添紙を重送する場合、定着以降も重送を続けると、転写と定着との間の紙のたわみが強度などで異なること、定着時には非常に押圧が強くかつトナー面側のみが加熱されること、などにより、上段と下段とで搬送ずれが発生し、定着時のジャムやしわ、定着むらとなる懸念が大きくなる。さらに、定着時には大きな熱がかかるため、ここでの通紙の停止や、ジャムの処理操作はユーザにとっても慎重な作業を強いることとなる。しかも、定着後の用紙は加熱によるダメージが大きい。したがって、請求項6に記載の画像形成装置のように、定着前に反転手段を利用して転写手段の上流側に戻すことにより、添紙として再利用性を向上することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、前記重送分離手段は、電気的な静電吸着作用によって前記反転手段の中途部に向けて下段の添紙を導くように静電吸着する静電吸着手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の画像形成装置によれば、簡素な構成で上段の転写材と添紙とを分離することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、前記静電吸着手段は、転写材が重送状態にない単送の画像形成処理の際には、電気的な静電吸着作用の解除又は機械的に前記搬送手段から退避されることを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の画像形成装置によれば、単送の際に転写材が不測に静電分離処理されてしまうことを抑制することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、前記静電吸着手段は、上段の転写材の幅よりも外側に、下段の添紙を上段の転写材から分離しつつ前記反転手段へと搬送路に誘導する、ガイド手段を備えていることを特徴とする。
【0028】
請求項9に記載の画像形成装置によれば、上段の転写材と添紙との分離効果を向上することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の画像形成装置は、比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合の像担持体へのリークの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の画像形成装置を示す要部の説明図である。
【図3】(A)はレジストローラ対と各転写材との関係を示す説明図、(B)は感光体ドラムと転写デバイスとの間の各転写材の関係を示す説明図である。
【図4】(A)は分離部付近の説明図、(B)は各転写材の分離状態を示す分離部付近の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の画像形成装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0032】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタの説明図、図2は本発明の一実施形態の画像形成装置を示す要部の説明図、図3(A)はレジストローラ対と各転写材との関係を示す説明図、図3(B)は感光体ドラムと転写デバイスとの間の各転写材の関係を示す説明図、図4(A)は分離部付近の説明図、図4(B)は各転写材の分離状態を示す分離部付近の説明図である。
【0033】
(画像形成装置の全体構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ11は、プリンタ本体12の内部にスライド変位可能に格納された給紙カセット(収納手段)13と、給紙カセット13の収納空間14内に収納した転写材(図示せず)を取り出す給紙部15と、プリンタ本体12の正面に配置した手差給紙トレイ(収納手段)16と、手差給紙トレイ16にセットした転写材(図示せず)を取り出す手差給紙部17と、各給紙部15,17から供給された転写材を搬送する搬送経路18と、搬送経路18の転写材搬送方向を基準とする上流側(以下、上流又は下流の基準とする)で各給紙部15,17の合流部よりも下流側に配置したレジストローラ対19と、レジストローラ対19よりも搬送経路18の下流側に配置されてトナーコンテナ20から供給されたトナー等の現像剤により転写材の一面に転写像を形成する画像形成部21と、画像形成部21よりも搬送経路18の下流側に配置されて転写材の一面に形成されたトナー画像を定着する定着装置22と、定着装置22を通過した転写材の他面にも転写像を形成する両面印刷モードの場合に自動で転写材を反転してレジストローラ対19よりも搬送経路18の上流側へと転写材を引き戻す反転経路23と、搬送経路18の終端部(最下流端)に設けられた排紙部24とを備えている。
【0034】
(トナーコンテナ20の構成)
トナーコンテナ20は、コンテナ本体25の内部に補給用トナーが収納されている。また、その補給用トナーは、可撓性樹脂材料等からなるパドル26によって攪拌されると共に、スパイラル27によって転写材幅方向(図1の紙面奥行き方向)に搬送された後、その所定位置で画像形成部21の現像デバイス28へと供給される。
【0035】
(トナーコンテナ20の構成)
トナーコンテナ20は、コンテナ本体25の内部に補給用トナーが収納されている。また、その補給用トナーは、内部で攪拌されると共に転写材幅方向(図1の紙面奥行き方向)に搬送された後、その所定位置で画像形成部21の現像デバイス28へと供給される。
【0036】
現像ローラ29は、その周面が感光体ドラム30の周面と対向するように配置されている。従って、現像ローラ29に搬送されつつある補給用トナーは、現像ローラ29を介して感光体ドラム30の周面に供給され、これによって感光体ドラム30の周面にトナー像が形成されることになる。この際、現像ローラ(マグネットローラ)29は、感光体ドラム30にトナーを凝集しないよう適度に攪拌しつつ供給する。
【0037】
(画像形成部21の構成)
画像形成部21は、例えば、アモルファスシリコン製の感光体ドラム30の周囲に、感光体ドラム30の回転方向(図示矢印参照)に沿う画像形成プロセス順に、帯電デバイス31・露光デバイス32・現像デバイス28(現像ローラ29)・転写デバイス33・クリーニングデバイス34・除電デバイス35を備えている。
【0038】
(帯電デバイス31の構成)
帯電デバイス31は、感光体ドラム30の表面を所定の極性・電位に帯電するもので、直流電圧(Vdc)に交流電圧(Vac)を重畳した帯電バイアスが印加される。
【0039】
(露光デバイス32の構成)
露光デバイス32は、例えば、図示を略するパーソナルコンピュータから送信された印刷データに含まれる画像データを処理して、感光体ドラム30の表面にレーザ光Pを照射する。尚、ここでの印刷データには、上述した画像データの他、例えば、画像形成処理部数・拡大/縮小率・画像濃度等の各種設定に関するデータ等が該当する。
【0040】
(転写デバイス33の構成)
転写デバイス33には、直流電源から転写電圧が印加され、感光体ドラム30の表面に形成されたトナー像を、感光体ドラム30と協働して転写材をニップ搬送しつつ、その印加電圧によって転写する。
【0041】
(除電デバイス35の構成)
除電デバイス35には、例えば、LED光源等が用いられ、帯電デバイス31で帯電された感光体ドラム30を除電する。
【0042】
(定着装置22の構成)
定着装置22は、搬送経路18を挟んで対向配置された一対の定着ローラ36及び加圧ローラ37と、定着ローラ36の内部に配置されて定着ローラ36を直接過熱するハロゲンヒータ等のハロゲンヒータ38と、を備えている。
【0043】
(反転経路23)
反転経路23は、搬送経路18の定着装置22よりも下流側から、レジストローラ対19よりも搬送経路18の上流側へと、転写材を引き戻すものである。この際、定着装置22と排紙部24との間には、スイッチバックローラ対39が設けられており、このスイッチバック機能により、一面(表面)側への転写時の上流端(後端)が今度は先端となるように反転経路23に転写材を導く。
【0044】
(重送モード実行機能)
一方、本発明の搬送経路18には、本発明に係る重送モードを実行する機能として、給紙部15,17とレジストローラ対19との間に設けられたタイミングスイッチ(無くても良い)40と、画像形成部21の直近の上流側に設けられて上段の転写材を転写デバイス33に向けてガイドする上コロ41と、転写デバイス33を感光体ドラム30に向けて付勢するコイルスプリング等の付勢部材42と、付勢部材42による感光体ドラム30への転写デバイス33の圧接力を付勢部材42の付勢力で可変とする偏心カム43と、画像形成部21と定着装置22との間に配置された分離板金44と、分離板金44の下流側に配置されて用紙幅方向の両端部が搬送経路18に突出するガイド板45と、ガイド板45及び分離板金44の下流端と反転経路23の中途部とを連通する分離経路46と、を備えている。
【0045】
偏心カム43は、搬送される転写材の紙厚に応じて感光体ドラム30への転写材の圧接力を調整する。
【0046】
分離板金44及びガイド板45には、電気的に静電吸着作用が発生されている。また、分離板金44の下流端は、例えば、ソレノイド等によって昇降可能とされている。これにより、その下降時には搬送経路18から退避し、搬送経路18で搬送中の転写材に対して静電吸着作用が及ばないように設定されている。
【0047】
ガイド板45は、上段の転写材の幅よりも外側において、下段の添紙を上段の転写材から分離しつつ分離経路46へと誘導するように搬送経路18に突出する凸部45aが設けられている。また、凸部45aは分離板金44の下流端の昇降と連動して搬送経路18に突出する状態と下方に退避する状態に変更可能な構成にしてもよい。
【0048】
(制御回路部)
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るプリンタ11には、図示しないパーソナルコンピュータから送信された画像データを含む印刷データを受信するUSBポートなどの受信部51と、印刷データとは別に手動で各種モードの選択操作等を含む各種操作用の操作部52と、液晶モニタ等のタッチパネル方式の表示部53と、操作部52並びに表示部53で設定可能なプログラムを含めたプリンタ11の全般の制御プログラムを格納したROM54と、操作部52や表示部53で設定変更された画像形成処理条件等を一時的に格納するRAM55と、受信した印刷データ等の比較的大容量のデータを格納するハードディスクドライブ(HDD)56と、ROM54に格納された制御プログラムに基づいて画像形成処理を実行する制御回路部57と、を備えている。
【0049】
これにより、制御回路部57は、ROM54に格納された制御プログラムに基づいて、受信部51で受信した印刷データから画像形成処理を実行する。具体的には、制御回路部51は、例えば、感光体ドラム30を均一に帯電する帯電デバイス31、感光体ドラム30を露光して静電潜像を形成する露光デバイス32、静電潜像をトナー像に可視化する現像デバイス28、可視化されたトナー像を転写媒体に転写する転写デバイス33の電位やバイアスの制御、並びに除電デバイス35のイレース光量等のキャリブレーションを実行する。また、制御回路部57は、本発明の機能として、後述する重送モードを実行するために、各給紙部15,17、レジストローラ体19、帯電デバイス31、露光デバイス32、転写デバイス33、除電デバイス35、ハロゲンヒータ38、偏心カム43、分離板金44及びガイド板45に静電吸着作用を電気的に発生させる(例えば、直接接地、或いは、電気抵抗やバリスタを介して接地)静電電極部47、スイッチバックローラ39、等を制御する。
【0050】
上記の構成において、画像形成部21は、感光体ドラム30が図示しない駆動手段によって所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動され、その表面が帯電デバイス31によって帯電される。
【0051】
帯電後の感光体ドラム30は、その表面に露光デバイス32によって静電潜像が形成される。ここで、露光デバイス32は、パーソナルコンピュータ等から出力された印刷データに含まれる画像データに基づいて、感光体ドラム30の表面にレーザ光Pを照射し、感光体ドラム30の表面のレーザ光照射部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0052】
そして、感光体ドラム30の表面に形成された静電潜像は、現像デバイス28によってトナーコンテナ20から供給された電荷を有するトナーが静電的に付着されて未定着トナー像として現像される。さらに、その未定着トナー像は、転写デバイス33によって転写材に転写像として転写される。
【0053】
この際、転写材に未定着トナー像を転写した感光体ドラム30は、クリーニングデバイス34によって残留トナー等の除去処理が行われた後、次の画像形成時の帯電のために除電デバイス35により除電処理が施される。
【0054】
さらに、転写後の転写材は、定着装置22によって定着された後、スイッチバックローラ対39の通常ニップ搬送後、排紙部24から排紙される。
【0055】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の説明では、画像形成処理対象の転写材としてラベル紙を用い、このラベル紙を上段の転写材、下段の添紙に通常の普通紙を用いるものとして説明する。
【0056】
先ず、重送を行う場合には、パーソナルコンピュータの印刷設定画面、又は、手動による操作部52や表示部53を用いたモード設定により、重送モードを指定する。
【0057】
この際、印刷設定画面や表示部53には、上段の転写材を手差給紙トレイ16に適正(表裏や前後)に収納するといったガイド表示を行う。また、上段・下段の給紙トレイや転写材を指定することも可能である。
【0058】
また、制御回路部57は、重送モードの際は、転写デバイス33の圧接力を偏心カム43の位置によって調節(ユーザによる外部レバー等による手動調整でも良い)すると同時に、分離板金45の下流端とガイド板46と上昇させ、静電電極部47を通電して静電気を帯びさせる。
【0059】
さらに、パーソナルコンピュータでモード指定を行った場合には、上述したトレイの指定等の印刷データが画像データと共に送信される。
【0060】
ここで、手差給紙トレイ16には、高抵抗で厚みを持つ上段の転写材としてA4規格サイズのラベル紙が収納され、給紙部15には上段の転写材よりも幅の広い普通紙(例えば、12inch紙,70g/m)が添紙として収納される。
【0061】
重送モードが実行されると、制御回路部57は、各給紙部15,17を制御して、手差給紙トレイ16に収納されたラベル紙と給紙カセット13に収納された添紙とを取り出させ、レジストローラ対19に向けて搬送する。
【0062】
この際、制御回路部57は、給紙部15,17の給紙タイミングや送り速度を制御することによって、図3(A)に示すように、レジストローラ対19の上流側位置にて、下段の添紙S2の先端がニップ部分よりも所定距離(例えば、3mm程度)下流側に送り出された状態で停止し、上段のラベル紙S1が重なった状態でニップ停止するように、位置調整する。
【0063】
その後、制御回路部57は、重送状態で搬送されてきた各紙S1,S2が転写デバイス33と感光体ドラム30との押圧位置にくるタイミングに合わせ、感光体ドラム30に現像されてきたトナー像を、転写デバイス33に印加されたトナー逆極性の電圧による電界で上段のラベル紙S1に転写する。
【0064】
このとき、図3(B)に示すように、上段のラベル紙S1の幅方向両端部付近では、上段のラベル紙S1と感光体ドラム30との間に下段の添紙S2が挟まるため、両端部近傍での放電を抑制することができる。
【0065】
その後、下段の添紙S2は、先端が分離板金44に達すると、制御回路57は、静電電極部47を通電して分離板金44に電気的な静電吸着作用を及ぼし、図4(A),(B)に示すように、分離板金44の下流端部付近にて静電吸着作用とガイド板45による機械的なガイド作用とによって下向きに応力を受け、各紙S1,S2を分離し、下段の添紙S2を分離経路46から反転経路23の中途部へと分離搬送する。
【0066】
分離された上段のラベル紙S1は、そのまま搬送経路18を経由して、定着装置22でトナー像が定着され、スイッチバックローラ対39の通常ニップ搬送後、排紙部24から排紙される。
【0067】
分離された下段の添紙S2は、反転経路23により再び給紙され、重送モードが継続している場合には、次の上段のラベル紙S1用の下段の添紙S2として再利用される。そして、重送モードが終了した場合には、下段の添紙S2は、最後のラベル紙S1への重送が終了した後、反転経路23から搬送経路18に送り出された後、そのまま排紙部24から排紙される。
【0068】
なお、制御回路部57は、例えば、重送モードが終了した後の下段の添紙S2を反転経路23に残存させ、次の画像形成処理が通常モードである場合には普通紙の1枚目として利用し、次の画像形成処理が重送モードである場合には下段の添紙S2として再利用しても良い。
【0069】
また、重送モードが終了した後に、下段の添紙S2をそのまま排紙部24から排紙する場合には、制御回路部57は、画像形成処理(トナー転写)機能を停止して感光体ドラム30と転写デバイス33を搬送ローラ対として利用しても良い。同様に、制御回路部57は、ハロゲンヒータ38による加熱を停止して、定着装置22を搬送ローラ対として利用しても良い。
【0070】
これにより、下段の添紙S2を排紙する際に、専用の搬送ローラ対を配置することなく、既存のローラ対等を利用して排紙することができる。
【0071】
このように、本発明は、転写材を収納する給紙カセット13及び手差給紙トレイ16(収納手段)と、複数の収納手段から転写材を給紙する複数の給紙部15,17(給紙手段)と、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム(像担持体)30と、各給紙部15,17から給紙された複数の転写材を感光体ドラム30に向けて重合状態で搬送する搬送経路(搬送手段)18と、感光体ドラム30の表面にトナーを付着させて静電潜像に応じたトナー像を形成する画像形成部(現像手段)21と、各給紙部15,17で取り出された転写材を感光体ドラム30に向けて圧接すると共に感光体ドラム30の表面に形成されたトナー像を転写材へと転写する転写デバイス(転写手段)33と、を備え、各給紙部15,17は、その一つから画像形成処理対象の転写材を取り出して搬送経路18に向けて給紙すると共に、その他の一つから画像形成処理対象の転写材よりも幅広の転写材を添紙として取り出して搬送経路18に向けて給紙し、搬送経路18は、重合状態で搬送する複数の転写材のうち、画像形成処理対象の転写材として感光体ドラム30側に位置する上段の転写材の先端よりも、転写デバイス33側に位置する下段の添紙の先端の方が先に感光体ドラム30に到達するように搬送する。
【0072】
これにより、比較的厚肉な用紙を転写材として用いた場合の像担持体へのリークの発生を抑制することができる。
【0073】
ところで、上記実施形態においては、本発明の画像形成装置をモノクロ専用プリンタであるプリンタ11に適用して説明したが、例えば、カラープリンタや複合機といった画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
13…給紙カセット(収納手段)
15…給紙部(給紙手段)
16…手差給紙トレイ(収納手段)
17…手差給紙部(給紙手段)
18…搬送経路(搬送手段)
21…画像形成部(現像手段)
23…反転経路(反転手段)
30…感光体ドラム(像担持体)
33…転写デバイス(転写手段)
44…分離板金(重送分離手段)
45…ガイド板(重送分離手段・ガイド手段)
46…分離経路(重送分離手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材を収納する複数の収納手段と、
複数の収納手段から転写材を給紙する複数の給紙手段と、
表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記複数の給紙手段からそれぞれ給紙された複数の転写材を前記像担持体に向けて重合状態で搬送する搬送手段と、
該像担持体の表面にトナーを付着させて静電潜像に応じたトナー像を形成する現像手段と、
前記給紙手段で取り出された転写材を前記像担持体に向けて圧接すると共に前記像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材へと転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置において、
前記複数の給紙手段は、その一つから画像形成処理対象の転写材を取り出して前記搬送手段に向けて給紙すると共に、その他の一つから画像形成処理対象の転写材よりも幅広の転写材を添紙として取り出して前記搬送手段に向けて給紙し、
前記搬送手段は、重合状態で搬送する複数の転写材のうち、画像形成処理対象の転写材として前記像担持体側に位置する上段の転写材の先端よりも、前記転写手段側に位置する下段の添紙の先端の方が先に前記像担持体に到達するように搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写手段は、転写材を搬送する弾性部の幅が上段の転写材の幅よりも広くかつ下段の添紙の幅と同じかそれより狭いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写手段は、転写材を前記像担持体に向けて圧接する圧接力が可変であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写手段よりも下流側で上段の転写材と下段の添紙とを分離する重送分離手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記重送分離手段は、前記転写手段と前記定着手段との間に配置されて上段の転写材のみを前記定着手段へと搬送することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写手段の下流側で定着済みの転写材を表裏を反転しつつ前記像担持体よりも上流側の前記搬送手段に定着済みの転写材を再搬送する反転手段を備え、
前記重送分離手段は、分離後の下段の添紙を前記反転手段の中途部で合流させることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記重送分離手段は、電気的な静電吸着作用によって前記反転手段の中途部に向けて下段の添紙を導くように静電吸着する静電吸着手段を備えていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記静電吸着手段は、転写材が重送状態にない単送の画像形成処理の際には、電気的な静電吸着作用の解除又は機械的に前記搬送手段から退避されることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記静電吸着手段は、上段の転写材の幅よりも外側に、下段の添紙を上段の転写材から分離しつつ前記反転手段へと搬送路に誘導する、ガイド手段を備えていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−29696(P2013−29696A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166155(P2011−166155)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】