説明

画像形成装置

【課題】設置エリアにおけるユーザーの存否に応じて電源の制御を行うとともに、再起動時における不完全なジョブデータの印刷処理を制御する。
【解決手段】画像形成装置1に対する電源の供給及び遮断、並びに起動及び終了の監視及び制御を行う電源管理部112と、印刷ジョブデータに関連付けて、印刷ジョブデータの受信状態、及び印刷実行部150における印刷実行状態を監視し、各状態の変化に関する情報を画像管理情報として逐次記録するジョブ管理部120とを備え、ジョブ管理部120は画像形成装置1が起動された場合に、画像管理情報を参照し、印刷ジョブデータの中から印刷が未処理であって且つ処理を続行すべき印刷ジョブデータを選択し、印刷ジョブデータの印刷実行状態に応じた処理を実行し、電源管理部112は、ユーザーの存否を検出するユーザー検出装置の検出結果に基づいて、画像形成装置1の起動や終了、並びに電源の供給及び遮断を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター等の画像形成装置において、設置エリアにおけるユーザーの存否に応じて電源の制御を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンター等の画像形成装置に関しては、入退室時に実施したユーザー認証の結果に基づき、ネットワークに接続されたコンピュータ等の電源のオン/オフを自動的に切り替えることで、ユーザーにとっての利便性を高めるとともに、コンピュータのセキュリティを強化することが可能な制御システムが提案されている(例えば、特許文献1)。このような制御システムによれば、オフィスなどで、印刷処理を実行したユーザーが印刷動作前に退室した場合には、印刷物が悪意ある第三者の手に渡らないように、印刷動作を行わずにその印刷処理に関するデータを所定のメモリエリアに退避し、セキュリティの向上を図っている。
【0003】
その一方で、ネットワークプリンターのように、多数のユーザーがプリンターを共有して使用する場合は、多数のユーザーによる印刷実行が集中すると、印刷待ちキューにそのジョブデータが入り、印刷実行操作から印刷開始までの間に待機状態となるケースが発生する。具体的には、図7に示すように、通常、一つのジョブデータのみが印刷実行中となり、その間、他のジョブデータは、受信中や展開待ち、展開中の状態にある。ここで、この展開待ちのジョブデータ及び展開中のジョブデータとしては、受信完了したジョブデータと、受信中のジョブデータとが含まれている。
【0004】
このように様々な状態のジョブデータが印刷装置内に混在している中で、印刷中のトラブルによって、プリンター本体の電源を強制的に切らなければならない場合や、不注意でプリンターのケーブルを抜いて電源が切れてしまう場合などがある。一般にプリンターでは、電源が切断されると、メモリの記憶領域をリセットして開放するために、印刷中であったジョブデータや印刷待ちキューのジョブデータを保存せずに全て消してしまうのが通常である。そのため、電源が強制切断されると、後に電源が投入され再起動された際に、消されてしまったジョブデータのユーザーは、再度、印刷実行操作をしなければならず、その作業が煩雑であるという問題がある。
【0005】
これに対応すべく、例えば特許文献2に開示された技術がある。この特許文献2に開示された技術では、電源オフ時に受信未完了につき画像メモリへの登録が完了されていないジョブデータを消去するとともに、電源オフ時に受信が完了していて画像メモリへの登録が完了されているジョブデータについては、消去せずメモリに残しておき、次回の電源投入時に印刷実行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−116818号公報
【特許文献2】特開2001−113762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、電源が強制的に切断された場合に、その時点でジョブデータの受信が完了していれば、切断時に印刷中であったジョブデータについても一律に、次回の電源投入時に印刷処理を実行することになる。そうすると、電源が強制切断されるまでに印刷出力したページ又は部数の分を、電源再投入時に改めて印刷出力することとなり、重複する印刷物が発生し、インクや印刷用紙が無駄になったり、重複する印刷物の仕分け作業などの時間的なロスも生じていた。
【0008】
特に、上述した特許文献2に開示された技術を、上述した特許文献1に開示されたようなセキュリティシステムと併用した場合には、セキュリティ上の必要性から印刷中に電源を強制切断することもよく行われる。このようなジョブデータも、その時点で受信が完了していればメモリに残され、再起動時に最初のページから、又は、1部目から改めて印刷される。このため、電源の強制切断前に印刷された分が再起動後に重複して印刷されてしまうこととなる。
【0009】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、プリンター等の画像形成装置において、設置エリアにおけるユーザーの存否に応じて電源の制御を行う場合に、ユーザーの不在により電源が切断された後の再起動時に、受信済みで印刷未完了のジョブを無駄なく再印刷処理することができる画像形成装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
印刷ジョブデータを受信する受信部(例えば、図2のジョブデータ受信部111)と、
受信部により受信された印刷ジョブデータを記憶するジョブデータ記憶部(例えば、図2のジョブデータ記憶部)と、
ジョブデータ記憶部に記憶された印刷ジョブデータに従って、印刷を実行する印刷実行部(例えば、図2の印刷実行部150)とを備える画像形成装置(例えば、図1の印刷装置1)であって、
受信部における受信状態と印刷実行部における印刷実行状態とを、ジョブデータ記憶部に記憶された各印刷ジョブデータと対応づけて管理するジョブ管理部(例えば、図2のジョブ管理部121)と、
画像形成装置の起動及び電源の切断を制御する装置動作制御部(例えば、図2の電源管理部112)と、
装置動作制御部により画像形成装置が起動された際に、ジョブ管理部による各印刷ジョブデータの管理状態に基づいて、印刷実行部による各印刷ジョブデータの印刷実行を制御する印刷実行制御部(例えば、図2の画像処理部113)とを備えており、
装置動作制御部は、画像形成装置が存在する所定エリア内においてユーザーの存在状況を検出するユーザー検出装置(例えば、図2のユーザー検出装置3)によるユーザーの存在状況が、所定エリア内におけるユーザーの不在から存在に変化した場合に、画像形成装置を起動するとともに、所定エリア内におけるユーザーの存在から不在に変化した場合に、画像形成装置の電源を切断し、
印刷実行制御部は、電源を切断された前記画像形成装置が前記装置動作制御部により再起動された際に、ジョブデータ記憶部に記憶されている印刷ジョブデータのうち、受信状態が受信完了で且つ印刷実行状態が印刷未開始である印刷ジョブデータの印刷を、印刷実行部に実行させる
ことを特徴とする。
【0011】
なお、ここで言う印刷ジョブデータとは、外部の機器(例えば、図1のユーザー端末2(2a〜2c))から入力されるプリンタとしての印刷ジョブのデータであってもよく、画像形成装置内の機器やユニット(例えば、図2のスキャナー部104)で原稿から画像を読み取ることで発生する複写装置としての印刷ジョブのデータであってもよい。
【0012】
上記発明では、オフィス等など画像形成装置の設置エリアに対するユーザーの入出に基づいて、自動で画像形成装置の電源を制御できるので、ジョブ処理の途中などでユーザーが退出した場合には、印刷物が悪意ある第三者の手に渡らないように、印刷処理を強制的に終了し、セキュリティの向上を図ることができる。
【0013】
また、画像形成装置の再起動時に印刷されるのは、受信済みの印刷ジョブデータで、且つ、未だ印刷が開始されていない印刷ジョブデータのみに限られる。したがって、ユーザーの退出に伴い電源が切断されたときに印刷中であった印刷ジョブデータについては、再起動時にユーザーの意図に反して未処理ジョブとして印刷が最初から再実行されるのを防止できる。これにより、インクや用紙の無駄な消費も抑制することができる。
【0014】
また、上記発明において、
ジョブ管理部は、ユーザー検出装置によるユーザーの存在状況が、ユーザの存在から不在に変化した場合に、受信部により印刷ジョブデータが受信中であるときは、受信中の印刷ジョブデータの受信動作を完了させた後、当該印刷ジョブデータに受信完了の受信状態を対応づけて管理し、
装置動作制御部は、ジョブ管理部による対応づけが終了した後、画像形成装置の電源を切断する
ことを特徴とする。
【0015】
上記発明では、ユーザーが退出した際、受信中の印刷ジョブデータがある場合はその受信を完了し、受信完了の受信状態を印刷ジョブデータに関連づけてから、最終的な電源の切断を行うため、再起動時に、印刷ジョブデータに関連づけた受信状態を参照することによって、そのジョブの受信が完了されていることを認識することができ、その印刷ジョブデータが受信未完了のジョブとして排除されるのを防止できる。
【0016】
特に、ユーザーが、印刷ジョブデータの受信や印刷処理の完了を待たずに、誤って設置エリアから退出した場合には、画像形成装置の終了と、電源の遮断とのタイミングを制御することによって、受信中のジョブについては、受信処理を完了してから安定した最終的な電源の遮断を行うことができる一方、印刷処理中のジョブについては、印刷処理を強制的に終了し、再起動時にユーザーの意図に反して未処理ジョブとして印刷が続行されるのを防止できる。
【0017】
また、上記発明において、印刷実行制御部は、ジョブデータ記憶部に記憶された印刷ジョブデータに対応づけてジョブ管理部が管理する、画像形成装置の起動時に印刷実行の対象とするか否かを示す設定情報(例えば、図3(a)〜(d)のタグT1〜T5)を参照し、設定情報が印刷実行の対象とする内容である場合に、設定情報に対応づけた印刷ジョブデータの印刷を、印刷実行部に実行させることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、ユーザーの意思に基づいて、上述した再起動時における自動続行機能を使用するかどうかを設定することができ、ユーザーのニーズやシチュエーションに応じて、再起動時における未完了ジョブの続行処理を行うことができる。
【0019】
また、上記発明において、装置動作制御部により画像形成装置が起動された際に、画像形成装置の前回の動作停止の際に印刷動作中であった印刷ジョブデータの印刷を中止処理する中止処理部(例えば、図2の処理続行データ選択部123)と、中止処理部が中止処理した印刷ジョブデータの受信部による受信が未完了であるか否かを、ジョブ管理部の管理内容を参照して判別する受信判別部(例えば、図2の処理続行データ選択部123)と、受信部による受信が未完了であると受信判別部が判別した印刷ジョブデータを、ジョブデータ記憶部から消去するジョブデータ消去部(例えば、図2の処理続行データ選択部123)とを備えることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、前回の電源切断の際に印刷動作中で且つ印刷ジョブデータの受信が未完了である印刷処理については、印刷ジョブデータを残しておいても、未処理分の印刷処理を装置本体の再起動後に行える可能性がない。そのため、再受信が必要な印刷ジョブデータについてはジョブデータ記憶部から消去して、ジョブデータ記憶部の容量の有効活用を図ることができる。
【0021】
また、前回の電源切断の際に印刷動作中で且つ印刷ジョブデータの受信が完了している印刷処理についてはジョブ記憶部に残して、始めから全部再印刷するか、前回の電源切断の際に印刷した分を除く残り分だけを再印刷するかを、装置の再起動後にユーザーが指定してから再印刷処理が実行されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、この発明によれば、プリンター等の画像形成装置において、設置エリアにおけるユーザーの存否に基づいて、未処理ジョブの状態に応じた電源の制御を行うことにより、安定した終了を確保しつつ、セキュリティの向上を図ることができる。また、再起動時にあっては、印刷が不完全なジョブについては処理を続行せずに、受信が正常に終了している印刷未開始のジョブのみを出力することによって、ユーザーの利便性を担保しつつ、不完全なジョブデータについて不要な処理が続行されることによる、セキュリティの低下や、印刷用紙やインクの浪費を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を含む印刷システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図1の印刷装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2のジョブデータ記憶部に記憶されたジョブデータの受信及び印刷状態を示す説明図である。
【図4】図1の印刷装置を終了する場合の印刷制御を示すフローチャート図である。
【図5】図1の印刷装置を起動する場合の印刷制御を示すフローチャート図である。
【図6】図5の印刷制御の変更例に係る印刷制御を示すフローチャート図である。
【図7】一般的なジョブデータに対する処理の状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(印刷システムの全体構成)
以下に添付図面を参照して、本発明に係る画像形成装置を含む印刷システムの実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置を含む印刷システムの概要を示す図である。
【0025】
本実施形態に係る印刷システムは、図1に示すように、オフィスルームなどの閉鎖された設置エリア10に印刷装置1(画像形成装置)及び複数のユーザー端末2(2a〜2c)等が設置されるとともに、設置エリア10外には、設置エリア10におけるユーザーの存否を検出するユーザー検出装置3を備えている。これらの各装置は、ネットワーク6を介して通信可能に接続されている。なお、ネットワーク6に接続される機器の種類及び台数は、図1に示す例に限定されない。
【0026】
ユーザー検出装置3は、例えば、ユーザーの認証データを受信し、受信した認証データに基づき当該ユーザーの入退室を管理する機能を備えたサーバー装置である。具体的にこのユーザー検出装置3には、入退室の際に設置エリア10の入出に使用されるドア10a近傍に設置された認証装置10bが接続されている他、設置エリア10の入出に使用されるドア10aの開閉を監視するセンサや、設置エリア10内における照明、パーソナルコンピュータ、その他電気機器の電力消費を監視する装置が接続されている。
【0027】
ここで、入退室許可の管理は、ユーザー検出装置3に接続された入退室管理データベース4を用いて行う。入退室管理データベース4は、入退室を管理する対象ユーザーの識別情報と、各ユーザーの入退室状態とを管理するデータベースである。この入退室管理データベース4を参照し、認証装置10bから取得したユーザー認証データが当該データベースに予め登録されているユーザーのそれと一致するか否かを判定することによって、ユーザー別の入退室の許可及び状態の管理が行われる。また、このユーザー検出装置3には、温度センサや人感センサなどの各種センサや監視カメラ等の監視手段10cも接続可能であり、監視カメラの映像を録画し、画像解析アプリケーションを実行して、人物の検出を行うようにしてもよい。
【0028】
ユーザー端末2(2a〜2c)は、CPUを備えた演算処理装置であり、各種アプリケーションソフトにより印刷用のデータを作成し、そのデータの印刷処理の実行を指示する機能を備えており、例えば、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、モバイルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistance )、携帯電話機であってもよい。
【0029】
また、印刷装置1は、ユーザー操作に基づく印刷指示に従って、ネットワーク6を通じてユーザー端末2から受信したジョブデータ(印刷データ)を印刷するネットワークプリンターである。なお、本実施形態では一例としてインクジェットプリンタを印刷装置1として説明するが、電子写真方式等の他の印刷方式によるプリンタを印刷装置1とすることもできる。ネットワーク6は、通信プロトコルTCP/IPを用いた10BASE−Tや100BASE−TX等によるローカルネットワーク(LAN)や無線LAN(WLAN)等の無線ネットワークであり、例えば、ピア・トゥー・ピアによる家庭内ネットワークなどの簡易的なネットワークなども含まれる。
【0030】
(印刷装置1の内部構成)
次いで、印刷装置1の内部構成について説明する。図2は、実施形態に係る印刷装置の内部構成を示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0031】
図2に示すように、印刷装置1は、電源制御処理に関係するモジュールとして、通信インターフェース101と、操作パネル102と、スキャナー部105と、電力供給部140と、駆動部130と、印刷実行部150と、ジョブデータ記憶部104と、演算処理部110とを備えている。
【0032】
通信インターフェース101は、ユーザー端末2(2a〜2c)や、ユーザー検出装置3との間でデータの送受信を行う通信インターフェースであり、本実施形態では、ユーザー端末2から印刷処理などの操作信号を受信したり、ユーザー検出装置3からユーザーの入退室の情報を受信する。
【0033】
操作パネル102は、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けるモジュールであり、本実施形態においては、例えば、データを印刷するための情報を表示したり、印刷装置1の電源を遮断して、終了状態や待機状態にするための操作画面が表示可能なタッチパネルとなっている。
【0034】
スキャナー部105は、原稿を積載するための原稿台、CCD等の受光素子をライン上に並べたラインセンサ、光源、ラインセンサを搭載したキャリッジ、キャリッジを搬送するモータ等を備え、文字や、画像等が表示された原稿を画像データとして読み込む読取装置である。本実施形態において、このスキャナー部105は、自動原稿読取台に載置された複数の原稿を自動的に取り込んで画像読取を行う自動原稿読取モード動作(ADF)と、ユーザーによって原稿載置領域に1ページずつ載置された原稿の画像を読み取る手動原稿読取モード動作とを選択的に行うことができる。自動原稿読取モードでは、原稿を読み取るイメージセンサを固定し、原稿を自動搬送することで読み取りを行い、手動原稿読取モードでは、原稿を固定し、イメージセンサを走査させることで読み取りを行う。
【0035】
ジョブデータ記憶部104は、各種のデータや、プログラムを記憶保持するメモリ装置等であり、本実施形態においては、ユーザー端末2(2a〜2c)から送信された一連の印刷処理単位であるジョブデータを記憶する。特に本実施形態において、ジョブデータ記憶部104は、不揮発性のメモリによって構成されている。
【0036】
印刷実行部150は、ジョブデータ記憶部104に記憶されたジョブデータに含まれる画像データを印刷するモジュールであり、本実施形態では、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の印刷用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
【0037】
電力供給部140は、電源プラグ7を介して外部より電力を受け取り、印刷装置1内の各駆動部や演算処理部110に電力を供給するモジュールである。本実施形態において、この電力供給部140は、演算処理部110内の電源管理部112によって制御されており、印刷装置1の起動及び終了や、ユーザーの操作に連動して、印刷実行部150や、各駆動部130等に所定量の電力を供給したり、電力の供給を停止したりしている。なお、電源管理部112は、印刷装置1の電源がオフになる際に、電源オフに至る状況をログとしてメモリに記録する機能を有している。電源オフに至る状況としては、例えば、後述する印刷装置1の電源スイッチ103の操作によるものとか、最終ユーザーの設置エリア10からの退室に伴うユーザー検出装置3からの通知データに基づく制御によるものとか、停電や故障等の不測の事態によるものとかがある。
【0038】
各駆動部130は、例えば、印刷処理を実行する印刷手段や、印刷用紙を搬送する各搬送経路手段や各機器の冷却手段など、印刷装置1を動作させるための駆動手段であり、電力供給部140からの電力供給と、演算処理部110からの制御により駆動するようになっている。
【0039】
演算処理部110は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。特に、本実施形態における電源制御は、この演算処理部110によって行われる。本実施形態において、演算処理部110には、ジョブデータ受信部111と、画像処理部113と、ジョブ管理部120と、電源管理部112とが構築される。
【0040】
ジョブデータ受信部111(受信部)は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信するモジュールであり、受信したジョブデータをジョブデータ記憶部104に受け渡すモジュールである。ジョブデータ受信部111が受信するジョブデータ(印刷ジョブデータ)としては、例えば、ユーザー端末2(2a〜2c、図1参照)から通信により入力されるプリンタとしての印刷ジョブのデータや、スキャナー部105から原稿画像の読み取りに伴い内部バス(図示せず)を介して入力される複写装置としての印刷ジョブのデータがある。ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。本実施形態では、ユーザー端末2(2a〜2c)からの印刷ジョブデータをジョブデータ受信部111で受信した場合について説明する。
【0041】
画像処理部113は、画像処理に特化したディジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷の処理単位であるジョブデータを受信し、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換する等、ジョブデータに含まれる印刷に必要な画像データの変換等を行い、印刷を実行するモジュールである。また、画像処理部113は、各色の印刷実行部150の駆動や、搬送経路の駆動部の動作を制御し、画像形成処理全体を制御して画像形成を行う。
【0042】
ジョブ管理部120は、ジョブデータを受信してから印刷処理が終了するまでの一連の動作を制御するモジュールであり、印刷装置1の起動や終了に応じて受信動作及び印刷動作を制御する機能を備えており、この機能モジュールとして、状態監視部121と、画像管理情報記録部122と、処理続行データ選択部123とを備えている。
【0043】
状態監視部121は、ジョブデータ記憶部104に記憶されたジョブデータに関連付けて、各ジョブデータについて、ジョブデータ記憶部104に対するジョブデータの受信状態、及び画像処理部113や印刷実行部150における印刷実行状態を監視するモジュールである。具体的には、現在、各ジョブデータが受信前、受信中、受信終了のいずれの状態であるかや、ジョブデータが印刷待ち、印刷中、及び印刷終了のいずれの状態であるかを、逐次監視する。そして、その監視結果のデータを画像管理情報記録部122に送信する。
【0044】
画像管理情報記録部122は、状態監視部121が監視したジョブデータの各状態の変化に関する情報を画像管理情報として逐次記録するモジュールである。特に本実施形態では、図3に示すように、ジョブデータの受信を開始した情報を示す「受信開始タグT1」と、ジョブデータの受信を終了した情報を示す「受信終了タグT2」と、ジョブデータの印刷を開始した情報を示す「印刷開始タグT3」と、ジョブデータの印刷を終了した情報を示す「印刷終了タグT4」と、ジョブデータの印刷ページ情報を示す「印刷ページタグT5」とを、そのジョブデータに関連付けて画像管理情報として記録する。
【0045】
なお、図3は、ジョブデータ記憶部104内に蓄積されるジョブデータの実行状態を示す説明図である。この図3では、3つのジョブ実行状態に区分されており、左側の状態A1はジョブデータ受信前であることを示す領域であり、中央の状態A2はジョブデータが受信済みであって、印刷が開始されていない部分を示す領域A2であり、右側の状態A3は印刷済みの部分であって、メモリ内からジョブデータが消去されていることを示す領域となっている。そして、ジョブデータに含まれる各印刷データが属する領域(A1〜A3)と、各ジョブデータに付加されたタグ情報(T1〜T5)とによって、ジョブデータの受信状態及び印刷状態を知ることができる。
【0046】
具体的に、図3(a)に示すジョブデータD1は、状態A1、状態A2、及び状態A3に属しており、未だ受信されていない部分の印刷データと、受信済みであるが未だ印刷が開始されていない部分の印刷データと、既に印刷が完了された部分の印刷データとを含んだジョブデータとなっている。このようなジョブデータD1には、データの受信処理と印刷処理とは開始されているので、ジョブデータ記憶部104に記憶されているデータ部分(図中の状態A2)に、「受信開始タグT1」と、「印刷開始タグT3」とが記録され、ジョブデータの受信はまだ完了されておらず、また印刷も完了されていないので、「受信終了タグT2」と、「印刷終了タグT4」は記録されてない。
【0047】
また、図3(b)に示すようなジョブデータD2は、状態A2、及び状態A3に属しており、受信済みであるが未だ印刷が開始されていない部分の印刷データと、既に印刷完了された部分の印刷データとを含んだジョブデータとなっている。このようなジョブデータD2は、ジョブデータの受信は完了されているので、ジョブデータに「受信開始タグT1」と、「受信終了タグT2」が記録され、また印刷処理についても開始はされているので、「印刷開始タグT3」が記録される一方、印刷処理は完了されていないので、「印刷終了タグT4」は記録されない。
【0048】
図3(c)に示すようなジョブデータD3は、状態Aにのみ属しており、受信済みであって印刷が開始されていないジョブデータである。このようなジョブデータD3には、データの受信は終了しているので、ジョブデータに「受信開始タグT1」と、「受信終了タグT2」が記録される。一方、印刷処理は開始されていないので、「印刷開始タグT3」及び「印刷終了タグT4」は記録されない。
【0049】
図3(d)に示すようなジョブデータD4は、状態A1、及び状態A2に属しており、データが受信されていない部分の印刷データと、受信済みであって印刷が開始されていない部分の印刷データとを含んだジョブデータとなっている。このようなジョブデータD4には、受信は開始されているので、「受信開始タグT1」が記録される一方、受信は完了していないので「受信終了タグT2」は記録されず、また、印刷処理が開始されていないので、「印刷開始タグT3」及び「印刷終了タグT4」は記録されてない。
【0050】
処理続行データ選択部123は、電源管理部112によって印刷装置1が起動された場合に、画像管理情報を参照し、受信が完了してジョブデータ記憶部104に記憶されているジョブデータの中から、印刷が未処理であって且つ処理を続行すべきジョブデータを選択し、選択された未処理のジョブデータに対し、当該ジョブデータの印刷実行状態に応じた処理を実行するモジュールである。
【0051】
具体的には、処理続行データ選択部123は、先ず、ジョブデータがジョブデータ記憶部104内のメモリに記憶されているか否かを判断する。そして、ジョブデータがメモリ内に含まれている場合には、そのジョブデータの画像管理情報を参照して、処理を続行すべきジョブデータであるか否かを判断する。ここで、印刷が開始されたジョブデータについては、既に印刷済のページを再度印刷することが用紙の無駄遣いになる可能性があるため、処理を続行すべきジョブデータの対象から除外する。また、ジョブデータの受信が完了していないジョブデータについては、全てのページを印刷できる状況にないので、処理を続行すべきジョブデータの対象から除外する。したがって、印刷が開始されていないジョブデータであって、且つ、ジョブデータの受信が完了しているジョブデータのみを、処理を続行すべきジョブデータとして判断する。
【0052】
具体的に、処理続行データ選択部123は、先ず、画像管理情報内に「印刷開始タグT3」を有しないジョブデータかを判断し、「印刷開始タグT3」を有しないジョブデータについては、さらに「受信終了タグT2」を有するジョブデータか否かを判断する。そして、「印刷開始タグT3」を有さず、且つ、「受信終了タグT2」を有するジョブデータについて、処理を続行すべきジョブデータとして判断する一方、「印刷開始タグT3」を有するジョブデータや、「受信終了タグT2」を有しないジョブデータについては、印刷処理を実行しないジョブデータと判断する。「受信終了タグT2」を有しないジョブデータについてはさらに、そのジョブデータをジョブデータ記憶部104から消去する。
【0053】
例えば、図3(a)及び(b)に示すようなジョブデータD1,D2では、印刷が開始されており、「印刷開始タグT3」を有するジョブデータである。したがって、処理続行データ選択部123は、印刷処理を実行しないジョブデータと判断する。また、図3(d)に示すようなジョブデータD4では、印刷処理は開始されておらず、「印刷開始タグT3」を有さないジョブデータであるため、さらに、「受信終了タグT2」の有無を判断する。ここでジョブデータD4は、受信が完了していないため、「受信終了タグT2」が記録されていない。したがって、処理続行データ選択部123は、ジョブデータD4について、印刷処理を実行しないジョブデータと判断して、そのジョブデータをジョブデータ記憶部104から消去する。
【0054】
一方、図3(c)に示すようなジョブデータD3は、「印刷開始タグT3」を有さないジョブデータであるため、印刷処理が開始されてジョブデータとして判断し、さらに、「受信終了タグT2」の有無を判断する。ジョブデータD4は、受信が完了しているため、「受信終了タグT2」が記録されている。したがって、処理続行データ選択部123は、処理を続行すべきジョブデータとして判断する。
【0055】
さらに、ジョブ管理部120は、ユーザー検出装置3からの検出結果に基づいて、設置エリア内からユーザーが全員退出したときに、ジョブデータの受信処理中である場合には、受信処理が終了した後に、画像管理情報記録部122において、ジョブデータに係る画像管理情報に受信が完了したことを示す「受信終了タグT2」を記録し、電源管理部112に対して印刷装置1の終了を実行させる機能も備えている。この場合、ジョブ管理部120は印刷処理中であるジョブデータについては、印刷処理を強制的に終了させる。
【0056】
電源管理部112は、印刷装置1に対する電源の供給及び遮断、並びに印刷装置1の起動及び終了の監視及び制御を行うモジュールであり、例えば、ユーザーが操作パネル102及び電源スイッチ103等を操作し、印刷装置1の起動処理や終了処理をした際、そのユーザー操作に応じて電力供給部140の駆動を制御するようになっている。
【0057】
また、本実施形態において、電源管理部112は、ユーザー検出装置3の検出結果に基づいて、印刷装置1の起動や終了、並びに電源の供給及び遮断を実行する機能も備えている。具体的に、電源管理部112は、ユーザー検出装置3の検出結果によって印刷装置1を終了する指示を受けた際、ジョブ管理部120に対して受信中のジョブデータの有無を判断させ、ジョブ管理部120からの指示に基づいて、電力を遮断させる機能を備えている。なお、印刷装置1を終了する指示には、ユーザー検出装置3の検出結果の他、例えば、操作パネル102からの操作信号であってもよい。
【0058】
(印刷制御方法)
以上の構成を有する画像形成装置を動作させることによって、本発明の電源制御方法を実施することができる。図4は、本実施形態に係る印刷装置1を終了する場合の電源制御を示すフローチャート図であり、図5は、本実施形態に係る印刷装置1を起動する場合の電源制御を示すフローチャート図である。
【0059】
(1)印刷装置を終了する場合における電源制御
先ず、印刷装置を終了する場合の電源制御について説明する。なお、ここでは、ユーザー検出装置3からユーザーの存否を検出する信号を受信して印刷装置1を終了する場合を例に説明する。
【0060】
先ず、ユーザー検出装置3は最初のユーザーが入室したかを判断する(S101)。ユーザー検出装置3は最初のユーザーが入室するまで監視処理を続け(S101における“N”)、最初のユーザーが入室したことを検出した場合には(S101における“Y”)、印刷装置1に起動する旨の通知を送信する(S102)。印刷装置1は、ユーザー検出装置3から通知データを受信した場合、電源管理部112が電力供給部140を制御し、各駆動部130や印刷実行部150に電力を供給させる(S201)。この際、起動時の電源制御を行い(S202)、その後通常動作となる(S203)。
【0061】
ユーザー検出装置3は、その後、エリア内のユーザーが入退室を行ったかを検出する処理を行い(S103)、退出を検出した場合には(S103における“Y”)、そのユーザーが最後に退出したか否かを判断する(S104)。ユーザーが最後に退出したか否かの判断は、入退室管理データベース4で管理している各ユーザーの入退室状態を参照することで行うことができる。即ち、退出したユーザー以外に入室状態であるユーザーが入退室管理データベース4上にいなければ、そのユーザーが最後の退出者と判断することになる。
【0062】
最後のユーザーが退出していないと判断した場合には(S104における“N”)、最後のユーザーが退出を検出するまで入退室の監視を続ける。一方、最後のユーザーが退出したと判断した場合には(S104における“Y”)、印刷装置1の電源を遮断し、終了する旨の通知を送信する(S105)。
【0063】
印刷装置1がユーザー検出装置3から通知データを受信した場合、電源管理部112及びジョブ管理部120は、印刷処理については強制的に終了させるとともに(S204)、「受信開始タグT1」を有するジョブデータの有無を判断して、受信中のジョブデータの有無を判断する(S205)。受信中のジョブデータがないと判断した場合には(S205における“N”)、電源管理部112は、電力供給部140を制御し、電力を遮断させて終了する(S207)。
【0064】
一方、受信中のジョブデータがあると判断した場合には(S205における“Y”)、電源管理部112は、全てのジョブデータに「受信終了タグT2」が記録されるまで、電力供給部140による電源の供給を続行させて、ジョブデータ記憶部104にジョブデータを記憶させる(S206)。そして、電源管理部112は、全てのジョブデータが「受信終了タグT2」が記録された後に電力を遮断させて終了する(S207)。
【0065】
なお、停電や電源スイッチの操作により、ユーザー検出装置3からの通知データの受信とは無関係に、印刷処理やジョブデータの受信処理の途中で印刷装置1の電源がオフになった場合は、その時点までに完了した処理に対応するタグ情報(T1〜T5)が、ジョブデータの画像管理情報として画像管理情報記録部122に記録されることになる。
【0066】
(2)印刷装置を起動する場合における電源制御
次いで、ステップ203における起動時の電源制御について詳細に説明する。なお、ここでは、停電が生じた場合やユーザーが誤って電源プラグ7を抜いてしまった場合など、強制的に印刷装置1が終了されてしまった後に、再度印刷装置1を起動させた場合を例に説明する。
【0067】
先ず、印刷装置1は、起動時に印刷未完了のジョブデータがあるか否かを判断する(S301)。具体的には、ジョブデータがジョブデータ記憶部104内に含まれているか否かを判断する。
【0068】
ジョブデータがメモリ内に含まれていない場合には(S301における“N”)、初期設定を行って(S308)、待機状態となる。一方、ジョブデータがメモリ内に含まれている場合には(S301における“Y”)、そのジョブデータの画像管理情報を参照し、印刷中のジョブデータか否かを判断する(S302)。
【0069】
具体的には、処理続行データ選択部123は、画像管理情報内に「印刷開始タグT3」が含まれているか否かを判定し、「印刷開始タグT3」を有するジョブデータは印刷が開始されているジョブデータであると判断して(S302における“Y”)、印刷処理を続行しないジョブデータとして印刷処理を実行せず、中断終了処理(中止処理)する(S304)。ここで、「受信終了タグT2」を有している受信完了済のジョブデータならば、印刷処理を実行しないだけで中断終了処理を終了する。「受信終了タグT2」を有していない受信未完了のジョブデータならば、印刷処理を実行せず、且つ、ジョブデータ記憶部104のジョブデータと画像管理情報記録部122の画像管理情報とを消去する。
【0070】
このように、ジョブデータの受信が完了しており、前回の電源遮断の際に印刷中であったジョブデータを、電源投入後に印刷処理する対象から外し(中断終了処理)、ジョブデータ及び画像管理情報を消去せずに残すことで、前回の電源遮断の際に印刷した分を除く残り分だけを再印刷するか、始めから全部再印刷するかを、ユーザーが指定してから印刷処理するように運用することができる。
【0071】
一方、「印刷開始タグT3」を有していないジョブデータについては、データを受信終了しているジョブデータか否かを判断する(S303)。
【0072】
具体的には、処理続行データ選択部123は、画像管理情報内に「受信終了タグT2」が含まれているか否かを判定し、「受信終了タグT2」を有していないジョブデータは受信途中のジョブデータであると判断して(S303における“N”)、印刷処理を続行しないジョブデータとして印刷処理を実行せず、中断終了処理(中止処理)する(S304)。ここでは、前回の電源遮断の時点でジョブデータの受信が完了していないので、該当する全てのジョブデータについて、ジョブデータ記憶部104のジョブデータと画像管理情報記録部122の画像管理情報とを消去する。
【0073】
一方、「受信終了タグT2」を有するジョブデータについては、印刷処理を続行するジョブデータであると判断し、処理続行データ選択部123は、その判断結果を画像処理部113に送信して、画像処理部113は印刷処理を行い(S305)、印刷終了状態となる。
【0074】
印刷装置1は、中断処理(S304)及び印刷実行処理(S305)の後、ジョブデータ記憶部104内に記憶された、全てのジョブデータを判断したか否かを判断する(S307)。全てのジョブデータを判断した場合には(S307における“Y”)、初期設定を行って(S308)、待機状態となる。一方、全てのジョブデータを判断していない場合には(S307における“N”)、全てのジョブデータについて、印刷が未処理であって且つ処理を続行すべきジョブデータであるか否かを繰り返し、判断する(S302からS306)。
【0075】
なお、上述した例では、強制的に印刷装置1が終了してしまった後に、再度印刷装置1を起動させた場合を説明したが、ユーザーの退出を検知して終了した場合には、印刷処理中のジョブについては強制的に処理が中断されており、また、受信中のジョブについては、受信が完了した後に印刷されることなく記録され、終了に至っている。そのため、再起動した際の上記ステップS202では、印刷が不完全なジョブについてはデータを消去することから(ステップS302における”Y”)、処理は続行されず、受信が正常に終了している出力可能なジョブ(ステップS303における”Y”)のみが出力される。
【0076】
(作用効果)
このような本実施形態によれば、設置エリア10に対するユーザーの入出に基づいて、自動で印刷装置1の電源を制御できるので、ジョブ処理の途中などでユーザーが退出した場合には、印刷物が悪意ある第三者の手に渡らないように、印刷処理1を強制的に終了し、セキュリティの向上を図ることができる。このとき、ユーザー検出装置3の検出結果に基づいて、印刷装置1の起動や終了と、電源の供給とのタイミングを制御することにより、ジョブデータの受信が未完了の状態で電源が遮断されるのを回避し、安定した終了動作を確保することができる。また、印刷装置1を起動した際には、画像管理情報を参照し、ジョブデータが全て受信済みのジョブデータで、且つ、未だ印刷が開始されていないジョブデータのみを選択して、印刷処理を続行することができる。
【0077】
これらの結果、例えば、ジョブデータの印刷中にユーザーが退出した場合や、電源コードが引き抜かれたり、停電が発生するなど、印刷装置の電源が予期せず強制的に遮断された後に、再度電源を投入した場合には、途中で印刷処理が中断された未完了のジョブデータが印刷されるのを規制することができる。特に、ユーザーが、ジョブデータの受信や印刷処理の完了を待たずに、誤って設定エリアから退出した場合には、印刷装置1の終了と、電源の遮断とのタイミングを制御することによって、受信中のジョブについては、受信処理を完了してから安定した最終的な電源の遮断を行うことができる一方、印刷処理中のジョブについては、印刷処理を強制的に終了し、再起動時にユーザーの意図に反して未処理ジョブとして印刷が続行されるのを防止できる。
【0078】
また、本実施形態において、ジョブ管理部120は、ユーザー検出装置3からの検出結果に基づいて、設置エリア内からユーザーが全員退出したときに、ジョブデータの受信処理中である場合には、受信処理が終了した後に、当該ジョブデータに係る画像管理情報に受信が完了したことを記録し、電源管理部112に対して印刷装置1の終了を実行させるので、ユーザーが退出した際、処理中のジョブを完了してから、画像管理情報にその処理が完了したことを示す「受信終了タグT2」を記録して最終的な電源の遮断を行うため、再起動時に、画像管理情報を参照することによって、そのジョブが完了されていることを認識することができ、そのジョブが未処理ジョブとして排除されるのを防止できる。
【0079】
なお、印刷装置1の起動時に処理を継続すべきジョブデータであるか否かを判断し、継続すべきと判断したジョブデータの印刷処理を続行する処理は、停電や故障等の不測の事態によって印刷装置1が電源オフになった後の起動時においては行わないようにしてもよい。これは、停電や故障等による電源オフの際に印刷ジョブデータが正しく判読できない状態に壊れている可能性があるためである。そのようにする場合は、印刷装置1の起動時に、電源管理部112がメモリに記録したログを参照して、電源オフに至った状況を確認すればよい。
【0080】
(変更例)
上述した実施形態では、印刷中であるジョブデータと、受信が完了していないジョブデータについては、出力処理を続行せずにメモリ上から消去したが、本発明は、これに限定するものではなく、出力処理を続行するか、印刷処理を実行せず消去するかを、ユーザーに設定させることも可能である。図6は、本変更例に係る印刷制御を示すフローチャート図である。なお、本変更例において、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
【0081】
本変更例において、画像管理情報記録部122には、印刷装置1本体の起動に際し、未処理のジョブデータに対する処理を続行するか否かに関する設定情報を画像管理情報に付加する設定部としての機能を備えている。この設定情報は、ユーザーが印刷操作時に、未処理のジョブデータに対する処理を続行するか否かのいずれかを選択した情報であり、その設定情報がジョブデータに付加されて印刷装置1に送信され、画像管理情報記録部122は、ジョブデータ記憶部104に記憶されたジョブデータからその情報を取得し、画像管理情報に付加する。また、処理続行データ選択部123は、処理を続行すべきジョブデータを選択するにあたり、設定情報を参照する機能を備えている。
【0082】
次いで、印刷装置を起動した場合に、この設定情報を参照して印刷制御する動作について説明する。なお、ここでは、ユーザーが印刷操作時に、未処理のジョブデータに対する処理を続行するか否かのいずれかを選択しており、また、画像管理情報には、この設定情報が付加されているものとする。
【0083】
先ず、印刷装置1は、起動時において、印刷未完了のジョブデータがあるか否かを判断する(S401)。ジョブデータがメモリ内に含まれていない場合には(S401における“N”)、初期設定を行って(S408)、待機状態となる。一方、ジョブデータがメモリ内に含まれている場合には(S401における“Y”)、そのジョブデータの画像管理情報を参照し、印刷中のジョブデータか否かを判断する(S402)。
【0084】
印刷が開始されているジョブデータであると判断した場合(S402における“Y”)、処理続行データ選択部123は、処理を続行すべきジョブデータを選択するにあたり、設定情報を参照し、ジョブデータの印刷処理を続行するか否かを判断する(S404)。また、この際、処理続行データ選択部123は、「印刷ページタグT5」を参照し、印刷を開始するページ番号についても取得し、その情報を画像処理部113に送信する。
【0085】
一方、印刷が開始されていないジョブデータであると判断した場合(S402における“N”)、データを受信終了しているジョブデータか否かを判断する(S403)。
【0086】
受信途中のジョブデータであると判断した場合には(S403における“N”)、処理続行データ選択部123は、処理を続行すべきジョブデータを選択するにあたり、設定情報を参照し、ジョブデータの印刷処理を続行するか否かを判断する(S404)。
【0087】
一方、印刷処理を続行するジョブデータであると判断した場合(S403における“Y”)、処理続行データ選択部123は、その判断結果を画像処理部113に送信して、画像処理部113は印刷処理を行い(S405)、印刷終了状態となる。
【0088】
ステップ404において、設定情報を参照し、その設定情報がジョブデータを出力処理する情報であった場合には(S404における“Y”)、処理続行データ選択部123は、その判断結果を画像処理部113に送信して、画像処理部113は印刷処理を行い(S405)、印刷終了状態となる(S406)。
【0089】
一方、設定情報を参照し、その設定情報がジョブデータを出力処理しない情報であった場合には(S404における“N”)、そのジョブデータを中断終了処理(中止処理)する(S409)。ここで、「受信終了タグT2」を有していない受信未完了のジョブデータならば、印刷処理を実行せず、且つ、ジョブデータ記憶部104のジョブデータと画像管理情報記録部122の画像管理情報とを消去する。また、「受信終了タグT2」を有している受信完了済のジョブデータならば、印刷処理を実行しないだけで中断終了処理を終了する。
【0090】
印刷装置1は、中断終了処理(S409)又は印刷実行処理(S405)の後、ジョブデータ記憶部104内に記憶された、全てのジョブデータを判断したか否かを判断する(S407)。全てのジョブデータを判断した場合には(S407における“Y”)、初期設定を行って(S408)、待機状態となる。一方、全てのジョブデータを判断していない場合には(S407における“N”)、全てのジョブデータについて、印刷が未処理であって且つ処理を続行すべきジョブデータであるか否かを繰り返し、判断する(S402からS406)。
【0091】
このような本変更例によれば、装置1本体の起動に際し、未処理のジョブデータに対する処理を続行するか否かに関する設定情報を画像管理情報に付加する設定部としての機能を備え、ジョブ管理部120は、処理を続行すべきジョブデータを選択するにあたり、設定情報を参照するので、ユーザーの意思に基づいて、上述した再起動時における自動続行機能を使用するかどうかを設定することができ、ユーザーのニーズやシチュエーションに応じて、再起動時における未完了ジョブの続行処理を行うことができる。
【0092】
なお、上述した実施形態及びその変更例では、ジョブデータ受信部111がユーザー端末2(2a〜2c)から受信した印刷ジョブデータの取り扱いについて説明した。しかし、本発明は、ジョブデータ受信部111がスキャナー部105から受信した印刷ジョブデータの取り扱いにも適用可能である。その場合、印刷装置1はユーザー端末2(2a〜2c)に接続されたネットワークプリンタである必要はなく、スタンドアローンで運用されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 印刷装置
2 ユーザー端末
3 ユーザー検出装置
4 入退室管理データベース
6 ネットワーク
7 プラグ
101 通信インターフェース
102 操作パネル
103 電源スイッチ
104 ジョブデータ記憶部
105 スキャナー部
110 演算処理部
111 ジョブデータ受信部
112 電源管理部
113 画像処理部
120 ジョブ管理部
121 状態監視部
122 画像管理情報記録部
123 処理続行データ選択部
130 駆動部
140 電力供給部
150 印刷実行部
T1 受信開始タグ
T2 受信終了タグ
T3 印刷開始タグ
T4 印刷終了タグ
T5 印刷ページタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブデータを受信する受信部と、
前記受信部により受信された印刷ジョブデータを記憶するジョブデータ記憶部と、
前記ジョブデータ記憶部に記憶された印刷ジョブデータに従って、印刷を実行する印刷実行部とを備える画像形成装置であって、
前記受信部における受信状態と前記印刷実行部における印刷実行状態とを、前記ジョブデータ記憶部に記憶された各印刷ジョブデータと対応づけて管理するジョブ管理部と、
前記画像形成装置の起動及び電源の切断を制御する装置動作制御部と、
前記装置動作制御部により前記画像形成装置が起動された際に、前記ジョブ管理部による各印刷ジョブデータの管理状態に基づいて、前記印刷実行部による各印刷ジョブデータの印刷実行を制御する印刷実行制御部とを備えており、
前記装置動作制御部は、前記画像形成装置が存在する所定エリア内においてユーザーの存在状況を検出するユーザー検出装置によるユーザーの存在状況が、前記所定エリア内におけるユーザーの不在から存在に変化した場合に、前記画像形成装置を起動するとともに、前記所定エリア内におけるユーザーの存在から不在に変化した場合に、前記画像形成装置の電源を切断し、
前記印刷実行制御部は、電源を切断された前記画像形成装置が前記装置動作制御部により再起動された際に、前記ジョブデータ記憶部に記憶されている印刷ジョブデータのうち、前記受信状態が受信完了で且つ前記印刷実行状態が印刷が印刷未開始である印刷ジョブデータの印刷を、前記印刷実行部に実行させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ジョブ管理部は、前記ユーザー検出装置によるユーザーの存在状況が、ユーザの存在から不在に変化した場合に、前記受信部により印刷ジョブデータが受信中であるときは、受信中の印刷ジョブデータの受信動作を完了させた後、当該印刷ジョブデータに受信完了の受信状態を対応づけて管理し、
前記装置動作制御部は、前記ジョブ管理部による対応づけが終了した後、前記画像形成装置の電源を切断する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷実行制御部は、前記ジョブデータ記憶部に記憶された印刷ジョブデータに対応づけて前記ジョブ管理部が管理する、前記画像形成装置の起動時に印刷実行の対象とするか否かを示す設定情報を参照し、該設定情報が印刷実行の対象とする内容である場合に、前記設定情報に対応づけた印刷ジョブデータの印刷を、前記印刷実行部に実行させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記装置動作制御部により前記画像形成装置が起動された際に、前記画像形成装置の前回の電源切断の際に印刷動作中であった印刷ジョブデータの印刷を中止処理する中止処理部と、該中止処理部が中止処理した印刷ジョブデータの前記受信部による受信が未完了であるか否かを、前記ジョブ管理部の管理内容を参照して判別する受信判別部と、前記受信部による受信が未完了であると前記受信判別部が判別した前記印刷ジョブデータを、前記ジョブデータ記憶部から消去するジョブデータ消去部とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6304(P2013−6304A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139288(P2011−139288)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】