画像形成装置
【課題】 現像性、転写性に優れる球形トナーを簡易なブレードクリーニングのシステムでクリーニングすること。
【解決手段】 微小硬度計においてブレード上のトナーを平坦な圧子で押したときの変位−荷重曲線が変位量a(μm)が変曲点となる下凸形状であり、変位量aにおいて、前記トナーが塑性変形する条件でトナーとブレードを使用する。
【解決手段】 微小硬度計においてブレード上のトナーを平坦な圧子で押したときの変位−荷重曲線が変位量a(μm)が変曲点となる下凸形状であり、変位量aにおいて、前記トナーが塑性変形する条件でトナーとブレードを使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式・静電記録方式を採用する複写機・プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、電子写真方式を利用した画像形成装置には、従来よりも高い画質の出力が求められるようになってきている。そのためには、ドラム上の静電潜像に忠実なトナー像をドラム上に現像し、そのトナー像を効率良く紙へと転写することが必須である。そういった現像性、転写性を確保するためにはトナーの球形化が有効な手段であることは広く知られている。
【0003】
しかし、電子写真方式において球形トナーを使いこなすにはいくつか課題があり、その最たるものがクリーニング不良の問題である。通常、電子写真方式では、ドラムを繰り返し画像形成に使用するために、転写後のドラム表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段が装備されている。クリーニング手段としては、ゴムなどの弾性体ブレードをドラムに対してカウンター方向に当接させてトナーを掻き取るブレードクリーニングが最も簡便・低コストで安定な手法であり、広く実用化されている。ところが、球形トナーをゴムブレードでクリーニングしようとすると、しばしばトナーがブレードとドラムの間をすり抜け、クリーニング不良を発生させてしまう。クリーニング不良は画像不良や帯電器汚れを発生させるため、装置の信頼性を著しく損なう。また、こういったすり抜けの対策のため、感光ドラムに対するブレードの当接圧を増加させてトナーを掻き取る力を増やすと、感光ドラムとブレードの摩擦力が増大し、カウンターに当接しているブレードがめくれてクリーニングシステムそのものが破綻する可能性が高まってしまう。
【0004】
球形トナーが異形トナーに比べてクリーニング不良を発生させ易い理由を、図1を用いて説明する。クリーニングブレードの当接圧や当接角度を最適化することによって、画像形成装置の初期段階においては、トナーはクリーニングニップに潜り込むことができないため、良好にクリーニングすることは可能である。しかし、装置の使用を続けていくと、ドラム表面性の変化やブレードニップの介在物質の入れ替わりによってブレード当接状態が変化し、トナーがクリーニングニップに潜り込んできてしまう状態が発生する。より具体的に言えば、ブレードとドラムの間の摩擦係数が上がることにより、ブレード先端が感光ドラム進行方向へ引き込まれ、図1のクリーニングニップのくさびの角度が鋭角になることによって、トナーがクリーニングニップに入り易くなる状態が発生する。図1aは異形トナーをクリーニングする際、図1bは球形トナーをクリーニングする際のクリーニングニップの様子を模式化したものである。トナーがクリーニングニップに潜り込んでしまった際に、異形トナーの場合は図1aのように、トナーがクリーニングニップに挟まって動けなくなるため、それでもクリーニングされるのに対し、球形トナーの場合は図1bのように、より詳しくは図1cのように、トナーがドラムとの摩擦によって回転するモーメント(図中では反時計回りのモーメント)を受け、ニップ内を転がってすり抜けてしまうのである。
【0005】
この問題を解決するための技術として以下の技術が公開されている。特許文献1では、フルカラー複合機においてC、M、Y現像器は球形トナーであるが、Bk現像器のトナーを不定形トナーにして、不定形トナーをクリーニングニップに供給することによってクリーニング性を向上させている。また、特許文献2では、クリーニングブレード上流でブラシを用いてトナーを粉砕することによってクリーニング性を向上させる技術が記載されている。さらに、特許文献3では、転写ニップで球形トナーを変形させ、クリーニングブレードのくさび部に変形させたトナーを滞留させることによって球形トナーをクリーニングする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−254873号公報
【特許文献2】特開2001−188452号公報
【特許文献3】特開2006−17796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、球形トナーをクリーニングするための部材を新規に導入したり、現像や転写等他のプロセスに大幅な変更を加えたりすることによって、球形トナーのクリーニングを達成していた。このような達成手段では、他のプロセスへの弊害やコストの増加が生じてしまう。特許文献1では、Bkトナーを不定形にすることによりBkトナーの転写性が低下することから、黒文字品位を犠牲にすることになる。また、特許文献2では、像担持体上でトナーを粉砕する行程では新たにブラシを導入せねばならないし、ブラシが感光ドラムを傷つけてしまう可能性もある。特許文献3では、転写ニップでトナーを変形させるには硬い転写体を用いて通常よりも大きな転写ニップ圧をかけねばならず、転写プロセスにおける中抜け等の弊害が懸念される。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、球形トナーのクリーニングを簡易な構成で安定的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は下記に記載の画像形成装置により解決される。
(1)像担持体上に形成されたトナー像を記録材に転写した後、像担持体上に残った残トナーをクリーニングするためのクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記クリーニング手段は前記像担持体上に当接するクリーニングブレードを有し、前記像担持体表面の微小硬度が前記ブレード表面の微小硬度よりも大きく、前記トナーの平均円形度が0.97以上であり、前記クリーニングブレードの当接圧が20 g/cm以上70 g/cm以下であり、微小硬度計において前記トナーとブレードを一体に加圧変形させる際に得られる変位量−荷重曲線は、変位量a(μm)が変曲点となる下凸形状であり、変位量aにおいて、前記トナーは塑性変形することを特徴とした画像形成装置。
(2)前記トナーがコア・シェル構造を持っていることを特徴とした(1)に記載の画像形成装置。
(3)前記クリーニングブレードが、内部よりも表面の硬度が高い処理を施されていることを特徴とした(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
(4)前記クリーニングブレードがポリウレタンで形成されており、その表層がイソシアネート処理されていることを特徴とした(1)〜(3)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
上述の画像形成装置で効果が発揮されるメカニズムについて図を用いて説明する。図3はブレード上トナーの微小硬度測定を模式的に表した図である。平圧子がトナー表面を検知してから、トナーに荷重が印加されていき、そのときの荷重対変位の測定を行うものである。測定結果の一例を図4に示す。荷重−変位曲線は下凸の変曲点を持つことが分かる。何故そのような曲線となるのかを図5を用いて説明する。まず、圧子がトナー表面を検知して荷重をかけ始める。それが図の(I)の状態である。するとトナーによってブレードが下方へと変形していき、やがてトナーがブレード内に埋まる状態に達する(II)。そのときの変位量をa(μm)とする。その際に圧子の端部はブレードと接触し、トナーだけを押しているときよりも大きな負荷を感じるようになる。従って、圧子が受ける荷重−変位曲線を図に示すと、図4のように下凸の変曲点を持つのである。
【0011】
すなわち、図中の(I)〜(III)の領域では、図5に示すように圧子はトナーだけでなく、トナー周りのブレードにも接触するようになり、ブレードからの抵抗をも受けるため、(I)〜(II)のときよりも変位しづらくなる。これが下凸の変曲点が発生する理由である。
【0012】
像担持体表層がブレードよりも硬い場合において、トナーがブレード内に埋没した(II)の状態は、像担持体上トナーがクリーニングニップに潜り込んだ状態と等しい。
【0013】
ブレード上トナーが変曲点荷重を受けた(II)(=変位量a)の状態のときにトナーが塑性変形しない場合、実際の像担持体上の球形トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際、図6に示すようにトナーがニップ内で回転できるため、像担持体との摩擦力からトナーは回転モーメントを受け、進行方向下流へと転がりながらすり抜けていってしまう。それに対して、ブレード上トナーが変位量aに達したときにトナーが塑性変形する場合は、像担持体上の球形トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際、図7に示すようにトナーはニップ内で塑性変形することになるため、トナーはニップ内で回転することはできず、それ以上ニップ内を下流方向へ進むことができない。
【0014】
このメカニズムの検証のため、発明者らは図8に示すような可視化装置を用いた実験を行った。像担持体の典型的表層であるポリカーボネートを塗布したガラス板上に球形のトナーを付着させておき、そのトナーを掻き取る様子をガラス背面から高速カメラで観察するというものである。ガラス板は、ブレードとの当接角度を保ちながら、図中左から右方向へ移動するようになっている。このようにして、像担持体上のクリーニングに近い状況でクリーニングニップのトナー挙動を可視化観察できる。トナーが潜り込んだときの挙動を観察したいので、ブレードの角度は30°と、実際の装置における当接角度よりも大きくしている(設定角を大きくした方が図1等に示したようなくさびの角度は小さくなるので、トナーがブレードニップに潜り込み易い)。ブレードにかける荷重は35g/cmとした。
【0015】
平板は10mm/秒で動かし、6000フレーム/秒の速さで撮像している。画角は356μm×356μmであり、解像度は1024×1024ピクセルである。
【0016】
上記ブレード上トナーが変位量aで塑性変形しないトナーとブレードの組み合わせのときには、潜り込んだトナーは図1cに示したようにブレードニップ内を転がってすり抜けてしまう。本可視化装置においても、ブレード長手の一部分ですり抜けが発生しており、その部分を観察すると、トナーがブレードニップ内を転がってすり抜けている現象を確認することができた(図9)。また、クリーニングした後のブレードエッジを顕微鏡で観察しても塑性変形を起こしたトナーはほとんど見当たらなかった(図10a)。
【0017】
一方、ブレード上トナーが変位量aで塑性変形するようなブレードとトナーの組み合わせのときは、同じ設定条件でトナーがニップ内に潜りこんでもその場で留まっており、良好にクリーニングしている様子が観察された。さらに、クリーニングした後のブレードエッジを観察すると、エッジ近傍でトナーが塑性変形している様子が確認された(図10b)。
【0018】
これらの実験により、発明者らは上記の画像形成装置で効果が発揮されるメカニズムについて確信を抱くに至った。
【0019】
以上説明したように、(1)の発明によれば、球形トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際でも、トナーがブレード表層によって塑性変形を起こすため、感光ドラム上トナーを良好にクリーニングし続けることができる。
【0020】
その他、発明の効果が十分発揮される条件として、(1)の発明には以下の3点が挙げられている。1点目は担持体の微小硬度はブレード表面の微小硬度よりも大きいことであり、この条件でないとブレードよりも像担持体表面の方が変形してしまうため、実際の装置で像担持体上トナーがブレードニップに潜り込んだ状態と微小硬度計測定時の変位量aの状態とは一致しない。2点目は使用するトナーの円形度が0.97以上という条件である。本発明は現像性・転写性の優れたトナーをブレードクリーニングすることで初めて効果が発揮される。発明者らの検討で、円形度0.97以上のトナーで良好な現像性・転写性が確保されていることが分かっている。3点目はクリーニングブレードの当接圧が20g/cm以上70g/cm以下という条件である。図8の可視化装置において、ブレードの当接圧を振ってトナーの挙動を観察したところ、20g/cm以下では、変位量aでトナーが塑性変形する条件においても、トナーがクリーニングブレードに潜り込んだ際にブレード全体が持ち上がって、すり抜けてしまう現象が観察された。トナーがブレードニップに潜り込んだ際にブレード全体が持ち上がることなく、ブレード表層がトナー1個分の微小な変形にとどまる程度のブレードの当接圧が必要である。
【0021】
20g/cmという値についてさらに考察する。クリーニングニップを観察しているとトナー同士は互いに緩衝し合って全てのトナーが同時にクリーニングニップに突入することは無いことが分かる。トナー全体のうち、ある時間幅(トナー1個がクリーニングニップに潜り込むのにかかる時間)においてクリーニングニップに潜り込むトナーの割合をPとする。さらに、微小硬度測定の変位量aにおいてトナーにかかる力をN(gf)、トナーの粒径をd(μm)とすると、1cmの長手幅にトナーは最大で(10000/d)個並ぶことから、単位長さ当たりでトナーがブレードを持ち上げる力F(g/cm)は、
F = N×(10000/d)×P
で表される。一例として、N=0.15(gf)、d=6(μm)とすれば、
F = 250×P
となる。20g/cmの当接圧があればトナーがニップに潜り込んでもニップ中で塑性変形してクリーニングすることを考えると、P=0.08であり、この例では全体の8%のトナーがニップに潜り込もうとしていることになる。Pはトナーの粒度分布やトナーの流動性によっても左右されるが、可視化でトナーがニップに潜り込む様子を観察していると、この数字はある程度の妥当性があると発明者らは考えている。逆にP=1、つまり6μmの均一粒径のトナーが最密状態で同時にクリーニングニップに突入した場合、250g/cmもの当接圧がないとクリーニングできないということになる。実際はこのように大きい当接圧でなくても本発明の条件が整えば良好にクリーニングするため、トナーは全て同時にクリーニングニップに潜り込んでいっているわけではなく、トナー全体のうちある割合Pのトナーがニップに潜り込んでいると考えるのが可視化からも妥当な考えである。ある程度の時間クリーニングをしていると、ブレードニップに潜り込んで塑性変形したトナーがブレードニップに蓄積されていき、図10(b)のような状態となる。以上の考察より、20g/cm以上の当接圧で、トナーによってブレードが持ち上げられることなくクリーニングすることは不可思議な現象ではない。
【0022】
一方、70g/cm以上の荷重では、感光ドラムとブレードの摩擦力が増大し、カウンターに当接しているブレードがめくれてクリーニングシステムが破綻する可能性が高まってしまう。以上の理由から、本発明では20g/cm以上70g/cm以下の当接圧でクリーニングブレードを像担持体に当接させることが必要である。
【0023】
(2)の構成におけるトナーにおいては、トナーが塑性変形する際にトナーのシェルが破壊されることによって、より大きい変形が発生するため(1)に記載の発明の効果が発揮され易い。
【0024】
(3)の構成では、ブレード基層が柔らかく、ブレード表層が硬い構造となるので、感光ドラムに対して安定した当接を保つことができながら、クリーニングニップに潜り込んだトナーを塑性変形させる作用も持つため、(1)や(2)に記載の発明の効果がより発揮され易い。
【0025】
(4)の構成では、簡易に(3)の構成を実現できることと、ブレード表層硬さを容易にコントロールできることから(1)〜(3)の発明の効果が発揮され易い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】クリーニングニップにおける異形トナー(a)と球形トナー(b)の挙動の違い。(c)は球形トナー時の拡大図。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面構成図。
【図3】ブレード上トナーの微小硬度測定の説明。
【図4】ブレード上トナーの微小硬度測定の測定結果例。
【図5】ブレード上トナーの微小硬度測定中の模式図。
【図6】クリーニングニップでトナーが塑性変形しないときの模式図。
【図7】クリーニングニップでトナーが塑性変形するときの模式図。
【図8】発明者らが実験を行った可視化装置の概略図。
【図9】トナーがすり抜けたときの観察像。
【図10】クリーニング後のブレードエッジの顕微鏡像。(a)変位量aにおいてトナーが塑性変形しなかったトナーとブレードの組み合わせ(b)変位量aにおいてトナーが塑性変形を起こしたトナーとブレードの組み合わせ。
【図11】クリーニング手段10の構成図。
【図12】実施例1における微小硬度測定前後のトナー断面形状の比較。
【図13】ブレードの侵入量と当接荷重の関係。
【図14】比較例1における微小硬度測定前後のトナー断面形状の比較。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0028】
[実施例1]
先ず、本実施例に係る画像形成装置の全体構成について説明する。図2は、本実施例の画像形成装置100の概略断面構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、タンデムタイプの電子写真方式のレーザービームプリンタである。
【0029】
本実施例の画像形成装置100は、複数の画像形成手段として、第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)SY、SM、SC、SKを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するようになっている。
【0030】
本実施例では、各画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字は省略して総括的に説明する。
【0031】
画像形成部Sは、トナーを担持する像担持体としてのドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての接触帯電部材である帯電ローラ2、露光手段(画像情報書き込み手段)としてのレーザービームスキャナー3、現像手段としての現像装置4、クリーニング手段としてのクリーニング装置10が配置されている。又、全ての画像形成部Sの感光ドラム1に対向するように中間転写装置60が配置されている。
【0032】
中間転写装置60は、感光ドラム1に接触して移動可能な中間転写体として、無端ベルト状部材である中間転写ベルト6を有する。中間転写ベルト6は、複数の支持部材としての駆動ローラ61、従動ローラ62、2次転写バックアップローラ7bに掛け回されている。中間転写ベルト6は、駆動ローラ61に駆動力が伝達されることで、図中矢印R2方向(時計回り)に周回移動する。又、各画像形成部Sの各感光ドラム1に対向する位置において中間転写ベルト6の内周面(裏面)に接触するように、1次転写手段としての回転可能な1次転写部材である1次転写ローラ5が配置されている。各1次転写ローラ5は、中間転写ベルト6を感光ドラム1に向けて押圧している。これにより、感光ドラム1と1次転写ローラ5とで中間転写ベルト6が挟持されて1次転写部N1が形成されている。又、バックアップローラ7bに対向する位置において中間転写ベルト6の外周面(表面)に接触するように、2次転写ローラ7aが配置されている。2次転写ローラ7aは、中間転写ベルト6に圧接している。これにより、2次転写ローラ7aとバックアップローラ7bとで中間転写ベルト6が挟持されて2次転写部N2が形成されている。2次転写ローラ7a及びバックアップローラ7bはそれぞれ、2次転写手段を構成する回転可能な2次転写部材である。
【0033】
次に、フルカラー画像形成時を例として画像形成動作を説明する。
【0034】
先ず、感光ドラム1の表面が、帯電ローラ2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電される。感光ドラム1は、図中矢示R1方向に210mm/secの周速度(表面移動速度)で回転する。感光ドラム1の周速度は、画像形成装置100のプロセススピードに相当する。
【0035】
帯電された感光ドラム1の表面は、レーザービームスキャナー(画像露光装置)3によって、画像信号により変調されたレーザー光Lで走査露光される。これにより、感光ドラム1上に静電像(潜像)が形成される。
【0036】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像装置4によって現像剤のトナーによってトナー像として現像される。本実施例では、現像装置4は、感光ドラム1上の静電像を反転現像方式にて現像する。即ち、帯電処理された感光ドラム1の表面において露光によって電荷が減衰した画像部(明部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを付着させることで、感光ドラム1上の静電像を現像する。
【0037】
各感光ドラム1上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト6を挟んで1次転写ローラ5と感光ドラム1とが対向している1次転写部N1にて、中間転写ベルト6上に順次に重ね合わせて転写(1次転写)される。この時、1次転写ローラ5には、1次転写バイアス印加手段としての1次転写電源51から出力された、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の1次転写バイアス(1次転写電圧)が印加される。
【0038】
中間転写ベルト6上で4色重ねられたトナー像は、中間転写ベルト6を挟んで2次転写ローラ7aとバックアップローラ7bとが対向している2次転写部N2にて、記録用紙などの転写材P上に一括して転写(2次転写)される。この時、2次転写ローラ7aには、2次転写バイアス印加手段としての2次転写電源71から出力された、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写バイアス(2次転写電圧)が印加される。尚、本実施例では、2次転写バイアスを中間転写ベルト6の外周面に接触する2次転写部材に印加するが、2次転写バイアスは極性を反転させて中間転写ベルト6の内周面に接触する2次転写部材に印加してもよい。
【0039】
ここで、転写材Pは、転写材カセット8から供給ローラなどによって取り出され、搬送ローラ、搬送ガイドなどを経由して2次転写部N2へと供給される。
【0040】
トナー像が転写された転写材Pは、中間転写ベルト6から分離されて、定着手段としての定着器(熱ローラ定着器)9へと搬送される。そして、転写材P上の未定着トナー像は、定着器9によって加熱及び加圧されることで、転写材Pに定着される。
【0041】
1次転写工程後に中間転写ベルト6に転写されずに感光ドラム1の表面に残ったトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング装置10により感光ドラム1の表面から除去され、回収される。クリーニング装置10の概略図を図11に示す。クリーニングブレードは感光ドラム1の進行方向とはカウンターの向きに35g/cmの圧力、ブレード側面とドラム接線との角度は27°で当接されている。1次転写残トナーが除去された感光ドラム1は、繰り返し画像形成に供される。
【0042】
(ブレード当接圧測定法について)
本実施例の装置ではブレードの感光ドラムに対する侵入量を規定して、その侵入量から当接圧を算出して規定している。ブレードの感光ドラムに対する侵入量と当接圧の関係は専用の測定装置を用いて測定している。
【0043】
装置は、本実施例の画像形成装置のドラムとクリーニングブレード及びその支持部材から構成されており、さらにドラムにかかる荷重を測定するロードセルが装備されている。ブレードの支持部材が可動となっており、ドラムに対するブレードの侵入量を変えることができる。侵入量を0.2ミリ刻みで変えていったときの、ロードセルにかかる荷重を測定することにより、ブレードの当接荷重と侵入量の関係を得る。当接圧(g/cm)は当接荷重(g)をブレード長手幅(cm)で割ることによって求められる。
【0044】
最後に、2次転写工程後に転写材Pに転写されずに中間転写ベルト6の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)は、中間転写ベルトクリーナ64によって中間転写ベルト6の表面から除去され、回収される。中間転写ベルトクリーナ64は、弾性体ブレード(クリーニングブレード)などの中間転写ベルトクリーニング部材によって、中間転写ベルト6上のトナーを掻き取る。中間転写ベルトクリーナ64は、中間転写ベルト6の表面に当接/離間自在に取り付けられていてよい。そして、1次転写工程中は中間転写ベルトクリーニング部材を中間転写ベルト6の表面から離間させ、2次転写前のトナー像を乱し難くすることができる。
【0045】
画像形成装置100は、所望のひとつの画像形成部、又は4個の画像形成部のうち数個のみを用いてトナー像を形成することで、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできる。この場合も、トナー像を形成しない画像形成部があることを除けば、画像形成動作は上述のフルカラー画像形成時と同様である。
【0046】
次に、画像形成装置100の主要な構成要素について更に詳しく説明する。
【0047】
(クリーニングブレードについて)
本実施例で使用したクリーニングブレードは、ポリウレタン樹脂をベースとしたブレードであり、JIS K 6253で定義されるJIS−A硬度は85度であった。高分子ポリオール、ポリイソシアネート、および架橋剤を反応させてブレードを形成した。
【0048】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオールなどが用いられる。重量平均分子量は通常500から5000のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
架橋剤としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパンなどがあげられる。また、触媒としてはトリエチレンジアミンなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ブレードの成形方法としては、上記各成分を一度に混合して、金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するワンショット法、イソシアネートとポリオールをあらかじめ反応させておきプレポリマーとし、その後架橋剤を混合して金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するプレポリマー法、イソシアネートにポリオールを反応させたセミプレポリマーと、架橋剤にポリオールを添加した硬化剤を反応させて金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するセミワンショット法などを用いることができる。
【0052】
このようにして厚さ2ミリ、幅345ミリ、奥行き15ミリのポリウレタンブレードが成形された。
【0053】
エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100にて、作成したブレード表層硬さを測定した。三角圧子(対稜角115°)を用いて、最大荷重100mgf(ステップインターバル10ミリ秒、分割数1000)で測定したところ、2.5μm程度の変位が観測された。
【0054】
(トナーについて)
本発明に用いられるトナー粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、主な製法としては、粉砕法によって製造されたトナーに機械的処理、或いは熱処理を施して略球形化する方法や、懸濁重合法や乳化重合法のような水系媒体中で造粒する製造法が挙げられる。これらの製造法の中でも懸濁重合法はワックスを内包したコアーシェル構造の球形トナーを造粒する上で比較的簡易な手法であり、溶剤を使用しないといった製造コスト面から好ましい製造方法の一つである。
【0055】
以下に本発明に適用する上で好ましいトナー製法の一つである懸濁重合法について説明する。重合性単量体、着色剤、ワックス成分及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散させ、これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調整する。次に、該重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系媒体中に懸濁して重合を行うことによってトナー粒子は製造される。上記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもある。
【0056】
このようにして得られるトナー粒子は、ワックス成分を内包化しているカプセル構造を有している。トナー粒子外殻のシェルとなる部分の分子量分布や組成を変えることにより、トナー表面硬さを変えることができる。
【0057】
本トナーに用いられる結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を用いることが可能である。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0058】
結着樹脂を生成するための重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン系単量体:o−(m−、p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンなど。アクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体:アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル。エン系単量体:ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド。
【0059】
また、重合性単量体組成物中に低分子量ポリマーを添加することによってトナーの分子量分布を最適化し、低温定着性、耐オフセット性を制御することができる。低分子量ポリマーの例としては、低分子量ポリスチレン、低分子量スチレン−アクリル酸エステル共重合体、低分子量スチレン−アクリル共重合体が挙げられる。
【0060】
上記低分子量ポリマーの好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部50質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0061】
また、上述の結着樹脂と共にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の如きカルボキシル基を有する極性樹脂を併用することができる。
【0062】
例えば、懸濁重合法により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在するように、極性樹脂の存在状態を制御したりすることができる。即ち、極性樹脂を添加することは、コア−シェル構造のシェル部を強化することができるので、トナーの機械的強度に影響を与える。
【0063】
上記極性樹脂の好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上25質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上15質量部以下である。1質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一となりやすく、一方、25質量部を超えるとトナー粒子の表面に形成される極性樹脂の層が厚くなるために好ましくない。
【0064】
本トナーに用いられる極性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。特に極性樹脂として、分子量3000以上、10000以下にメインピークの分子量を有するポリエステル樹脂がトナー粒子の流動性、負摩擦帯電特性を良好にすることができるので好ましい。
【0065】
さらに、トナー粒子の機械的強度を制御するために、結着樹脂を合成するときに架橋剤を用いてもよい。
【0066】
2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリルレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
【0067】
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。
【0068】
本トナーに用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
【0069】
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0070】
本トナーは着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。本トナーに使用される着色剤として、以下の有機顔料、有機染料、無機顔料が挙げられる。
【0071】
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
【0072】
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
【0073】
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
【0074】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、上記イエロー系着色剤/マゼンタ系着色剤/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
【0075】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本トナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
【0076】
該着色剤は、好ましくは重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
【0077】
前記水系媒体調整時に使用する分散安定剤の例としては、公知の無機系及び有機系の分散安定剤を用いることができる。
【0078】
具体的には、無機系の分散安定剤の例としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
【0079】
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
【0080】
本トナーに用いられる水系媒体調整時に使用する分散安定剤としては、無機系の難水溶性の分散安定剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散安定剤を用いることが好ましい。
【0081】
また、本トナーにおいては、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体を調整する場合に、これらの分散安定剤の使用量は重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、本トナーにおいては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3000質量部以下の水を用いて水系媒体を調整することが好ましい。
【0082】
本トナーにおいて、上記のような難水溶性無機分散安定剤が分散された水系媒体を調整する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤の粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速攪拌下、難水溶性無機分散安定剤を生成させて水系媒体を調整してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速攪拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
【0083】
本トナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0084】
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が好ましい。
【0085】
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
【0086】
本トナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
【0087】
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。しかしながら、本トナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、磁性キャリアとの摩擦帯電性を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
【0088】
本トナー粒子には流動性向上のために、無機微粉体が添加されている。
【0089】
本トナー粒子に外添する無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体が挙げられる。これらの無機微粉体の粒径は大きくてもせいぜい120nm以下が好ましい。
【0090】
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNaO2、SO32−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、知りかと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
【0091】
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子に外添される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
【0092】
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
【0093】
作成したトナーの平均粒径、並びに円形度の測定について説明する。
【0094】
(トナー平均粒径の測定)
トナーの個数平均粒径は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、該設置の操作マニュアルに従い測定した。
【0095】
具体的には、まず、電解液として1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調整した。電解液としては、市販のISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)も使用できる。前記電解水溶液100mlに測定試料(トナー)を5mg、及びコンタミノン水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.1mlを加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い前記コールターマルチサイザーにより100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して個数平均粒径を求めた。
【0096】
(トナー平均円形度の測定)
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(東亜医用電子社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従って測定を行い、円形度を求めた。
【0097】
円形度は、(円相当径×π/粒子投影像の周囲長)で求めることができ、円相当径=(粒子投影面積/π)1/2×2である。ここで粒子投影面積とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、粒子投影像の周囲長とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義されている。円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0098】
具体的な測定方法としては、まず容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意する。その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散器「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適時冷却する。また、円形度のばらつきを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃に制御し、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
【0099】
測定時のトナー濃度が3000〜10000個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナーを1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナーの円相当径(個数基準)2.0μm以上の粒子における平均円形度を求める。
【0100】
本発明では、画像形成装置の要求する転写性を達成することから、少なくとも円形度0.97以上のトナーを使用することによって効果を発揮する。
【0101】
本実施例においては、上記製法によって作成した平均粒径6μm、円形度0.98のトナーAを使用した。
【0102】
(感光体について)
本発明の実施例及び比較例で用いた感光体は、負帯電のOPC感光体であり、φ30mmのアルミニウム製のドラム基体上に下記の第1〜第4の4層の機能層を下から順に設けたものである。第1層は下引き層であり、アルミニウムドラム基体(以下アルミ基体と記す)の表面をならすため、またレーザー露光の反射によるモアレの発生を防止するために設けられている厚さ約20μmの導電層である。第2層は正電荷注入防止層であり、アルミ基体から注入された正電荷が感光体表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たし、ポリアミド樹脂とメトキシメチル化ナイロンによって106Ω・cm程度に、抵抗調整された厚さ約1μmの中抵抗層である。第3層は電荷発生層であり、ジスアゾ系の顔料を樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層であり、レーザー露光を受けることによって正負の電荷対を発生する。第4層は電荷輸送層であり、ポリカーボネイト樹脂、或いはポリアリレート樹脂にヒドラゾンを分散したものであり、P型半導体である。従って、感光体表面に帯電された負電荷はこの層を移動することはできず、電荷発生層で発生した正電荷のみを感光体表面に輸送することができる。
【0103】
エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100にて、最表層である電荷輸送層と同じ組成の膜をガラス平板上に形成し、その表面硬さを測定した。三角圧子を用いて、最大荷重100mgf(ステップインターバル10ミリ秒、分割数1000)で測定したところ、0.25μmの変位が観測された。本発明の実施例及び比較例に使用したどのブレードよりも表層は硬いことが分かった。
【0104】
(ブレード上トナーの微小硬度測定について)
本実施例における微小硬度測定は(株)エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100を用いた。本装置は、圧子を試料へ押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さ(すなわち試料の変位)を負荷時、除荷時にわたり連続的に測定することにより、荷重−変位曲線を得、この曲線から試料の微小硬度や弾性率を求めるものである。
【0105】
使用した圧子の先端は20μm×20μmの平坦な正方形になっている。測定環境は温度23℃、湿度45%RHである。平滑な台の上に本実施例で使用するクリーニングブレード(以下ブレード1)の断片を載せ、アロンアルファ等の硬化した後の硬度が高い接着剤でブレード裏面を固定する。本実施例で使用したトナーはトナーAであり、平均粒径は6μmである。エアーでトナーを噴霧させブレード上にまばらに付着させた。微小硬度の測定の前に測定するトナーの顕微鏡像からトナーの大きさを測定し、トナーAの平均粒径±10%以内、つまり5.4μm〜6.6μmの間であることを確認した。最大荷重を300mgf、ステップインターバルを10ミリ秒、分割数(測定データ数)を1000に設定し、ブレード上トナーの測定を行った。圧子がトナー表面と接触してから最大荷重がかかるまで10秒、最大荷重を1秒間保持した後、10秒かけて除荷を行うという行程である。
【0106】
本実施例における測定結果を図4に示す。負荷時において荷重を増加させるにつれて変位もほぼリニアに増加するが、途中で荷重対変位の傾きが変化する変曲点が存在する(図中(II))。そのときのブレードとトナーの状態は図5の(II)の状態であり、これはクリーニングプロセスにおいて感光ドラム上トナーがブレード内に潜り込んだ状態と同じである(感光ドラムがトナーやブレードよりも十分硬い条件下で)。
【0107】
図4中の(II)〜(III)の領域では、図5に示すように圧子はトナーだけでなく、トナー周りのブレードにも接触するようになり、ブレードからの抵抗を受けるため、(I)〜(II)のときよりも変位しづらくなる。これが下凸の変曲点が発生する理由である。また、変曲点の変位は測定したトナーの粒径とほぼ同じであった。トナー形状が略球形であれば、測定前の顕微鏡像から概算したトナー粒径と変曲点の変位はほぼ合致する。
【0108】
より具体的な変曲点の求め方としては、図4の例では50mgf〜150mgfまでの直線と、200mgf〜300mgfまでの直線の交点という形で求めることができる。
【0109】
以上の測定より、圧子によりトナーがブレード内に埋没したときの荷重が求まった。トナー固体によって測定結果に少しばらつきがあるため、平均粒径より±10%以内の粒径を持つトナー5個に対して同じ測定を行い、その平均を求めた。平均荷重は172mgfであった。
【0110】
さらに、求めた荷重である172mgfをブレード上トナーにかけたときに、トナーが塑性変形するかどうかを平均粒径より±10%以内の粒径を持つ5個のトナーについて評価を行った。
【0111】
評価は、キーエンス社製のバイオレットレーザー顕微鏡VK9500を用いて行った。まず、測定対象となるブレード上トナーの高さをVK9500で測定する。対物レンズは150倍、高さ測定のステップ間隔は0.2μmで行った。このトナーに対して微小硬度計で172mgfの荷重をかけた後、再びレーザー顕微鏡で高さ測定を行い、測定前後のトナー形状は図12に示すとおりになった。測定後に明らかにトナー高さが2μm程度減少しており、トナー母体が塑性変形していることが分かる。5個のトナーについて同様の評価を行い、172mgfの荷重をかけると全てのトナーで塑性変形が起こっていることが分かった。
【0112】
微小硬度測定前後のトナー形状が変わる要因は塑性変形以外にも起こり得る。例えばトナー母体への外添剤の埋め込みや、測定時のトナーの転がり等によるものである。しかし、外添剤の粒径やトナーの円形度から考えて、今回の形状変化はそのような変化を超えて大きいものであり、平坦な面が露出していることからトナー母体が塑性変形したと明確に判断できる。
【0113】
また、塑性変形したトナーの断面の円形度は0.86程度であり、後に記載する比較例2で使用した粉砕トナーの円形度は0.94で、このトナーが良好にクリーニングしたことから、この程度の円形度のトナーならばクリーニングニップで転がることなく、良好にクリーニングする。塑性変形の定義として、このように良好にクリーニングする円形度まで変形していることを条件とすることもできる。
【0114】
ブレードとトナーがこのような関係にある場合、感光ドラム上のトナーがクリーニングブレード内に潜り込んだ際に、図7のようにトナーがクリーニングニップにおいて塑性変形するので、トナーがニップ内で回転することが無く、安定したクリーニングが可能となる。
【0115】
実際にブレード1を装置に取り付け、トナーAを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0116】
[実施例2]
本実施例で使用したクリーニングブレードは、ポリウレタン樹脂をベースとして、表層に硬化層を設けたものである。
【0117】
基材となるポリウレタン樹脂は、JIS K 6253で定義されるJIS−A硬度75度のポリウレタンを基材としているのでブレード全体としては柔軟でゴム弾性に富んでいる。この基材を形成するポリウレタンは、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、および架橋剤を反応させたものを用いており、反応剤の種類、反応時間が若干異なるのみで、基本的な作成方法は実施例1のブレードと同じである。
【0118】
(表面硬化層の形成について)
成形した基材に表面硬化層を形成する方法について述べる。表面硬化層は基材となるブレードをイソシアネート化合物に所定時間含浸させた後、加熱硬化することにより、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂とを反応させることによって形成される。
【0119】
硬化層はブレード全面に形成する必要は無く、ブレードが感光体と接するエッジから3ミリ程度内側で形成すれば良い。
【0120】
硬化層を形成する具体的行程について述べる。ブレード基材にイソシアネート化合物を含浸させる方法としては、まず、ポリイソシアネート化合物が液状であるような温度とし、その中にブレード部材を浸す方法があげられる。その他に、繊維質、多孔質体にイソシアネート化合物を含浸させブレード部材に塗布する方法を採ることもできる。さらに、スプレーにより塗布しても良い。イソシアネート液に浸漬中、塗布中、塗布した後のイソシアネート化合物の温度も同様に、そのイソシアネート化合物が液状である温度が好ましい。このようにして、イソシアネート化合物をウレタンに含浸させ、一定時間後に、ウレタン表面に残存するイソシアネート化合物を拭き取る。その後で含浸されたイソシアネート化合物とポリウレタン樹脂との反応を進行させる。
【0121】
含浸する時間が長ければ硬化層は厚くなり、ブレード表面の微小硬度も大きくなる。含浸する時間が短ければ硬化層は薄く、ブレード表面の微小硬度は小さくなる。また、その度合いは使用するイソシアネート化合物の種類、触媒の種類によっても左右される。これらの条件を変えることによって、表面の微小硬度の異なるブレードを作成することができる。
【0122】
具体的なイソシアネート化合物の含浸時間としては、6分以上120分以下が好ましい。また、含浸温度は10℃以上100℃以下が好ましい。
【0123】
含浸されたイソシアネート化合物とポリウレタン樹脂とを反応させる時間は、反応効率とポリウレタン樹脂の熱劣化の観点から、5分以上120分以下が好ましい。また、反応温度は、30℃以上160℃以下が好ましい。
【0124】
ブレードに含浸させるイソシアネート化合物は分子中に1個以上のイソシアネート基を有するもので、1個のイソシアネート基を有するものはオクタデシルイソシアネートなどの脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等が使用できる。
【0125】
2個以上のイソシアネート基を有するものは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4’,4”−ビフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4”−ジフェニルメタントリイソシアネート等があげられるが、これらに限定されるものではない。この他にも、2個以上のイソシアネート基を有するものの変性体や多量体が使用しうる。
【0126】
なお、これらの中でも、立体障害の少ない脂肪族モノイソシアネート、分子量の小さいMDIなどが浸透性の点から好ましい。
【0127】
また、イソシアネート化合物の重合反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、イソシアネート化合物の重合触媒もポリウレタン樹脂に含浸させる場合がある。
【0128】
イソシアネート化合物と共に用いる多量化触媒は、第四級アンモニウム塩、カルボン酸酸塩などを用いることができる。第四級アンモニウム塩としては、DABCO社製のTMR触媒、NCX211、NCX212(共に三共エアプロダクツ製)等を例示することができる。これらの重合触媒は水酸基を含むが、重合触媒の機能はイソシアネート化合物を重合させるものであり、それ自体が架橋構造に関与するものではなく、活性水素化合物とは異なるものである。カルボン酸酸塩としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、例えば、三共エアプロダクツ製P−15及びk−15等を例示することができる。
【0129】
これらの重合触媒は非常に粘度が高かったり、含浸時に固体であったりするので、予め溶剤に溶解してからイソシアネート化合物に添加し、ポリウレタン樹脂に含浸することが好ましい。溶剤としては、イソシアネート化合物と反応しうる活性水素を持たないものが使用され、具体的には、MEK、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等を上げることができる。希釈倍率は、質量比で1.5倍以上15倍以下が好ましい。また、イソシアネート化合物に対する重合触媒の添加率は、終濃度で1質量ppm以上1000質量ppm以下が好ましい。なお、イソシアネート化合物と重合触媒とを混合すると、重合反応が開始されるため、イソシアネート化合物と重合触媒との混合は、イソシアネート化合物の含浸直前に行うことが好ましい。
【0130】
エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100にて、作成したブレードの表層硬さを測定した。三角圧子(対稜角115°)を用いて、最大荷重100mgf(ステップインターバル10ミリ秒、分割数1000)で測定したところ、2μmの変位が観測された。
【0131】
このように形成されたブレードを本実施例では使用し、これをブレード2と呼ぶ。
【0132】
ブレード2は表層が硬いだけで、ブレード全体としては感光ドラムに対して柔らかく当接するため、ブレード1よりも機械的公差の許容範囲が広い。図13に示すとおり、ブレードの感光ドラムに対する侵入量と荷重の関係において、ブレード1の傾きよりもブレード2の傾きの方が小さく、機械的な侵入量の振れに対して荷重の振れが小さく、より安定した当接状態を実現していると言える。
【0133】
本実施例において、トナーは実施例1と同様のトナーAを用い、クリーニングブレードとしてブレード2を使用した。
【0134】
実施例1と同様にブレード上トナーの微小硬度測定を行った。下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は182mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、182mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、全てのトナーが塑性変形していることが確認できた。
【0135】
塑性変形した後のトナーはやはり円形度0.86程度で、良好なクリーニング性が約束されている。
【0136】
ブレード2はブレード基層が柔らかく、ブレード表層が硬い構造となるので、感光ドラムに対して安定した当接を保つことができながら、クリーニングニップに潜り込んだトナーを塑性変形させる作用も持つことが分かる。実際にブレード2を装置に取り付け、トナーAを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0137】
[比較例1]
実施例2で作成したブレード2の基材となったブレードをブレード3と呼ぶ。JIS K 6253で定義されるJIS−A硬度75度のポリウレタンであり、ブレード全体としては柔軟でゴム弾性に富んでいる。本比較例では、トナーはトナーAを使用し、クリーニングブレードとしてはブレード3を使用した。
【0138】
微小硬度測定を行った結果、下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は64mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、64mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、全てのトナーで形状に変化が無く、あったとしても測定誤差範囲であることが確認された。当然トナー円形度にも変化は無い。形状測定結果の一例を図14に示す。このようなトナーとブレードの関係では、図6に示すように、トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際にトナーが球形を保っているため、ニップ内をトナーが転がってすり抜けていってしまう。
【0139】
実際にブレード2を装置に取り付け、トナーAを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続け、10000枚程度出力を行ったところで、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生した。
【0140】
[実施例3]
本実施例では、平均粒径6μm、平均円形度0.98のトナーBを用い、クリーニングブレードとしてブレード3を使用した。トナーBの基本的な作成方法はトナーAと同じであるが、低分子量ポリマーや極性樹脂、架橋剤の添加量を変えることによって、トナーAよりも塑性変形し易い特性を付与した。
【0141】
ブレード上トナーの微小硬度測定を行った結果、下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は65mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、65mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、全てのトナーが塑性変形していることが確認できた。
【0142】
塑性変形後のトナー形状を測定すると、1.5μm程度の変形量であり、円形度に直すと0.88程度であった。
【0143】
実際にブレード2を装置に取り付け、トナーBを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0144】
[比較例2]
本比較例では、平均粒径6μm、平均円形度0.94の粉砕トナーを用い、クリーニングブレードとしてブレード3を使用した。
【0145】
ブレード上トナーの微小硬度測定を行った結果、下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は70mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、65mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、測定前後でトナーの形状はほとんど変わらなかった。
【0146】
実際にブレード3を装置に取り付け、本粉砕トナーを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0147】
ちなみに、図8の可視化装置でクリーニングニップにおけるこのトナーの挙動を観察すると、ニップ近傍のトナーがほとんど動かず、ニップに挟まったトナーがブレードと一体となってクリーニングしている様子が見られる。
【0148】
以上の実施例1〜3と比較例の耐久結果を表1にまとめた。本発明の実施例で良好な耐久結果が得られたことが分かる。比較例2は粉砕トナーを使用したため、耐久結果は良好であるが転写性を犠牲にすることになる。
【0149】
また実施例3では、塑性変形し易いトナーを用いることによって本発明の適用範囲としたが、トナーのシェルを軟らかくすることによる弊害が起こることも考えられる。例えば、耐久を行ってトナーが攪拌され続けると外添剤がトナー母体に埋め込まれ、その機能を失ってしまう現象があるが、トナーのシェルが軟らかいとこの現象は発生し易い。また、シェルが軟らかいトナーは概してガラス転移点が低く、熱によって劣化し易い特性を合わせ持つので、トナーを高温下で放置し続けると、トナーの特性が劣化し易くなることも考えられる。そういった観点から、実施例1や2のように、優れた特性のトナーに対し、ブレードの材質を本発明の適用範囲に合わせる手段の方がより好ましい。
【0150】
また、本実施例ではトナーの粒度分布のうち平均的な粒径のトナーに対しての検証しか記載していないが、平均粒径から外れた(大きい、或いは小さい)トナーについてブレード上トナーの微小硬度測定を行っても、塑性変形の発生の有無が覆ることは無かった。小さいトナーでは変曲点荷重は小さく、大きいトナーでは大きく出るが、小さいトナーは圧子やブレードに対して曲率が大きく、大きいトナーは曲率が小さくなるため、小さいトナーは塑性変形し易く、大きいトナーは塑性変形しづらくなる。その結果、トナーのシェルの材質に大きな粒径依存性が無い限り、塑性変形の発生の有無には影響が小さい。
【0151】
【表1】
実施例1〜3と比較例の耐久結果
【符号の説明】
【0152】
100 画像形成装置
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式・静電記録方式を採用する複写機・プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、電子写真方式を利用した画像形成装置には、従来よりも高い画質の出力が求められるようになってきている。そのためには、ドラム上の静電潜像に忠実なトナー像をドラム上に現像し、そのトナー像を効率良く紙へと転写することが必須である。そういった現像性、転写性を確保するためにはトナーの球形化が有効な手段であることは広く知られている。
【0003】
しかし、電子写真方式において球形トナーを使いこなすにはいくつか課題があり、その最たるものがクリーニング不良の問題である。通常、電子写真方式では、ドラムを繰り返し画像形成に使用するために、転写後のドラム表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段が装備されている。クリーニング手段としては、ゴムなどの弾性体ブレードをドラムに対してカウンター方向に当接させてトナーを掻き取るブレードクリーニングが最も簡便・低コストで安定な手法であり、広く実用化されている。ところが、球形トナーをゴムブレードでクリーニングしようとすると、しばしばトナーがブレードとドラムの間をすり抜け、クリーニング不良を発生させてしまう。クリーニング不良は画像不良や帯電器汚れを発生させるため、装置の信頼性を著しく損なう。また、こういったすり抜けの対策のため、感光ドラムに対するブレードの当接圧を増加させてトナーを掻き取る力を増やすと、感光ドラムとブレードの摩擦力が増大し、カウンターに当接しているブレードがめくれてクリーニングシステムそのものが破綻する可能性が高まってしまう。
【0004】
球形トナーが異形トナーに比べてクリーニング不良を発生させ易い理由を、図1を用いて説明する。クリーニングブレードの当接圧や当接角度を最適化することによって、画像形成装置の初期段階においては、トナーはクリーニングニップに潜り込むことができないため、良好にクリーニングすることは可能である。しかし、装置の使用を続けていくと、ドラム表面性の変化やブレードニップの介在物質の入れ替わりによってブレード当接状態が変化し、トナーがクリーニングニップに潜り込んできてしまう状態が発生する。より具体的に言えば、ブレードとドラムの間の摩擦係数が上がることにより、ブレード先端が感光ドラム進行方向へ引き込まれ、図1のクリーニングニップのくさびの角度が鋭角になることによって、トナーがクリーニングニップに入り易くなる状態が発生する。図1aは異形トナーをクリーニングする際、図1bは球形トナーをクリーニングする際のクリーニングニップの様子を模式化したものである。トナーがクリーニングニップに潜り込んでしまった際に、異形トナーの場合は図1aのように、トナーがクリーニングニップに挟まって動けなくなるため、それでもクリーニングされるのに対し、球形トナーの場合は図1bのように、より詳しくは図1cのように、トナーがドラムとの摩擦によって回転するモーメント(図中では反時計回りのモーメント)を受け、ニップ内を転がってすり抜けてしまうのである。
【0005】
この問題を解決するための技術として以下の技術が公開されている。特許文献1では、フルカラー複合機においてC、M、Y現像器は球形トナーであるが、Bk現像器のトナーを不定形トナーにして、不定形トナーをクリーニングニップに供給することによってクリーニング性を向上させている。また、特許文献2では、クリーニングブレード上流でブラシを用いてトナーを粉砕することによってクリーニング性を向上させる技術が記載されている。さらに、特許文献3では、転写ニップで球形トナーを変形させ、クリーニングブレードのくさび部に変形させたトナーを滞留させることによって球形トナーをクリーニングする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−254873号公報
【特許文献2】特開2001−188452号公報
【特許文献3】特開2006−17796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、球形トナーをクリーニングするための部材を新規に導入したり、現像や転写等他のプロセスに大幅な変更を加えたりすることによって、球形トナーのクリーニングを達成していた。このような達成手段では、他のプロセスへの弊害やコストの増加が生じてしまう。特許文献1では、Bkトナーを不定形にすることによりBkトナーの転写性が低下することから、黒文字品位を犠牲にすることになる。また、特許文献2では、像担持体上でトナーを粉砕する行程では新たにブラシを導入せねばならないし、ブラシが感光ドラムを傷つけてしまう可能性もある。特許文献3では、転写ニップでトナーを変形させるには硬い転写体を用いて通常よりも大きな転写ニップ圧をかけねばならず、転写プロセスにおける中抜け等の弊害が懸念される。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、球形トナーのクリーニングを簡易な構成で安定的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は下記に記載の画像形成装置により解決される。
(1)像担持体上に形成されたトナー像を記録材に転写した後、像担持体上に残った残トナーをクリーニングするためのクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記クリーニング手段は前記像担持体上に当接するクリーニングブレードを有し、前記像担持体表面の微小硬度が前記ブレード表面の微小硬度よりも大きく、前記トナーの平均円形度が0.97以上であり、前記クリーニングブレードの当接圧が20 g/cm以上70 g/cm以下であり、微小硬度計において前記トナーとブレードを一体に加圧変形させる際に得られる変位量−荷重曲線は、変位量a(μm)が変曲点となる下凸形状であり、変位量aにおいて、前記トナーは塑性変形することを特徴とした画像形成装置。
(2)前記トナーがコア・シェル構造を持っていることを特徴とした(1)に記載の画像形成装置。
(3)前記クリーニングブレードが、内部よりも表面の硬度が高い処理を施されていることを特徴とした(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
(4)前記クリーニングブレードがポリウレタンで形成されており、その表層がイソシアネート処理されていることを特徴とした(1)〜(3)に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
上述の画像形成装置で効果が発揮されるメカニズムについて図を用いて説明する。図3はブレード上トナーの微小硬度測定を模式的に表した図である。平圧子がトナー表面を検知してから、トナーに荷重が印加されていき、そのときの荷重対変位の測定を行うものである。測定結果の一例を図4に示す。荷重−変位曲線は下凸の変曲点を持つことが分かる。何故そのような曲線となるのかを図5を用いて説明する。まず、圧子がトナー表面を検知して荷重をかけ始める。それが図の(I)の状態である。するとトナーによってブレードが下方へと変形していき、やがてトナーがブレード内に埋まる状態に達する(II)。そのときの変位量をa(μm)とする。その際に圧子の端部はブレードと接触し、トナーだけを押しているときよりも大きな負荷を感じるようになる。従って、圧子が受ける荷重−変位曲線を図に示すと、図4のように下凸の変曲点を持つのである。
【0011】
すなわち、図中の(I)〜(III)の領域では、図5に示すように圧子はトナーだけでなく、トナー周りのブレードにも接触するようになり、ブレードからの抵抗をも受けるため、(I)〜(II)のときよりも変位しづらくなる。これが下凸の変曲点が発生する理由である。
【0012】
像担持体表層がブレードよりも硬い場合において、トナーがブレード内に埋没した(II)の状態は、像担持体上トナーがクリーニングニップに潜り込んだ状態と等しい。
【0013】
ブレード上トナーが変曲点荷重を受けた(II)(=変位量a)の状態のときにトナーが塑性変形しない場合、実際の像担持体上の球形トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際、図6に示すようにトナーがニップ内で回転できるため、像担持体との摩擦力からトナーは回転モーメントを受け、進行方向下流へと転がりながらすり抜けていってしまう。それに対して、ブレード上トナーが変位量aに達したときにトナーが塑性変形する場合は、像担持体上の球形トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際、図7に示すようにトナーはニップ内で塑性変形することになるため、トナーはニップ内で回転することはできず、それ以上ニップ内を下流方向へ進むことができない。
【0014】
このメカニズムの検証のため、発明者らは図8に示すような可視化装置を用いた実験を行った。像担持体の典型的表層であるポリカーボネートを塗布したガラス板上に球形のトナーを付着させておき、そのトナーを掻き取る様子をガラス背面から高速カメラで観察するというものである。ガラス板は、ブレードとの当接角度を保ちながら、図中左から右方向へ移動するようになっている。このようにして、像担持体上のクリーニングに近い状況でクリーニングニップのトナー挙動を可視化観察できる。トナーが潜り込んだときの挙動を観察したいので、ブレードの角度は30°と、実際の装置における当接角度よりも大きくしている(設定角を大きくした方が図1等に示したようなくさびの角度は小さくなるので、トナーがブレードニップに潜り込み易い)。ブレードにかける荷重は35g/cmとした。
【0015】
平板は10mm/秒で動かし、6000フレーム/秒の速さで撮像している。画角は356μm×356μmであり、解像度は1024×1024ピクセルである。
【0016】
上記ブレード上トナーが変位量aで塑性変形しないトナーとブレードの組み合わせのときには、潜り込んだトナーは図1cに示したようにブレードニップ内を転がってすり抜けてしまう。本可視化装置においても、ブレード長手の一部分ですり抜けが発生しており、その部分を観察すると、トナーがブレードニップ内を転がってすり抜けている現象を確認することができた(図9)。また、クリーニングした後のブレードエッジを顕微鏡で観察しても塑性変形を起こしたトナーはほとんど見当たらなかった(図10a)。
【0017】
一方、ブレード上トナーが変位量aで塑性変形するようなブレードとトナーの組み合わせのときは、同じ設定条件でトナーがニップ内に潜りこんでもその場で留まっており、良好にクリーニングしている様子が観察された。さらに、クリーニングした後のブレードエッジを観察すると、エッジ近傍でトナーが塑性変形している様子が確認された(図10b)。
【0018】
これらの実験により、発明者らは上記の画像形成装置で効果が発揮されるメカニズムについて確信を抱くに至った。
【0019】
以上説明したように、(1)の発明によれば、球形トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際でも、トナーがブレード表層によって塑性変形を起こすため、感光ドラム上トナーを良好にクリーニングし続けることができる。
【0020】
その他、発明の効果が十分発揮される条件として、(1)の発明には以下の3点が挙げられている。1点目は担持体の微小硬度はブレード表面の微小硬度よりも大きいことであり、この条件でないとブレードよりも像担持体表面の方が変形してしまうため、実際の装置で像担持体上トナーがブレードニップに潜り込んだ状態と微小硬度計測定時の変位量aの状態とは一致しない。2点目は使用するトナーの円形度が0.97以上という条件である。本発明は現像性・転写性の優れたトナーをブレードクリーニングすることで初めて効果が発揮される。発明者らの検討で、円形度0.97以上のトナーで良好な現像性・転写性が確保されていることが分かっている。3点目はクリーニングブレードの当接圧が20g/cm以上70g/cm以下という条件である。図8の可視化装置において、ブレードの当接圧を振ってトナーの挙動を観察したところ、20g/cm以下では、変位量aでトナーが塑性変形する条件においても、トナーがクリーニングブレードに潜り込んだ際にブレード全体が持ち上がって、すり抜けてしまう現象が観察された。トナーがブレードニップに潜り込んだ際にブレード全体が持ち上がることなく、ブレード表層がトナー1個分の微小な変形にとどまる程度のブレードの当接圧が必要である。
【0021】
20g/cmという値についてさらに考察する。クリーニングニップを観察しているとトナー同士は互いに緩衝し合って全てのトナーが同時にクリーニングニップに突入することは無いことが分かる。トナー全体のうち、ある時間幅(トナー1個がクリーニングニップに潜り込むのにかかる時間)においてクリーニングニップに潜り込むトナーの割合をPとする。さらに、微小硬度測定の変位量aにおいてトナーにかかる力をN(gf)、トナーの粒径をd(μm)とすると、1cmの長手幅にトナーは最大で(10000/d)個並ぶことから、単位長さ当たりでトナーがブレードを持ち上げる力F(g/cm)は、
F = N×(10000/d)×P
で表される。一例として、N=0.15(gf)、d=6(μm)とすれば、
F = 250×P
となる。20g/cmの当接圧があればトナーがニップに潜り込んでもニップ中で塑性変形してクリーニングすることを考えると、P=0.08であり、この例では全体の8%のトナーがニップに潜り込もうとしていることになる。Pはトナーの粒度分布やトナーの流動性によっても左右されるが、可視化でトナーがニップに潜り込む様子を観察していると、この数字はある程度の妥当性があると発明者らは考えている。逆にP=1、つまり6μmの均一粒径のトナーが最密状態で同時にクリーニングニップに突入した場合、250g/cmもの当接圧がないとクリーニングできないということになる。実際はこのように大きい当接圧でなくても本発明の条件が整えば良好にクリーニングするため、トナーは全て同時にクリーニングニップに潜り込んでいっているわけではなく、トナー全体のうちある割合Pのトナーがニップに潜り込んでいると考えるのが可視化からも妥当な考えである。ある程度の時間クリーニングをしていると、ブレードニップに潜り込んで塑性変形したトナーがブレードニップに蓄積されていき、図10(b)のような状態となる。以上の考察より、20g/cm以上の当接圧で、トナーによってブレードが持ち上げられることなくクリーニングすることは不可思議な現象ではない。
【0022】
一方、70g/cm以上の荷重では、感光ドラムとブレードの摩擦力が増大し、カウンターに当接しているブレードがめくれてクリーニングシステムが破綻する可能性が高まってしまう。以上の理由から、本発明では20g/cm以上70g/cm以下の当接圧でクリーニングブレードを像担持体に当接させることが必要である。
【0023】
(2)の構成におけるトナーにおいては、トナーが塑性変形する際にトナーのシェルが破壊されることによって、より大きい変形が発生するため(1)に記載の発明の効果が発揮され易い。
【0024】
(3)の構成では、ブレード基層が柔らかく、ブレード表層が硬い構造となるので、感光ドラムに対して安定した当接を保つことができながら、クリーニングニップに潜り込んだトナーを塑性変形させる作用も持つため、(1)や(2)に記載の発明の効果がより発揮され易い。
【0025】
(4)の構成では、簡易に(3)の構成を実現できることと、ブレード表層硬さを容易にコントロールできることから(1)〜(3)の発明の効果が発揮され易い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】クリーニングニップにおける異形トナー(a)と球形トナー(b)の挙動の違い。(c)は球形トナー時の拡大図。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面構成図。
【図3】ブレード上トナーの微小硬度測定の説明。
【図4】ブレード上トナーの微小硬度測定の測定結果例。
【図5】ブレード上トナーの微小硬度測定中の模式図。
【図6】クリーニングニップでトナーが塑性変形しないときの模式図。
【図7】クリーニングニップでトナーが塑性変形するときの模式図。
【図8】発明者らが実験を行った可視化装置の概略図。
【図9】トナーがすり抜けたときの観察像。
【図10】クリーニング後のブレードエッジの顕微鏡像。(a)変位量aにおいてトナーが塑性変形しなかったトナーとブレードの組み合わせ(b)変位量aにおいてトナーが塑性変形を起こしたトナーとブレードの組み合わせ。
【図11】クリーニング手段10の構成図。
【図12】実施例1における微小硬度測定前後のトナー断面形状の比較。
【図13】ブレードの侵入量と当接荷重の関係。
【図14】比較例1における微小硬度測定前後のトナー断面形状の比較。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0028】
[実施例1]
先ず、本実施例に係る画像形成装置の全体構成について説明する。図2は、本実施例の画像形成装置100の概略断面構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、タンデムタイプの電子写真方式のレーザービームプリンタである。
【0029】
本実施例の画像形成装置100は、複数の画像形成手段として、第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)SY、SM、SC、SKを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するようになっている。
【0030】
本実施例では、各画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字は省略して総括的に説明する。
【0031】
画像形成部Sは、トナーを担持する像担持体としてのドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての接触帯電部材である帯電ローラ2、露光手段(画像情報書き込み手段)としてのレーザービームスキャナー3、現像手段としての現像装置4、クリーニング手段としてのクリーニング装置10が配置されている。又、全ての画像形成部Sの感光ドラム1に対向するように中間転写装置60が配置されている。
【0032】
中間転写装置60は、感光ドラム1に接触して移動可能な中間転写体として、無端ベルト状部材である中間転写ベルト6を有する。中間転写ベルト6は、複数の支持部材としての駆動ローラ61、従動ローラ62、2次転写バックアップローラ7bに掛け回されている。中間転写ベルト6は、駆動ローラ61に駆動力が伝達されることで、図中矢印R2方向(時計回り)に周回移動する。又、各画像形成部Sの各感光ドラム1に対向する位置において中間転写ベルト6の内周面(裏面)に接触するように、1次転写手段としての回転可能な1次転写部材である1次転写ローラ5が配置されている。各1次転写ローラ5は、中間転写ベルト6を感光ドラム1に向けて押圧している。これにより、感光ドラム1と1次転写ローラ5とで中間転写ベルト6が挟持されて1次転写部N1が形成されている。又、バックアップローラ7bに対向する位置において中間転写ベルト6の外周面(表面)に接触するように、2次転写ローラ7aが配置されている。2次転写ローラ7aは、中間転写ベルト6に圧接している。これにより、2次転写ローラ7aとバックアップローラ7bとで中間転写ベルト6が挟持されて2次転写部N2が形成されている。2次転写ローラ7a及びバックアップローラ7bはそれぞれ、2次転写手段を構成する回転可能な2次転写部材である。
【0033】
次に、フルカラー画像形成時を例として画像形成動作を説明する。
【0034】
先ず、感光ドラム1の表面が、帯電ローラ2によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電される。感光ドラム1は、図中矢示R1方向に210mm/secの周速度(表面移動速度)で回転する。感光ドラム1の周速度は、画像形成装置100のプロセススピードに相当する。
【0035】
帯電された感光ドラム1の表面は、レーザービームスキャナー(画像露光装置)3によって、画像信号により変調されたレーザー光Lで走査露光される。これにより、感光ドラム1上に静電像(潜像)が形成される。
【0036】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像装置4によって現像剤のトナーによってトナー像として現像される。本実施例では、現像装置4は、感光ドラム1上の静電像を反転現像方式にて現像する。即ち、帯電処理された感光ドラム1の表面において露光によって電荷が減衰した画像部(明部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを付着させることで、感光ドラム1上の静電像を現像する。
【0037】
各感光ドラム1上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト6を挟んで1次転写ローラ5と感光ドラム1とが対向している1次転写部N1にて、中間転写ベルト6上に順次に重ね合わせて転写(1次転写)される。この時、1次転写ローラ5には、1次転写バイアス印加手段としての1次転写電源51から出力された、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の1次転写バイアス(1次転写電圧)が印加される。
【0038】
中間転写ベルト6上で4色重ねられたトナー像は、中間転写ベルト6を挟んで2次転写ローラ7aとバックアップローラ7bとが対向している2次転写部N2にて、記録用紙などの転写材P上に一括して転写(2次転写)される。この時、2次転写ローラ7aには、2次転写バイアス印加手段としての2次転写電源71から出力された、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写バイアス(2次転写電圧)が印加される。尚、本実施例では、2次転写バイアスを中間転写ベルト6の外周面に接触する2次転写部材に印加するが、2次転写バイアスは極性を反転させて中間転写ベルト6の内周面に接触する2次転写部材に印加してもよい。
【0039】
ここで、転写材Pは、転写材カセット8から供給ローラなどによって取り出され、搬送ローラ、搬送ガイドなどを経由して2次転写部N2へと供給される。
【0040】
トナー像が転写された転写材Pは、中間転写ベルト6から分離されて、定着手段としての定着器(熱ローラ定着器)9へと搬送される。そして、転写材P上の未定着トナー像は、定着器9によって加熱及び加圧されることで、転写材Pに定着される。
【0041】
1次転写工程後に中間転写ベルト6に転写されずに感光ドラム1の表面に残ったトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング装置10により感光ドラム1の表面から除去され、回収される。クリーニング装置10の概略図を図11に示す。クリーニングブレードは感光ドラム1の進行方向とはカウンターの向きに35g/cmの圧力、ブレード側面とドラム接線との角度は27°で当接されている。1次転写残トナーが除去された感光ドラム1は、繰り返し画像形成に供される。
【0042】
(ブレード当接圧測定法について)
本実施例の装置ではブレードの感光ドラムに対する侵入量を規定して、その侵入量から当接圧を算出して規定している。ブレードの感光ドラムに対する侵入量と当接圧の関係は専用の測定装置を用いて測定している。
【0043】
装置は、本実施例の画像形成装置のドラムとクリーニングブレード及びその支持部材から構成されており、さらにドラムにかかる荷重を測定するロードセルが装備されている。ブレードの支持部材が可動となっており、ドラムに対するブレードの侵入量を変えることができる。侵入量を0.2ミリ刻みで変えていったときの、ロードセルにかかる荷重を測定することにより、ブレードの当接荷重と侵入量の関係を得る。当接圧(g/cm)は当接荷重(g)をブレード長手幅(cm)で割ることによって求められる。
【0044】
最後に、2次転写工程後に転写材Pに転写されずに中間転写ベルト6の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)は、中間転写ベルトクリーナ64によって中間転写ベルト6の表面から除去され、回収される。中間転写ベルトクリーナ64は、弾性体ブレード(クリーニングブレード)などの中間転写ベルトクリーニング部材によって、中間転写ベルト6上のトナーを掻き取る。中間転写ベルトクリーナ64は、中間転写ベルト6の表面に当接/離間自在に取り付けられていてよい。そして、1次転写工程中は中間転写ベルトクリーニング部材を中間転写ベルト6の表面から離間させ、2次転写前のトナー像を乱し難くすることができる。
【0045】
画像形成装置100は、所望のひとつの画像形成部、又は4個の画像形成部のうち数個のみを用いてトナー像を形成することで、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできる。この場合も、トナー像を形成しない画像形成部があることを除けば、画像形成動作は上述のフルカラー画像形成時と同様である。
【0046】
次に、画像形成装置100の主要な構成要素について更に詳しく説明する。
【0047】
(クリーニングブレードについて)
本実施例で使用したクリーニングブレードは、ポリウレタン樹脂をベースとしたブレードであり、JIS K 6253で定義されるJIS−A硬度は85度であった。高分子ポリオール、ポリイソシアネート、および架橋剤を反応させてブレードを形成した。
【0048】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオールなどが用いられる。重量平均分子量は通常500から5000のものが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
架橋剤としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、トリメチロールプロパンなどがあげられる。また、触媒としてはトリエチレンジアミンなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ブレードの成形方法としては、上記各成分を一度に混合して、金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するワンショット法、イソシアネートとポリオールをあらかじめ反応させておきプレポリマーとし、その後架橋剤を混合して金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するプレポリマー法、イソシアネートにポリオールを反応させたセミプレポリマーと、架橋剤にポリオールを添加した硬化剤を反応させて金型または遠心成形円筒金型に注型して成形するセミワンショット法などを用いることができる。
【0052】
このようにして厚さ2ミリ、幅345ミリ、奥行き15ミリのポリウレタンブレードが成形された。
【0053】
エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100にて、作成したブレード表層硬さを測定した。三角圧子(対稜角115°)を用いて、最大荷重100mgf(ステップインターバル10ミリ秒、分割数1000)で測定したところ、2.5μm程度の変位が観測された。
【0054】
(トナーについて)
本発明に用いられるトナー粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、主な製法としては、粉砕法によって製造されたトナーに機械的処理、或いは熱処理を施して略球形化する方法や、懸濁重合法や乳化重合法のような水系媒体中で造粒する製造法が挙げられる。これらの製造法の中でも懸濁重合法はワックスを内包したコアーシェル構造の球形トナーを造粒する上で比較的簡易な手法であり、溶剤を使用しないといった製造コスト面から好ましい製造方法の一つである。
【0055】
以下に本発明に適用する上で好ましいトナー製法の一つである懸濁重合法について説明する。重合性単量体、着色剤、ワックス成分及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散させ、これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調整する。次に、該重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系媒体中に懸濁して重合を行うことによってトナー粒子は製造される。上記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもある。
【0056】
このようにして得られるトナー粒子は、ワックス成分を内包化しているカプセル構造を有している。トナー粒子外殻のシェルとなる部分の分子量分布や組成を変えることにより、トナー表面硬さを変えることができる。
【0057】
本トナーに用いられる結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を用いることが可能である。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0058】
結着樹脂を生成するための重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン系単量体:o−(m−、p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンなど。アクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体:アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル。エン系単量体:ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド。
【0059】
また、重合性単量体組成物中に低分子量ポリマーを添加することによってトナーの分子量分布を最適化し、低温定着性、耐オフセット性を制御することができる。低分子量ポリマーの例としては、低分子量ポリスチレン、低分子量スチレン−アクリル酸エステル共重合体、低分子量スチレン−アクリル共重合体が挙げられる。
【0060】
上記低分子量ポリマーの好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部50質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0061】
また、上述の結着樹脂と共にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂の如きカルボキシル基を有する極性樹脂を併用することができる。
【0062】
例えば、懸濁重合法により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在するように、極性樹脂の存在状態を制御したりすることができる。即ち、極性樹脂を添加することは、コア−シェル構造のシェル部を強化することができるので、トナーの機械的強度に影響を与える。
【0063】
上記極性樹脂の好ましい添加量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上25質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上15質量部以下である。1質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一となりやすく、一方、25質量部を超えるとトナー粒子の表面に形成される極性樹脂の層が厚くなるために好ましくない。
【0064】
本トナーに用いられる極性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。特に極性樹脂として、分子量3000以上、10000以下にメインピークの分子量を有するポリエステル樹脂がトナー粒子の流動性、負摩擦帯電特性を良好にすることができるので好ましい。
【0065】
さらに、トナー粒子の機械的強度を制御するために、結着樹脂を合成するときに架橋剤を用いてもよい。
【0066】
2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリルレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
【0067】
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。
【0068】
本トナーに用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
【0069】
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0070】
本トナーは着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。本トナーに使用される着色剤として、以下の有機顔料、有機染料、無機顔料が挙げられる。
【0071】
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
【0072】
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
【0073】
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
【0074】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、上記イエロー系着色剤/マゼンタ系着色剤/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
【0075】
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本トナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
【0076】
該着色剤は、好ましくは重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
【0077】
前記水系媒体調整時に使用する分散安定剤の例としては、公知の無機系及び有機系の分散安定剤を用いることができる。
【0078】
具体的には、無機系の分散安定剤の例としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
【0079】
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
【0080】
本トナーに用いられる水系媒体調整時に使用する分散安定剤としては、無機系の難水溶性の分散安定剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散安定剤を用いることが好ましい。
【0081】
また、本トナーにおいては、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体を調整する場合に、これらの分散安定剤の使用量は重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、本トナーにおいては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3000質量部以下の水を用いて水系媒体を調整することが好ましい。
【0082】
本トナーにおいて、上記のような難水溶性無機分散安定剤が分散された水系媒体を調整する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤の粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速攪拌下、難水溶性無機分散安定剤を生成させて水系媒体を調整してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速攪拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
【0083】
本トナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0084】
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が好ましい。
【0085】
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
【0086】
本トナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
【0087】
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。しかしながら、本トナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、磁性キャリアとの摩擦帯電性を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
【0088】
本トナー粒子には流動性向上のために、無機微粉体が添加されている。
【0089】
本トナー粒子に外添する無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体が挙げられる。これらの無機微粉体の粒径は大きくてもせいぜい120nm以下が好ましい。
【0090】
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNaO2、SO32−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、知りかと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
【0091】
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子に外添される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
【0092】
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
【0093】
作成したトナーの平均粒径、並びに円形度の測定について説明する。
【0094】
(トナー平均粒径の測定)
トナーの個数平均粒径は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、該設置の操作マニュアルに従い測定した。
【0095】
具体的には、まず、電解液として1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調整した。電解液としては、市販のISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)も使用できる。前記電解水溶液100mlに測定試料(トナー)を5mg、及びコンタミノン水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.1mlを加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い前記コールターマルチサイザーにより100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して個数平均粒径を求めた。
【0096】
(トナー平均円形度の測定)
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(東亜医用電子社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従って測定を行い、円形度を求めた。
【0097】
円形度は、(円相当径×π/粒子投影像の周囲長)で求めることができ、円相当径=(粒子投影面積/π)1/2×2である。ここで粒子投影面積とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、粒子投影像の周囲長とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義されている。円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0098】
具体的な測定方法としては、まず容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意する。その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散器「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適時冷却する。また、円形度のばらつきを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃に制御し、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
【0099】
測定時のトナー濃度が3000〜10000個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナーを1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナーの円相当径(個数基準)2.0μm以上の粒子における平均円形度を求める。
【0100】
本発明では、画像形成装置の要求する転写性を達成することから、少なくとも円形度0.97以上のトナーを使用することによって効果を発揮する。
【0101】
本実施例においては、上記製法によって作成した平均粒径6μm、円形度0.98のトナーAを使用した。
【0102】
(感光体について)
本発明の実施例及び比較例で用いた感光体は、負帯電のOPC感光体であり、φ30mmのアルミニウム製のドラム基体上に下記の第1〜第4の4層の機能層を下から順に設けたものである。第1層は下引き層であり、アルミニウムドラム基体(以下アルミ基体と記す)の表面をならすため、またレーザー露光の反射によるモアレの発生を防止するために設けられている厚さ約20μmの導電層である。第2層は正電荷注入防止層であり、アルミ基体から注入された正電荷が感光体表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たし、ポリアミド樹脂とメトキシメチル化ナイロンによって106Ω・cm程度に、抵抗調整された厚さ約1μmの中抵抗層である。第3層は電荷発生層であり、ジスアゾ系の顔料を樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層であり、レーザー露光を受けることによって正負の電荷対を発生する。第4層は電荷輸送層であり、ポリカーボネイト樹脂、或いはポリアリレート樹脂にヒドラゾンを分散したものであり、P型半導体である。従って、感光体表面に帯電された負電荷はこの層を移動することはできず、電荷発生層で発生した正電荷のみを感光体表面に輸送することができる。
【0103】
エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100にて、最表層である電荷輸送層と同じ組成の膜をガラス平板上に形成し、その表面硬さを測定した。三角圧子を用いて、最大荷重100mgf(ステップインターバル10ミリ秒、分割数1000)で測定したところ、0.25μmの変位が観測された。本発明の実施例及び比較例に使用したどのブレードよりも表層は硬いことが分かった。
【0104】
(ブレード上トナーの微小硬度測定について)
本実施例における微小硬度測定は(株)エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100を用いた。本装置は、圧子を試料へ押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さ(すなわち試料の変位)を負荷時、除荷時にわたり連続的に測定することにより、荷重−変位曲線を得、この曲線から試料の微小硬度や弾性率を求めるものである。
【0105】
使用した圧子の先端は20μm×20μmの平坦な正方形になっている。測定環境は温度23℃、湿度45%RHである。平滑な台の上に本実施例で使用するクリーニングブレード(以下ブレード1)の断片を載せ、アロンアルファ等の硬化した後の硬度が高い接着剤でブレード裏面を固定する。本実施例で使用したトナーはトナーAであり、平均粒径は6μmである。エアーでトナーを噴霧させブレード上にまばらに付着させた。微小硬度の測定の前に測定するトナーの顕微鏡像からトナーの大きさを測定し、トナーAの平均粒径±10%以内、つまり5.4μm〜6.6μmの間であることを確認した。最大荷重を300mgf、ステップインターバルを10ミリ秒、分割数(測定データ数)を1000に設定し、ブレード上トナーの測定を行った。圧子がトナー表面と接触してから最大荷重がかかるまで10秒、最大荷重を1秒間保持した後、10秒かけて除荷を行うという行程である。
【0106】
本実施例における測定結果を図4に示す。負荷時において荷重を増加させるにつれて変位もほぼリニアに増加するが、途中で荷重対変位の傾きが変化する変曲点が存在する(図中(II))。そのときのブレードとトナーの状態は図5の(II)の状態であり、これはクリーニングプロセスにおいて感光ドラム上トナーがブレード内に潜り込んだ状態と同じである(感光ドラムがトナーやブレードよりも十分硬い条件下で)。
【0107】
図4中の(II)〜(III)の領域では、図5に示すように圧子はトナーだけでなく、トナー周りのブレードにも接触するようになり、ブレードからの抵抗を受けるため、(I)〜(II)のときよりも変位しづらくなる。これが下凸の変曲点が発生する理由である。また、変曲点の変位は測定したトナーの粒径とほぼ同じであった。トナー形状が略球形であれば、測定前の顕微鏡像から概算したトナー粒径と変曲点の変位はほぼ合致する。
【0108】
より具体的な変曲点の求め方としては、図4の例では50mgf〜150mgfまでの直線と、200mgf〜300mgfまでの直線の交点という形で求めることができる。
【0109】
以上の測定より、圧子によりトナーがブレード内に埋没したときの荷重が求まった。トナー固体によって測定結果に少しばらつきがあるため、平均粒径より±10%以内の粒径を持つトナー5個に対して同じ測定を行い、その平均を求めた。平均荷重は172mgfであった。
【0110】
さらに、求めた荷重である172mgfをブレード上トナーにかけたときに、トナーが塑性変形するかどうかを平均粒径より±10%以内の粒径を持つ5個のトナーについて評価を行った。
【0111】
評価は、キーエンス社製のバイオレットレーザー顕微鏡VK9500を用いて行った。まず、測定対象となるブレード上トナーの高さをVK9500で測定する。対物レンズは150倍、高さ測定のステップ間隔は0.2μmで行った。このトナーに対して微小硬度計で172mgfの荷重をかけた後、再びレーザー顕微鏡で高さ測定を行い、測定前後のトナー形状は図12に示すとおりになった。測定後に明らかにトナー高さが2μm程度減少しており、トナー母体が塑性変形していることが分かる。5個のトナーについて同様の評価を行い、172mgfの荷重をかけると全てのトナーで塑性変形が起こっていることが分かった。
【0112】
微小硬度測定前後のトナー形状が変わる要因は塑性変形以外にも起こり得る。例えばトナー母体への外添剤の埋め込みや、測定時のトナーの転がり等によるものである。しかし、外添剤の粒径やトナーの円形度から考えて、今回の形状変化はそのような変化を超えて大きいものであり、平坦な面が露出していることからトナー母体が塑性変形したと明確に判断できる。
【0113】
また、塑性変形したトナーの断面の円形度は0.86程度であり、後に記載する比較例2で使用した粉砕トナーの円形度は0.94で、このトナーが良好にクリーニングしたことから、この程度の円形度のトナーならばクリーニングニップで転がることなく、良好にクリーニングする。塑性変形の定義として、このように良好にクリーニングする円形度まで変形していることを条件とすることもできる。
【0114】
ブレードとトナーがこのような関係にある場合、感光ドラム上のトナーがクリーニングブレード内に潜り込んだ際に、図7のようにトナーがクリーニングニップにおいて塑性変形するので、トナーがニップ内で回転することが無く、安定したクリーニングが可能となる。
【0115】
実際にブレード1を装置に取り付け、トナーAを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0116】
[実施例2]
本実施例で使用したクリーニングブレードは、ポリウレタン樹脂をベースとして、表層に硬化層を設けたものである。
【0117】
基材となるポリウレタン樹脂は、JIS K 6253で定義されるJIS−A硬度75度のポリウレタンを基材としているのでブレード全体としては柔軟でゴム弾性に富んでいる。この基材を形成するポリウレタンは、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、および架橋剤を反応させたものを用いており、反応剤の種類、反応時間が若干異なるのみで、基本的な作成方法は実施例1のブレードと同じである。
【0118】
(表面硬化層の形成について)
成形した基材に表面硬化層を形成する方法について述べる。表面硬化層は基材となるブレードをイソシアネート化合物に所定時間含浸させた後、加熱硬化することにより、イソシアネート化合物とポリウレタン樹脂とを反応させることによって形成される。
【0119】
硬化層はブレード全面に形成する必要は無く、ブレードが感光体と接するエッジから3ミリ程度内側で形成すれば良い。
【0120】
硬化層を形成する具体的行程について述べる。ブレード基材にイソシアネート化合物を含浸させる方法としては、まず、ポリイソシアネート化合物が液状であるような温度とし、その中にブレード部材を浸す方法があげられる。その他に、繊維質、多孔質体にイソシアネート化合物を含浸させブレード部材に塗布する方法を採ることもできる。さらに、スプレーにより塗布しても良い。イソシアネート液に浸漬中、塗布中、塗布した後のイソシアネート化合物の温度も同様に、そのイソシアネート化合物が液状である温度が好ましい。このようにして、イソシアネート化合物をウレタンに含浸させ、一定時間後に、ウレタン表面に残存するイソシアネート化合物を拭き取る。その後で含浸されたイソシアネート化合物とポリウレタン樹脂との反応を進行させる。
【0121】
含浸する時間が長ければ硬化層は厚くなり、ブレード表面の微小硬度も大きくなる。含浸する時間が短ければ硬化層は薄く、ブレード表面の微小硬度は小さくなる。また、その度合いは使用するイソシアネート化合物の種類、触媒の種類によっても左右される。これらの条件を変えることによって、表面の微小硬度の異なるブレードを作成することができる。
【0122】
具体的なイソシアネート化合物の含浸時間としては、6分以上120分以下が好ましい。また、含浸温度は10℃以上100℃以下が好ましい。
【0123】
含浸されたイソシアネート化合物とポリウレタン樹脂とを反応させる時間は、反応効率とポリウレタン樹脂の熱劣化の観点から、5分以上120分以下が好ましい。また、反応温度は、30℃以上160℃以下が好ましい。
【0124】
ブレードに含浸させるイソシアネート化合物は分子中に1個以上のイソシアネート基を有するもので、1個のイソシアネート基を有するものはオクタデシルイソシアネートなどの脂肪族モノイソシアネート、芳香族モノイソシアネート等が使用できる。
【0125】
2個以上のイソシアネート基を有するものは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4’,4”−ビフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4”−ジフェニルメタントリイソシアネート等があげられるが、これらに限定されるものではない。この他にも、2個以上のイソシアネート基を有するものの変性体や多量体が使用しうる。
【0126】
なお、これらの中でも、立体障害の少ない脂肪族モノイソシアネート、分子量の小さいMDIなどが浸透性の点から好ましい。
【0127】
また、イソシアネート化合物の重合反応を促進するために、イソシアネート化合物に加え、イソシアネート化合物の重合触媒もポリウレタン樹脂に含浸させる場合がある。
【0128】
イソシアネート化合物と共に用いる多量化触媒は、第四級アンモニウム塩、カルボン酸酸塩などを用いることができる。第四級アンモニウム塩としては、DABCO社製のTMR触媒、NCX211、NCX212(共に三共エアプロダクツ製)等を例示することができる。これらの重合触媒は水酸基を含むが、重合触媒の機能はイソシアネート化合物を重合させるものであり、それ自体が架橋構造に関与するものではなく、活性水素化合物とは異なるものである。カルボン酸酸塩としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、例えば、三共エアプロダクツ製P−15及びk−15等を例示することができる。
【0129】
これらの重合触媒は非常に粘度が高かったり、含浸時に固体であったりするので、予め溶剤に溶解してからイソシアネート化合物に添加し、ポリウレタン樹脂に含浸することが好ましい。溶剤としては、イソシアネート化合物と反応しうる活性水素を持たないものが使用され、具体的には、MEK、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等を上げることができる。希釈倍率は、質量比で1.5倍以上15倍以下が好ましい。また、イソシアネート化合物に対する重合触媒の添加率は、終濃度で1質量ppm以上1000質量ppm以下が好ましい。なお、イソシアネート化合物と重合触媒とを混合すると、重合反応が開始されるため、イソシアネート化合物と重合触媒との混合は、イソシアネート化合物の含浸直前に行うことが好ましい。
【0130】
エリオニクス社製 超微小硬度計ENT1100にて、作成したブレードの表層硬さを測定した。三角圧子(対稜角115°)を用いて、最大荷重100mgf(ステップインターバル10ミリ秒、分割数1000)で測定したところ、2μmの変位が観測された。
【0131】
このように形成されたブレードを本実施例では使用し、これをブレード2と呼ぶ。
【0132】
ブレード2は表層が硬いだけで、ブレード全体としては感光ドラムに対して柔らかく当接するため、ブレード1よりも機械的公差の許容範囲が広い。図13に示すとおり、ブレードの感光ドラムに対する侵入量と荷重の関係において、ブレード1の傾きよりもブレード2の傾きの方が小さく、機械的な侵入量の振れに対して荷重の振れが小さく、より安定した当接状態を実現していると言える。
【0133】
本実施例において、トナーは実施例1と同様のトナーAを用い、クリーニングブレードとしてブレード2を使用した。
【0134】
実施例1と同様にブレード上トナーの微小硬度測定を行った。下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は182mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、182mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、全てのトナーが塑性変形していることが確認できた。
【0135】
塑性変形した後のトナーはやはり円形度0.86程度で、良好なクリーニング性が約束されている。
【0136】
ブレード2はブレード基層が柔らかく、ブレード表層が硬い構造となるので、感光ドラムに対して安定した当接を保つことができながら、クリーニングニップに潜り込んだトナーを塑性変形させる作用も持つことが分かる。実際にブレード2を装置に取り付け、トナーAを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0137】
[比較例1]
実施例2で作成したブレード2の基材となったブレードをブレード3と呼ぶ。JIS K 6253で定義されるJIS−A硬度75度のポリウレタンであり、ブレード全体としては柔軟でゴム弾性に富んでいる。本比較例では、トナーはトナーAを使用し、クリーニングブレードとしてはブレード3を使用した。
【0138】
微小硬度測定を行った結果、下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は64mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、64mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、全てのトナーで形状に変化が無く、あったとしても測定誤差範囲であることが確認された。当然トナー円形度にも変化は無い。形状測定結果の一例を図14に示す。このようなトナーとブレードの関係では、図6に示すように、トナーがクリーニングニップに潜り込んだ際にトナーが球形を保っているため、ニップ内をトナーが転がってすり抜けていってしまう。
【0139】
実際にブレード2を装置に取り付け、トナーAを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続け、10000枚程度出力を行ったところで、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生した。
【0140】
[実施例3]
本実施例では、平均粒径6μm、平均円形度0.98のトナーBを用い、クリーニングブレードとしてブレード3を使用した。トナーBの基本的な作成方法はトナーAと同じであるが、低分子量ポリマーや極性樹脂、架橋剤の添加量を変えることによって、トナーAよりも塑性変形し易い特性を付与した。
【0141】
ブレード上トナーの微小硬度測定を行った結果、下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は65mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、65mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、全てのトナーが塑性変形していることが確認できた。
【0142】
塑性変形後のトナー形状を測定すると、1.5μm程度の変形量であり、円形度に直すと0.88程度であった。
【0143】
実際にブレード2を装置に取り付け、トナーBを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0144】
[比較例2]
本比較例では、平均粒径6μm、平均円形度0.94の粉砕トナーを用い、クリーニングブレードとしてブレード3を使用した。
【0145】
ブレード上トナーの微小硬度測定を行った結果、下凸の変曲点が確認でき、変曲点の平均荷重は70mgfであった。平均粒径±10%以内のトナーを5個選び、65mgfの荷重をブレード上トナーに対してかけると、測定前後でトナーの形状はほとんど変わらなかった。
【0146】
実際にブレード3を装置に取り付け、本粉砕トナーを用いて耐久試験を行った。印字率5%の画像を出力し続けたところ、500000枚出力を行ってもクリーニング不良は発生しなかった。
【0147】
ちなみに、図8の可視化装置でクリーニングニップにおけるこのトナーの挙動を観察すると、ニップ近傍のトナーがほとんど動かず、ニップに挟まったトナーがブレードと一体となってクリーニングしている様子が見られる。
【0148】
以上の実施例1〜3と比較例の耐久結果を表1にまとめた。本発明の実施例で良好な耐久結果が得られたことが分かる。比較例2は粉砕トナーを使用したため、耐久結果は良好であるが転写性を犠牲にすることになる。
【0149】
また実施例3では、塑性変形し易いトナーを用いることによって本発明の適用範囲としたが、トナーのシェルを軟らかくすることによる弊害が起こることも考えられる。例えば、耐久を行ってトナーが攪拌され続けると外添剤がトナー母体に埋め込まれ、その機能を失ってしまう現象があるが、トナーのシェルが軟らかいとこの現象は発生し易い。また、シェルが軟らかいトナーは概してガラス転移点が低く、熱によって劣化し易い特性を合わせ持つので、トナーを高温下で放置し続けると、トナーの特性が劣化し易くなることも考えられる。そういった観点から、実施例1や2のように、優れた特性のトナーに対し、ブレードの材質を本発明の適用範囲に合わせる手段の方がより好ましい。
【0150】
また、本実施例ではトナーの粒度分布のうち平均的な粒径のトナーに対しての検証しか記載していないが、平均粒径から外れた(大きい、或いは小さい)トナーについてブレード上トナーの微小硬度測定を行っても、塑性変形の発生の有無が覆ることは無かった。小さいトナーでは変曲点荷重は小さく、大きいトナーでは大きく出るが、小さいトナーは圧子やブレードに対して曲率が大きく、大きいトナーは曲率が小さくなるため、小さいトナーは塑性変形し易く、大きいトナーは塑性変形しづらくなる。その結果、トナーのシェルの材質に大きな粒径依存性が無い限り、塑性変形の発生の有無には影響が小さい。
【0151】
【表1】
実施例1〜3と比較例の耐久結果
【符号の説明】
【0152】
100 画像形成装置
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成されたトナー像を記録材に転写した後、像担持体上に残った残トナーをクリーニングするためのクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記クリーニング手段は前記像担持体上に当接するクリーニングブレードを有し、前記像担持体表面の微小硬度が前記ブレード表面の微小硬度よりも大きく、前記トナーの平均円形度が0.97以上であり、前記クリーニングブレードの当接圧が20 g/cm以上70 g/cm以下であり、微小硬度計において前記トナーとブレードを一体に加圧変形させる際に得られる変位量−荷重曲線は、変位量a(μm)が変曲点となる下凸形状であり、変位量aにおいて、前記トナーは塑性変形することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナーがコア・シェル構造を持っていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニングブレードが、内部よりも表面の硬度が高い処理を施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニングブレードがポリウレタンで形成されており、その表層がイソシアネート処理されていることを特徴とした請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
像担持体上に形成されたトナー像を記録材に転写した後、像担持体上に残った残トナーをクリーニングするためのクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記クリーニング手段は前記像担持体上に当接するクリーニングブレードを有し、前記像担持体表面の微小硬度が前記ブレード表面の微小硬度よりも大きく、前記トナーの平均円形度が0.97以上であり、前記クリーニングブレードの当接圧が20 g/cm以上70 g/cm以下であり、微小硬度計において前記トナーとブレードを一体に加圧変形させる際に得られる変位量−荷重曲線は、変位量a(μm)が変曲点となる下凸形状であり、変位量aにおいて、前記トナーは塑性変形することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナーがコア・シェル構造を持っていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニングブレードが、内部よりも表面の硬度が高い処理を施されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記クリーニングブレードがポリウレタンで形成されており、その表層がイソシアネート処理されていることを特徴とした請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−80075(P2013−80075A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219758(P2011−219758)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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