説明

画像形成装置

【課題】漏れ電流を防止した正確なATVCの実施と、モノカラーモード時における当該ステーション以外の転写部の耐久劣化抑制の両立が可能となり、常に安定した一次転写性が得られるカラー画像形成装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの転写手段14は、転写電源15から印加される転写電圧の電圧及び/又は電流を検知する検知手段17が接続された転写手段であり、画像形成前に、検知手段17が接続されていない転写手段に印加する電圧を複数回変化させて、変化前後の検知手段17が接続された転写手段の電圧及び/又は電流を検知し、検知結果から、画像形成時に検知手段17が接続された転写手段に印加する電圧若しくは電流を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機などの電子写真方式或いは静電記録方式を利用した画像形成装置に関し、より詳細には、複数ある像担持体上のトナー像を中間転写体又は転写材のような被転写体に転写する機構を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中間転写体を用いたカラー画像形成装置において、像担持体である感光体から被転写体である中間転写体へトナー像を転写する一次転写手段の電気抵抗値は、耐久変動や環境変動により変化する。この一次転写手段の電気抵抗変動による転写性の劣化を防止し、適切な一次転写電圧を印加するために転写電圧制御が採用されている。例えば、特許文献1には、ATVCなる転写電圧制御が開示されている。
【0003】
ATVCとは、次のような転写電圧制御方式を言う。つまり、画像形成装置の画像形成動作開始後から中間転写開始前などにおいて、感光体上の非画像部に対し一次転写部を予め設定された値(以下、「ターゲット値」と呼ぶ。)で定電流制御若しくは定電圧制御を行う。このときの発生電圧値、発生電流値の変動により一次転写手段の抵抗変動を検知し、画像形成時には先の発生電圧値若しくは発生電流値を演算処理した結果で、一次転写手段に一定電流が流れ続けるように印加電圧の制御を行うものである。
【0004】
カラー画像形成装置として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の画像形成ステーションを有し、各色を順次重ねて画像形成を行うタンデム方式のカラープリンタがある。以下、各色の画像形成ステーションを、第1ステーション(イエロー)、第2ステーション(マゼンタ)、第3ステーション(シアン)、第4ステーションはブラック(Bk)と呼ぶこととする。
【0005】
カラー画像形成装置では、単色、例えばブラック画像を形成する場合は、第4ステーション以外の画像形成ステーションを停止するモノクロモードを実行可能である。ここで、例えば、第4ステーションの定電流電源をオンし、その他のステーションの電源をオフにして、第4ステーションに対してATVCを行った場合、第4ステーションに通電した電流の一部が、電源回路間や一次転写手段の保持部材間に流れてしまう。以下、この電流を「漏れ電流」と呼ぶ。この漏れ電流は、耐久変動や環境変動により変化するため、適正な転写部の電気抵抗が測定出来ず、ATVCが正常に行われないため、転写不良が発生する可能性があった。漏れ電流を直接検知するためには、漏れの発生する全ての導通部分において、電流検知を行う必要があり、実質的に困難である。
【0006】
以上の漏れ電流による問題を解決し、ATVCの精度を上げるために、従来、以下のような方法が採られていた。
【0007】
特許文献2は、ATVC対象の一次転写手段に隣接する他の一次転写手段にも同時に同電圧を印加し、漏れ電流を抑えてATVCを行うことにより、適切な転写電圧を決定することが可能となる、ことを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−123385号公報
【特許文献2】特開2005−115064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2によれば、漏れ電流を防止した状態でATVC行うことが可能であるものの、例えばモノカラーモードのように第4ステーションだけを画像形成に使用するモードにおいても、ATVCを行った時と同じ状態で画像形成中も隣接する第3ステーションに電圧を印加する必要性が生じる。
【0010】
しかしながら、感光体の耐久劣化、中間転写体や一次転写手段の耐久劣化を抑制するためには、画像形成中に使用しない転写部への電圧印加は行わないことが望ましい。しかし、画像形成時に隣接ステーションに電圧を印加しないと、漏れ電流が発生してATVCを行って決定した状態とは異なる状態となり、第4ステーションの電流値はターゲット値からズレてしまう。そのため、転写不良が発生するという問題があった。
【0011】
以上のように、漏れ電流を防止した正確なATVCの実施と、モノカラーモード時の当該ステーション以外の転写部耐久劣化抑制を両立させるのが困難であるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、漏れ電流を防止した正確なATVCの実施と、モノカラーモード時における当該ステーション以外の転写部の耐久劣化抑制の両立が可能となり、常に安定した一次転写性が得られる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、複数の像担持体と、前記像担持体の各々のトナー像を被転写体に転写する複数の転写手段と、前記転写手段に転写電圧を印加する転写電源と、を有し、
少なくとも一つの前記転写手段は、前記転写電源から印加される転写電圧の電圧及び/又は電流を検知する検知手段が接続された転写手段である画像形成装置において、
画像形成前に、前記検知手段が接続されていない前記転写手段に印加する電圧を複数回変化させて、変化前後の前記検知手段が接続された前記転写手段の電圧及び/又は電流を検知し、前記検知結果から、画像形成時に前記検知手段が接続された前記転写手段に印加する電圧若しくは電流を決定することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、漏れ電流を防止した正確なATVCの実施と、モノカラーモード時における当該ステーション以外の転写部の耐久劣化抑制の両立が可能となり、常に安定した一次転写性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の実施例1における一次転写部の作動を説明する図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の実施例1における作動を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係る画像形成装置の実施例2における一次転写部の作動を説明する図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置の実施例2における作動を説明するフローチャートである。
【図6】本発明に係る画像形成装置の実施例3における作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
実施例1
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成図であり、図1を用いて本実施例の画像形成装置の構成及び動作を説明する。
【0018】
尚、本実施例の画像形成装置は、複数の、本実施例では4色のイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色を順次重ねて画像形成を行うタンデム方式のカラープリンタである。以下、各色の画像形成ステーションを、イエロー(Y)の第1ステーションSa、マゼンタ(M)の第2ステーションSb、シアン(C)の第3ステーションSc、ブラック(Bk)の第4ステーションSdとする。各画像形成ステーションSa〜Sdは同様の構成とされ、同様の作動を行うので、画像形成動作を第1ステーションSaを用いて説明する。
【0019】
(画像形成装置の動作)
第1ステーションSaは、像担持体としてドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)1aを備え、この感光ドラム1aは矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0020】
感光ドラム1aは、この回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性、電位に一様に帯電処理され、次いで像露光手段3aにより像露光を受ける。これにより、目的のカラー画像のイエロー色成分像に対応した静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像は現像位置において第1の現像器(イエロー現像器)4aにより現像され、イエロートナー像として可視化される。
【0021】
ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト10は、張架部材とされるローラ11、12、13に張架され、感光ドラム1aと当接した対向部で感光ドラム1aと同方向に、感光ドラム1と略同一の周速度で回転駆動される。感光ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10との当接部(以下、「一次転写部」という。)18aを通過する過程で、被転写体としての中間転写ベルト10の上に転写される(一次転写)。この時、一次転写手段としての一次転写ローラ14aには一次転写電源15aより一次転写電圧が印加される。感光ドラム1a表面に残留した一次転写残トナーは、クリーニング装置5aにより清掃、除去され、その後、感光ドラム1aは、上記帯電以下の画像形成プロセスに供せられる。
【0022】
以下、同様にして、他の画像形成ステーションSb〜Sdにて第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像が得られる。
【0023】
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と二次転写ローラ20との二次転写部N2を通過する過程で、給紙手段50により給紙された記録材Pの表面に一括転写される(二次転写)。この時、二次転写ローラ20には二次転写電源21により、二次転写電圧が印加される。
【0024】
その後、4色のトナー像を担持した記録材Pは、定着器30に導入され、そこで加熱及び加圧されることにより4色のトナーが溶融混色して記録材Pに固定される。
【0025】
以上の動作により、フルカラーのプリント画像が形成される。
【0026】
また、二次転写後に中間転写ベルト10表面に残留した二次転写残トナーは、ブレード16により回収除去される。
【0027】
(転写構成)
中間転写ベルト10は、樹脂材料に導電剤を添加して導電性を付与した無端状ベルトであり、駆動ローラ11、テンションローラ12、二次転写対向ローラ13の3軸で張架され、テンションローラ12により総圧60Nの張力で張架されている。本実施例の特徴である中間転写ベルト10の構成については、後述する。
【0028】
一次転写ローラ14a〜14dは、外径6mmのニッケルメッキ鋼棒に、体積抵抗率107Ω・cm、厚み3mmに調整したNBRとエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体で覆った外径12mmのものを用いている。中間転写ベルト10を介して感光ドラム1a〜1dに対し、9.8Nの加圧力で当接させ、中間転写ベルト10の回転に伴い、従動して回転する。また、一次転写ローラ14a〜14dと、一次転写電圧電源15a〜15dの間には保護抵抗値R(Ra〜Rd)とされる、本実施例では20MΩの電気抵抗体、即ち、負荷抵抗(保護抵抗)19a〜19dが介在している。
【0029】
本実施例では、以上のような4ドラムのシステム構成において、一次転写電圧の制御に中間転写ベルト10及び一次転写ローラ14a、14b、14c、14dの環境変動、抵抗ムラなどを補正し、安定して最適な電圧を印加できるように、ATVCを採用している。
【0030】
ATVCとは、上述したように、転写電圧制御方式を言う。つまり、ATVCにおいては、画像形成装置の画像形成動作開始後から中間転写開始前などにおいて、感光ドラム上の非画像部に対し一次転写部を予め設定された値、即ち、ターゲット値で定電流制御若しくは定電圧制御を行う。そして、このときの発生電圧値若しくは発生電流値により一次転写手段の抵抗変動を検知し、画像形成時には先の発生電圧値及び/又は発生電流値を演算処理した結果で一次転写部に一定電流が流れ続けるように印加電圧の制御を行うものである。この印加電圧の制御は、定電圧制御若しくは定電流制御のどちらでもよい。本実施例においては、定電流制御を行い抵抗変動を検知し、定電圧制御を行う方式を用いて説明する。
【0031】
モノカラー画像形成時において、画像形成を行わない第4ステーションSd以外の画像形成ステーションSa〜Scにおける感光ドラム1a〜1cや一次転写ローラ14a〜14cは、耐久劣化抑制のため画像形成時に電圧を印加しないことが望ましい。この場合、第4ステーションSdと、隣接する第3ステーションSc間に電位差、即ち、画像形成時電位差が顕著に生じ、第4ステーションSdから漏れ電流が発生する。従って、漏れ電流を抑えた状態でATVCを行い、転写電源電圧を決定しても、画像形成時は漏れ電流が発生し、一次転写部18dに実際に印加される電圧値が適正値からずれてしまい、転写不良が発生する可能性がある。
【0032】
つまり、第1〜第3ステーションSa〜Scに電圧を印加して画像形成を行うと、感光ドラム1a〜1cや一次転写ローラ14a〜14cが耐久劣化する。また、第1〜第3ステーションSa〜Scでの電圧印加をオフにして画像形成を行うと、上述のように、漏れ電流が発生し、適正転写電圧から変動するという問題があった。
【0033】
以上の問題を解決するために、モノカラー画像形成時に第1〜第3ステーションSa〜Scの印加電圧をオフした状態で、適正転写電圧を印加できる形態を説明する。
【0034】
(本実施例1の特徴)
本実施例では、画像形成時に第4のステーションSdに転写電圧を印加し、他の第1〜第3ステーションSa〜Scには転写電圧を印加せずに画像形成を行う画像形成モードにおける一次転写部18dの作動について説明する。
【0035】
つまり、本実施例のような画像形成モードでは、モノカラー画像形成時において、第1、第2、第3ステーションSa、Sb、Scの転写ローラ14a〜14cに電圧を印加することがない。従って、この場合には、第4ステーションSdでATVCを行った際の一次転写部電圧値と画像形成時の一次転写部電圧値が大きく異なる。以下、図2(a)〜(c)を例に説明する。
【0036】
図2(a)にて、不図示の第1、第2ステーションSa、Sb、そして、図示された第3ステーションScに、第4ステーションSdと同じ電圧を印加した状態で、第4ステーションSdに対してATVCを行う。得られた結果の転写電源電圧をV1、その時の一次転写部電圧はVfであったとする。しかしながら、この転写電源電圧V1を用いて、画像形成状態にすると、第4ステーションSdと他ステーションSa〜Sc間に電位差が生じ、主に中間転写ベルト10を伝わって、第4ステーションSdから他ステーションSa〜Scへ漏れ電流が発生する。簡略化すると図2(c)に示した構成となり、一次転写部18dの見かけのインピーダンスが変わり、一次転写部電圧値はATVC時の値と異なってしまう。従って、一次転写部電圧値のずれ分を補正するために、転写電源電圧を設定する必要がある。
【0037】
以下、本実施例における画像形成開始前までの制御を図3に示したフローチャートを例に説明する。
【0038】
最初に、ステップ1では、全ステーションSa〜Sdに対して同じ電圧V0を、即ち、第1〜第3ステーションSa〜Scに対して第4ステーションSdと同じ電圧V0を印加する(図2(a))。これにより、第4ステーションSdから他のステーションSa〜Scへ漏れ電流が発生しない状態で図中に示した電流計(検知手段)17の読み値I4=5.0μAの定電流制御を行う。そして、ステップ2において第4ステーションSdの一次転写部18dのインピーダンスRf4を検知し、第4ステーションSdの画像形成に必要な一次転写電源電圧V4を決定する。本実施例においては、Rf4=10MΩ、V4=300Vであった。
【0039】
次に、ステップ3では、ステップ2で得られた一次転写電源電圧V4を不図示のメモリに格納する。
【0040】
次に、ステップ4では、画像形成時と同様に、第4ステーションSdには電圧V4を印加し、第1、第2、第3のステーションSa、Sb、Scに電圧を印加しない状態にする(図2(b))。そして、図2(c)に示すように、ステップ5では、第4ステーションSdに対してIm4=5.0μAの定電流制御を実施する。そして、ステップ5では、漏れ電流が発生している画像形成時における、第4ステーションSdのインピーダンスRf4と合成抵抗Rgの合成インピーダンスRm(見かけのインピーダンス)の検知を行う。得られた合成インピーダンスRmを、ステップ6で不図示のメモリに格納する。本実施例においてはRm=3.7MΩであった。
【0041】
ステップ7において、ステップ3とステップ6におけるATVCの検知結果をメモリから取り出し、合成インピーダンスRmにかかる電圧値がV4=300Vと略同等になるように第4ステーションの一次転写電源電圧値Vh4を算出する。本実施例の構成における計算式は、以下の関係式(1)、(2)、(3)より算出可能である。
Vf4=V4×Rf4/(R+Rf4) (1)
Vf4:ステップ2における一次転写部電圧値
R:保護抵抗値20MΩ
Vm4=Vh4×Rm/(R+Rm) (2)
Vm4:ステップ6における一次転写部電圧値
Vf4=Vm4 (3)
以上の式から、Vh4=V4×Rf4(Rm+R)/Rm(Rf4+R)となり、Vh4=640Vという結果が得られた。
【0042】
ステップ8で、第4ステーションSdの一次転写電源15dにVh4=640Vを印加し、画像形成を開始する。
【0043】
つまり、本実施例によれば、画像形成前に転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに電圧を印加した際に生じる電位差の絶対値を、画像形成時に生じる電位差の絶対値よりも小さくなるように、転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに電圧が印加される。
【0044】
また、このような転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに印加される転写電源電圧は、転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに電圧(V4)を印加した際の、転写ローラ14dのインピーダンス(Rf4)の検知結果と、画像形成時における転写ローラ14dのインピーダンス(Rm)の検知結果と、電気抵抗体19dの抵抗値(R)を用いて、上述のようにして算出することができる。
【0045】
このような構成とすることにより、本実施例では、一次転写部電圧を適正な値に補正することが可能となる。
【0046】
本実施例では、定電流制御を行い抵抗変動を検知し、定電圧制御にて転写電圧を制御する方式について説明した。本発明は、この方式に限定されるものではなく、定電流制御を行い抵抗変動を検知し、定電流制御にて転写電圧を制御する方式を採用することもできる。
【0047】
このように、本発明によれば、画像形成装置は、複数の画像形成ステーションSa〜Sdを有し、各ステーションには感光ドラム1a〜1dが設けられ、トナー像が形成される。感光ドラム1a〜1dの各々のトナー像は、中間転写ベルト10とされる被転写体に、転写電源15a〜15dによりそれぞれ転写電圧が印加される転写ローラ14a〜14dにより転写される。
【0048】
ここで、モノカラーモード時には、少なくとも一つの転写ローラ、例えば、第4のステーションSdの転写ローラ14dは、転写電源15dから印加される転写電圧の電圧及び/又は電流を検知する電流計17等を有する検知手段が接続されている。本発明によれば、斯かる構成にて、画像形成前に、転写ローラ14d以外の、即ち、検知手段が接続された転写手段以外の他の転写手段、即ち、転写ローラ14a〜14cに印加する電圧を複数回変化させて、変化前後の転写ローラ14dの電圧及び/又は電流を検知し、この検知結果から、画像形成の対象となる転写ローラ14dに印加する電圧若しくは電流を決定する。
【0049】
従って、本発明によれば、漏れ電流を防止した正確なATVCの実施と、モノカラーモード時における当該ステーション以外の転写部の耐久劣化抑制の両立が可能となり、常に安定した一次転写性を得ることができる。
【0050】
実施例2
本実施例では、画像形成時に第4のステーションの転写ローラ14dに電圧を印加し、また、他の第1〜第3ステーションSa〜Scの転写ローラ14a〜14cにも電圧を印加して画像形成を行う際の一次転写部18dの作動について説明する。
【0051】
つまり、本実施例のような画像形成モードでは、モノカラー画像形成時において、画像形成を行わない、第4ステーションSd以外の他のステーションSa〜Scの感光ドラム1a〜1cが帯電している。従って、この場合、一次転写ローラ14a〜14cと感光ドラム1a〜1cに電位差が生じ、一次転写ローラ14a〜14cや感光ドラム1a〜1cに電流が流れ、耐久劣化する可能性がある。
【0052】
従って、本実施例2では、一次転写ローラ14a〜14cと感光ドラム1a〜1cに電流を流れさせず耐久劣化抑制をし、適正転写電圧を印加できる実施形態を提案する。
【0053】
実施例2における画像形成装置は、実施例1の図1を参照して説明した画像形成装置と同様の構成を採用するため、画像形成装置の構成、動作説明は、実施例1の説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0054】
以下、本実施例2における制御を、図4(a)〜(c)に示した第3、第4ステーションSc、Sdの簡易回路図と、図5に示したフローチャートを例に説明する。
【0055】
最初に、ステップ1では、全ステーションSa〜Sdに対して同じ電圧V0を,即ち、第1〜第3ステーションSa〜Scに対して第4ステーションSdと同じ電圧V0を印加する(図4(a))。これにより、第4ステーションSdから他のステーションSa〜Scへ漏れ電流が発生しない状態でI4=5.0μAの定電流制御を行う。
【0056】
そして、ステップ2において、第4ステーションSdの一次転写部18dのインピーダンスRf4を検知し、第4ステーションSdの画像形成に必要な一次転写電源電圧V4を決定する。本実施例においては、Rf4=10MΩ、V4=300Vであった。
【0057】
次にステップ3では、ステップ2で得られた一次転写電源電圧V4を不図示のメモリに格納する。
【0058】
次に、ステップ4では、第1、第2、第3のステーションSa、Sb、Scの転写ローラ15a〜15cに−800Vの電圧を印加する(図4(b))。本実施例では、感光ドラム1a、1b、1cも−800Vに帯電しており、感光ドラム1cと一次転写ローラ14c間に電位差は発生しない。しかしながら、第4ステーションSdとその他のステーションSa〜Scの印加電圧差は1100Vとなり、漏れ電流が発生する。
【0059】
ステップ5では、第4ステーションSdに対してIm4=5.0μAの定電流制御を実施し、漏れ電流が発生している画像形成時における、第4ステーションSdのインピーダンスRf4と合成抵抗Rgの合成インピーダンスRm(見かけのインピーダンス)の検知を行う(図4(c))。そして、ステップ6で合成インピーダンスRmを不図示のメモリに格納する。本実施例においてはRm=1.67MΩであった。
【0060】
ステップ7において、ステップ3とステップ6におけるATVCの検知結果をメモリから取り出し、合成インピーダンスRmにかかる電圧値がV4=300Vと略同等になるように第4ステーション一次転写電源電圧値Vh4を算出する。本実施例の構成における計算式は、以下の関係式(1)、(2)、(3)より算出可能である。
Vf4=V4×Rf4/(R+Rf4 ) (1)
Vf4:ステップ2における一次転写部電圧値
R:保護抵抗値20MΩ
Vm4=Vh4×Rm/(R+Rm) (2)
Vm4:ステップ6における一次転写部電圧値
Vf4=Vm4 (3)
以上の式から、Vh4=V4×Rf4(Rm+R)/Rm(Rf4+R)となり、Vh4=1300Vという結果が得られた。
【0061】
ステップ8で、第4ステーションSdの一次転写電源15dにVh4=1300Vを印加し、画像形成を開始する。
【0062】
つまり、本実施例によれば、画像形成前に転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに電圧を印加した際に生じる電位差の絶対値を、画像形成時に生じる電位差の絶対値よりも小さくなるように、転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに電圧が印加される。
【0063】
また、このような転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに印加される転写電源電圧は、転写ローラ14dと他の転写ローラ14a〜14cに電圧(V4)を印加した際の、転写ローラ14dのインピーダンス(Rf4)の検知結果と、画像形成時における転写ローラ14dのインピーダンス(Rm)の検知結果と、電気抵抗体19dの抵抗値(R)を用いて、上述のようにして算出することができる。
【0064】
このような構成とすることにより、本実施例では、一次転写部電圧を適正な値に補正することが可能となる。
【0065】
本実施例においても、実施例1と同様の変更実施例が可能であり、また、実施例1で説明したと同様の作用効果を達成し得る。
【0066】
実施例3
実施例2のように第4ステーションSdと他ステーションSa〜Scの電位差が大きい時に、使用環境によっては漏れ電流と電位差に対して漏れ電流が線形的に増加しないことがある。このように、見かけのインピーダンスRmに電圧依存性がある場合、ATVCの精度を上げるためには、数多くATVCを行う必要がある。本実施例3では、実施例2の構成において、さらにATVCの精度を上げるために、ATVCを3回行う制御を提案する。
【0067】
本実施例3における画像形成装置は実施例1の図1と同様であり、第3、第4ステーションSc、Sdの簡易回路図は、実施例2の図4(a)〜(c)と同様の構成を採用するため、説明を省略する。
【0068】
以下、本実施例3における制御を、図6に示したフローチャートを例に説明する。
【0069】
最初に、ステップ1では、全ステーションSa〜Sdに対して同じ電圧V0を、即ち、第1〜第3ステーションSa〜Scに対して第4ステーションSdと同じ電圧V0を印加する(図4(a))。これにより、第4ステーションSdから他のステーションSa〜Scへ漏れ電流が発生しない状態でI4=5.0μAの定電流制御を行う。
【0070】
そして、ステップ2において第4ステーションSdの一次転写部インピーダンスRf4を検知し、第4ステーションSdの画像形成に必要な一次転写電源電圧V4を決定する。本実施例においては、Rf4=10MΩ、V4=300Vであった。
【0071】
次に、ステップ3では、ステップ2で得られた一次転写電源電圧V4を不図示のメモリに格納する。
【0072】
次に、ステップ4では、第1、第2、第3のステーションSa、Sb、Scの転写ローラ15a〜15cに−800Vの電圧を印加する(図4(b))。本実施例では、感光ドラム1a〜1cも−800Vに帯電しており、感光ドラム1cと一次転写ローラ14c間に電位差は発生しない。しかしながら、第4ステーションSdとその他のステーションSa〜Scの印加電圧差は1100Vとなり、漏れ電流が発生する。
【0073】
ステップ5では、第4ステーションSdに対して5.0μAの定電流制御を実施する。そして、第1、第2、第3のステーションSa、Sb、Scに電圧−800V印加した時の、第4ステーションSdのインピーダンスRf4と合成抵抗Rgの合成インピーダンスRm1(見かけのインピーダンス)の検知を行う。そして、ステップ6で合成インピーダンスRm1を不図示のメモリに格納する。本実施例においてはRm1=1.67MΩであった。
【0074】
抵抗値の電圧依存性が懸念されるため、ステップ7では、第1、第2、第3のステーションSa、Sb、Scに電圧−1100Vを印加する。
【0075】
ステップ8において、第4ステーションSdに5.0μAの定電流制御を行う。そして、ステップ9でインピーダンスRf4と合成抵抗Rgの合成インピーダンスRm2(見かけのインピーダンス)の検知を行い不図示のメモリに格納する。本実施例においてはRm2=1.17MΩであった。
【0076】
ステップ10において、ステップ6とステップ9における合成インピーダンス検知結果Rm1とRm2をメモリから取り出し、Rm1とRm2の値の平均合成インピーダンスRm0を算出しメモリに格納する。この算出結果は1.42MΩであった。
【0077】
ステップ11において、ステップ3とステップ10におけるATVCの検知結果をメモリから取り出し、合成インピーダンスRm0にかかる電圧値がV4=300Vと略同等になるように第4ステーションSdの一次転写電源電圧値Vh4を算出する。本実施例の構成における計算式は、以下の関係式(1)、(2)、(3)より算出可能である。
Vf4=V4×Rf4/(R+Rf4) (1)
Vf4:ステップ2における一次転写部電圧値
R:保護抵抗値20MΩ
Vm4=Vh4×Rm0/(R+Rm0) (2)
Vm4:ステップ6における一次転写部電圧値
Vf4=Vm4 (3)
以上の式から、Vh4=V4×Rf4(Rm0+R)/Rm0(Rf4+R)となり、Vh4=1500Vという結果が得られた。
【0078】
ステップ12で、第4ステーションSdの一次転写電源15dにVh4=1500Vを印加し、画像形成を開始する。
【0079】
以上の説明にて理解されるように、本実施例では、精度の高いー次転写部電圧適正値補正が可能となる。
【0080】
本実施例においても、実施例1、2と同様の変更実施例が可能であり、また、実施例1、2で説明したと同様の作用効果を達成し得る。
【0081】
上記各実施例では、本発明は、被転写体として中間転写体を備え、感光ドラムのトナー像を一旦この中間転写体に転写し、その後、中間転写体のトナー像を転写材に転写する中間転写方式の画像形成装置であるとして説明した。本発明は、この構成の画像形成装置に限定されるものではなく、感光ドラムのトナー像を、転写材搬送手段により搬送される被転写体としての転写材に直接転写する画像形成装置であってもよい。斯かる画像形成装置の構成は、当業者には周知であるので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【符号の説明】
【0082】
1 感光ドラム(像担持体)
2 帯電ローラ(帯電手段)
3 像露光手段
4 現像器(現像手段)
10 中間転写ベルト(被転写体)
14 一次転写ローラ(一次転写手段)
15 一次転写電源
17 電流計(電流検知手段)
18 一次転写部
20 二次転写ローラ(二次転写手段)
21 二次転写電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の像担持体と、前記像担持体の各々のトナー像を被転写体に転写する複数の転写手段と、前記転写手段に転写電圧を印加する転写電源と、を有し、
少なくとも一つの前記転写手段は、前記転写電源から印加される転写電圧の電圧及び/又は電流を検知する検知手段が接続された転写手段である画像形成装置において、
画像形成前に、前記検知手段が接続されていない前記転写手段に印加する電圧を複数回変化させて、変化前後の前記検知手段が接続された前記転写手段の電圧及び/又は電流を検知し、前記検知結果から、画像形成時に前記検知手段が接続された前記転写手段に印加する電圧若しくは電流を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像形成時に前記検知手段が接続された前記転写手段に電圧を印加し、前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電圧を印加せず、前記検知手段が接続された前記転写手段と前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電位差が生じる画像形成モードにおいて、
画像形成前に前記検知手段が接続された前記転写手段と前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電圧を印加した際に生じる電位差の絶対値を、前記画像形成時に生じる電位差の絶対値よりも小さくなるように、それぞれの前記転写手段に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像形成時に前記検知手段が接続された前記転写手段と前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電圧を印加し、前記検知手段が接続された前記転写手段と前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電位差が生じる画像形成モードにおいて、
画像形成前に前記検知手段が接続された前記転写手段と前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電圧を印加した際に生じる電位差の絶対値を、前記画像形成時に生じる電位差の絶対値よりも小さくなるように、前記検知手段が接続された前記転写手段と前記検知手段が接続されていない前記転写手段に電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写手段と前記転写電源の間に所定の電気抵抗体を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83779(P2013−83779A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223285(P2011−223285)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】