画像形成装置
【課題】吸引ファンの水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】用紙Pに向けてインクを吐出して用紙Pに画像を記録する記録ヘッド50と、記録ヘッド50とのインク吐出領域を用紙Pが通過するように用紙Pを搬送する搬送ベルト43とを備え、吸引ファン44により負圧を発生して搬送ベルト43に用紙Pを吸着させる画像形成装置100において、吸引ファン44に流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段71と、この駆動電流検知手段71が検知した駆動電流の変化に応じて、吸引ファン44に印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段72と、を備える。
【解決手段】用紙Pに向けてインクを吐出して用紙Pに画像を記録する記録ヘッド50と、記録ヘッド50とのインク吐出領域を用紙Pが通過するように用紙Pを搬送する搬送ベルト43とを備え、吸引ファン44により負圧を発生して搬送ベルト43に用紙Pを吸着させる画像形成装置100において、吸引ファン44に流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段71と、この駆動電流検知手段71が検知した駆動電流の変化に応じて、吸引ファン44に印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段72と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引ファンにより負圧を形成した搬送ベルトにより記録媒体を吸着して搬送し、搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置においては、記録媒体を搬送ベルトに確実に吸着するために必要な画像記録部周囲の圧力と搬送ベルトの周辺の圧力の差圧が最小限になるように吸引ファンの風量を制御するとともに、画像記録部および搬送ベルトに設けたエアダンパで圧力を抑制するよう構成することにより、記録媒体先端部のエア流等によりインク着弾位置精度が悪化して画像品質が劣化することを抑制するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、インク着弾位置のズレを抑制するために、記録媒体を吸引により固定する負圧形成部以外に、画像記録部に設けるエア流発生部、画像記録部と媒体固定部を覆うカバー、さらに画像記録部と媒体固定部にエアダンパを設けているため、非常に複雑な構成と制御が必要になってしまうという問題があった。
【0004】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、吸引ファンの水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に向けてインクを吐出して前記記録媒体に画像を記録するインク吐出手段と、前記インク吐出手段のインク吐出領域を前記記録媒体が通過するように前記記録媒体を搬送する搬送ベルトと、吸引ファンにより負圧を発生して前記搬送ベルトに前記記録媒体を吸着させる吸着手段と、を備えた画像形成装置において、前記吸引ファンに流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段と、前記駆動電流検知手段が検知した駆動電流の変化に応じて、前記吸引ファンに印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸引ファンの水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部における吸引ファンの駆動電流検知による駆動電圧制御について説明するフロー図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送待機時の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送待機時における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送開始時の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送開始時における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送中の状態を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送中における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送終了時の状態を示す側面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送終了時における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の変形例を示す側面図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の他の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1、図2に示すように、画像形成装置100は、ライン型画像形成装置として構成されており、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッド50を有するヘッド部5と、印刷終了後又は所定のタイミングでヘッド部5の各記録ヘッド50の維持回復を行う維持回復機構としてのメンテナンス装置6と、メンテナンス装置6の図示しないキャップ部材、ワイパ部材(ブレード手段)を清掃(クリーニング)するワイパ清掃手段としてのクリーナ装置7を備えている。
【0010】
装置本体1は、図示しない前後側板およびステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21および給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙されるようになっている。
【0011】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これら搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bの間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない吸引穴が形成されており、搬送ベルト43の下部には、負圧を発生して搬送ベルト43に用紙Pを吸着する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41Aおよび搬送従動ローラ41Bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42Aおよび搬送ガイドローラ42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にて搬送ベルト43に当接している。
【0012】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって、記録ヘッド50のインク吐出領域を通過するように搬送されるようになっている。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43により従動回転するようになっている。なお、本実施の形態では、無端状の搬送ベルト43をその表面が無端移動するように構成しているが、これに限らず、例えば、搬送ベルト43を、2つのローラの一方により巻き出して他方のローラにより巻き取るように構成し、これら2つのローラの回転によりその表面が移動するようにしてもよい。
【0013】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッド101を有するヘッド部5が移動可能(本実施の形態では昇降移動可能)に配置されている。このヘッド部5は、維持回復動作時(メンテナンス時)には、メンテナンス装置6がヘッド部5の下方まで進入してくるスペースを確保する位置まで上昇するようになっている。
【0014】
ヘッド部5は、ヘッド保持部材であるベース部材52に一列に配列した複数(この例では5個)のヘッド101で構成される4つのヘッド列51A〜51D(以下、単にヘッド列51ともいう)を有する記録ヘッド50を備えている。ヘッド101においては、液滴を吐出する複数のノズルがノズル面に2列配列されている。
【0015】
そして、ヘッド列51A、51Bの各ヘッド101の2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッド列51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。すなわち、ヘッド部5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッド列51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッド列51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている。本実施の形態では、150dpiの画像1ラインとしている。
【0016】
なお、各色のライン構成は、上記に限るものではなく、各色の配置は特に限定はない。また、ヘッド部5の構成も、この例に限るものではなく、例えば上記のヘッド部5を2個並べて1ヘッド列に1色を割り当てて、画像解像度を上記の2倍にした構成等としてもよい。
【0017】
また、ヘッド部5においては、記録ヘッド50の各ヘッド101にインクをそれぞれ供給する図示しない分岐部材が各色ごとに配列され、分岐部材の上流側には、図示しないサブタンクが配置され、サブタンクとヘッド101との水頭差によって、ヘッド101のノズルのメニスカスを保持するのに適切な負圧が形成される。さらに、サブタンク上流側には、インクを貯蔵する交換可能な図示しないメインタンクが配置されている。
【0018】
搬送ユニット4の下流側には、用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド45が配置されている。搬送ガイド45にて搬送された用紙Pは排紙トレイ3に排紙されるようになっている。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と、用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32とを備えている。
【0019】
搬送ユニット4の上方でヘッド部5の側方には、ヘッド101のノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置6が配置されている。メンテナンス装置6は、ヘッド列51A〜51Dの各ヘッド101に対応してノズル面をキャッピングするキャップ61と、各ヘッド101に対応してノズル面をワイピングするブレード状の図示しないワイパ部材(ワイパブレード)と、1列分のキャップ61内を吸引する図示しない吸引手段などを有している。
【0020】
このメンテナンス装置6は、キャップ61にてヘッド101のノズル面を密閉した状態で吸引手段によって吸引することでノズルから増粘したインクを排出させてヘッド101の吐出性能を回復させるようになっている。
【0021】
なお、メンテナンス装置6の吸引手段63やキャップ61と吸引手段をつなぐ流路、その他圧力室等は、装置本体1の後側板の外側に配置し、チューブ等の経路を使用して接続することもできる。また、維持回復時に吸引に代えて、あるいは吸引とともに、ヘッド101の上流側から加圧手段によってヘッド101内を加圧する構成とすることもできる。
【0022】
このメンテナンス装置6は、搬送ユニット4の上方で用紙搬送方向に沿ってスライド移動可能に配置され、ヘッドメンテナンス時にはヘッド部5が上昇した後、ヘッド部5の下部に移動し、印字中は図1に示す位置に退避する。
【0023】
メンテナンス装置6の上部には、キャップ61および図示しないワイパブレードに付着した液滴(廃液)を清掃するクリーナ装置7が配置されている。このクリーナ装置7は、図示しないクリーナ移動手段によって用紙搬送面に対して鉛直方向に上下移動可能に配置されている。
【0024】
ヘッド101のメンテナンスが終了したメンテナンス装置6がヘッド部5の側方に退避した状態において、クリーナ装置7が下降移動し、キャップ61およびワイパブレードを清掃するようになっている。
【0025】
また、本実施の形態では、画像形成装置100は、吸引ファン44に流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段71と、この駆動電流検知手段71が検知した駆動電流の変化に応じて、吸引ファン44に印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段72と、を備えている。
【0026】
ここで、図3のフロー図を参照して、吸引ファン44の駆動電流検知による駆動電圧制御(切り替え)について説明する。
【0027】
まず、印刷を開始すると、吸引ファン44の駆動電圧を低い電圧V1に設定する(ステップS1)。ステップS1においては、用紙Pを搬送しない場合、搬送ベルト43による吸引力は必要無いため、記録ヘッド50の直下の水平方向の気流が吐出位置ズレに影響を与えない程度の低い吸引力になるよう低い電圧V1に設定している。
【0028】
なお、記録ヘッド50の直下の水平方向の気流は、吸引ファン44に吸引される空気が記録ヘッド50と搬送ベルト43の間の狭い空間を通って外部から流入することにより発生している。
【0029】
ついで、指定された印刷枚数に達したか否か判断し(ステップS2)、指定印刷枚数を超えた場合は印刷を終了し、指定印刷枚数以下の場合はステップS3に進む。
【0030】
ステップS3では、駆動電流検知手段71により検知された駆動電流の変化が閾値以上か判断し、閾値未満の場合はステップS2に戻り、閾値以上の場合はステップS4に進む。
【0031】
このステップS3においては、用紙Pが給紙前の場合、および用紙Pの全面が搬送ベルト43上にある場合は、吸引ファン44の駆動負荷は一定となり、吸引ファン44の駆動電流はほとんど変化しないため、ステップS2に戻り、駆動電圧の切り替えを行わない。
【0032】
ここで、前述の場合以外の給紙が開始されて搬送ベルト43の吸引口を塞ぎ始めたときと、印字がほぼ終わり用紙Pが排紙され始めて搬送ベルト43の吸引孔を開放し始めたときは、搬送ベルト43の吸引口の開口面積が変化して吸引ファン44の駆動負荷が変化し、吸引ファン44の駆動電流が変化する。ステップS3においては、吸引ファン44の駆動電流の変化量が予め設定された閾値以上か否かを判断している。
【0033】
ステップS4では、吸引ファン44の駆動電流変化が上昇か下降かを判断し、上昇の場合にはステップS6に進み、下降の場合にはステップS5に進む。
【0034】
このステップS4においては、吸引ファン44の駆動電流変化が下降変化の場合には、印字がほぼ終了し用紙Pの排紙が始ったこととなるため、吸引ファン44の吸引力を下げるために駆動電圧を下げるようステップS5に進むようになっている。
【0035】
また、このステップS4においては、吸引ファン44の駆動電流変化が上昇変化の場合には、新たに用紙Pが給紙されたこととなるため、吸引ファン44の吸引力を上げるために駆動電圧を上げるようステップS6に進むようになっている。
【0036】
ステップS5では、吸引ファン44の駆動電圧を低い電圧V1に設定(すなわちステップS1で設定済みの電圧V1を維持)し、ステップS2に戻り、ステップS6では、吸引ファン44の駆動電圧を高い電圧V2に設定し、ステップS2に戻る。なお、このフロー図において、ステップS3〜ステップS6の処理は、駆動電圧切り替え手段72により実行される。
【0037】
図4、図5に示すように、用紙搬送待機時は、吸引ファン44が低い電圧V1で駆動されている。すなわち、用紙搬送待機時は、搬送ベルト43上に用紙Pが無いため、搬送ベルト43の吸引口はすべて開口されており、吸引ファン44には吸引負荷がほとんどかからないため、吸引ファン44は低い電圧V1のまま駆動されている。
【0038】
電圧V1は、用紙Pを搬送ベルト43に吸着する最小限の吸引ができる電圧であるため、吸引ファン44の吸引により発生する記録ヘッド50の直下の水平方向気流はほとんど発生しない。
【0039】
図6、図7に示すように、用紙搬送開始時は、搬送された用紙Pにより搬送ベルト43の吸引口が覆われるのに伴って吸引ファン44の負荷が増加し吸引ファン44の駆動電流が増加する。駆動電流検知手段71が所定の閾値Δi以上の電流値上昇を検知すると、駆動電圧切り替え手段72は吸引ファン44の駆動電圧を高い電圧V2に切り替える。
【0040】
前記電圧V2は、用紙Pの搬送に必要な用紙吸着力が得られる電圧に設定されているので、吸引ファン44の吸引力により用紙Pの位置ズレや浮きの発生しない確実な用紙搬送が開始される。また、用紙搬送開始時には、用紙Pにより覆われる吸引口の面積が増加していくので、記録ヘッド50の直下に発生する水平方向の気流が抑制される。
【0041】
図8、図9に示すように、用紙搬送中は、搬送中の用紙Pに記録ヘッド50の直下の吸引口が覆われており、吸引ファン44の吸引負荷に大きな変動はなく、用紙搬送開始時に設定された吸引ファン44の電圧V2のまま駆動されるため、吸引ファン44の吸引により位置ズレや浮きの発生しない確実な吸引搬送が行われる。用紙搬送中は、記録ヘッド50の直下の吸引口は用紙Pにより覆われているため、記録ヘッド50の直下には、吸引ファン44の吸引による水平方向の気流は発生しない。
【0042】
図10、図11に示すように、用紙搬送終了時には、搬送ベルト43の吸引口の覆われている面積が用紙Pの搬送とともに減少し、吸引ファン44の駆動負荷も同様に減少し、吸引ファン44の駆動電流が低下していく。
【0043】
駆動電流検知手段71が所定の閾値Δi以上の電流値低下を検知すると、駆動電圧切り替え手段72は吸引ファン44の駆動電圧を低い電圧V1に切り替える。この電圧V1は、用紙Pを吸着する最低限の駆動電圧に設定されているため、記録ヘッド50の直下の吸引ファン44の吸引による水平方向気流を抑制された状態で次の用紙Pの搬送に備えることとなる。
【0044】
図12に示すように、吸引ファン44をそれぞれ収容する独立した負圧形成室74を用紙搬送方向に複数設けることにより、用紙Pが搬送されるに従って用紙Pで覆われた部分の負圧形成室74の吸引ファン44の駆動電圧のみが高い電圧V2で駆動され、それ以外の部分の負圧形成室74の吸引ファン44は低い電圧V1で駆動されるため、ヘッド直下に生じる水平方向気流をさらに抑制することができる。
【0045】
図12において、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74は、用紙搬送方向に6個設けられており、これら6つの負圧形成室74の吸引ファン44は、独立して駆動制御されるようになっている。
【0046】
図13に示すように、用紙搬送方向および用紙搬送方向に直角な方向(幅方向)に、吸引ファン44それぞれ収容する独立した負圧形成室74をマトリックス状に複数設けることにより、用紙Pの搬送位置や用紙サイズ(幅、長さ)に対応して、用紙Pに覆われていない部分の負圧形成室74の吸引ファン44が低い電圧V1で駆動されるため、用紙Pの位置、サイズに影響されることなく、記録ヘッド50の直下の水平方向気流をさらに低減することができる。
【0047】
図13において、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74は、用紙搬送方向に6列、および用紙搬送方向に直角な方向(幅方向)に7列となる合計42個設けられており、これら6つの負圧形成室の吸引ファン44は、独立して駆動制御されるようになっている。
【0048】
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置100は、吸引ファン44に流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段71と、この駆動電流検知手段71が検知した駆動電流の変化に応じて、吸引ファン44に印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段72と、を備えることを特徴とする。
【0049】
この構成により、用紙Pの搬入および搬出等に伴って吸引ファン44の負荷および駆動電流が変化したとき、駆動電圧切り替え手段72は、水平方向気流を抑制するよう吸引ファン44の駆動電圧を切り替えることができる。したがって、吸引ファン44の水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる。また、シンプルな構成となるため、コストを低減することができる。また、吸引動作が必要なとき以外の吸引ファン44の消費電流を低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、駆動電圧切り替え手段72は、駆動電流検知手段71が検知する駆動電流が上昇すると、駆動電圧を高い電圧に切り替えることを特徴とする。
【0051】
この構成により、吸引ファン44の吸引力により用紙Pの位置ズレや浮きの発生しない確実な用紙搬送が開始される。また、用紙搬送開始時には、用紙Pにより覆われる吸引口の面積が増加していくので、吸引ファン44の吸引により記録ヘッド50の直下に発生する水平方向の気流が抑制される。
【0052】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、駆動電圧切り替え手段72は、駆動電流検知手段71が検知する駆動電流が下降すると、駆動電圧を低い電圧に切り替えることを特徴とする。
【0053】
この構成により、吸引ファン44の吸引により記録ヘッド50の直下に発生する水平方向の気流が抑制された状態で次の用紙Pの搬送に備えることができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、吸着手段は、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74を、用紙搬送方向に複数配置したものから構成されることを特徴とする。
【0055】
この構成により、用紙Pが搬送されるに従って用紙Pで覆われた部分の負圧形成室74の吸引ファン44の駆動電圧のみが高い電圧V2に切り替えられ、それ以外の部分の負圧形成室74の吸引ファン44は低い電圧V1で駆動されるため、記録ヘッド50の直下に生じる水平方向気流をさらに抑制することができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、吸着手段は、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74を、用紙搬送方向およびこの用紙搬送方向に直行する方向にマトリックス状に複数配置したものから構成されることを特徴とする。
【0057】
この構成により、用紙Pの搬送位置や用紙サイズ(幅、長さ)に対応して、用紙Pに覆われていない部分は、低い電圧V1で吸引ファン44が吸引されるため、用紙Pの位置、サイズに影響されることなく、記録ヘッド50の直下の水平方向気流をさらに低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 装置本体
4 搬送ユニット
5 ヘッド部
43 搬送ベルト
44 吸引ファン(吸着手段)
45 搬送ガイド
50 記録ヘッド(インク吐出手段)
51 ヘッド列
52 ベース部材
63 吸引手段
71 駆動電流検知手段
72 駆動電圧切り替え手段
74 負圧形成室
100 画像形成装置
101 ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2006−240185号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引ファンにより負圧を形成した搬送ベルトにより記録媒体を吸着して搬送し、搬送された記録媒体にインクを吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置においては、記録媒体を搬送ベルトに確実に吸着するために必要な画像記録部周囲の圧力と搬送ベルトの周辺の圧力の差圧が最小限になるように吸引ファンの風量を制御するとともに、画像記録部および搬送ベルトに設けたエアダンパで圧力を抑制するよう構成することにより、記録媒体先端部のエア流等によりインク着弾位置精度が悪化して画像品質が劣化することを抑制するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、インク着弾位置のズレを抑制するために、記録媒体を吸引により固定する負圧形成部以外に、画像記録部に設けるエア流発生部、画像記録部と媒体固定部を覆うカバー、さらに画像記録部と媒体固定部にエアダンパを設けているため、非常に複雑な構成と制御が必要になってしまうという問題があった。
【0004】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、吸引ファンの水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に向けてインクを吐出して前記記録媒体に画像を記録するインク吐出手段と、前記インク吐出手段のインク吐出領域を前記記録媒体が通過するように前記記録媒体を搬送する搬送ベルトと、吸引ファンにより負圧を発生して前記搬送ベルトに前記記録媒体を吸着させる吸着手段と、を備えた画像形成装置において、前記吸引ファンに流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段と、前記駆動電流検知手段が検知した駆動電流の変化に応じて、前記吸引ファンに印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸引ファンの水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部における吸引ファンの駆動電流検知による駆動電圧制御について説明するフロー図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送待機時の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送待機時における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送開始時の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送開始時における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送中の状態を示す側面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送中における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送終了時の状態を示す側面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の用紙搬送終了時における吸引ファンの駆動電圧および駆動電流を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の変形例を示す側面図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の搬送部の他の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1、図2に示すように、画像形成装置100は、ライン型画像形成装置として構成されており、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッド50を有するヘッド部5と、印刷終了後又は所定のタイミングでヘッド部5の各記録ヘッド50の維持回復を行う維持回復機構としてのメンテナンス装置6と、メンテナンス装置6の図示しないキャップ部材、ワイパ部材(ブレード手段)を清掃(クリーニング)するワイパ清掃手段としてのクリーナ装置7を備えている。
【0010】
装置本体1は、図示しない前後側板およびステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21および給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙されるようになっている。
【0011】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これら搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bの間に掛け回された無端状の搬送ベルト43とを備えている。この搬送ベルト43の表面には複数の図示しない吸引穴が形成されており、搬送ベルト43の下部には、負圧を発生して搬送ベルト43に用紙Pを吸着する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41Aおよび搬送従動ローラ41Bの上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42Aおよび搬送ガイドローラ42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にて搬送ベルト43に当接している。
【0012】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって、記録ヘッド50のインク吐出領域を通過するように搬送されるようになっている。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43により従動回転するようになっている。なお、本実施の形態では、無端状の搬送ベルト43をその表面が無端移動するように構成しているが、これに限らず、例えば、搬送ベルト43を、2つのローラの一方により巻き出して他方のローラにより巻き取るように構成し、これら2つのローラの回転によりその表面が移動するようにしてもよい。
【0013】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッド101を有するヘッド部5が移動可能(本実施の形態では昇降移動可能)に配置されている。このヘッド部5は、維持回復動作時(メンテナンス時)には、メンテナンス装置6がヘッド部5の下方まで進入してくるスペースを確保する位置まで上昇するようになっている。
【0014】
ヘッド部5は、ヘッド保持部材であるベース部材52に一列に配列した複数(この例では5個)のヘッド101で構成される4つのヘッド列51A〜51D(以下、単にヘッド列51ともいう)を有する記録ヘッド50を備えている。ヘッド101においては、液滴を吐出する複数のノズルがノズル面に2列配列されている。
【0015】
そして、ヘッド列51A、51Bの各ヘッド101の2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッド列51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。すなわち、ヘッド部5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッド列51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッド列51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている。本実施の形態では、150dpiの画像1ラインとしている。
【0016】
なお、各色のライン構成は、上記に限るものではなく、各色の配置は特に限定はない。また、ヘッド部5の構成も、この例に限るものではなく、例えば上記のヘッド部5を2個並べて1ヘッド列に1色を割り当てて、画像解像度を上記の2倍にした構成等としてもよい。
【0017】
また、ヘッド部5においては、記録ヘッド50の各ヘッド101にインクをそれぞれ供給する図示しない分岐部材が各色ごとに配列され、分岐部材の上流側には、図示しないサブタンクが配置され、サブタンクとヘッド101との水頭差によって、ヘッド101のノズルのメニスカスを保持するのに適切な負圧が形成される。さらに、サブタンク上流側には、インクを貯蔵する交換可能な図示しないメインタンクが配置されている。
【0018】
搬送ユニット4の下流側には、用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド45が配置されている。搬送ガイド45にて搬送された用紙Pは排紙トレイ3に排紙されるようになっている。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と、用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32とを備えている。
【0019】
搬送ユニット4の上方でヘッド部5の側方には、ヘッド101のノズル面をメンテナンスするメンテナンス装置6が配置されている。メンテナンス装置6は、ヘッド列51A〜51Dの各ヘッド101に対応してノズル面をキャッピングするキャップ61と、各ヘッド101に対応してノズル面をワイピングするブレード状の図示しないワイパ部材(ワイパブレード)と、1列分のキャップ61内を吸引する図示しない吸引手段などを有している。
【0020】
このメンテナンス装置6は、キャップ61にてヘッド101のノズル面を密閉した状態で吸引手段によって吸引することでノズルから増粘したインクを排出させてヘッド101の吐出性能を回復させるようになっている。
【0021】
なお、メンテナンス装置6の吸引手段63やキャップ61と吸引手段をつなぐ流路、その他圧力室等は、装置本体1の後側板の外側に配置し、チューブ等の経路を使用して接続することもできる。また、維持回復時に吸引に代えて、あるいは吸引とともに、ヘッド101の上流側から加圧手段によってヘッド101内を加圧する構成とすることもできる。
【0022】
このメンテナンス装置6は、搬送ユニット4の上方で用紙搬送方向に沿ってスライド移動可能に配置され、ヘッドメンテナンス時にはヘッド部5が上昇した後、ヘッド部5の下部に移動し、印字中は図1に示す位置に退避する。
【0023】
メンテナンス装置6の上部には、キャップ61および図示しないワイパブレードに付着した液滴(廃液)を清掃するクリーナ装置7が配置されている。このクリーナ装置7は、図示しないクリーナ移動手段によって用紙搬送面に対して鉛直方向に上下移動可能に配置されている。
【0024】
ヘッド101のメンテナンスが終了したメンテナンス装置6がヘッド部5の側方に退避した状態において、クリーナ装置7が下降移動し、キャップ61およびワイパブレードを清掃するようになっている。
【0025】
また、本実施の形態では、画像形成装置100は、吸引ファン44に流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段71と、この駆動電流検知手段71が検知した駆動電流の変化に応じて、吸引ファン44に印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段72と、を備えている。
【0026】
ここで、図3のフロー図を参照して、吸引ファン44の駆動電流検知による駆動電圧制御(切り替え)について説明する。
【0027】
まず、印刷を開始すると、吸引ファン44の駆動電圧を低い電圧V1に設定する(ステップS1)。ステップS1においては、用紙Pを搬送しない場合、搬送ベルト43による吸引力は必要無いため、記録ヘッド50の直下の水平方向の気流が吐出位置ズレに影響を与えない程度の低い吸引力になるよう低い電圧V1に設定している。
【0028】
なお、記録ヘッド50の直下の水平方向の気流は、吸引ファン44に吸引される空気が記録ヘッド50と搬送ベルト43の間の狭い空間を通って外部から流入することにより発生している。
【0029】
ついで、指定された印刷枚数に達したか否か判断し(ステップS2)、指定印刷枚数を超えた場合は印刷を終了し、指定印刷枚数以下の場合はステップS3に進む。
【0030】
ステップS3では、駆動電流検知手段71により検知された駆動電流の変化が閾値以上か判断し、閾値未満の場合はステップS2に戻り、閾値以上の場合はステップS4に進む。
【0031】
このステップS3においては、用紙Pが給紙前の場合、および用紙Pの全面が搬送ベルト43上にある場合は、吸引ファン44の駆動負荷は一定となり、吸引ファン44の駆動電流はほとんど変化しないため、ステップS2に戻り、駆動電圧の切り替えを行わない。
【0032】
ここで、前述の場合以外の給紙が開始されて搬送ベルト43の吸引口を塞ぎ始めたときと、印字がほぼ終わり用紙Pが排紙され始めて搬送ベルト43の吸引孔を開放し始めたときは、搬送ベルト43の吸引口の開口面積が変化して吸引ファン44の駆動負荷が変化し、吸引ファン44の駆動電流が変化する。ステップS3においては、吸引ファン44の駆動電流の変化量が予め設定された閾値以上か否かを判断している。
【0033】
ステップS4では、吸引ファン44の駆動電流変化が上昇か下降かを判断し、上昇の場合にはステップS6に進み、下降の場合にはステップS5に進む。
【0034】
このステップS4においては、吸引ファン44の駆動電流変化が下降変化の場合には、印字がほぼ終了し用紙Pの排紙が始ったこととなるため、吸引ファン44の吸引力を下げるために駆動電圧を下げるようステップS5に進むようになっている。
【0035】
また、このステップS4においては、吸引ファン44の駆動電流変化が上昇変化の場合には、新たに用紙Pが給紙されたこととなるため、吸引ファン44の吸引力を上げるために駆動電圧を上げるようステップS6に進むようになっている。
【0036】
ステップS5では、吸引ファン44の駆動電圧を低い電圧V1に設定(すなわちステップS1で設定済みの電圧V1を維持)し、ステップS2に戻り、ステップS6では、吸引ファン44の駆動電圧を高い電圧V2に設定し、ステップS2に戻る。なお、このフロー図において、ステップS3〜ステップS6の処理は、駆動電圧切り替え手段72により実行される。
【0037】
図4、図5に示すように、用紙搬送待機時は、吸引ファン44が低い電圧V1で駆動されている。すなわち、用紙搬送待機時は、搬送ベルト43上に用紙Pが無いため、搬送ベルト43の吸引口はすべて開口されており、吸引ファン44には吸引負荷がほとんどかからないため、吸引ファン44は低い電圧V1のまま駆動されている。
【0038】
電圧V1は、用紙Pを搬送ベルト43に吸着する最小限の吸引ができる電圧であるため、吸引ファン44の吸引により発生する記録ヘッド50の直下の水平方向気流はほとんど発生しない。
【0039】
図6、図7に示すように、用紙搬送開始時は、搬送された用紙Pにより搬送ベルト43の吸引口が覆われるのに伴って吸引ファン44の負荷が増加し吸引ファン44の駆動電流が増加する。駆動電流検知手段71が所定の閾値Δi以上の電流値上昇を検知すると、駆動電圧切り替え手段72は吸引ファン44の駆動電圧を高い電圧V2に切り替える。
【0040】
前記電圧V2は、用紙Pの搬送に必要な用紙吸着力が得られる電圧に設定されているので、吸引ファン44の吸引力により用紙Pの位置ズレや浮きの発生しない確実な用紙搬送が開始される。また、用紙搬送開始時には、用紙Pにより覆われる吸引口の面積が増加していくので、記録ヘッド50の直下に発生する水平方向の気流が抑制される。
【0041】
図8、図9に示すように、用紙搬送中は、搬送中の用紙Pに記録ヘッド50の直下の吸引口が覆われており、吸引ファン44の吸引負荷に大きな変動はなく、用紙搬送開始時に設定された吸引ファン44の電圧V2のまま駆動されるため、吸引ファン44の吸引により位置ズレや浮きの発生しない確実な吸引搬送が行われる。用紙搬送中は、記録ヘッド50の直下の吸引口は用紙Pにより覆われているため、記録ヘッド50の直下には、吸引ファン44の吸引による水平方向の気流は発生しない。
【0042】
図10、図11に示すように、用紙搬送終了時には、搬送ベルト43の吸引口の覆われている面積が用紙Pの搬送とともに減少し、吸引ファン44の駆動負荷も同様に減少し、吸引ファン44の駆動電流が低下していく。
【0043】
駆動電流検知手段71が所定の閾値Δi以上の電流値低下を検知すると、駆動電圧切り替え手段72は吸引ファン44の駆動電圧を低い電圧V1に切り替える。この電圧V1は、用紙Pを吸着する最低限の駆動電圧に設定されているため、記録ヘッド50の直下の吸引ファン44の吸引による水平方向気流を抑制された状態で次の用紙Pの搬送に備えることとなる。
【0044】
図12に示すように、吸引ファン44をそれぞれ収容する独立した負圧形成室74を用紙搬送方向に複数設けることにより、用紙Pが搬送されるに従って用紙Pで覆われた部分の負圧形成室74の吸引ファン44の駆動電圧のみが高い電圧V2で駆動され、それ以外の部分の負圧形成室74の吸引ファン44は低い電圧V1で駆動されるため、ヘッド直下に生じる水平方向気流をさらに抑制することができる。
【0045】
図12において、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74は、用紙搬送方向に6個設けられており、これら6つの負圧形成室74の吸引ファン44は、独立して駆動制御されるようになっている。
【0046】
図13に示すように、用紙搬送方向および用紙搬送方向に直角な方向(幅方向)に、吸引ファン44それぞれ収容する独立した負圧形成室74をマトリックス状に複数設けることにより、用紙Pの搬送位置や用紙サイズ(幅、長さ)に対応して、用紙Pに覆われていない部分の負圧形成室74の吸引ファン44が低い電圧V1で駆動されるため、用紙Pの位置、サイズに影響されることなく、記録ヘッド50の直下の水平方向気流をさらに低減することができる。
【0047】
図13において、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74は、用紙搬送方向に6列、および用紙搬送方向に直角な方向(幅方向)に7列となる合計42個設けられており、これら6つの負圧形成室の吸引ファン44は、独立して駆動制御されるようになっている。
【0048】
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置100は、吸引ファン44に流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段71と、この駆動電流検知手段71が検知した駆動電流の変化に応じて、吸引ファン44に印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段72と、を備えることを特徴とする。
【0049】
この構成により、用紙Pの搬入および搬出等に伴って吸引ファン44の負荷および駆動電流が変化したとき、駆動電圧切り替え手段72は、水平方向気流を抑制するよう吸引ファン44の駆動電圧を切り替えることができる。したがって、吸引ファン44の水平方向気流による用紙端部での着弾位置ズレを抑制することができる。また、シンプルな構成となるため、コストを低減することができる。また、吸引動作が必要なとき以外の吸引ファン44の消費電流を低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、駆動電圧切り替え手段72は、駆動電流検知手段71が検知する駆動電流が上昇すると、駆動電圧を高い電圧に切り替えることを特徴とする。
【0051】
この構成により、吸引ファン44の吸引力により用紙Pの位置ズレや浮きの発生しない確実な用紙搬送が開始される。また、用紙搬送開始時には、用紙Pにより覆われる吸引口の面積が増加していくので、吸引ファン44の吸引により記録ヘッド50の直下に発生する水平方向の気流が抑制される。
【0052】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、駆動電圧切り替え手段72は、駆動電流検知手段71が検知する駆動電流が下降すると、駆動電圧を低い電圧に切り替えることを特徴とする。
【0053】
この構成により、吸引ファン44の吸引により記録ヘッド50の直下に発生する水平方向の気流が抑制された状態で次の用紙Pの搬送に備えることができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、吸着手段は、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74を、用紙搬送方向に複数配置したものから構成されることを特徴とする。
【0055】
この構成により、用紙Pが搬送されるに従って用紙Pで覆われた部分の負圧形成室74の吸引ファン44の駆動電圧のみが高い電圧V2に切り替えられ、それ以外の部分の負圧形成室74の吸引ファン44は低い電圧V1で駆動されるため、記録ヘッド50の直下に生じる水平方向気流をさらに抑制することができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、吸着手段は、吸引ファン44をそれぞれ収容する負圧形成室74を、用紙搬送方向およびこの用紙搬送方向に直行する方向にマトリックス状に複数配置したものから構成されることを特徴とする。
【0057】
この構成により、用紙Pの搬送位置や用紙サイズ(幅、長さ)に対応して、用紙Pに覆われていない部分は、低い電圧V1で吸引ファン44が吸引されるため、用紙Pの位置、サイズに影響されることなく、記録ヘッド50の直下の水平方向気流をさらに低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 装置本体
4 搬送ユニット
5 ヘッド部
43 搬送ベルト
44 吸引ファン(吸着手段)
45 搬送ガイド
50 記録ヘッド(インク吐出手段)
51 ヘッド列
52 ベース部材
63 吸引手段
71 駆動電流検知手段
72 駆動電圧切り替え手段
74 負圧形成室
100 画像形成装置
101 ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2006−240185号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向けてインクを吐出して前記記録媒体に画像を記録するインク吐出手段と、
前記インク吐出手段のインク吐出領域を前記記録媒体が通過するように前記記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
吸引ファンにより負圧を発生して前記搬送ベルトに前記記録媒体を吸着させる吸着手段と、を備えた画像形成装置において、
前記吸引ファンに流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段と、
前記駆動電流検知手段が検知した駆動電流の変化に応じて、前記吸引ファンに印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動電圧切り替え手段は、前記駆動電流検知手段が検知する駆動電流が上昇すると、前記駆動電圧を高い電圧に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動電圧切り替え手段は、前記駆動電流検知手段が検知する駆動電流が下降すると、前記駆動電圧を低い電圧に切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吸着手段は、前記吸引ファンをそれぞれ収容する負圧形成室を、記録媒体搬送方向に複数配置したものから構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記吸着手段は、前記吸引ファンをそれぞれ収容する負圧形成室を、記録媒体搬送方向およびこの記録媒体搬送方向に直行する方向にマトリックス状に複数配置したものから構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項1】
記録媒体に向けてインクを吐出して前記記録媒体に画像を記録するインク吐出手段と、
前記インク吐出手段のインク吐出領域を前記記録媒体が通過するように前記記録媒体を搬送する搬送ベルトと、
吸引ファンにより負圧を発生して前記搬送ベルトに前記記録媒体を吸着させる吸着手段と、を備えた画像形成装置において、
前記吸引ファンに流れる駆動電流を検知する駆動電流検知手段と、
前記駆動電流検知手段が検知した駆動電流の変化に応じて、前記吸引ファンに印加する駆動電圧を切り替える駆動電圧切り替え手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動電圧切り替え手段は、前記駆動電流検知手段が検知する駆動電流が上昇すると、前記駆動電圧を高い電圧に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動電圧切り替え手段は、前記駆動電流検知手段が検知する駆動電流が下降すると、前記駆動電圧を低い電圧に切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吸着手段は、前記吸引ファンをそれぞれ収容する負圧形成室を、記録媒体搬送方向に複数配置したものから構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記吸着手段は、前記吸引ファンをそれぞれ収容する負圧形成室を、記録媒体搬送方向およびこの記録媒体搬送方向に直行する方向にマトリックス状に複数配置したものから構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−86425(P2013−86425A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230887(P2011−230887)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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