説明

画像形成装置

【課題】現像スリーブ上へのトナー固着に起因する画質劣化の抑制とスリーブコーティングに起因する現像剤汲み上げムラに起因する画像上の濃度ムラの抑制を両立し得るようにする。
【解決手段】乾式2成分現像方式の多段現像方式で、最上流の現像スリーブで現像剤量を規制し、下流側の現像スリーブへ現像剤を受け渡す現像方式を採る画像形成装置である。最上流の現像スリーブ(第1現像ローラ51の外周)、最上流以外の現像スリーブ(第2現像ローラ52の外周)などの各々に対し、個別にバイアス印加可能である現像装置を備える。最上流の現像スリーブ以外の現像スリーブに、表面平滑性良化用のコーティングを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、レーザプリンタ、これらの複合機などの電子写真式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機など画像形成装置の高速化、省エネルギー化に伴い、低融点のトナーを使用する、いわゆるトナーの低融点化が進んでいる。しかし、トナーをある程度以上低融点化すると、トナー凝集による現像不良、現像スリーブ上でのトナー固着など、様々な問題が発生する。特に画像形成装置のデジタル化が進んでおり、電子文書等の出力では、現像スリーブ軸方向において、同一カ所(特に余白部分)に非画像部が連続する場合が増え、その非画像部に対向する現像スリーブはトナー固着が発生しやすくなっている。
【0003】
また比較的最近の課題として、2成分現像法を用いている画像形成装置における現像装置の現像スリーブでのトナー固着がある。特許文献1では、低融点トナーを用いた2成分現像の画像形成装置において、地肌ポテンシャル(像担持体帯電電位と現像バイアスの差)が絶対値で400V以上に設定し、所定のタイミングで現像スリーブ軸方向の端部でベタ画像を像担持体に現像することで現像スリーブへのトナー固着を未然に防ぐ、としたものが開示されている。しかし、像担持体に現像したベタ画像が、そのまま画像形成工程としては転写紙の移動方向で下流側となる転写機構や像担持体のクリーニング機構に入力されてしまい、それぞれのトナークリーニング機構の負荷が増え、これが余剰にトナーを消費してしまう事態を生じさせている。
【0004】
特許文献2には、現像スリーブにトナー回収部材を対向させ、その回収部材にバイアスを印加することで、静電的に現像スリーブ上のトナーを取り除く構成の画像形成装置が提案されている。しかし、この構成では、部品点数の増加を伴い、機構が複雑になる。そのため、現像装置のコスト高を招くという問題がある。
【0005】
特許文献3では、現像スリーブへのトナー固着に起因するトナー濃度制御の不具合を抑制する画像形成装置が提案されている。現像スリーブのトナー固着領域では、固着トナーが電荷を帯びているために実効的な現像ポテンシャルが増大する。したがって、通常どおりの制御を行った場合、像担持体上の付着量測定用パッチのトナー付着量が固着していないスリーブ領域と比較して多くなり、狙いの付着量にするためにトナー濃度を低めに制御してしまい、その結果として、画像濃度の低下を招いてしまう。そこで、この画像形成装置では、現像バイアス電位と潜像領域電位を同一に制御し、その状態でパッチの付着量を測定することでトナー固着による実効的な現像バイアスの上昇の有無を検知し、トナー濃度制御に反映している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、高速の画像形成装置(高速複写機など)については、現像スリーブの回転数が高く、現像スリーブ上の温度が上昇しやすく、低融点のトナーは現像スリーブに固着しやすい。さらに、非画像部については、トナーが現像スリーブに押し付けられるように静電気力が働くために、現像スリーブへのトナー固着が加速される。
【0007】
像担持体の露光部分にトナーを付着させるネガ/ポジ・プロセス(以下、N/Pプロセスと言う)の場合、トナーは現像バイアスと同極性に帯電しているため、トナー固着が発生している領域は、像担持体上での実効的な現像ポテンシャルが大きい状態と同様の現象を生じる。よって、トナーが固着していない領域で十分な現像能力を確保しようとすると、トナーが固着している領域では現像能力過多となり、地肌汚れ等の異常画像を発生させてしまう。
【0008】
上述のトナー固着は、印刷画像上の白紙部分に対応する箇所において特に発生しやすい。電子写真方式の作像プロセスでは、転写ユニットへの過剰なトナー入力を防ぐために、転写紙のエッジ部分に対応する画像部には白抜けを確保している。したがって、現像長手端部は特にトナー固着が発生しやすい。
【0009】
このトナー固着を回避する有効な手段の一つに、現像スリーブ表面に表面平滑化を目的としたコートを施すことで、現像スリーブ−トナー間の付着力を減じさせる手法がある。代表的なコート法としては、TiN(チッ化チタン)蒸着が挙げられる。ただしこの方法では、コートにより非画像部であってもトナーが固着することはなくなるが、表面平滑化により現像スリーブ現像剤間の摩擦力も低下するため、現像スリーブの現像剤搬送性が若干低下する場合がある。特に、現像剤の流動性が悪化する場合、局所的な現像剤の搬送ムラを発生し、結果として画像上にまだら模様の画像濃度ムラを発生してしまう。この現像剤搬送ムラは、主に最上流の現像スリーブに配置される現像剤量の規制部近傍にて発生する。現像条件を個別に設定しない通常の多段現像方式においては、最上流の現像にて全体の現像量の半分以上を現像するため、最上流以外の現像スリーブでの画質改善効果は見込めない。しかも、最上流の現像以降は現像剤を受け渡す構成となっており、それより下流側の現像スリーブでは現像剤規制部が存在しないため、上流側で発生している現像剤搬送ムラの履歴を下流側で引き継いでしまうことになる。
【0010】
この現像剤搬送量のムラを低減する手段として、現像剤受け渡し磁極を同極性とすることで、受け渡し間の現像剤に寄与する磁気力を減じ、受け渡し間の現像剤を動きやすくすることで最上流現像ローラの現像剤量のムラをキャンセルする技術が知られている。しかしこの方法では、受け渡しの際に磁力で現像剤を保持できないため、高速化(高回転化)に対応する場合、現像剤飛散等の不具合が発生しやすくなる。
【0011】
多段現像の最上流以外の現像スリーブへスリーブ表面のコーティングを施し、最上流の現像スリーブはスリーブコーティングを施さないことで、コーティングによる現像剤搬送不具合を抑制することが考えられる。一方、最上流とそれ以外の現像機会で同一の現像バイアス条件を与えてしまうと、非コーティングの最上流現像でほぼ必要な現像量が得られてしまう。すると、スリーブへのトナー固着に起因する異常画像(濃度段差)が顕在化してしまう。そのため、現像バイアスを最上流とそれ以外で個別に制御する(最上流の現像量を抑える)ことが考えられ、現像剤搬送ムラに起因する画像濃度ムラとスリーブへのトナー固着に起因する濃度段差を抑制することが可能となる。
【0012】
そこで本発明においては、上述のような種々の不具合の解決し、現像スリーブ上へのトナー固着に起因する画質劣化の抑制とスリーブコーティングに起因する現像剤汲み上げムラに起因する画像上の濃度ムラの抑制を両立し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の画像形成装置は、乾式2成分現像方式の多段現像方式で、最上流の現像スリーブで現像剤量を規制し、下流側の現像スリーブへ現像剤を受け渡す現像方式を採る画像形成装置であって、最上流の現像スリーブ、最上流以外の現像スリーブの各々に対し、個別にバイアス印加可能である現像装置を用いた画像形成装置において、前記最上流の現像スリーブ以外の現像スリーブに、表面平滑性良化用のコーティングを施してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、最上流に配置される現像スリーブ以外の現像スリーブに、表面平滑性良化を目的とするコーティングを施すことで、現像スリーブ上へのトナー固着に起因する画質劣化の抑制、スリーブコーティングによる現像剤汲み上げムラに起因する画像上の濃度ムラの抑制の両方を実現可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施対象となるレーザ複写機の内部機構の全体構成を概略的に示す断面図
【図2】図1の装置の要部の部分拡大図
【図3】本発明の実施形態における現像ローラの磁気極性を示す図
【図4】トナー固着による実効現像バイアスの上昇量の印刷実験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施対象となるレーザ複写機の内部機構の全体構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1の装置の要部の部分拡大図である。図中符号10は画像形成装置本体(以下、装置本体と言う)であり、装置本体10内には、ドラム状の像担持体12を設けてある。この像担持体12の周囲には、帯電装置13、現像装置14、転写・搬送装置15、クリーニング装置16、除電装置17などが配置してある。して、これらの上部には、レーザ書込み装置18が設けてある。レーザ書込み装置18には、レーザダイオード等の光源20、走査用の回転多面鏡21、ポリゴンモータ22、fθレンズ等の走査光学系23などを備えている。またクリーニング装置16の図中左側には、定着装置25を配置してある。定着装置25には、ヒータを内蔵する定着ローラ26と、その定着ローラ26に下方から押し当てる加圧ローラ27を設けてある。また、装置本体10内の上部には、原稿読取装置30を備えている。原稿読取装置30には、光源31、複数のミラー32、結像レンズ33、CCD等のイメージセンサ34などが設けてある。
【0017】
現像装置14は、図2に示すように、現像タンク50と現像ホッパ60とからなる。現像タンク50では、第1現像ローラ51、第2現像ローラ52、パドルホイール53、攪拌ローラ54、搬送スクリュ55、セパレータ56、ドクタブレード57、トナー濃度センサ58などを現像ケース59内に設ける。そして、現像ケース59内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤を収納する。なお、本例ではトナー固着防止手段として、第2現像ローラ52外周をなす第2現像スリーブにTiN蒸着膜を施してある。現像ホッパ60内には、歯車状のトナー補給部材61、補給規制板62、アジテータ63などを設ける。この現像ホッパ60内には、トナーを収納してなる。
【0018】
この現像装置14では、現像ケース59内の2成分現像剤を、攪拌ローラ54の回転により攪拌して摩擦帯電し、パドルホイール53の回転によって跳ね上げ、第1現像ローラ51及び第2現像ローラ52内の磁石によってそれらの第1現像ローラ51及び第2現像ローラ52に吸着する。第1現像ローラ51及び第2現像ローラ52に吸着した現像剤は、それらの第1現像ローラ51及び第2現像ローラ52外周の第2現像スリーブにより搬送し、ドクタブレード57により余剰分を掻き落とす。その後、第2現像スリーブにバイアスを印加することで像担持体12に接触して像担持体12上の静電潜像を現像する。本例では第1現像ローラ51の外周をなす第1現像スリーブ、上述の第2現像スリーブの各々に個別のパワーパックから所定のバイアスを印加する。また、本例の現像スリーブの線速は例えば700mm/秒とする。この現像装置14では、像担持体12に付着してトナーを消費すると、その割合(トナー濃度)が減少する。そこで、現像剤中のトナー濃度がトナー濃度の目標値に対して所定値以下になると、アジテータ63を回転させてトナーを攪拌するとともに、トナー補給部材61へと搬送し、トナー補給部材61を回転させて補給規制板62を揺動させ、現像ホッパ60から現像タンク50内へとトナーを補給して、現像剤中のトナー濃度を維持する。現像剤中のトナー濃度は、現像ケース59に取り付けたトナー濃度センサ58により測定している。
【0019】
この現像装置14では、例えば、重量平均粒径が5〜10μm、5μm以下が60〜80個数%含まれているトナーと重量平均粒径65ミクロンm以下のキャリアとを含む2成分系現像剤を用いる。トナーの構成としては、樹脂成分、着色剤からなり、さらに、ワックス成分や無機微粒子を添加した構成を採用する場合もある。トナー製造方法は、本発明で用いるものでは、特に限定されることはなく、粉砕方式、重合方式いずれを用いることも可能である。樹脂成分としては従来公知の樹脂全てを用いることができる。例えば、スチレン、ポリ−α−スチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂等を挙げ得る。また、これらを単独使用することも可能であるが、2種類併用しても良い。着色剤としては公知のものとして、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、オイルブラック、アゾオイルブラック等があるが、本発明で用いるものでは特に限定されない。ワックス成分としては公知のものとして、カルナウバワックス、ライスワックス、合成エステルワックスなどがあるが、これも本発明で用いるものとしては特に限定されない。また無機微粒子としては、公知のものとして、シリカ、酸化チタン微粉末などを挙げ得る。
【0020】
ところで、像担持体12に付着したトナーは、転写・搬送装置15によってシートに静電転写する。ところが、約10%のトナーは、シートに転写されず像担持体12上に残る。残留トナーは、クリーニング装置16に設けるクリーニングブレード65及びブラシローラ66によって像担持体12上から掻き落とす。クリーニング装置16によって像担持体12上から掻き落とされたトナーは、クリーニング装置16の回収タンク67内に入る。そして、回収スクリュ68によってクリーニング装置16の片側に搬送し、図示しない排出口から排出してトナーリサイクル装置へと導く。
【0021】
第2現像スリーブの70%のバイアスを第1現像スリーブに印加した場合(第1現像:b−450V、第2現像:−650V)と、第1、第2現像スリーブに同バイアスを印加した場合の画像を確認した。現像スリーブ上へのトナー固着に起因する異常画像を画像濃度段差と表記する。また、現像剤搬送量のムラに起因する異常画像を画像濃度ムラと表記する。評価は画像目視によるランク評価であり、ランク4以上が許容レベルとし異常画像なしはランク5である。下記の表1に画像評価結果を記す。表1中で(2)が本実施形態の条件である。
第1、第2現像スリーブ共にコーティングを施した場合(表1中の(3))、濃度段差は解消されたが、濃度ムラは不可レベルである。それに対し、第2現像スリーブのみTiNコーティングを施した場合は、濃度段差、濃度ムラ共に許容レベル以上の画像を得られている。
【表1】

【0022】
すなわち、
(1)多段現像の最上流以外の現像スリーブへスリーブ表面のコーティングを施し、最上流の現像スリーブはスリーブコーティングを施さないことで、コーティングによる現像剤搬送不具合を抑制すること、
(2)その一方で、最上流とそれ以外の現像機会で同一の現像バイアス条件を与えてしまうと非コーティングの最上流現像でほぼ必要な現像量が得られてしまい、スリーブへのトナー固着に起因する異常画像(濃度段差)が顕在化してしまうために現像バイアスを最上流とそれ以外で個別に制御する(最上流の現像量を抑える)こと、
を考慮し、現像剤搬送ムラに起因する画像濃度ムラと現像スリーブへのトナー固着に起因する濃度段差を抑制する。
【0023】
そのため、乾式2成分現像方式の多段現像方式で、最上流の現像スリーブで現像剤量を規制し、以後下流の現像スリーブへ現像剤を受け渡す現像方式であり、最上流の現像スリーブ、最上流以外の現像スリーブの各々に対し、個別にバイアス印加可能である現像装置を適用する画像形成装置において、最上流に配置される現像スリーブ以外の現像スリーブに、表面平滑性良化を目的とするコーティングを施すのである。そのことで、現像スリーブ上へのトナー固着に起因する画質劣化の抑制とスリーブコーティングに起因する現像剤汲み上げムラに起因する画像上の濃度ムラの抑制を両立可能としている。
【0024】
図3に本発明の実施形態における現像ローラの磁気極性を示す。第1現像ローラ51と第2現像ローラ52の各々の最近接位置の磁極位置で現像剤受け渡しが行われることを示している。すなわち、図示したように、異極受け渡しは第1現像ローラ51の受け渡し磁極をS極性、第2現像ローラ52の受け渡し磁極をN極性とすることで、第1現像ローラ51から第2現像ローラ52へと現像剤を受け渡す間、現像剤は常に磁気力に保持された状態を維持できるため、現像装置の高速対応に適している。異極受け渡しは、受け渡し域において第1現像ローラ51に再近接する第2現像ローラ52(マグロール)の磁極をN極とし、現像磁極をS極、ケーシング対向磁極をS極としている。
【0025】
そして、下記表2に示すように、異極受け渡しを行う構成では、画像濃度ムラは許容レベル以下であるが、上述した本発明の構成を採用することで、同極受け渡しであっても、画像濃度ムラは許容レベルであり、ランク4以上を維持できることがわかる。
【表2】

【0026】
なお本実施形態で用いる現像剤は、使用していくと現像剤の流動性が悪化する傾向がある。これは、現像剤中のキャリアにトナーに内包されるワックス成分や添加剤が、経時的に付着することに起因する。そのため、現像剤の流動性が比較的良好な使用初期では、良好な画像を得ることが可能であるが、使用経時で現像剤の流動性が劣化した場合は現像剤搬送性が悪くなり、濃度ムラが許容レベル以下となることがある。そこで本実施形態では、第1現像スリーブに印加するバイアスを小さくとる場合、現像ニップ部ではトナーがトナーに加えて、現像剤の使用経過時間を考慮して第1現像スリーブに印加するバイアスを第2現像スリーブに印加するバイアスより減じることで、第1現像スリーブの現像剤搬送ムラに起因する画像濃度ムラを抑制することを可能としている。一方、濃度ムラが発生しない使用の初期段階あるいはそれに近い状態であれば、第1現像スリーブと第2現像スリーブに印加するバイアスは同一とし、第1現像スリーブでの現像量を比較的多くすることで、ベタ画像周辺のハーフトーン画像欠けをより良好な状態に保つことを可能としている。
【0027】
例えば、印刷枚数100,000ページまでは同一現像バイアスとし、それ以後第1現像スリーブに印加するバイアスを第2現像スリーブの70%とし、50,000ページ印刷時と150,000ページ印刷時の画像濃度ムラを評価したところ(印刷実験で使用した印刷パタンの画像面積率は5%(A4)である)、50,000ページ印刷時の画像濃度ムラはランク4、ハーフトーン欠けはランク4.5で、150,000ページ印刷時では、同一バイアスを印加した場合は画像濃度ムラがランク3、ハーフトーン欠けがランク4.5であった。それに対し、第1現像スリーブに印加するバイアスを変更した場合の画像濃度ムラはランク4.5、ハーフトーン欠けはランク4となった。すなわち、印刷枚数に基づいて、最上流の現像スリーブに印加するバイアスを決定するという制御を実施することで、画像濃度ムラ、ハーフトーン欠け共に許容レベルを満足する画像を得られた。
【0028】
さらに、本実施形態で用いる現像剤の流動性劣化は、印刷画像密度にも大きく影響を受ける。例えば、現像剤中のトナーが排出されにくい状態で攪拌された場合に、流動性の劣化が加速される。そこで本実施形態では、累積印刷枚数と累積印刷画像面積との比率に基づいて第1現像に印加するバイアスを決定することで、良好な画像を維持することができるようにしている。
【0029】
例えば、1枚あたりの印刷画像面積が15%以上である場合、印刷枚数100,000ページ印刷以降も同一現像バイアスとし、100,000ページ印刷以後、1枚あたりの印刷画像面積が7%以下となった場合、第1現像スリーブに印加するバイアスを第2現像スリーブに印加するバイアスの70%とする。100,000ページ印刷までの印刷実験に用いるチャートの画像面積を15%とし、それ以後の画像面積を7%、15%の2水準で印刷実験を行い、150,000ページ印刷時の画像を評価したところ、15%画像で印刷し続けた場合、第1、第2現像スリーブに印加するバイアスが同一であっても画像濃度ムラはランク4、ハーフトーン欠けはランク4.5であった。一方、100,000ページ印刷以後、7%画像で印刷した場合でも、所定の累積印刷画像面積に基づいて、最上流の現像スリーブに印加するバイアスを決定するという制御を実施することで、画像濃度ムラはランク4.5、ハーフトーン欠けはランク4となり、画像濃度ムラ、ハーフトーン欠け共に許容レベルを満足する画像が得られた。
【0030】
またさらに、本実施形態で用いる現像剤の流動性は、現像剤中のトナー濃度に大きく影響を受ける。特にトナー濃度が高い場合(キャリアのトナー被覆率が60%超)では、現像剤の流動性が著しく悪化する。そこで本実施形態では、稼働時のトナー濃度に基づいて第1現像に印加するバイアスを決定することで、より良好な画像を維持することができるようにしている。
【0031】
例えば、現像剤中のトナー重量比率が6wt%以上と検知した場合、第1現像スリーブに印加するバイアスを第2現像スリーブに印加するバイアスの70%として、トナー重量比率が4wt%時と6wt%時の画像評価を実施したところ、4wt%時に、第1、第2現像スリーブともバイアスを同一値として画像を印刷した場合、画像濃度ムラはランク4、ハーフトーン欠けはランク4.5であった。一方、6wt%時では、同一バイアスでは画像濃度ムラはランク3、ハーフトーン欠けはランク4.5であったが、稼働時のトナー濃度に基づいて第1現像に印加するバイアスを決定するという制御を行うことで、画像濃度ムラはランク4.5、ハーフトーン欠けはランク4となり、画像濃度ムラ、ハーフトーン欠け両者共に許容レベルを満足する画像が得られた。
【0032】
また近年、画像形成装置の高画質化達成のため、粒径の小さなトナーが適用されるようになってきている。重量平均粒径が4μm以下のトナー含有率が異なるトナーで現像スリーブへのトナー固着による実効現像バイアスの上昇量を印刷実験にて確認した結果を図4に示す。この図から、含有率30%、45%のトナーと比較して、60%のトナーでは実効現像バイアスの上昇量が大きいことがわかる。したがって、重量平均粒径が4〜10μm、重量平均粒径が4μm以下が60〜80%程度含まれるトナーを適用する画像形成装置では、トナー固着による実行バイアス抑制しつつ、良好が画質を得ることが可能となる。すなわち、現像スリーブ上へのトナー固着に起因する画質劣化の抑制とスリーブコーティングに起因する現像剤汲み上げムラに起因する画像上の濃度ムラの抑制を効果的に両立させることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 :画像形成装置本体
12 :像担持体
13 :帯電装置
14 :現像装置
15 :搬送装置
16 :クリーニング装置
17 :除電装置
18 :レーザ書込み装置
20 :光源
21 :回転多面鏡
22 :ポリゴンモータ
23 :走査光学系
25 :定着装置
26 :定着ローラ
27 :加圧ローラ
30 :原稿読取装置
31 :光源
32 :ミラー
33 :結像レンズ
34 :イメージセンサ
50 :現像タンク
51 :第1現像ローラ
52 :第2現像ローラ
53 :パドルホイール
54 :攪拌ローラ
55 :搬送スクリュ
56 :セパレータ
57 :ドクタブレード
58 :トナー濃度センサ
59 :現像ケース
60 :現像ホッパ
61 :トナー補給部材
62 :補給規制板
63 :アジテータ
65 :クリーニングブレード
66 :ブラシローラ
67 :回収タンク
68 :回収スクリュ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2001−312126号公報
【特許文献2】特開2002−278275号公報
【特許文献3】特開2002−278183号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式2成分現像方式の多段現像方式で、最上流の現像スリーブで現像剤量を規制し、下流側の現像スリーブへ現像剤を受け渡す現像方式を採る画像形成装置であって、
最上流の現像スリーブ、最上流以外の現像スリーブの各々に対し、個別にバイアス印加可能である現像装置を用いた画像形成装置において、
前記最上流の現像スリーブ以外の現像スリーブに、表面平滑性良化用のコーティングを施してなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
乾式2成分現像方式の多段現像方式で、最上流の現像スリーブで現像剤量を規制し、下流側の現像スリーブへ現像剤を受け渡す現像方式を採る画像形成装置であって、
最上流の現像スリーブ、最上流以外の現像スリーブの各々に対し、個別にバイアス印加可能である現像装置を用い、
前記最上流の現像スリーブで現像剤量を規制し、以後下流の現像スリーブへ現像剤を受け渡す多段現像方式を採用した画像形成装置において、
前記最上流の現像スリーブ以外の現像スリーブに、表面平滑性良化を目的とするコーティングを施し、かつ、
前記最上流の現像スリーブとその次の現像スリーブでの現像剤の受け渡しを担う磁極を異極性としてなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
印刷枚数に基づいて、前記最上流の現像スリーブに印加するバイアスを決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
所定の累積印刷画像面積に基づいて、前記最上流の現像スリーブに印加するバイアスを決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記現像装置内の現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段を備え、
該トナー濃度検知手段の検知結果に基づいて前記最上流の現像スリーブに印加するバイアスを決定することを特徴とするが画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、
重量平均粒径が4〜10μm、4μm以下が60〜80個数%含まれているトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92639(P2013−92639A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234442(P2011−234442)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】