画像形成装置
【課題】フルカラーモード(第1モード)と、中間転写ベルトと黒色以外の感光ドラムとが当接及び離間する2つの状態を有する黒単色モード(第2、第3モード)とを実行する構造で、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる構造を実現する。
【解決手段】第1モードと第2モードと第3モードとのそれぞれで、黒色の感光ドラムと一次転写ローラとの間に流れる電流値が異なるように、この一次転写ローラに印加する転写バイアスを制御する。ベルトの当接状態と離間状態とでは、同じ電流を流すための電圧値が異なり、各モードでは、最適な転写電流値が異なるため、各モードで印加する電流値を異ならせることにより、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる。
【解決手段】第1モードと第2モードと第3モードとのそれぞれで、黒色の感光ドラムと一次転写ローラとの間に流れる電流値が異なるように、この一次転写ローラに印加する転写バイアスを制御する。ベルトの当接状態と離間状態とでは、同じ電流を流すための電圧値が異なり、各モードでは、最適な転写電流値が異なるため、各モードで印加する電流値を異ならせることにより、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に、黒単色で画像を出力するモードを有する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばフルカラー画像の形成が可能なカラー画像形成装置として、直接転写方式や中間転写方式の画像形成装置が知られている。直接転写方式では、単数又は複数の像担持体としての感光ドラムに形成されたトナー像を、記録材搬送部材として周回移動可能なベルト体(以下「記録材搬送ベルト」という)上に担持された記録材に転写する。中間転写方式では、単数又は複数の感光ドラムに形成されたトナー像を、一旦、中間転写体としての周回移動可能なベルト体(以下「中間転写ベルト」という)に転写(一次転写)する。その後、中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写(二次転写)する。中間転写方式では、多様な記録材に画像を形成することが容易で、記録材の選択性を高めることができる。
【0003】
一方、カラー画像形成装置においては、黒単色のみを用いて画像形成をする場合がある。このとき、黒色以外の感光ドラムを駆動すると、感光ドラムやその他の関連部材などが消耗したり、電力を消費してしまったりする。これに対して、黒色のみの画像形成時には、黒色以外の他の感光ドラムと、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルト(以下、単にベルトと言う)を離間させる構成が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−249519号公報
【特許文献2】特開平09−146383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、黒色のみの画像形成時(黒単色モードの場合)に、ベルトを他の感光ドラムから離間させた場合、ベルトの張り角度がフルカラーモードと比べて変わる。このため、黒色に使用される感光ドラムとベルトとの当接状態が、黒単色モードとフルカラーモードとで変化してしまう。感光ドラムとベルトとの当接状態が変化すれば、電流と電圧の特性も変化するため、同じように転写バイアスを印加した場合、何れかのモードで転写不良が生じる可能性がある。
【0006】
一方、フルカラーモードと黒単色モードを有する構造で、フルカラーモードから黒単色モードに切り替わる際に、ダウンタイムを抑制すべく、一定枚数黒単色画像が続く場合に、ベルトを他の感光ドラムから離間させることが考えられる。即ち、ベルトを他の感光ドラムから離間させる場合、ベルトを止めたりベルトの回転速度を落としたりする必要があるため、ダウンタイムが生じることが避けられない。一方、黒単色画像が一定枚数(例えば5枚)以内であれば、他の感光ドラムがベルトと当接して回転しても、部品の消耗や電力消費は僅かである。このため、黒単色画像が一定枚数以内であれば、ベルトを他の感光ドラムから離間させることなく画像形成を続行することにより、ダウンタイムを抑制できる。
【0007】
このように、黒単色モードでも、ベルトと他の感光ドラムとが離間している状態と当接している状態との2つのモードがあり、これにフルカラーモードを加えると、全部で3つのモードを有することになる。ベルトと他の感光ドラムとが当接している当接状態であっても、フルカラーモードと黒単色モードとでは、それぞれトナー載り量が異なるため、同じように転写バイアスを印加した場合、何れかのモードで転写不良が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、フルカラーモードと、中間転写体又は記録材搬送部材と他の像担持体とが当接及び離間する2つの状態を有する黒単色モードとを実行する構造で、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、黒色のトナー像を担持する第1像担持体と、黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体と、前記第1像担持体に当接し、且つ、前記第2像担持体に対して当接及び離間可能に配置される中間転写体(又は、記録材を搬送する記録材搬送部材)と、前記中間転写体(又は記録材搬送部材)を前記第2像担持体に当接及び離間させる接離機構と、転写バイアスが印加されることにより、前記第1像担持体に担持されたトナー像を、前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第1転写手段と、前記中間転写体(又は記録材搬送部材)を前記第2像担持体に当接させた当接状態で、転写バイアスが印加されることにより、前記第2像担持体に担持されたトナー像を前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第2転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記当接状態で、前記第1像担持体及び前記第2像担持体にそれぞれ担持されたトナー像を前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第1モードと、前記当接状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第2モードと、前記中間転写体(又は記録材搬送部材)を前記第2像担持体から離間させた離間状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第3モードと、を実行可能で、前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する制御手段を有する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、それぞれのモードで、第1像担持体と第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、第1転写手段に印加する転写バイアスを制御しているため、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】1つの画像形成部を取り出して詳しく示す概略構成断面図。
【図3】図1の画像形成装置の離間状態を示す図。
【図4】(a)は当接状態の、(b)は離間状態の、黒色の画像形成部の一次転写部を拡大して示す模式図。
【図5】黒色の一次転写部における、当接状態と離間状態とでの電流と電圧との関係を示す図。
【図6】それぞれのモードでの黒色の一次転写部の転写電流と転写効率との関係を示す図。
【図7】所定の環境における、それぞれのモードでの黒色の一次転写部の転写電流と転写電圧を示す図。
【図8】所定の環境における、それぞれのモードでの2次転写部の転写電圧を示す図。
【図9】ATVCにより求めた電圧と電流との関係を示す図。
【図10】各環境における、それぞれのモードでの黒色の一次転写部の転写電流を示す図。
【図11】第1の実施形態の制御の流れの一例を示すフローチャート。
【図12】第1の実施形態の一次転写部に関する制御のブロック図。
【図13】第1の実施形態で、一次転写バイアスを印加するタイミングを示すタイミングチャート。
【図14】比較例で、一次転写バイアスを印加するタイミングを示すタイミングチャート。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図16】所定の環境における、それぞれのモードでの黒色の転写部の転写電流と転写電圧とを示す図。
【図17】第2の実施形態の制御の流れの一例を示すフローチャート。
【図18】黒色の一次転写部における、当接状態と離間状態とでの電流と電圧との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
[画像形成装置]
図1に示す画像形成装置100は、4つの画像形成部を有する中間転写方式を用いた、フルカラー電子写真画像形成装置である。画像形成装置100は、複数の画像形成部として、第1、第2、第3、第4の画像形成部(プロセスユニット)Sa、Sb、Sc、Sdを有する。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を形成するためのものである。
【0014】
なお、各画像形成部Sa〜Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
【0015】
画像形成部Sは、像担持体としての感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ2、露光手段としてのレーザースキャナ3、現像手段としての現像装置4、ドラムクリーニング手段としてのドラムクリーナ6等が、感光ドラム1の回転方向に沿って順次配設されている。また、各画像形成部Sa〜Sdの感光ドラム1a〜1dに隣接して、中間転写体としての周回移動可能なベルト体、即ち、中間転写ベルト51が配置されている。
【0016】
中間転写ベルト51は、複数の支持部材として駆動ローラ52、テンションローラ55、二次転写内ローラ56、上流規制ローラ58aに掛け渡されている。中間転写ベルト51は、ベルト駆動手段である駆動ローラ52によって駆動力が伝達されて、図示矢印R3方向に周回移動する。
【0017】
また、中間転写ベルト51の内周面側において各感光ドラム1a〜1dに対向する位置には、一次転写部材(第1転写手段、第2転写手段)としての一次転写ローラ53a〜53dが配置されている。各一次転写ローラ53a〜53dによって中間転写ベルト51が各感光ドラム1a〜1dに向けて付勢され、各感光ドラム1a〜1dと中間転写ベルト51とが当接する一次転写部(一次転写ニップ)N1a〜N1dが形成されている。
【0018】
また、中間転写ベルト51の外周面側において二次転写内ローラ56に対向する位置には、二次転写部材(二次転写手段)としての二次転写外ローラ57が配置されている。二次転写外ローラ57が中間転写ベルト51の外周面に接触して、二次転写部(二次転写ニップ)N2が形成されている。
【0019】
各画像形成部Sa〜Sdにて形成された感光ドラム1a〜1d上の画像は、一次転写ローラ53a〜53dに転写バイアスが印加されることにより、各感光ドラム1a〜1dに隣接して移動通過する中間転写ベルト51上に順次多重転写される。その後、中間転写ベルト51上に転写された画像は、更に二次転写部N2において、二次転写外ローラ57に二次転写バイアスが印加されることにより、紙等の記録材Pへ転写される。
【0020】
次に、図2を用いて画像形成部Sをより詳しく説明する。感光ドラム1は、画像形成装置本体に対して回動自在に支持されている。感光ドラム1は、アルミニウム等の導電性基体11と、その外周に形成された光導電層12と、を基本構成とする円筒状の電子写真感光体である。感光ドラム1は、その中心に支軸13を有する。感光ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、支軸13を中心として図示矢印R1方向に回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1の帯電極性は負極性である。
【0021】
感光ドラム1の図中上方には、一次帯電手段としての帯電ローラ2が配置されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接して、感光ドラム1の表面を所定の極性、電位(暗部電位)に一様に帯電させる。帯電ローラ2は、中心に配置された導電性の芯金21と、その外周に形成された低抵抗導電層22と、中抵抗導電層23と、を有し、全体としてローラ状に構成されている。
【0022】
このような帯電ローラ2は、芯金21の両端部が軸受部材(不図示)によって回転自在に支持されると共に、感光ドラム1に対して平行に配置されている。これら両端部の軸受部材は、押圧手段(不図示)により感光ドラム1に向けて付勢されている。これにより、帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に所定の押圧力を持って圧接され、感光ドラム1の図示矢印R1方向の回転に伴って、図示矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス出力手段としての帯電バイアス電源24によって帯電バイアス電圧が印加される。これにより、感光ドラム1の表面は一様に接触帯電される。
【0023】
感光ドラム1の回転方向において帯電ローラ2の下流側には、レーザースキャナ3が配設されている。レーザースキャナ3は、画像情報に基づいてレーザー光をOFF/ONしながら走査して、感光ドラム1上を露光する。これにより、画像情報に応じた静電潜像が感光ドラム1上に形成される。
【0024】
感光ドラム1の回転方向においてレーザースキャナ3の下流側には、現像装置4が配置されている。現像装置4は、現像剤として非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備える2成分現像剤を収容した現像容器41を有する。現像容器41の感光ドラム1に面した開口部内に、現像剤担持体としての現像スリーブ42が回転自在に設置されている。現像スリーブ42内には、磁界発生手段としてのマグネットローラ43が、現像スリーブ42の回転に対して非回転に固定配置されている。マグネットローラ43の形成する磁界によって、2成分現像剤は、現像スリーブ42上に担持される。
【0025】
また、現像スリーブ42の図中下方位置には、現像スリーブ42上に担持された2成分現像剤を規制して薄層化する現像剤規制部材としての規制ブレード44が設置されている。現像容器41内は、現像室45と撹拌室46とに区画されており、その図中上方には補給用のトナーを収容した補給室47が設けられている。
【0026】
現像スリーブ42上の2成分現像剤の薄層は、現像スリーブ42の回転に伴って感光ドラム1と対向した現像領域へ搬送される。そして、現像スリーブ42上の2成分現像剤は、現像領域に位置するマグネットローラ43の現像主極の磁気力によって現像領域において穂立ちし、2成分現像剤の磁気ブラシが形成される。
【0027】
この磁気ブラシによって感光ドラム1の面上が擦られると共に、現像バイアス出力手段としての現像バイアス電源48によって現像スリーブ42に現像バイアス電圧が印加される。これにより、磁気ブラシの穂を構成するキャリアに付着しているトナーが、感光ドラム1上の静電像の露光部に付着して、トナー像が形成される。本実施形態では、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを、感光ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分に付着させる反転現像によって、感光ドラム1上にトナー像が形成される。
【0028】
感光ドラム1の回転方向において現像装置4の下流側の感光ドラム1の図中下方には、一次転写ローラ53が配設されている。一次転写ローラ53は、芯金531と、その外周面に円筒状に形成された導電層532と、によって構成されている。一次転写ローラ53は、両端部がスプリング等の押圧部材(不図示)によって感光ドラム1に向けて付勢されている。これにより、一次転写ローラ53の導電層532は、所定の押圧力で中間転写ベルト51を介して感光ドラム1の表面に圧接される。
【0029】
また、芯金531には、一次転写バイアス出力手段としての一次転写バイアス電源54が接続されている。感光ドラム1と一次転写ローラ53との間には一次転写部N1が形成される。一次転写部N1には、中間転写ベルト51が挟まれている。一次転写ローラ53は、中間転写ベルト51の内周面に接触して、中間転写ベルト51の移動に伴って回転する。
【0030】
画像形成時には、一次転写ローラ53に、一次転写バイアス電源54によって、トナーの正規の帯電極性(第1の極性:本実施形態では負極性)とは逆極性(第2の極性:本実施形態では正極性)の一次転写バイアス電圧が印加される。そして、一次転写ローラ53と感光ドラム1との間に、上記第1の極性のトナーを感光ドラム1上から中間転写ベルト51に向けて移動させる方向の電界が形成される。これによって、感光ドラム1上のトナー像が、中間転写ベルト51の表面に転写(一次転写)される。
【0031】
一次転写工程後の感光ドラム1の表面に残留したトナー(一次転写残トナー)等の付着物は、ドラムクリーナ6によって清掃される。ドラムクリーナ6は、ドラム清掃部材としてのクリーニングブレード61と、搬送スクリュー62と、ドラムクリーナハウジング63と、を有する。クリーニングブレード61は、加圧手段(不図示)によって、感光ドラム1に対して、所定の角度、圧力で当接されている。これにより、感光ドラム1の表面に残留したトナー等は、クリーニングブレード61によって感光ドラム1上から掻き取られて除去され、ドラムクリーナハウジング63内に回収される。回収されたトナー等は、搬送スクリュー62により搬送され、回収トナー収容部(不図示)に排出される。
【0032】
図1において、各感光ドラム1a〜1dの図中下方には、中間転写ベルト51、一次転写ローラ53a〜53d、二次転写内ローラ56、二次転写外ローラ57、中間転写ベルトクリーナ59等を有して、中間転写ユニット5が構成されている。二次転写内ローラ56は電気的に接地されている。また、二次転写外ローラ57には、二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源58が接続されている。二次転写内ローラ56は、中間転写ベルト51の内周面に接触して、中間転写ベルト51の移動に伴って回転する。
【0033】
例えば、フルカラー画像の形成時には、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdの各感光ドラム1a〜1d上に各色のトナー像が形成される。この各色のトナー像は、中間転写ベルト51を挟んで各感光ドラム1a〜1dに対向する各一次転写ローラ53から一次転写バイアスを受けて、順次中間転写ベルト51上に転写(一次転写)される。このトナー像は、中間転写ベルト51の回転に伴って二次転写部N2まで搬送される。
【0034】
一方、この時までに、記録材供給手段によって、記録材Pが二次転写部N2まで搬送される。即ち、記録材収容部であるカセット81からピックアップローラ82によって1枚ずつ取り出された記録材Pは、搬送ローラ83等によって二次転写部N2に搬送される。
【0035】
本実施形態では、画像形成時に、二次転写外ローラ57には、二次転写バイアス電源58によって、トナーの正規の帯電極性(第1の極性:負極性)とは逆極性(第2の極性:正極性)の二次転写バイアスが印加される。そして、二次転写内ローラ56と二次転写外ローラ57との間に、上記第1の極性のトナーを中間転写ベルト51上から記録材Pに向けて移動させる方向の電界が形成される。これによって、中間転写ベルト51上のトナー像は、記録材P上に転写(二次転写)される。二次転写部N2においてトナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置7へと搬送される。
【0036】
なお、二次転写工程後に中間転写ベルト51の外周面上に残留したトナー(二次転写残トナー)等の付着物は、中間転写ベルトクリーナ59によって除去、回収される。中間転写ベルトクリーナ59は、ドラムクリーナ6と同様の構成を有する。
【0037】
定着装置7は、回転自在に配設された定着ローラ71と、定着ローラ71に圧接しながら回転する加圧ローラ72と、を有する。定着ローラ71の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ73が配設されている。そして、このヒータ73へ供給する電圧等を制御することにより、定着ローラ71の表面の温度調節が行われている。
【0038】
定着装置7に記録材Pが搬送されてくると、一定速度で回転する定着ローラ71と加圧ローラ72との間を記録材Pが通過する際に、記録材Pは、その表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱される。これにより、記録材Pの表面上の未定着トナー像は、溶融して記録材Pに定着される。こうして、記録材P上にフルカラー画像が形成される。
【0039】
本実施形態では、感光ドラム1及び中間転写ベルト51の表面移動速度に相当するプロセス速度は、例えば250mm/secである。
【0040】
ここで、中間転写ベルト51は、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂によって構成することができる。例えば中間転写ベルト51として、表面抵抗率1012Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み100μmのPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いる。但し、これに限定されるものではなく、他の材料、体積抵抗率、及び厚みのものでも構わない。
【0041】
また、一次転写ローラ53は、例えば、外径8mmの芯金531と、厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層である導電層532と、によって構成されている。一次転写ローラ53の電気抵抗値は、例えば約105Ω(23℃/50%RH)とする。なお、一次転写ローラ53の電気抵抗値は、500g重の荷重の下で接地された金属ローラに当接された一次転写ローラ53を50mm/secの周速で回転させ、芯金531に100Vの電圧を印加して測定された電流値から求められる。
【0042】
また、二次転写内ローラ56は、例えば、外径18mmの芯金561と、厚さ2mmの導電性でソリッドのEPDMゴム層562と、によって構成されている。二次転写内ローラ56の電気抵抗値は、一次転写ローラ53と同様の測定方法において、例えば約104Ωとする。
【0043】
更に、二次転写外ローラ57は、例えば、外径12mmの芯金571と、厚さ6mmの導電性のNBRとEPDM共重合ゴムのスポンジ層572と、によって構成されている。二次転写外ローラ57の電気抵抗値は、一次転写ローラ53と同様の測定方法において、印加電圧が2000Vの場合に、例えば約108Ωとする。
【0044】
[当接状態と離間状態]
このように構成される本実施形態の画像形成装置100は、フルカラーで画像形成を行うフルカラーモード(第1モード)と、黒単色で画像形成を行う黒単色モード(第2モード、第3モード)とを実行可能である。また、黒単色モードでは、黒色以外のトナー像が形成される感光ドラム1a、1b、1cと中間転写ベルト51とが当接した当接状態で画像形成を行う第2モードと、これらが離間した離間状態で画像形成を行う第3モードとを実行可能である。
【0045】
このために中間転写ベルト51は、黒色のトナー像が担持される第1像担持体である感光ドラム1dに当接し、且つ、黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体である感光ドラム1a〜1cに対して当接及び離間可能に配置されている。また、図3に示す様に、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cに当接及び離間させる接離機構90を有する。
【0046】
接離機構90は、揺動フレーム91とカム92とを有する。揺動フレーム91は、上流規制ローラ58a、感光ドラム1a〜1cに担持されたトナー像を中間転写ベルト51に転写する第2転写手段である一次転写ローラ53a〜53cを支持し、揺動支点93を中心として揺動可能である。また、カム92は、揺動フレーム91に当接するように配置され、モータ94により駆動されて回転することにより、揺動フレーム91を揺動させる。
【0047】
当接状態では、揺動フレーム91が図3の破線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと中間転写ベルト51とが当接し、且つ、一次転写ローラ53a〜53cと感光ドラム1a〜1cとのそれぞれの間で一次転写部が形成される。この当接状態では、4色全てのトナー像を中間転写ベルト51に転写することができる。また、黒色のトナー像のみを形成する場合でも、感光ドラム1a〜1dの全てが回転駆動する。
【0048】
一方、離間状態では、揺動フレーム91が図3の実線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと中間転写ベルト51とが離間する。この離間状態では、感光ドラム1dのみが中間転写ベルト51に当接しており、第1転写手段である一次転写ローラ53dと感光ドラム1dとの間で一次転写部が形成され、黒色のトナー像のみ中間転写ベルト51に転写することができる。また、中間転写ベルト51が回転駆動しても、感光ドラム1a〜1cを有する画像形成部Sa〜Scの駆動は停止している。なお、図示の例では、上流規制ローラ58aは離間状態でも中間転写ベルト51に接している。但し、図中のテンションローラ55に中間転写ベルト51の位置が規制されることから、離間状態では必ずしも上流規制ローラ58bが中間転写ベルト51に接触する必要はない。
【0049】
図4は、画像形成装置100の、黒色の一次転写部の転写ニップN1d近傍を示す模式図であり、(a)当接状態と(b)離間状態とのそれぞれにおける、中間転写ベルト51と一次転写ローラ53dとの当接状態を示している。一般的に、一次転写ローラ53は飛散り対策のため感光ドラム1に対して下流にシフトした場所に配置される。よって、本実施形態の場合も、一次転写ローラ53は感光ドラム1に対して下流にシフトしている。
【0050】
一次転写ローラ53dは、不図示の押圧部材によって中間転写ベルト51に向けて付勢されている。このため、当接状態では、転写ニップN1dにおいて、一次転写ローラ53dの導電層532は、中間転写ベルト51の裏面に沿って平面状に変形して転写ニップを形成している。
【0051】
一方、離間状態では、中間転写ベルト51は図4(b)の実線位置に移動し、転写ニップN1dの特に上流側において、一次転写ローラ53の導電層532は、下方に押し下げられる。そして、中間転写ベルト51の上流側が一次転写ローラ53dに若干巻き付く姿勢をとる。この結果、当接状態に比べて離間状態では、感光ドラム1dと対向する中間転写ベルト51の領域と一次転写ローラ53dとが接する転写ニップN1dの、中間転写ベルト51の回転方向の幅(ニップ幅)が狭くなる。
【0052】
図5に、当接状態と離間状態とで、一次転写ローラ53dに印加される電圧Vtrと、一次転写ローラ53dから感光ドラム1dへ流れ込む転写電流Itrとの関係を示す。当接状態におけるVtrとItrの関係は図中の実線で示され、離間状態における関係は破線で示されている。
【0053】
前述のように、当接状態に比較して離間状態は転写ニップN1dのニップ幅が狭くなるため、転写電流は流れ易くなり、破線は実線よりも低電圧側へシフトする。即ち、ニップ幅が狭くなると、感光ドラム1dと中間転写ベルト51との間の放電領域が広がり、その分、感光ドラム1dと一次転写ローラ53dとの間に電流が流れ始める電圧が小さくなる。したがって、離間状態において、当接状態と同じ転写電流を流すためには、図中のΔVだけ小さい電圧を印加する必要がある。
【0054】
[転写バイアスの設定]
次に、上述の第1、第2、第3の各モードの黒色の画像形成部Sdの転写部の転写バイアスの設定について説明する。まず、図6に、実験で求めた黒色の感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに流れる一次転写電流に対する一次転写効率を示す。実験を行った温湿度環境は23℃、50%RHである。所定の暗部電位Vdは一定とし、本実施形態では−400Vとした。
【0055】
実験の結果、当接状態の黒単色(第2モード)のベタ画像(トナー載り量が最大)の転写効率は20μAのときが最適値となった。これに対して、離間状態の黒単色(第3モード)のベタ画像の転写効率は24μAのときが最適値となった。これは図4で示したように、転写ニップ上流の微小ギャップ増加による定常放電の増加が原因と考えられる。
【0056】
また、フルカラーモード(第1モード)での黒色の画像形成部Sdの転写部の転写効率は、35μAのときが最適値となった。この時の条件は、ベタ画像の載り量を100%とした場合、イエロー33.3%、マゼンタ33.3%、シアン33.3%、ブラック100%、合計200%である。
【0057】
それぞれの最適値を図7に示す。本実実施形態では、それぞれのモードで最適な転写効率となる、感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに対する電流値を、それぞれのモードで設定している。即ち、第1モードと第2モードと第3モードとのそれぞれで、感光ドラム1dと一次転写ローラ53dとの間に流れる電流値が異なるように、一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスを制御するようにしている。このために、図2に示す様に、制御手段である制御器Cが一次転写バイアス電源54を制御して、それぞれのモードで印加する転写バイアスを設定している。この転写バイアスの制御としては、定電圧制御と定電流制御とがあるが、本実施形態では定電圧制御を採用している。制御の具体例については後述する。
【0058】
また、本実施形態の場合、二次転写部N2に印加する二次転写バイアスも、各モード毎に設定している。即ち、第1モードで印加される二次転写バイアスと、第2モード及び第3モードで印加される二次転写バイアスとを異ならせている。このために、図1に示す様に、制御手段である制御器Cが二次転写バイアス電源58を制御して、それぞれのモードで印加する二次転写バイアスを設定している。図8にそれぞれのモードにおける二次転写バイアス(本実施形態では電圧)のテーブルを示す。
【0059】
中間転写ベルト51に転写されるトナー載り量は、フルカラーと黒単色で異なるので、二次転写バイアスの設定も各々の場合において最適化が必要であり、載り量が多いほど二次転写電圧を上げる必要がある。本実施形態では、フルカラー(第1モード)の二次転写バイアスを3500V、黒単色(第2、第3モード)の二次転写バイアスを3000Vとした。このような二次転写バイアスの制御は、一次転写部の転写バイアスと同様に、定電圧制御で行う。なお、二次転写部でも、電流値を設定して定電流で制御しても良い。
【0060】
[定電圧制御]
次に、転写印加電圧の設定方法としての定電圧制御について、詳細を説明する。本実施形態の一次転写ローラ53は、導電性ウレタンスポンジを用いているが、このような導電ローラは製造時の抵抗ばらつきを抑えることが難しいうえ、雰囲気環境の温湿度変化や耐久劣化などにより抵抗が変化してしまう。これに対して、転写バイアスを定電流制御にした場合には、転写される画像の印字比率等によって転写電圧が変動してしまい、最適な転写が行われない場合がある。このため、本実施形態では、ATVC(Active Transfer Voltage Control)と呼ばれる定電圧制御を用いている。
【0061】
ATVCを行うために、例えば、転写高圧電源(一次転写バイアス電源54)に、定電流制御と定電圧制御とを実行可能な制御手段、及び、このときの電圧、電流を検知する手段を有する。そして、画像形成の前回転時などの非画像形成時(感光ドラム1に画像が形成されていない状態)で、転写バイアスを定電流制御し、このときの感光ドラム1の帯電電位(暗部電位)と一次転写ローラ53の抵抗値に対する最適な転写電圧を検知する。画像を転写する際には、先に求めた転写電圧で定電圧制御を行う。このような方法を用いることで、必要な転写電流を、定電圧制御を行いながら流すことが可能となる。
【0062】
より具体的に説明する。図2に示す様に、感光ドラム1と一次転写ローラ53との間の電流を検知する電流検知手段である電流検知センサ54aを有する。制御器Cは、非画像形成時に、当接状態で複数の異なる電圧を印加して、それぞれ電流検知センサ54aで電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求める。即ち、感光ドラム1の表面を帯電ローラ2により、所定の暗部電位Vdに帯電させる。次いで、感光ドラム1の表面のVdに帯電された領域が中間転写ベルト51とニップを形成する位置(一次転写部)に達したときに、一次転写ローラ53により複数の電圧をシーケンシャルに印加することで、最適転写電圧Vtrを求める。
【0063】
この最適転写電圧を求める方法についてはいくつかの方法があるが、ここでは、一次転写バイアス電源54により複数の電圧バイアスV1およびV2を一次転写ローラ53が1周する間印加し、このときの電流値を電流検知センサ54aにより検知する。そして、一次転写ローラ53が1周する間の電流値の平均値であるI1およびI2を求め、図9に示すようにこれらを線形補完することで最適な転写電流Itrを流すのに必要な電圧(最適転写電圧)Vtrを得る。なお、トナー像の転写効率は一般的に転写電流に依存することが知られており、ここでは最も高い転写効率を示す転写電流Itrを、あらかじめ前述の実験により求めてある。
【0064】
なお、以上のようなATVC動作は、一次転写ローラ53の状態を検知する必要があるタイミングに実行することが有効である。例えば、装置の電源をONしたときや環境の温湿度が変動したとき、所定枚数印字することにより一次転写ローラ53の抵抗値が変動してしまった場合に実行することが有効である。
【0065】
[各モードにおける最適転写電圧の設定]
上述のようなATVCは、最適な転写電圧を設定できる反面、ダウンタイムが生じることが避けられない。また、本実施形態の場合、フルカラーモードから黒単色モードに切り替わる際に、ダウンタイムを抑制すべく、一定枚数黒単色画像が続く場合に、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cから離間させる(離間状態とする)ようにしている。即ち、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cから離間させる場合、ベルトを止めたりベルトの回転速度を落としたりする必要があるため、ダウンタイムが生じることが避けられない。一方、黒単色画像が一定枚数(例えば5枚)以内であれば、感光ドラム1a〜1cが中間転写ベルト51と当接して回転しても、部品の消耗や電力消費は僅かである。このため、黒単色画像が一定枚数以内であれば、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cから離間させることなく画像形成を続行することにより、ダウンタイムを抑制できる。
【0066】
本実施形態の場合、このように、黒単色モードでも中間転写ベルト51と感光ドラム1a〜1cとが離間している状態と当接している状態との2つのモードがあり、これにフルカラーモードを加えると、全部で3つのモードを有することになる。即ち、上述した第1〜第3モードを有する。このように3つのモードのそれぞれで転写効率を最適にすべく、モードを切り替える際にそれぞれ上述のATVCなどの制御を実行すると、ダウンタイムが大きくなり、生産性が著しく低下してしまう。
【0067】
そこで本実施形態の場合には、予め、当接状態と離間状態との、転写電圧と転写電流の特性の違いを取得しておく。そして、例えば、当接状態で上述のATVCを行って最適な転写電圧で画像を形成する。また、途中で離間状態の黒単色モード(第3モード)に切り替える際に、当接状態の黒単色モード(第2モード)におけるATVC結果を基に、第3モードに最適な印加電圧を算出し、バイアスを印加する。
【0068】
即ち、上述のように求めたATVCの関係に基づいて、第1モード及び第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定する。第1モードと第2モードとの違いは、フルカラーで画像を出力するか黒単色で画像を出力するかの違いである。このため、前述の図6に示したような、各モードでの最適な転写電流の違いを予め求めておき、上述のように求めたItrから、前述の図7に示したように第1モード及び第2モードでの最適な転写電圧を設定する。
【0069】
また、決定された第2モードでの電圧値と、予め設定された第2モードに対する第3モードの電圧特性の関係とから、第3モードでの電圧値を決定する。第2モードと第3モードとの違いは、黒単色の画像を当接状態で出力するか離間状態で出力するかである。当接状態と離間状態との転写電圧Vtrと転写電流Itrの関係は、前述の図5に示した通りであり、離間状態において当接状態と同じ転写電流を流すためには、図中のΔVだけ小さい電圧を印加する必要がある。このため、前述の図6に示したような、各モードでの最適な転写電流の違いを予め求めておき、上述のように求めた第2モードでの最適な転写電流から、前述の図7に示したように第3モードでの最適な転写電圧を設定する。
【0070】
また、一次転写電流の最適値は、環境温湿度によって異なる値をとる。このため、本実施形態の場合、図1に示す様に、画像形成装置100の中又は周囲(本実施形態では画像形成装置100の中)の温度及び湿度を検知する環境検知手段である環境センサ100aを有する。そして、制御器Cは、環境センサ100aの検知結果に基づいて、一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスを、図10に示すテーブルに基づいて異ならせている。
【0071】
このように求めた各モードでの最適な転写電圧を、それぞれのモードでの画像形成時に、それぞれ一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスとして設定し、定電圧で制御する。
【0072】
上述の制御の流れの一例について、図11及び図12を用いて説明する。当接状態で、電源投入時もしくは所定枚数を印字した後(S101)に、ATVCを実行する(S102)。続いて、印刷JOBが入力される(S103)。このときの雰囲気の温湿度を、図12の環境センサ100aにより検知する(S104)。
【0073】
ここで、当接状態で黒単色画像を出力するか離間状態で黒単色画像を出力するかは、印刷JOBの内容に応じて決定する(S105)。本実施形態では、黒単色画像が所定枚数(5枚)以上連続で出力される場合に、5枚目以降から離間状態とする。なお、この所定枚数は、5枚以外に、例えば、3枚、7枚、10枚・・・などそれぞれ任意に設定しても良い。
【0074】
黒単色画像が5枚未満である場合(S105のN)、図12の制御器CにおいてS102で行われたATVCの結果より転写電圧を設定する(S106)。決定された電圧が図12の一次転写バイアス電源54により印加され、当接状態で印字される(S107)。JOBが終了すると待機状態となる(S108)。
【0075】
一方、S105で黒単色画像が5枚以上出力される場合(S105のY)、図12の接離機構90が動作することにより、図3おける上流規制ローラ58aが、図中の破線から実線位置まで退避する。そして、中間転写ベルト51が感光ドラム1a、1b、1cから離間し、感光ドラム1dのみに接触する、当接状態となる(S109)。なお、中間転写ベルト51が離間した後に、感光ドラム1a、1b、1cは停止し、その表面が消耗されるのを防ぐ。
【0076】
続いて、図12の制御器Cにおいて、黒色の一次転写ローラ53dに印加される転写電圧は、S102で、当接状態で行ったATVCを基に決定された転写電圧Vtrを補正して設定される。即ち、図10のテーブルとATVCの結果からΔVが補正された、「Vtr+ΔV」が転写電圧として設定される(S110)。
【0077】
例えば23℃、50%RHの温湿度環境において、当接状態でATVCが実行された場合、第1モードから第2モードへ移行する際のΔVは−150Vであり、第1モードから第3モードへ移行する際のΔVも−150Vである。但し、前述したように、ここでの両者の暗部電位Vdに対する電流値は当然異なるため、前述の図7や図10に示したような電流値が各モードで設定される。設定された電圧が図12の一次転写バイアス電源54により印加され、離間状態の黒単色モード(第3モード)で印字される(S111)。JOBが終了すると待機状態となる(S108)。
【0078】
図13は、本実施形態のYMCK各色の画像が感光ドラム1a〜1dより中間転写ベルト51へ転写されるタイミングを示すタイミングチャートである。当接状態から離間状態に切り替わるときに、中間転写ベルト51が感光ドラム1a、1b、1cから離間するが、黒色の感光ドラム1dから中間転写ベルト51への転写は、中断することなく行われる。即ち、本実施形態の場合、当接状態から離間状態へ切り替わるときのダウンタイムがまったくない。
【0079】
これに対して図14は、当接状態から離間状態へ切り替わる際に、黒色の画像形成部Sdの一次転写部においてATVCを行う比較例である。この方法では、当接状態においても最適な転写電圧を設定することができるが、その際にダウンタイムが発生し、ユーザーを待たせることとなってしまう。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、当接状態から離間状態に切り替わる際に、非画像形成時に行ったATVCの結果を元に、本体に記憶されている環境温湿度ごとのΔVを用いて転写電圧を設定する。これにより、モードが切り替わるたびにATVCを実行する必要がなく、ダウンタイムを抑制できる。
【0081】
また、それぞれのモードで、感光ドラム1dと一次転写ローラ53dとの間に流れる電流値が異なるように、一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスを制御しているため、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる。即ち、各モードで、最適な転写を得ることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、当接状態と離間状態との転写電圧の差分ΔVは、温湿度ごとの値をもつ構成を示した。但し、その他にも、電源投入時に当接状態と離間状態との両方でATVCを行ってその差分を取得しておき、その後、モードが切り替わる際に、この差分から最適転写電圧を算出することも可能である。さらに、電源投入時だけではなく、当接状態と離間状態との両方で、画像間の転写電流を検知して、その差分を取得することも可能である。
【0083】
また、本実施形態では、当接状態から離間状態へ切り替わる際にΔVを用いて換算する方法を述べたが、逆に離間状態から当接状態へ切り替わる際に適用することも可能である。
【0084】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図15ないし図18を用いて説明する。図15は、本実施形態の画像形成装置200の概略断面構成を示している。画像形成装置200は、直接転写方式を用いたフルカラー電子写真画像形成装置である。なお、本実施形態の画像形成装置200において、前述の図1などに示した第1の実施形態の画像形成装置100のものと実質的に同じ機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。また、画像形成装置200において、各画像形成部Sa〜Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
【0085】
画像形成装置200は、各画像形成部Sa〜Sdの感光ドラム1a〜1dに隣接して、記録材搬送部材としての周回移動可能なベルト体、即ち、搬送ベルト51aを有する。搬送ベルト51aは、複数の支持部材として駆動ローラ52a、テンションローラ55aに掛け渡されている。搬送ベルト51aは、ベルト駆動手段としての駆動ローラ52aによって駆動力が伝達されて、図示矢印R4方向に周回移動する。
【0086】
また、搬送ベルト51aの内周面側において各感光ドラム1a〜1dに対向する位置には、転写部材としての転写ローラ53a´〜53d´が配置されている。各転写ローラ53a´〜53d´によって搬送ベルト51aが各感光ドラム1a〜1dに向けて付勢され、各感光ドラム1a〜1dと搬送ベルト51aとが接触する転写部(転写ニップ)Na〜Ndが形成されている。
【0087】
本実施形態の画像形成装置200では、各画像形成部Sa〜Sdにて形成された感光ドラム1a〜1d上の画像が、各感光ドラム1a〜1dに隣接して移動通過する搬送ベルト51aに担持された紙等の記録材Pへ順次多重転写される。
【0088】
画像形成時には、記録材供給手段によって、記録材Pが搬送ベルト51aへと搬送される。即ち、記録材収容部であるカセット81からピックアップローラ82によって1枚ずつ取り出された記録材Pは、搬送ローラ83等によって搬送ベルト51aに向けて搬送される。そして、記録材Pは、吸着手段である吸着ローラ55bによって搬送ベルト51a上に静電吸着されて、各画像形成部Sa〜Sdの各転写部へと搬送される。
【0089】
例えば、フルカラー画像の形成時には、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdの各感光ドラム1a〜1d上に各色のトナー像が形成される。この各色のトナー像は、記録材Pと搬送ベルト51aとを挟んで各感光ドラム1a〜1dに対向する各転写ローラ53a´〜53d´から転写バイアスを受けて、順次搬送ベルト51a上の記録材P上に転写される。
【0090】
この各転写部Na〜Ndにおける転写工程が終了すると、記録材Pは分離除電部材65による分離バイアスを受けて搬送ベルト51aから分離されて、定着手段としての定着装置7へと搬送される。
【0091】
なお、転写工程後に搬送ベルト51a上に残留したトナー(転写残トナー)等は、転写ベルトクリーナ59´によって除去、回収される。
【0092】
ここで、搬送ベルト51aは、前述の中間転写ベルト51と同様に、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂によって構成することができる。本実施形態では、表面抵抗率1014Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧1000V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmの、カーボンが分散されたPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。しかし、これに限定されるものではなく、他の材料、体積抵抗率、及び厚みのものでも構わない。
【0093】
また、本実施形態では、転写ローラ53´は、前述の一次転写ローラ53と同様の構成である。即ち、転写ローラ53´は、外径8mmの芯金と、厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層と、によって構成されている。転写ローラ53´の電気抵抗値は、約106.5Ω(23℃/50%RH)であった。なお、転写ローラ53´の電気抵抗値は、500g重の荷重の下で電気的に接地された金属ローラに当接された転写ローラ53´を50mm/secの周速で回転させ、芯金に100Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められる。
【0094】
[当接状態と離間状態]
このように構成される本実施形態の画像形成装置200は、フルカラーで画像形成を行うフルカラーモード(第1モード)と、黒単色で画像形成を行う黒単色モード(第2モード、第3モード)とを実行可能である。また、黒単色モードでは、黒色以外のトナー像が形成される感光ドラム1a、1b、1cと搬送ベルト51aとが当接した当接状態で画像形成を行う第2モードと、これらが離間した離間状態で画像形成を行う第3モードとを実行可能である。
【0095】
このために搬送ベルト51aは、黒色のトナー像が担持される第1像担持体である感光ドラム1dに当接し、且つ、黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体である感光ドラム1a〜1cに対して当接及び離間可能に配置されている。また、図15に示す様に、搬送ベルト51aを感光ドラム1a〜1cに当接及び離間させる接離機構90aを有する。
【0096】
接離機構90aは、揺動フレーム91aとカム92aとを有する。揺動フレーム91aは、テンションローラ55a、吸着ローラ55b、感光ドラム1a〜1cに担持されたトナー像を記録材に転写する第2転写手段である転写ローラ53a´〜53c´を支持し、揺動支点93aを中心として揺動可能である。また、カム92aは、揺動フレーム91aに当接するように配置され、モータ94aにより駆動されて回転することにより、揺動フレーム91aを揺動させる。
【0097】
当接状態では、揺動フレーム91aが図15の破線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと搬送ベルト51aとが当接し、且つ、転写ローラ53a´〜53c´と感光ドラム1a〜1cとのそれぞれの間で転写部が形成される。この当接状態では、4色全てのトナー像を搬送ベルト51aに搬送される記録材に転写することができる。また、黒色のトナー像のみを形成する場合でも、感光ドラム1a〜1dの全てが回転駆動する。
【0098】
一方、離間状態では、揺動フレーム91aが図15の実線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと搬送ベルト51aとが離間する。このとき、テンションローラ55aが図中の実線の位置まで下がって配置されることで、搬送ベルト51aの配置が変化する。同時に、搬送ベルト51aに記録材を吸着する位置が下がることに伴い、吸着ローラ55bや記録材を搬送ベルト51aへ導くガイド部材も下部へ移動する。この離間状態では、感光ドラム1dのみが搬送ベルト51aに当接しており、第1転写手段である転写ローラ53d´と感光ドラム1dとの間で転写部が形成され、黒色のトナー像のみ搬送ベルト51aに搬送される記録材に転写することができる。また、搬送ベルト51aが回転駆動しても、感光ドラム1a〜1cを有する画像形成部Sa〜Scの駆動は停止している。
【0099】
本実施形態においても、第1の実施形態で図4を用いて説明したように、当接状態に比べ、離間状態は、搬送ベルト51aが転写ローラ53d´に巻き付く。これにより、当接状態に比べて離間状態では、感光ドラム1dと対向する搬送ベルト51aの領域と転写ローラ53d´とが接する転写ニップの、搬送ベルト51aの回転方向の幅(ニップ幅)が狭くなる。この結果、転写電圧と転写電流の関係も、第1の実施形態で図5を用いて説明したように、離間状態において、当接状態と同じ転写電流を流すためには、小さい電圧を印加する必要がある。
【0100】
[転写バイアスの設定]
次に、上述の第1、第2、第3の各モードの黒色の画像形成部の転写部の転写バイアスの設定について説明する。まず、前述の第1の実施形態の図6のように、黒色の感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに流れる転写電流に対する転写効率を、実験で求めた。実験を行った温湿度環境は23℃、50%RHである。所定の暗部電位Vdは一定とし、本実施形態では−400Vとした。
【0101】
実験の結果、当接状態の黒単色(第2モード)のベタ画像(トナー載り量が最大)の転写効率は20μAのときが最適値となった。これに対して、離間状態の黒単色(第3モード)のベタ画像の転写効率は24μAのときが最適値となった。これは図4で示したように、転写ニップ上流の微小ギャップ増加による定常放電の増加が原因と考えられる。
【0102】
また、フルカラーモード(第1モード)での黒色の画像形成部Sdの転写部の転写効率は、35μAのときが最適値となった。この時の条件は、ベタ画像の載り量を100%とした場合、イエロー33.3%、マゼンタ33.3%、シアン33.3%、ブラック100%、合計200%である。
【0103】
それぞれの最適値を図16に示す。本実実施形態では、それぞれのモードで最適な転写効率となる、感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに対する電流値を、それぞれのモードで設定している。即ち、第1モードと第2モードと第3モードとのそれぞれで、感光ドラム1dと転写ローラ53d´との間に流れる電流値が異なるように、転写ローラ53d´に印加する転写バイアスを制御するようにしている。このために、図15に示す様に、制御手段である制御器Cが転写バイアス電源54´を制御して、それぞれのモードで印加する転写バイアスを設定している。この転写バイアスの制御としては、定電圧制御と定電流制御とがあるが、本実施形態では定電圧制御を採用している。定電圧制御の具体例については第1の実施形態と同様である。
【0104】
[各モードにおける最適転写電圧の設定]
また、本実施形態の場合、第1の実施形態と異なり、当接状態と離間状態とのそれぞれでATVCを行って、各モードの転写電圧を設定している。即ち、本実施形態の場合も、感光ドラム1dと転写ローラ53d´との間の電流を検知する電流検知手段である電流検知センサ54a´を有する。制御器Cは、非画像形成時に、当接状態と離間状態とのそれぞれで、複数の異なる電圧を印加してそれぞれ電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求める。
【0105】
次いで、当接状態での電流と電圧との関係に基づいて、第1モード及び第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定する。また、離間状態での電流と電圧との関係に基づいて、第3モードでの電圧値を決定する。そして、それぞれ転写ローラ53d´に印加する転写バイアスを定電圧で制御する。
【0106】
上述の制御の流れの一例について、図17を用いて説明する。電源投入時(S201)に、当接状態及び離間状態におけるATVCを実行し、これらの転写電圧と転写電流の関係を取得しておく(S202)。図18は、本実施形態の画像形成装置200における、転写電圧と転写電流の関係を示している。当接状態におけるVtrとItrの関係は図中の実線で示され、離間状態における関係は破線で示されている。本実施形態においても、離間状態において、当接状態と同じ転写電流を流すためには、小さい電圧を印加する必要がある。即ち、図18において、当接状態における転写電流はIc、離間状態での転写電流はIkで示されている。そして、離間状態での転写電圧は、当接状態におけるATVCで得られた図18の実線の関係に対し、目標転写電流Ikに対応する転写電圧VcからΔVを引いて得られる電圧Vkとなる。
【0107】
続いて、印刷JOBが入力される(S203)。ここで、当接状態で黒単色画像を出力するか離間状態で黒単色画像を出力するかは、印刷JOBの内容に応じて決定する(S204)。本実施形態では、黒単色画像が所定枚数(5枚)以上連続で出力される場合に、5枚目以降から離間状態とする。なお、この所定枚数は、5枚以外に、例えば、3枚、7枚、10枚・・・などそれぞれ任意に設定しても良い。
【0108】
黒単色画像が5枚未満である場合(S204のN)、制御器CにおいてS202ですでに行われた、当接状態でのATVCの結果より転写電圧を設定する(S205)。設定された電圧が転写バイアス電源54´により印加され、当接状態で印字される(S206)。JOBが終了すると待機状態となる(S207)。
【0109】
一方、S204で黒単色画像が5枚以上出力される場合(S204のY)、接離機構90aが動作することにより、図15におけるテンションローラ55aが、図中の破線から実線位置まで退避する。そして、搬送ベルト51aが感光ドラム1a、1b、1cから離間し、感光ドラム1dのみに接触する、当接状態となる(S208)。これと同時に、黒色の転写ローラ53d´に印加される転写電圧は、S202で得られた離間状態でのATVCの結果から最適電圧に設定される(S209)。設定された電圧が転写バイアス電源54´により印加され、離間状態で印字される(S210)。JOBが終了すると待機状態となる(S207)。
【0110】
なお、本実施形態の場合も、黒色の画像形成部の転写電流は、フルカラーモード(第1モード)よりも単色モード(第2モード、第3モード)の方が低めに設定される。これは、フルカラーモードが複数の色のトナーを多重に重ね合わせて転写するのに対して、黒単色モードでは単色分のトナーのみを転写すれば良いためである。
【0111】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置では、当接状態から離間状態に切り替わる際に、電源投入時に得た当接状態及び離間状態の転写電圧と転写電流の関係を用いて転写電圧を設定している。このため、ATVCによるダウンタイムを抑制でき、最適な転写を得ることができる。
【0112】
なお、本実施形態においては、当接状態及び離間状態の転写電圧と転写電流の関係を、電源投入時にATVCを行うことによって得た。但し、電源投入時だけではなく、当接状態と離間状態との両方で、画像間の転写電流を検知して、その差分を取得することも可能である。
【0113】
また、本実施形態においても、当接状態から離間状態へ切り替わる際にΔVを用いて換算する方法を述べたが、逆に離間状態から当接状態へ切り替わる際に適用することも可能である。その他の構造及び作用は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0114】
<他の実施形態>
以上、本発明を第1、第2の実施形態により説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の像担持体、また他種の画像形成装置にも適用できる。また、これまで説明した実施形態において、説明に使用した数値等は一例を示すものであり、本発明はそれらに限定するものではない。
【0115】
また、第1の実施形態と第2の実施形態とは、適宜、組み合わせたり、或いは、構成を入れ替えたりして実施可能である。例えば、第2の実施形態に第1の実施形態と同様の環境センサに基づく転写バイアスの設定を行うようにしても良い。
【0116】
更に、上述の実施形態では、印加する転写バイアスとして電圧を制御する構成について説明したが、電流を制御するようにしても良い。
【符号の説明】
【0117】
1a、1b、1c・・・感光ドラム(第2像担持体)、1d・・・感光ドラム(第1像担持体)、2a、2b、2c、2d・・・帯電ローラ(帯電手段)、3a、3b、3c、3d・・・レーザースキャナ(露光手段)、4a、4b、4c、4d・・・現像装置(現像手段)、51・・・中間転写ベルト(中間転写体)、51a・・・搬送ベルト(記録材搬送部材)、53a、53b、53c・・・一次転写ローラ(第2転写手段)、53d・・・一次転写ローラ(第1転写手段)、53a´、53b´、53c´・・・転写ローラ(第2転写手段)、53d´・・・転写ローラ(第1転写手段)、54・・・一次転写バイアス電源、54´・・・転写バイアス電源、54a、54a´・・・電流検知センサ(電流検知手段)、57・・・二次転写外ローラ(二次転写手段)、58・・・二次転写バイアス電源、80、80a・・・接離機構、C・・・制御器(制御手段)、P・・・記録材、Sa、Sb、Sc、Sd・・・画像形成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関し、特に、黒単色で画像を出力するモードを有する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばフルカラー画像の形成が可能なカラー画像形成装置として、直接転写方式や中間転写方式の画像形成装置が知られている。直接転写方式では、単数又は複数の像担持体としての感光ドラムに形成されたトナー像を、記録材搬送部材として周回移動可能なベルト体(以下「記録材搬送ベルト」という)上に担持された記録材に転写する。中間転写方式では、単数又は複数の感光ドラムに形成されたトナー像を、一旦、中間転写体としての周回移動可能なベルト体(以下「中間転写ベルト」という)に転写(一次転写)する。その後、中間転写ベルト上のトナー像を記録材に転写(二次転写)する。中間転写方式では、多様な記録材に画像を形成することが容易で、記録材の選択性を高めることができる。
【0003】
一方、カラー画像形成装置においては、黒単色のみを用いて画像形成をする場合がある。このとき、黒色以外の感光ドラムを駆動すると、感光ドラムやその他の関連部材などが消耗したり、電力を消費してしまったりする。これに対して、黒色のみの画像形成時には、黒色以外の他の感光ドラムと、記録材搬送ベルト又は中間転写ベルト(以下、単にベルトと言う)を離間させる構成が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−249519号公報
【特許文献2】特開平09−146383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、黒色のみの画像形成時(黒単色モードの場合)に、ベルトを他の感光ドラムから離間させた場合、ベルトの張り角度がフルカラーモードと比べて変わる。このため、黒色に使用される感光ドラムとベルトとの当接状態が、黒単色モードとフルカラーモードとで変化してしまう。感光ドラムとベルトとの当接状態が変化すれば、電流と電圧の特性も変化するため、同じように転写バイアスを印加した場合、何れかのモードで転写不良が生じる可能性がある。
【0006】
一方、フルカラーモードと黒単色モードを有する構造で、フルカラーモードから黒単色モードに切り替わる際に、ダウンタイムを抑制すべく、一定枚数黒単色画像が続く場合に、ベルトを他の感光ドラムから離間させることが考えられる。即ち、ベルトを他の感光ドラムから離間させる場合、ベルトを止めたりベルトの回転速度を落としたりする必要があるため、ダウンタイムが生じることが避けられない。一方、黒単色画像が一定枚数(例えば5枚)以内であれば、他の感光ドラムがベルトと当接して回転しても、部品の消耗や電力消費は僅かである。このため、黒単色画像が一定枚数以内であれば、ベルトを他の感光ドラムから離間させることなく画像形成を続行することにより、ダウンタイムを抑制できる。
【0007】
このように、黒単色モードでも、ベルトと他の感光ドラムとが離間している状態と当接している状態との2つのモードがあり、これにフルカラーモードを加えると、全部で3つのモードを有することになる。ベルトと他の感光ドラムとが当接している当接状態であっても、フルカラーモードと黒単色モードとでは、それぞれトナー載り量が異なるため、同じように転写バイアスを印加した場合、何れかのモードで転写不良が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、フルカラーモードと、中間転写体又は記録材搬送部材と他の像担持体とが当接及び離間する2つの状態を有する黒単色モードとを実行する構造で、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、黒色のトナー像を担持する第1像担持体と、黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体と、前記第1像担持体に当接し、且つ、前記第2像担持体に対して当接及び離間可能に配置される中間転写体(又は、記録材を搬送する記録材搬送部材)と、前記中間転写体(又は記録材搬送部材)を前記第2像担持体に当接及び離間させる接離機構と、転写バイアスが印加されることにより、前記第1像担持体に担持されたトナー像を、前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第1転写手段と、前記中間転写体(又は記録材搬送部材)を前記第2像担持体に当接させた当接状態で、転写バイアスが印加されることにより、前記第2像担持体に担持されたトナー像を前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第2転写手段と、を備えた画像形成装置において、前記当接状態で、前記第1像担持体及び前記第2像担持体にそれぞれ担持されたトナー像を前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第1モードと、前記当接状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第2モードと、前記中間転写体(又は記録材搬送部材)を前記第2像担持体から離間させた離間状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体(又は記録材搬送部材により搬送される記録材)に転写する第3モードと、を実行可能で、前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する制御手段を有する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、それぞれのモードで、第1像担持体と第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、第1転写手段に印加する転写バイアスを制御しているため、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】1つの画像形成部を取り出して詳しく示す概略構成断面図。
【図3】図1の画像形成装置の離間状態を示す図。
【図4】(a)は当接状態の、(b)は離間状態の、黒色の画像形成部の一次転写部を拡大して示す模式図。
【図5】黒色の一次転写部における、当接状態と離間状態とでの電流と電圧との関係を示す図。
【図6】それぞれのモードでの黒色の一次転写部の転写電流と転写効率との関係を示す図。
【図7】所定の環境における、それぞれのモードでの黒色の一次転写部の転写電流と転写電圧を示す図。
【図8】所定の環境における、それぞれのモードでの2次転写部の転写電圧を示す図。
【図9】ATVCにより求めた電圧と電流との関係を示す図。
【図10】各環境における、それぞれのモードでの黒色の一次転写部の転写電流を示す図。
【図11】第1の実施形態の制御の流れの一例を示すフローチャート。
【図12】第1の実施形態の一次転写部に関する制御のブロック図。
【図13】第1の実施形態で、一次転写バイアスを印加するタイミングを示すタイミングチャート。
【図14】比較例で、一次転写バイアスを印加するタイミングを示すタイミングチャート。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図16】所定の環境における、それぞれのモードでの黒色の転写部の転写電流と転写電圧とを示す図。
【図17】第2の実施形態の制御の流れの一例を示すフローチャート。
【図18】黒色の一次転写部における、当接状態と離間状態とでの電流と電圧との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0013】
[画像形成装置]
図1に示す画像形成装置100は、4つの画像形成部を有する中間転写方式を用いた、フルカラー電子写真画像形成装置である。画像形成装置100は、複数の画像形成部として、第1、第2、第3、第4の画像形成部(プロセスユニット)Sa、Sb、Sc、Sdを有する。各画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を形成するためのものである。
【0014】
なお、各画像形成部Sa〜Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
【0015】
画像形成部Sは、像担持体としての感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ2、露光手段としてのレーザースキャナ3、現像手段としての現像装置4、ドラムクリーニング手段としてのドラムクリーナ6等が、感光ドラム1の回転方向に沿って順次配設されている。また、各画像形成部Sa〜Sdの感光ドラム1a〜1dに隣接して、中間転写体としての周回移動可能なベルト体、即ち、中間転写ベルト51が配置されている。
【0016】
中間転写ベルト51は、複数の支持部材として駆動ローラ52、テンションローラ55、二次転写内ローラ56、上流規制ローラ58aに掛け渡されている。中間転写ベルト51は、ベルト駆動手段である駆動ローラ52によって駆動力が伝達されて、図示矢印R3方向に周回移動する。
【0017】
また、中間転写ベルト51の内周面側において各感光ドラム1a〜1dに対向する位置には、一次転写部材(第1転写手段、第2転写手段)としての一次転写ローラ53a〜53dが配置されている。各一次転写ローラ53a〜53dによって中間転写ベルト51が各感光ドラム1a〜1dに向けて付勢され、各感光ドラム1a〜1dと中間転写ベルト51とが当接する一次転写部(一次転写ニップ)N1a〜N1dが形成されている。
【0018】
また、中間転写ベルト51の外周面側において二次転写内ローラ56に対向する位置には、二次転写部材(二次転写手段)としての二次転写外ローラ57が配置されている。二次転写外ローラ57が中間転写ベルト51の外周面に接触して、二次転写部(二次転写ニップ)N2が形成されている。
【0019】
各画像形成部Sa〜Sdにて形成された感光ドラム1a〜1d上の画像は、一次転写ローラ53a〜53dに転写バイアスが印加されることにより、各感光ドラム1a〜1dに隣接して移動通過する中間転写ベルト51上に順次多重転写される。その後、中間転写ベルト51上に転写された画像は、更に二次転写部N2において、二次転写外ローラ57に二次転写バイアスが印加されることにより、紙等の記録材Pへ転写される。
【0020】
次に、図2を用いて画像形成部Sをより詳しく説明する。感光ドラム1は、画像形成装置本体に対して回動自在に支持されている。感光ドラム1は、アルミニウム等の導電性基体11と、その外周に形成された光導電層12と、を基本構成とする円筒状の電子写真感光体である。感光ドラム1は、その中心に支軸13を有する。感光ドラム1は、駆動手段(不図示)によって、支軸13を中心として図示矢印R1方向に回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1の帯電極性は負極性である。
【0021】
感光ドラム1の図中上方には、一次帯電手段としての帯電ローラ2が配置されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接して、感光ドラム1の表面を所定の極性、電位(暗部電位)に一様に帯電させる。帯電ローラ2は、中心に配置された導電性の芯金21と、その外周に形成された低抵抗導電層22と、中抵抗導電層23と、を有し、全体としてローラ状に構成されている。
【0022】
このような帯電ローラ2は、芯金21の両端部が軸受部材(不図示)によって回転自在に支持されると共に、感光ドラム1に対して平行に配置されている。これら両端部の軸受部材は、押圧手段(不図示)により感光ドラム1に向けて付勢されている。これにより、帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に所定の押圧力を持って圧接され、感光ドラム1の図示矢印R1方向の回転に伴って、図示矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス出力手段としての帯電バイアス電源24によって帯電バイアス電圧が印加される。これにより、感光ドラム1の表面は一様に接触帯電される。
【0023】
感光ドラム1の回転方向において帯電ローラ2の下流側には、レーザースキャナ3が配設されている。レーザースキャナ3は、画像情報に基づいてレーザー光をOFF/ONしながら走査して、感光ドラム1上を露光する。これにより、画像情報に応じた静電潜像が感光ドラム1上に形成される。
【0024】
感光ドラム1の回転方向においてレーザースキャナ3の下流側には、現像装置4が配置されている。現像装置4は、現像剤として非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備える2成分現像剤を収容した現像容器41を有する。現像容器41の感光ドラム1に面した開口部内に、現像剤担持体としての現像スリーブ42が回転自在に設置されている。現像スリーブ42内には、磁界発生手段としてのマグネットローラ43が、現像スリーブ42の回転に対して非回転に固定配置されている。マグネットローラ43の形成する磁界によって、2成分現像剤は、現像スリーブ42上に担持される。
【0025】
また、現像スリーブ42の図中下方位置には、現像スリーブ42上に担持された2成分現像剤を規制して薄層化する現像剤規制部材としての規制ブレード44が設置されている。現像容器41内は、現像室45と撹拌室46とに区画されており、その図中上方には補給用のトナーを収容した補給室47が設けられている。
【0026】
現像スリーブ42上の2成分現像剤の薄層は、現像スリーブ42の回転に伴って感光ドラム1と対向した現像領域へ搬送される。そして、現像スリーブ42上の2成分現像剤は、現像領域に位置するマグネットローラ43の現像主極の磁気力によって現像領域において穂立ちし、2成分現像剤の磁気ブラシが形成される。
【0027】
この磁気ブラシによって感光ドラム1の面上が擦られると共に、現像バイアス出力手段としての現像バイアス電源48によって現像スリーブ42に現像バイアス電圧が印加される。これにより、磁気ブラシの穂を構成するキャリアに付着しているトナーが、感光ドラム1上の静電像の露光部に付着して、トナー像が形成される。本実施形態では、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを、感光ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分に付着させる反転現像によって、感光ドラム1上にトナー像が形成される。
【0028】
感光ドラム1の回転方向において現像装置4の下流側の感光ドラム1の図中下方には、一次転写ローラ53が配設されている。一次転写ローラ53は、芯金531と、その外周面に円筒状に形成された導電層532と、によって構成されている。一次転写ローラ53は、両端部がスプリング等の押圧部材(不図示)によって感光ドラム1に向けて付勢されている。これにより、一次転写ローラ53の導電層532は、所定の押圧力で中間転写ベルト51を介して感光ドラム1の表面に圧接される。
【0029】
また、芯金531には、一次転写バイアス出力手段としての一次転写バイアス電源54が接続されている。感光ドラム1と一次転写ローラ53との間には一次転写部N1が形成される。一次転写部N1には、中間転写ベルト51が挟まれている。一次転写ローラ53は、中間転写ベルト51の内周面に接触して、中間転写ベルト51の移動に伴って回転する。
【0030】
画像形成時には、一次転写ローラ53に、一次転写バイアス電源54によって、トナーの正規の帯電極性(第1の極性:本実施形態では負極性)とは逆極性(第2の極性:本実施形態では正極性)の一次転写バイアス電圧が印加される。そして、一次転写ローラ53と感光ドラム1との間に、上記第1の極性のトナーを感光ドラム1上から中間転写ベルト51に向けて移動させる方向の電界が形成される。これによって、感光ドラム1上のトナー像が、中間転写ベルト51の表面に転写(一次転写)される。
【0031】
一次転写工程後の感光ドラム1の表面に残留したトナー(一次転写残トナー)等の付着物は、ドラムクリーナ6によって清掃される。ドラムクリーナ6は、ドラム清掃部材としてのクリーニングブレード61と、搬送スクリュー62と、ドラムクリーナハウジング63と、を有する。クリーニングブレード61は、加圧手段(不図示)によって、感光ドラム1に対して、所定の角度、圧力で当接されている。これにより、感光ドラム1の表面に残留したトナー等は、クリーニングブレード61によって感光ドラム1上から掻き取られて除去され、ドラムクリーナハウジング63内に回収される。回収されたトナー等は、搬送スクリュー62により搬送され、回収トナー収容部(不図示)に排出される。
【0032】
図1において、各感光ドラム1a〜1dの図中下方には、中間転写ベルト51、一次転写ローラ53a〜53d、二次転写内ローラ56、二次転写外ローラ57、中間転写ベルトクリーナ59等を有して、中間転写ユニット5が構成されている。二次転写内ローラ56は電気的に接地されている。また、二次転写外ローラ57には、二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源58が接続されている。二次転写内ローラ56は、中間転写ベルト51の内周面に接触して、中間転写ベルト51の移動に伴って回転する。
【0033】
例えば、フルカラー画像の形成時には、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdの各感光ドラム1a〜1d上に各色のトナー像が形成される。この各色のトナー像は、中間転写ベルト51を挟んで各感光ドラム1a〜1dに対向する各一次転写ローラ53から一次転写バイアスを受けて、順次中間転写ベルト51上に転写(一次転写)される。このトナー像は、中間転写ベルト51の回転に伴って二次転写部N2まで搬送される。
【0034】
一方、この時までに、記録材供給手段によって、記録材Pが二次転写部N2まで搬送される。即ち、記録材収容部であるカセット81からピックアップローラ82によって1枚ずつ取り出された記録材Pは、搬送ローラ83等によって二次転写部N2に搬送される。
【0035】
本実施形態では、画像形成時に、二次転写外ローラ57には、二次転写バイアス電源58によって、トナーの正規の帯電極性(第1の極性:負極性)とは逆極性(第2の極性:正極性)の二次転写バイアスが印加される。そして、二次転写内ローラ56と二次転写外ローラ57との間に、上記第1の極性のトナーを中間転写ベルト51上から記録材Pに向けて移動させる方向の電界が形成される。これによって、中間転写ベルト51上のトナー像は、記録材P上に転写(二次転写)される。二次転写部N2においてトナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置7へと搬送される。
【0036】
なお、二次転写工程後に中間転写ベルト51の外周面上に残留したトナー(二次転写残トナー)等の付着物は、中間転写ベルトクリーナ59によって除去、回収される。中間転写ベルトクリーナ59は、ドラムクリーナ6と同様の構成を有する。
【0037】
定着装置7は、回転自在に配設された定着ローラ71と、定着ローラ71に圧接しながら回転する加圧ローラ72と、を有する。定着ローラ71の内部には、ハロゲンランプ等のヒータ73が配設されている。そして、このヒータ73へ供給する電圧等を制御することにより、定着ローラ71の表面の温度調節が行われている。
【0038】
定着装置7に記録材Pが搬送されてくると、一定速度で回転する定着ローラ71と加圧ローラ72との間を記録材Pが通過する際に、記録材Pは、その表裏両面からほぼ一定の圧力、温度で加圧、加熱される。これにより、記録材Pの表面上の未定着トナー像は、溶融して記録材Pに定着される。こうして、記録材P上にフルカラー画像が形成される。
【0039】
本実施形態では、感光ドラム1及び中間転写ベルト51の表面移動速度に相当するプロセス速度は、例えば250mm/secである。
【0040】
ここで、中間転写ベルト51は、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂によって構成することができる。例えば中間転写ベルト51として、表面抵抗率1012Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧100V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み100μmのPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いる。但し、これに限定されるものではなく、他の材料、体積抵抗率、及び厚みのものでも構わない。
【0041】
また、一次転写ローラ53は、例えば、外径8mmの芯金531と、厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層である導電層532と、によって構成されている。一次転写ローラ53の電気抵抗値は、例えば約105Ω(23℃/50%RH)とする。なお、一次転写ローラ53の電気抵抗値は、500g重の荷重の下で接地された金属ローラに当接された一次転写ローラ53を50mm/secの周速で回転させ、芯金531に100Vの電圧を印加して測定された電流値から求められる。
【0042】
また、二次転写内ローラ56は、例えば、外径18mmの芯金561と、厚さ2mmの導電性でソリッドのEPDMゴム層562と、によって構成されている。二次転写内ローラ56の電気抵抗値は、一次転写ローラ53と同様の測定方法において、例えば約104Ωとする。
【0043】
更に、二次転写外ローラ57は、例えば、外径12mmの芯金571と、厚さ6mmの導電性のNBRとEPDM共重合ゴムのスポンジ層572と、によって構成されている。二次転写外ローラ57の電気抵抗値は、一次転写ローラ53と同様の測定方法において、印加電圧が2000Vの場合に、例えば約108Ωとする。
【0044】
[当接状態と離間状態]
このように構成される本実施形態の画像形成装置100は、フルカラーで画像形成を行うフルカラーモード(第1モード)と、黒単色で画像形成を行う黒単色モード(第2モード、第3モード)とを実行可能である。また、黒単色モードでは、黒色以外のトナー像が形成される感光ドラム1a、1b、1cと中間転写ベルト51とが当接した当接状態で画像形成を行う第2モードと、これらが離間した離間状態で画像形成を行う第3モードとを実行可能である。
【0045】
このために中間転写ベルト51は、黒色のトナー像が担持される第1像担持体である感光ドラム1dに当接し、且つ、黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体である感光ドラム1a〜1cに対して当接及び離間可能に配置されている。また、図3に示す様に、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cに当接及び離間させる接離機構90を有する。
【0046】
接離機構90は、揺動フレーム91とカム92とを有する。揺動フレーム91は、上流規制ローラ58a、感光ドラム1a〜1cに担持されたトナー像を中間転写ベルト51に転写する第2転写手段である一次転写ローラ53a〜53cを支持し、揺動支点93を中心として揺動可能である。また、カム92は、揺動フレーム91に当接するように配置され、モータ94により駆動されて回転することにより、揺動フレーム91を揺動させる。
【0047】
当接状態では、揺動フレーム91が図3の破線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと中間転写ベルト51とが当接し、且つ、一次転写ローラ53a〜53cと感光ドラム1a〜1cとのそれぞれの間で一次転写部が形成される。この当接状態では、4色全てのトナー像を中間転写ベルト51に転写することができる。また、黒色のトナー像のみを形成する場合でも、感光ドラム1a〜1dの全てが回転駆動する。
【0048】
一方、離間状態では、揺動フレーム91が図3の実線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと中間転写ベルト51とが離間する。この離間状態では、感光ドラム1dのみが中間転写ベルト51に当接しており、第1転写手段である一次転写ローラ53dと感光ドラム1dとの間で一次転写部が形成され、黒色のトナー像のみ中間転写ベルト51に転写することができる。また、中間転写ベルト51が回転駆動しても、感光ドラム1a〜1cを有する画像形成部Sa〜Scの駆動は停止している。なお、図示の例では、上流規制ローラ58aは離間状態でも中間転写ベルト51に接している。但し、図中のテンションローラ55に中間転写ベルト51の位置が規制されることから、離間状態では必ずしも上流規制ローラ58bが中間転写ベルト51に接触する必要はない。
【0049】
図4は、画像形成装置100の、黒色の一次転写部の転写ニップN1d近傍を示す模式図であり、(a)当接状態と(b)離間状態とのそれぞれにおける、中間転写ベルト51と一次転写ローラ53dとの当接状態を示している。一般的に、一次転写ローラ53は飛散り対策のため感光ドラム1に対して下流にシフトした場所に配置される。よって、本実施形態の場合も、一次転写ローラ53は感光ドラム1に対して下流にシフトしている。
【0050】
一次転写ローラ53dは、不図示の押圧部材によって中間転写ベルト51に向けて付勢されている。このため、当接状態では、転写ニップN1dにおいて、一次転写ローラ53dの導電層532は、中間転写ベルト51の裏面に沿って平面状に変形して転写ニップを形成している。
【0051】
一方、離間状態では、中間転写ベルト51は図4(b)の実線位置に移動し、転写ニップN1dの特に上流側において、一次転写ローラ53の導電層532は、下方に押し下げられる。そして、中間転写ベルト51の上流側が一次転写ローラ53dに若干巻き付く姿勢をとる。この結果、当接状態に比べて離間状態では、感光ドラム1dと対向する中間転写ベルト51の領域と一次転写ローラ53dとが接する転写ニップN1dの、中間転写ベルト51の回転方向の幅(ニップ幅)が狭くなる。
【0052】
図5に、当接状態と離間状態とで、一次転写ローラ53dに印加される電圧Vtrと、一次転写ローラ53dから感光ドラム1dへ流れ込む転写電流Itrとの関係を示す。当接状態におけるVtrとItrの関係は図中の実線で示され、離間状態における関係は破線で示されている。
【0053】
前述のように、当接状態に比較して離間状態は転写ニップN1dのニップ幅が狭くなるため、転写電流は流れ易くなり、破線は実線よりも低電圧側へシフトする。即ち、ニップ幅が狭くなると、感光ドラム1dと中間転写ベルト51との間の放電領域が広がり、その分、感光ドラム1dと一次転写ローラ53dとの間に電流が流れ始める電圧が小さくなる。したがって、離間状態において、当接状態と同じ転写電流を流すためには、図中のΔVだけ小さい電圧を印加する必要がある。
【0054】
[転写バイアスの設定]
次に、上述の第1、第2、第3の各モードの黒色の画像形成部Sdの転写部の転写バイアスの設定について説明する。まず、図6に、実験で求めた黒色の感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに流れる一次転写電流に対する一次転写効率を示す。実験を行った温湿度環境は23℃、50%RHである。所定の暗部電位Vdは一定とし、本実施形態では−400Vとした。
【0055】
実験の結果、当接状態の黒単色(第2モード)のベタ画像(トナー載り量が最大)の転写効率は20μAのときが最適値となった。これに対して、離間状態の黒単色(第3モード)のベタ画像の転写効率は24μAのときが最適値となった。これは図4で示したように、転写ニップ上流の微小ギャップ増加による定常放電の増加が原因と考えられる。
【0056】
また、フルカラーモード(第1モード)での黒色の画像形成部Sdの転写部の転写効率は、35μAのときが最適値となった。この時の条件は、ベタ画像の載り量を100%とした場合、イエロー33.3%、マゼンタ33.3%、シアン33.3%、ブラック100%、合計200%である。
【0057】
それぞれの最適値を図7に示す。本実実施形態では、それぞれのモードで最適な転写効率となる、感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに対する電流値を、それぞれのモードで設定している。即ち、第1モードと第2モードと第3モードとのそれぞれで、感光ドラム1dと一次転写ローラ53dとの間に流れる電流値が異なるように、一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスを制御するようにしている。このために、図2に示す様に、制御手段である制御器Cが一次転写バイアス電源54を制御して、それぞれのモードで印加する転写バイアスを設定している。この転写バイアスの制御としては、定電圧制御と定電流制御とがあるが、本実施形態では定電圧制御を採用している。制御の具体例については後述する。
【0058】
また、本実施形態の場合、二次転写部N2に印加する二次転写バイアスも、各モード毎に設定している。即ち、第1モードで印加される二次転写バイアスと、第2モード及び第3モードで印加される二次転写バイアスとを異ならせている。このために、図1に示す様に、制御手段である制御器Cが二次転写バイアス電源58を制御して、それぞれのモードで印加する二次転写バイアスを設定している。図8にそれぞれのモードにおける二次転写バイアス(本実施形態では電圧)のテーブルを示す。
【0059】
中間転写ベルト51に転写されるトナー載り量は、フルカラーと黒単色で異なるので、二次転写バイアスの設定も各々の場合において最適化が必要であり、載り量が多いほど二次転写電圧を上げる必要がある。本実施形態では、フルカラー(第1モード)の二次転写バイアスを3500V、黒単色(第2、第3モード)の二次転写バイアスを3000Vとした。このような二次転写バイアスの制御は、一次転写部の転写バイアスと同様に、定電圧制御で行う。なお、二次転写部でも、電流値を設定して定電流で制御しても良い。
【0060】
[定電圧制御]
次に、転写印加電圧の設定方法としての定電圧制御について、詳細を説明する。本実施形態の一次転写ローラ53は、導電性ウレタンスポンジを用いているが、このような導電ローラは製造時の抵抗ばらつきを抑えることが難しいうえ、雰囲気環境の温湿度変化や耐久劣化などにより抵抗が変化してしまう。これに対して、転写バイアスを定電流制御にした場合には、転写される画像の印字比率等によって転写電圧が変動してしまい、最適な転写が行われない場合がある。このため、本実施形態では、ATVC(Active Transfer Voltage Control)と呼ばれる定電圧制御を用いている。
【0061】
ATVCを行うために、例えば、転写高圧電源(一次転写バイアス電源54)に、定電流制御と定電圧制御とを実行可能な制御手段、及び、このときの電圧、電流を検知する手段を有する。そして、画像形成の前回転時などの非画像形成時(感光ドラム1に画像が形成されていない状態)で、転写バイアスを定電流制御し、このときの感光ドラム1の帯電電位(暗部電位)と一次転写ローラ53の抵抗値に対する最適な転写電圧を検知する。画像を転写する際には、先に求めた転写電圧で定電圧制御を行う。このような方法を用いることで、必要な転写電流を、定電圧制御を行いながら流すことが可能となる。
【0062】
より具体的に説明する。図2に示す様に、感光ドラム1と一次転写ローラ53との間の電流を検知する電流検知手段である電流検知センサ54aを有する。制御器Cは、非画像形成時に、当接状態で複数の異なる電圧を印加して、それぞれ電流検知センサ54aで電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求める。即ち、感光ドラム1の表面を帯電ローラ2により、所定の暗部電位Vdに帯電させる。次いで、感光ドラム1の表面のVdに帯電された領域が中間転写ベルト51とニップを形成する位置(一次転写部)に達したときに、一次転写ローラ53により複数の電圧をシーケンシャルに印加することで、最適転写電圧Vtrを求める。
【0063】
この最適転写電圧を求める方法についてはいくつかの方法があるが、ここでは、一次転写バイアス電源54により複数の電圧バイアスV1およびV2を一次転写ローラ53が1周する間印加し、このときの電流値を電流検知センサ54aにより検知する。そして、一次転写ローラ53が1周する間の電流値の平均値であるI1およびI2を求め、図9に示すようにこれらを線形補完することで最適な転写電流Itrを流すのに必要な電圧(最適転写電圧)Vtrを得る。なお、トナー像の転写効率は一般的に転写電流に依存することが知られており、ここでは最も高い転写効率を示す転写電流Itrを、あらかじめ前述の実験により求めてある。
【0064】
なお、以上のようなATVC動作は、一次転写ローラ53の状態を検知する必要があるタイミングに実行することが有効である。例えば、装置の電源をONしたときや環境の温湿度が変動したとき、所定枚数印字することにより一次転写ローラ53の抵抗値が変動してしまった場合に実行することが有効である。
【0065】
[各モードにおける最適転写電圧の設定]
上述のようなATVCは、最適な転写電圧を設定できる反面、ダウンタイムが生じることが避けられない。また、本実施形態の場合、フルカラーモードから黒単色モードに切り替わる際に、ダウンタイムを抑制すべく、一定枚数黒単色画像が続く場合に、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cから離間させる(離間状態とする)ようにしている。即ち、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cから離間させる場合、ベルトを止めたりベルトの回転速度を落としたりする必要があるため、ダウンタイムが生じることが避けられない。一方、黒単色画像が一定枚数(例えば5枚)以内であれば、感光ドラム1a〜1cが中間転写ベルト51と当接して回転しても、部品の消耗や電力消費は僅かである。このため、黒単色画像が一定枚数以内であれば、中間転写ベルト51を感光ドラム1a〜1cから離間させることなく画像形成を続行することにより、ダウンタイムを抑制できる。
【0066】
本実施形態の場合、このように、黒単色モードでも中間転写ベルト51と感光ドラム1a〜1cとが離間している状態と当接している状態との2つのモードがあり、これにフルカラーモードを加えると、全部で3つのモードを有することになる。即ち、上述した第1〜第3モードを有する。このように3つのモードのそれぞれで転写効率を最適にすべく、モードを切り替える際にそれぞれ上述のATVCなどの制御を実行すると、ダウンタイムが大きくなり、生産性が著しく低下してしまう。
【0067】
そこで本実施形態の場合には、予め、当接状態と離間状態との、転写電圧と転写電流の特性の違いを取得しておく。そして、例えば、当接状態で上述のATVCを行って最適な転写電圧で画像を形成する。また、途中で離間状態の黒単色モード(第3モード)に切り替える際に、当接状態の黒単色モード(第2モード)におけるATVC結果を基に、第3モードに最適な印加電圧を算出し、バイアスを印加する。
【0068】
即ち、上述のように求めたATVCの関係に基づいて、第1モード及び第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定する。第1モードと第2モードとの違いは、フルカラーで画像を出力するか黒単色で画像を出力するかの違いである。このため、前述の図6に示したような、各モードでの最適な転写電流の違いを予め求めておき、上述のように求めたItrから、前述の図7に示したように第1モード及び第2モードでの最適な転写電圧を設定する。
【0069】
また、決定された第2モードでの電圧値と、予め設定された第2モードに対する第3モードの電圧特性の関係とから、第3モードでの電圧値を決定する。第2モードと第3モードとの違いは、黒単色の画像を当接状態で出力するか離間状態で出力するかである。当接状態と離間状態との転写電圧Vtrと転写電流Itrの関係は、前述の図5に示した通りであり、離間状態において当接状態と同じ転写電流を流すためには、図中のΔVだけ小さい電圧を印加する必要がある。このため、前述の図6に示したような、各モードでの最適な転写電流の違いを予め求めておき、上述のように求めた第2モードでの最適な転写電流から、前述の図7に示したように第3モードでの最適な転写電圧を設定する。
【0070】
また、一次転写電流の最適値は、環境温湿度によって異なる値をとる。このため、本実施形態の場合、図1に示す様に、画像形成装置100の中又は周囲(本実施形態では画像形成装置100の中)の温度及び湿度を検知する環境検知手段である環境センサ100aを有する。そして、制御器Cは、環境センサ100aの検知結果に基づいて、一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスを、図10に示すテーブルに基づいて異ならせている。
【0071】
このように求めた各モードでの最適な転写電圧を、それぞれのモードでの画像形成時に、それぞれ一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスとして設定し、定電圧で制御する。
【0072】
上述の制御の流れの一例について、図11及び図12を用いて説明する。当接状態で、電源投入時もしくは所定枚数を印字した後(S101)に、ATVCを実行する(S102)。続いて、印刷JOBが入力される(S103)。このときの雰囲気の温湿度を、図12の環境センサ100aにより検知する(S104)。
【0073】
ここで、当接状態で黒単色画像を出力するか離間状態で黒単色画像を出力するかは、印刷JOBの内容に応じて決定する(S105)。本実施形態では、黒単色画像が所定枚数(5枚)以上連続で出力される場合に、5枚目以降から離間状態とする。なお、この所定枚数は、5枚以外に、例えば、3枚、7枚、10枚・・・などそれぞれ任意に設定しても良い。
【0074】
黒単色画像が5枚未満である場合(S105のN)、図12の制御器CにおいてS102で行われたATVCの結果より転写電圧を設定する(S106)。決定された電圧が図12の一次転写バイアス電源54により印加され、当接状態で印字される(S107)。JOBが終了すると待機状態となる(S108)。
【0075】
一方、S105で黒単色画像が5枚以上出力される場合(S105のY)、図12の接離機構90が動作することにより、図3おける上流規制ローラ58aが、図中の破線から実線位置まで退避する。そして、中間転写ベルト51が感光ドラム1a、1b、1cから離間し、感光ドラム1dのみに接触する、当接状態となる(S109)。なお、中間転写ベルト51が離間した後に、感光ドラム1a、1b、1cは停止し、その表面が消耗されるのを防ぐ。
【0076】
続いて、図12の制御器Cにおいて、黒色の一次転写ローラ53dに印加される転写電圧は、S102で、当接状態で行ったATVCを基に決定された転写電圧Vtrを補正して設定される。即ち、図10のテーブルとATVCの結果からΔVが補正された、「Vtr+ΔV」が転写電圧として設定される(S110)。
【0077】
例えば23℃、50%RHの温湿度環境において、当接状態でATVCが実行された場合、第1モードから第2モードへ移行する際のΔVは−150Vであり、第1モードから第3モードへ移行する際のΔVも−150Vである。但し、前述したように、ここでの両者の暗部電位Vdに対する電流値は当然異なるため、前述の図7や図10に示したような電流値が各モードで設定される。設定された電圧が図12の一次転写バイアス電源54により印加され、離間状態の黒単色モード(第3モード)で印字される(S111)。JOBが終了すると待機状態となる(S108)。
【0078】
図13は、本実施形態のYMCK各色の画像が感光ドラム1a〜1dより中間転写ベルト51へ転写されるタイミングを示すタイミングチャートである。当接状態から離間状態に切り替わるときに、中間転写ベルト51が感光ドラム1a、1b、1cから離間するが、黒色の感光ドラム1dから中間転写ベルト51への転写は、中断することなく行われる。即ち、本実施形態の場合、当接状態から離間状態へ切り替わるときのダウンタイムがまったくない。
【0079】
これに対して図14は、当接状態から離間状態へ切り替わる際に、黒色の画像形成部Sdの一次転写部においてATVCを行う比較例である。この方法では、当接状態においても最適な転写電圧を設定することができるが、その際にダウンタイムが発生し、ユーザーを待たせることとなってしまう。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、当接状態から離間状態に切り替わる際に、非画像形成時に行ったATVCの結果を元に、本体に記憶されている環境温湿度ごとのΔVを用いて転写電圧を設定する。これにより、モードが切り替わるたびにATVCを実行する必要がなく、ダウンタイムを抑制できる。
【0081】
また、それぞれのモードで、感光ドラム1dと一次転写ローラ53dとの間に流れる電流値が異なるように、一次転写ローラ53dに印加する転写バイアスを制御しているため、それぞれのモードでの転写不良を抑制できる。即ち、各モードで、最適な転写を得ることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、当接状態と離間状態との転写電圧の差分ΔVは、温湿度ごとの値をもつ構成を示した。但し、その他にも、電源投入時に当接状態と離間状態との両方でATVCを行ってその差分を取得しておき、その後、モードが切り替わる際に、この差分から最適転写電圧を算出することも可能である。さらに、電源投入時だけではなく、当接状態と離間状態との両方で、画像間の転写電流を検知して、その差分を取得することも可能である。
【0083】
また、本実施形態では、当接状態から離間状態へ切り替わる際にΔVを用いて換算する方法を述べたが、逆に離間状態から当接状態へ切り替わる際に適用することも可能である。
【0084】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図15ないし図18を用いて説明する。図15は、本実施形態の画像形成装置200の概略断面構成を示している。画像形成装置200は、直接転写方式を用いたフルカラー電子写真画像形成装置である。なお、本実施形態の画像形成装置200において、前述の図1などに示した第1の実施形態の画像形成装置100のものと実質的に同じ機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。また、画像形成装置200において、各画像形成部Sa〜Sdの構成は、用いられるトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
【0085】
画像形成装置200は、各画像形成部Sa〜Sdの感光ドラム1a〜1dに隣接して、記録材搬送部材としての周回移動可能なベルト体、即ち、搬送ベルト51aを有する。搬送ベルト51aは、複数の支持部材として駆動ローラ52a、テンションローラ55aに掛け渡されている。搬送ベルト51aは、ベルト駆動手段としての駆動ローラ52aによって駆動力が伝達されて、図示矢印R4方向に周回移動する。
【0086】
また、搬送ベルト51aの内周面側において各感光ドラム1a〜1dに対向する位置には、転写部材としての転写ローラ53a´〜53d´が配置されている。各転写ローラ53a´〜53d´によって搬送ベルト51aが各感光ドラム1a〜1dに向けて付勢され、各感光ドラム1a〜1dと搬送ベルト51aとが接触する転写部(転写ニップ)Na〜Ndが形成されている。
【0087】
本実施形態の画像形成装置200では、各画像形成部Sa〜Sdにて形成された感光ドラム1a〜1d上の画像が、各感光ドラム1a〜1dに隣接して移動通過する搬送ベルト51aに担持された紙等の記録材Pへ順次多重転写される。
【0088】
画像形成時には、記録材供給手段によって、記録材Pが搬送ベルト51aへと搬送される。即ち、記録材収容部であるカセット81からピックアップローラ82によって1枚ずつ取り出された記録材Pは、搬送ローラ83等によって搬送ベルト51aに向けて搬送される。そして、記録材Pは、吸着手段である吸着ローラ55bによって搬送ベルト51a上に静電吸着されて、各画像形成部Sa〜Sdの各転写部へと搬送される。
【0089】
例えば、フルカラー画像の形成時には、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdの各感光ドラム1a〜1d上に各色のトナー像が形成される。この各色のトナー像は、記録材Pと搬送ベルト51aとを挟んで各感光ドラム1a〜1dに対向する各転写ローラ53a´〜53d´から転写バイアスを受けて、順次搬送ベルト51a上の記録材P上に転写される。
【0090】
この各転写部Na〜Ndにおける転写工程が終了すると、記録材Pは分離除電部材65による分離バイアスを受けて搬送ベルト51aから分離されて、定着手段としての定着装置7へと搬送される。
【0091】
なお、転写工程後に搬送ベルト51a上に残留したトナー(転写残トナー)等は、転写ベルトクリーナ59´によって除去、回収される。
【0092】
ここで、搬送ベルト51aは、前述の中間転写ベルト51と同様に、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような誘電体樹脂によって構成することができる。本実施形態では、表面抵抗率1014Ω/□(JIS−K6911法準拠プローブを使用、印加電圧1000V、印加時間60sec、23℃/50%RH)、厚み80μmの、カーボンが分散されたPI(ポリイミド)樹脂で形成されたものを用いた。しかし、これに限定されるものではなく、他の材料、体積抵抗率、及び厚みのものでも構わない。
【0093】
また、本実施形態では、転写ローラ53´は、前述の一次転写ローラ53と同様の構成である。即ち、転写ローラ53´は、外径8mmの芯金と、厚さ4mmの導電性ウレタンスポンジ層と、によって構成されている。転写ローラ53´の電気抵抗値は、約106.5Ω(23℃/50%RH)であった。なお、転写ローラ53´の電気抵抗値は、500g重の荷重の下で電気的に接地された金属ローラに当接された転写ローラ53´を50mm/secの周速で回転させ、芯金に100Vの電圧を印加して測定された電流の関係から求められる。
【0094】
[当接状態と離間状態]
このように構成される本実施形態の画像形成装置200は、フルカラーで画像形成を行うフルカラーモード(第1モード)と、黒単色で画像形成を行う黒単色モード(第2モード、第3モード)とを実行可能である。また、黒単色モードでは、黒色以外のトナー像が形成される感光ドラム1a、1b、1cと搬送ベルト51aとが当接した当接状態で画像形成を行う第2モードと、これらが離間した離間状態で画像形成を行う第3モードとを実行可能である。
【0095】
このために搬送ベルト51aは、黒色のトナー像が担持される第1像担持体である感光ドラム1dに当接し、且つ、黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体である感光ドラム1a〜1cに対して当接及び離間可能に配置されている。また、図15に示す様に、搬送ベルト51aを感光ドラム1a〜1cに当接及び離間させる接離機構90aを有する。
【0096】
接離機構90aは、揺動フレーム91aとカム92aとを有する。揺動フレーム91aは、テンションローラ55a、吸着ローラ55b、感光ドラム1a〜1cに担持されたトナー像を記録材に転写する第2転写手段である転写ローラ53a´〜53c´を支持し、揺動支点93aを中心として揺動可能である。また、カム92aは、揺動フレーム91aに当接するように配置され、モータ94aにより駆動されて回転することにより、揺動フレーム91aを揺動させる。
【0097】
当接状態では、揺動フレーム91aが図15の破線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと搬送ベルト51aとが当接し、且つ、転写ローラ53a´〜53c´と感光ドラム1a〜1cとのそれぞれの間で転写部が形成される。この当接状態では、4色全てのトナー像を搬送ベルト51aに搬送される記録材に転写することができる。また、黒色のトナー像のみを形成する場合でも、感光ドラム1a〜1dの全てが回転駆動する。
【0098】
一方、離間状態では、揺動フレーム91aが図15の実線で示す位置に移動され、感光ドラム1a〜1cと搬送ベルト51aとが離間する。このとき、テンションローラ55aが図中の実線の位置まで下がって配置されることで、搬送ベルト51aの配置が変化する。同時に、搬送ベルト51aに記録材を吸着する位置が下がることに伴い、吸着ローラ55bや記録材を搬送ベルト51aへ導くガイド部材も下部へ移動する。この離間状態では、感光ドラム1dのみが搬送ベルト51aに当接しており、第1転写手段である転写ローラ53d´と感光ドラム1dとの間で転写部が形成され、黒色のトナー像のみ搬送ベルト51aに搬送される記録材に転写することができる。また、搬送ベルト51aが回転駆動しても、感光ドラム1a〜1cを有する画像形成部Sa〜Scの駆動は停止している。
【0099】
本実施形態においても、第1の実施形態で図4を用いて説明したように、当接状態に比べ、離間状態は、搬送ベルト51aが転写ローラ53d´に巻き付く。これにより、当接状態に比べて離間状態では、感光ドラム1dと対向する搬送ベルト51aの領域と転写ローラ53d´とが接する転写ニップの、搬送ベルト51aの回転方向の幅(ニップ幅)が狭くなる。この結果、転写電圧と転写電流の関係も、第1の実施形態で図5を用いて説明したように、離間状態において、当接状態と同じ転写電流を流すためには、小さい電圧を印加する必要がある。
【0100】
[転写バイアスの設定]
次に、上述の第1、第2、第3の各モードの黒色の画像形成部の転写部の転写バイアスの設定について説明する。まず、前述の第1の実施形態の図6のように、黒色の感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに流れる転写電流に対する転写効率を、実験で求めた。実験を行った温湿度環境は23℃、50%RHである。所定の暗部電位Vdは一定とし、本実施形態では−400Vとした。
【0101】
実験の結果、当接状態の黒単色(第2モード)のベタ画像(トナー載り量が最大)の転写効率は20μAのときが最適値となった。これに対して、離間状態の黒単色(第3モード)のベタ画像の転写効率は24μAのときが最適値となった。これは図4で示したように、転写ニップ上流の微小ギャップ増加による定常放電の増加が原因と考えられる。
【0102】
また、フルカラーモード(第1モード)での黒色の画像形成部Sdの転写部の転写効率は、35μAのときが最適値となった。この時の条件は、ベタ画像の載り量を100%とした場合、イエロー33.3%、マゼンタ33.3%、シアン33.3%、ブラック100%、合計200%である。
【0103】
それぞれの最適値を図16に示す。本実実施形態では、それぞれのモードで最適な転写効率となる、感光ドラム1dの所定の暗部電位Vdに対する電流値を、それぞれのモードで設定している。即ち、第1モードと第2モードと第3モードとのそれぞれで、感光ドラム1dと転写ローラ53d´との間に流れる電流値が異なるように、転写ローラ53d´に印加する転写バイアスを制御するようにしている。このために、図15に示す様に、制御手段である制御器Cが転写バイアス電源54´を制御して、それぞれのモードで印加する転写バイアスを設定している。この転写バイアスの制御としては、定電圧制御と定電流制御とがあるが、本実施形態では定電圧制御を採用している。定電圧制御の具体例については第1の実施形態と同様である。
【0104】
[各モードにおける最適転写電圧の設定]
また、本実施形態の場合、第1の実施形態と異なり、当接状態と離間状態とのそれぞれでATVCを行って、各モードの転写電圧を設定している。即ち、本実施形態の場合も、感光ドラム1dと転写ローラ53d´との間の電流を検知する電流検知手段である電流検知センサ54a´を有する。制御器Cは、非画像形成時に、当接状態と離間状態とのそれぞれで、複数の異なる電圧を印加してそれぞれ電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求める。
【0105】
次いで、当接状態での電流と電圧との関係に基づいて、第1モード及び第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定する。また、離間状態での電流と電圧との関係に基づいて、第3モードでの電圧値を決定する。そして、それぞれ転写ローラ53d´に印加する転写バイアスを定電圧で制御する。
【0106】
上述の制御の流れの一例について、図17を用いて説明する。電源投入時(S201)に、当接状態及び離間状態におけるATVCを実行し、これらの転写電圧と転写電流の関係を取得しておく(S202)。図18は、本実施形態の画像形成装置200における、転写電圧と転写電流の関係を示している。当接状態におけるVtrとItrの関係は図中の実線で示され、離間状態における関係は破線で示されている。本実施形態においても、離間状態において、当接状態と同じ転写電流を流すためには、小さい電圧を印加する必要がある。即ち、図18において、当接状態における転写電流はIc、離間状態での転写電流はIkで示されている。そして、離間状態での転写電圧は、当接状態におけるATVCで得られた図18の実線の関係に対し、目標転写電流Ikに対応する転写電圧VcからΔVを引いて得られる電圧Vkとなる。
【0107】
続いて、印刷JOBが入力される(S203)。ここで、当接状態で黒単色画像を出力するか離間状態で黒単色画像を出力するかは、印刷JOBの内容に応じて決定する(S204)。本実施形態では、黒単色画像が所定枚数(5枚)以上連続で出力される場合に、5枚目以降から離間状態とする。なお、この所定枚数は、5枚以外に、例えば、3枚、7枚、10枚・・・などそれぞれ任意に設定しても良い。
【0108】
黒単色画像が5枚未満である場合(S204のN)、制御器CにおいてS202ですでに行われた、当接状態でのATVCの結果より転写電圧を設定する(S205)。設定された電圧が転写バイアス電源54´により印加され、当接状態で印字される(S206)。JOBが終了すると待機状態となる(S207)。
【0109】
一方、S204で黒単色画像が5枚以上出力される場合(S204のY)、接離機構90aが動作することにより、図15におけるテンションローラ55aが、図中の破線から実線位置まで退避する。そして、搬送ベルト51aが感光ドラム1a、1b、1cから離間し、感光ドラム1dのみに接触する、当接状態となる(S208)。これと同時に、黒色の転写ローラ53d´に印加される転写電圧は、S202で得られた離間状態でのATVCの結果から最適電圧に設定される(S209)。設定された電圧が転写バイアス電源54´により印加され、離間状態で印字される(S210)。JOBが終了すると待機状態となる(S207)。
【0110】
なお、本実施形態の場合も、黒色の画像形成部の転写電流は、フルカラーモード(第1モード)よりも単色モード(第2モード、第3モード)の方が低めに設定される。これは、フルカラーモードが複数の色のトナーを多重に重ね合わせて転写するのに対して、黒単色モードでは単色分のトナーのみを転写すれば良いためである。
【0111】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置では、当接状態から離間状態に切り替わる際に、電源投入時に得た当接状態及び離間状態の転写電圧と転写電流の関係を用いて転写電圧を設定している。このため、ATVCによるダウンタイムを抑制でき、最適な転写を得ることができる。
【0112】
なお、本実施形態においては、当接状態及び離間状態の転写電圧と転写電流の関係を、電源投入時にATVCを行うことによって得た。但し、電源投入時だけではなく、当接状態と離間状態との両方で、画像間の転写電流を検知して、その差分を取得することも可能である。
【0113】
また、本実施形態においても、当接状態から離間状態へ切り替わる際にΔVを用いて換算する方法を述べたが、逆に離間状態から当接状態へ切り替わる際に適用することも可能である。その他の構造及び作用は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0114】
<他の実施形態>
以上、本発明を第1、第2の実施形態により説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の像担持体、また他種の画像形成装置にも適用できる。また、これまで説明した実施形態において、説明に使用した数値等は一例を示すものであり、本発明はそれらに限定するものではない。
【0115】
また、第1の実施形態と第2の実施形態とは、適宜、組み合わせたり、或いは、構成を入れ替えたりして実施可能である。例えば、第2の実施形態に第1の実施形態と同様の環境センサに基づく転写バイアスの設定を行うようにしても良い。
【0116】
更に、上述の実施形態では、印加する転写バイアスとして電圧を制御する構成について説明したが、電流を制御するようにしても良い。
【符号の説明】
【0117】
1a、1b、1c・・・感光ドラム(第2像担持体)、1d・・・感光ドラム(第1像担持体)、2a、2b、2c、2d・・・帯電ローラ(帯電手段)、3a、3b、3c、3d・・・レーザースキャナ(露光手段)、4a、4b、4c、4d・・・現像装置(現像手段)、51・・・中間転写ベルト(中間転写体)、51a・・・搬送ベルト(記録材搬送部材)、53a、53b、53c・・・一次転写ローラ(第2転写手段)、53d・・・一次転写ローラ(第1転写手段)、53a´、53b´、53c´・・・転写ローラ(第2転写手段)、53d´・・・転写ローラ(第1転写手段)、54・・・一次転写バイアス電源、54´・・・転写バイアス電源、54a、54a´・・・電流検知センサ(電流検知手段)、57・・・二次転写外ローラ(二次転写手段)、58・・・二次転写バイアス電源、80、80a・・・接離機構、C・・・制御器(制御手段)、P・・・記録材、Sa、Sb、Sc、Sd・・・画像形成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色のトナー像を担持する第1像担持体と、
黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体と、
前記第1像担持体に当接し、且つ、前記第2像担持体に対して当接及び離間可能に配置される中間転写体と、
前記中間転写体を前記第2像担持体に当接及び離間させる接離機構と、
転写バイアスが印加されることにより、前記第1像担持体に担持されたトナー像を、前記中間転写体に転写する第1転写手段と、
前記中間転写体を前記第2像担持体に当接させた当接状態で、転写バイアスが印加されることにより、前記第2像担持体に担持されたトナー像を前記中間転写体に転写する第2転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記当接状態で、前記第1像担持体及び前記第2像担持体にそれぞれ担持されたトナー像を前記中間転写体に転写する第1モードと、
前記当接状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体に転写する第2モードと、
前記中間転写体を前記第2像担持体から離間させた離間状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体に転写する第3モードと、を実行可能で、
前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する制御手段を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
二次転写バイアスが印加されることにより、前記中間転写体から記録材にトナー像を転写する二次転写手段を有し、
前記第1モードで印加される二次転写バイアスと、前記第2モード及び前記第3モードで印加される二次転写バイアスとが異なる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
黒色のトナー像を担持する第1像担持体と、
黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体と、
前記第1像担持体に当接し、且つ、前記第2像担持体に対して当接及び離間可能に配置され、記録材を搬送する記録材搬送部材と、
前記記録材搬送部材を前記第2像担持体に当接及び離間させる接離機構と、
転写バイアスが印加されることにより、前記第1像担持体に担持されたトナー像を、前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第1転写手段と、
前記記録材搬送部材を前記第2像担持体に当接させた当接状態で、転写バイアスが印加されることにより、前記第2像担持体に担持されたトナー像を前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第2転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記当接状態で、前記第1像担持体及び前記第2像担持体にそれぞれ担持されたトナー像を前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第1モードと、
前記当接状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第2モードと、
前記記録材搬送部材を前記第2像担持体から離間させた離間状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第3モードと、を実行可能で、
前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する制御手段を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記第1像担持体の表面を所定の暗部電位に帯電させる帯電手段と、帯電した前記第1像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記第1像担持体の表面に形成された静電潜像を現像する現像手段と、を有し、
前記制御手段は、前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体の前記所定の暗部電位に対する電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1像担持体と前記第1転写手段との間の電流を検知する電流検知手段を有し、
前記制御手段は、非画像形成時に、前記当接状態で複数の異なる電圧を印加して、それぞれ前記電流検知手段で電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求め、この関係に基づいて、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定し、決定された前記第2モードでの電圧値と、予め設定された前記第2モードに対する前記第3モードの電圧特性の関係とから、前記第3モードでの電圧値を決定し、それぞれ前記第1転写手段に印加する転写バイアスを定電圧で制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1像担持体と前記第1転写手段との間の電流を検知する電流検知手段を有し、
前記制御手段は、非画像形成時に、前記当接状態と前記離間状態とのそれぞれで、複数の異なる電圧を印加してそれぞれ電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求め、前記当接状態での電流と電圧との関係に基づいて、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定し、前記離間状態での電流と電圧との関係に基づいて、前記第3モードでの電圧値を決定し、それぞれ前記第1転写手段に印加する転写バイアスを定電圧で制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置の中又は周囲の温度及び湿度を検知する環境検知手段を有し、
前記制御手段は、前記環境検知手段の検知結果に基づいて、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを異ならせる、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
黒色のトナー像を担持する第1像担持体と、
黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体と、
前記第1像担持体に当接し、且つ、前記第2像担持体に対して当接及び離間可能に配置される中間転写体と、
前記中間転写体を前記第2像担持体に当接及び離間させる接離機構と、
転写バイアスが印加されることにより、前記第1像担持体に担持されたトナー像を、前記中間転写体に転写する第1転写手段と、
前記中間転写体を前記第2像担持体に当接させた当接状態で、転写バイアスが印加されることにより、前記第2像担持体に担持されたトナー像を前記中間転写体に転写する第2転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記当接状態で、前記第1像担持体及び前記第2像担持体にそれぞれ担持されたトナー像を前記中間転写体に転写する第1モードと、
前記当接状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体に転写する第2モードと、
前記中間転写体を前記第2像担持体から離間させた離間状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記中間転写体に転写する第3モードと、を実行可能で、
前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する制御手段を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
二次転写バイアスが印加されることにより、前記中間転写体から記録材にトナー像を転写する二次転写手段を有し、
前記第1モードで印加される二次転写バイアスと、前記第2モード及び前記第3モードで印加される二次転写バイアスとが異なる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
黒色のトナー像を担持する第1像担持体と、
黒色以外のトナー像を担持する第2像担持体と、
前記第1像担持体に当接し、且つ、前記第2像担持体に対して当接及び離間可能に配置され、記録材を搬送する記録材搬送部材と、
前記記録材搬送部材を前記第2像担持体に当接及び離間させる接離機構と、
転写バイアスが印加されることにより、前記第1像担持体に担持されたトナー像を、前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第1転写手段と、
前記記録材搬送部材を前記第2像担持体に当接させた当接状態で、転写バイアスが印加されることにより、前記第2像担持体に担持されたトナー像を前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第2転写手段と、を備えた画像形成装置において、
前記当接状態で、前記第1像担持体及び前記第2像担持体にそれぞれ担持されたトナー像を前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第1モードと、
前記当接状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第2モードと、
前記記録材搬送部材を前記第2像担持体から離間させた離間状態で、前記第1像担持体に担持されたトナー像のみを前記記録材搬送部材により搬送される記録材に転写する第3モードと、を実行可能で、
前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体と前記第1転写手段との間に流れる電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する制御手段を有する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記第1像担持体の表面を所定の暗部電位に帯電させる帯電手段と、帯電した前記第1像担持体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記第1像担持体の表面に形成された静電潜像を現像する現像手段と、を有し、
前記制御手段は、前記第1モードと前記第2モードと前記第3モードとのそれぞれで、前記第1像担持体の前記所定の暗部電位に対する電流値が異なるように、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1像担持体と前記第1転写手段との間の電流を検知する電流検知手段を有し、
前記制御手段は、非画像形成時に、前記当接状態で複数の異なる電圧を印加して、それぞれ前記電流検知手段で電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求め、この関係に基づいて、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定し、決定された前記第2モードでの電圧値と、予め設定された前記第2モードに対する前記第3モードの電圧特性の関係とから、前記第3モードでの電圧値を決定し、それぞれ前記第1転写手段に印加する転写バイアスを定電圧で制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1像担持体と前記第1転写手段との間の電流を検知する電流検知手段を有し、
前記制御手段は、非画像形成時に、前記当接状態と前記離間状態とのそれぞれで、複数の異なる電圧を印加してそれぞれ電流値を検知することにより、電流と電圧との関係を求め、前記当接状態での電流と電圧との関係に基づいて、前記第1モード及び前記第2モードのそれぞれモードでの電圧値を決定し、前記離間状態での電流と電圧との関係に基づいて、前記第3モードでの電圧値を決定し、それぞれ前記第1転写手段に印加する転写バイアスを定電圧で制御する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置の中又は周囲の温度及び湿度を検知する環境検知手段を有し、
前記制御手段は、前記環境検知手段の検知結果に基づいて、前記第1転写手段に印加する転写バイアスを異ならせる、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−92734(P2013−92734A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236153(P2011−236153)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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