説明

画像形成装置

【課題】 画像形成動作時の消費電力量の予測値を画像形成装置の状態に応じて精度良く求める。
【解決手段】 CPU10は、印刷前に、印刷時の消費電力量の予測値Pを、印刷条件毎の印刷枚数N及び所定係数xとP=x1+x2(n−1)+…+xn−1+x(nは1以上の整数)の式に基づく演算処理によって算出し、操作表示部4に表示する。また、印刷毎に印刷条件毎の印刷枚数と消費電力量との組を蓄積し、その総数がn個になった場合、その印刷条件についてn個の組の印刷枚数Nと消費電力量P′とP′=x′1+x′2(n−1)+…+x′n−1+x′(nは1以上の整数)の式に基づく演算処理によって所定係数x′を算出し、上記所定係数xを上記所定係数x′に更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ装置、スキャナ装置、プリンタ、複写機、並びにそれらの装置の機能を備えた複合機を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者に対して、印刷実行開始前に画像形成装置の消費する消費電力量を印刷モード、印刷枚数の差異により予め設定された一定の値に基づき消費電力量を算出し、その消費電力量を通知する画像形成装置があった。
また、ネットワークに接続される画像形成装置から消費電力量算出用情報を収集し、収集した消費電力量算出用情報に基づき、印刷枚数と、その印刷枚数の印刷をその時点において開始させた場合に消費されることになる電力量が最も小さいプリンタとの対応関係を特定してユーザに通知する機能を有する画像形成装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の画像形成装置では、消費電力量を通知する際、印刷モード、印刷枚数の差異により予め設定された一定の値に基づき消費電力量を算出しているため、画像形成装置の状態、例えば、定着器の温度、経年変化に伴う駆動部品の劣化等の状態の変化に対し、消費電力量を精度良く算出できないという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、画像形成動作時の消費電力量の予測値を画像形成装置の状態に応じて精度良く求めるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記の目的を達成するため、印刷条件毎に所定係数と印刷枚数とから印刷手段による印刷時の消費電力量の予測値を算出する消費電力算出式と上記印刷条件毎の上記所定係数を記憶する記憶手段と、指定された印刷条件及び印刷枚数と、上記記憶手段に記憶されている上記消費電力算出式及び上記指定された印刷条件に対応する所定係数に基いて、その指定された印刷条件及び印刷枚数による印刷の消費電力量の予測値を算出する予測値算出手段と、上記予測値算出手段によって算出した消費電力量の予測値を通知する通知手段と、上記印刷手段の印刷動作中に消費電力量を計測する計測手段と、上記印刷手段が指定された印刷条件及び印刷枚数で印刷動作を行った際の上記計測手段が計測した消費電力量と、その指定された印刷条件及び印刷枚数とを対応させて蓄積する消費電力記憶手段と、上記消費電力記憶手段に、ある印刷条件について消費電力量と印刷枚数との組み合わせが所定数蓄積された場合に、その所定数の消費電力量及び印刷枚数の組に基づき、その印刷条件についての上記所定係数の値を算出する係数算出手段と、上記係数算出手段が上記所定係数の値を算出した場合に、上記記憶手段が記憶する、上記ある印刷条件についての所定係数を、その算出した値に更新する更新手段を備えた画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0005】
この発明による画像形成装置は、画像形成動作時の消費電力量の予測値を画像形成装置の状態に応じて精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】発明の一実施形態である画像形成装置のハードウェア構成を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置が印刷時に消費電力量の予測値を通知する処理を示すフローチャート図である。
【図3】消費電力量の予測値を算出する演算式の印刷条件毎の係数値例の表を示す図である。
【図4】図1の画像形成装置が印刷の消費電力量の予測値を算出する際に用いる係数を更新する処理のフローチャート図である。
【図5】図1の画像形成装置が印刷の消費電力量の予測値を通知する他の処理例を示すフローチャート図である。
【図6】消費電力量の予測値を算出する演算式の印刷条件毎の他の係数値例の表を示す図である。
【図7】図1の画像形成装置が印刷の消費電力量の予測値を算出する際に用いる係数を更新する他の処理例のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、発明の一実施形態である画像形成装置のハードウェア構成を示す図である。
画像形成装置1は、通信、画像読取、印刷、及び複写の各機能を含む複数の機能を備えた複合機であり、通信網を介して外部装置とのファクシミリ通信、データ通信又はインターネット通信において、外部装置へ送信する画像データを画像読取機能によって読み取る画像形成動作、外部装置から受信した画像データを紙等の記録媒体に印刷する画像形成動作、画像読取機能によって読み取った画像データを記録媒体に印刷する複写の際の画像形成動作を行える装置である。
【0008】
この画像形成装置1は、図1に示すように、制御部2、画像形成部3、操作表示部4、通信制御部5、及び電源部6を備えている。
なお、上記2〜6の各部の他に、例えば、給紙部等の公知の各部も備えているが、図示とその説明を省略する。
また、図1では、電源部6のAC/DCコンバータ7から操作表示部4、通信制御部5、AC消費電力量計測部17、DC消費電力量計測部18、及び温度検出部19への直流電力供給ラインの図示を省略している。
【0009】
電源部6は、交流直流(AC/DC)コンバータ7を搭載し、画像形成装置1の電力供給を司る。
この電源部6は、外部交流電源8から交流電力を入力して、ユーザによる電源オン操作を受け付けると、交流電力をAC負荷部15に供給すると共に、AC/DCコンバータ7が交流電力を直流電力に変換し、制御部2及びDC負荷部16にそれぞれ直流電力を供給する。
【0010】
画像形成部3は、原稿の画像を読み取ってその画像データを入力する画像読取機能であるスキャナ部、画像データを記録媒体に印刷するプロッタ部(いずれも公知なので図示を省略)を含む画像形成に関する各部を備えている。すなわち、印刷手段の機能を果たす。
また、画像形成部3は、交流電力負荷部(AC負荷部)15、直流電力負荷部(DC負荷部)16、AC消費電力量計測部17、DC消費電力量計測部18、及び温度検出部19を備えている。
【0011】
上記AC消費電力量計測部17とDC消費電力量計測部18は、いずれも計測手段の機能を果たす。また、上記AC消費電力量計測部17は交流消費電力計測手段の機能を、上記DC消費電力量計測部18は直流消費電力計測手段の機能をそれぞれ果す。
この画像形成部3の各部は、電源部6から交流電力あるいは直流電力のそれぞれの供給を受けて、制御部2の制御により動作する。
【0012】
AC負荷部15は、電源部6から供給される交流電力によって駆動する上記図示を省略したスキャナ部及びプロッタ部の各部を含む各部を備えている。
図1では、AC負荷部15内の各部の内の1つとして、記録媒体上に形成されたトナー像を記録媒体に押圧力と加熱によって定着させるハロゲンヒータ、IHインバータ等の定着部20を示している。この定着部は交流電力によって動作する。
【0013】
DC負荷部16は、電源部6のAC/DCコンバータ7から供給される直流電力によって駆動する上記図示を省略したスキャナ部の光源、各種のローラを回転駆動させるモータとクラッチ等の各部、同じく図示を省略したプロッタ部の光源、帯電部、露光部、感光体等を回転駆動させるモータとクラッチ等の各部、同じく図示を省略したハードディスク装置等の記憶装置を備えている。
【0014】
AC消費電力量計測部17は、AC/DCコンバータ7から供給される直流電力によって駆動し、電源部6からAC負荷部15への電力供給ラインの交流電力量に基いて画像形成装置1が消費する交流消費電力量(以下「AC消費電力量」と表記する)を計測し、そのAC消費電力量の情報を制御部2の入出力(I/O)制御部14へ出力する。
すなわち、AC消費電力量計測部17は、交流消費電力計測手段の機能を果たす。
【0015】
DC消費電力量計測部18は、AC/DCコンバータ7から供給される直流電力によって駆動し、電源部6のAC/DCコンバータ7からAC負荷部15への電力供給ラインの直流電力量に基いて画像形成装置1が消費する直流消費電力量(以下「DC消費電力量」と表記する)を計測し、そのDC消費電力量の情報を制御部2のI/O制御部14へ出力する。
すなわち、DC消費電力量計測部18は、直流消費電力計測手段の機能を果たす。
【0016】
温度検出部19は、AC/DCコンバータ7から供給される直流電力によって駆動し、定着部20の温度を検出し、その検出した温度情報を制御部2のI/O制御部14へ出力する。すなわち、温度測定手段の機能を果たす。
操作表示部4は、ユーザからの各種の操作を受け付ける操作部と、ユーザに各種の情報を表示する表示部とからなり、AC/DCコンバータ7から直流電力の供給を受けて、制御部2の制御により動作する。すなわち、通知手段の機能を果たす。
【0017】
通信制御部5は、ファクシミリ通信、ローカルエリアネットワーク(「LAN」と略称する)等のデータ通信、インターネット通信を含む通信網を介して外部装置との通信を制御し、I/O制御部14から受け取ったデータを外部装置へ送信し、外部装置から受信してデータをI/O制御部14へ送信する。すなわち、通知手段の機能を果たす。
制御部2は、CPU10、ROM11、RAM12、不揮発性RAM13、及びI/O制御部14を備えており、電源部6のAC/DCコンバータ7から直流電力の供給を受けて動作する。
【0018】
この制御部2では、CPU10が、RAM12を作業領域としてROM11に記憶されたプログラムを実行し、不揮発性RAM13に各種の処理に必要なデータを記憶し、そのデータを読み出して利用し、I/O制御部14を介して制御部2の外の各部間とデータのやり取りを行って画像形成装置1の全体の制御を司る。
【0019】
制御部2の実行する制御には、画像形成部3の各部の制御、操作表示部4への表示制御、通信制御部5を用いた各種通信の制御、I/O制御部14から受け取った温度検出部19の温度情報に基づく定着部20の温度調整の制御、画像形成装置1の消費電力量の予測値を求める制御、その予測値を通知する制御を含む。
そして、CPU10は、予測値算出手段、係数算出手段、立上げ予測時間算出手段、立上げ時間計測手段、及び更新手段の各機能を果たす。
また、不揮発性RAM13は、記憶手段、消費電力記憶手段の機能を果たす。
【0020】
この画像形成装置1は、消費電力量に係る基本処理として、CPU10が、指定された印刷条件及び印刷枚数で印刷を行った場合の消費電力量の予測値Pを、不揮発性RAM13に予め記憶した印刷条件毎の印刷枚数N及びn個の所定係数x〜xと式1の消費電力量算出式に基づく演算処理によって算出する。
〔式1〕P=x(N)+x(N)+…+xn−1n−1(N)+x(N
(nは1以上の整数、F(N)〜F(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
【0021】
また、操作表示部4から印刷条件と印刷枚数を受け付けると、その受け付けた印刷条件と印刷枚数と式1に基づく演算処理によって上記印刷条件と印刷枚数で印刷した場合の消費電力量の予測値Pを算出し、その算出した消費電力量の予測値Pを操作表示部4に表示、又は通信制御部5によって予め指定されたホストコンピュータに通知する。
さらに、この画像形成装置1は、CPU10の制御により、AC消費電力量計測部17とDC消費電力量計測部18によって印刷動作中の消費電力量P′を計測し、不揮発性RAM13に印刷条件と印刷枚数Nと、その印刷動作中に計測した消費電力量P′を対応させて蓄積する。
【0022】
そして、CPU10は、不揮発性RAM13に蓄積された印刷条件毎の印刷枚数Nと消費電力量P′との組がn個になった場合、当該印刷条件のn個の組の印刷枚数Nと消費電力量P′を式1のNとPにそれぞれ代入して得られる式2からn個の所定係数x′〜x′(このx′〜x′はそれぞれ式1のx〜xにそれぞれ対応する位置の値)を算出し、不揮発性RAM13の所定係数xを所定係数x′に更新する。
〔式2〕P′=x′(N)+x′(N)+…+x′n−1n−1(N)+x′(N
(nは1以上の整数、F(N)〜F(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
【0023】
次に、この実施形態の画像形成装置1が印刷時に消費電力量の予測値を通知する処理について説明する。
図2は、図1の画像形成装置1が印刷時に消費電力量の予測値を通知する処理を示すフローチャート図である。
この処理では、使用者が設定した印刷条件で印刷した場合の画像形成装置1の消費電力量の予測値を求めて通知する。
【0024】
画像形成装置1の使用者は、印刷を実行するために画像形成装置1の制御部2が提供する印刷実行用アプリケーションプログラムを起動し、印刷用プロパティで印刷条件を設定する。
この印刷条件には、例えば、モノクロ印刷指定、カラー印刷指定、印刷用紙サイズ種類、印刷用紙厚さ設定情報、印刷の階調設定情報(ディザリングの種類、例えば、ランダムディザ、パターンディザ)、印刷速度設定情報、印刷に使用する用紙が蓄積されている給紙トレイの場所情報などがある。
【0025】
図1の制御部2のCPU10は、図2のステップ(図中「S」で示す)1〜6の処理を実行する。
ステップ1では、使用者の操作による印刷条件の設定を受け付け、ステップ2では、設定された印刷条件で印刷した場合の画像形成装置1の消費電力量の予測値を算出し、ステップ3では、消費電力量の予測値を通知する。
この通知では、操作表示部4の表示部への表示、又は通信制御部5を介して通信網上の所定の宛先の外部装置へ出力がある。
【0026】
上記所定の宛先の外部装置とは、例えば、画像形成装置1に印刷要求をした情報処理装置(PC)である。
ステップ4では、印刷条件の変更があったか否かを判断し、印刷条件の変更が無かった場合(Nの場合)はステップ5へ進み、印刷条件の変更があった場合(Yの場合)はステップ2へ戻って上述の処理を行い、変更された内容の印刷条件に基いて消費電力量の予測値を算出し直し、その予測値を通知する処理を実行する。
【0027】
ステップ5では、使用者の操作による印刷実行要求があったか否かを判断し、印刷実行要求が無かった場合(Nの場合)はステップ4へ戻り、印刷実行要求があった場合(Yの場合)はステップ6へ進む。
ステップ6では、図1の画像形成部3を制御して印刷処理を実行し、この処理を終了する。
すなわち、使用者が印刷条件を変更せずに印刷実行要求を指示すると、その印刷条件で印刷が実行される。
【0028】
また、使用者が設定した印刷条件で印刷した場合の画像形成装置1の消費電力量の予測値の通知完了後に、使用者が印刷条件を変更(再設定)した場合、その変更された印刷条件で印刷した場合の画像形成装置1の消費電力量の予測値を再算出して通知する。
そして、使用者が印刷実行要求を指示すると、その変更された印刷条件で印刷が実行される。
なお、この処理では、使用者による印刷時に消費電力量の予測値を通知する場合を示したが、必ずしも印刷を伴わなくても消費電力量の予測値を通知するようにしてもよい。
このようにすれば、例えば、使用者が印刷条件と印刷枚数を仮に指定して、その指定した内容で印刷した場合の消費電力量の予測値を知りたいときに通知することができる。
【0029】
次に、上記ステップ2の消費電力量の予測値の算出処理について説明する。
画像形成装置1の消費電力量の予測値は、上記式1及び式2に示した消費電力算出式に基づく演算処理で算出できるが、その印刷枚数Nを変数とするそれぞれ異なる関数のF(N)、F(N)、…、Fn−1(N)、F(N)の一例として、F(N)=N、F(N)=N(n−1)、…、Fn−1(N)=N、F(N)=1にした場合を説明する。
また、画像形成装置1で使用される電力には交流電力と直流電力があるので、その各消費電力量の予測値を合算して画像形成装置1の消費電力量の予測値を求める場合の処理を説明する。
【0030】
画像形成装置1の消費電力量の予測値をP、画像形成装置1のAC消費電力量(「印刷した場合の交流消費電力量の予測値」に相当する)をPAC、画像形成装置1のDC消費電力量(「印刷した場合の直流消費電力量の予測値」に相当する)をPDCとすると、次の式3に基づく演算処理で求めることができる。
〔式3〕P=PAC+PDC
【0031】
さらに、印刷枚数をNとして、画像形成装置1のAC消費電力量PACは、次の式4の交流消費電力算出式に基づく演算処理で求めることができる。
〔式4〕PAC=a(N)+a(N)+…+an−1n−1(N)+a(N
(nは1以上の整数、G(N)〜G(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
ここで、G(N)、G(N)、…、Gn−1(N)、G(N)の一例として、G(N)=N、G(N)=N(n−1)、…、Gn−1(N)=N、G(N)=1にした場合、次の式5の交流消費電力算出式に基づく演算処理で画像形成装置1のAC消費電力量PACを求めることができる。
【0032】
〔式5〕PAC=a+a(n−1)+…+an−1+a
(nは1以上の整数)
また、印刷枚数をNとして、画像形成装置1のDC消費電力量PDCは、次の式6に基づく演算処理で求めることができる。
〔式6〕PDC=b(N)+b(N)+…+bn−1n−1(N)+b(N
(nは1以上の整数、H(N)〜H(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
【0033】
ここで、H(N)、H(N)、…、Hn−1(N)、H(N)の一例として、H(N)=N、H(N)=N(n−1)、…、Hn−1(N)=N、H(N)=1にした場合、次の式7の直流消費電力算出式に基づく演算処理で画像形成装置1のDC消費電力量PDCを求めることができる。
〔式7〕PDC=b+b(n−1)+…+bn−1+b
(nは1以上の整数)
【0034】
上記式4及び式6は、画像形成装置1において印刷条件毎に印刷枚数を異ならせて印刷実験をし、その各消費電力量の実測値の分布を示す曲線から導き出した演算式である。
このようにして、実施形態の画像形成装置1は、印刷前にユーザに消費電力量通知を実施する際、画像形成装置1の状態の変化(定着装置の温度、経年変化に伴う駆動部品の劣化等の変化)に対して、精度良く消費電力量を通知することができる。
また、例えば、使用者によって印刷前に指定された印刷条件毎に対応する演算式の演算処理で消費電力量の予測値を算出するので、その予測値を精度良く求めることができる。
【0035】
上記『a,…,an−1,a』と『b,…,bn−1,b』の各n個の所定係数は、図3の(a)と(b)にそれぞれ示すように印刷条件毎に異なった値になる。
画像形成装置1の不揮発性RAM13には、予め上記式3、式4、及び式6の各演算手順の情報(又は上記式3、式5、及び式7の各演算手順の情報)と、印刷条件毎の『a,…,an−1,a』と『b,…,bn−1,b』の各n個の所定係数を保存するようにし、画像形成装置1の消費電力量の予測値Pは、CPU10が不揮発性RAM13の各情報を用いて算出する。
【0036】
図3の(a)は、印刷条件毎のn個の所定係数a,…,an−1,aの各値の一例を示している。
図3の(b)は、印刷条件毎のn個の所定係数b,…,bn−1,bの各値の一例を示している。
この印刷条件には、例えば、印刷用紙サイズ種類、印刷用紙厚さ設定情報、印刷の階調設定情報(ディザリングの種類、例えば、ランダムディザ、パターンディザ)、印刷速度設定情報、印刷に使用する用紙が蓄積されている給紙トレイの場所情報などがある。
また、モノクロ印刷指定とカラー印刷指定の場合は2種類になる。
【0037】
なお、上述の処理では、画像形成装置1の使用者が印刷条件の設定や印刷実行要求を実施したり、画像形成装置1の使用者へ印刷条件に応じた消費電力量の予測値を通知したりするアプリケーションプログラムは、画像形成装置1のROM11、又は図示を省略した記憶装置に記憶した場合を説明したが、このアプリケーションプログラムを、画像形成装置1に通信網を介して接続された又は直接に接続されたホストPCから提供するようにしても良い。
【0038】
次に、この実施形態の画像形成装置1が印刷の消費電力量の予測値を算出する際に用いる係数を更新する処理について説明する。
図4は、図1の画像形成装置1が印刷の消費電力量の予測値を算出する際に用いる係数を更新する処理のフローチャート図である。
この処理は、図2のフローチャート図で説明した演算式の各係数を更新する。
図1の制御部2のCPU10は、図4のステップ(図中「S」で示す)11〜19の処理を実行する。
ステップ11では、印刷実行要求に基いて印刷条件に応じた印刷処理を実行し、ステップ12へ進む。
【0039】
印刷処理の実行中は、図1のAC消費電力量計測部17は印刷実行において画像形成装置1が消費する『AC消費電力量(「印刷動作中に計測された交流電流の消費電力量」に相当する)P′AC』を、DC消費電力量計測部18は印刷実行において画像形成装置1が消費する『DC消費電力量(「印刷動作中に計測された直流電流の消費電力量」に相当する)P′DC』をそれぞれ計測し、それぞれI/O制御部14へ出力する。
ステップ12では、図1のAC消費電力量計測部17とDC消費電力量計測部18でそれぞれ計測されたAC消費電力量とDC消費電力量を取得し、ステップ13へ進む。
ステップ13では、印刷終了後、印刷実行中にジャム等による印刷中断が発生したか否かを判断する。
【0040】
印刷実行中にジャム等による印刷中断が発生しなかった場合(ステップ13でNの場合)、ステップ14で計測回数m(mは1以上の整数)をカウントし、ステップ15へ進む。
ステップ15では、『今回実行した印刷条件』、『今回実行した印刷条件におけるAC消費電力量とDC消費電力量を計測した計測回数』、『AC消費電力量』、『DC消費電力量』、及び『印刷枚数』の各情報を対応させて図1の不揮発性RAM13に記憶し、ステップ16へ進む。
一方、印刷終了後、印刷実行中にジャム等による印刷中断が発生した場合(ステップ13でYの場合)、処理を終了する。
【0041】
ステップ16では、今回の印刷条件で印刷した計測回数はm回か否かを判断する。
今回の印刷条件で印刷した計測回数はm回ではない場合(ステップ16のNの場合)、すなわち、m回未満である場合は、処理を終了する。
ここで、mの値は式4〜式7のnの値と等しい。
上記mの値は、例えば、予め不揮発性RAM13に記憶し、CPU10が参照するようにすると良い。
【0042】
また、CPU10は、操作表示部4からの使用者による変更操作によりmの値を他の値に変更することもできる。
一方、今回の印刷条件で印刷した計測回数はm回の場合(ステップ16でYの場合)、、ステップ17へ進む。
ステップ17では、今回の印刷条件について、m回分の印刷枚数とそれぞれ計測された消費電力量に基いて各所定係数を算出し、ステップ18へ進む。
【0043】
ステップ17の処理では、図2の処理に合わせて、演算式中の印刷枚数Nを変数とするそれぞれ異なる関数のG(N)、G(N)、…、Gn−1(N)、G(N)と、H(N)、H(N)、…、Hn−1(N)、H(N)の一例として、G(N)=H(N)=N、G(N)=H(N)=N(n−1)、…、Gn−1(N)=Hn−1(N)=N、G(N)=H(N)=1にした場合を説明する。
【0044】
不揮発性RAM13に保存されたm(=n)回分の今回実行した印刷条件における『AC消費電力量P′AC』と『印刷枚数N』(すなわち、n組のAC消費電力量P′ACと印刷枚数N)を用いて、式8の交流消費電力算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『a′,…,a′n−1,a′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式8〕P′AC=a′+a′(n−1)+…+a′n−1+a′
(nは1以上の整数)
この演算処理では、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『AC消費電力量P′AC』と『印刷枚数N』のn組の値をそれぞれ式8に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『a′,…,a′n−1,a′』の各値をそれぞれ算出する。
その算出処理のアルゴリズムは、公知技術を用いると良い。
【0045】
次に、上記『a′,…,a′n−1,a′』の各値の算出例を説明する。
例えば、不揮発性RAM13に保存された該当する印刷条件に対応してそれぞれ計測された4回分のAC消費電力量P′ACとその各AC消費電力計測時の印刷枚数Nと、それぞれに設定されたG(N)〜G(N)の関数が次の(1)〜(4)である場合を説明する。
【0046】
(1)計測回数n=1のとき、計測されたAC消費電力量P′AC=100、印刷枚数N=5、G(N)=5,G(N)=5,G(N)=5,G(N)=5=1
(2)計測回数n=2のとき、計測されたAC消費電力量P′AC=88、印刷枚数N=3、G(N)=3,G(N)=3,G(N)=3,G(N)=3=1
(3)計測回数n=3のとき、計測されたAC消費電力量P′AC=120、印刷枚数N=6、G(N)=6,G(N)=6,G(N)=6,G(N)=6=1
(4)計測回数n=4のとき、計測されたAC消費電力量P′AC=110、印刷枚数N=5、G(N)=5,G(N)=5,G(N)=5,G(N)=5=1
【0047】
上記(1)の各値を式8に代入すると次式が得られる。
100=a′×5+a′×5+a′×5+a′
また、上記(2)の各値を式8に代入すると次式が得られる。
88=a′×3+a′×3+a′×3+a′
さらに、上記(3)の各値を式8に代入すると次式が得られる。
120=a′×6+a′×6+a′×6+a′
さらにまた、上記(4)の各値を式8に代入すると次式が得られる。
110=a′×5+a′×5+a′×5+a′
が求まる。
【0048】
そして、上記4式の連立方程式を解くことによって4個の所定係数『a′,a′,a′,a′』の各値をそれぞれ算出する。
なお、不揮発性RAM13に保存された複数の計測結果について、それぞれの印刷枚数が等しくAC消費電力量が異なっていてもよい。
それは、画像形成装置の使用時間経過により、印刷枚数、印刷条件が同じであってもAC消費電力量が異なることを考慮して、n回計測(印刷実行)毎に係数を算出するためである。
このように、印刷枚数、印刷条件が同じでもAC消費電力量が異なる場合も含めて全ての計測データを用いて所定係数『a′,…,a′n−1,a′』の各値を算出する。
これについては、上述した所定係数『x,…,xn−1,x』、『a,…,an−1,a』、『b,…,bn−1,b』、『b′,…,b′n−1,b′』についても同様である。また、後述する各所定係数についても同様である。
【0049】
また、不揮発性RAM13に保存されたm(=n)回分の今回実行した印刷条件における『DC消費電力量P′DC』と『印刷枚数N』(すなわち、n組のDC消費電力量P′DCと印刷枚数N)を用いて、式9の直流消費電力算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『b′,…,b′n−1,b′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式9〕P′DC=b′+b′(n−1)+…+b′n−1+b′
(nは1以上の整数)
【0050】
この演算処理も、上述したn個の所定係数『a′,…,a′n−1,a′』の各値を求めた場合と同様にして、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『DC消費電力量P′DC』と『印刷枚数N』の各組の値をそれぞれ式9に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『b′,…,b′n−1,b′』の各値をそれぞれ算出する。
その算出処理のアルゴリズムも、上述と同様に公知技術を用いると良い。
ステップ18では、今回の印刷条件について、交流消費電力算出式と直流消費電力算出式の各演算式に適用する各所定係数の値を更新し、ステップ19へ進む。
【0051】
ステップ18の処理では、今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている所定係数『a,…,an−1,a』を上記算出した所定係数『a′,…,a′n−1,a′』に書き換えて更新する。
また、同じく今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている所定係数『b,…,bn−1,b』を上記算出した所定係数『b′,…,b′n−1,b′』に書き換えて更新する。
【0052】
ステップ19では、不揮発性RAM13から各所定係数の算出に用いた情報を消去し、この処理を終了する。
ステップ19の処理では、不揮発性RAM13に保存できる情報には限りがあるため、消費電力量の各係数の算出時に用いた情報を削除することにより、記憶領域を浪費しないようにしている。
【0053】
このようにして、実施形態の画像形成装置1は、例えば、印刷前に使用者に通知する消費電力量の算出に用いる所定の係数を定期的に更新するので、画像形成装置1の状態の変化(定着装置の温度、経年変化に伴う駆動部品の劣化等の変化)に対して、精度良く消費電力量を通知することができる。
なお、上述の処理では、印刷枚数Nを変数とするそれぞれ異なる関数のG(N)、G(N)、…、Gn−1(N)、G(N)とH(N)、H(N)、…、Hn−1(N)、H(N)の一例として、G(N)=H(N)=N、G(N)=H(N)=N(n−1)、…、G(N)=H(N)=1にした場合を説明したが、その他の関数をそれぞれ用いるようにしてもよい。
また、画像形成装置1の消費電力量の予測値を、交流も直流も分けずに求めてもよい。
【0054】
次に、この実施形態の画像形成装置1における印刷による消費電力量の予測値を通知する他の処理例について説明する。
この処理例では、画像形成装置1における印刷による消費電力量の予測値を算出する際、定着部20の立上げ時間に要する消費電力量を個別に算出し、その他の消費電力量に加算して求めている。
このように、消費電力量の多い定着部20の消費電力量の予測値を個別に計算することにより、予測値の精度をより高めることができる。
【0055】
図5は、図1の画像形成装置1が印刷時に消費電力量の予測値を通知する他の処理例を示すフローチャート図である。
この処理も、図2のフローチャート図で説明した処理と同様に、使用者が設定した印刷条件で印刷した場合の画像形成装置1の消費電力量の予測値を求めて通知するが、その予測値の演算の際に画像形成装置1の現在の状態情報を含めている。
この状態情報には、予測値の演算時に測定された定着部20の温度情報が含まれる。
【0056】
画像形成装置1の使用者は、印刷を実行するために画像形成装置1の制御部2が提供する印刷実行用アプリケーションプログラムを起動し、印刷用プロパティで印刷条件を設定する。
この印刷条件には、例えば、モノクロ印刷指定、カラー印刷指定、印刷用紙サイズ種類、印刷用紙厚さ設定情報、印刷の階調設定情報(ディザリングの種類、例えば、ランダムディザ、パターンディザ)、印刷速度設定情報、印刷に使用する用紙が蓄積されている給紙トレイの場所情報などがある。
【0057】
図1の制御部2のCPU10は、図5のステップ(図中「S」で示す)21〜28の処理を実行する。
ステップ21では、使用者の操作による印刷条件の設定を受け付け、ステップ22では、画像形成装置1の現在の状態情報を取得し、ステップ23では、設定された印刷条件と画像形成装置1の現在の状態で印刷した場合の消費電力量の予測値を算出し、ステップ24では、消費電力量の予測値を通知し、ステップ25へ進む。
この通知では、操作表示部4の表示部への表示、又は通信制御部5を介して通信網上の所定の宛先の外部装置へ出力がある。
【0058】
上記所定の宛先の外部装置とは、例えば、画像形成装置1に印刷要求をした情報処理装置(PC)である。
ステップ25では、印刷条件の変更があったか否かを判断し、印刷条件の変更が無かった場合(Nの場合)はステップ26へ進み、印刷条件の変更があった場合(Yの場合)はステップ22へ戻って上述の処理を行い、変更された内容の印刷条件とその時点の定着部20の温度情報に基いて消費電力量の予測値を算出し直し、その予測値を通知する処理を実行する。
【0059】
ステップ26では、消費電力量の予測値を通知してから所定時間が経過したか否かを判断し、所定時間が経過していない場合(Nの場合)はステップ27へ進み、所定時間が経過した場合(Yの場合)はステップ22へ戻って上述の処理を行い、定着部20の温度情報を取得し直して印刷条件とその温度情報に基いて消費電力量の予測値を算出し直し、その予測値を通知する処理を実行する。
上記所定時間は、予め設定された一定時間であり、使用者が任意の変更することができる。
【0060】
ステップ27では、使用者の操作による印刷実行要求があったか否かを判断し、印刷実行要求が無かった場合(Nの場合)はステップ25へ戻り、印刷実行要求があった場合(Yの場合)はステップ28へ進む。
ステップ28では、図1の画像形成部3を制御して印刷処理を実行し、この処理を終了する。
【0061】
すなわち、この処理では、消費電力量の予測値の算出に画像形成装置1の状態情報を含めるようにし、画像形成装置1の状態に応じた消費電力量の予測値を通知している。
また、画像形成装置1の使用者が印刷条件の変更を行った場合、又は所定時間を経過しても印刷実行要求がない場合、消費電力量の予測値を算出し直して更新する。
そして、使用者が印刷実行要求を指示すると、その変更された印刷条件で印刷が実行される。
【0062】
このようにして、実施形態の画像形成装置1は、印刷前にユーザに消費電力量通知を実施する際、画像形成装置1の状態の変化(定着装置の温度、経年変化に伴う駆動部品の劣化等の変化)に対して、精度良く消費電力量を通知することができる。
また、印刷前に設定された印刷条件毎に対応する演算式の演算処理で消費電力量の予測値を算出するので、その予測値を精度良く求めることができる。
【0063】
次に、上記ステップ23の消費電力量の予測値の算出処理について説明する。
この算出処理では、画像形成装置1の状態情報として、温度検出部19から取得する定着部20の温度情報を用いた場合を説明する。
画像形成装置1の消費電力量の予測値をP、画像形成装置1の定着部20が定着可能温度に達するまでの時間(以下、「定着部立上げ時間」という)に消費するAC消費電力量をPSAC、定着部立上げ時間に消費するDC消費電力量をPSDC、画像形成装置1の印刷実行時に消費するAC消費電力量をPPAC、画像形成装置1の印刷実行時に消費するDC消費電力量をPPDCとすると、次の式9の演算処理で求めることができる。
〔式9〕P=PSAC+PSDC+PPAC+PPDC
【0064】
また、画像形成装置1の定着部20が定着部立上げ時間に消費するAC消費電力量PSACとDC消費電力量をPSDCの各予測値を求めるには、定着部立上げ時間を予測しなければならない。
この定着部立上げ時間の予測値tは、温度Tに基いて次の式10の立上げ時間算出式で求めることができる。
【0065】
〔式10〕t=c(T)+c(T)+…+cn−1n−1(T)+c(T)
(nは1以上の整数、I(T)〜I(T)はTを変数とするそれぞれ異なる関数)
ここでは、上記式10に示した演算式の温度Tを変数とするそれぞれ異なる関数のI(T)、I(T)、…、In−1(T)の一例として、I(T)=T、I(T)=T(n−1)、…、In−1(T)=T、I(N)=1にした場合を説明する。
【0066】
定着部立上げ時間の予測値tは、定着部20の温度をT(このTは温度検出部19が出力する温度情報に相当する)、定着部立上げ時間をtとして、次の式11の立上げ時間算出式に基づく演算処理で求めることができる。
〔式11〕t=c+c(n−1)+…+cn−1T+c
(nは1以上の整数)
【0067】
次に、定着部立上げ時間に消費するAC消費電力量PSACとDC消費電力量PSDCは、定着部立上げ時間の予測値tに基いてそれぞれ次の式12の立上げ時交流消費電力算出式と式13の立上げ時直流消費電力算出式で求めることができる。
〔式12〕PSAC=d(t)+d(t)+…+dn−1n−1(t)+d(t)
(nは1以上の整数、J(t)〜J(t)はtを変数とするそれぞれ異なる関数)
【0068】
〔式13〕PSDC=e(t)+e(t)+…+en−1n−1(t)+e(t)
(nは1以上の整数、K(t)〜K(t)はtを変数とするそれぞれ異なる関数)
ここでは、上記定着部立上げ時間の予測値tを変数とするそれぞれ異なる関数のJ(t)、J(t)、…、Jn−1(t)、J(t)とK(t)、K(t)、…、Kn−1(t)、K(t)の一例として、J(t)=K(t)=t、J(t)=K(t)=t(n−1)、…、Jn−1(t)=Kn−1(t)=t、J(t)=K(t)=1にした場合を説明する。
【0069】
定着部立上げ時間に消費するAC消費電力量PSACは、定着部立上げ時間tを用いて、次の式14の立上げ時交流消費電力算出式に基づく演算処理で求めることができる。
〔式14〕PSAC=d+d(n−1)+…+dn−1t+d
(nは1以上の整数)
また、定着部立上げ時間に消費するDC消費電力量PSDCは、定着部立上げ時間tを用いて、次の式15の立上げ時直流消費電力算出式に基づく演算処理で求めることができる。
〔式15〕PSDC=e+e(n−1)+…+en−1t+e
(nは1以上の整数)
【0070】
次に、画像形成装置1の印刷実行時に消費するAC消費電力量PPACとDC消費電力量PPDCは、印刷枚数Nに基いてそれぞれ次の式16の交流消費電力算出式と式17の直流消費電力算出式で求めることができる。
〔式16〕PPAC=f(N)+f(N)+…+fn−1n−1(N)+f(N
(nは1以上の整数、L(N)〜L(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
【0071】
〔式17〕PPDC=g(N)+g(N)+…+gn−1n−1(N)+f(N
(nは1以上の整数、M(N)〜M(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
ここでも、上記印刷枚数Nを変数とするそれぞれ異なる関数のL(N)、L(N)、…、Ln−1(N)、L(N)とM(N)、M(N)、…、Mn−1(N)、M(N)の一例として、L(N)=M(N)=N、L(N)=M(N)=N(n−1)、…、Ln−1(N)=Mn−1(N)=N、L(N)=M(N)=1にした場合を説明する。
【0072】
画像形成装置1の印刷実行時に消費するAC消費電力量PPACは、印刷枚数Nを用いて次の式18の交流消費電力算出式に基づく演算処理で求めることができる。
〔式18〕PPAC=f+f(n−1)+…+fn−1+f
(nは1以上の整数)
また、画像形成装置1の印刷実行時に消費するDC消費電力量PPDCは、印刷枚数Nを用いて次の式19の直流消費電力算出式に基づく演算処理で求めることができる。
〔式19〕PPDC=g+g(n−1)+…+gn−1+g
(nは1以上の整数)
【0073】
なお、上記式10、式11は、画像形成装置1において定着温度を異ならせて印刷実験をし、そのときの定着部立上げ時間の実測値の分布を示す曲線から導き出した演算式である。
また、上記式12〜式15は、画像形成装置1において定着部立上げ時間を異ならせて印刷実験をし、その各消費電力量の実測値の分布を示す曲線から導き出した演算式である。
【0074】
さらに、上記式16〜式19は、画像形成装置1において印刷条件毎に印刷枚数を異ならせて印刷実験をし、その各消費電力量の実測値の分布を示す曲線から導き出した演算式である。
また、所定係数の『c,…,cn−1,c』、『d,…,dn−1,d』、『e,…,en−1,e』、『f,…,fn−1,f』、『g,…,gn−1,g』の各値は、図6の(a)〜図6の(e)に示すように印刷条件毎に異なった値になる。
【0075】
画像形成装置1の不揮発性RAM13には、予め上記式10〜式19の各演算手順の情報と、印刷条件毎の所定係数『c,…,cn−1,c』、『d,…,dn−1,d』、『e,…,en−1,e』、『f,…,fn−1,f』、『g,…,gn−1,g』の各値を保存するようにし、画像形成装置1の消費電力量の予測値Pは、CPU10が不揮発性RAM13の各情報を用いて算出する。
【0076】
図6の(a)は、印刷条件毎のn個の所定係数c,…,cn−1,cの各値の一例を示している。
また、図6の(b)は、印刷条件毎のn個の所定係数d,…,dn−1,dの各値の一例を示している。
さらに、図6の(c)は、印刷条件毎のn個の所定係数e,…,en−1,eの各値の一例を示している。
また、図6の(d)は、印刷条件毎のn個の所定係数f,…,fn−1,fの各値の一例を示している。
さらに、図6の(e)は、印刷条件毎のn個の所定係数g,…,gn−1,gの各値の一例を示している。
【0077】
この印刷条件には、例えば、印刷用紙サイズ種類、印刷用紙厚さ設定情報、印刷の階調設定情報(ディザリングの種類、例えば、ランダムディザ、パターンディザ)、印刷速度設定情報、印刷に使用する用紙が蓄積されている給紙トレイの場所情報などがある。
また、モノクロ印刷指定とカラー印刷指定の場合は2種類になる。
【0078】
なお、上述の処理では、画像形成装置1の使用者が印刷条件の設定や印刷実行要求を実施したり、画像形成装置1の使用者へ印刷条件に応じた消費電力量の予測値を通知したりするアプリケーションプログラムは、画像形成装置1のROM11、又は図示を省略した記憶装置に記憶した場合を説明したが、このアプリケーションプログラムを、画像形成装置1に通信網を介して接続された又は直接に接続されたホストPCから提供するようにしても良い。
さらに、上述の処理では、画像形成装置1の現在の状態情報として、予測値の演算時に測定された定着部20の温度情報を用いた場合を説明したが、他の状態情報を用いた場合でも上述と同様に実施することができる。
【0079】
次に、この実施形態の画像形成装置1が印刷時に消費電力量の予測値を算出する際に用いる係数を更新する他の処理例について説明する。
図7は、図1の画像形成装置1が印刷時に消費電力量の予測値を算出する際に用いる係数を更新する他の処理例のフローチャート図である。
この処理は、図5のフローチャート図で説明した演算式の各係数を更新する。
ここでは、画像形成装置1の現在の状態情報として、図1の定着部20の温度情報と、定着部立上げ情報を用いた場合の処理を説明する。
【0080】
図1の制御部2のCPU10は、印刷実行要求を受け付けると、図7のステップ(図中「S」で示す)31〜40の処理を実行する。
ステップ31では、定着部20の温度情報を取得し、ステップ32へ進む。
このステップ31の処理では、印刷実行直前の画像形成装置1の定着部20の温度情報を温度検出部19から取得する。
ステップ32では、印刷実行要求に基いて印刷条件に応じた印刷処理を実行し、ステップ33へ進む。
【0081】
ステップ33では、印刷動作実行中は、図1のCPU10は、温度検出部19からの温度情報を監視し、『定着部立上げ時間』を計測する。
また、印刷動作実行中は、図1のAC消費電力量計測部17は、CPU10からの計測時間の指示に基づいて画像形成装置1が印刷前に消費する『定着部立上げ時間中AC消費電力量』を計測し、同じくDC消費電力量計測部18は、CPU10からの計測時間の指示に基づいて画像形成装置1が印刷前に消費する『定着部立上げ時間中DC消費電力量』を計測し、それぞれI/O制御部14へ出力する。
【0082】
さらに、印刷動作実行中は、図1のAC消費電力量計測部17は印刷実行において画像形成装置1が消費する『AC消費電力量』を、DC消費電力量計測部18は印刷実行において画像形成装置1が消費する『DC消費電力量』をそれぞれ計測し、それぞれI/O制御部14へ出力する。
そして、ステップ33では、上記定着部立上げ時間中AC消費電力量、定着部立上げ時間中DC消費電力量、印刷中のAC消費電力量及びDC消費電力量も取得して、ステップ34へ進む。
【0083】
ステップ34では、印刷終了後、印刷実行中にジャム等による印刷中断が発生したか否かを判断する。
印刷実行中にジャム等による印刷中断が発生しなかった場合(ステップ34でNの場合)、ステップ35で計測回数mをカウントし、ステップ36へ進む。
【0084】
ステップ36では、『今回の印刷条件』、『印刷実行直前に取得した定着部20の温度』、『今回の印刷条件における計測回数』、『今回計測した定着部立上げ時間』、『今回計測した定着部立上げ時間中のAC消費電力量』、『今回計測した定着部立上げ時間中のDC消費電力量』、『今回計測した印刷実行中のAC消費電力量』、『今回計測した印刷実行中のDC消費電力量』、及び『印刷枚数』の各情報を対応させて図1の不揮発性RAM13に記憶し、ステップ37へ進む。
【0085】
一方、印刷終了後、印刷実行中にジャム等による印刷中断が発生した場合(ステップ34でYの場合)、処理を終了する。
ステップ37では、今回の印刷条件で印刷した計測回数はm回か否かを判断する。
今回の印刷条件で印刷した計測回数はm回ではない場合(ステップ37のNの場合)、すなわち、m回未満である場合は、処理を終了する。
ここで、mの値は式10〜式19のnの値と等しい。
【0086】
一方、今回の印刷条件で印刷した計測回数はm回の場合(ステップ37でYの場合)、、ステップ38へ進む。
ステップ38では、今回の印刷条件について、m回分の印刷枚数と、定着部20の温度と、定着部立上げ時間、それぞれ計測された消費電力量に基いて各所定係数を算出し、ステップ39へ進む。
【0087】
このステップ38の処理では、不揮発性RAM13に蓄積された情報と、図5のフローチャート図で説明した定着部立上げ時間の予測値t、定着部立上げ時間に消費するAC消費電力量PSACとDC消費電力量PSDC、画像形成装置1の印刷実行時に消費するAC消費電力量PPACとDC消費電力量PPDCの算出に用いた演算式と同様の演算式を用いて各演算式の係数を求める。
【0088】
そこで、この処理でも、温度Tを変数とする各関数についてI(T)=T、I(T)=T(n−1)、…、In−1(T)=T、I(T)=1にし、定着部立上げ時間t′を変数とする各関数についてJ(t)=K(t)=t、J(t)=K(t)=t(n−1)、…、Jn−1(t)=Kn−1(t)=t、J(t)=K(t)=1にし、印刷枚数Nを変数とする各関数についてL(N)=M(N)=N、L(N)=M(N)=N(n−1)、…、Ln−1(N)=Mn−1(N)=N、L(N)=M(N)=1にした場合で説明する。
【0089】
今回実行した印刷条件において、不揮発性RAM13に保存されたm(=n)回分の『定着部立上げ時間』と『印刷実行直前の定着部20の温度』の各情報を用いて、式20の立上げ時間算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『c′,…,c′n−1,c′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式20〕t=c′+c′(n−1)+…+c′n−1T+c′
(nは1以上の整数)
【0090】
この演算処理は、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『定着部立上げ時間』と『印刷実行直前の定着部20の温度』のn組の各値をそれぞれ式20に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『c′,…,c′n−1,c′』の各値をそれぞれ算出する。その算出処理のアルゴリズムは、公知技術を用いると良い。
【0091】
また、不揮発性RAM13に保存されたm(=n)回分の『定着部立上げ時間』と『定着部立上げ時間中のAC消費電力量』のn組の各情報を用いて、式21の立上げ時交流消費電力算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『d′,…,d′n−1,d′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式21〕PSAC=d′+d′(n−1)+…+d′n−1t+d′
(nは1以上の整数)
【0092】
この演算処理は、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『定着部立上げ時間』と『定着部立上げ時間中のAC消費電力量』のn組の各値をそれぞれ式21に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『d′,…,d′n−1,d′』の各値をそれぞれ算出する。その算出処理のアルゴリズムも、公知技術を用いると良い。
【0093】
さらに、不揮発性RAM13に保存されたm(=n)回分の『定着部立上げ時間』と『定着部立上げ時間中のDC消費電力量』のn組の各情報を用いて、式22の立上げ時直流消費電力算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『e′,…,e′n−1,e′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式22〕PSDC=e′+e′(n−1)+…+e′n−1t+e′
(nは1以上の整数)
【0094】
この演算処理も、上述した所定係数『d′,…,d′n−1,d′』の各値を求めた場合と同様にして、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『定着部立上げ時間』と『定着部立上げ時間中のAC消費電力量』のn組の値をそれぞれ式22に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『e′,…,e′n−1,e′』の各値をそれぞれ算出する。その算出処理のアルゴリズムも、公知技術を用いると良い。
【0095】
また、不揮発性RAM13に保存されたm(=n)回分の『印刷枚数』と『印刷実行中のAC消費電力量』のn組の各情報を用いて、式23の交流消費電力算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『f′,…,f′n−1,f′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式23〕PPAC=f′+f′(n−1)+…+f′n−1+f′
(nは1以上の整数)
【0096】
この演算処理は、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『印刷枚数』と『印刷実行中のAC消費電力量』のn組の各値をそれぞれ式23に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『f′,…,f′n−1,f′』の各値をそれぞれ算出する。その算出処理のアルゴリズムも、公知技術を用いると良い。
【0097】
さらに、不揮発性RAM13に保存されたm回分の『印刷枚数』と『印刷実行中のDC消費電力量』の各情報を用いて、数24の直流消費電力算出式に基づく演算手順によってn個の所定係数『g′,…,g′n−1,g′』の各値をそれぞれ算出する。
〔式24〕PPDC=g′+g′(n−1)+…+g′n−1+g′
(nは1以上の整数)
【0098】
この演算処理も、上述した所定係数『f′,…,f′n−1,f′』の各値を求めた場合と同様にして、不揮発性RAM13に蓄積された該当する印刷条件に対応する『印刷枚数』と『印刷実行中のDC消費電力量』のn組の各値をそれぞれ式24に代入して得られた連立方程式を解くことによってn個の所定係数『g′,…,g′n−1,g′』の各値をそれぞれ算出する。その算出処理のアルゴリズムも、公知技術を用いると良い。
【0099】
ステップ39では、今回の印刷条件について、演算式に適用する各所定係数を更新し、ステップ40へ進む。
ステップ39の処理では、今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている所定係数『c,…,cn−1,c』の各値を上記算出した所定係数『c′,…,c′n−1,c′』の各値にそれぞれ書き換えて更新する。
【0100】
また、同じく今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている所定係数『d,…,dn−1,d』の各値を上記算出した所定係数の『d′,…,d′n−1,d′』各値にそれぞれ書き換えて更新する。
さらに、同じく今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている所定係数『e,…,en−1,e』の各値を上記算出した所定係数『e′,…,e′n−1,e′』の各値にそれぞれ書き換えて更新する。
【0101】
また、同じく今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている初手係数『f,…,fn−1,f』の各値を上記算出した所定係数『f′,…,f′n−1,f′』の各値にそれぞれ書き換えて更新する。
さらに、同じく今回実行した印刷条件について、不揮発性RAM13に保存されている所定係数『g,…,gn−1,g』の各値を上記算出した所定係数『g′,…,g′n−1,g′』の各値にそれぞれ書き換えて更新する。
【0102】
ステップ40では、不揮発性RAM13から各所定係数の算出に用いた情報を消去し、この処理を終了する。
ステップ40の処理では、不揮発性RAM13に保存できる情報には限りがあるため、消費電力量の各所定係数の算出時に用いた情報を削除することにより、記憶領域を浪費しないようにしている。
【0103】
なお、上述の処理では、温度Tを変数とする各関数についてI(T)=T、I(T)=T(n−1)、…、In−1(T)=T、I(T)=1にし、定着部立上げ時間tを変数とする各関数についてJ(t)=K(t)=t、J(t)=K(t)=t(n−1)、…、Jn−1(t)=Kn−1(t)=t、J(T)=K(T)=1にし、印刷枚数Nを変数とする各関数についてL(N)=M(N)=N、L(N)=M(N)=N(n−1)、…、Ln−1(N)=Mn−1(N)=N、L(N)=M(N)=1にした場合を説明したが、その他の関数をそれぞれ用いるようにしてもよい。
また、画像形成装置1の消費電力量の予測値を、交流も直流も分けずに求めてもよい。
【0104】
このようにして、実施形態の画像形成装置1は、印刷前にユーザに通知する消費電力量の算出に用いる所定の係数を定期的に更新するので、画像形成装置1の状態の変化(定着装置の温度、経年変化に伴う駆動部品の劣化等の変化)に対して、精度良く消費電力量を通知することができる。
【0105】
なお、上述の処理では、印刷条件毎に定着装置の測定した温度も対応させて記憶させる場合を示したが、定着装置の温度と立上げ時間の蓄積は、印刷条件とは独立させて記憶するようにしても良い。
このようにすれば、定着装置の温度と立上げ時間の組がn組蓄積された時点で立上げ予測時間を算出する立上げ時間算出式の所定係数c,…,cn−1,cを更新することができる。
【0106】
また、上述の処理では、ある印刷条件について、温度、立上げ時間、立上げ時の交流消費電力量及び直流消費電力量、印刷時の交流消費電力量及び直流消費電力量がn組蓄積された場合に各演算に用いる所定係数値を更新する場合を示したが、立上げ時間算出式の所定係数については、必ずしも印刷条件毎に更新する必要はなく、印刷時の定着装置の温度と立上げ時間の組がn個揃ったところで更新するようにしても良い。
このようにすれば、定着装置では印刷条件にかかわらず加熱が加わる場合があるので、定着装置の消費電力量の変動に応じて印刷の際の消費電力量の予測値の精度を高めることができる。
【0107】
この実施形態の画像形成装置1によれば、使用者に対して、画像形成装置1の現在の状態(定着器の温度等)取得手段、定着器率上げ時間計測手段、印刷枚数計測手段、消費電力計測手段を備え付け、種々の印刷条件(モノクロ/カラー設定、両面/片面設定、紙圧設定、ディザリング設定等)毎に計測した定着器立上げ時間、印刷枚数、消費電力量を記憶手段に蓄積する。規定回数計測を実施すると、計測結果に基づきユーザー通知消費電力算出式を更新するので、印刷前にユーザに消費電力量を通知する際、画像形成装置1の状態の変化(定着装置の温度、経年変化に伴う駆動部品の劣化等の変化)に対して、印刷による消費電力量の予測値を精度良く求めて通知することができる。
【0108】
なお、実施形態における上記nの値については、使用者が必要な値を自由に設定できるが、例えば、n=1に設定した場合は印刷の度に毎回所定係数を改めることになり、消費電力量の予測値の精度を最も高めることができる。
また、nの値を2以上の整数、例えば、n=10のように、nの値を画像形成装置1の使用環境に応じた適当な値に設定すれば、上記所定係数の更新を頻繁に行うことなく画像形成装置1の負荷を低減すると共に、消費電力量の予測値の精度を高めることができる。
【0109】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、各部の具体的な構成、処理の内容、データの形式等は、実施形態で説明したものに限るものではない。
また、上述の実施形態では、この発明を複合機に適用した例について説明した。
しかし、この発明は、画像形成機能を備えたファクシミリ装置、プリンタ、複写機等の任意の画像形成装置に適用可能である。
【0110】
さらに、この発明のプログラムは、コンピュータに各種デバイスを制御させ、上述した画像装置の各機能を実現させるためのプログラムとして構成することができる。
このようなプログラムは、予め画像形成装置1のメモリに記憶させておく他、記録媒体であるCD、あるいはフレキシブルディスク、SRAM、EEPROM、メモリカード等の不揮発性記録媒体に記録したり、ネットワークを介してダウンロードできるようにしたりして提供することもできる。
【0111】
そして、そのプログラムをインストールしてCPU10に実行させるか、CPU10にメモリあるいはダウンロードサーバからこのプログラムを取得させて実行させることにより、上述した実施形態の画像形成装置1の各機能を実現させることができる。
また、以上説明してきた実施形態の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0112】
1:画像形成装置 2:制御部 3:画像形成部 4:操作表示部 5:通信制御部 6:電源部 7:AC/DCコンバータ 8:外部交流電源 10:CPU 11:ROM 12:RAM 13:不揮発性RAM 14:I/O制御部 15:AC負荷部 16:DC負荷部 17:AC消費電力量計測部 18:DC消費電力量計測部 19:温度検出部 20:定着部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開2009−76003号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷条件毎に所定係数と印刷枚数とから印刷手段による印刷時の消費電力量の予測値を算出する消費電力算出式と前記印刷条件毎の前記所定係数を記憶する記憶手段と、
指定された印刷条件及び印刷枚数と、前記記憶手段に記憶されている前記消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応する所定係数に基いて、その指定された印刷条件及び印刷枚数による印刷の消費電力量の予測値を算出する予測値算出手段と、
前記予測値算出手段によって算出した消費電力量の予測値を通知する通知手段と、
前記印刷手段の印刷動作中に消費電力量を計測する計測手段と、
前記印刷手段が指定された印刷条件及び印刷枚数で印刷動作を行った際の前記計測手段が計測した消費電力量と、その指定された印刷条件及び印刷枚数とを対応させて蓄積する消費電力記憶手段と、
前記消費電力記憶手段に、ある印刷条件について消費電力量と印刷枚数との組み合わせが所定数蓄積された場合に、該所定数の消費電力量及び印刷枚数の組に基づき、該印刷条件についての前記所定係数の値を算出する係数算出手段と、
前記係数算出手段が前記所定係数の値を算出した場合に、前記記憶手段が記憶する、前記ある印刷条件についての所定係数を、該算出した値に更新する更新手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記印刷条件毎にn個の所定係数x〜xと印刷枚数Nとから前記印刷手段による印刷時の消費電力量の予測値Pを算出する式1の消費電力算出式と前記印刷条件毎のn個の所定係数x〜xを記憶する手段を有し、
〔式1〕P=x(N)+x(N)+…+xn−1n−1(N)+x(N
(nは1以上の整数、F(N)〜F(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
前記予測値算出手段は、前記指定された印刷条件及び印刷枚数Nと、前記記憶手段に記憶されている前記式1の消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数x〜xに基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の消費電力量の予測値Pを算出する手段を有し、
前記消費電力記憶手段は、前記印刷手段が指定された印刷条件及び印刷枚数Nで印刷動作を行った際の前記計測手段が計測した消費電力量と、その指定された印刷条件及び印刷枚数Nとを対応させて蓄積する手段を有し、
前記係数算出手段は、前記消費電力記憶手段に、ある印刷条件についてn組の消費電力量及び印刷枚数が蓄積された場合に、該n組の消費電力量及び印刷枚数をそれぞれ前記式1のP及びNに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数x〜xの値を算出する手段を有し、
前記更新手段は、前記係数算出手段が前記n個の所定係数x〜xの値を算出した場合に、前記記憶手段が記憶する、前記ある印刷条件についてのn個の所定係数x〜xを、該算出した値に更新する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記印刷条件毎にn個の所定係数a〜aと印刷枚数Nとから前記印刷手段による印刷時の交流消費電力量の予測値PACを算出する式2の交流消費電力算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数a〜aと、前記印刷条件毎にn個の所定係数b〜bと印刷枚数Nとから前記印刷手段による印刷時の直流消費電力量の予測値PDCを算出する式3の直流消費電力算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数b〜bと、前記印刷時の交流消費電力量の予測値PACと直流消費電力量の予測値PDCとから前記印刷手段による印刷時の消費電力量の予測値Pを算出する式4の消費電力算出式とを記憶する手段を有し、
〔式2〕PAC=a1(N)+a2(N)+…+an−1n-1(N)+an(N
(nは1以上の整数、G(N)〜G(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式3〕PDC=b1(N)+b2(N)+…+bn−1n-1(N)+bn(N
(nは1以上の整数、H(N)〜H(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式4〕P=PAC+PDC
前記予測値算出手段は、前記指定された印刷条件及び印刷枚数Nと前記記憶手段に記憶されている前記式2の交流消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数a〜aに基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の交流消費電力量の予測値PACを算出し、前記指定された印刷条件及び印刷枚数Nと前記記憶手段に記憶されている前記式3の直流消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数b〜bに基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の直流消費電力量の予測値PDCを算出し、前記算出した交流消費電力量の予測値PACと直流消費電力量の予測値PDCと前記式4の消費電力算出式に基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の消費電力量の予測値Pを算出する手段を有し、
前記計測手段は、前記印刷手段の印刷動作中に交流消費電力量を計測する交流消費電力計測手段と、前記印刷手段の印刷動作中に直流消費電力量を計測する直流消費電力計測手段とを有し、
前記消費電力記憶手段は、前記印刷手段が指定された印刷条件及び印刷枚数Nで印刷動作を行った際の前記交流消費電力計測手段が計測した交流消費電力量と前記直流消費電力計測手段が計測した直流消費電力量と、その指定された印刷条件及び印刷枚数Nとを対応させて蓄積する手段を有し、
前記係数算出手段は、前記消費電力記憶手段に、ある印刷条件についてn組の交流消費電力量と直流消費電力量と印刷枚数Nが蓄積された場合に、該n組の交流消費電力量及び印刷枚数をそれぞれ前記式2のPACとNに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数a〜aの値を算出し、前記n組の直流消費電力量及び印刷枚数をそれぞれ前記式3のPDCとNに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数b〜bの値を算出する手段を有し、
前記更新手段は、前記係数算出手段が前記n個の所定係数a〜a及び前記n個の所定係数b〜bの値を算出した場合に、前記記憶手段が記憶する、前記ある印刷条件についてのn個の所定係数a〜aとn個の所定係数b〜bを、該算出した値に更新する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷手段によって記録媒体に印刷された画像を前記記録媒体上に定着させる定着手段の温度Tを測定する温度測定手段を設け、
前記記憶手段は、前記印刷条件毎にn個の所定係数c〜cと前記温度測定手段によって測定された温度Tとから前記印刷手段による印刷のために前記定着手段が定着可能な温度に達するまでの立上げ予測時間tを算出する式5の立上げ時間算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数c〜cと、前記印刷条件毎にn個の所定係数d〜dと前記立上げ予測時間tとから前記定着手段が前記立上げ予測時間tに消費する立上げ時交流消費電力量の予測値PSACを算出する式6の立上げ時交流消費電力算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数d〜dと、前記印刷条件毎にn個の所定係数e〜eと前記立上げ予測時間tとから前記定着手段が前記立上げ時間tに消費する立上げ時直流消費電力量の予測値PSDCを算出する式7の立上げ時直流消費電力算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数e〜eと、前記印刷条件毎にn個の所定係数f〜fと印刷枚数Nとから前記印刷手段による印刷時の交流消費電力量の予測値PPACを算出する式8の交流消費電力算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数f〜fと、前記印刷条件毎にn個の所定係数g〜gと印刷枚数Nとから前記印刷手段による印刷時の直流消費電力量の予測値PPDCを算出する式9の直流消費電力算出式と、前記印刷条件毎のn個の所定係数g〜gと、前記立上げ時交流消費電力量の予測値PSACと前記立上げ時直流消費電力量の予測値PSDCと前記印刷時の交流消費電力量の予測値PPACと前記印刷時の直流消費電力量の予測値PPDCとから前記印刷手段による印刷時の消費電力量の予測値Pを算出する式10の消費電力算出式とを記憶する手段を有し、
〔式5〕t=c(T)+c(T)+…+cn−1n−1(T)+c(T)
(nは1以上の整数、I(T)〜I(T)はTを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式6〕PSAC=d(t)+d(t)+…+dn−1n−1(t)+d(t)
(nは1以上の整数、J(t)〜J(t)はtを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式7〕PSDC=e(t)+e(t)+…+en−1n−1(t)+e(t)
(nは1以上の整数、K(t)〜K(t)はtを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式8〕PPAC=f(N)+f(N)+…+fn−1n−1(N)+f(N
(nは1以上の整数、L(N)〜L(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式9〕PPDC=g(N)+g(N)+…+gn−1n−1(N)+g(N
(nは1以上の整数、M(N)〜M(N)はNを変数とするそれぞれ異なる関数)
〔式10〕P=PSAC+PSDC+PPAC+PPDC
前記予測値算出手段は、前記指定された印刷条件と、該印刷条件及び印刷枚数Nが指定されたときに前記温度測定手段で測定された温度Tと、前記記憶手段に記憶されている前記式5の立上げ時間算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数c〜cに基いてその指定された印刷条件による印刷のために前記定着手段が定着可能な温度に達するまでの立上げ予測時間tを算出し、前記指定された印刷条件と、前記算出した立上げ予測時間tと、前記記憶手段に記憶されている前記式6の立上げ時交流消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数d〜dに基いて前記定着手段が前記立上げ予測時間tに消費する立上げ時交流消費電力量の予測値PSACを算出し、前記指定された印刷条件と、前記算出した立上げ予測時間tと、前記記憶手段に記憶されている前記式7の立上げ時直流消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数e〜eに基いて前記定着手段が前記立上げ予測時間tに消費する立上げ時直流消費電力量の予測値PSDCを算出し、前記指定された印刷条件及び印刷枚数Nと、前記記憶手段に記憶されている前記式8の交流消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数f〜fに基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の交流消費電力量の予測値PPACを算出し、前記指定された印刷条件及び印刷枚数Nと、前記記憶手段に記憶されている前記式9の直流消費電力算出式及び前記指定された印刷条件に対応するn個の所定係数g〜gに基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の直流消費電力量の予測値PPDCを算出し、前記算出した前記立上げ時交流消費電力量の予測値PSACと前記立上げ時直流消費電力量の予測値PSDCと前記交流消費電力量の予測値PPACと前記直流消費電力量の予測値PPDCと前記式10の消費電力算出式とに基いてその指定された印刷条件及び印刷枚数Nによる印刷の消費電力量の予測値Pを算出する手段を有し、
前記計測手段は、前記印刷手段で印刷する際に前記定着手段が定着可能な温度に達するまでの立上げ時間を計測する立上げ時間計測手段と、前記立上げ時間に消費する交流消費電力量と前記印刷手段の印刷動作中の交流消費電力量をそれぞれ計測する交流消費電力計測手段と、前記立上げ時間に消費する直流消費電力量と前記印刷手段の印刷動作中の直流消費電力量をそれぞれ計測する直流消費電力計測手段とを有し、
前記消費電力記憶手段は、前記印刷手段が指定された印刷条件及び印刷枚数Nで印刷する際に前記温度測定手段で測定された温度と、前記印刷手段が指定された印刷条件及び印刷枚数Nで印刷動作を行った際の前記立上げ時間計測手段が計測した立上げ時間と、前記交流消費電力計測手段が計測した前記立上げ時間に消費する交流消費電力量及び前記印刷手段の印刷動作中の交流消費電力量と、前記直流消費電力計測手段が計測した前記立上げ時間に消費する直流消費電力量及び前記印刷手段の印刷動作中の直流消費電力量と、その指定された印刷条件及び印刷枚数Nとを対応させて蓄積する手段を有し、
前記係数算出手段は、前記消費電力記憶手段に、ある印刷条件についてn組の前記温度と前記立上げ時間と前記立上げ時間に消費する交流消費電力量及び前記印刷手段の印刷動作中の交流消費電力量と前記立上げ時間に消費する直流消費電力量及び前記印刷手段の印刷動作中の直流消費電力量と印刷枚数Nが蓄積された場合に、該n組の温度及び立上げ時間とをそれぞれ前記式5のTとtに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数c〜cの値を算出し、前記n組の立上げ時間及び該立上げ時間に消費する交流消費電力量をそれぞれ前記式6のtとPSACに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数d〜dの値を算出し、前記n組の立上げ時間及び該立上げ時間に消費する直流消費電力量をそれぞれ前記式7のtとPSDCに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数e〜eの値を算出し、前記n組の前記印刷動作中の交流消費電力量及び印刷枚数をそれぞれ前記式8のPPACとNに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数f〜fの値を算出し、前記n組の前記印刷動作中の直流消費電力量及び印刷枚数をそれぞれ前記式9のPPDCとNに代入して得られる式から該印刷条件についての前記n個の所定係数g〜gの値を算出する手段を有し、
前記更新手段は、前記係数算出手段が前記n個の所定係数c〜c、前記n個の所定係数d〜d、前記n個の所定係数e〜e、前記n個の所定係数f〜f、及び前記n個の所定係数g〜gの値を算出した場合に、前記記憶手段が記憶する、前記ある印刷条件についてのn個の所定係数c〜c、n個の所定係数d〜d、n個の所定係数e〜e、n個の所定係数f〜f、及びn個の所定係数g〜gを、該算出した値にそれぞれ更新する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記印刷条件は、モノクロ印刷、カラー印刷、印刷用紙サイズ、印刷用紙厚さ設定情報、印刷のディザリング設定情報、印刷速度設定情報、又は印刷に使用する用紙が蓄積されている給紙トレイの場所情報を含む情報であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載された画像形成装置。
【請求項6】
前記nの値を変更する手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載された画像形成装置。
【請求項7】
前記通知手段は、前記消費電力量の予測値を使用者に表示して通知する手段であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載された画像形成装置。
【請求項8】
前記通知手段は、前記消費電力量の予測値を当該画像形成装置に接続されるホストコンピュータに通知する手段であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97030(P2013−97030A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236997(P2011−236997)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】