説明

画像情報作成方法,断層撮影装置の断層画像情報作成方法及び断層撮影装置

【課題】
体動(例えば呼吸動)の影響を受ける部位を対象としたより鮮明なエミッション画像情報を短時間に得ることができる陽電子放出断層撮影装置を提供する。
【解決手段】
PET薬剤に起因して体内で発生する第1γ線及びγ線源から放射されて体内を透過する第2γ線が放射線検出器で検出される。検出された第1γ線から得られた各情報を用いて呼吸周期を区分した各体動位相区間0,1,2のそれぞれのエミッション画像情報(E画像情報)E0,E1,E2を作成する。検出された第2γ線から得られた各情報を用いて各体動位相区間0,1,2のそれぞれのトランスミッション画像情報(T画像情報)T0,T1,T2を作成する。T画像情報T0に他のT画像情報T1,T2をそれぞれ重ね合わせることによって相対変位[F10],[F20])を求める。この相対変位を用いてE画像情報E1,E2をE画像情報E0に重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の処理装置による画像情報の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET装置は、近年、主として医療分野における悪性腫瘍の診断の目的で重用されている。PET装置は、被検体である被検者に注入された放射線薬剤に由来して被検者の体内から放出される放射線(γ線)を計測し、その計測データから被検者体内の放射性薬剤の分布を画像化する。このようなPET装置は、代謝機能及び生理機能の診断に用いられる。放射線計測技術を応用した、非侵襲的に被検者体内の画像を得る放射線画像診断装置の代表的なものにX線CT装置がある。
【0003】
PET装置は、多数の放射線検出器を備えており、これらの放射線検出器から出力される膨大な放射線検出信号(γ線検出信号)を処理する必要がある。これらの放射線検出信号によって得られる膨大なデータの処理によって画像情報(PET画像情報)が再構成されるため、データ処理の制約から得られる画像情報の質が制限されていた。しかし、近年の信号処理回路及びコンピュータ技術の急速な発達に伴い、質の高い画像情報を提供できるようになってきた。
【0004】
PET装置を用いた悪性腫瘍等の診断は、以下のようにして行われる。まず、陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)で標識した、体内の特定の部位に特異的に集積する放射性薬剤(以下、PET薬剤と呼ぶ)が被検者に投与される。被検者の体内のPET薬剤から放出された陽電子は、付近の細胞内の電子と結合して陽電子消滅する。この消滅時に、511KeVのエネルギーを有する一対のγ線(以下、対γ線と呼ぶ)が放出される。対γ線のそれぞれは互いにほぼ正反対の方向に放出されるため、双方のγ線を同時計測することにより陽電子消滅イベントが体内のどの位置で起こったかを特定することができる。これらのγ線は、放射線検出器によって検出される。統計的に十分な数の対γ線を検出した後、フィルタード・バック・プロジェクション法(非特許文献1参照)などの画像再構成アルゴリズムを用いることによって、対γ線の発生頻度分布、すなわちPET薬剤の被検者体内での分布を画像化することができる。この体内のPET薬剤に起因して生じるγ線の計測をエミッション計測(以下、E計測という)、及びエミッション計測で得られたγ線検出信号を基に再構成された画像情報をエミッション画像情報(以下、E画像情報という)と呼ぶ。E画像情報は、一般的には単にPET画像と呼ばれるが、本明細書では後述のトランスミッション画像情報(以下、T画像情報という)と区別するためE画像情報と呼ぶ。またE計測から再構成までの一連のプロセスをまとめてエミッション撮像と呼ぶ。
【0005】
このようなPET装置を用いた検査においては、例えば糖(グルコース)の類似体であるFDG(Fluoro−2−deoxyglucose)と呼ばれるPET薬剤を被検者に投与した場合には、正常部位に比べて糖代謝の大きい悪性腫瘍(がん)にPET薬剤が集積される。このため、悪性腫瘍の位置及び形状についての診断が可能になる。
【0006】
ところで、定量性を要求する、PET装置を用いた検査(PET検査)では、E計測とは別に、PET装置に設けられたトランスミッション線源であるγ線源を用いたトランスミッションと呼ばれる計測(トランスミッション計測(以下、T計測という))も行われる。PET計測におけるγ線の減弱とは、放射性薬剤由来のγ線が被検者の体外に出るまでに体内の物質と相互作用を及ぼす結果、画像化に有効な同時計測データとして検出されない現象のことを指す。このγ線の減弱分を補正するプロセスは、減弱補正と呼ばれ、現在では大部分のPET検査で実施されている。
【0007】
減弱補正は通常、T計測で得られるデータを用いて行う。すなわち、γ線源をベッド上に乗っている被検者の周囲で旋回させて、γ線源から放出されるγ線(放射線)を被検者に照射する。このγ線が被検者を透過する様々な方向でのそれぞれの放射線透過率を求める。E計測にて得られたデータが、これらの放射線透過率のデータを用いて補正される。γ線源には通常68Ge−68Ga及び137Csなどの放射性同位体(Radio−Isotope;以下「RI」と呼ぶ)が用いられる。γ線源の替りに、特許文献1に記載されているX線源を用いることも可能である。なお、必要に応じて、T計測によって得られたデータを基に被検者の断層画像情報が再構成される。この断層画像情報は、形態画像情報であり、以下においてT画像情報と呼ばれる。T画像情報は被検者の体内の放射線減弱の分布を表すものである。必要ならばその画像情報を基に再度投影方向ごとの減弱率を求め、これらの減弱率を減弱補正に用いることもできる。
【0008】
近年では、PET装置にX線CT装置を並列に配置して組み合わせた複合PET/CT装置が提案されている。この複合PET/CT装置はX線CT装置にて得られた断層画像情報を利用して減弱補正を行っている。特許文献1は、環状に配置した複数の放射線検出器の内側でX線源を旋回させる構造のPET装置を提案している。このPET装置も、X線源から放出されて、被検者を透過したX線の検出信号を用いて再構成された断層画像情報を利用して減弱補正を行っている。
【0009】
E画像情報の画質を低下させる大きな要因として、被検者の動き(以下、体動)の影響が挙げられる。体動には、不随意な呼吸及び心臓の鼓動に伴う周期的な動き、及び随意な姿勢変化がある。PET検査は、計測時間が、通常、数分から数十分と長く掛かるため、被検者にストレスを与えることなく体動を抑制することは難しい。特に呼吸による動き(以下、呼吸動)は安静呼吸時でも2〜3cmにも及ぶため、肺野に近い部位のPET検査では体動がE画像情報に与える影響は大きい。
【0010】
呼吸などの周期的な体動に伴う画像情報のボケを補償する方法として、ゲート撮像と呼ばれる方法が知られている。ゲート撮像とは、複数の体動周期分にわたって計測したE計測のデータを各体動位相のデータごとに区分けし、区分けしたこれらのデータを用いて各体動位相区間ごとのE画像情報をそれぞれ再構成する方法である。例えば呼吸動に対するゲート撮像においては、非特許文献3に記載されているように息の温度の微小な変化を捉える、及び非特許文献4に記載されているように胸部体表面の動きを赤外線ステレオカメラで追跡するなどによって呼吸の位相区間情報を得て、この位相区間情報を基にE計測で得られたデータを体動位相区間ごとに区分けする。
【0011】
呼吸動を補償する他の方法として、複合PET/CT装置を用いる方法がある(非特許文献5参照)。非特許文献5では、複合PET/CT装置においてX線CT撮像をシネモードで行って各呼吸位相ごとのE画像情報を得て、ゲート計測したE画像情報のそれぞれの位相画像情報を作成する際に、対応する呼吸位相のX線CT画像を用いて減弱補正している。なお、非特許文献6は2つの画像情報の非線形の重ね合わせ技術(Non-rigid image registration 法)を開示している。
【0012】
【特許文献1】特開2006−231083号公報
【非特許文献1】IEEE Transactions on Nuclear Science, NS-21巻の228頁〜229頁
【非特許文献2】The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 45, No.1 の4S頁〜14S頁
【非特許文献3】The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 45, No.2 の214頁〜219頁
【非特許文献4】The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 43, No.7 の876頁〜881頁
【非特許文献5】The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 45, No.8 の1287頁〜1292頁
【非特許文献6】IEEE Transactions on Medical Imaging, Vol. 18, No.8 の712頁〜720頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
E計測時において前述したようにゲート撮像を行うことによって、周期的な体動に伴う影響を原理的には補償することが可能である。しかしながら、それぞれの体動位相ごとに十分な統計精度のデータを得るためには、必要な計測時間が長くなる。長時間のPET検査は被検者(多くの場合は疾患を持つ患者である)にとって苦痛であるので、PET検査は通常20〜30分程度で終了する。この場合には、各々の体動位相に対してはたかだか数分以下の計測データしか取得されない(非特許文献3参照)。このため、それぞれのデータを再構成して得られるE画像情報は統計ノイズを多分に含むことになる。統計ノイズを抑制するために画像化プロセスでフィルタリングを施した場合には画像情報にボケが生じてしまう。区分けする体動位相の数を少なくとることによって単一体動位相当りの統計精度を向上させることはできる。しかしながら、一つの体動位相時間内での体動が大きくなり、そもそも体動を補償する効果を得難い。すなわち、単なるゲート撮像では短時間で有効な体動補償は事実上行うことができず、(1)E画像情報がボケること及び(2)E画像情報の定量性が低下することの問題が根本的に解決されない。
【0014】
非特許文献3は、(1)及び(2)の問題に対し、ゲート計測にて得たE画像情報を、ある決まった位相の画像情報に非線形的に変形して重ね合わせ、画素値を重畳することによって統計精度を向上させることが可能であると述べている。しかし、非特許文献3は、E画像情報を変形して互いに重ね合わせることの困難性を認識していない。X線CTにより再構成される画像情報、及びT画像情報などの形態画像と異なり、E画像情報は体内の構造を描出することを意図していない。このため体動位相ごとのE画像情報を変形して互いに重ね合わせることは一般に極めて困難である。
【0015】
本発明の目的は、体動の影響を受ける部位を対象としたより鮮明な生体の機能画像情報を短時間に得ることができる画像情報作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ある周期を時間的に区分して得られる複数の位相区間で生体の機能を画像化した第1画像情報を作成し、前記複数の位相区間で生体の構造を画像化した第2画像情報を作成し、前記複数の位相区間のうちある1つの前記位相区間の前記第2画像情報に他の前記位相区間の前記第2画像情報を重ね合わせてそれらの第2画像情報間の相対変位情報を求め、前記ある1つの位相区間の前記第1画像情報に前記他の位相空間の前記第1画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1画像情報を作成する画像情報作成方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、体動の影響を受ける部位を対象としたより鮮明な生体の機能画像情報を短時間に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態である陽電子放出型断層撮影装置について、適宜図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
呼吸動がE画像情報に与える影響として、以下の3つがある。
(1)E画像情報がボケる。
(2)E画像情報の定量性が低下する。
(3)肺野周辺で、息止め撮像したX線CT画像とPET画像の重ね合わせ時の位置がずれる。
【0020】
これらのうち(1)及び(2)は、PET装置の空間分解能が飛躍的に高まった現在、画質を損ねる大きな要因として関心の的になっている。(3)については、近年登場した複合PET/CT装置(非特許文献2参照)によって画像情報の重ね合わせが身近になった現在においても、放射線治療及び生体検査など、悪性腫瘍の位置をより精度良く特定する必要がある分野を中心に解決を望む声が高い。
【0021】
(1)の問題は、臓器及び悪性腫瘍、あるいは他の疾病部位の領域が不鮮明になることで、放射線治療計画、及び治療の効果の評価を困難にする。また、小さくかつ比較的集積度の高くない悪性腫瘍も、体動がない場合には表示されたE画像情報内に鮮明に見える。しかし、体動がある場合には、その悪性腫瘍は、E画像情報に含まれる統計ノイズに埋もれてしまい、存在の認識すら困難になる。
【0022】
(2)の問題は、例えば動きの大きい悪性腫瘍では一般に集積度が低く見積もられることである。E画像情報において、体動の大きな位置におけるある画素に示される集積度は、周辺部位の時間平均的な集積度になるため、結果として集積度が実際の値からはずれてくる。このため、上記のように集積度が低くなる。
【0023】
(3)の問題は、自然に呼吸をしたまま数分間撮像して得られるE画像情報と、息止めして短時間に撮像されるX線CT画像を重ね合わせた時に起こる問題である。この重ね合わせ画像情報は診断上有用であるが、肺野周辺では最大で1cm程度まで画像上にずれがあるように見えてしまう。これは、呼吸に対する取り扱いがPET検査と通常のX線CT検査では異なるために位置的な対応が必ずしもとれないからである。PET/CT装置においてもこの問題は指摘されており、解決が望まれている。
【0024】
E計測時において前述したようにゲート撮像を行うことによって、周期的な体動に伴う影響を原理的には補償することが可能である。しかしながら、それぞれの体動位相ごとに十分な統計精度のデータを得るためには、必要な計測時間が長くなる。長時間のPET検査は被検者(多くの場合は疾患を持つ患者である)にとって苦痛であるので、PET検査は通常20〜30分程度で終了する。この場合には、各々の体動位相に対してはたかだか数分以下の計測データしか取得されない(非特許文献3参照)。このため、それぞれのデータを再構成して得られるE画像情報は統計ノイズを多分に含むことになる。統計ノイズを抑制するために画像化プロセスでフィルタリングを施した場合には画像情報にボケが生じてしまう。区分けする体動位相の数を少なくとることによって単一体動位相当りの統計精度を向上させることはできる。しかしながら、一つの体動位相時間内での体動が大きくなり、そもそも体動を補償する効果を得難い。すなわち、単なるゲート撮像では短時間で有効な体動補償は事実上行うことができず、(1)及び(2)の問題が根本的に解決されない。
【0025】
非特許文献3は、(1)及び(2)の問題に対し、ゲート計測にて得たE画像情報を、ある決まった位相の画像情報に非線形的に変形して重ね合わせ、画素値を重畳することによって統計精度を向上させることが可能であると述べている。しかし、非特許文献3は、具体的な方法には触れていない。X線CTにより再構成される画像情報、及びT画像情報などの形態画像と異なり、E画像情報は体内の構造を描出することを意図していない。このため体動位相ごとのE画像情報を変形して互いに重ね合わせることは一般に極めて困難である。
【0026】
さらに、例えば非特許文献3が指摘しているように、E計測においてゲート撮像を行った場合においても、減弱補正は、PET装置では非ゲート撮像によって得られたT計測のデータを用いて行い、複合PET/CT装置では呼吸を止めた状態か呼吸をしたままの状態で撮られたX線CT画像を用いて行っている。このため、E計測によって得られたデータとT計測によって得られたデータの間において被検者の呼吸状態の差に起因して、減弱補正においてアーチファクトが発生したり、補正が正しく行われないために定量性が悪化するという問題が発生する。非特許文献3は、この問題については、γ線源を用いたT計測、またはX線CTでのゲート撮像が解決策になることを示唆している。しかしながら、引用文献3は、その解決策の具体的な方法を示していない。
【0027】
E計測において呼吸動の影響を取り除く方法として、被検者に所定期間の間で呼吸を止めてもらった状態での撮像(息止め撮像)が知られている。これは、被検者が呼吸を止めている間に計測したデータを用いて画像を再構成する方法である。被検者が一度に呼吸を止められるのはたかだか30秒程度であるため、必要に応じて何回か呼吸を止めてもらう。この方法によれば、上記した(1)〜(3)の問題は解決できる。しかしながら、PET検査を受ける被検者に息止めを強いることになるので、被検者に大きな苦痛を与えることになる。
【0028】
さらに、被検者に息止めを強いることは、減弱補正において問題が生じる。すなわち、T計測においても息止めを強いることは難しいので、E計測は息止めで、T計測は自然呼吸で行われる。この形態の差に基づいて減弱補正でのアーチファクトの発生、及び補正が正しくないための定量性の悪化が生じる。
【0029】
非特許文献5に記載された複合PET/CT装置を用いる方法は、そもそも高線量の照射を要するX線CT撮像を比較的長い時間行うため、被曝量が高くなるという問題が生じる。この方法も、E画像情報において非特許文献3に述べられた統計精度不足の問題が残され、(1)及び(2)の問題を根本的に解決することはできない。さらに、その複合PET/CT装置は、PETによるE計測とX線CTによる計測が時間的にずれている。このため、複合PET/CT装置は、両計測における被検者の姿勢変化及び呼吸の変動などの、その時間的なずれに基づいた影響を受け、減弱補正及び画像情報の位置合わせにおいてずれを生じる可能性がある。
【0030】
肺野周辺のPET検査においては体動、特に呼吸動の影響を取り除くことが質の良いE画像情報を得るために不可欠である。そのために以上に述べた種々のアプローチが考えられているが、いずれも根本的な解決に至っていない。
【0031】
本発明の目的は、体動の影響を受ける部位を対象としたより鮮明なエミッション画像情報を短時間に得ることができる陽電子放出断層撮影装置の断層画像情報作成方法及び陽電子放出断層撮影装置を提供することにある。
【0032】
前述したように、肺野周辺のPET検査では体動、特に呼吸動の影響を取り除くことが質の良いE画像情報を得るために不可欠である。このためには、上記した(1)〜(3)以外に、以下に示す課題も解決することが望ましい。
(4)被検体に無理な息止めを強いない。
(5)減弱補正に由来するアーチファクト、定量性悪化を起こさない。
(6)被検体の苦痛とならない程度に短時間で検査を行う。
【0033】
ところで、非特許文献3に記述されているように、E画像情報をゲート撮像し、それぞれの体動位相区間の画像情報をある一つの体動位相区間の画像情報に非線形的に歪ませながら変形させて重ね合わせ、対応する画素の画素値を足し合わせることで、統計精度の高い、呼吸動を補償した画像情報が得られるであろうとの示唆がなされている。もし、これが実現できれば、上記した課題のうち(1)〜(4)及び(6)が解決できる。しかしながら、前述したように、形態情報の乏しいE画像情報を手掛かりに非線形の画像情報の重ね合わせを行うことは一般には不可能である。したがって、これを解決するために何らかの工夫が必要となる。また、好ましくは(5)の問題も解決する必要がある。
【0034】
本発明の発明者らは、E画像情報の非線形の重ね合わせを行うことができる手法について検討を行った。この検討結果を以下に説明する。
【0035】
被検者における周期的体動(呼吸動または心臓の拍動)の体動位相区間ごとに統計精度の高い計測データを得るためには、長時間に亘るPET検査が必要になる。このため、一般的な被検者が苦痛を生じることなく耐えられる計測時間内で、その計測データを得ることは困難である。そこで、本発明者らは、より短い時間のエミッション計測におけるゲート撮像(以下、Eゲート計測という)によって得られた各体動位相区間ごとのE画像情報をある一つの体動位相区間のその画像情報に重ね合わせ、それぞれの画素値を重畳することで統計精度が向上させられることに着目した。しかしながら、E画像情報はそもそも形態情報が乏しく、そして、短い時間でのゲート撮像で得られるデータに基づいて得ることができる、体動位相区間ごとのE画像情報は、統計精度が不足している。このため、体動位相区間ごとのE画像情報の間で直接的にE画像情報の非線形の重ね合わせを行うことは難しい。
【0036】
種々検討を行った発明者らは、Eゲート計測と並行してトランスミッション計測におけるゲート撮像(以下、Tゲート計測という)を行って各体動位相区間ごとのT画像情報を再構成すれば良いことに気が付いた。この結果、発明者らは、体動位相区間ごとのT画像情報同士を非線形に重ね合わせて得られたトランスミッション重ね合わせ画像情報(以下、T重ね合わせ画像情報という)を利用して、間接的に、それらの体動位相区間ごとのE画像情報同士を非線形に重ね合わせることにより、エミッション重ね合わせ画像情報(以下、E重ね合わせ画像情報という)を得るという新たな方法を見出したのである。この新たな方法によって、E画像情報の非線形の重ね合わせを行うことができることが分かった。
【0037】
発明者らが見出した上記の新たな方法の基本概念を、図1の呼吸動補償方法の説明図を用いて以下に詳細に説明する。図1には、理解を得やすくするために、体動周期である呼吸周期を3つの体動位相区間に分けた場合を一例として示している。図1において、Bは背骨、Cは悪性腫瘍及びLは肺を表す。
【0038】
図1の上段のT0,T1及びT2は、それぞれ、体動位相区間0,1及び2に対応したT画像情報である。これらの画像情報は、トランスミッション計測におけるゲート撮像で得られた情報を再構成することで得られる。ここで、Tゲート計測で得られた情報は、後述の時刻情報及び線源位置情報を含む第2検出情報と時刻情報が付与されている体動位相区間情報である。図1の下段のE0,E1及びE2は、それぞれ、体動位相区間0,1及び2に対応したE画像情報である。これらの画像情報は、Eゲート計測で得られた情報を再構成することで得られる。ここで、Eゲート計測で得られた情報は、後述の時刻情報を含む第1検出情報と時刻情報が付与されている体動位相区間情報である。T画像情報T0,T1,T2は形態画像情報であるので骨及び内臓等の輪郭が鮮明であるのに対し、E画像情報E0,E1,E2は機能画像情報であるためその輪郭が不鮮明である。図1ではT画像情報の輪郭を実線で、E画像情報の輪郭を破線で示した。
【0039】
γ線源として、陽電子消滅によって被験者の体内で発生するγ線のエネルギーと異なるエネルギーのγ線を放出する線源を使用し、半導体放射線検出器などのエネルギー分解能の良い放射線検出器を用いる。放射線検出器から出力される放射線検出信号をエネルギーに基づいて弁別するので、E計測とT計測を並行して行うことができる。これらの計測によって得られ弁別されたそれぞれのデータ(後述の第1パケット情報及び第2パケット情報)を、知られているゲート撮像と同様に取得した体動位相情報に基づいて体動位相区間ごとに区分けする。区分けされた各データを用いて、体動位相区間ごとのE画像情報及びT画像情報をそれぞれ再構成する。これによって、T画像情報T0,T1,T2及びE画像情報E0,E1,E2を得ることができる。
【0040】
区分する体動位相区間の数にもよるが、Tゲート計測には一般に非常に長い時間が掛かってしまう。しかしながら、体動位相区間の周期とγ線源の回転周期との関係を意図的にずらすことによって、T計測においても短時間のゲート撮像が可能である。発明者らのシミュレーションにおいては、1つの呼吸周期あたりの体動位相区間の数を8としたとき、例えばγ線源の回転周期を被検者の呼吸周期の(整数±0.1)倍とすれば、ベッドをある一つの位置に位置決めした場合において、たかだか10分程度で再構成条件を満足するT計測データが得られるという結果を得ている。
【0041】
Eゲート計測、及び体動位相区間の周期とγ線源の回転周期との関係を意図的にずらしたTゲート計測により体動位相区間ごとに得られたそれぞれのE画像情報及びT画像情報は、同じ被検者の同一部位(例えば体動により影響を受ける部位)に対してそれらの計測を並行して(同時に)行った場合に得られる画像情報である。並行して行われるE計測とT計測の間では、本質的に被検者の形態の差はない。すなわち、Eゲート計測での2つの体動位相区間で対応した2つのE画像情報の間の空間的な相対変位は、Tゲート計測でのそれらの体動位相空間で対応した2つのT画像情報の間のそれと同一になる。例えば、Eゲート計測における体動位相区間0(参照位相区間)のE画像情報E0と体動位相区間1のE画像情報E1の間での空間的相対変位[F10]は、参照位相区間のT画像情報T0と体動位相区間1のT画像情報T1の間でのその変位と同一である。このため、Tゲート計測での2つの体動位相区間の間でその相対変位の情報(例えば、[F10]または[F20])を求め、この相対変位の情報をその2つの体動位相空間における2つのE画像情報に適用することによって、一方の体動位相区間のE画像情報を、他方の体動位相区間(例えば、参照位相空間)のE画像情報に非線形に重ね合わせることができるのである。この結果、非線形に重ね合わせたエミッション重ね合わせ画像情報を得ることができる。
【0042】
なお、T画像情報は体輪郭,肺野及び骨などの形態情報を取得できるので、例えば非特許文献6に記載されている非線形の重ね合わせ技術を用いることによって、それぞれの体動位相区間のT画像情報を非線形的に歪ませながら参照位相区間の画像に重ね合わせることができる。
【0043】
図1はエミッション重ね合わせ画像情報を得るプロセスを示している。図1では被検者の息を吐いた状態に対応する呼吸位相区間を参照位相区間とし、その区間でのT画像情報を参照画像情報T0としている。この参照画像情報T0に他の呼吸位相区間(位相区間jとする)のT画像情報Tjを空間的に重ね合わせたとき、参照画像情報T0に重ね合わせられたT画像情報Tjは(1)式のような写像として表すことができる(説明のため区分する位相数は3としてある)。
【0044】
jo=[Fjo]・Tj(j=1,2) ……(1)
【0045】
ここで[Fj0]は呼吸位相jに対応するT画像情報Tjから参照画像情報T0への相対変位を表す変換行列である。左辺のTj0は、位相jのT画素情報Tjを参照位相空間の被写体(参照画像情報T0)の形態上にマッピングして得られたT画像情報である。これらのT画像情報はそれぞれベクトル表示になっている。なお、空間的なマッピングを重ね合わせプロセスから写像として抽出・保存することは容易である。
【0046】
呼吸位相jに対応するE画像情報(形態が不明瞭)Ejの参照画像情報E0への重ね合わせ(写像)は、E画像情報Ejに対し、上記のT画像情報の重ね合わせから得られた変換行列Fj0を用いて行われる。参照画像情報E0に重ね合わせられたE画像情報Ejは(2)式で表される写像である。参照画像情報E0は参照位相区間に対応するE画像情報である。
【0047】
j0=[Fj0]・Ej(j=1,2) ……(2)
【0048】
以上のようにして参照位相区間以外の全ての体動位相区間の各E画像情報を参照位相区間の参照E画像情報に重ね合わせした後、それぞれのE画像情報の各画素値を参照E画像情報の画素値に足し込む。この処理によって、参照位相区間における被検者の形態に対する、統計精度の高いE画像情報E0′を得ることができる。これは(3)式で表される。
0′=(E0+E10+E20)/3 ……(3)
【0049】
(3)式のE10は、(2)式でjを1にしたときの計算値であり、E20は、(2)式でjを2にしたときの計算値である。
【0050】
以上に述べた、2つの体動位相区間での該当するT画像情報間の相対変位を基に、それらの体動位相区間での該当するE画像情報を非線形に重ね合わせることによって、上記した(5)以外の課題を改善することができる。課題(5)、すなわち減弱補正時の形態のずれに起因する問題は、各体動位相区間ごとにE画像情報と形態の一致したT画像情報が得られるので、これらT画像情報に基づいた投影計算、またはT画像情報を再構成する際に用いた計測データ(投影データ)を用いて減弱補正することで解決される。
【0051】
上述した呼吸動補償方法(体動補償方法)は、後述する図3の体動補償装置38により計算処理される。ある2つの体動位相区間でのT画像情報間の相対変位を基に、それらの体動位相区間に対応するE画像情報を重ね合わせた画像情報は、表示装置33へ出力されるか、別の表示情報を更に重ねて表示する処理等のために記憶装置35へ出力され、記録される。
【実施例2】
【0052】
本発明の好適な一実施例である陽電子放出断層撮影装置1(PET装置)を、図2〜図7を用いて説明する。図2は一実施例の陽電子放出断層撮影装置の概略構成図を示す。本実施例のPET装置は、図2に示すように、撮像装置2,被検者29を支持するベッド27,データ処理装置30及び表示装置33を備えている。
【0053】
撮像装置2は、計測空間Rを取り囲む筐体45(図4参照)、計測空間Rを取り囲むように配置された複数の検出器ユニット6(図3,図4参照)を有する。これらの検出器ユニット6は、計測空間Rを取り囲んで配置され筐体45に設置されたユニット支持部材3(図5参照)によって保持される。これらの検出器ユニット6は、ユニット支持部材3に設けられ周方向に配置された複数の開口部4内に挿入されている。検出器ユニット6が開口部4内に装着された後、環状の前面エンドシールド5が検出器ユニット6の前面を覆って筐体45に取り付けられる。
【0054】
図6は検出器ユニットの詳細構成を示す斜視図である。検出器ユニット6は、内部空間が形成され直方体をした収納部材19,収納部材19内に配置された複数の半導体放射線検出器(以下、検出器9という),信号処理装置である複数のアナログASIC10及びディジタルASIC12、及び電圧調整装置21を有する。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は特定用途向けのICである。複数の検出器9,複数のアナログASIC10,複数のディジタルASIC12及びアナログ信号をディジタル信号へ変換するアナログ・ディジタル変換器(ADC11)は基板部材8に取り付けられている。1枚のモジュール基板7は、複数の検出器9,複数のアナログASIC10,ディジタルASIC12及び基板部材8を有する。収納部材19内の空間は、その内部に配置される仕切り部材20によって、第1領域22及び第2領域23に分割されている。複数のモジュール基板7が、第1領域22内に配置され、収納部材19に着脱可能に取り付けられる。これらのモジュール基板7は、それぞれの基板面(検出器9,ディジタルASIC12等が設置される)が収納部材19の長手方向、すなわちベッド27の長手方向(被検者の体軸方向)を向いて配置され、その長手方向において並列に配置されている。電圧調整装置21が、第2領域23内に配置され、収納部材19に取り付けられる。
【0055】
各検出器9は、エネルギー分解能に優れる半導体素子部にカドミウムテルル(CdTe)を用いている。半導体素子部には、カドミウムテルル亜鉛(CZT),沃化鉛(PbI2),臭化タリウム(TlBr)またはガリウムヒ素(GaAs)を用いることも可能である。各検出器9は、PET薬剤に起因して被検者29から放出される511keVのγ線(第1γ線)及び後述の放射線源26であるγ線源(図3,図4参照)から放出されて被検者29を透過したγ線(第2γ線)を検出する。これらの検出器9は、アナログASIC10及びディジタルASIC12よりも計測空間R側に位置している。蓋部材19aを含む収納部材19はアルミニウム及びアルミニウム合金等の遮光性を有する材料によって構成されている。
【0056】
収納部材19の一部である蓋部材19aが収納部材19の一端部に着脱自在に取り付けられる。ユニット統合FPGA(Field Programmable Gate Array、以下、FPGA17という)、コネクタ18,24,25及びC2が、蓋部材19aに設けられる。複数のコネクタC2の信号配線(図示せず)はFPGA17に接続され、これらのコネクタC2の電源配線(図示せず)はコネクタ25に接続される。コネクタ18の信号配線(図示せず)はFPGA17に、コネクタ18の電源配線(図示せず)はコネクタ24に接続される。電圧調整装置21はコネクタ24及びコネクタ25に接続されている。
【0057】
図7はモジュール基盤の詳細構成を示す斜視図である。アナログASIC10,アナログ・ディジタル変換器(ADC11),ディジタルASIC12及びコネクタC1は、信号配線によりこの順に接続されている。
【0058】
1個のアナログASIC10は、複数のアナログ信号処理回路(アナログ信号処理装置)10aを備えている。ファースト系及びスロー系を有するアナログ信号処理回路10aが検出器9ごとに設けられる。ファースト系は、γ線の検出時刻を特定するためのタイミング信号を出力するタイミングピックオフ回路10bを有する。スロー系は、検出したγ線の波高値を求めることを目的として、極性アンプ(線形増幅器)10d,バンドパスフィルタ(波形整形装置)10e,ピークホールド回路(波高値保持装置)10fがこの順序に接続されて設けられている。アナログ信号処理回路10aはタイミングピックオフ回路10b及び極性アンプ10dに接続されるチャージアンプ(前置増幅器)10cを有する。チャージアンプ10cは、1個の検出器9に接続される。
【0059】
ディジタルASIC12は、図7に示すように、複数の時刻決定回路(時刻情報生成装置)14及び1個のパケットデータ生成器15を含む複数のパケットデータ生成装置13、及びデータ転送回路(データ送信装置)16を有しており、これらをLSI化したものである。陽電子放出断層撮影装置1に設けられた全てのディジタルASIC12は、500MHzのクロック発生装置(図示せず)からのクロック信号を入力し、同期して動作している。ディジタルASIC12に入力されたクロック信号は、パケットデータ生成装置13内の各時刻決定回路14に入力される。パケットデータ生成装置13内の各時刻決定回路14は、別々のアナログ信号処理回路10a内のタイミングピックオフ回路10bに接続される。
【0060】
入射したγ線を検出した検出器9はγ線検出信号を出力する。検出器9は、そのγ線が第1γ線である場合には第1γ線検出信号を、そのγ線が第2γ線である場合には第2γ線検出信号を出力する。以降において、第1γ線及び第2γ線と区別しないで単にγ線と記載する場合には両方のγ線を意味し、第1γ線検出信号及び第2γ線検出信号と区別しないで単にγ線検出信号と記述する場合には両方のγ線検出信号を意味する。検出器9から出力されたγ線検出信号は、チャージアンプ10c,極性アンプ10dで増幅される。増幅されたγ線検出信号はバンドパスフィルタ10eを経てピークホールド回路10fに入力される。ピークホールド回路10fは、γ線検出信号の波高値を保持する。
【0061】
ピークホールド回路10fから出力された波高値信号は、ADC11でディジタル信号に変換されてパケットデータ生成器15に入力される。タイミングピックオフ回路10bは、チャージアンプ10cで増幅されたγ線検出信号を入力し、γ線を検出したタイミングを示すタイミング信号を出力する。このタイミング信号は該当する時刻決定回路14に入力される。時刻決定回路14はタイミング信号を入力した時のクロック信号に基づいてγ線の検出時刻を決定し、検出時刻情報を出力する。
【0062】
パケットデータ生成器15は、検出時刻情報を入力したときこの検出時刻情報を出力した時刻決定回路14に対応する検出器9の検出器IDを特定する。パケットデータ生成器15は、1個の検出器9に対応する検出時刻情報,検出器ID情報(検出器位置情報)及び波高値情報(γ線検出信号のエネルギー情報)を含むディジタル情報であるパケット情報を生成する。このパケット情報は、データ転送回路16に入力される。データ転送回路16に接続される信号配線(図示せず)は、コネクタC1を介してコネクタC2に接続された信号配線に接続される。なお、コネクタC2に接続された電源配線は、コネクタC1に接続された電源配線(図示せず)に接続される。後者の電源配線は、基板部材8内に配置され、検出器9及びタイミングピックオフ回路10b等のモジュール基板7に設けられた各エレメントに接続される。
【0063】
1つの検出器ユニット6内に配置された各モジュール基板7のデータ転送回路16は、それぞれ、パケット情報をその検出器ユニット6のFPGA17に出力する。撮像装置2に設けられた全検出器ユニット2の各FPGA17から出力された各パケット情報は、各コネクタ18に接続された情報伝送用配線(図示せず)を介してデータ処理装置30の信号弁別装置31に送信される。
【0064】
図4は、図1に示す撮像装置2の縦断面図である。撮像装置2は、図4に示すように、さらに、γ線源装置(放射線源装置48),線源旋回装置54及び線源直進移動装置53を備えている。環状の後面エンドシールド60が後述の回転部材56に取り付けられる。検出器ユニット6は、撮像装置2の軸方向において前面エンドシールド5と後面エンドシールド60の間に配置される。前面エンドシールド5及び後面エンドシールド60は放射線遮へい体である。
【0065】
線源旋回装置54は、回転駆動装置55(例えば、モータ),回転部材56,環状の歯車部材57,軸支持部材58及び転動部材59を有する。回転部材56は、筐体45の後端部に配置される。回転部材56の一部は、筐体45と後面エンドシールド60の間に配置され、筐体45に取り付けられた転動部材59(例えばスラスト軸受)に取り付けられる。転動部材59は回転部材56を支持している。回転駆動装置55が筐体45に取り付けられている。回転駆動装置55の回転軸に設けられた歯車が、回転部材56の外周部を取り囲んで回転部材56に設けられた歯車部材57と噛み合っている。後面エンドシールド60は回転部材56と共に回転する。回転駆動装置55に取り付けられたエンコーダ63は回転駆動装置55の回転軸に連結される。
【0066】
放射線源装置48は、γ線源である放射線源26,線源支持軸49及び保持部材50を有する。放射線源26は線源支持軸49の一端に取り付けられ、保持部材50は線源支持軸49の他端に取り付けられる。線源支持軸49は撮像装置2の中心軸(計測空間Rの中心軸)Zと平行になるように配置される。放射線源26は検出器ユニット6よりも中心軸Z側、すなわち、検出器ユニット6とベッド27の間に配置される。線源支持軸49は回転部材56に設置された軸支持部材58を貫通している。軸支持部材58は、放射線遮へい体であり、回転部材56の内部に形成される線源収納室61の一端部を封鎖している。線源収納室61に収納される放射線源26が通過するための切欠部60aが後面エンドシールド60に設けられている。放射線遮へい体である線源シールド64,65が設けられる。線源シールド64が切欠部60aに対向して、線源シールド65が線源収納室61の位置に対向してそれぞれ配置される。
【0067】
放射線源26は、第1γ線とはエネルギーの異なる第2γ線を放出する放射性同位元素を備えている。この放射性同位元素としては、662keVのγ線を放出するセシウム137を用いる。セシウム137の替りに、コバルト57(122keVの第2γ線を放出),テクネチウム99m(140keVの第2γ線を放出),テルル123m(159keVの第2γ線を放出),セリウム139(166keVの第2γ線を放出),ガドリニウム153(153keVの第2γ線を放出)及びアメリシウム241(57keVの第2γ線を放出)などを用いてもよい。他の放射線源であるX線源などを用いても良い。
【0068】
線源直進移動装置53は、移動装置51及びガイド部材52を備える。ガイド部材52は、撮像装置2の軸方向に伸びており、筐体45の後端の側面に取り付けられる。移動装置51は、ガイド部材52に沿ってその軸方向に移動し、保持部材50が挿入される溝62を有する。放射線源26が最も低い位置にある状態で、すなわち、保持部材50が溝62内に入っている状態で、移動装置51はその軸方向に移動できる。移動装置51の移動によって、放射線源26が、撮像装置2の軸方向において前面エンドシールド5と軸支持部材58との間で移動される。放射線源26はT計測を行っていないときには線源収納室内に収納される。T計測を行うときには、回転駆動装置55を駆動させて回転部材56を回転させることによって、保持部材50が溝62から抜け出して放射線源26がベッド27に乗っている被検者29の周囲を旋回する。
【0069】
図3は、図2に示す陽電子放出断層撮影装置の詳細構成図である。データ処理装置30は、図3に示すように、信号弁別装置31,同時計数装置32,第2放射線処理装置34(トランスミッションデータ処理装置),第一断層画像作成装置36(エミッション画像情報作成装置),第二断層画像作成装置37(トランスミッション画像情報作成装置),体動補償装置38,線源位置検出装置41,線源回転制御装置42,体動位相情報取得装置43,位相区間情報生成装置44及び記憶装置35を備えている。これらの装置はコンピュータ及び回路基板などによって構成されている。体動補償装置38は相対変位情報生成装置39及び断層画像重畳装置40を含んでいる。
【0070】
信号弁別装置31は、各検出器ユニット6のそれぞれのコネクタ18に接続され、さらに、同時計数装置32及び第2放射線処理装置34にそれぞれ接続される。線源位置検出装置41は、エンコーダ63,第2放射線処理装置34及び線源回転制御装置42にそれぞれ接続される。線源回転制御装置42は回転駆動装置55の駆動を制御する。記憶装置35は、同時計数装置32,第2放射線処理装置34,体動位相情報取得装置43,位相区間情報生成装置44,第一断層画像作成装置36,第二断層画像作成装置37,相対変位情報生成装置39,断層画像重畳装置40及び情報出力装置66にそれぞれ接続されている。相対変位情報生成装置39は断層画像重畳装置40に接続される。体動位相情報取得装置43は呼吸モニタ装置28に接続される。
【0071】
呼吸モニタ装置28は、被検者29の息の温度をモニタリングする装置であり、被検者29の顔に装着される。体動位相情報取得装置43は、呼吸モニタ装置28で計測した息の温度情報を入力し、呼気から吸気に変わるタイミングで息の温度がピークとなる時点の間隔を呼吸周期として求める。呼吸モニタ装置として、被検者29の胸部表皮の変位を測定する赤外線カメラまたは光学的ステレオカメラを用いることができる。赤外線カメラまたは光学的ステレオカメラを用いる場合には、三脚等の支持部材に設置した該当するカメラを撮像装置2の近くで被検者29を撮影できる位置に配置する。この場合には、体動位相情報取得装置43は、赤外線カメラまたは光学的ステレオカメラから入力する映像情報に基づいて胸部表皮の変位波形を解析し、呼吸周期を求める。または、別途、呼吸モニタ可能な装置を用意し、この装置から出力された、位相情報解析の手掛かりとなる信号を体動位相情報取得装置43に入力してもよい。
【0072】
本実施例のPET装置を用いたPET検査及びこの検査によって得られた情報に基づいた画像情報の作成について、詳細に説明する。
【0073】
オペレータ(医師または放射線技師)は、PET検査に必要な情報をオペレータコンソール(図示せず)に設けられた入力装置(図示せず)から入力する。この入力情報は、被検者29及びPET薬剤に関する情報、さらには呼吸動補償のための情報が含まれる。例えば、呼吸補償の情報には、PET検査時間である12分、1つの呼吸周期当りの体動位相区間数である8を含んでいる。オペレータは、さらに、検査開始指令をその入力装置から入力する。この検査開始指令を入力したベッド駆動装置(図示せず)は、PET薬剤を投与された被検者29が乗っているベッド27をその長手方向に移動させ、被検者29を計測空間R内に挿入する。被検者29は、計測空間R内で軸方向の所定位置に位置決めされる。
【0074】
上記の検査開始指令を入力した呼吸モニタ装置28は、被検者29の呼吸のモニタリングを開始する。体動位相情報取得装置43は、呼吸モニタ装置28の計測情報、すなわち、被検者29の息の温度測定値に基づいて、前述したように呼吸周期を求める。体動位相情報取得装置43は、求めた各呼吸周期の呼吸波形情報を記憶装置35に記憶させる。情報出力装置66は記憶装置35から読み出した被検者29の呼吸周期ごとの呼吸波形情報を表示装置33に出力する。情報出力装置66による関係情報の表示装置33への出力は、上記の入力装置から入力されたオペレータからの要求指令によって行われる。表示装置33に表示された被検者29の呼吸波形情報が安定したとき、オペレータが、T計測を開始するために、入力装置にT計測開始指令を入力する。呼吸波形情報は数分間で安定する。T計測は、E計測が行われている期間内で、E計測と並行に行われる。
【0075】
T計測開始指令は、入力装置から、位相区間情報生成装置44,線源直進移動制御装置(図示せず)及び線源回転制御装置42にそれぞれ入力される。
【0076】
T計測開始指令を入力した位相区間情報生成装置44は、体動位相情報取得装置43から入力した呼吸周期ごとの呼吸波形情報、及び上記した入力装置からオペレータが入力した、1つの呼吸周期における体動位相区間の数(例えば、8)を基に、各呼吸周期の呼吸波形情報を時間軸で分割する。位相区間情報生成装置44は、区分された体動位相区間ごとに時間情報を付与する。この時間情報の付与に際しては、呼吸周期の開始時刻と、時刻決定回路14で決定されるγ線の検出時刻は、同期をとらないとずれてしまい、画像作成装置36,37での体動位相区間毎のE画像情報及びT画像情報の作成に支障が出る。Eゲート計測とTゲート計測の同期の仕方を説明する。検出器ユニット6からデータ処理装置30に時刻情報を含むパケットが送られる。体動位相情報取得装置43は記憶装置35を介してリアルタイムに時刻情報を含むパケットを取得する。位相区間情報生成装置44は体動位相情報取得装置43から時刻情報を得る。例えば、求められた呼吸周期が4秒である場合、入力装置から入力されたその体動位相区関数が8であるので、1つの体動位相区間の時間幅が0.5秒となる。0.5秒ごとに分割された8つの体動位相区間ごとに時刻情報が付与される。この処理が呼吸周期ごとに繰り返される。呼吸周期を均等に分割する以外に、赤外線カメラの映像に基づいて被検者29の胸部表皮の上下動の変位を求めた場合には、上下動の変位の波形及び変位量の指標を用いて体動位相区間を区分することができる。呼吸周期ごとに時刻情報が付与された各体動位相区間の情報が記憶装置35に記憶される。
【0077】
T計測開始指令を入力した線源直進移動装置53を制御する制御装置は、駆動指令を移動装置51に出力する。駆動制御指令を入力した移動装置51は、ガイド部材52に沿って筐体45に向かって移動する。移動装置51と噛み合っている線源支持棒49が前面エンドシールド5に向かって移動する。これにより、放射線源26が、線源収納室61から外部に移動し、前面エンドシールド5と後面エンドシールド60の間の所定位置に設定される。
【0078】
線源回転制御装置42は、記憶装置35に記憶された呼吸周期の情報及び区分された各体動位相区間の情報を用いて、短時間でTゲート計測を行うのに適した放射線源26の回転周期及び回転数を求める。T計測開始指令を入力した線源回転制御装置42は、放射線源26が上記の所定位置に設定された後、求められた回転周期及び回転数になるように、回転駆動装置55の回転を制御する。例えば、被検者の呼吸周期が4秒の場合、その4.1倍の16.4秒周期で12分程度の間、放射線源26を被検者29の周囲を回転させる。回転駆動装置55の回転力は、歯車部材57を介して回転部材56に伝えられ、回転部材56を回転させる。放射線源26は、回転部材56と共に回転し、被検者29の周囲を旋回する。放射線源26から放出される662keVの第2γ線は、放射線源26の旋回に伴って周囲からベッド27上の被検者29に照射される。T計測は放射線源26を旋回させながら実行される。
【0079】
例えば、放射線源26の旋回が開始されたとき、オペレータは、上記した入力装置にデータ収集開始指令を入力する。このデータ開始指令が信号弁別装置31に入力されたとき、信号弁別装置31は各検出器ユニット6から出力された各パケット情報の入力を開始する。
【0080】
信号弁別装置31に入力される、E計測及びT計測におけるそれぞれのパケット情報の生成について説明する。
【0081】
被検者29が計測空間R内に挿入されているとき、全検出器9が被検者29の周囲を取り囲んでいる。この状態で、E計測が実施される。悪性腫瘍の患部に集積したPET薬剤に起因して発生した陽電子の消滅時に発生する対γ線(一対の第1γ線)が、撮像装置2の約180°反対方向に位置する一対の検出器9に入射され、これらの検出器9で検出される。第1γ線を検出した検出器9は、第1γ線検出信号を出力する。この第1γ線信号を入力するアナログ信号処理回路10aのタイミングピックオフ回路10bがタイミング信号を、ピークホールド回路10fが波高値信号を出力する。このタイミング信号を入力する時刻決定回路14は、前述したように、そのタイミング信号に基づいて決定した、第1γ線の検出時刻情報を生成する。ADC11でディジタル信号に変換された波高値情報、及び検出時刻情報を入力したパケットデータ生成器15は、検出された第1γ線に対するパケット情報(以下、第1パケット情報という)を生成する。この第1パケット情報は、第1γ線に対する検出時刻情報,検出器ID情報及び波高値情報を含んでいる。E計測で得られた第1パケット情報は信号弁別装置31に入力される。
【0082】
T計測において、放射線源26から放出されて被検者29を透過した第2γ線は、検出器9で検出される。第2γ線を検出した検出器9から出力された第2γ線検出信号は、第1γ線検出信号と同様に、アナログ信号処理回路10a及びパケットデータ生成装置13で処理される。パケットデータ生成器15は、検出された第2γ線に対するパケット情報(以下、第2パケット情報という)を生成する。この第2パケット情報は、第2γ線に対する検出時刻情報,検出器ID情報及び波高値情報を含んでいる。T計測で得られた第2パケット情報も信号弁別装置31に入力される。
【0083】
T計測を終了するときには、オペレータが、上記した入力装置からT計測終了指令を入力する。T計測終了指令を入力した線源回転制御装置42は、回転駆動装置55に停止制御指令を出力し、γ線源である放射線源26が最も下方の位置に到達したときに回転駆動装置55を停止させる。この状態で、保持部材50が移動装置51の溝62内に位置している。T計測終了指令を入力した線源直進移動制御装置は、移動装置51を、筐体45から遠ざかるように移動させるように制御する。移動装置51が筐体45から遠ざかるように移動するので、γ線源である放射線源26が線源収納室61内に収納され、第2γ線の被検者29への照射が停止される。
【0084】
データ開始指令を入力した後、信号弁別装置31は、E計測及びT計測が並行して実行されているので、各検出器ユニット6から出力された第1パケット情報及び第2パケット情報の両方を入力し、検出したγ線のエネルギー、すなわち、波高値情報に基づいてそれらのパケット情報を弁別する。信号弁別装置31は、第1γ線のエネルギーに相当する波高値情報、すなわち、例えば450〜550keVのエネルギーに相当する範囲の波高値情報を含む第1パケット情報を同時計数装置32に出力する。第2γ線のエネルギーに相当する波高値情報、すなわち、例えば570〜650keVのエネルギーに相当する範囲の波高値情報を含む第2パケット情報は、第2放射線処理装置34に出力される。これらのパケット情報の出力先の切り替えは、信号弁別装置31内に設けられた切替スイッチ(図示せず)の切り替えによって行われる。
【0085】
同時計数装置32は、第1γ線検出信号に基づいて得られた検出時刻情報及び検出器IDを用いて同時計数を行い、一個の陽電子の消滅によって発生した一対の第1γ線を検出した一対の検出器9を特定する。同時計数装置32は、特定された一対の検出器9の、第1パケット情報に含まれる各検出器ID情報及び検出時刻情報を記憶装置35に記憶する。同時計数によって得られた各検出器ID情報及び検出時刻情報を第1検出情報という。
【0086】
線源位置検出装置41は、エンコーダ63の出力信号(回転駆動装置55の回転角度情報)を入力し、この出力信号に基づいて旋回している放射線源26の位置情報(以下、線源位置情報という)を求める。線源位置情報は第2放射線処理装置34及びフィードバック情報として線源回転制御装置42に入力される。
【0087】
第2放射線処理装置34は、第2パケット情報に含まれる第2γ線を検出した検出器9の検出器ID情報及び検出時刻情報、及び付加された線源位置情報を記憶装置35に記憶させる。第2放射線処理装置34から出力される検出器ID情報、検出時刻情報及び線源位置情報を第2検出情報という。第1検出情報及び第2検出情報は、それぞれ検出時刻情報を含んでいるので、位相区間情報生成装置44で生成された、時刻情報が付与されている体動位相区間情報との対応がとれるようになっている。
【0088】
第二断層画像作成装置37は、記憶装置35に記憶されている第2検出情報及び時刻情報が付与されている体動位相区間情報を用いて各体動位相区間毎のT画像情報を再構成する。具体的には、第二断層画像作成装置37は、ある体動位相区間の時刻情報、すなわち、この体動位相区間の時刻情報と次の体動位相区間の時刻情報の間に含まれる時刻情報を有する第2検出情報を用いて、上記のある体動位相区間に対するT画像情報を作成する。このT画像情報は、該当する体動位相区間の時刻情報を付与して記憶装置35に記憶される。このようにして、体動位相区間0,1,2,……,7毎のT画像情報、例えば、T画像情報T0,T1,T2,……T7(図1参照)が作成される。
【0089】
第一断層画像作成装置36は、記憶装置35に記憶された第1検出情報及び時刻情報が付与されている体動位相区間情報を用いて各体動位相区間毎のE画像情報を再構成する。この体動位相区間の時刻情報と次の体動位相区間の時刻情報の間に含まれる時刻情報を有する第1検出情報を用いて、上記のある体動位相区間に対するE画像情報を作成する。このE画像情報は、該当する体動位相区間の時刻情報を付与して記憶装置35に記憶される。このようにして、体動位相区間0,1,2,……,7毎のE画像情報、例えば、E画像情報E0,E1,E2,……E7(図1参照)が作成される。
【0090】
ある体動位相区間のE画像情報を再構成する際には、その体動位相区間の第2検出情報、またはあるいはその体動位相区間において再構成された第2γ線の透過率に関する断層画像を基に、第1検出情報に対する減弱補正を行い、E画像情報を再構成する。ここで、第2γ線の透過率に関する断層画像は体動位相区間におけるT画像情報に該当する。
【0091】
第一断層画像作成装置36及び第二断層画像作成装置37は、例えばフィルタード・バック・プロジェクション法などの断層画像再構成アルゴリズムを用いてそれぞれの体動位相区間ごとのE画像情報及びT画像情報をそれぞれ作成する。E画像情報及びT画像情報は、それぞれ断層画像情報であり、呼吸周期ごとにそれぞれ8つずつ作成される。第一断層画像作成装置36は減弱補正を行う。減弱補正が必要な場合には、同一の体動位相区間のT画像情報から第1検出情報に対する減弱補正を行うが、本実施例では、E計測及びT計測の並列計測(実質的に同時計測)によって、被検者29の形態の同一性が保証されている。このため、本実施例は、減弱補正におけるEゲート計測とTゲート計測での位置ずれに伴うアーチファクト及び定量性の悪化が、従来のEゲート計測に比較して格段に少なくなっている。
【0092】
なお、Eゲート計測に基づく重ね合わせ画像情報を作る前の段階で得られる体動位相区間ごとの各E画像情報は、全検査時間を体動位相区間数で分割した時間の計測データに対応している。すなわち、体動位相区間を時間で等分割したとすれば、12分を8分割、すなわち1体動位相区間あたり1.5分の計測データから再構成されたものである。通常のPET薬剤投与量であれば、画像情報を得ることができるが、統計精度が絶対的に不足しており、ノイズを多く含む画像情報である。従来のゲート撮像では後述するEゲート計測に基づく重ね合わせ画像情報を作成するステップがないので、実質1.5分の計測データから再構成した画像8つが得られるのみである。ノイズの少ないきれいな画像を得るためには一般に3分以上の計測が必要であるので、従来のゲート撮像ではきれいな画像を得ることができない。
【0093】
図1を用いて述べた体動位相区間ごとのT画像情報同士及びE画像情報同士をそれぞれ非線形に重ね合わせる具体的な処理を、説明する。この処理は、体動補償装置38で行われる。相対変位情報生成装置39は、記憶装置35に記憶されている体動位相区間の時刻情報が付与された各T画像情報(例えば、1つの呼吸周期に8つの体動位相区間が存在する場合には、T画像情報T0,T1,T2,……T7)、及び時刻情報が付与された各体動位相区間情報(例えば、1つの呼吸周期に8つの体動位相区間が存在する場合には、体動位相区間0,1,2,……,7)を取得する。相対変位情報生成装置39は、ある1つの呼吸周期において体動位相区間1〜7のそれぞれのT画像情報T1,T2,……,T7を体動位相区間0(参照位相区間)のT画像情報T0に重ね合わせ、1つの呼吸周期に対するT重ね合わせ画像情報を作成する。この画像情報の非線形な重ね合わせ処理は、非特許文献6に記載されているNon-rigid Image Registration法と呼ばれるアルゴリズムを用いて行われる。それらのT画像情報の重ね合わせによって、参照位相区間のT画像情報T0と他の各体動位相区間における各T画像情報との間のそれぞれの相対変位情報、すなわち、変換行列情報[F10],[F20],……,[F70]を得ることができる。これらの相対変位情報は、記憶装置35に記憶される。
【0094】
断層画像重畳装置40は、記憶装置35に記憶されている体動位相区間の時刻情報が付与された各E画像情報(例えば、1つの呼吸周期に8つの体動位相区間が存在する場合には、E画像情報E0,E1,E2,……E7)、及び時刻情報が付与された前述の各体動位相区間情報を入力する。断層画像重畳装置40は、ある1つの呼吸周期において体動位相区間1〜7のそれぞれのE画像情報E0,E1,E2,……E7を、変換行列情報[F10],[F20],……,[F70]を用いて、非線形に体動位相区間0(参照位相区間)のE画像情報E0に重ね合わせ、1つの呼吸周期に対するE重ね合わせ画像情報を作成する。この画像情報の非線形な重ね合わせ処理は、上記したNon-rigid Image Registration法と呼ばれるアルゴリズムを用いて行われる。断層画像重畳装置40は、各体動移送区間の各E画像情報を用いて、これらのE画像情報の、空間的に同じ位置にある各画素の画素値を足し合わせる処理を、参照位相区間のE画像情報の全ての画素に対して実行する。得られたE重ね合わせ画像情報は記憶装置35に記憶される。以上に述べたE重ね合わせ画像情報の作成処理は、PET検査の期間内の呼吸周期ごとに行われる。
【0095】
断層画像重畳装置40は、さらに、各呼吸周期において作成された参照位相区間に対する各E重ね合わせ画像情報を用いて、これらのE重ね合わせ画像情報の、空間的に同じ位置にある各画素の画素値を足し合わせる処理を、ある1つのE重ね合わせ画像情報の全ての画素に対して実行する。このような画素値の足し合わせによって得られた最終E重ね合わせ画像情報は、統計精度が高く、より鮮明な画像情報となる。最終E重ね合わせ画像情報は、記憶装置35に記憶される。
【0096】
情報出力装置66は、各体動位相区間ごとの各T画像情報及び各E画像情報,呼吸周期ごとの各T重ね合わせ画像情報及び各E重ね合わせ画像情報、及び最終T重ね合わせ情報及び最終E重ね合わせ情報を、それぞれの画像情報を単独で、または複数種類の画像情報を一緒に、記憶装置35から読み出して表示装置33に出力する。表示装置33は、入力した画像情報を表示する。表示装置33に表示する画像情報は、オペレータがオペレータコンソールの入力装置から入力する画像情報表示指令に基づいて情報出力装置66が記憶装置35から読み出される。
【0097】
本実施例は、ある1つの体動位相区間(例えば参照位相区間)のT画像情報に他の体動位相区間のT画像情報の重ね合わせによって得られる相対変位情報、すなわち、変換行列情報を用いて、その1つの体動位相区間のE画像情報に上記の他の体動位相区間のE画像情報を重ね合わせるので、1つの呼吸周期における各体動位相区間のE画像情報を全て重ね合わせることができる。このため、体動(例えば呼吸動)の影響を受ける部位を対象としたより鮮明なE画像情報(最終E重ね合わせ画像情報)をより短時間に得ることができる。本実施例によって得られるより鮮明なE画像情報(最終E重ね合わせ画像情報)によれば、体動の影響を受ける部位に存在する悪性腫瘍の診断を精度良く行うことができる。本実施例におけるこのE画像情報に期待される統計精度は12分のE計測に対応する。通常、12分のE計測を行えば、統計精度は十分に満足できる。また、この最終E重ね合わせ画像情報は、本実施例において、各体動位相区間の各T画像情報により呼吸動も補償されているため、ボケの少ない、定量性の高い鮮明な画像となっている。また、減弱補正時のT計測とE計測において被検者29の位置ずれが発生しないので、その位置ずれに伴うアーチファクトも発生しない。被検者29は、本実施例でのPET検査の期間において、安静な呼吸を続けることができ、息を止める必要がない。
【0098】
上記のように体動位相区間のT画像情報に基づいて得られた相対変位情報を異なる体動位相区間のE画像情報の重ね合わせに利用することができるのは、E計測とT計測を並列して行うからであり、1つの検出器9で第1γ線及び第2γ線を検出することに起因する。1つの検出器9は、時間的にずれて第1γ線検出信号及び第2γ線検出信号を出力するケースが多い。これらのγ線検出信号を基に作成された第1パケット情報と第2パケット情報は、信号弁別装置31によってγ線検出信号のエネルギーに基づいて容易に弁別することができる。すなわち、信号弁別装置31が、ピークホールド回路(波高値生成装置)10fで得られた、γ線検出信号のエネルギーに相当する波高値を入力しているので、求めるピークホールド回路(波高値生成装置)10fで得られる、第1パケット情報と第2パケット情報を容易に仕分けすることができる。
【0099】
必要ならば、他の体動位相区間のE画像情報の画素値を参照位相区間のE画像情報の画素値に足し合わせる際に、非線形的にゆがめられるE画像情報の伸縮度合いを考慮して画素値を調整して足し合わせる処理を行うと、PET薬剤の集積度の定量性をさらに向上させることができる。
【0100】
オペレータコンソールに設けられた1つまたは複数の表示装置33に、同じ体動位相区間のE画像情報及びT画像情報または参照位相区間のT重ね合わせ画像情報及びE重ね合わせ画像情報を、最終E重ね合わせ画像情報と共に表示することができる。このような表示により最終E重ね合わせ画像情報を評価することができる。
【0101】
上述の様に、体動の影響を受ける部位を対象としたより鮮明なエミッション画像情報を短時間に得る為に、放射性薬剤に起因した第1放射線を入力するときにベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される複数の第1放射線検出信号より得られる複数の第1情報に基づいて、ある周期を時間的に区分して得られる複数の位相区間で第1断層画像情報を作成し、放射線源から放出される第2放射線を入力するときに複数の放射線検出器から出力される複数の第2放射線検出信号より得られる複数の第2情報に基づいて、複数の位相区間で第2断層画像情報を作成し、複数の位相区間のうちある1つの前記位相区間の第2断層画像情報に他の位相区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求め、ある1つの位相区間の前記第1断層画像情報に他の位相空間の前記第1断層画像情報を、相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成する陽電子放出断層撮影装置の断層画像情報作成方法を行う。
【0102】
以上においては、体動位相区間0のT画像情報T0に他の体動位相空間のT画像情報T1,T2,……,T7を重ね合わせる処理について述べた。しかしながら、相対変位情報生成装置39は、同様なT画像情報の重ね合わせ、及び画素値の足し合わせ処理を、他の体動位相区間、例えば、体動位相区間0,2,3,……,7のそれぞれのT画像情報T0,T2,T3,……T7の体動位相区間1のT画像情報への重ね合わせ及び画素値の足し合わせにおいても実行する。残りのT画像情報T2,T3,……T7のそれぞれへの他のT画像情報の重ね合わせ及び画素値の足し合わせも、同様に実行される。これらの処理によって得られた体動位相区間0,2,3,……,7のそれぞれに対するT重ね合わせ画像情報は、統計精度の高い画像情報となる。これらのT重ね合わせ画像情報を用いて対応する体動位相区間のE画像情報の減弱補正を行うことで、減弱補正のプロセスでT画像情報に含まれる統計ノイズがE画像情報に伝播することを抑制することもできる。
【0103】
さらには、隣り合う体動位相区間の両E画像情報を用いて時間方向に補間することによって、任意の呼吸位相に対する鮮明なE画像情報を得ることができる。任意の呼吸位相を、別時刻に撮像した同一被検者の息止めX線CT撮像と同じくすることで、E画像情報とX線CT画像情報の呼吸状態の差に起因するPETとCT画像の位置ずれの問題も解決できる。ただしこの場合、ベッドの形状や被検者の姿勢を揃えておく必要がある。
【0104】
以上述べた実施例は、呼吸動に対応したゲート計測を対象としたものであるが、心臓の拍動に対応したゲート計測にも適用することができる。
【0105】
尚、核医学診断装置においては、被験者からのガンマ線がある放射線検出器内で散乱され、別の放射線検出器にて吸収されることによって、複数の放射線検出器にエネルギーを付与する場合がある。このような場合に対し、二つ、あるいはそれ以上の放射線検出器での放射線検出情報を元に、散乱される前のガンマ線が被検体Pに投与した放射性薬剤からのガンマ線かどうかを判定し、そうであった場合は有効な信号として処理することが考えられる。以下、このような手法を散乱線処理と呼ぶ。核医学診断装置は、放射線検出器から出力された出力信号に基づいて、放射線検出器で散乱した放射線による複数の放射線信号を一つの放射線信号として特定する散乱線処理手段を有する。ここで散乱線処理手段は、パケットデータ生成器15,FPGA17のいずれでも良い。また、散乱線処理手段をデータ処理装置30の信号弁別装置31よりデータ処理の上流側に設置しても良い。散乱線処理により有効な信号が増えるため、精度の良い診断画像が期待できる。
【0106】
尚、上述した実施例では、陽電子放出断層撮影装置の例を示したが、SPECT装置でもよく、生体の機能画像を撮像できれば良い。また、2次元の断層像だけではなく、3次元の生体の機能画像と構造画像の関係にも同様に適用できる。上述した画像情報作成方法は、体動の影響で医療画像に影響が出るコンピュータ撮影画像に適用できる。つまり、体動の影響を受ける部位を対象としたより鮮明な生体の機能画像情報を短時間に得る為に、ある周期を時間的に区分して得られる複数の位相区間で生体の機能を画像化した第1画像情報を作成し、複数の位相区間で生体の構造を画像化した第2画像情報を作成し、複数の位相区間のうちある1つの位相区間の第2画像情報に他の位相区間の第2画像情報を重ね合わせてそれらの第2画像情報間の相対変位情報を求め、ある1つの位相区間の第1画像情報に他の位相空間の前記第1画像情報を、相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1画像情報を作成する画像処理装置の画像情報作成方法を行う。
【0107】
尚、上述した実施例では、E画像情報とT画像情報についてのある周期の分割数を3分割や8分割としたが、指定した任意の分割数とすることができる。また、周期時間の分割は等分割の例を示したが、等分割でなくとも良く、ある分割区分の時間を他の分割区分の時間より短く、又は長くしても良い。例えば、体動の影響が大きい区分は時間を短くして、体動の影響が小さい区分は時間を長くすることにより、体動の影響が少ない区分と体動の影響が大きい区分を区別して、画像処理をすることができ、より鮮明な画像を得ることができる。ある分割区間の時間を他の分割区間の時間より短く、又は長くした場合、式(3)の右辺にて重ね合わせた画像数3で割っている点について、3で割らずに、足された分の撮像時間で割ることで重ね合わせた画像を得ることができる。
【0108】
分割された区分について、全ての区分を重ね合わせに使う必要はなく、一部の区分を指定して重ね合わせに使っても良い。例えば、全ての区分の内、体動の影響が小さい区分である空気を吐き終わった時点を含む区分と空気を吸いきった時点を含む区分を指定して重ね合わせることにより、体動の影響の少ない画像で、かつ、早い計測が可能である。また、体動の影響が大きく、ボケの程度を表す指標が所定値を超えた画像区分について排除することで、早い計測を重要視しながら、画像の精度を向上させることができる。
【0109】
尚、上述した実施例では、生体の機能画像であるE画像情報と、生体の構造画像であるT画像情報を1台の撮像装置で撮影することにより体動の周期の同期を取る例を示したが、ある撮像装置で撮影した生体の機能画像と、別の撮像装置で撮影した生体の構造画像の体動の周期の同期を取ることもできる。例えば、機能画像の周期を特定し、構造画像の周期を特定し、それぞれの周期の開始点と周期の長さを揃える様に分割する区分を割り当てることにより機能画像と構造画像の同期を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明による呼吸動補償方法の説明図。
【図2】一実施例の陽電子放出断層撮影装置の概略構成図である。
【図3】図2に示す陽電子放出断層撮影装置の詳細構成図である。
【図4】図1に示す撮像装置の縦断面図である。
【図5】検出器ユニットを撮像装置に装着する状態の説明図である。
【図6】図3に示す検出器ユニットの詳細構成を示す斜視図である。
【図7】図3に示すモジュール基盤の詳細構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0111】
1 陽電子放出断層撮影装置
2 撮像装置
3 ユニット支持部材
4 開口部
5 前面エンドシールド
6 検出器ユニット
7 モジュール基板
8 基板部材
9 検出器
10 アナログASIC
10a アナログ信号処理回路
10b タイミングピックオフ回路
10c チャージアンプ
10d 極性アンプ
10e バンドパスフィルタ
10f ピークホールド回路
11 ADC
12 ディジタルASIC
13 パケットデータ生成装置
14 時刻決定回路
15 パケットデータ生成器
16 データ転送回路
17 FPGA
18 コネクタ
19 収納部材
19a 蓋部材
20 仕切り部材
21 電圧調整装置
22 第1領域
23 第2領域
24,25 コネクタ
26 放射線源
27 ベッド
28 呼吸モニタ装置
29 被検者
30 データ処理装置
31 信号弁別装置
32 同時計数装置
33 表示装置
34 第2放射線処理装置
35 記憶装置
36 第一断層画像作成装置
37 第二断層画像作成装置
38 体動補償装置
39 相対変位情報生成装置
40 断層画像重畳装置
41 線源位置検出装置
42 線源回転制御装置
43 体動位相情報取得装置
44 位相区間情報生成装置
45 筐体
48 放射線源装置
49 線源支持軸
50 保持部材
51 移動装置
52 ガイド部材
53 線源直進移動装置
54 線源旋回装置
55 回転駆動装置
56 回転部材
57 歯車部材
58 軸支持部材
59 転動部材
60 エンドシールド
60a 切欠部
61 線源収納室
62 溝
63 エンコーダ
64,65 線源シールド
66 情報出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある周期を時間的に区分して得られる複数の位相区間で生体の機能を画像化した第1画像情報を作成し、
前記複数の位相区間で生体の構造を画像化した第2画像情報を作成し、
前記複数の位相区間のうちある1つの前記位相区間の前記第2画像情報に他の前記位相区間の前記第2画像情報を重ね合わせてそれらの第2画像情報間の相対変位情報を求め、
前記ある1つの位相区間の前記第1画像情報に前記他の位相空間の前記第1画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1画像情報を作成することを特徴とする画像処理装置の画像情報作成方法。
【請求項2】
放射性薬剤に起因した第1放射線を入力するときにベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される複数の第1放射線検出信号より得られる複数の第1情報に基づいて、ある周期を時間的に区分して得られる複数の位相区間で第1画像情報を作成し、
放射線源から放出される第2放射線を入力するときに前記複数の放射線検出器から出力される複数の第2放射線検出信号より得られる複数の第2情報に基づいて、前記複数の位相区間で第2断層画像情報を作成し、
前記複数の位相区間のうちある1つの前記位相区間の前記第2断層画像情報に他の前記位相区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求め、
前記ある1つの位相区間の前記第1断層画像情報に前記他の位相空間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成することを特徴とする断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項3】
前記第1情報と前記第2情報が、前記第1放射線検出信号と前記第2放射線検出信号のエネルギーの違いにより弁別され、弁別された前記第1情報を用いて前記第1断層画像情報を作成し、弁別された前記第2情報を用いて前記第2断層画像情報を作成する請求項2に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項4】
前記第2断層画像情報間の相対変位情報は非線形の相対変位情報であり、前記非線形の相対変位情報を用いて前記重ね合わせ第1断層画像情報を作成することを特徴とする請求項2に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項5】
前記位相区間の前記第1断層画像情報の作成は、前記位相区間の前記第2断層画像情報を用いてこの位相区間に該当する前記第1情報を減弱補正することによって行われる請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項6】
前記第1情報は前記第1放射線の第1検出時刻情報を含んでおり、前記第2情報は前記第2放射線の第2検出時刻情報を含んでおり、前記位相区間ごとの前記第1断層画像情報の作成は前記第1検出時刻情報により特定された前記第1情報を用いて行われ、前記位相区間ごとの前記第2断層画像情報の作成は前記第2検出時刻情報により特定された前記第2情報を用いて行われる請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項7】
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出し、検出された複数の放射線源位置情報を前記第2断層画像情報の作成に用いる請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項8】
放射性薬剤に起因した第1放射線を入力するときにベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される複数の第1放射線検出信号より得られる、前記第1放射線の第1検出時刻情報、前記第1放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第1位置情報及び前記第1放射線検出信号の第1エネルギー情報を含む複数の第1情報を生成し、
複数の前記第1情報に含まれる前記検出時刻情報に基づいて同時計数を行って、設定時間内で、前記第1放射線検出信号を出力した一対の前記放射線検出器を特定し、
特定された前記一対の放射線検出器の前記第1位置情報及び前記第1検出時刻情報に基づいて、ある周期を時間的に区分して得られる複数の位相区間で第1断層画像情報を作成し、
放射線源から放出される第2放射線を入力するときに前記複数の放射線検出器から出力される複数の第2放射線検出信号より得られる複数の第2情報を生成し、
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出し、
複数の前記第2情報及び検出された複数の放射線源位置情報に基づいて、前記複数の位相区間で第2断層画像情報を作成し、
前記複数の位相区間のうちある1つの位相区間の前記第2断層画像情報に他の前記位相区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求め、
前記ある1つの位相区間の前記第1断層画像情報に前記他の位相空間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成することを特徴とする断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項9】
前記第2情報は前記第2放射線の第2検出時刻情報、前記第2放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第2位置情報及び前記第2放射線検出信号の第2エネルギー情報を含んでおり、
前記第1情報と前記第2情報が前記第1エネルギー情報及び前記第2エネルギー情報によって弁別され、
前記同時計数が弁別された前記第1情報の前記第1検出時刻情報を用いて行われ、前記第2断層画像情報の作成が弁別された前記第2情報を用いて行われる請求項8に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項10】
前記放射線検出器は半導体放射線検出器である請求項2ないし請求項9のいずれか1項に記載の断層撮影装置の断層画像情報作成方法。
【請求項11】
被検体を乗せるベッドと、
前記ベッドの周囲を旋回する放射線源と、
前記ベッドの周囲に配置され、放射性薬剤に起因して前記被検体から放出される第1放射線を検出して第1放射線検出信号を出力し、前記放射線源から放出される第2放射線を検出して第2放射線検出信号を出力する複数の放射線検出器と、
複数の前記第1放射線検出信号より得られる複数の第1情報に基づいて、前記被検体の体動周期を時間的に区分して得られる複数の体動位相区間で第1断層画像情報を作成する第1断層画像情報作成装置と、
複数の前記第2放射線検出信号から得られる複数の第2情報に基づいて、前記複数の体動位相区間で第2断層画像情報を作成する第2断層画像情報作成装置と、
前記複数の体動位相区間のうちのある1つの前記体動位相区間の前記第2断層画像情報に他の前記体動位相区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求める相対変位情報生成装置と、
前記ある1つの体動位相区間の前記第1断層画像情報に前記他の体動位相空間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成する断層画像情報重ね合わせ装置とを備えたことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項12】
前記第1情報及び前記第2情報を入力し、前記第1情報及び前記第2情報を前記第1放射線検出信号と前記第2放射線検出信号のエネルギーの違いにより弁別する弁別装置を備え、前記第1断層画像情報作成装置は弁別された前記第1情報を用いて前記第1断層画像情報を作成し、前記第2断層画像情報作成装置は弁別された前記第2情報を用いて前記第2断層画像情報を作成する請求項11に記載の断層撮影装置。
【請求項13】
前記第1断層画像情報作成装置は、前記体動位相区間の前記第2断層画像情報を用いてこの体動位相区間に該当する前記第1情報を減弱補正することによって前記体動位相区間の前記第1断層画像情報の作成を行う請求項11または請求項12に記載の断層撮影装置。
【請求項14】
前記第1断層画像情報作成装置は、前記体動位相区間ごとの前記第1断層画像情報の作成を、前記第1情報に含まれる前記第1放射線検出信号の第1検出時刻情報により特定した前記第1情報を用いて行い、前記第2断層画像情報作成装置は、前記体動位相区間ごとの前記第2断層画像情報の作成を、前記第2情報に含まれる前記第2放射線検出信号の第2検出時刻情報により特定した前記第2情報を用いて行う請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項15】
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出する放射線源位置検出装置を備え、
前記第2断層画像情報作成装置は、前記第2断層画像情報の作成に検出された複数の放射線源位置情報を用いる請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項16】
前記放射線源を、前記ベッドの周囲を旋回させる回転装置と、
前記被検体の体動の計測信号を入力し、この計測信号に基づいて前記体動周期を区分して得られる前記複数の体動位相区間に対する体動位相区間情報を作成する位相区間情報作成装置と、
前記体動位相区間情報に基づいて前記回転装置の回転を制御する回転制御装置とを備えた請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項17】
被検体を乗せるベッドと、
前記ベッドの周囲を旋回する放射線源と、
前記ベッドの周囲に配置され、放射性薬剤に起因して前記被検体から放出される第1放射線を検出して第1放射線検出信号を出力し、前記放射線源から放出される第2放射線を検出して第2放射線検出信号を出力する複数の放射線検出器と、
前記第1放射線の第1検出時刻情報、前記第1放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第1位置情報及び前記第1放射線検出信号の第1エネルギー情報を含む第1情報を、前記複数の放射線検出器から出力される前記第1放射線検出信号から生成し、前記第2放射線より得られる第2情報を前記複数の放射線検出器から出力される前記第2放射線検出信号から生成する放射線信号処理装置と、
複数の前記第1情報に含まれる前記検出時刻情報に基づいて同時計数を行って、設定時間内で、前記第1放射線検出信号を出力した一対の前記放射線検出器を特定する同時計数装置と、
特定された前記一対の放射線検出器の各前記第1位置情報及び前記第1検出時刻情報に基づいて、前記被検体の体動周期を時間的に区分して得られる複数の体動位相区間で第1断層画像情報を作成する第1断層画像情報作成装置と、
前記ベッドの回りの旋回方向における前記放射線源の位置を検出する放射線源位置検出装置と、
複数の前記第2情報及び検出された複数の放射線源位置情報に基づいて、前記複数の体動位相区間で第2断層画像情報を作成する第2断層画像情報作成装置と、
前記複数の体動位相区間のうちある1つの前記体動位相区間の前記第2断層画像情報に他の前記体動位相区間の前記第2断層画像情報を重ね合わせてそれらの第2断層画像情報間の相対変位情報を求める相対変位情報生成装置と、
前記ある1つの体動位相区間の前記第1断層画像情報に前記他の体動位相空間の前記第1断層画像情報を、前記相対変位情報を用いて重ね合わせることによって、重ね合わせ第1断層画像情報を作成する断層画像情報重ね合わせ装置とを備えたことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項18】
前記第1放射線検出信号より得られ、前記第2放射線の第2検出時刻情報、前記第2放射線検出信号が出力された前記放射線検出器の第2位置情報及び前記第2放射線検出信号の第2エネルギー情報を含む前記第2情報を、前記複数の放射線検出器から出力される前記第2放射線検出信号から生成する前記放射線信号処理装置と、
前記第1情報及び前記第2情報を入力し、前記第1情報及び前記第2情報を前記第1エネルギー情報及び前記第2エネルギー情報によって弁別する弁別装置を備え、
前記同時計数装置は、前記同時計数を弁別された前記第1情報の前記第1検出時刻情報を用いて行い、
前記第2断層画像情報作成装置は、前記第2断層画像情報の作成を弁別された前記第2情報を用いて行う請求項17に記載の断層撮影装置。
【請求項19】
前記放射線検出器は半導体放射線検出器である請求項11ないし請求項18のいずれか1項に記載の断層撮影装置。
【請求項20】
前記半導体放射線検出器の素子材料として、カドミウムテルル(CdTe),カドミウムテルル亜鉛(CZT),臭化タリウム(TlBr),沃化鉛(PbI2),ガリウムヒ素(GaAs)のいずれか一つを用いることを特徴とする請求項19に記載の断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−233025(P2009−233025A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81500(P2008−81500)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】