説明

画像撮像方法および装置

【課題】体表から所望の深さに存在する血管を強調して表示したり、通常画像と蛍光画像とを重ね合わせた合成画像をより適切なコントラストで表示したりする。
【解決手段】複数の光源40,46,49から射出された互いに異なる波長帯域の光を、蛍光薬剤が投与された被観察部に照射する光照射部と、各光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して各光に対応する画像を撮像する撮像部20とを備えた画像撮像装置において、各光源40,46,49から射出させる各光の光量比を変更する光量比変更部38aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源から互いに異なる波長帯域の光を射出させ、各光を蛍光薬剤が投与された被観察部に照射して各光に対応する画像を撮像する画像撮像方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、上記のような内視鏡システムとして、たとえば、ICG(インドシアニングリーン)を予め体内に投入し、励起光を被観察部に照射して血管内やリンパ管内のICGの蛍光を検出することによって蛍光画像を取得するものも提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−299676号公報
【特許文献2】特開2007−244746号公報
【特許文献3】特許第3583731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような内視鏡システムによる診断においては、生体組織の表層や深層にかけての組織情報などが重要な観察対象となる。たとえば、消化管癌は早期から腫瘍血管が粘膜の表層に現れ、腫瘍血管は通常は表層に見える血管に比べると膨張や蛇行、血管の密度の増加などが認められる。そのため、血管の性状を精査することで腫瘍の種類を識別できる。
【0006】
しかしながら、たとえば、上述したようなICGを用いた血管画像の観察を行う場合、励起光として用いられる近赤外光は生体への進達度が大きいため、蛍光画像上において深層に存在する血管まで観察することが可能であるが、上述したような表層の血管については、ぼけてしまって鮮明な画像を観察することができない。
【0007】
一方、たとえば、特許文献3においては、カラーフィルタを用いて被観察部に狭帯域光を照射することによって生体組織の組織表面近くの画像を取得することが提案されているが、カラーフィルタの透過波長い地域を特定の狭い帯域内に限定することは難しく、さらに狭帯域光はカラーフィルタを通過したものであるため、十分な光量ではなく画像の画質劣化を招く問題がある。また、深層に存在する血管画像を観察する場合も同様の問題がある。
【0008】
また、比較的波長の短い励起光に対して蛍光を発する蛍光薬剤を用いて表層の血管画像を取得することも考えられるが、この場合、表層の血管画像は観察できるが、逆に深層に存在する血管画像を観察することができない。
【0009】
また、たとえば、通常画像と蛍光画像とを重ね合わせて合成画像を表示するような場合、これらの画像の明るさが大きく異なっているとコントラストが適切でない非常に見づらい画像となってしまう。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、たとえば、体表から所望の深さに存在する血管を強調して表示することができ、また、通常画像と蛍光画像とを重ね合わせた合成画像をより適切なコントラストで表示することができる画像撮像方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像撮像方法は、少なくとも1つの励起光源を含む複数の光源から互いに異なる波長帯域の光を射出させ、各光を蛍光薬剤が投与された被観察部に照射し、各光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して各光に対応する画像を撮像する画像撮像方法において、各光源から射出させる各光の光量比を変更することを特徴とする。
【0012】
本発明の画像撮像装置は、少なくとも1つの励起光源を含む複数の光源から射出された互いに異なる波長帯域の光を、蛍光薬剤が投与された被観察部に照射する光照射部と、各光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して各光に対応する画像を撮像する撮像部とを備えた画像撮像装置において、各光源から射出させる各光の光量比を変更する光量比変更部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の画像撮像装置においては、光源として複数の励起光源を備えたものとし、光量比変更部を、各励起光源から射出された各励起光の光量比を変更するものとすることができる。
【0014】
また、光源として通常光を射出する通常光源を備えたものとし、光量比変更部を、励起光源から射出された励起光と通常光源から射出された通常光の光量比を変更するものとすることができる。
【0015】
また、複数の励起光源から射出される各励起光として、被観察部に投与された複数の蛍光薬剤をそれぞれ励起するものを用いることができる。
【0016】
また、光量比変更部を、各励起光の照射によって撮像部により撮像された各画像の強度が異なるものとなるように光量比を変更するものとすることができる。
【0017】
また、光量比変更部を、各励起光の照射によって撮像部により撮像された各画像の強度が同じになるように光量比を変更するものとすることができる。
【0018】
また、撮像部を、各光に対応する画像を撮像する複数の撮像素子を備えたものとし、光量比変更部を、各撮像素子の感度に基づいて予め設定された光量比の値に応じて各光の光量比を変更するものとすることができる。
【0019】
また、撮像部を、各光に対応する画像を撮像する1つの撮像素子を備えたものとし、光量比変更部を、撮像素子の感度に基づいて予め設定された光量比の値に応じて各光の光量比を変更するものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像撮像方法および装置は、少なくとも1つの励起光源を含む複数の光源から互いに異なる波長帯域の光を射出させ、各光を蛍光薬剤が投与された被観察部に照射し、各光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して各光に対応する画像を撮像する画像撮像方法において、各光源から射出させる各光の光量比を変更できるようにしたので、たとえば、短い波長帯域の光と長い波長帯域の光との光量比を変更することによって、体表から所望の深さに存在する血管を強調して表示することができる。また、たとえば、白色光と励起光の光量比を変更することによって、通常画像と蛍光画像とを重ね合わせた合成画像をより適切なコントラストで表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像撮像装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】体腔挿入部の概略構成図
【図3】体腔挿入部の先端部の概略構成図
【図4】図3の4−4’線断面図
【図5】体腔挿入部の各投光ユニットによって照射される光のスペクトルおよびその光の照射によって被観察部から発せられる蛍光および反射光のスペクトルを示す図
【図6】本発明の画像撮像装置の第1の実施形態の撮像ユニットの概略構成図
【図7】第1の実施形態の撮像ユニットの分光感度を示す図
【図8】プロセッサおよび光源装置の概略構成を示すブロック図
【図9】画像処理部の概略構成を示すブロック図
【図10】表層の血管と深層の血管とを示す模式図
【図11】深部蛍光画像の生成方法の概念を説明するための模式図
【図12】本発明の画像撮像装置の第1の実施形態における通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像の撮像タイミングを示すタイミングチャート
【図13】通常画像、蛍光画像および合成画像を表示する作用を説明するためのフローチャート
【図14】エッジ検出を用いた線分抽出処理を説明するためのフローチャート
【図15】本発明の画像撮像装置の第2の実施形態の撮像ユニットの概略構成図
【図16】第2の実施形態の撮像ユニットの分光感度を示す図
【図17】第2の実施形態の撮像ユニットの高感度撮像素子による各画像の撮像方法を説明するための図
【図18】本発明の画像撮像装置の第2の実施形態における通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像の撮像タイミングを示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の画像撮像方法および画像撮像装置の第1の実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0023】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、青色光と近赤外光と近紫外光を射出する光源装置2と、光源装置2から射出された3種類の光を導光して被観察部に照射するとともに、励起光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像および白色光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施すとともに、光源装置2から射出される各光の光量を制御するプロセッサ3と、プロセッサ3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の蛍光画像および通常画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0024】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、腹腔や胸腔などの体腔内に挿入される体腔挿入部30と、体腔挿入部30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0025】
また、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、体腔挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、体腔挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、およびケーブル接続口30cを備えている。
【0026】
接続部材30aは、体腔挿入部30(挿入部材30b)の一端側30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20側に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と体腔挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0027】
挿入部材30bは、体腔内の撮影を行う際に体腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するためのレンズ群が収容されており、他端側30Yから入射された被観察部の通常像および蛍光像はレンズ群を介して一端側30Xの撮像ユニット20側に射出される。
【0028】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続口30cが設けられており、このケーブル接続口30cに光ケーブルLCが機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとが光ケーブルLCを介して光学的に接続されることになる。
【0029】
また、図3に示すように、体腔挿入部30の他端側30Yには、略中央に通常像および蛍光像を結像する撮像レンズ30dが設けられており、その撮像レンズ30dを挟んで略対称に白色光を照射する白色光用照射レンズ30e,30fが設けられている。このように白色光用照射レンズを撮像レンズ30dに対して対称に2つ設けるようにしているのは、被観察部の凹凸によって通常像に陰影ができないようにするためである。
【0030】
また、体腔挿入部30の他端側30Yには、励起光である近赤外光と近紫外光とを被観察部に同時に照射する励起光用照射レンズ30gが設けられている。
【0031】
また、図4に、図3の4-4’線断面図を示す。図4に示すように、体腔挿入部30内には、白色光投光ユニット70と励起光投光ユニット60とが設けられている。白色光投光ユニット70は、青色光を導光するマルチモード光ファイバ71と、マルチモード光ファイバ71によって導光された青色光の一部を吸収して励起され、緑色〜黄色の可視光を発する蛍光体72とを備えている。蛍光体72は、複数種類の蛍光物質から形成されており、たとえば、YAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質などを含んで形成される。
【0032】
そして、蛍光体72の外周を覆うように筒状のスリーブ部材73が設けられており、スリーブ部材73の内部には、マルチモード光ファイバ71を中心軸として保持するフェニール74が挿入されている。さらに、フェニール74の後端側(先端側とは逆側)から延出されるマルチモード光ファイバ71には、その外皮を覆うフレキシブルスリーブ75がスリーブ部材73との間に挿入されている。
【0033】
また、励起光投光ユニット60は、近赤外光および近紫外光を導光するマルチモード光ファイバ61を備えており、マルチモード光ファイバ61と励起光用照射レンズ30gとの間には空間62が設けられている。なお、励起光投光ユニット60にも、空間62の外周を覆うように筒状のスリーブ部材63が設けられており、白色光投光ユニット70と同様に、フェニール64およびフレキシブルスリーブ65が設けられている。
【0034】
また、図3の各照射レンズ内の点線の丸は、マルチモード光ファイバの出射端を示している。各投光ユニットにおいて使用されるマルチモード光ファイバとしては、たとえば、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径が直径0.3mm〜0.5mmの細径なものを使用することができる。
【0035】
ここで、各投光ユニットによって被観察部に照射される光のスペクトルおよびその光の照射によって被観察部から発せられる蛍光および反射光のスペクトルを図5に示す。図5には、白色光投光ユニット70の蛍光体72を透過して照射された青色光スペクトルS1と、白色光投光ユニット70の蛍光体72において励起されて照射された緑色〜黄色の可視光スペクトルS2と、励起光投光ユニット60によって照射された近赤外光スペクトルS3および近紫外光スペクトルS5とが示されている。
【0036】
なお、本明細書における白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、たとえば、基準光であるR(赤)、G(緑)、B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、たとえば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光なども広義に含むものとする。したがって、白色光投光ユニット70は、図5に示すような青色光スペクトルS1と可視光スペクトルS2とを照射するものであるが、これらのスペクトルからなる光も白色光であるとする。
【0037】
さらに、図5には、励起光投光ユニット60による近赤外光スペクトルS3の照射によって発せられたICG蛍光スペクトルS4と、励起光投光ユニット60による近紫外光スペクトルS5の照射によって発せられたルシフェラーゼ蛍光スペクトルS6とが示されている。
【0038】
図6は、撮像ユニット20の概略構成を示す図である。撮像ユニット20は、近赤外の励起光の照射によって被観察部から発せられたICG蛍光像を撮像して被観察部のICG蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、近紫外の励起光の照射によって被観察部から発せられたルシフェラーゼ蛍光像を撮像して被観察部のルシフェラーゼ蛍光画像信号を生成するとともに、白色光の照射によって被観察部から反射された通常像を撮像して被観察部の通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。
【0039】
第1の撮像系は、被観察部から発せられたICG蛍光像を透過させるダイクロイックプリズム21と、ダイクロイックプリズム21を透過したICG蛍光像を透過するとともに、ダイクロイックプリズム21を透過した近赤外の励起光をカットする近赤外光カットフィルタ22と、近赤外光カットフィルタ22を透過したICG蛍光像を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像されたICG蛍光像を撮像する第1高感度撮像素子24とから構成されている。
【0040】
第2の撮像系は、被観察部から反射された通常像およびルシフェラーゼ蛍光像を直角方向に反射するするダイクロイックプリズム21と、ダイクロイックプリズム21により反射された通常像およびルシフェラーゼ蛍光像を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25によって結像された通常像およびルシフェラーゼ蛍光像を異なるタイミングで撮像する第2高感度撮像素子26とから構成されている。そして、第2高感度撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0041】
また、ダイクロイックプリズム21の光入射面には、近紫外光の入射をカットするための紫外光カットフィルタ27が設けられている。紫外光カットフィルタ27は、紫外光の波長帯域375nmをカットするハイパスフィルタにより構成されている。
【0042】
ここで、図7に、撮像ユニット20の分光感度のグラフを示す。具体的には、撮像ユニット20は、第1の撮像系がIR(近赤外)感度を有し、第2の撮像系がR(赤)感度、G(緑)感度、B(青)感度を有するように構成されている。
【0043】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット20aを備えている。撮像制御ユニット20aは、高感度撮像素子24,26を制御するとともに、高感度撮像素子24,26から出力された画像信号に対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介してプロセッサ3に出力するものである。
【0044】
図8にプロセッサ3および光源装置2の内部の概略構成を示すブロック図を示す。
【0045】
プロセッサ3は、図8に示すように、通常画像入力コントローラ31、蛍光画像入力コントローラ32、画像処理部33、メモリ34、ビデオ出力部35、操作部36、TG(タイミングジェネレータ)37および制御部38を備えている。
【0046】
通常画像入力コントローラ31および蛍光画像入力コントローラ32は、所定容量のラインバッファを備えており、撮像ユニット20の撮像制御ユニット20aから出力された1フレーム分のRGB成分の画像信号からなる通常画像信号、ICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号をそれぞれ一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ31に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ32に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ34に格納される。
【0047】
画像処理部33は、メモリ34から読み出された1フレーム分の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。
【0048】
画像処理部33は、図9に示すように、入力された通常画像信号(RGB成分の画像信号)に対し、通常画像に適した所定の画像処理を施して出力する通常画像処理部33aと、入力されたICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号に対し、蛍光画像に適した所定の画像処理を施して出力する蛍光画像処理部33bと、蛍光画像処理部33bにおいて画像処理の施されたICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号に対して、血管を表す画像信号を抽出する処理を施す血管抽出部33cと、ICG蛍光画像信号から抽出された血管を表す画像信号(以下、「ICG蛍光血管画像信号」という)からルシフェラーゼ蛍光画像信号から抽出された血管を表す画像信号(以下、「ルシフェラーゼ蛍光血管画像信号」という)を差し引いて深部血管画像信号を生成する画像演算部33dと、画像演算部33dによって生成された深部血管画像信号やICG蛍光画像信号やルシフェラーゼ蛍光画像信号を通常画像処理部33aから出力された通常画像信号に合成して合成画像信号を生成する画像合成部33eとを備えている。なお、画像処理部33の各部における処理については、後で詳述する。
【0049】
ビデオ出力部35は、画像処理部33から出力された通常画像信号、蛍光画像信号および合成画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0050】
操作部36は、種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG37は、撮像ユニット20の高感度撮像素子24,26および後述する光源装置2のLDドライバ43,48,51を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。
【0051】
また、制御部38は、システム全体を制御するものであるが、本実施形態の制御部38は、後述する光源装置2から射出される青色光、近赤外光および近紫外光の光量の比を変更する光量比変更部38aを備えている。光量比変更部38aによる光量比の変更については後で詳述する。
【0052】
光源装置2は、図8に示すように、中心波長445nmの青色光を射出する青色LD光源40と、青色LD光源40から射出された青色光を集光して光ファイバスプリッタ42に入射させる集光レンズ41と、集光レンズ41から入射された青色光を光ケーブルLC1と光ケーブルLC2との両方に同時に入射する光ファイバスプリッタ42と、青色LD光源40を駆動するLDドライバ43とを備えている。
【0053】
また、光源装置2は、750〜790nmの近赤外光を射出する近赤外LD光源46と、近赤外LD光源46から射出された近赤外光を集光して光ファイバカプラ52に入射させる集光レンズ47と、近赤外LD光源46を駆動するLDドライバ48とを備えている。
【0054】
また、光源装置2は、300〜450nmの近紫外光を射出する近紫外LD光源49と、近紫外LD光源49から射出された近紫外光を集光して光ファイバカプラ52に入射させる集光レンズ50と、近紫外LD光源49を駆動するLDドライバ51とを備えている。
【0055】
また、光源装置2における光ファイバカプラ52は、近赤外LD光源46から射出された近赤外光と近紫外LD光源49から射出された近紫外光とを光ケーブルLC3の入射端に入射させるものである。
【0056】
なお、本実施形態においては、2種類の励起光として近赤外光と近紫外光とを用いるようにしたが、励起光としてはこれに限らず、一方の励起光の波長よりも他方の励起光の波長の方が短いものでればその他の波長の励起光を用いるようにしてもよく、被観察部に投与される蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類などによって適宜決定される。
【0057】
また、光源装置2は、光ケーブルLCを介して硬性鏡撮像装置10に光学的に接続されるが、光ケーブルLC1およびLC2は、それぞれ白色光投光ユニット70のマルチモード光ファイバ71に光学的に接続され、光ケーブルLC3は励起光投光ユニット60のマルチモード光ファイバ61に光学的に接続されるものとする。
【0058】
次に、上述した第1の実施形態の硬性鏡システムの作用について説明する。
【0059】
まず、具体的なシステムの作用の説明の前に、本実施形態において取得する血管画像について模式図を用いて説明する。本実施形態においては、ICG蛍光画像とルシフェラーゼ蛍光画像とを用いて血管画像を取得する。
【0060】
ここで、ICG蛍光画像の励起光である近赤外光は体表から比較的深層まで到達するため、図10に示すような体表から1mm〜3mm程度の深層に存在する深層血管画像をICG蛍光画像により取得することができるが、体表から1mm程度の表層に存在する表層血管画像についてはぼやけて見えてしまう。一方、ルシフェラーゼ蛍光画像の励起光である近紫外光は短波長であるため、ルシフェラーゼ蛍光画像には体表から1mm程度の表層に存在する表層血管画像が鮮明に表れるが、深層血管画像は観察することができない。
【0061】
そこで、本実施形態においては、上述したようなICG蛍光画像とルシフェラーゼ蛍光画像の性質を踏まえ、近赤外光と近紫外光の光量比を変更することによって、深層から表層までの血管画像を各深さ範囲に応じて適切に表示するようにする。
【0062】
また、深部血管画像のみを取得する際、ICG蛍光画像のみを取得したのでは、このICG蛍光画像には深部血管画像だけでなく表層血管画像の情報も含まれるため、この表層血管画像が不要な情報として現われてしまう。一方、上述したようにルシフェラーゼ蛍光画像は表層血管画像の情報のみを含むものとなる。
【0063】
そこで、深部血管画像のみを取得する際には、図11に示すように、ICG蛍光画像からルシフェラーゼ蛍光画像を減算することによって深部血管画像を取得する。そして、この減算を適切に行うため、ICG蛍光画像信号の大きさとルシフェラーゼ蛍光画像信号との大きさが同じになるように近赤外光と近紫外光の光量比を変更する。
【0064】
以下、本実施形態の硬性鏡システムの具体的な作用について説明する。
【0065】
まず、操作者により体腔挿入部30が体腔内に挿入され、体腔挿入部30の先端が被観察部の近傍に設置される。なお、被観察部には、予めICGとルシフェラーゼとが投与されているものとする。
【0066】
そして、まず、通常画像の撮像の作用について説明する。ICG蛍光画像および通常画像の撮像の際には、具体的には、光源装置2の青色LD光源40から射出された青色光が、集光レンズ41および光ファイバスプリッタ42を介して光ケーブルLC1およびLC2に入射される。そして、さらに青色光は光ケーブルLC1,LC2により導光されて体腔挿入部30に入射され、体腔挿入部30内の白色光投光ユニット70のマルチモード光ファイバ71によって導光される。そして、マルチモード光ファイバ71の出射端から出射された青色光は、一部は蛍光体72を透過して被観察部に照射され、一部以外は蛍光体72によって緑色〜黄色の可視光に波長変換され、その可視光が被観察部に照射される。すなわち、青色光と緑色〜黄色の可視光とからなる白色光が被観察部に照射される。
【0067】
そして、白色光の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像が撮像される。
【0068】
具体的には、通常像の撮像の際には、白色光の照射によって被観察部から反射された反射光が挿入部材30bの先端30Yの撮像レンズ30dから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0069】
撮像ユニット20に入射された反射光は、紫外光カットフィルタ27を透過した後、ダイクロイックプリズム21によって直角方向に反射され、第2結像光学系25によって第2高感度撮像素子26の撮像面に結像され、第2高感度撮像素子26によって撮像される。
【0070】
そして、第2高感度撮像素子26からそれぞれ出力されたR、G、Bの画像信号は、撮像制御ユニット20aにおいてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に出力される。
【0071】
次に、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像の撮像の作用について説明する。
【0072】
ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像の撮像の際には、光源装置2の近赤外LD光源46から射出された近赤外光が集光レンズ47により光ファイバカプラ52に入射されるとともに、近紫外LD光源49から射出された近紫外光が集光レンズ50により光ファイバカプラ52に入射され、近赤外光と近紫外光とが光ファイバカプラ52において結合されて光ケーブルLC3に入射される。
【0073】
そして、近赤外光と近紫外光とが光ケーブルLC3を介して体腔挿入部30に入射され、体腔挿入部30内の励起光投光ユニット60のマルチモード光ファイバ61によって導光されて被観察部に同時に照射される。
【0074】
そして、近赤外光の照射によって被観察部から発せられたICG蛍光像と近紫外光の照射によって被観察部から発せられたルシフェラーゼ蛍光像とが、挿入部材30bの先端30Yの撮像レンズ30dから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0075】
撮像ユニット20に入射されたICG蛍光像は、紫外光カットフィルタ27、ダイクロイックプリズム21および近赤外光カットフィルタ22を透過した後、第1結像光学系23により第1高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、第1高感度撮像素子24によって撮像される。第1高感度撮像素子24から出力されたICG蛍光画像信号は、撮像制御ユニット20aにおいてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に出力される。
【0076】
一方、撮像ユニット20に入射されたルシフェラーゼ蛍光像は、紫外光カットフィルタ27を透過した後、ダイクロイックプリズム21によって直角方向に反射され、第2結像光学系25によって第2高感度撮像素子26の撮像面に結像され、第2高感度撮像素子26によって撮像される。
【0077】
そして、第2高感度撮像素子26からそれぞれ出力されたR、G、Bの画像信号は、撮像制御ユニット20aにおいてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に出力される。
【0078】
ここで、上述した通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像のそれぞれの撮像タイミングを示すタイミングチャートを図12(a)〜(e)に示す。図12(a)〜(e)に示すタイミングチャートは、横軸が経過時間で縦軸が高感度撮像素子のフレームレートになっている。
【0079】
図12(a)〜(c)はR,G,Bの通常画像信号を撮像する第2高感度撮像素子26の撮像タイミングであり、図12(d)はルシフェラーゼ蛍光画像を撮像する第2高感度撮像素子26の撮像タイミングであり、図12(e)はICG蛍光画像を撮像する第1高感度撮像素子24の撮像タイミングである。
【0080】
図12(a)〜(c)に示すR、G、Bの画像信号のタイミングチャートにおいては、
周期0.1s、デューティー比0.75、フレームレート40fpsで撮像を行っている。また、図12(d)に示すルシフェラーゼ蛍光画像のタイミングチャートにおいては、周期0.1s、デューティー比0.25、フレームレート40fpsで撮像を行っている。また、図12(e)に示すICG蛍光画像のタイミングチャートにおいては、デューティー比1、フレームレート10fpsで撮像を行っている。
【0081】
そして、通常画像とルシフェラーゼ蛍光画像とはBの成分が同じ色成分であり同時に撮像することができないので、図12(a)〜(c)と図12(d)に示すように、互いに異なるタイミングで撮像される。
【0082】
そして、図12(a)〜(e)のタイミングチャートに対応して光源装置2の青色LD光源40、近赤外LD光源46および近紫外LD光源49が駆動制御されるが、このとき本実施形態においては、上述したように深層から表層までの血管画像を各深さ範囲に応じて適切に表示できるように近赤外光と近紫外光の光量比を変更する。
【0083】
また、深部血管画像のみを取得する場合には、ICG蛍光画像信号の大きさとルシフェラーゼ蛍光画像信号との大きさが同じになるように近赤外光と近紫外光の光量比を変更する。
【0084】
具体的には、操作部36において操作者によって観察したい血管画像の深さ情報が入力され、血管画像の深さ情報が制御部38の光量比変更部38aに入力される。そして、光量比変更部38aは、入力された血管画像の深さ情報に応じた近赤外光と近紫外の光量比を取得し、その光量比に応じた制御信号をTG37に出力する。
【0085】
ここで、光量比変更部38aには、血管画像の深さ情報に応じた光量比が予めテーブルなどによって設定されている。たとえば、表層の深さ情報に対しては、ルシフェラーゼ蛍光画像信号の方がICG蛍光画像信号よりも大きくなるように近赤外光と近紫外の光量比が設定され、深層(表層も含む)の深さ情報に対しては、ICG蛍光画像信号の方がルシフェラーゼ蛍光画像信号よりも大きくなるように近赤外光と近紫外の光量比が設定され、また、深層のみの深さ情報に対しては、ICG蛍光画像信号とルシフェラーゼ蛍光画像信号とが同じ大きさとなるように近赤外光と近紫外の光量比が設定される。また、表層と深層との間は段階的に光量比を設定するようにしてもよい。
【0086】
なお、近赤外光と近紫外の光量比は、ICGとルシフェラーゼの発光強度の特性や、ICG蛍光画像を撮像する第1高感度撮像素子24とルシフェラーゼ蛍光画像を撮像する第2高感度撮像素子26との感度およびゲインなどを考慮して設定されるものとする。
【0087】
また、近赤外光と近紫外の光量比の初期値としては、たとえば、ICG蛍光画像信号とルシフェラーゼ蛍光画像信号とが同じ大きさとなるように設定するようにすればよい。
【0088】
そして、近赤外光と近紫外の光量比は、操作者がモニタ4に表示された蛍光画像を観察しながら随時変更可能である。
【0089】
次に、上記のようにして撮像ユニット20において撮像されたR、G、Bの画像信号からなる通常画像信号、ICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号に基づいて通常画像、蛍光画像および合成画像を表示する作用について、図8および図9と、図13および図14に示すフローチャートとを参照しながら説明する。
【0090】
まず、通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像を表示する作用について説明する。
【0091】
プロセッサ3に入力されたR,G、B画像信号からなる通常画像信号は、通常画像入力コントローラ31において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される(図13、S20)。そして、メモリ34から読み出された1フレーム分の通常画像信号は、画像処理部33の通常画像処理部33aにおいて階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後(図13、S22,S24)、ビデオ出力部35に出力される。
【0092】
そして、ビデオ出力部35は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する(図13、S30)。
【0093】
また、プロセッサ3に入力されたICG蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される(図13、S14)。そして、メモリ34から読み出された1フレーム分のICG蛍光画像信号は、画像処理部33の蛍光画像処理部33bにおいて階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後(図13、S32,S34)、ビデオ出力部35に出力される。
【0094】
そして、ビデオ出力部35は、入力されたICG蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいてICG蛍光画像を表示する(図13、S36)。
【0095】
また、プロセッサ3に入力されたルシフェラーゼ蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される(図13、S14)。そして、メモリ34から読み出された1フレーム分のルシフェラーゼ蛍光画像信号は、画像処理部33の蛍光画像処理部33bにおいて階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後(図13、S32,S34)、ビデオ出力部35に出力される。
【0096】
そして、ビデオ出力部35は、入力されたルシフェラーゼ蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいてルシフェラーゼ蛍光画像を表示する(図13、S36)。
【0097】
次に、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像と通常画像とを合成した合成画像を表示する作用について説明する。
【0098】
上記合成画像を生成する際には、通常画像処理部33aにおいて階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された通常画像信号と、蛍光画像処理部33bにおいて階調補正処理およびシャープネス補正処理が施されたICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号とが画像合成部33eに出力される。
【0099】
そして、画像合成部33eは、入力されたICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号を通常画像信号に合成し合成画像信号を生成する(図13、S26)。
【0100】
そして、画像合成部33eにおいて生成された合成画像信号は、ビデオ出力部35に出力され、ビデオ出力部35は、入力された合成画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて合成画像を表示する(図13、S28)。
【0101】
次に、ICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号に基づいて深部血管画像を生成し、その深部血管画像と通常画像とを合成した合成画像を表示する作用について説明する。
【0102】
プロセッサ3に入力されたICG蛍光画像信号とルシフェラーゼ蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される(図13、S10,S14)。
【0103】
そして、メモリ34に格納されたルシフェラーゼ蛍光画像信号とICG蛍光画像信号とが、画像処理部33の血管抽出部33cに入力される。そして、血管抽出部33cにおいて血管抽出処理が施される(図13、S12,S16)。
【0104】
血管抽出処理は線分抽出処理を行うことによって行われる。本実施形態においては、エッジ検出とそのエッジ検出によって検出したエッジから孤立点を除去することによって線分抽出処理を行う。エッジ検出方法としては、たとえば、1次微分を用いたキャニー法を用いることができる。図14に、キャニー法によるエッジ検出を用いた線分抽出処理を説明するためのフローチャートを示す。
【0105】
図14に示すように、まず、ICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号のそれぞれに対し、DOG(Derivative of Gaussian)フィルタを用いたフィルタ処理が施される(図14、S10〜S14)。このDOGフィルタを用いたフィルタ処理は、ノイズを減らすためのガウシアンフィルタ処理(平滑化処理)と濃度勾配を検出するためのx,y方向の1次微分フィルタ処理とを組み合わせた処理である。
【0106】
そして、フィルタ処理済のICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号のそれぞれについて、濃度勾配の大きさと方向が計算される(図14、S16)。そして、濃度勾配の極大点を抽出し、それ以外の非極大点を除去する(図14、S18)。
【0107】
そして、その極大点と所定の閾値とを比較し、所定の閾値以上の極大点をエッジとして検出する(図14、S20)。さらに、極大点であり所定の閾値以上であるが、連続したエッジを構成していない孤立点を除去する処理を行う(図14、S22)。孤立点の除去処理は、血管としては適当でない孤立点をエッジ検出結果から除去するための処理で、具体的には、検出された各エッジの長さをチェックすることによって孤立点を検出する。
【0108】
なお、エッジ検出のアルゴリズムは、上記に限らず、ノイズを減らすためのガウシアンフィルタ処理と2次微分処理とを行ってエッジを抽出するラプラシアンフィルタを組み合わせたLOG(Laplace of Gaussian)フィルタを用いてエッジ検出を行うようにしてもよい。
【0109】
なお、本実施形態においては、エッジ検出を用いた線分抽出処理を行うことによって血管抽出を行うようにしたが、これに限らず、血管部分を抽出する処理であれば、たとえば、色相や輝度を用いた処理など如何なる処理を用いてもよい。
【0110】
上述したようにして血管抽出処理を行うことによって、ICG蛍光画像信号およびルシフェラーゼ蛍光画像信号のそれぞれについてICG蛍光血管画像信号およびルシフェラーゼ蛍光血管画像信号が生成されるが、このルシフェラーゼ蛍光血管画像信号は、被観察部の体表から1mmの表層に存在する表層血管画像を表すものとなり、ICG蛍光血管画像信号は、上記表層血管画像と体表から1mm〜3mmの深層に存在する深部血管画像との両方を含むものとなる。
【0111】
そして、次に、血管抽出部33cにおいて生成されたICG蛍光血管画像信号とルシフェラーゼ蛍光血管画像信号とが画像演算部33dに出力され、ICG蛍光血管画像信号からルシフェラーゼ蛍光血管画像信号が減算されて深部血管画像信号が生成される(図13、S18)。
【0112】
なお、このとき、上述したように近赤外光と近紫外光の光量比が、深さ情報が深層のみの場合に変更されることによってICG蛍光血管画像信号とルシフェラーゼ蛍光血管画像信号の大きさが同じ大きさになっている。
【0113】
そして、上記のようにして画像演算部33dにおいて生成された深部血管画像信号は画像合成部33eに出力される。そして、画像合成部33eには、通常画像処理部33aから出力された通常画像信号も入力され、この通常画像信号と深部血管画像信号とが合成されて合成画像信号が生成される(図13、S26)。
【0114】
そして、画像合成部33eにおいて生成された合成画像信号は、ビデオ出力部35に出力される。
【0115】
そして、ビデオ出力部35は、入力された合成画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて合成画像を表示する(図13、S28)。
【0116】
次に、本発明の画像撮像方法および装置の第2の実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。第2の実施形態の硬性鏡システムの全体の概略構成は、図1に示す第1の実施形態の硬性鏡システムと同様である。以下、第1の実施形態の硬性鏡システムと異なる構成を中心に説明する。
【0117】
第1の実施形態の硬性鏡システムの撮像ユニット20においては、2つの高感度撮像素子を用いて通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像の撮像を行うようにしたが、第2の実施形態の硬性鏡システムの撮像ユニット80は、1つの高感度撮像素子を用いて通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像の撮像を行うようにしたものである。
【0118】
具体的には、図15に示すように、撮像ユニット80は、ICG蛍光像、ルシフェラーゼ蛍光像および通常像を集光する集光レンズ81と、集光レンズ81によって集光されたICG蛍光像、ルシフェラーゼ蛍光像および通常像を透過するとともに、近紫外光をカットする紫外光カットフィルタ82と、ICG蛍光像、ルシフェラーゼ蛍光像および通常像を透過するとともに、近赤外光をカットする近赤外光カットフィルタ83と、ICG蛍光像、ルシフェラーゼ蛍光像および通常像を撮像する高感度撮像素子84とを備えている。
【0119】
紫外光カットフィルタ82は、第1の実施形態と同様に、紫外光の波長帯域375nmをカットするハイパスフィルタにより構成されている。
【0120】
近赤外光カットフィルタ83は、ノッチ型の干渉フィルタにより構成されており、近赤外光を遮断するとともに、可視光とICG蛍光を透過するフィルタ特性を有するものである。
【0121】
高感度撮像素子84の受光面には、第1の実施形態の第2高感度撮像素子26と同様に、RGB色分解フィルタが設けられている。
【0122】
図16に、本実施形態の高感度撮像素子84の分光感度R,G,Bと、白色光投光ユニット70により被観察部に照射される白色光スペクトルS1,S2と、近赤外光スペクトルS3と、ICG蛍光スペクトルS4と、近赤外光カットフィルタ83のフィルタ特性Fとを示している。
【0123】
本実施形態の高感度撮像素子84は、RGB色分解フィルタを設けない状態では近赤外域まで感度を有するものであり、RGB色分解フィルタの各フィルタは、図12に示すように、近赤外域においても同じ程度の透過率を有するものである。したがって、R,G,Bの全てのフィルタにおいてICG蛍光像を透過させて検出することができるものである。
【0124】
図17に、本実施形態の高感度撮像素子84の2×2の画素を示す。高感度撮像素子84には、図17に示すように、R、G、Bのフィルタが設けられている。そして、通常画像を撮像する際には、図17(A)に示すように、R、G、Bの全てのフィルタを透過した通常像を検出して通常画像信号を生成する。
【0125】
また、ルシフェラーゼ蛍光画像を撮像する際には、図17(B)に示すように、Bのフィルタを透過したルシフェラーゼ蛍光像を検出してルシフェラーゼ蛍光画像信号を生成する。
【0126】
また、ICG蛍光画像を撮像する際には、図17(C)に示すように、R、G、Bの全てのフィルタを透過したICG蛍光像を検出してICG蛍光画像信号を生成するが、このとき、フィルタの透過率が比較的低いことを考慮して、2×2画素のいわゆるビニング読出しを行って1画素の信号を生成する。
【0127】
図18に、本実施形態における通常画像、ICG蛍光画像およびルシフェラーゼ蛍光画像のそれぞれの撮像タイミングを示すタイミングチャートを示す。図18(a)〜(e)に示すタイミングチャートは、横軸が経過時間で縦軸が高感度撮像素子のフレームレートになっている。
【0128】
図18(a)〜(c)は、高感度撮像素子84においてR,G,Bの通常画像信号を撮像する際の撮像タイミングであり、図18(d)は、高感度撮像素子84においてルシフェラーゼ蛍光画像を撮像する際の撮像タイミングであり、図18(e)は、高感度撮像素子84においてICG蛍光画像を撮像する際の撮像タイミングである。
【0129】
図18(a)〜(c)に示すR、G、Bの画像信号のタイミングチャートにおいては、
周期0.1s、デューティー比0.5、フレームレート40fpsで撮像を行っている。また、図18(d)に示すルシフェラーゼ蛍光画像のタイミングチャートにおいては、周期0.1s、デューティー比0.25、フレームレート40fpsで撮像を行っている。また、図18(e)に示すICG蛍光画像のタイミングチャートにおいては、デューティー比0.25、フレームレート10fpsで撮像を行っている。
【0130】
本実施形態においては、通常画像とルシフェラーゼ蛍光画像とICG蛍光画像とがそれぞれ異なるタイミングで撮像されるので、図18(a)〜(e)に示すような撮像タイミングとなる。
【0131】
また、ICG蛍光画像は、フィルタの透過率が比較的低いことを考慮して、フレームレートを遅くして電荷蓄積時間を長くするようにしている。
【0132】
そして、第2の実施形態においては、図18(a)〜(e)のタイミングチャートに対応して光源装置2の青色LD光源40、近赤外LD光源46および近紫外LD光源49が駆動制御されるが、このとき、第1の実施形態と同様にして、深層から表層までの血管画像を各深さ範囲に応じて適切に表示できるように近赤外光と近紫外光の光量比を変更する。
【0133】
また、深部血管画像のみを取得する場合には、ICG蛍光画像信号の大きさとルシフェラーゼ蛍光画像信号との大きさが同じになるように近赤外光と近紫外光の光量比を変更する。
【0134】
なお、具体的な近赤外光と近紫外光の光量比の変更方法については、第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態においても、近赤外光と近紫外の光量比は、ICGとルシフェラーゼの発光強度の特性や、高感度撮像素子84の感度およびゲインや、フレームレート(電荷蓄積時間)などが考慮されて設定されるものとする。
【0135】
第2の実施形態のその他の構成および作用については、上記第1の実施形態と同様である。
【0136】
また、上記第1および第2の実施形態においては、近赤外光と近紫外光の光量比を変更可能なようにしたが、これに限らず、たとえば、青色LD光源40から射出される青色光の光量も制御して、近赤外光および/または近紫外光と白色光との光量比を変更するようにしてもよい。
【0137】
具体的には、ICG蛍光画像および/またはルシフェラーゼ蛍光画像と通常画像との明るさが同じ程度の明るさとなるように、すなわちICG蛍光画像信号および/またはルシフェラーゼ蛍光画像信号と通常画像信号とが同じ大きさとなるように光量比を設定するようにしてもよい。
【0138】
また、上記第1および第2の実施形態においては、血管画像を表示するようにしたが、これに限らず、たとえば、リンパ管、胆管などのその他の管部分を表す画像を表示するようにしてもよい。
【0139】
また、上記第1および第2の実施形態は、本発明の蛍光画像撮像装置を硬性鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡装置を有するその他の内視鏡システムに適用してもよい。また、内視鏡システムに限らず、体内に挿入される挿入部を備えていない、いわゆるビデオカメラ型の医用画像撮像装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 プロセッサ
4 モニタ
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
24 第1高感度撮像素子
26 第2高感度撮像素子
27 紫外光カットフィルタ
30 体腔挿入部
30e,30f 白色光用照射レンズ
30g 励起光用照射レンズ
33 画像処理部
36 操作部
38 制御部
38a 光量比変更部
40 青色LD光源
46 近赤外LD光源
49 近紫外LD光源
52 光ファイバカプラ
60 励起光投光ユニット
70 白色光投光ユニット
72 蛍光体
80 撮像ユニット
82 紫外光カットフィルタ
83 近赤外光カットフィルタ
84 高感度撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの励起光源を含む複数の光源から互いに異なる波長帯域の光を射出させ、該各光を蛍光薬剤が投与された被観察部に照射し、前記各光の照射によって前記被観察部から発せられた光を受光して前記各光に対応する画像を撮像する画像撮像方法において、
前記各光源から射出させる各光の光量比を変更することを特徴とする画像撮像方法。
【請求項2】
少なくとも1つの励起光源を含む複数の光源から射出された互いに異なる波長帯域の光を、蛍光薬剤が投与された被観察部に照射する光照射部と、前記各光の照射によって前記被観察部から発せられた光を受光して前記各光に対応する画像を撮像する撮像部とを備えた画像撮像装置において、
前記各光源から射出させる各光の光量比を変更する光量比変更部を備えたことを特徴とする画像撮像装置。
【請求項3】
前記光源として複数の励起光源を備え、
前記光量比変更部が、前記各励起光源から射出された各励起光の光量比を変更するものであることを特徴とする請求項2記載の画像撮像装置。
【請求項4】
前記光源として通常光を射出する通常光源を備え、
前記光量比変更部が、前記励起光源から射出された励起光と前記通常光源から射出された通常光の光量比を変更するものであることを特徴とする請求項2記載の画像撮像装置。
【請求項5】
前記複数の励起光源から射出される各励起光が、前記被観察部に投与された複数の蛍光薬剤をそれぞれ励起するものであることを特徴とする請求項3記載の画像撮像装置。
【請求項6】
前記光量比変更部が、前記各励起光の照射によって前記撮像部により撮像された各画像の強度が異なるものとなるように前記光量比を変更するものであることを特徴とする請求項3または5記載の画像撮像装置。
【請求項7】
前記光量比変更部が、前記各励起光の照射によって前記撮像部により撮像された各画像の強度が同じになるように前記光量比を変更するものであることを特徴とする請求項3、5および6いずれか1項記載の画像撮像装置。
【請求項8】
前記撮像部が、前記各光に対応する画像を撮像する複数の撮像素子を備えたものであり、
前記光量比変更部が、前記各撮像素子の感度に基づいて予め設定された光量比の値に応じて前記各光の光量比を変更するものであることを特徴とする請求項2から7いずれか1項記載の画像撮像装置。
【請求項9】
前記撮像部が、前記各光に対応する画像を撮像する1つの撮像素子を備えたものであり、
前記光量比変更部が、前記撮像素子の感度に基づいて予め設定された光量比の値に応じて前記各光の光量比を変更するものであることを特徴とする請求項2から7いずれか1項記載の画像撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図10】
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【図11】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−200367(P2011−200367A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69501(P2010−69501)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】